説明

セラミック球の外観検査装置

【課題】従来の光学式では検出が困難であった帯電性のセラミック球の球表面の微小な傷及びセラミック特有の傷を検出可能とする。
【解決手段】窒化珪素、ジルコニア、アルミナ、炭化珪素などのセラミック球の表面傷を検査するセラミック球の外観検査装置において、上記検査するセラミック球1を油中に浸漬し、油中で子午線状に回転させる回転装置2〜5を設けると共に、上記回転装置によって子午線状に回転するセラミック球1の全表面を撮影する撮影手段7と、該撮影手段7により撮影された画像を処理する画像処理手段9を設け、撮影された球表面の画像を処理してセラミック球の傷の有無を判定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアリング及びボール弁等に使用される、特にセラミック球の傷の有無を判定する外観検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼球など、球体の表面検査装置は一般に球体を空気中において検査するのが通例であった。しかし、空気中での検査は球体を取り扱い易いという利点がある反面、球体表面が洗浄により完全に脱脂されていなければ油分がシミとなり、不良と判定されるだけでなくその油分が検査部の球の通路に蓄積され、さらにそれらが球に付着して不良の原因となっていた。殊に球体が錆び易い金属では脱脂状態で長時間放置すると、発錆が心配される問題があった。
【0003】
そこで、本出願人はさきに上述の油のシミの問題がなく、脱脂の必要をなくして錆び易い金属でも発錆の恐れなく、球体の外観検査を達成することができる装置として、油の中に検査球を浸漬して表面検査を行うことを見出し、検査対象球体(鋼球)1´を油中に浸漬、保持して、図3にその表面検査装置の概略を示すように該球体1´に光源12から光を当て、球からの反射光を受光素子13で受けて受光量を電気変換し、判定部11においてその電気信号変化量で傷の有無の判定を行う装置を提案した。(例えば特開2002−277226号公報参照)
【特許文献1】特開2002−277226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような電気信号変化量で傷の有無を判定する光学式の外観検査装置では、一般的なベアリングに使用される、表面が鏡面状に仕上がっている鋼球に対しては好適であるが、近時、高速度化,高効率化が進み、より軽量さが求められるセラミック球に対しては、セラミック球の球表面が灰白色ないし黒色を呈しており、光を投射しても球からの反射光量が大幅に低下することから有効とは云えない。そこで、光源の光量を上げることで球からの反射光量を増加することが考えられるが、その場合、球以外からの反射光も受光素子に入射し、良球面と傷部分での信号変化が小さくなり、微小な傷の検出が困難になるという欠点があった。特にセラミック球の場合はその特有の傷、即ち極表層部に存在する介在物による色むらや空孔といった微小欠陥はその部分での球からの反射光量の変化が非常に小さいことから、光学式の外観検査装置では検出は困難であるという問題があった。一方、顕微鏡を用いての肉眼での検査も考えられるが、人件費の負担からコストの増加が避けられないと云う問題がある。また、セラミック球は鋼球と異なり、空気中で擦れると静電気が帯電し易く、空気中の小さな塵を吸着し、この塵を傷とみなす、いわゆる誤判定の問題もある。
【0005】
本発明は上述の如き諸種の実状に対処し、特にセラミック球の外観検査に着目して、該球を油中に保持した状態でデジタルカメラにより撮影された画像に対し所定の処理を施すことによりセラミック球の静電気帯電防止をはかり、前述の光学式検査装置では検出が困難な微小な傷及びセラミック特有の傷の検出を可能ならしめることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、上記目的に適合する本発明の特徴とするところは 窒化珪素(Si34)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al23)、炭化珪素(SiC)などのセラミック球の表面傷を検査する外観検査装置において、検査するセラミック球を油中に浸漬し、油中で回転装置により子午線状に回転させるとともに、所定の位置に固定した撮影手段により上記子午線状に回転する球全表面を撮影し、撮影された球表面画像を処理用パソコンに送り所定の処理を施してセラミック球表面の傷の有無の判定を行うようにした構成にある。ここで、回転装置により順次に子午線状に走査される球を油中に沈め空気中の塵の付着を防ぐことはセラミック球の外観検査においては極めて重要な要素である。
【0007】
なお、上記構成において撮影手段の具体的態様としてはセラミック球に光を照射する光源と、レンズを取り付けたデジタルカメラの組み合わせからなり、これらデジタルカメラのレンズと光源は油中に配置することも、また油面上部に配置することも可能である。しかし、油面上部に配置するときは、油面の揺らぎの影響をなくすため検査対象とするセラミック球とカメラレンズの間において油面上にガラスやアクリル等の透明体を配置することが必要である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は光学式と異なり、デジタルカメラにより撮影された球表面の画像を処理することにより球表面の傷を検出するものであり、光学式検査装置では検出が困難であった微小な傷やセラミック特有の傷を検出することが可能となり、検査対象とするセラミック球の欠陥の有無を確実に判定することができる効果を有する。
【0009】
また、前記の如く回転装置により子午線状に球全表面を走査するため球全表面の検査が可能である外、回転装置を油中に設置することにより油中の検査を可能とし、検査前の球の洗浄脱脂乾燥工程も省くことが出来る。殊にセラミック球は静電気を帯び易く、空気中で塵の付着により誤判定の恐れがあるが、油中で検査することにより、これを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、更に添付図面に基づいて本発明の具体的な実施態様を説明する。
【0011】
図1は本発明に係る外観検査装置の1例を概略的に示したものであり、1は本発明の検査対象球であるセラミック球であり、図に示す如く該セラミック球1はドライブローラー2と、サポートローラー3とコントロールローラー4により油中に浸漬され、所定の位置に固定されている。そして、ドライブローラー2を回転させることでセラミック球1が回転し、それによりコントロールローラー4も回転する。コントロールローラー4には偏心ハスバギヤ5が取り付けられており、このギヤ5により検査対象であるセラミック球1にひねりが与えられ、セラミック球1は子午線状に回転する仕組みになつているが、この基本構成については前述した本出願人の提案に係る特開2002−277226号公報に詳述する通りである。
【0012】
しかし、上述の本出願人の提案は基本的に光学式検査であり、図3に示すように検査対象球に光源から光を当て、その反射光を受光素子で受けて受光量を電気変換し判定部においてその電気信号変化量で傷の有無を判定しているが、本発明はそれとは異なり、デジタルカメラを用いて、これによって撮影された画像に対して所定の処理を施し球全表面の傷の有無を判定するように構成されている。
【0013】
即ち、本発明は図1に示すように所定の位置に固定されて球全表面を撮影するデジタルカメラ7が設けられ、検査するセラミック球1を油中に浸漬保持して子午線状に回転させて光源6より光を照射しデジタルカメラ7でその全表面を撮影すると共に、撮影された画像を処理用パソコン9に送りその画像に対して所定の処理を行うことで検査対象のセラミック球の欠陥の有無を判定するようになっている。
【0014】
ここで、上記外観検査装置において、検査対象とするセラミック球1を回転するドライブローラー2,コントロールローラー4と、該球を支持するサポートローラー3は油中に浸漬設置されて油中での検査を可能としていると共に、回転装置により子午線状に回転している検査対象のセラミック球1の近傍に光を照射する光源6と、前記球表面を撮影するためのデジタルカメラ7のレンズ8も何れも油中で所定位置に配設されて回転している油中のセラミック球1に光源6から光を照射し、所定の位置に固定された前記デジタルカメラ7により球全表面を撮影し得るようになっている。なお、デジタルカメラ7に取り付けられたレンズ8は、より微小な傷の検出を目的とした場合にはレンズ倍率を適宜変更することで容易に対応することが可能である。
【0015】
上記図1に示す如くカメラレンズ8と光源6は油中にあることが望ましいが、
必ずしも油中でなくカメラレンズ8と光源6を油面上部に配置するようにしてもよい。但し、この場合は油面の揺らぎの影響をなくすためにガラスやアクリル等の透明体10をカメラと検査対象セラミック球1の間において油面上に配置することが必要であり、かつ効果的である。
【0016】
特に上記回転装置を油中に設置し、油中での検査を可能としている点は、これにより検査前の球の洗浄,脱脂,乾燥工程を省くことができると共に、特にセラミック球においては、鋼球と異なり静電気を帯び易く、空気中では静電気により塵等が付着し易いことから誤判定の恐れがあるので極めて重要である。この場合は、用いる油としてはマイクロフィルターで濾過し、微小物を除去することが好ましい。
【0017】
本発明は以上のようにデジタルカメラで撮影された球表面の画像を処理することにより微小な傷、特にセラミック球特有の傷を検出することができ、今後に需要が期待されるセラミック球の表面外観検査装置として頗る有用性大である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明検査装置はセラミック球の外、静電気が帯電し易い他の球の外観検査にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明検査装置の要部を概略的に示した図である。
【図2】本発明検査装置の他の実施形態の要部を概略的に示した図である。
【図3】従来の検査装置の要部を概略的に示した図である。
【符号の説明】
【0020】
1:検査対象球(セラミック球)
1´:検査対象球(鋼球)
2:ドライブローラー
3:サポートローラー
4:コントロールローラー
5:偏心ハスバギヤ
6:光源
7:デジタルカメラ
8:レンズ
9:処理用パソコン
10:透明体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化珪素(Si34)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al23)、炭化珪素(SiC)などのセラミック球の表面傷を検査するセラミック球の外観検査装置であって、上記検査するセラミック球を油中に浸漬し、油中で子午線状に回転させる回転装置を具備すると共に、回転装置によって子午線状に回転するセラミック球の全表面を撮影する撮影手段と、該撮影手段により撮影された画像を処理する画像処理手段を有し、撮影された球表面の画像処理によりセラミック球の傷の有無を判定することを特徴とするセラミック球の外観検査装置。
【請求項2】
撮影手段がセラミック球に光を照射する光源とレンズを取り付けたデジタルカメラからなる請求項1記載のセラミック球の外観検査装置。
【請求項3】
デジタルカメラのレンズと光源を油中に配置し、油中でセラミック球に光源から光を照射し、デジタルカメラにより球全表面を撮影する請求項1または2記載のセラミック球の外観検査装置。
【請求項4】
デジタルカメラのレンズと光源を油面上部に配置し、透明体をカメラレンズとセラミック球の間で油面上に配置して、光源から透明体を介して油中のセラミック球に光を照射すると共に、透明体を介してデジタルカメラにより球全表面を撮影する請求項1または2記載のセラミック球の外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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