説明

セラミック抵抗器

【課題】温度ヒューズを追加しなくても、抵抗体が異常発熱したときに速やかに通電を遮断できるセラミック抵抗器を提供すること。
【解決手段】セラミック抵抗器11は、絶縁性セラミックに導電物質を混合して焼結させた円柱状の抵抗体1と、抵抗体1の長手方向の両端部に嵌着された一対の電極2と、各電極2から外方へ突設されたリード端子4とを備えており、抵抗体1の外周面の一部で電極2から離隔した領域に、抵抗体1よりも低抵抗な導電性金属膜3が全周に亘って付設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性セラミックに導電物質を混合して焼結させた柱状の抵抗体が用いられているセラミック抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック抵抗器に用いられている柱状の抵抗体は、SnO等の導電物質と、タルク、Ca化合物、Ba化合物等の絶縁性セラミックとを混合し、1000℃以上の高温で焼結させたソリッド抵抗体であるため、一般的にサージ特性に優れたものとなっている(例えば、特許文献1参照)。また、この種のセラミック抵抗器は、皮膜抵抗器に比べて高温での使用が可能であり、かつ、耐化学侵食性や耐候性に富み断線が生じにくい等の利点を有するため、高圧回路用や電源回路用の抵抗器として好適である。
【0003】
ところで、セラミック抵抗器に用いられている抵抗体は、過負荷によって異常発熱すると赤熱して溶解し、やがて破断(溶断)することが知られている。抵抗体が破断すると、通電が遮断されて昇温しなくなるが、異常発熱した抵抗体が破断に至るまでの赤熱状態や溶解状態のときに、セラミック抵抗器を実装しているプリント基板の樹脂成分が発火したり、その影響によって線パターンが短絡されてしまう等の危険性がある。そこで、セラミック抵抗体が異常発熱したときに速やかに通電を遮断して安全性を確保するために、高電圧が印加される抵抗器を予め温度ヒューズと直列に接続してなるヒューズ抵抗器が従来より提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−324006号公報
【特許文献2】特開2006−310429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、セラミック抵抗器に温度ヒューズを追加してヒューズ抵抗器を構成すると、部品コストや組立コストが増大して高価なものになってしまうという問題があった。また、温度ヒューズを追加してなるヒューズ抵抗器は、セラミック抵抗器そのものに比べて大型化してしまうという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、温度ヒューズを追加しなくても、抵抗体が異常発熱したときに速やかに通電を遮断できるセラミック抵抗器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、絶縁性セラミックに導電物質を混合して焼結させた円柱状の抵抗体と、この抵抗体の長手方向の両端部に嵌着された一対の電極とを備えたセラミック抵抗器において、前記抵抗体の外周面の一部で前記電極から離隔した領域に、この抵抗体よりも低抵抗な導電性金属膜を全周に亘って付設するという構成にした。
【0008】
このように抵抗体よりも低抵抗な導電性金属膜が該抵抗体の外周面の一部に巻装状態で付設されているセラミック抵抗器は、抵抗体を流れる電流の多くが導電性金属膜を通過する。そのため、通電時の抵抗体には、導電性金属膜の幅方向両縁と隣接して該金属膜に沿って延在する外周部の特定箇所に電流が集中し、抵抗体のうち外周面が該金属膜に包囲されて露出していない部位の内部は電流がほとんど流れない電流迂回箇所となる。したがって、過負荷(過大電流)による抵抗体の異常発熱で前記電流集中箇所が大きく熱膨張すると、熱膨張がほとんど起こらない前記電流迂回箇所との境目付近に剪断応力が生じ、この境目付近が破断しやすくなる。つまり、過負荷によって抵抗体が異常発熱すると、この抵抗体は導電性金属膜に沿うように破断して速やかに通電を遮断することが可能なため、温度ヒューズを追加する必要がなくなる。
【0009】
上記のセラミック抵抗器において、抵抗体の半径をR、電極から導電性金属膜までの最小長さをPとすると、P≧Rに設定されていると、異常発熱に伴って抵抗体を確実に破断することができて好ましい。この場合において、導電性金属膜の長手方向に沿う最小幅寸法をLとすると、L≧Rに設定されていることが好ましい。
【0010】
また、上記のセラミック抵抗器において、導電性金属膜の主成分が銀であると、抵抗体に比べて極めて低抵抗な導電性金属膜が得られるため、電流の集中が顕著になって異常発熱時に抵抗体の前記境目付近を速やかに破断させることができる。しかも、銀を主成分とする導電性金属膜は、抵抗体の外周面の所望領域に塗布した銀系ペーストを硬化させることによって容易に形成できるため、コスト面でも有利である。
【0011】
なお、上記のセラミック抵抗器において、導電性金属膜の幅寸法を抵抗体の全周に亘って同一に形成したり、導電性金属膜をその幅寸法が鉛直方向下側ほど広くなるように形成したり、あるいは、導電性金属膜をその幅方向両縁が波形状になるように形成しても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセラミック抵抗器は、円柱状の抵抗体の外周面の一部で電極から離隔した領域に、この抵抗体よりも低抵抗な導電性金属膜が全周に亘って付設してあるため、通電時の抵抗体には、導電性金属膜の幅方向両縁と隣接して該金属膜に沿って延在する外周部の特定箇所に電流が集中し、抵抗体のうち外周面が該金属膜に包囲されて露出していない部位の内部は電流がほとんど流れない電流迂回箇所となる。したがって、過負荷による抵抗体の異常発熱で電流集中箇所が大きく熱膨張すると、熱膨張がほとんど起こらない電流迂回箇所との境目付近が破断しやすくなる。それゆえ、このセラミック抵抗器は、わざわざ温度ヒューズを追加しなくても、抵抗体が異常発熱したときに速やかに通電を遮断して安全性を確保することができ、大幅なコストダウンと小型化を実現できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態例に係るセラミック抵抗器の斜視図である。
【図2】第1実施形態例に係るセラミック抵抗器の断面形状を通電時の電流の流れと共に示す説明図である。
【図3】図2に示す抵抗体の電流集中箇所と電流迂回箇所を示す説明図である。
【図4】該抵抗体が異常発熱により破断した状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態例に係るセラミック抵抗器の断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態例に係るセラミック抵抗器の斜視図である。
【図7】本発明の第4実施形態例に係るセラミック抵抗器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1〜図4を用いて本発明の第1実施形態例に係るセラミック抵抗器について説明する。
【0015】
図1および図2に示すように、本発明の第1実施形態例に係るセラミック抵抗器11は、円柱状の抵抗体1と、抵抗体1の長手方向の両端部に嵌着された一対の電極2と、抵抗体1の外周面の一部に帯状に付設された導電性金属膜3と、一対の電極2からそれぞれ外方へ突設されたリード端子4とによって主に構成されている。このセラミック抵抗器11は図示せぬプリント基板に実装され、このプリント基板のスルーホールに各電極2が半田付けされる。
【0016】
セラミック抵抗器11の構成について詳しく説明すると、抵抗体1は、絶縁性セラミックにSnO等の導電物質を混合して1000℃以上の高温で焼結させたものである。電極2には予めリード端子4が溶接等によって突設されており、抵抗体1の長手方向の両端部にそれぞれキャップ形状の電極2を外嵌させることによって、各電極2は抵抗体1と電気的かつ機械的に接続されている。そして、これら一対の電極2間に露出する抵抗体1の外周面の長手方向の中央部に、銀を主成分とする導電性金属膜3が全周に亘って帯状に付設されている。
【0017】
この導電性金属膜3は、抵抗体1の外周面の長手方向の中央部に銀系ペースト(Agペースト)を塗布して硬化することによって形成されたものであり、抵抗体1の全周に亘って導電性金属膜3の幅寸法は略同等である。
【0018】
図2中の矢印は、通電時におけるセラミック抵抗器11内の電流の流れを模式的に示したものである。すなわち、抵抗体1の外周面の一部で電極2から離隔した領域に、この抵抗体1よりも極めて低抵抗な導電性金属膜3が全周に亘って付設されているセラミック抵抗器11は、通電時に抵抗体1を流れる電流の多くが導電性金属膜3を通過する。そのため、図3に模式的に示すように、抵抗体1は、導電性金属膜3の幅方向両縁と隣接して該金属膜3に沿って延在する外周部の特定箇所が、通電時に電流が集中して流れる電流集中箇所1aとなる。また、抵抗体1のうち外周面が導電性金属膜3に包囲されて露出していない円板状部位の内部は、通電時に電流がほとんど流れない電流迂回箇所1bとなる。
【0019】
このように構成されたセラミック抵抗器11では、過負荷(過大電流)によって抵抗体1が異常発熱したときに、電流集中箇所1aで発熱が急増するものの、電流がほとんど流れない電流迂回箇所1bは発熱源とならないため、電流集中箇所1aが大きく熱膨張するのに対し、電流迂回箇所1bにはほとんど熱膨張が起こらない。その結果、図3に矢印で示すように、電流集中箇所1aと電流迂回箇所1bとの境目付近が逆向きの力で引っ張られることになる。つまり、抵抗体1が異常発熱すると、電流集中箇所1aと電流迂回箇所1bとの境目付近に、熱膨張の極端な相違に起因する剪断応力が生じるため、この境目付近が破断しやすくなる。図4はこうして抵抗体1が異常発熱によって破断した状態を模式的に示しており、抵抗体1が導電性金属膜3に沿うように破断して長手方向の中央部が自重で落下するため、通電は遮断される。
【0020】
以上説明したように、本実施形態例に係るセラミック抵抗器11は、円柱状の抵抗体1の外周面の長手方向中央部に、この抵抗体1よりも極めて低抵抗な導電性金属膜3を全周に亘って付設することによって、通電時の抵抗体1に電流集中箇所1aと電流迂回箇所1bとが生じるようにしてある。これにより、過負荷によって抵抗体1が異常発熱したときに、大きく熱膨張する電流集中箇所1aとほとんど熱膨張しない電流迂回箇所1bとの境目付近を速やかに破断させることができるため、このセラミック抵抗器11は、わざわざ温度ヒューズを追加しなくても、抵抗体1の異常発熱時に速やかに通電を遮断して安全性を確保することができる。それゆえ、このセラミック抵抗器11は温度ヒューズを追加した構成のもの(ヒューズ抵抗器)と比べて、大幅なコストダウンならびに小型化が実現できる。
【0021】
なお、上記の第1実施形態例では、導電性金属膜3の主成分が銀である場合を例示しているが、導電性金属膜3は、抵抗体1よりも低抵抗な他の導電性金属材料を主成分とするものであっても良い。ただし、銀を主成分とする導電性金属膜3であれば、極めて低抵抗で電流の集中が顕著になるため、異常発熱時に抵抗体1を速やかに破断させることができる。しかも、銀を主成分とする導電性金属膜3は、抵抗体1の外周面の所望領域に塗布した銀系ペーストを硬化させることによって容易に形成できるため、コスト面でも有利である。
【0022】
次に、図5を参照しながら、本発明の第2実施形態例に係るセラミック抵抗器について説明する。なお、図5において図1〜図4と対応する部分には同一符号が付してあるため、重複する説明は省略する。
【0023】
図5に示すセラミック抵抗器12は、抵抗体1の外周面に設けられた導電性金属膜3の領域が前述した第1実施形態例と相違している。すなわち、このセラミック抵抗器12は、抵抗体1の外周面の長手方向中央部でなく、中央部に対して一方(例えば図示右側)の電極2へ片寄った領域に導電性金属膜3が設けられている。この場合、一方の電極2から導電性金属膜3までの長さ(最小長さ)Pが他方の電極2から導電性金属膜3までの長さQに比べて短くなるが、最小長さPとして所要の寸法が確保されていないと、異常発熱時に抵抗体1を確実に破断することが困難となる。そこで、本実施形態例では、電極2から導電性金属膜3までの最小長さPが抵抗体1の半径Rよりも大きくなるように、P≧Rの関係を満足する領域に導電性金属膜3が設けられている。なお、前述した第1実施形態例の場合、導電性金属膜3が抵抗体1の外周面の長手方向中央部に設けられているため、両電極2から導電性金属膜3までの長さP,Qは等しくなる(P=Q)が、この場合も、最小長さP(=Q)が抵抗体1の半径Rよりも大きくなるように、導電性金属膜3を両電極2に対して離間させることが好ましい。
【0024】
また、本実施形態例では、導電性金属膜3の長手方向に沿う幅寸法(最小幅寸法)Lが抵抗体1の半径Rよりも大きく(L≧R)なるように、導電性金属膜3を抵抗体1の全周に亘って巻装状態で付設してある。このように、電流迂回箇所1bとなる導電性金属膜3の最小幅寸法Lが所定値以上に確保されていると、抵抗体1の異常発熱時に電流集中箇所1aと電流迂回箇所1bとの境目付近に十分な剪断応力を生じさせることができるため、抵抗体1の所定箇所を確実かつ速やかに破断させることができる。
【0025】
また、本実施形態例では、抵抗体1の長手方向の両端部にそれぞれ下地電極5が設けてあり、この下地電極5に対応する電極2を外嵌することにより、各電極2が下地電極5を介して抵抗体1と電気的かつ機械的に接続されるようになっている。下地電極5は抵抗体1の両端部に銀系ペーストを塗布して硬化させたものであり、かかる下地電極5の存在によって電極2と抵抗体1との密着性を高めることができる。このように抵抗体1の端部に下地電極5を介して電極2を外嵌した場合、電極2と下地電極5が同電位となるため、前述した最小長さPは下地電極5から導電性金属膜3までの寸法となる。ただし、第1実施形態例のように下地電極5を省略した場合は、電極2から導電性金属膜3までの寸法が最小長さPとなる。
【0026】
次に、図6を参照しながら、本発明の第3実施形態例に係るセラミック抵抗器について説明する。なお、図6において図1〜図4と対応する部分には同一符号が付してあるため、重複する説明は省略する。
【0027】
図6に示すセラミック抵抗器13は、抵抗体1の外周面に付設した導電性金属膜3の形状が前述した第1実施形態例と相違している。すなわち、このセラミック抵抗器13は、図示下方が鉛直方向下方となるように設置されるため、導電性金属膜3の幅寸法が鉛直方向下側ほど広くなるように形成している。こうすることによって、抵抗体1が異常発熱して破断したときに、この抵抗体1は破断面に挟まれた部位が自重で落下しやすくなるため、確実に通電を遮断できて安全性が一層高まる。なお、このように導電性金属膜3の幅寸法が抵抗体1の全周に亘って同じでない場合、前述した最小長さPは電極2から導電性金属膜3の図示下側の広い部分までの寸法となるため、この最小長さPが抵抗体1の半径Rよりも大きく(P≧R)ように設定することが好ましい。また、この場合の導電性金属膜3の最小幅寸法Lは図示上側の狭い部分であるため、この最小幅寸法Lが抵抗体1の半径Rよりも大きく(L≧R)なるように設定することが好ましい。
【0028】
次に、図7を参照しながら、本発明の第4実施形態例に係るセラミック抵抗器について説明する。なお、図7において図1〜図4と対応する部分には同一符号が付してあるため、重複する説明は省略する。
【0029】
図7に示すセラミック抵抗器13は、抵抗体1の外周面に付設された導電性金属膜3の幅方向両縁が直線状となっておらず、導電性金属膜3の幅方向両縁が波形状となっている点が前述した第1乃至第3実施形態例と相違している。この場合、一方の電極2から導電性金属膜3の波形状の山部までの寸法が最小長さPとなるため、この最小長さPを抵抗体1の半径Rよりも大きい寸法(P≧R)に設定することが好ましい。また、導電性金属膜3の左右の波形状の谷部間の長さが最小幅寸法Lとなるため、この最小幅寸法Lも抵抗体1の半径Rよりも大きく(L≧R)設定することが好ましい。
【0030】
なお、上記の各実施形態例では、抵抗体1の外周面の長手方向中央部に1巻の導電性金属膜3を付設した場合について説明したが、抵抗体1の外周面に長手方向に所定の間隔を存して2巻以上の導電性金属膜3を付設するようにしても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 抵抗体
1a 電流集中箇所
1b 電流迂回箇所
2 電極
3 導電性金属膜
4 リード端子
5 下地電極
P 最小長さ
L 最小幅寸法
11,12,12,14 セラミック抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性セラミックに導電物質を混合して焼結させた円柱状の抵抗体と、この抵抗体の長手方向の両端部に嵌着された一対の電極とを備えたセラミック抵抗器において、
前記抵抗体の外周面の一部で前記電極から離隔した領域に、この抵抗体よりも低抵抗な導電性金属膜を全周に亘って付設したことを特徴とするセラミック抵抗器。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記抵抗体の半径をR、前記電極から前記導電性金属膜までの最小長さをPとすると、P≧Rに設定されていることを特徴とするセラミック抵抗器。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記導電性金属膜の長手方向に沿う最小幅寸法をLとすると、L≧Rに設定されていることを特徴とするセラミック抵抗器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記導電性金属膜の主成分が銀であることを特徴とするセラミック抵抗器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−84896(P2013−84896A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−122015(P2012−122015)
【出願日】平成24年5月29日(2012.5.29)
【出願人】(000105350)コーア株式会社 (201)
【Fターム(参考)】