説明

セラミックス製品の製造方法、及びセラミックス成形用鋳型

【課題】鋳込み成形したセラミックス成形体が密度が均一でクラックも発生せずに、セラミックス製品を安定して製造可能な方法を提供する。
【解決手段】厚さが0.1mm〜10.0mm、通気度が0.1cm/cm・秒〜50cm/cm・秒の合成樹脂製フィルター11と、フィルター11を支持し、通水性を有する支持型12とを備える鋳型10に、セラミックス粉末を分散させたスラリー21を注入する工程と、スラリー21の水分をフィルター11及び支持型12を介して排水させると共に、セラミックス粉末を鋳型10に着肉させ、セラミックス成形体を形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス製品の製造方法、及びこれに用いられるセラミックス成形用鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や液晶の製造装置は大型化している。これに伴い、これら装置の構造部材に用いられ、セラミックス成形体を焼成したセラミックス製品も大型化している。
【0003】
従来、大型セラミックス成形体は、製品形状に応じた箱状の石膏型にスラリーを加圧注入して固化させる固形鋳込み成形によって製造されてきた。スラリーを加圧すると同時に、石膏型に流し込まれたスラリー中の水分が多孔体である石膏の毛管吸引力により強制的に除去されることによって、成形体が形成される。
【0004】
しかし、石膏型を用いた場合、石膏型からのCaイオン混入により、成形体が汚染を受け、緻密化不良やクラックが発生するという問題があった。また、成形の初期段階で強力な毛管吸引力が作用して急速に着肉した部分と、成形の中期段階から後期段階に亘って緩やかに着肉した部分とでは成形体の密度が異なり、得られた成形体をそのまま焼成すると反りや変形が発生する。よって、得られた成形体の石膏型近傍部分を生加工で除去する必要があり、生産コストが上昇するという問題があった。
【0005】
そこで、成形体の汚染を防止するために、石膏以外のセラミックスや樹脂からなる多孔質体からなる鋳型や、セラミックス多孔質体型と紙製や布製のフィルターとの2重構造からなる鋳型を用いることが提案されている(例えば、特許文献1−3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−25659号公報(特に段落0002)
【特許文献2】特開平6−262612号公報
【特許文献3】特開2003−205508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、セラミックス多孔質体や樹脂多孔質体は、石膏と比較して気孔率が高く、鋳型が肉厚となるため、成形の初期段階における急速な着肉が石膏型と同様に発生するという問題がある。さらに、使用回数の増加に伴い、鋳型の気孔率や吸水率のばらつきが顕著となり、成形体の密度のばらつきが大きくなる。そのため、特に全長が1メートルを超える大型品を成形する場合、石膏型を用いた場合と同様に成形体にクラックが発生するという問題がある。
【0008】
また、2重構造からなる鋳型を用いた場合、紙製又は布製フィルターは成形体と強く密着するため、成形体にクラックが発生するという問題がある。さらに、固形鋳込み成形に2重構造からなる鋳型を用いた場合、大きな加圧力を印加してスラリー中の水分を強制的に排出するため、フィルターの破損、劣化が著しいという問題がある。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、鋳込み成形したセラミックス成形体が密度が均一でクラックも発生せずに、セラミックス製品を安定して製造可能な方法、及びこれに用いられるセラミックス成形用鋳型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のセラミックス製品の製造方法は、厚さが0.1mm〜10.0mm、通気度が0.1cm/cm・秒〜50cm/cm・秒の合成樹脂製フィルターと、該フィルターを支持し、通水性を有する支持型とを備える鋳型に、セラミックス粉末を分散させたスラリーを注入する工程と、前記スラリーの水分を前記フィルター及び前記支持型を介して排水させると共に、前記セラミックス粉末を前記鋳型に着肉させ、セラミックス成形体を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明のセラミックス製品の製造方法によれば、鋳型に注入されたスラリーの水分はフィルター及び支持型を介して排水される。そして、フィルターは、厚さが0.1mm〜10.0mm、且つ通気度が0.1cm/cm・秒〜50cm/cm・秒であり、適度な通水性を長期間に亘って安定的に有する。
【0012】
そのため、従来の石膏、セラミックス多孔質体や樹脂多孔質体からなる鋳型に比べて、成形の全期間に亘って着肉が均一に生じる。よって、得られたセラミックス成形体の密度が均一になり、これを焼成しても反りや変形が生じず、全長が1メートルを超える大型セラミックス焼成体を安定して製造することが可能となる。
【0013】
また、フィルターは、合成樹脂製であり、且つ厚さが0.1mm〜10.0mmと薄い。そのため、紙製又は布製フィルターとは異なり、成形後に洗浄して内部のセラミックス粉末を洗い流すことにより、適度な通水性が維持されるので、良好に鋳型を再利用することができる。
【0014】
また、フィルターは、合成樹脂製であるので、紙製や布製のフィルターとは異なり離型性が良好となり、離型時にセラミックス成形体にクラックが発生することが防止できる。
【0015】
また、フィルターが適度な通水性を有し、フィルターを通過した水分は支持型を介して排水されるので、固形鋳込み成形のように、大きな加圧力を印加させてスリラー中の水分を排水させる必要がない。よって、フィルターは、破損や劣化するおそれが少なく、長寿命化が可能となる。
【0016】
本発明のセラミックス成形用鋳型は、厚さが0.1mm〜10.0mm、且つ通気度が0.1cm/cm・秒〜50cm/cm・秒の合成樹脂製フィルターと、該フィルターを支持し、通水性を有する支持型とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明のセラミックス成形用鋳型によれば、本発明のセラミックス製品の製造方法に適した鋳型となる。
【0018】
本発明のセラミックス成形用鋳型において、前記支持型の左右方向の周囲を取り囲む側壁部をさらに備え、前記支持型の上面が、当該鋳型を用いて成形されるセラミックス成形体の下面に倣った形状になっていることが好ましい。
【0019】
この場合、支持型の上面に倣った形状の下面と、側壁部の内側面に倣った形状の外側面とを備えたセラミックス成形体を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るセラミックス成形用鋳型を概念的に示す縦断面図。
【図2】本発明の実施形態に係るセラミックス製品の製造方法を順次説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のセラミックス製品製造用鋳型の実施形態に係る鋳型(成形型)10について、主に図1を参照して説明する。
【0022】
鋳型10は、鋳込み成形法によりセラミックス成形体22(図2(c)参照)を形成する場合に使用され、所定の適度な通水性を有するフィルター11、フィルター11を支持し、良好な通水性を有する支持型12、支持型12の左右方向の周囲を取り囲む側壁部13、及び支持型12が上面に配置される底板14を備えている。側壁部13と底板14との連結部は、気密性が維持できるように接着されている。
【0023】
フィルター11は、厚さが0.1mm〜10.0mm、好ましくは0.1mm〜5.0mm、より好ましくは0.1mm〜2.0mmであり、且つ、JIS−L−1096フラジール法に準じて測定された通気度が0.1cm/cm・秒〜50cm/cm・秒、好ましくは0.1cm/cm・秒〜30.0cm/cm・秒、より好ましくは0.1cm/cm・秒〜20.0cm/cm・秒であり、非水溶性の合成樹脂製のものである。
【0024】
フィルター11として、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン(登録商標、ポリイミド系合成繊維)、ポリエチレン、ポリイミドなどの化学繊維からなる化学繊維系フィルター、多孔質の合成樹脂(プラスチック)からなる合成樹脂系フィルター、多孔質の合成樹脂からなるメンブレンフィルターが挙げられる。さらに、フィルター11は、例えば、ポリエステルとナイロンなど複数の材質からなるものであってもよく、その表面にウレタンなどがコートされたものであってもよい。なお、フィルター11が化学繊維からなる場合、その織り方や繊維径は特に限定されず、不織布であってもよい。
【0025】
支持型12は、フィルター11をその上面で支持して所定形状に維持すると共に、フィルター11を通過した水分を下方に良好に排水するものである。支持型12の上面は、セラミックス成形体12の下面に倣った形状となっている。支持型12は、鋼等の金属や塩化ビニル等の硬質プラスチックなどの硬質材料からなるものであり、好ましくは、排水用の水抜き孔を備えている。ただし、支持型12は、フィルター11を通過した水分を良好に排水できればよく、通水性がフィルター11より十分に優れていれば、多孔質体などからなるものであってもよい。
【0026】
側壁部13は、鋼等の金属や塩化ビニル等の硬質プラスチックなどの非吸水性材料からなる。ただし、側壁部13は吸水性材料からなるものであってもよい。なお、セラミックス成形体22の左右外側面に倣った形状に支持型12の左右内側面が形成されている場合、側壁部13は必ずしも必要ない。
【0027】
底板14は、側壁部13と同様の非吸水性材料であることが好ましいが、これに限定されない。
【0028】
支持型12の下側部に気密空間15が形成されていることが好ましい。気密空間15は、トンネル状等の溝や穴からなるものであり、図示しない真空ポンプなどの真空源によってその空間内が減圧されるように構成されている。
【0029】
以下、本発明のセラミックス製品の製造方法の鋳型10を用いた実施形態について、主として図2を参照して説明する。
【0030】
まず、鋳型10に注入するスラリー(泥漿)21(図2(a)参照)を用意する。スラリー21は、セラミックス粉末、分散剤、バインダ、溶媒などから構成される。セラミックス粉末としては、アルミナ粉末であることが好ましいが、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、イットリアなどからなる各種のセラミック粉末であってもよい。分散剤は、ポリカルボン酸系など公知のものである。溶媒は、水、特に不純物が少ないイオン交換水であることが好ましいが、アルコールなど公知の溶媒を用いることができる。バインダは、ポリビニルアルコールやアクリルエマルジョンなどの公知のものである。また、必要に応じて、pH調整剤や消泡剤等の添加剤を添加してもよい。
【0031】
セラミックス粉末、分散剤、溶媒などを18時間〜24時間混合してスラリー化し、これにバインダを添加して1時間〜2時間再混合して調整することにより、スラリー21を得る。
【0032】
そして、図2(a)に示すように、スラリー21を鋳型10に注入し、真空吸引することにより、成形を行う。なお、真空吸引は0.0MPa〜−0.1MPaの真空度(ゲージ圧)の範囲で調整する。
【0033】
図2(b)に示すように、フィルター11を通過したスラリー21中の水分が支持型12を介して下方に排水されると共に、セラミックス粉末が鋳型10に着肉して着肉層22が形成される。時間経過に伴い、着肉層22の厚みは増加し、着肉層22の上方には余剰スラリー23が蓄積する。
【0034】
その後、着肉層22が所定厚みを超えたとき、着肉層22上にある余剰スラリー23を排出して、着肉層22を鋳型10と共に室温下で数日乾燥させた。なお、真空吸引して着肉を行い、上澄みスラリーを排出、もしくは上澄みスラリーを全量吸水してもよく、着肉後、真空吸引を継続してもよい。また、強制乾燥、もしくは大気開放して乾燥してもよい。なお、真空吸引圧は、着肉層22の厚みなどに応じて定めればよく、例えば−0.1MPaである。また、減圧時間は、着肉層22の厚みや真空吸引圧などに応じて定まる。
【0035】
乾燥後、着肉層22を鋳型10から抜き取って脱型する。これにより、着肉層からなるセラミックス成形体22が得られる。その後、セラミックス成形体22を乾燥機内で強制乾燥する。
【0036】
セラミックス成形体22は、その下面が支持型12の上面の形状に倣い、その外側面が側壁部13の内側面の形状に倣ったものとなる。よって、支持型12の上面及び側壁部13の内側面を適宜な形状とすることにより、角板状、円板状、柱状、棒状など様々な形状のセラミックス成形体22を得ることができる。また、中子を用いることにより、セラミックス成形体22に中空部や減肉リブ形状を付与することもできる。なお、必要に応じて、セラミックス成形体22を所望形状に生加工してもよい。
【0037】
その後、セラミックス成形体22を、公知の焼成方法で焼成して、図2(d)に示すように、セラミックス焼結体20を得る。例えば、セラミックス成形体22を酸化雰囲気で1500℃〜1600℃の温度で常圧焼成する。
【0038】
なお、必要に応じて、セラミックス成形体22を500℃程度まで徐々に加熱して内部のバインダを脱脂させてもよい。また、強度を強化するために、セラミックス成形体22を1000℃〜1300℃で仮焼してもよい。
【0039】
最後に、必要に応じて、所望の寸法となるようにセラミックス焼結体20に仕上げ加工を施す。
【0040】
以上説明したように、厚さが0.1mm〜10.0mm、且つ通気度が0.1m/cm・秒〜50cm/cm・秒の合成樹脂製フィルター11を用いている。これにより、セラミックス成形体22は、離型性が良好であるためクラックが発生せず、Ca汚染がなく、成形体の密度も均一になる。そして、これを焼成したセラミックス焼結体20に反りや変形が生じず、全長が1メートルを超える大型品も安定して製造することが可能となる。さらに、フィルター11の再利用も可能である。
【0041】
フィルター11の厚さが薄過ぎる、又は、フィルター11の通気度が大き過ぎると、流し込まれたスラリー21の自重による圧力が加わることも要因となって、スラリー21がフィルター11で保留されずに通過するため、着肉が生じない。
【0042】
一方、フィルター11の厚みが厚過ぎる、又は、フィルター11の通気度が小さ過ぎると、真空吸引力の伝達が鈍くなり、成形時間が長期化し、密度の高いセラミックス成形体22を得ることが困難となる。さらに、フィルター11の厚みが厚過ぎると、柔軟性に富み、平面度が悪化するので、転写されたセラミックス成形体22も平面度が悪化する。その結果、乾燥収縮時に、セラミックス成形体22が抵抗を受け、クラックが発生するおそれがある。
【0043】
さらに、フィルター11の厚みが厚過ぎる、又は、フィルター11の通気度が小さ過ぎると、成形の初期段階で強力な毛管吸引力が作用するので、成形の初期段階で急速に着肉した部分と、成形の中期段階から後期段階に亘って緩やかに着肉した部分とでセラミックス成形体22は緻密度が異なり、得られたセラミックス成形体22を焼成すると反りが発生するおそれがある。
【0044】
また、フィルター11が合成樹脂からなり、且つ厚さが薄いので、綿繊維からなるろ紙製や布製のフィルターとは異なり、成形に使用した後、イオン交換水やアルコールなどで洗浄することによって、再利用が可能となる。フィルター11の厚みが厚過ぎると、内部に目詰まりしたセラミック粉末やバインダ等が洗い流すことができず、フィルター11を多数回に亘って再利用することが困難となる。
【0045】
〔実施例及び比較例〕
セラミックス製品がアルミナセラミックス焼結体である場合について、実施例及び比較例を説明する。セラミックス粉末として市販のアルミナ粉末(昭和電工株式会社製AL−160SG−4、純度99.7%)を用い、バインダ(三井東圧化学株式会社製WA−320)、分散剤(互応化学工業株式会社製KE−552)及びイオン交換水を混合して調整し、スラリーを作製した。
【0046】
鋳型10として、フィルター11が表1に示す材質、支持型12が多孔を有した鋼製素材からなり、側壁部13及び底板14が硬質プラスチックからなり、主型の内側寸法が幅1100mm、深さ500mm、奥行き1100mmであるものを用いた。支持型12の下側部には、真空ポンプにより減圧される吸引溝15が形成されている。鋳型10は、フィルター11の着肉面(上面)が水平になるように水平な場所に設置した。
【0047】
次に、この鋳型10に前述したスラリーを注入した。着肉は、溝15から吸引する吸引真空力をゲージ圧で0MPa〜−0.1MPaの範囲で調整しながら行った。着肉厚みが100mmに到達したとき、着肉層22上にある余剰スラリー23を排出した。着肉厚みは、着肉層22の上面に棒を押し当てて測定した。その後、吸引溝15から吸引する吸引真空力をゲージ圧で−0.1MPaとして所定時間吸水を行った。
【0048】
そして、室温下で14日乾燥し、さらに30℃〜60℃まで徐々に加熱して強制乾燥した後、セラミックス成形体22を鋳型10から取り出した。
【0049】
次に、セラミックス成形体22を酸化雰囲気下で常圧焼成した。1600℃で2時間焼成して、セラミックス焼結体20を得た。
【0050】
実施例と比較例の結果を表1にまとめた。
【0051】
【表1】

【0052】
〔実施例1−8〕
厚みが0.1mm〜10.0mm、通気度が0.1cm/cm・秒〜50.0cm/cm・秒の合成樹脂製フィルター11を用意した。実施例1−3,7,8では、フィルター11として、表1に示した材質からなる1重構造の化学繊維系フィルターを用いた。実施例4では、フィルター11として、多孔質樹脂体からなる合成樹脂系フィルターを用いた。実施例5では、フィルター11として、ポリエステルとナイロンからなる2重構造の化学繊維系フィルターを用いた。実施例6では、フィルター11として、ポリエステルからなる1重構造の化学繊維系フィルターの表層にウレタンコートを施したものを用いた。
【0053】
何れの実施例においても、面内均一に着肉が進行し、セラミックス成形体22との離型性は良好であった。そして、得られたセラミックス成形体22は、何れも、クラックや変形が発生しておらず、外観目視は良好であった。
【0054】
その後、セラミックス成形体22を焼成した。得られたセラミックス焼結体20は、何れも、反り、変形、クラックは発生しておらず、Ca汚染も受けておらず、外観目視は良好であった。そして、嵩密度は3.90g/cm以上であり、良好に緻密化していた。
【0055】
また、フィルター11を水やアルコールで洗浄した後、このフィルター11を用いて同一条件で成形したところ、同様の結果が得ることができた。これにより、フィルター11は再利用可能であることが確認された。
【0056】
〔比較例1−3〕
通気度が62.0cm/cm・秒(比較例1)、55.0cm/cm・秒(比較例2)、65.0cm/cm・秒(比較例3)のフィルター11を用意した。鋳型10にスリラー21を流し込んだところ、スラリー21はフィルター11で保留されずに通過した。なお、比較例3から、フィルター11の厚みが1.0mmと薄くても通気度が大きいと、スラリー21はフィルター11を通過することが分かった。
【0057】
〔比較例4〕
綿繊維からなるろ紙をフィルター11として、鋳込み成形を行った。得られたセラミックス成形体22にろ紙が密着し、セラミックス成形体22にクラックが発生した。これから、厚みが0.1mm〜10.0mm、且つ通気度が0.1cm/cm・秒〜50.0cm/cm・秒であっても、ろ紙からなるフィルターは不適であることが分かった。
【0058】
〔比較例5−7〕
厚みが20.0mm(比較例5)、25.0mm(比較例6)、40.0mm(比較例7)と10.0mm以上の厚さを有するフィルター11を用意した。鋳型10にスリラー21を流し込んだところ、着肉が不均一に進行した。得られたセラミックス成形体22の密度は低く、且つ、成形体の密度の分布が不均一であった。特に、比較例7では、セラミックス成形体22にクラックが発生した。
【0059】
その後、比較例5,6では、セラミックス成形体22を焼成した。得られたセラミックス焼結体20は、比較例5では、焼成収縮が不均一且つ大きく、クラックが発生した。比較例6では、大きな反り、変形が発生した。
【0060】
また、フィルター11を水やアルコールで洗浄したが、内部の目詰まりを除去できす、フィルター11は再利用できなかった。
【0061】
〔比較例8〕
従来と同様に石膏型を用いて成形したところ、石膏面からのCa汚染、成形の初期段階で急速な着肉が生じた。そして、得られたセラミックス焼結体20には、大きな反り、変形が発生した。
【符号の説明】
【0062】
10…鋳型、 11…フィルター、 12…支持型、 13…側壁部、 14…底板、 15…気密空間(溝)、 20…セラミックス製品(セラミックス焼結体)、 21…スラリー、 22…セラミックス成形体(着肉層)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが0.1mm〜10.0mm、且つ通気度が0.1cm/cm・秒〜50cm/cm・秒の合成樹脂製フィルターと、該フィルターを支持し、通水性を有する支持型とを備える鋳型に、セラミックス粉末を分散させたスラリーを注入する工程と、
前記スラリーの水分を前記フィルター及び前記支持型を介して排水させると共に、前記セラミックス粉末を前記鋳型に着肉させ、セラミックス成形体を形成する工程とを含むことを特徴とするセラミックス製品の製造方法。
【請求項2】
厚さが0.1mm〜10.0mm、且つ通気度が0.1cm/cm・秒〜50cm/cm・秒の合成樹脂製フィルターと、該フィルターを支持し、通水性を有する支持型とを備えることを特徴とするセラミックス成形用鋳型。
【請求項3】
前記支持型の左右方向の周囲を取り囲む側壁部をさらに備え、
前記支持型の上面が、当該鋳型を用いて成形されるセラミックス成形体の下面に倣った形状になっていることを特徴とする請求項2に記載のセラミックス成形用鋳型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate