セラミックス接着方法およびセラミックス接着装置
【課題】固形物を母材に接着する際、作業者や作業環境に左右されない剥離や破壊のし難い接着の方法論の提供。
【解決手段】固形物1を母材3に接着する接着方法およびその装置であって、気密手段6、接着剤の輸送・浸透を助長する手段、接着剤を供給する手段9、接着剤を吸引する手段10、吸引途中で接着剤を貯蔵する手段とを備えたことを特徴としている。
【解決手段】固形物1を母材3に接着する接着方法およびその装置であって、気密手段6、接着剤の輸送・浸透を助長する手段、接着剤を供給する手段9、接着剤を吸引する手段10、吸引途中で接着剤を貯蔵する手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
耐摩耗性やじん性の高いセラミックスは、単体ではなく他のものに接着して使われる用途が多い。しかし性質上、剥離や衝撃加重による破壊が起きる為使用が控えられる事が多かった。本発明は、これらセラミックス接着する際、接着能力と共に耐衝撃荷重などの強度的性能を向上するための接着方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電所、コンクリート構造物、鉄鋼構造物、造船所、あるいは機械等の製造現場等表面
摩耗が発生する現場では、耐摩耗性の向上を図りセラミックスが貼り付けられる事がある。このセラミックスは硬度が高く、じん性や耐摩耗性が鉄などの金属材料と比べて飛躍的に優れている為である。
【0003】
その為、摩耗する表面に耐摩耗性セラミックスを貼り付けると、摩耗が減り設備の消耗や破損が大幅に減り、信頼性の向上、安定運転時間の長期化、ひいてはメインテナンス期間の長期化が達成できる事が知られている。
【0004】
しかしセラミックスは熱膨張率、弾性係数、ポアンソン比、音速などが、その性能に従い他の素材、特に金属と大きく異なっており、その為貼り付け強度が弱い事が欠点である。
【0005】
その結果、貼り付けたセラミックスが剥れると、期待された性能が得られないだけではなく、破壊侵食が剥れた点に集中してしまい、却って性能を落としてしまう事がある。これがセラミックス素材の普及を妨げる大きな要因の一つとなっていた。
【0006】
セラミックスの強力な貼り付けはスタッドやテープに依る取り付けもあるが手作業による接着が自由度、強度、接着能力などの総合力で優れている。しかし、セラミックスの剥離は、接着した母材を落とすなどの外的、二次的な衝撃荷重の適用を除くと、この接着作業工程や接着構造の欠陥によって発生するものが殆どであった。接着剤の性能向上よりも欠陥のボトルネックが影響が大きく根本的な解決策とは、素材よりも接着手法にあると予てより考えられてきた。
【0007】
従来、型枠上の繊維層をフィルムで覆いフィルム内を一方から真空にし、もう一方から樹脂を注入して形成する建築部材の製造方法は知られている。(特許文献1)我々はセラミックスなどの固形物の母材への接着方法を追求し、合理的かつ抜本的な手法の確立に成功した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−320735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上記従来の問題を解決するため、作業者や作業環境に左右されないで剥離や破壊の生じ難いセラミックス接着方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ただ単に作業者が実施する作業、つまり手作業でセラミックスを並べ、それに接着剤をつけて母材に張り付け、押し付ける従来の手段と異なり、被接着板の接着面上に強化繊維を介在して隙間無くセラミックスを配置する第1の作業と、隙間無く配置した前記セラミックスを気密シートを介在して外気と区画する第2の作業と、前記セラミックスと気密シートの外気区画部に吸引具の吸引口を連通させる第3の作業と、前記セラミックスと気密シートの外気区画部に接着剤を1側から注入し、他側から吸引する接着剤を注入吸引する第4の作業とからなるセラミックス接着方法で、更に、隙間無く配置した前記セラミックスを気密シートを介在して外気と区画する部分を圧迫するようにした。また、被接着板の接着面上に強化繊維を介在して隙間無くセラミックスを配置した後、その周囲に気密用の密閉手段と、接着剤の輸送・浸透を助長する手段と、適用対象部位を圧迫する手段とを備えたセラミックス接着装置である。
【0011】
このような構成によれば、接着不良などの欠陥発生率が劇的に低下し、均一な接着性質にして、接着剤の充分な浸透、充填を行うことが環境や作業者の影響を排除して行うことができる。つまり、均一な配置、均一な接着剤の浸透、均一な接着厚さの設定、均一にして強力な押し付け力を得ることができる。
【0012】
また本発明にかかるセラミックス接着方法は、気密手段、接着剤の輸送・浸透を助長する手段、接着剤を供給する手段、接着剤を吸引する手段、吸引途中で接着剤を貯蔵する手段が適用対象近傍に最短距離で設けられている構成であることが好ましい。
【0013】
この好ましい構成によれば、作業者の作業効率を高め、損失材料を低減できる。またセラミックスと母材との接着を失敗無く、安定的かつ高信頼性の高く達成するシステムとすることができる。
【0014】
また本発明にかかるセラミックス接着方法は、気密対象となる母材に隙間無くセラミックスを配置した後、その周囲に気密用の密閉手段と、接着剤の輸送・浸透を助長する手段と、適用対象部位にセラミックスを圧迫する手段とを設けられている構成であることが好ましい。
【0015】
この好ましい構成によれば、容易に均一で、強力で、欠陥のほぼ発生しない接着をすることが可能となる。また均質な接着であるため、強度的性質が均一である。衝撃荷重が適用された時にも、同衝撃荷重が母材に均質に分散する結果、実質的な接着強度を高めることが可能となる。
さらに手動で接着剤を塗布した時には出来ない狭隘な部位にも接着剤を浸透させことができるため、より精密で徹底した接着を行うことが可能となる。これにより、周囲のセラミックスの接着強度による支持を受けることができ、またセラミックス端部に適用される衝撃荷重による欠けによる破損の可能性を大幅に低減させることができる。
【0016】
また、本発明にかかる接着方法は、前記接着剤を吸引する手段において、密閉されている領域を可能な限り真空度を真空に近づけられ、同時に、それを維持できる素材、部品によって構成されることが望ましい。
【0017】
この好ましい構成によれば、接着剤の浸透が速やかに行われ、かつ順次接着剤などの薬剤の浸透が行われているものの、空間的な取り残しがあり接着剤に取り囲まれた気泡や硬化、反応時に発生するガスを高い真空度により、吸引することが可能となる。
【0018】
また、本発明にかかる接着方法は前記接着剤の輸送・浸透を助長する手段において適用部位付近の気密用の密閉手段との間に若干の液体・気体の流動を助長する物体、例えば強化繊維などが適度に配置されている構成であることが好ましい。
【0019】
この好ましい構成によれば、接着剤の浸透が行われる際の吸引を全体的に、均一に行う事ができ、かつ順次接着剤の浸透が行われているものの、空間的な 取り残しがあり接着剤に取り囲まれた気泡や硬化、反応時に発生するガスを吸引する同時に吸引することが可能となる。
【0020】
また本発明にかかるセラミックス接着方法は、母材と被接着物であるセラミックスの間に、強化繊維などの細く、長く、しなやかな介在物を有しながら接着剤を含浸させて硬化させている構成であることが好ましい。
【0021】
この好ましい構成によれば、接着剤の浸透が行われる際の吸引で頻繁に見られる接着剤の含浸速度の不均一さによる気泡などの接着欠陥を誘発する要因を繊維の流れによって排出を促し、接着品質の均一化の確実さを向上させ、かつ接着強度の向上をもたらし、硬化後においては繊維が被接着物間を強度的に柔軟に結合し、前記衝撃荷重の母材への分散化を更に促進し、加えて、接着剤とは異なる衝撃荷重の伝播を行うことから、力を複数段階に分けて伝達する為、耐衝撃性を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、母材に対する固形物質に関する接着を均一の接着厚さで欠陥無く確実 に再現性をもって行うことが可能であり、それにより接着強度を高め、更には、細くて長くてしなやかな介在物を混入して耐衝撃性を含めた強度を向上させる、接着方法および接着装置を得ることができる。
特に本発明手法による接着は鉄鋼構造物、コンクリート構造物の内側、外側の表面の平面のみならず、機械部品の表面、曲面など、全ての母材に対して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる接着装置全体と各構成要素の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態にかかる接着装置全体と構成要素の作業状態の一例を示す斜視図である。
【図3】図2におけるa−a線断面図である。
【図4】図3における部分拡大図である。
【図5】本発明の接着装置における母材と固形物との構造の一例を示す断面図である。
【図6】従来装置における母材と固形物との構造を示す断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態にかかる接着装置全体と各構成要素の一例を示す斜視図である。
【図8】本発明の第二実施形態にかかる接着装置と構成要素の作業状態の一例を示す斜視図である。
【図9】図8におけるb−b線断面図である。
【図10】従来装置における母材と固形物との構造を示す断面図である。
【図11】本発明装置における母材と固形物との構造を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0025】
まず、本発明の第一実施形態にかかる接着方法および装置について説明する。図1〜4は、本発明の第一実施形態にかかる接着装置要素の構成する装置の一例を示す概略図である。具体的には図1のように作業台上の母材3に対して本接着方法を適用する部位に強化繊維2を敷いた後、被接着物である固形物のセラミックス1を配置し、同固形物のセラミックス1の上に、前記接着剤の輸送・浸透を助長する手段である接着剤の拡散を補助する網4を配置する。更に同網4の上に接着剤の輸送・浸透・剥離を助長する手段である化繊などの剥離性のあるシート5を配置する。
【0026】
一連の素材・要素が適用部位に配置終了後、その周辺に気密用の密閉手段6である厚みのある両面テープ或いは自己融着テープなどを貼り付け、よく馴染ませる。同時に接着剤を供給する手段であり空気や発生したガスなどを吸引する手段である真空吸引治具7を被接着物の両端に配置終了後、母材に貼り付けた気密用の密閉手段6の接着していない面に対して、適用対象部位を圧迫する手段である真空圧力に耐えるフィルム8を配置し貼り付ける。この時、母材3、シート5の両方に隙間無く貼り付ける必要がある。
【0027】
密閉した適用部位の中に配置した真空吸引治具7を接着剤を供給する手段である供給チューブ9や接着剤を吸引する手段である吸引チューブ10で結合する。結合後、フィルム8とチューブの間を機密性を確保する作業、すなわちシーラントや厚い両面テープや自己融着テープで目止めする。
【0028】
前記密閉した適用部位の中にある真空吸引治具7に結合された接着剤を供給する供給チューブを接着剤を貯蔵している貯蔵タンクに結合する。同時に吸引チューブ10は吸引中間タンク13を介して吸引用ポンプ14に結合される。
【0029】
本発明である接着装置に結合された吸引用ポンプ14による吸引を開始すると、密閉した適用部位の中の気体が先ず吸引される。
【0030】
前記接着装置に結合された吸引用ポンプ14で吸引を開始すると同時に、密閉した適用部位の中にある真空吸引治具7に結合されたを貯蔵タンク11から接着剤12が吸引され、同適用部位の中へ浸入する。接着剤12が同適用部位を満たした時点を見極め、同接着剤12貯蔵貯蔵タンク11に結合している供給チューブ9からの同接着剤12の供給を停止する。
【0031】
貯蔵タンク11に結合している供給チューブ9からの同接着剤の供給を停止した後も同装置に結合された吸引用ポンプ14の吸引を続けると、同適用部位の中に充満していた同接着剤は吸引チューブ10を介して吸引され、同チューブに結合している吸引中タンク13の中に供給され真空ポンプ14などの吸引する設備には吸引されない。最終的に同吸引中タンク13に同接着剤12が供給されなくなるが、この状態を保持したまま硬化、乾燥を待つ。
【0032】
前述した同適用部位は真空で吸引されていることによりフィルム8で真空度に同適用部位の面積分の圧力を負荷されている。同圧力は均一に被接着物を押し付け接着品質を均一化するのに役立つ。
【0033】
また同適用部位は真空で吸引されていることにより同適用部位には接着剤が隅々にまで浸入するがフィルム8は被接着物によって形成された表面の形状を超えて侵入することはなく、その結果、接着剤12はセラミックス1の側面にも充填され硬化、乾燥する。
本過程は図5にあるように本発明を使用した場合、密着して敷設したセラミックスの間であっても接着剤が充填されており、またその充填された接着剤に空洞が発生しておらず、密着して敷設したセラミックスの側面を支持しており、セラミックスは一体として付加される荷重に対して振舞う。その結果大きな一つの構造体となって荷重を分散し強度を高める事となる。それに対し図6にあるように本発明を使用しない場合、密着して敷設したセラミックスの間には接着剤が充填しておらず、側面における重量・荷重支持が行われず、発生した衝撃は1つのセラミックスに集中しやすくなり、強度的に低いものとなる。
【0034】
さらに同適用部位は真空で吸引されていることにより適用対象部位の同接着剤などが浸入する際に取り残された気体による空洞があったとしても、図4に示すようにで接着剤の輸送・浸透を助長する手段である網4や、同網4上に配置された接着剤の輸送・浸透・剥離シート5を介して表面付近に吸引されフィルム8に沿って吸引チューブ10を介して吸引され空洞は消失する。
【0035】
適用部位に適用される圧力は、手作業による接着より均一に被接着物を押し付けるため接着部分の厚さ、圧力、表面形状などの接着品質を均一化する。一般的に構造物の崩壊は、衝撃荷重が適用される部位の性質の不均一から強度的に弱い部位の破壊が始まるのをきっかけに拡大していく。しかし本発明の接着方法で接着された被接着物群は、母材自身やセラミックスなどの被接着物の欠陥が無い限り、高い確率で均質な構造を構成できるため、同程度の母材、被接着物の構成であれば、高い接着強度を達成できる。
【0036】
本発明の接着方法によれば接着剤は被接着物同士の側面にも充填されて硬化、乾燥するという、手作業による接着では達成できない機能を発揮する。セラミックスなどの硬度の高い部品を貼り付けて表面強度を上げる構造物の場合、硬度の高い部品の端部に打撃が及んだ時、ポアソン変形を吸収する内側の領域に対して露出している側面はそのポアソン変形を支えてくれるものがなく、その結果応力の分散不全により破壊し、それが全体の強度を落とす結果となる。
だが本発明の接着方法による接着剤は被接着物の側面にも充填する作用は個々のセラミックス硬度の高い部品の集合体ではなく、側面まで接着剤が充填された1つの大きなセラミックスなどの硬度の高い部品として機能し前記ポアソン変形を吸収する内側の領域を適用部位のほぼ全面に及ぼし構造物総体としての強度を飛躍的に向上できる。
【0037】
硬化、乾燥後一つの構造物の要素となった接着剤は高い強度を維持する上で均一な性状を極めて高いレベルで要求される。この欠陥により強度的不均一が発生し、同不均一な強度の部位で発生した破壊が全体の破壊にまで波及するからである。適用対象部位の接着剤が浸入する際に取り残された気体による空洞を消失する作用は、接着剤を使用する際に最も困難な空洞に依る欠陥を高い確率で消失させ本発明の接着方法の提供する接着品質、機能、強度を向上させる。
【実施例2】
【0038】
次に、本発明の第二実施形態にかかる接着方法および装置について説明する。図7〜9は、本発明の第二実施形態にかかる接着方法を構成する装置の一例を示す概略図である。具体的には図7のように一方向に境界を持たない曲面を持つ母材3に対して本接着方法を適用する部位に母材3に沿って強化繊維2を敷いた後、被接着物である固形物のセラミックス1を配置し、同固形物のセラミックス1を固定する。図8に示すような固定治具16を装着して母材3に固定し、同セラミックス1の上に、前記接着剤の輸送・浸透を助長する手段である接着剤の拡散を補助する網4を配置する。更に同網4上に接着剤の輸送・浸透・剥離を助長する手段である化繊などの剥離性のあるシート5を配置する。
【0039】
一連の素材・要素が適用部位に配置終了後、境界を持つ側の稜線に沿って気密用の密閉手段6である厚みのある両面テープ或いは自己融着テープなどを貼り付け、よく馴染ませる。同時に接着剤を供給する手段であり空気や発生したガスなどを吸引する手段である真空吸引治具7を被接着物の対峙する境界の両端に配置終了後、母材に貼り付けた気密用の密閉手段6の接着していない面に対して、適用対象部位を圧迫する手段である真空圧力に耐える円筒形のフィルム17を配置し貼り付ける。この時、母材3、シート5の両方に隙間無く貼り付ける必要がある。
【0040】
密閉した適用部位の中に配置した真空吸引治具7を接着剤を供給する手段である供給チューブ9や接着剤を吸引する手段である吸引チューブ10で結合する。結合後、フィルム17とチューブの間を機密性を確保する作業、すなわちシーラントや厚い両面テープや自己融着テープで目止めする。
【0041】
前記密閉した適用部位の中にある真空吸引治具7に結合された接着剤を供給する供給チューブ9を接着剤を貯蔵している貯蔵タンクに結合する。同時に吸引チューブ10は吸引中タンク13を介して吸引用ポンプ14に結合される。
【0042】
本発明である接着装置に結合された吸引用ポンプ14による吸引を開始すると、密閉した適用部位の中の気体が先ず吸引される。
【0043】
前記接着装置に結合された吸引用ポンプ14で吸引を開始すると同時に、密閉した適用部位の中にある真空吸引治具7に結合されたを貯蔵タンク11から接着剤12が吸引され、同適用部位の中へ浸入する。接着剤12が同適用部位を満たした時点を見極め、同接着剤12貯蔵貯蔵タンク11に結合している供給チューブ9からの同接着剤12の供給を停止する。
【0044】
貯蔵タンク11に結合している供給チューブ9からの同接着剤の供給を停止した後も同装置に結合された吸引用ポンプの吸引は続けると、同適用部位の中に充満していた同接着剤は吸引チューブ10を介して吸引され、同チューブに結合している吸引中タンク13の中に供給され真空ポンプなどの吸引する設備には吸引されない。最終的に同吸引中タンク13に同接着剤12が供給されなくなるが、この状態を保持したまま硬化、乾燥を待つ。
【0045】
前述した同適用部位は真空で吸引されていることによりフィルム8で真空度に同適用部位の面積分の圧力を負荷されている。同圧力は均一に被接着物を押し付け接着品質を均一化するのに役立つ。
【0046】
また同適用部位は真空で吸引されていることにより同適用部位には接着剤が隅々にまで浸入するがフィルム8は被接着物によって形成された表面の形状を超えて侵入することはなく、その結果、接着剤12はセラミックス1の側面にも充填され硬化、乾燥する。本過程は図10にあるように本発明を使用した場合、密着して敷設したセラミックスの間であっても接着剤が充填されており、またその充填された接着剤に空洞が発生しておらず、密着して敷設したセラミックスの側面を支持しており、セラミックスは一体として付加される荷重に対して振舞う。その結果大きな一つの構造体となって荷重を分散し強度を高める事となる。)、図11にあるように本発明を使用しない場合、密着して敷設したセラミックスの間には接着剤が充填しておらず、側面における重量・荷重支持が行われず、発生した衝撃は1つのセラミックスに集中しやすくなり、強度的に低いものとなる。
【0047】
さらに同適用部位は真空で吸引されていることにより適用対象部位の同接着剤などが浸入する際に取り残された気体による空洞があったとしても、図9に示すようにで接着剤の輸送・浸透を助長する手段である網4や、同網4上に配置された接着剤の輸送・浸透・剥離シート5を介して表面付近に吸引されフィルム17に沿って吸引チューブ10を介して吸引され空洞は消失する。
【0048】
適用部位に適用される圧力は、手作業による接着より均一に被接着物を押し付けるため接着部分の厚さ、圧力、表面形状などの接着品質を均一化する。一般的に構造物の崩壊は、衝撃荷重が適用される部位の性質の不均一から強度的に弱い部位の破壊が始まるのをきっかけに拡大していく。しかし本接着方法および装置で接着された被接着物群は、母材自身やセラミックスなどの被接着物の欠陥が無い場合、高い確率で均質な構造を構成できるため、同程度の母材、被接着物の構成であれば、高い強度を達成できる。
【0049】
本接着方法および装置により接着剤は被接着物同士の側面にも充填されて硬化、乾燥するという、手作業による接着では達成できない機能を発揮する。セラミックスなどの硬度の高い部品を貼り付けて表面強度を上げる構造物の場合、硬度の高い部品の端部に打撃が及んだ時、ポアソン変形を吸収する内側の領域に対して露出している側面はそのポアソン変形を支えてくれるものがなく、その結果応力の分散不全により破壊し、それが全体の強度を落とす結果となる。
だが本接着方法および装置による接着剤は被接着物の側面にも充填する作用は個々のセラミックス硬度の高い部品の集合体ではなく、側面まで接着剤が充填された1つの大きなセラミックスなどの硬度の高い部品として機能し前記ポアソン変形を吸収する内側の領域を適用部位のほぼ全面に及ぼし構造物総体としての強度を飛躍的に向上できる。
【0050】
硬化、乾燥後一つの構造物の要素となった接着剤は高い強度を維持する上で均一な性状を極めて高いレベルで要求される。この欠陥により強度的不均一が発生し、同不均一な強度の部位で発生した破壊が全体の破壊にまで波及するからである。適用対象部位の接着剤が浸入する際に取り残された気体による空洞を消失する作用は、接着剤を使用する際に最も困難な空洞に依る欠陥を高い確率で消失させ本接着方法および装置の提供する接着品質、機能、強度を向上させる。
なお、本発明の実施例1として、セラミックスの接着面への押圧や気密シートに依るものについて説明したが、風船状のものを膨らませて押圧するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明はVRTM法を中心とした真空吸引による成形技術を応用した接着方法および装置の適用である。先行特許には簡便さや均一性に着目したものが多く、主にハンドレイアップ法の代替案としてのものであった。しかし同技術が接着と言う限られた領域では新たに強力さであり、これまでに無かったセラミックス同士の側面まで接着剤を充填できるという機能を有しており、その結果飛躍的強度の向上を見せた。
また同時に、これまで接着においては被接着物と母材の間には接着剤の介在のみを念頭に置いており、介在物はゴミや埃、塵などと同様に接着品質、強度を落とす不純物と見られていたが、本発明においては逆に接着品質を向上させ、更には接着強度を上げる重要な要素として目を向け、その特性や可能性を提示している。
【0052】
半導体工場においては1980年代にパーティクル(浮遊微小粒子)除去技術の効果の 発見、向上により歩留まりが大幅に向上し産業の発展をもたらしたが、同じく珪素製品であるセラミックスなどの硬度の高い部品も、そのじん性、硬度、耐摩耗性を認められてはいても他の物質と大きく異なる物性により結合して使用することが困難であった。
だが本発明による接着技術の向上は、今後摩耗や硬度を要求される分野での利用の道を開き大型プラント内部粉体輸送部の寿命長期化、サンドブラストの交換期間の長期化、また耐熱タイルを曲面に大量に貼り付ける宇宙船の再突入カプセルのアブレーション素材や耐熱タイルの接着においても利用できるものである。
また介在物の混入は、欠陥要素であるガリウムや砒素を混入して新たな特性を生み出した半導体の如く、今後母材、被接着物、接着剤以外の第4の素材としての可能性を示している。
【0053】
これまで接着という作業では接着剤の性能向上のみが焦点となっていたが、接着にまつわる不具合は、接着方法による欠陥で発生するものが殆どであった。接着剤の性能向上よりも欠陥のボトルネックが影響が大きく根本的な解決とは、素材よりも手法にあるとの視点を据えた珍しいものであると言える。
しかし本発明により高性能な接着剤の使用方法に目が向けば、より高い日本の製品の品質をその限界まで発揮する道が開ける事であり、産業発展に多大に寄与する事は云うまでも無い。
【符号の説明】
【0054】
1…セラミックス
2…強化繊維
3…母材
4…網
5…浸透・剥離シート
6…密閉手段
7…吸引治具
8…フィルム
9…供給チューブ
10…吸引チューブ
11…貯蔵タンク
12…接着剤
13…吸引中間タンク
14…吸引用ポンプ
15…気泡
16…固定治具
17…円筒状フィルム
18…密着して配置したセラミックス間に存在する微小な隙間
【技術分野】
【0001】
耐摩耗性やじん性の高いセラミックスは、単体ではなく他のものに接着して使われる用途が多い。しかし性質上、剥離や衝撃加重による破壊が起きる為使用が控えられる事が多かった。本発明は、これらセラミックス接着する際、接着能力と共に耐衝撃荷重などの強度的性能を向上するための接着方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電所、コンクリート構造物、鉄鋼構造物、造船所、あるいは機械等の製造現場等表面
摩耗が発生する現場では、耐摩耗性の向上を図りセラミックスが貼り付けられる事がある。このセラミックスは硬度が高く、じん性や耐摩耗性が鉄などの金属材料と比べて飛躍的に優れている為である。
【0003】
その為、摩耗する表面に耐摩耗性セラミックスを貼り付けると、摩耗が減り設備の消耗や破損が大幅に減り、信頼性の向上、安定運転時間の長期化、ひいてはメインテナンス期間の長期化が達成できる事が知られている。
【0004】
しかしセラミックスは熱膨張率、弾性係数、ポアンソン比、音速などが、その性能に従い他の素材、特に金属と大きく異なっており、その為貼り付け強度が弱い事が欠点である。
【0005】
その結果、貼り付けたセラミックスが剥れると、期待された性能が得られないだけではなく、破壊侵食が剥れた点に集中してしまい、却って性能を落としてしまう事がある。これがセラミックス素材の普及を妨げる大きな要因の一つとなっていた。
【0006】
セラミックスの強力な貼り付けはスタッドやテープに依る取り付けもあるが手作業による接着が自由度、強度、接着能力などの総合力で優れている。しかし、セラミックスの剥離は、接着した母材を落とすなどの外的、二次的な衝撃荷重の適用を除くと、この接着作業工程や接着構造の欠陥によって発生するものが殆どであった。接着剤の性能向上よりも欠陥のボトルネックが影響が大きく根本的な解決策とは、素材よりも接着手法にあると予てより考えられてきた。
【0007】
従来、型枠上の繊維層をフィルムで覆いフィルム内を一方から真空にし、もう一方から樹脂を注入して形成する建築部材の製造方法は知られている。(特許文献1)我々はセラミックスなどの固形物の母材への接着方法を追求し、合理的かつ抜本的な手法の確立に成功した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−320735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上記従来の問題を解決するため、作業者や作業環境に左右されないで剥離や破壊の生じ難いセラミックス接着方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ただ単に作業者が実施する作業、つまり手作業でセラミックスを並べ、それに接着剤をつけて母材に張り付け、押し付ける従来の手段と異なり、被接着板の接着面上に強化繊維を介在して隙間無くセラミックスを配置する第1の作業と、隙間無く配置した前記セラミックスを気密シートを介在して外気と区画する第2の作業と、前記セラミックスと気密シートの外気区画部に吸引具の吸引口を連通させる第3の作業と、前記セラミックスと気密シートの外気区画部に接着剤を1側から注入し、他側から吸引する接着剤を注入吸引する第4の作業とからなるセラミックス接着方法で、更に、隙間無く配置した前記セラミックスを気密シートを介在して外気と区画する部分を圧迫するようにした。また、被接着板の接着面上に強化繊維を介在して隙間無くセラミックスを配置した後、その周囲に気密用の密閉手段と、接着剤の輸送・浸透を助長する手段と、適用対象部位を圧迫する手段とを備えたセラミックス接着装置である。
【0011】
このような構成によれば、接着不良などの欠陥発生率が劇的に低下し、均一な接着性質にして、接着剤の充分な浸透、充填を行うことが環境や作業者の影響を排除して行うことができる。つまり、均一な配置、均一な接着剤の浸透、均一な接着厚さの設定、均一にして強力な押し付け力を得ることができる。
【0012】
また本発明にかかるセラミックス接着方法は、気密手段、接着剤の輸送・浸透を助長する手段、接着剤を供給する手段、接着剤を吸引する手段、吸引途中で接着剤を貯蔵する手段が適用対象近傍に最短距離で設けられている構成であることが好ましい。
【0013】
この好ましい構成によれば、作業者の作業効率を高め、損失材料を低減できる。またセラミックスと母材との接着を失敗無く、安定的かつ高信頼性の高く達成するシステムとすることができる。
【0014】
また本発明にかかるセラミックス接着方法は、気密対象となる母材に隙間無くセラミックスを配置した後、その周囲に気密用の密閉手段と、接着剤の輸送・浸透を助長する手段と、適用対象部位にセラミックスを圧迫する手段とを設けられている構成であることが好ましい。
【0015】
この好ましい構成によれば、容易に均一で、強力で、欠陥のほぼ発生しない接着をすることが可能となる。また均質な接着であるため、強度的性質が均一である。衝撃荷重が適用された時にも、同衝撃荷重が母材に均質に分散する結果、実質的な接着強度を高めることが可能となる。
さらに手動で接着剤を塗布した時には出来ない狭隘な部位にも接着剤を浸透させことができるため、より精密で徹底した接着を行うことが可能となる。これにより、周囲のセラミックスの接着強度による支持を受けることができ、またセラミックス端部に適用される衝撃荷重による欠けによる破損の可能性を大幅に低減させることができる。
【0016】
また、本発明にかかる接着方法は、前記接着剤を吸引する手段において、密閉されている領域を可能な限り真空度を真空に近づけられ、同時に、それを維持できる素材、部品によって構成されることが望ましい。
【0017】
この好ましい構成によれば、接着剤の浸透が速やかに行われ、かつ順次接着剤などの薬剤の浸透が行われているものの、空間的な取り残しがあり接着剤に取り囲まれた気泡や硬化、反応時に発生するガスを高い真空度により、吸引することが可能となる。
【0018】
また、本発明にかかる接着方法は前記接着剤の輸送・浸透を助長する手段において適用部位付近の気密用の密閉手段との間に若干の液体・気体の流動を助長する物体、例えば強化繊維などが適度に配置されている構成であることが好ましい。
【0019】
この好ましい構成によれば、接着剤の浸透が行われる際の吸引を全体的に、均一に行う事ができ、かつ順次接着剤の浸透が行われているものの、空間的な 取り残しがあり接着剤に取り囲まれた気泡や硬化、反応時に発生するガスを吸引する同時に吸引することが可能となる。
【0020】
また本発明にかかるセラミックス接着方法は、母材と被接着物であるセラミックスの間に、強化繊維などの細く、長く、しなやかな介在物を有しながら接着剤を含浸させて硬化させている構成であることが好ましい。
【0021】
この好ましい構成によれば、接着剤の浸透が行われる際の吸引で頻繁に見られる接着剤の含浸速度の不均一さによる気泡などの接着欠陥を誘発する要因を繊維の流れによって排出を促し、接着品質の均一化の確実さを向上させ、かつ接着強度の向上をもたらし、硬化後においては繊維が被接着物間を強度的に柔軟に結合し、前記衝撃荷重の母材への分散化を更に促進し、加えて、接着剤とは異なる衝撃荷重の伝播を行うことから、力を複数段階に分けて伝達する為、耐衝撃性を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、母材に対する固形物質に関する接着を均一の接着厚さで欠陥無く確実 に再現性をもって行うことが可能であり、それにより接着強度を高め、更には、細くて長くてしなやかな介在物を混入して耐衝撃性を含めた強度を向上させる、接着方法および接着装置を得ることができる。
特に本発明手法による接着は鉄鋼構造物、コンクリート構造物の内側、外側の表面の平面のみならず、機械部品の表面、曲面など、全ての母材に対して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる接着装置全体と各構成要素の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態にかかる接着装置全体と構成要素の作業状態の一例を示す斜視図である。
【図3】図2におけるa−a線断面図である。
【図4】図3における部分拡大図である。
【図5】本発明の接着装置における母材と固形物との構造の一例を示す断面図である。
【図6】従来装置における母材と固形物との構造を示す断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態にかかる接着装置全体と各構成要素の一例を示す斜視図である。
【図8】本発明の第二実施形態にかかる接着装置と構成要素の作業状態の一例を示す斜視図である。
【図9】図8におけるb−b線断面図である。
【図10】従来装置における母材と固形物との構造を示す断面図である。
【図11】本発明装置における母材と固形物との構造を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0025】
まず、本発明の第一実施形態にかかる接着方法および装置について説明する。図1〜4は、本発明の第一実施形態にかかる接着装置要素の構成する装置の一例を示す概略図である。具体的には図1のように作業台上の母材3に対して本接着方法を適用する部位に強化繊維2を敷いた後、被接着物である固形物のセラミックス1を配置し、同固形物のセラミックス1の上に、前記接着剤の輸送・浸透を助長する手段である接着剤の拡散を補助する網4を配置する。更に同網4の上に接着剤の輸送・浸透・剥離を助長する手段である化繊などの剥離性のあるシート5を配置する。
【0026】
一連の素材・要素が適用部位に配置終了後、その周辺に気密用の密閉手段6である厚みのある両面テープ或いは自己融着テープなどを貼り付け、よく馴染ませる。同時に接着剤を供給する手段であり空気や発生したガスなどを吸引する手段である真空吸引治具7を被接着物の両端に配置終了後、母材に貼り付けた気密用の密閉手段6の接着していない面に対して、適用対象部位を圧迫する手段である真空圧力に耐えるフィルム8を配置し貼り付ける。この時、母材3、シート5の両方に隙間無く貼り付ける必要がある。
【0027】
密閉した適用部位の中に配置した真空吸引治具7を接着剤を供給する手段である供給チューブ9や接着剤を吸引する手段である吸引チューブ10で結合する。結合後、フィルム8とチューブの間を機密性を確保する作業、すなわちシーラントや厚い両面テープや自己融着テープで目止めする。
【0028】
前記密閉した適用部位の中にある真空吸引治具7に結合された接着剤を供給する供給チューブを接着剤を貯蔵している貯蔵タンクに結合する。同時に吸引チューブ10は吸引中間タンク13を介して吸引用ポンプ14に結合される。
【0029】
本発明である接着装置に結合された吸引用ポンプ14による吸引を開始すると、密閉した適用部位の中の気体が先ず吸引される。
【0030】
前記接着装置に結合された吸引用ポンプ14で吸引を開始すると同時に、密閉した適用部位の中にある真空吸引治具7に結合されたを貯蔵タンク11から接着剤12が吸引され、同適用部位の中へ浸入する。接着剤12が同適用部位を満たした時点を見極め、同接着剤12貯蔵貯蔵タンク11に結合している供給チューブ9からの同接着剤12の供給を停止する。
【0031】
貯蔵タンク11に結合している供給チューブ9からの同接着剤の供給を停止した後も同装置に結合された吸引用ポンプ14の吸引を続けると、同適用部位の中に充満していた同接着剤は吸引チューブ10を介して吸引され、同チューブに結合している吸引中タンク13の中に供給され真空ポンプ14などの吸引する設備には吸引されない。最終的に同吸引中タンク13に同接着剤12が供給されなくなるが、この状態を保持したまま硬化、乾燥を待つ。
【0032】
前述した同適用部位は真空で吸引されていることによりフィルム8で真空度に同適用部位の面積分の圧力を負荷されている。同圧力は均一に被接着物を押し付け接着品質を均一化するのに役立つ。
【0033】
また同適用部位は真空で吸引されていることにより同適用部位には接着剤が隅々にまで浸入するがフィルム8は被接着物によって形成された表面の形状を超えて侵入することはなく、その結果、接着剤12はセラミックス1の側面にも充填され硬化、乾燥する。
本過程は図5にあるように本発明を使用した場合、密着して敷設したセラミックスの間であっても接着剤が充填されており、またその充填された接着剤に空洞が発生しておらず、密着して敷設したセラミックスの側面を支持しており、セラミックスは一体として付加される荷重に対して振舞う。その結果大きな一つの構造体となって荷重を分散し強度を高める事となる。それに対し図6にあるように本発明を使用しない場合、密着して敷設したセラミックスの間には接着剤が充填しておらず、側面における重量・荷重支持が行われず、発生した衝撃は1つのセラミックスに集中しやすくなり、強度的に低いものとなる。
【0034】
さらに同適用部位は真空で吸引されていることにより適用対象部位の同接着剤などが浸入する際に取り残された気体による空洞があったとしても、図4に示すようにで接着剤の輸送・浸透を助長する手段である網4や、同網4上に配置された接着剤の輸送・浸透・剥離シート5を介して表面付近に吸引されフィルム8に沿って吸引チューブ10を介して吸引され空洞は消失する。
【0035】
適用部位に適用される圧力は、手作業による接着より均一に被接着物を押し付けるため接着部分の厚さ、圧力、表面形状などの接着品質を均一化する。一般的に構造物の崩壊は、衝撃荷重が適用される部位の性質の不均一から強度的に弱い部位の破壊が始まるのをきっかけに拡大していく。しかし本発明の接着方法で接着された被接着物群は、母材自身やセラミックスなどの被接着物の欠陥が無い限り、高い確率で均質な構造を構成できるため、同程度の母材、被接着物の構成であれば、高い接着強度を達成できる。
【0036】
本発明の接着方法によれば接着剤は被接着物同士の側面にも充填されて硬化、乾燥するという、手作業による接着では達成できない機能を発揮する。セラミックスなどの硬度の高い部品を貼り付けて表面強度を上げる構造物の場合、硬度の高い部品の端部に打撃が及んだ時、ポアソン変形を吸収する内側の領域に対して露出している側面はそのポアソン変形を支えてくれるものがなく、その結果応力の分散不全により破壊し、それが全体の強度を落とす結果となる。
だが本発明の接着方法による接着剤は被接着物の側面にも充填する作用は個々のセラミックス硬度の高い部品の集合体ではなく、側面まで接着剤が充填された1つの大きなセラミックスなどの硬度の高い部品として機能し前記ポアソン変形を吸収する内側の領域を適用部位のほぼ全面に及ぼし構造物総体としての強度を飛躍的に向上できる。
【0037】
硬化、乾燥後一つの構造物の要素となった接着剤は高い強度を維持する上で均一な性状を極めて高いレベルで要求される。この欠陥により強度的不均一が発生し、同不均一な強度の部位で発生した破壊が全体の破壊にまで波及するからである。適用対象部位の接着剤が浸入する際に取り残された気体による空洞を消失する作用は、接着剤を使用する際に最も困難な空洞に依る欠陥を高い確率で消失させ本発明の接着方法の提供する接着品質、機能、強度を向上させる。
【実施例2】
【0038】
次に、本発明の第二実施形態にかかる接着方法および装置について説明する。図7〜9は、本発明の第二実施形態にかかる接着方法を構成する装置の一例を示す概略図である。具体的には図7のように一方向に境界を持たない曲面を持つ母材3に対して本接着方法を適用する部位に母材3に沿って強化繊維2を敷いた後、被接着物である固形物のセラミックス1を配置し、同固形物のセラミックス1を固定する。図8に示すような固定治具16を装着して母材3に固定し、同セラミックス1の上に、前記接着剤の輸送・浸透を助長する手段である接着剤の拡散を補助する網4を配置する。更に同網4上に接着剤の輸送・浸透・剥離を助長する手段である化繊などの剥離性のあるシート5を配置する。
【0039】
一連の素材・要素が適用部位に配置終了後、境界を持つ側の稜線に沿って気密用の密閉手段6である厚みのある両面テープ或いは自己融着テープなどを貼り付け、よく馴染ませる。同時に接着剤を供給する手段であり空気や発生したガスなどを吸引する手段である真空吸引治具7を被接着物の対峙する境界の両端に配置終了後、母材に貼り付けた気密用の密閉手段6の接着していない面に対して、適用対象部位を圧迫する手段である真空圧力に耐える円筒形のフィルム17を配置し貼り付ける。この時、母材3、シート5の両方に隙間無く貼り付ける必要がある。
【0040】
密閉した適用部位の中に配置した真空吸引治具7を接着剤を供給する手段である供給チューブ9や接着剤を吸引する手段である吸引チューブ10で結合する。結合後、フィルム17とチューブの間を機密性を確保する作業、すなわちシーラントや厚い両面テープや自己融着テープで目止めする。
【0041】
前記密閉した適用部位の中にある真空吸引治具7に結合された接着剤を供給する供給チューブ9を接着剤を貯蔵している貯蔵タンクに結合する。同時に吸引チューブ10は吸引中タンク13を介して吸引用ポンプ14に結合される。
【0042】
本発明である接着装置に結合された吸引用ポンプ14による吸引を開始すると、密閉した適用部位の中の気体が先ず吸引される。
【0043】
前記接着装置に結合された吸引用ポンプ14で吸引を開始すると同時に、密閉した適用部位の中にある真空吸引治具7に結合されたを貯蔵タンク11から接着剤12が吸引され、同適用部位の中へ浸入する。接着剤12が同適用部位を満たした時点を見極め、同接着剤12貯蔵貯蔵タンク11に結合している供給チューブ9からの同接着剤12の供給を停止する。
【0044】
貯蔵タンク11に結合している供給チューブ9からの同接着剤の供給を停止した後も同装置に結合された吸引用ポンプの吸引は続けると、同適用部位の中に充満していた同接着剤は吸引チューブ10を介して吸引され、同チューブに結合している吸引中タンク13の中に供給され真空ポンプなどの吸引する設備には吸引されない。最終的に同吸引中タンク13に同接着剤12が供給されなくなるが、この状態を保持したまま硬化、乾燥を待つ。
【0045】
前述した同適用部位は真空で吸引されていることによりフィルム8で真空度に同適用部位の面積分の圧力を負荷されている。同圧力は均一に被接着物を押し付け接着品質を均一化するのに役立つ。
【0046】
また同適用部位は真空で吸引されていることにより同適用部位には接着剤が隅々にまで浸入するがフィルム8は被接着物によって形成された表面の形状を超えて侵入することはなく、その結果、接着剤12はセラミックス1の側面にも充填され硬化、乾燥する。本過程は図10にあるように本発明を使用した場合、密着して敷設したセラミックスの間であっても接着剤が充填されており、またその充填された接着剤に空洞が発生しておらず、密着して敷設したセラミックスの側面を支持しており、セラミックスは一体として付加される荷重に対して振舞う。その結果大きな一つの構造体となって荷重を分散し強度を高める事となる。)、図11にあるように本発明を使用しない場合、密着して敷設したセラミックスの間には接着剤が充填しておらず、側面における重量・荷重支持が行われず、発生した衝撃は1つのセラミックスに集中しやすくなり、強度的に低いものとなる。
【0047】
さらに同適用部位は真空で吸引されていることにより適用対象部位の同接着剤などが浸入する際に取り残された気体による空洞があったとしても、図9に示すようにで接着剤の輸送・浸透を助長する手段である網4や、同網4上に配置された接着剤の輸送・浸透・剥離シート5を介して表面付近に吸引されフィルム17に沿って吸引チューブ10を介して吸引され空洞は消失する。
【0048】
適用部位に適用される圧力は、手作業による接着より均一に被接着物を押し付けるため接着部分の厚さ、圧力、表面形状などの接着品質を均一化する。一般的に構造物の崩壊は、衝撃荷重が適用される部位の性質の不均一から強度的に弱い部位の破壊が始まるのをきっかけに拡大していく。しかし本接着方法および装置で接着された被接着物群は、母材自身やセラミックスなどの被接着物の欠陥が無い場合、高い確率で均質な構造を構成できるため、同程度の母材、被接着物の構成であれば、高い強度を達成できる。
【0049】
本接着方法および装置により接着剤は被接着物同士の側面にも充填されて硬化、乾燥するという、手作業による接着では達成できない機能を発揮する。セラミックスなどの硬度の高い部品を貼り付けて表面強度を上げる構造物の場合、硬度の高い部品の端部に打撃が及んだ時、ポアソン変形を吸収する内側の領域に対して露出している側面はそのポアソン変形を支えてくれるものがなく、その結果応力の分散不全により破壊し、それが全体の強度を落とす結果となる。
だが本接着方法および装置による接着剤は被接着物の側面にも充填する作用は個々のセラミックス硬度の高い部品の集合体ではなく、側面まで接着剤が充填された1つの大きなセラミックスなどの硬度の高い部品として機能し前記ポアソン変形を吸収する内側の領域を適用部位のほぼ全面に及ぼし構造物総体としての強度を飛躍的に向上できる。
【0050】
硬化、乾燥後一つの構造物の要素となった接着剤は高い強度を維持する上で均一な性状を極めて高いレベルで要求される。この欠陥により強度的不均一が発生し、同不均一な強度の部位で発生した破壊が全体の破壊にまで波及するからである。適用対象部位の接着剤が浸入する際に取り残された気体による空洞を消失する作用は、接着剤を使用する際に最も困難な空洞に依る欠陥を高い確率で消失させ本接着方法および装置の提供する接着品質、機能、強度を向上させる。
なお、本発明の実施例1として、セラミックスの接着面への押圧や気密シートに依るものについて説明したが、風船状のものを膨らませて押圧するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明はVRTM法を中心とした真空吸引による成形技術を応用した接着方法および装置の適用である。先行特許には簡便さや均一性に着目したものが多く、主にハンドレイアップ法の代替案としてのものであった。しかし同技術が接着と言う限られた領域では新たに強力さであり、これまでに無かったセラミックス同士の側面まで接着剤を充填できるという機能を有しており、その結果飛躍的強度の向上を見せた。
また同時に、これまで接着においては被接着物と母材の間には接着剤の介在のみを念頭に置いており、介在物はゴミや埃、塵などと同様に接着品質、強度を落とす不純物と見られていたが、本発明においては逆に接着品質を向上させ、更には接着強度を上げる重要な要素として目を向け、その特性や可能性を提示している。
【0052】
半導体工場においては1980年代にパーティクル(浮遊微小粒子)除去技術の効果の 発見、向上により歩留まりが大幅に向上し産業の発展をもたらしたが、同じく珪素製品であるセラミックスなどの硬度の高い部品も、そのじん性、硬度、耐摩耗性を認められてはいても他の物質と大きく異なる物性により結合して使用することが困難であった。
だが本発明による接着技術の向上は、今後摩耗や硬度を要求される分野での利用の道を開き大型プラント内部粉体輸送部の寿命長期化、サンドブラストの交換期間の長期化、また耐熱タイルを曲面に大量に貼り付ける宇宙船の再突入カプセルのアブレーション素材や耐熱タイルの接着においても利用できるものである。
また介在物の混入は、欠陥要素であるガリウムや砒素を混入して新たな特性を生み出した半導体の如く、今後母材、被接着物、接着剤以外の第4の素材としての可能性を示している。
【0053】
これまで接着という作業では接着剤の性能向上のみが焦点となっていたが、接着にまつわる不具合は、接着方法による欠陥で発生するものが殆どであった。接着剤の性能向上よりも欠陥のボトルネックが影響が大きく根本的な解決とは、素材よりも手法にあるとの視点を据えた珍しいものであると言える。
しかし本発明により高性能な接着剤の使用方法に目が向けば、より高い日本の製品の品質をその限界まで発揮する道が開ける事であり、産業発展に多大に寄与する事は云うまでも無い。
【符号の説明】
【0054】
1…セラミックス
2…強化繊維
3…母材
4…網
5…浸透・剥離シート
6…密閉手段
7…吸引治具
8…フィルム
9…供給チューブ
10…吸引チューブ
11…貯蔵タンク
12…接着剤
13…吸引中間タンク
14…吸引用ポンプ
15…気泡
16…固定治具
17…円筒状フィルム
18…密着して配置したセラミックス間に存在する微小な隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接着板の接着面上に強化繊維を介在して隙間無くセラミックスを配置する第1の作業と、隙間無く配置した前記セラミックスを気密シートを介在して外気と区画する第2の作業と、前記セラミックスと気密シートの外気区画部に吸引具の吸引口を連通させる第3の作業と、前記セラミックスと気密シートの外気区画部に接着剤を1方向側から注入し、他側から吸引する接着剤を注入吸引する第4の作業とからなることを特徴とするセラミックス接着方法。
【請求項2】
隙間無く配置した前記セラミックスを気密シートを介在して外気と区画する部分を被接着板側に圧迫した後、所定の時間圧迫を持続することを特徴とする請求項1に記載のセラミックス接着方法。
【請求項3】
被接着板の接着面上に強化繊維を介在して隙間無くセラミックスを配置した後、同セラミックスの周囲に形成された気密室用の密閉手段と、前記気密室への接着剤の輸送・浸透を助長する手段と、接着適用対象部位を圧迫する手段とからなることを特徴とするセラミックス接着装置。
【請求項1】
被接着板の接着面上に強化繊維を介在して隙間無くセラミックスを配置する第1の作業と、隙間無く配置した前記セラミックスを気密シートを介在して外気と区画する第2の作業と、前記セラミックスと気密シートの外気区画部に吸引具の吸引口を連通させる第3の作業と、前記セラミックスと気密シートの外気区画部に接着剤を1方向側から注入し、他側から吸引する接着剤を注入吸引する第4の作業とからなることを特徴とするセラミックス接着方法。
【請求項2】
隙間無く配置した前記セラミックスを気密シートを介在して外気と区画する部分を被接着板側に圧迫した後、所定の時間圧迫を持続することを特徴とする請求項1に記載のセラミックス接着方法。
【請求項3】
被接着板の接着面上に強化繊維を介在して隙間無くセラミックスを配置した後、同セラミックスの周囲に形成された気密室用の密閉手段と、前記気密室への接着剤の輸送・浸透を助長する手段と、接着適用対象部位を圧迫する手段とからなることを特徴とするセラミックス接着装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−177002(P2012−177002A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39427(P2011−39427)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(595078161)久保工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(595078161)久保工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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