説明

セメント素地と亜鉛被覆金属要素とを含む補強構造体

本発明は、セメント素地と亜鉛被覆金属要素とを含む補強構造体に関する。この構造体は、少なくとも亜鉛被覆金属要素とセメント素地との界面において、イミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾールからなる群から選択される化合物を含む。本発明は、さらにセメント素地を補強する亜鉛被覆金属要素、およびセメント素地に埋め込まれた亜鉛被覆金属要素の界面における水素ガスの発生を阻止する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛被覆金属要素によって補強されたセメント素地、およびセメント素地を補強する亜鉛被覆金属要素に関する。
【0002】
本発明は、さらに亜鉛被覆金属要素によって補強されたコンクリートの硬化中の水素ガスの発生を阻止する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
コンクリートを、例えば、その素地に必要とされる引張り特性を与えるために、鋼繊維のような金属要素によって補強することが、一般的に知られている。
【0004】
剥き出しの鋼繊維は、腐食を被ることがあるので、これらの繊維に長期的な耐食性を与える亜鉛メッキされた鋼繊維が提案されている。亜鉛メッキされた補強鋼要素は、プレハブ建造物におけるように、建設が始まる前に、補強されたコンクリートが風雨に晒される建設用のコンクリートの補強に、特に有用である。
【0005】
しかし、コンクリートに亜鉛メッキ鋼繊維を用いると、以下の問題、すなわち、コンクリートの硬化中に、鋼要素の亜鉛メッキ面がアルカリコンクリートと反応し、水素の発生を伴う亜鉛塩を生成するという問題が生じる。
【0006】
水素ガスが発生すると、強度の問題および耐久性の問題のみならず、審美的な問題が生じる。
【0007】
金属要素とコンクリートとの界面に水素ガスが発生することによって、金属要素とコンクリートとの間の結合強度が低下する。これによって、補強コンクリートの強度が低下する。
【0008】
アルカリ環境における亜鉛皮膜または亜鉛合金皮膜の反応を考慮すると、耐久性の問題から、亜鉛皮膜または亜鉛合金皮膜の厚みは、薄くされることになる。
【0009】
コンクリート内の亜鉛メッキ鋼繊維の問題は、2004年9月20〜22日に開催された繊維補強コンクリート(FRC)に関する第6回RILEMシンポジウム(BEFIB2004)講演集、239〜248ページの「亜鉛メッキ鋼繊維とコンクリートとの間の化学的および物理的相互反応の影響」(T.ベリーズ(Belleze)、R.フラテシ(Fratesi)、C.フェイラ(Failla))に、記載されている。
【0010】
水素ガスの発生を阻止するために、亜鉛面が不働態化されることもある。これは、亜鉛メッキ鋼要素をクロム基化合物によって処理することによって達成される。また、コンクリート内に自然に存在するクロム酸塩でも、亜鉛メッキ鋼要素を保護するのに充分である場合がある。
【0011】
しかし、近年、六価クロムが深刻な環境問題および健康問題を引き起こすことが認められている。その結果、多くの工業プロセスに用いられる六価クロムおよびセメント、コンクリートのような多くの工業製品に用いられる六価クロムの量に厳しい規制が課せられている。
【0012】
亜鉛メッキ鋼を保護する他の試みとして、亜鉛メッキ鋼にエポキシ皮膜を施すことが挙げられる。エポキシ皮膜で被覆された亜鉛メッキ鋼を用いて、コンクリートを補強する技術が、例えば、特開昭53−78625号公報に記載されている。
【0013】
エポキシ皮膜は、腐食環境に対するバリアとしてのみ作用する。もしエポキシ皮膜に欠陥が存在した場合、侵襲性物質がこれらの欠陥からバリアに侵入する可能性があり、この場合、腐食がこれらの領域に集中して生じることになる。従って、皮膜の欠陥によって、水素ガスが局部的に発生し、その結果、結合強度の損失が生じる。
【0014】
従って、エポキシ皮膜は、完全な状態であることが不可欠である。具体的には、この膜には、細孔、亀裂、および損傷領域が存在してはならない。
【0015】
エポキシ皮膜は、脆弱である。従って、エポキシ被覆金属要素は、貯蔵中、輸送中、および処理中、極めて注意して取扱われねばならない。
【0016】
コンクリートへの補強要素の混入は、荒っぽい作業であり、補強要素の表面の局部的な損傷は、避けられないので、コンクリートの補強にエポキシ被覆金属要素を用いるのは、良好な選択肢ではない。
【0017】
当技術分野において周知の多くの腐食防止剤、例えば、リン酸塩、珪酸塩、シラン、炭酸塩および炭酸、硫化物およびメルカプト誘導体、アミン、およびスルホン酸塩が試験に供されている。しかし、これらの腐食防止剤は、水素ガスの発生を避けることができないので、充分な結果をもたらしていない。
【0018】
従って、クロム化合物を用いることなく、かつ100%バリア皮膜で覆うことを必要とすることなく、亜鉛または亜鉛被覆金属要素を充分に防食することは、依然として問題があり、有効な解決策が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、先行技術の欠点を解消する、セメント素地と亜鉛被覆金属要素とを含む補強構造体を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、六価クロムが存在しない補強構造体を提供することにある。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、セメント素地を補強する亜鉛被覆金属要素を提供することにある。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、セメント素地の硬化中に、セメント素地に分散される亜鉛被覆金属要素の界面における水素ガスの発生を阻止する方法を提供することにある。
【0023】
さらに、本発明の目的は、セメント素地に分散される亜鉛被覆金属要素の短期的な防食性を高める方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の第1態様によれば、セメント素地と亜鉛被覆金属要素とを含む補強構造が提供される。
【0025】
亜鉛被覆金属要素が、セメント素地に導入され、このセメント素地によって覆われることによって、亜鉛被覆金属要素とセメント素地との間に界面が生じる。
【0026】
本発明による補強構造体は、少なくとも亜鉛被覆金属要素とセメント素地との界面に、亜鉛被覆金属要素に陰極防食をもたらす化合物を含む。この化合物は、イミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾールからなる群から選択される。
【0027】
この化合物の主な機能は、補強構造体の混合中、注入中、凝結中、および/または硬化中に、亜鉛被覆金属要素とセメント素地との界面における水素ガスの発生を避けることである。
【0028】
金属要素の亜鉛メッキ面が防食を必要とする臨界期間は、セメント素地が硬化する期間、すなわち、打設後の72時間における最初の24時間である。
【0029】
亜鉛被覆金属要素の充分な防食を得るために、本発明による化合物は、好ましくは、0.005%から2%の範囲内、例えば、0.04%から0.2%の範囲内の濃度で含まれる。この濃度は、セメント素地を調製するのに用いられる混合水に対する重量%で表される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、イミダゾールは、N−(トリメチルシリル)−イミダゾールのようなシリルイミダゾール、または2−メルカプトベンゾイミダゾールまたは2−メルカプト−1−メチルベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾールを含む。
【0031】
本発明による補強構造体では、この化合物は、少なくとも亜鉛被覆金属要素とセメント素地との界面に存在しなければならない。
【0032】
この化合物を施すに当たって、化合物を亜鉛被覆金属要素とセメント素地との界面に存在させるどのような技術をも考慮することができる。
【0033】
第1実施形態では、この化合物は、亜鉛被覆金属要素がセメント素地に導入される前に、これらの金属要素に塗布される。この化合物は、例えば、亜鉛被覆金属要素がセメント素地に導入される前にこれらの金属要素に塗布される皮膜層内に、添加されてもよい。
【0034】
一例として、この化合物は、亜鉛被覆金属要素がセメント素地に導入される前にこれらの金属要素に塗布される接着剤に、加えられてもよい。
【0035】
代替的な実施形態では、この化合物は、セメント素地またはセメント素地の少なくとも1つの成分に加えられ、次いで、亜鉛被覆金属要素が、この化合物を含むセメント素地に導入される。
【0036】
本発明による補強構造体の大きな利点は、亜鉛被覆金属要素を六価クロムによって防食する必要がないので、補強構造体が六価クロムを含まないことにある。これは、金属要素がクロム基化合物による処理を必要としないことを意味する。
【0037】
本発明による補強構造体のさらに他の利点は、亜鉛被覆金属要素の良好な防食が、六価クロムを含まないセメントが用いられる場合にも得られることである。これまで、どのようなクロム基化合物が亜鉛被覆金属要素を防食するのに用いられない場合でも、亜鉛被覆金属要素は、セメント内に自然に存在するクロムを利用することができた。しかし、新しい法規が、クロムに関連するアレルギー性皮膚炎が生じるのを最小限に抑えるために、セメント内の六価クロムの量を制限することを課している。その結果、セメント素地内の亜鉛被覆金属要素は、もはや、セメント内に自然に存在するクロムを利用することができない。
【0038】
六価クロムが存在しないセメントを得るために、セメント製造業者は、硫酸鉄の投与のような技術を開発してきた。しかし、硫酸鉄の添加は、水素ガスの発生量を劇的に増加させる。
【0039】
本発明の大きい利点は、六価クロムが存在しないセメントが用いられる場合およびセメントに硫酸鉄が投与される場合にも、水素ガスの発生が阻止されることである。
【0040】
本発明では、「セメント素地」は、金属要素とは別の素地材料を意味すると理解されるべきである。セメント素地は、例えば、コンクリートまたはモルタルのようなセメントを含むどのような材料からなってもよい。
【0041】
「金属要素」は、セメント素地を補強する要素を意味すると理解されるべきである。
【0042】
金属要素は、金属ワイヤ、金属コード、金属繊維、金属棒、金属シート、または金属メッシュのようなどのような種類の金属補強要素からなってもよい。
【0043】
金属要素は、当技術分野において周知のどのような金属または金属合金から作製されてもよい。金属要素は、好ましくは、鋼から作製される。
【0044】
セメント素地を補強する好ましい金属要素は、とりわけ、本出願人であるNVベーカート(Bekaert)SAから「DRAMIX」の商品名で市販されている鋼繊維である。
【0045】
通常、例えば、500N/mm2から3000N/mm2の引張強度を有する鋼繊維が、用いられる。
【0046】
用いられる繊維は、例えば、直線状とすることができる。繊維が、引張り歪によって硬化したセメント素地からなるべく引き出され難くなる形状を有すると、好ましい。この目的を達成するには、繊維は、例えば、端部がフック状にされるか、波形にされるか、または長さに沿って断面が変化されるとよい。
【0047】
鋼繊維の場合、その厚みまたは直径は、好ましくは、0.1mmから1.2mmの範囲内にある。鋼繊維の場合、長さ/直径の比は、実際的な理由および経済的な理由から、殆どの場合、10から200の範囲内にあり、好ましくは、少なくても40である。直線状でない繊維の場合、長さは、繊維の端間の直線距離であり、長さに沿って変動する直径は、長さの全体にわたる平均直径として定義される。
【0048】
亜鉛被覆金属要素は、亜鉛皮膜を有していてもよいし、亜鉛合金皮膜を有していてもよい。
【0049】
亜鉛合金皮膜として、例えば、Zn−Fe合金、Zn−Ni合金、Zn−Al合金、Zn−Mg合金、またはZn−Mg−Al合金の皮膜が考えられる。
【0050】
好ましい亜鉛合金皮膜は、2%から15%の範囲内のAlを含むZn−Al合金皮膜である。
【0051】
好ましくは、0.1%から0.4%の範囲内のCeおよび/またはLaのような希土類元素が添加されてもよい。
【0052】
本発明による補強構造体を、当技術分野において周知のどのような用途、例えば、プレハブ建造物、橋、建物、トンネル、駐車場、海上オイルプラットフォームなどに用いることができる。
【0053】
本発明の第2態様によれば、セメント素地を補強する亜鉛被覆金属要素が提供される。亜鉛被覆金属要素は、イミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾールからなる群から選択される化合物を含む層によって被覆される。
【0054】
この皮膜層は、例えば、前記化合物を含む接着剤を含む。
【0055】
金属要素は、金属ワイヤ、金属コード、金属繊維、金属棒、金属シート、または金属メッシュのようなどのような種類の金属補強要素を含みうる。
【0056】
金属要素は、当技術分野において周知のどのような金属または金属合金から作製されてもよい。金属要素は、好ましくは、鋼から作製される。好ましい金属要素は、鋼繊維である。
【0057】
本発明の第3態様によれば、セメント素地に埋め込まれる亜鉛被覆金属要素の界面における水素ガスの発生を阻止する方法が提供される。
【0058】
この方法は、亜鉛被覆金属要素を準備するステップと、前記亜鉛被覆金属要素をセメント素地に導入するステップと、前記亜鉛被覆金属要素および/または前記セメント素地を、イミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾールからなる群から選択される化合物によって処理するステップと、を含む。
【0059】
本発明による方法は、補強構造体の混合中、注入中、凝結中、および/または硬化中に、水素ガスの発生を回避する。
【0060】
金属要素の亜鉛メッキ面が防食を必要とする臨界期間は、セメント素地が硬化する期間、すなわち、打設後の72時間における最初の24時間である。
【0061】
前記化合物による処理は、亜鉛被覆金属要素およびセメント素地を、少なくともそれらの界面において、前述した化合物と接触させることができるどのような技術をも含むことができる。
【0062】
この化合物は、例えば、セメント素地に加えられてもよい。
【0063】
代替的に、亜鉛被覆金属要素がセメント素地に導入される前に、この化合物を含む皮膜層をこの亜鉛被覆金属要素に形成することによって、加えられてもよい。
【0064】
好ましい実施形態では、この化合物は、1つまたは多数の亜鉛被覆金属要素がセメント素地に導入される前にこれらの亜鉛被覆金属要素に塗布される接着剤に、加えられる。
【0065】
鋼繊維のような金属要素を、繊維が接着剤によって一緒に結合された帯片の形態で、セメント素地に導入することは、当技術分野においてよく知られている。このような帯片を用いることによって、繊維が混合移動中に均一に分布されずに球状に凝集するのが回避される。
【0066】
この接着剤は、セメント素地に加えられた時点で、解離するか、溶融するか、軟化するか、または機械的に砕けるように選択されるので、帯片は、個別の繊維に崩壊し、セメント素地の全体にわたって均等に分布する。
【0067】
本発明による化合物を加えることによって、亜鉛被覆金属要素の短期的な防食、すなわち、セメント素地の硬化中の防食が確実になる。
【0068】
以下、添加の図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明による補強構造体では、亜鉛被覆金属要素は、セメント素地、例えば、コンクリートに埋め込まれる。
【0070】
湿潤コンクリートは、腐食を生じさせる電解質として作用する。
【0071】
水は、水素と酸素に分解し得る。水の分解は、特定の電位で生じる電気化学的な酸化還元反応である。分解が生じる電気化学的な電位は、ネルンストの法則によるpHによって決定される。
【0072】
水素ガスが生成される水の分解電位は、ネルンストの法則:
E(H2)=E(H20)−0.059*pH
によって、定められる。式中、標準水素電極に対する電位E(H20)は、E(H20)=0である。
【0073】
酸素が生成される水の分解電位は、ネルンストの法則:
E(O2)=E(O20)−0.059*pH
によって、定められる。式中、標準水素電極に対する電位E(O20)は、E(O20)=+1.266Vである。
【0074】
0または標準電位の一覧は、「化学および物理のハンドブック、電気化学シリーズ」(第67版、1986年)のD151〜D158ページに記載されている。
【0075】
pHの関数としての水の分解電位は、マルセル・プールべ(Marcel Pourbaix)による「水溶液における電気化学的平衡の地図」(セベロア(Cebelor)、第2版、1997年)の98〜105ページに記載されている。
【0076】
亜鉛、アルミニウム、またはマグネシウムのような強力な電気陰性元素が水に晒されると、その元素は、規格ASTM G15−93において規定されるような開回路電位を有する。開回路電位は、残留電位または標準電位とも呼ばれる。高pH値では、開回路電位は、水素発生電位未満に降下するので、水素イオンの還元が開始され、その結果、水素ガスの発生をもたらす。水素発生は、その材料が露出している環境のpHの測定に基づいて、計算される。
【0077】
セメント素地のpHは、ASTM G51−95の試験方法に準じて、測定される。この方法は、土壌のpHを測定する手順を含む腐食試験である。本出願の場合、ASTM G51−95の試験方法を、土壌の代わりにセメント素地に適用させる。
【0078】
(ASTM G51−95による土壌に代って)1部のセメントと4部の砂とを含む試料の場合、13.04のpHが測定された。
【0079】
ネルンストの法則によって、E(H2)を計算することができる。
E(H2)=E(H0)−0.059*pH
E(H2)=−0.7694V(標準水素電極電位に対する電位)
【0080】
これは、この種のセメント素地に導入される補強材料の開回路電位が−0.7694Vの値未満に降下すると、水素ガスが生じることを意味する。
【0081】
開回路電位を、例えば、セメント素地の打設後の最初の数時間以内に、建設材料内において、容易に、現場測定することができる。水素ガスの発生が有害である最臨界期間は、打設後の72時間における最初の24時間である。
【0082】
化合物が硬化すると、水素ガスの発生の危険は、無視することができる。
【0083】
開回路電位を、規格ASTM C876に準じて、現場測定することができる。しかし、例えば、図1に示されるような小さい試料を用いて、開回路電位を測定すれば、さらに適切である。この機器は、規格ASTM G3−89(94)に準じて、用いられる。
【0084】
亜鉛被覆金属要素12をセメント素地14内に埋め込む。亜鉛被覆金属要素12と参照電極16との間の電位を、電位計または高インピーダンス電圧計18によって測定する。
【0085】
本発明による補強構造体を評価するために、3つの異なる試料を比較した。3つの試料は、全て、CEM II 42.5Rセメントの1部を4部の砂と5部の水と混合することによって得られたセメント素地からなる。
【0086】
3つの試料は、異なる金属要素によって補強されている。
−試料1は、未処理の鋼繊維を含み、
−試料2は、クロム処理された鋼繊維を含み、
−試料3は、ベンゾイミダゾールによって処理された鋼繊維を含む。
【0087】
セメント素地のpHを測定した。12.25のpH値が得られた。
【0088】
ネルンストの法則によって、E(H2)を計算することができる。
E(H2)=E(H0)−0.059*pH
E(H2)=−0.7228V(標準水素電極電位に対する電位)
【0089】
3つの試料の開回路電位を時間の関数として測定した。図2に結果を示す。試料1の開回路電位をライン21で示し、試料2の開回路電位をライン22で示し、試料3の開回路電位をライン23で示す。
【0090】
約24時間後の未処理の試料(試料1)の開回路電位は、水素発生電位未満に降下し、その結果、水素ガスが発生する。
【0091】
他の2つの試料(試料2,3)の場合、開回路電位は、水素発生電位よりも高く維持される。その結果、水素ガスは生じない。
【0092】
負荷時の補強コンクリートの性能を評価するために、鋼繊維によって補強されたコンクリートの2つの異なる試料を、NBN(ベルギー国家規格)B15−238(L=450mm)に準じる負荷試験に供し、通常の曲げ強度(Ff300,Ff150)を測定した。試験には、鋼繊維によって補強されたビーム(150×150×500mm)を用いた。
【0093】
コンクリート組成は、試料1,2に対して同じである。
【0094】
鋼繊維の投与量は、20kg/m3から40kg/m3の間である。
【0095】
試料1,2においてコンクリートに添加された鋼繊維は、以下に示す異なる方法で処理した。
−試料1は、本発明による防食剤によって処理された亜鉛被覆鋼繊維を含み、
−試料2は、さらなる処理がなされていない亜鉛被覆鋼繊維を含む。
【0096】
負荷試験を行う前に、28日間、ビームを湿潤雰囲気において保管した。
【0097】
負荷試験の結果を、表1(20kg/m3の投与量の場合)および表2(40kg/m3の投与量の場合)に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
表1,2から、試料1が最も良好であることが分かる。
【0101】
試料1,2間において、靭性の差が著しい。本発明によって処理された亜鉛被覆鋼繊維は、未処理亜鉛被覆鋼繊維と比較して、その靭性が、約10%〜40%、例えば、30%増加する。
【0102】
これは、試料2のセメント素地が、水素ガス発生によって著しく弱められていることを示している。
【0103】
靭性は、最初の亀裂が生じた後負荷を支えるコンクリートの能力を示す尺度である。従って、試料1の補強繊維は、負荷時において、亀裂をより確実にとどめることができるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】未使用の建設用素地の電位の測定を示す図である。
【図2】3つの異なる試料の開回路電位(OCP)を時間の関数として示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント素地と亜鉛被覆金属要素とを含む補強構造体であって、
前記補強構造体が、少なくとも前記亜鉛被覆金属要素と前記セメント素地との界面において、前記亜鉛被覆金属要素に陰極防食をもたらす化合物によって処理され、前記化合物が、イミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾールからなる群から選択される補強構造体。
【請求項2】
前記化合物が、0.005wt%から2wt%の範囲内の濃度で含まれ、前記濃度は、前記セメント素地を調製するのに用いられる混合水を基準にして表されることを特徴とする請求項1に記載の補強構造体。
【請求項3】
前記補強構造体が、六価クロムを含まないことを特徴とする請求項1あるいは2に記載の補強構造体。
【請求項4】
前記イミダゾールが、ベンゾイミダゾールを含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の補強構造体。
【請求項5】
前記亜鉛被覆金属要素が、前記セメント素地に導入される前に、前記化合物を含む層によって被覆されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の補強構造体。
【請求項6】
前記化合物が、前記セメント素地に加えられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の補強構造体。
【請求項7】
前記金属要素が、金属ワイヤ、金属コード、金属繊維、金属棒、金属シート、または金属メッシュを含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の補強構造体。
【請求項8】
前記金属要素が、鋼繊維を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の補強構造体。
【請求項9】
前記金属要素が、亜鉛合金皮膜を有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の補強構造体。
【請求項10】
イミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾールからなる群から選択される化合物を含む層によって被覆されることを特徴とするセメント素地を補強するための亜鉛被覆金属要素。
【請求項11】
前記層が、前記化合物を含む接着剤を含むことを特徴とする請求項10に記載の亜鉛被覆金属要素。
【請求項12】
前記イミダゾールが、ベンゾイミダゾールを含むことを特徴とする請求項10あるいは11に記載の亜鉛被覆金属要素。
【請求項13】
前記金属要素が、金属ワイヤ、金属コード、金属繊維、金属棒、金属シート、または金属メッシュを含むことを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の亜鉛被覆金属要素。
【請求項14】
前記金属要素が、鋼繊維を含むことを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載の亜鉛被覆金属要素。
【請求項15】
前記金属要素が、亜鉛合金皮膜を有することを特徴とする請求項10〜14のいずれか一項に記載の亜鉛被覆金属要素。
【請求項16】
亜鉛被覆金属要素を準備するステップと、
前記亜鉛被覆金属要素をセメント素地内に導入するステップと、
前記亜鉛被覆金属要素および/または前記セメント素地を、イミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾールからなる群から選択される化合物によって処理するステップとを含むことを特徴とするセメント素地に埋め込まれた亜鉛被覆金属要素の界面における水素ガスの発生を阻止する方法。
【請求項17】
前記イミダゾールが、ベンゾイミダゾールを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記処理が、前記化合物を前記セメント素地に加えることを含むことを特徴とする請求項16あるいは17に記載の方法。
【請求項19】
前記処理が、前記亜鉛被覆金属要素を前記セメント素地内に導入する前に、前記化合物を含む皮膜層を前記亜鉛被覆金属要素に形成することを含むことを特徴とする請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記皮膜層が、接着剤を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−525293(P2008−525293A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547471(P2007−547471)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056868
【国際公開番号】WO2006/067095
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(592014377)ナムローゼ・フェンノートシャップ・ベーカート・ソシエテ・アノニム (81)
【氏名又は名称原語表記】N V BEKAERT SOCIETE ANONYME
【Fターム(参考)】