説明

セラミック管の補強構造

【構成】セラミック管10の胴体部外周に膨張性マット12を介して金属環16で嵌合する構成にして、膨張性マット12の膨張力によりセラミック管10の胴体部外周に圧縮応力を付与するようにし、これにより、圧縮応力が、セラミック管10に対して機械的(例えば圧力差)或いは熱的原因により発生する引張応力を減少させる。
【効果】セラミック管に発生する引張応力を減少して、セラミック管を補強することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はセラミック管の補強構造に係り、特に、高温含塵ガスからダストを除塵する集塵器の濾筒として或いは高熱加圧流体が流れる配管等に使用されるセラミック管の補強構造に関する。
【0002】
【従来の技術】石炭のガス化炉や加圧流動床燃焼ボイラ等では、700〜1000°C程度の含塵ガスが排出される。このような高温の含塵ガスからダストを除塵する場合、バグフィルタや電気集塵機等の集塵装置にあっては耐熱性が乏しいために、含塵ガスを冷却しないと適用できない。このことから、耐熱性に優れたセラミック管を濾筒として用いた集塵装置が実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、セラミック管は、金属管に比べて耐熱性、耐腐食性、耐磨耗性において優れている反面、引張応力或いは機械的及び熱的衝撃に弱く破損し易い性質がある。特に、多孔質のセラミック管は引張応力に対して弱く、例えばセラミック管の濾筒内や配管内に大きな内圧がかかり引張応力が発生した場合、或いは濾筒や配管の内側と外側の内外温度差による熱応力に起因する引張応力が発生した場合等において、破損し易いという欠点がある。
【0004】本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、セラミック管に対して機械的或いは熱的等の原因により発生する引張応力を減少してセラミック管の強度を補強することのできるセラミック管の補強構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記目的を達成する為に、セラミック管の胴体部外周に膨張性マットを介して金属環を嵌合して成り、前記膨張性マットの膨張力により前記セラミック管の外周面に圧縮応力を付与することを特徴とする。ここで、胴体部というのはセラミック管の胴体部全体或いは胴体部で補強を必要とする部分のいずれでもよく、セラミック管の端部を除く部分である。
【0006】
【作用】本発明によれば、セラミック管の胴体部外周に膨張性マットを介して金属環を嵌合する構成にして、膨張性マットの膨張力によりセラミック管の胴体部外周に圧縮応力を付与するようにした。これにより、前記圧縮応力は、セラミック管に対して機械的(例えば圧力)或いは熱的等の原因により発生するセラミック管の径方向の引張応力を著しくる減少させることができる。また、セラミック管の胴体部外周に圧縮応力を付与することにより、セラミック管の軸方向の伸びも抑制するので、セラミック管の軸方向に発生する引張応力をも減少させることができる。即ち、セラミックの破壊強度は、表面及び内部に存在する欠陥(亀裂)の大きさに依存し、引張応力の条件下では亀裂先端への応力集中度が高く、亀裂の進展が促進されるのに対し、圧縮応力の条件下では応力集中が起きないために圧縮強度は大きい。従って、本発明のセラミック管の補強構造では、セラミック管の胴体部を圧縮応力の条件下におくことができるので、セラミック管に発生する引張応力を減少させることができ、これによりセラミック管の強度を補強することができる。
【0007】一般的にセラミックス材料の熱膨張率は金属材料と比べて小さいが、膨張させた膨張性マットには充分の弾性があり、加熱された状態でも膨張性マットによる圧縮応力が維持される。また、前記セラミック管と前記膨張性マットとの間に断熱マットを介在させると、セラミック管の内側と外側の内外に生じる温度差を更に緩和することができるので、熱応力に起因する引張応力の発生を減少させることができる。従って、熱応力に起因する引張応力が発生しないようにしながら、セラミック管の外周面に圧縮応力を付与することができるので、セラミック管の強度を更に向上させることができる。
【0008】また、セラミック管が多孔質フィルタ管である場合に、金属環に多数の通気孔を形成しておき、且つ、膨張性マット及び断熱マットにも通気性を有するようにしておけば、より、強度を補強した多孔質セラミック管を除塵装置の濾筒として使用することができる。
【0009】
【実施例】以下添付図面に従って本発明に係るセラミック管の補強構造の好ましい実施例について詳説する。図1R>1に示すセラミック管の補強構造は、多孔質のセラミック管10の外周に膨張性マット12を介して多数の通気孔14が形成された金属環16で嵌合して構成される。
【0010】ここで、セラミック管10には、アルミナ、ムライト、シャモット、ジルコン、炭化珪素、窒化珪素、コージライト、β─スポジュメン、カーボン、チタン酸アルミニウム等の材質が使用でき、なかでもコージライトのような熱膨張率の小さな材質のものを使用することが好ましい。また、膨張性マット12としては、膨張することによりセラミック管10の外周面に圧縮応力を付与でき、一度膨張したらその後も膨張状態を維持できるものであればよい。例えば、膨張性マット12の一例として、加熱膨張材とセラミックファイバーとを有機結合剤で結合し、約400°C以上で熱膨張する加熱膨張性マットを使用することができる。加熱膨張材としては、バーミキュライト、パーライト等の耐熱性無機質材料が用いられ、セラミックファイバーとしては、アルミナ、シリカを主成分とする繊維状の無機質材料が用いられる。かかる加熱膨張性マットの具体例としては、例えば「インタラム・マット」(商品名…住友スリーエム株式会社製)等があげられる。また、金属環16はステンレス製とされ、その内径はセラミック管10の外径よりも僅かに大きく形成される。金属環16としてステンレス製のパンチングメタルを円筒状に形成したものが好ましく使用することもできる。そして、本発明のセラミック管の補強構造を組み立てるには、金属環16とセラミック管10との間の隙間に膨張前の膨張性マット12を均等に介在させた状態で、膨張性マット12を例えば450°Cに加熱して膨張させる。これにより、セラミック管10と金属環16との一定幅の隙間で膨張性マット12が膨張し、セラミック管の外周面に圧縮応力が付与される。これにより、前記圧縮応力は、セラミック管10に対して機械的(例えば圧力)或いは熱的に発生するセラミック管10の周方向の引張応力を著しくる減少させることができる。また、セラミック管10の外周面に圧縮応力を付与すると、セラミック管10の軸方向の伸びも抑制されるので、セラミック管10の軸方向に発生する引張応力に対しても減少させることができる。また、セラミック管10の外周面に付与される圧縮応力の調整は、前記隙間のスペースに対する膨張性マット12の充填密度を変えることにより行う。
【0011】図2は、本発明のセラミック管の補強構造の別の態様であり、図1に示した構造において、ラミック管10と膨張性マット12の間に断熱マット18を介在させたものである。ここで、断熱マット18は、例えばセラミックスファイバーマット等を使用することができる。そして、断熱マットを介在させることにより、セラミック管10の内側と外側との内外温度差を更に緩和することができるので、熱応力に起因する引張応力の発生を抑制することができる。
【0012】上記した図1及び図2で示したセラミック管の補強構造は、例えば、高温の含塵ガスからダストを除塵する集塵装置の濾筒として最適であり、以下、集塵装置に適用した例を説明する。図3は、900°C程度の高温の含塵ガスからダストを除塵する集塵装置20を示した図である。図3に示すように、集塵装置20は、上端部に含塵ガス21の導入口22を有すると共に、下端部にダスト23の排出口24を有する略円筒状の缶体26内に、本発明のセラミック管の補強構造を有する複数本の濾筒28が適宜な間隔を置いて縦方向に配設される。また、濾筒28は缶体26内の所定高さ位置に缶体26に対して水平方向に複数段設けられた管板30、30、30に支持される。管板30同志の間には清浄ガス室32、32、32が形成され、缶体26の側面には、各清浄ガス室32、32、32に連通するダクト34、34、34が接続されると共に、それぞれのダクト34はデイフューザ36の拡径端側に接続される。また、デイフューザ36の縮径端側は逆洗用電磁弁35を介して逆洗用空気供給ダクト40に合流されてから圧縮空気タンク42に接続される。また、各デイフューザ36の拡径端側から分岐した分岐ダクト44、44、44は、清浄ガス用電磁弁46を介して清浄ガス排気ダクト47に合流されて排出される。
【0013】図4は図3の濾筒28を管板30に支持する部分の部分拡大図である。図4に示すように、金属製の管板30の内部には水室50が形成され、水室50には冷却媒体である水が流され、これにより管板30を冷却している。また、管板30には、上下の濾筒28A、28Bが支持されると共に管板30を介して連結される。即ち、管板30には、貫通孔52が形成されると共に、貫通孔52の管板30上面には、球面嵌込部54Aを有するリング状の保持部材54がボルト56で固定される。そして、上側の濾筒28Aの下端部についても、膨張性マット12を介して金属環16で把持されると共に、その金属環16の下端が保持部材54の球面嵌込部54Aに密封性を有するように嵌め込まれる。また、上側の濾筒28Aの胴体部(セラミック管10の上下端以外の部分)は、断熱マット18、膨張性マット12を介して金属環16に嵌合される。
【0014】一方、下側の濾筒28Bの上端部は、膨張性マット12を介して金属環16で把持されると共に、その金属環16が貫通孔52の内周面に沿って設けられたベローズ58を介して保持部材54の下面に接続される。また、下側の濾筒28Bの胴体部は、上側の濾筒28Aと同様に断熱マット18と膨張性マット12を介して金属環16に嵌合される。また、ベローズ58の内側には、断熱材60が設けられ、ベローズ58の高温ガスによる過熱を防止する。また、管板30の貫通孔52内周面の略下半分には、断熱材62が設けられ、管板30の貫通孔52からの冷却熱輻射により下側の濾筒28Bの外表面が強く冷却されて大きな熱応力が発生するのを防止する。
【0015】次に、上記の如く構成された集塵装置における本発明のセラミック管の補強構造の作用を説明する。先ず、除塵操作時について説明すると、導入口22から、温度が約900°C、圧力が約10Kg/cm2 の含塵ガス21が導入され、多数の濾筒28の内側を流下する。含塵ガス21は流下する途中で濾筒28により濾過され、濾過された清浄ガス27は濾筒28の側面から清浄ガス室32に流入する。一方、濾過されたダスト23は濾筒28の内面に堆積し、逆洗操作によってダスト23は缶体26下方のホッパに落下して溜まり、適宜排出される。清浄ガス室32内の清浄ガス27は、ダクト34、分岐ダクト44及び清浄ガス排気ダクト47を通って除塵装置20外に排出される。
【0016】この高圧、高温の含塵ガスを除塵する除塵操作において、セラミック管10の内側と外側に内外圧力差(例えば、3000mmAq)が生じる。この結果、セラミック管10にはセラミック管10の周方向に引張応力が発生する。そこで、本発明のセラミック管の補強構造では、上記構成の如く、セラミック管10と金属環16との一定幅の隙間で膨張性マット12を膨張せしめておくことにより、セラミック管10の胴体部外周に圧縮応力が付与されているので、内外圧力差により生じる引張応力を減少させることができる。これにより、セラミックスの引張応力に対する強度が弱いという欠点を補うことができるので、濾筒28の破損を未然に防止することができる。また、この高圧、高温の含塵ガス21を除塵する除塵操作において、セラミック管10の内側と外側に内外温度差(例えば約100°C)が生じる。この結果、何らの対策もない場合には、セラミック管10の外周には熱応力による引張応力が発生する。そこで、本発明のセラミック管の補強構造では、セラミック管10と膨張性マット12の間に断熱マット18を介在させて、セラミック管10の内側と外側の温度差を小さくして熱応力による引張応力を減少させると共に、発生した引張応力をセラミック管10の外周面に付与したる前記圧縮応力により減少させることができる。これにより、濾筒28の破損を未然に防止することができる。
【0017】このような圧力差と温度差は特に逆洗操作の際に顕著である。逆洗操作時について説明すると、逆洗用電磁弁35を開いて短時間圧縮空気を注入する。これにより、高圧の逆洗ガスが清浄ガス室32内に供給されて清浄ガス室32の圧力を高めるので、濾筒28の内側の圧力よりも外側の圧力が高圧となり、逆洗エアが清浄ガス室32から濾筒28内に流れ、濾筒28内面に付着したダスト23を剥離する。そして、逆洗操作は除塵装置10全体の除塵操作を中断することなく、3つの清浄ガス室32について順番に行われ、逆洗が行われていない清浄ガス室32は除塵操作が行われている。この逆洗操作において、逆洗操作が行われていない清浄ガス室32の濾筒28の内側と外側の内外圧力差は、3つの清浄ガス室32全てが除塵操作を行っている場合に比べて大きな内外圧力差になる。これは、逆洗操作が行われると、逆洗ガスが濾筒28内に送り込まれる含塵ガス側の圧力が上昇し、その分、除塵操作を行っていない清浄ガス室32が減圧になり内外圧力差が大きくなる為である。この結果、セラミック管10にはセラミック管10の周方向に大きな引張応力が発生する。また、逆洗操作時におけるセラミック管10の内側と外側の温度差を見た場合、逆洗直前まで高温の含塵ガス21の除塵操作が行われていたセラミック管10は、含塵ガス21と同程度の高温になっている。この結果、セラミック管10の温度より低い逆洗ガスでセラミック管10の外周が冷却されることにより熱応力による周方向の引張応力が発生する。このような逆洗操作によってセラミック管10に発生する引張応力に対しても、本発明のセラミック管の補強構造によれば、引張応力を減少させることができるので、濾筒28の破損を未然に防止することができる。
【0018】このように、本発明のセラミック管の補強構造によれば、セラミック管10の胴体部外周に膨張性マット12を介して金属環16で嵌合する構造にして、膨張性マット12の膨張力によりセラミック管の外周面に圧縮応力を付与するようにした。これにより、セラミック管10に対して機械的或いは熱的原因によって発生する引張応力を減少してセラミック管の強度を補強することができる。
【0019】また、セラミック管10と膨張性マット12との間に断熱マット18を介在させるようにすると、熱応力が発生しにくくなり、熱応力による引張応力を抑制することができるので、セラミック管10の破損を更に確実に防止することができる。図5、図6は、本発明のセラミック管の補強構造の別の態様を説明する断面図である。尚、図1、図2で説明したと同じ部材には同符号を付して説明する。
【0020】図5に示すセラミック管の補強構造は、緻密質のセラミック管64の胴体部外周に膨張性マット12を介して金属環16で嵌合して構成される。また、図6R>6に示すセラミック管の補強構造は、図5に示したセラミック管64と膨張性マット12の間に断熱マット18を介在させたものである。そして、これらの補強されたセラミック管は、金属管では耐熱性の点で使用できないような高温加圧流体(ガス及び液体)の配管として最適である。上記構成の配管では、配管の内外圧力差及び内外温度差による引張応力を減少させることができる。従って、配管の強度を向上させ、熱応力を抑制することができるので、配管の破損を未然に防止できる。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るセラミック管の補強構造によれば、セラミック管の胴体部外周に膨張性マットを介して金属環で嵌合する構成にして、膨張性マットの膨張力によりセラミック管の胴体部外周に圧縮応力を付与するようにした。これにより、セラミック管に対して機械的或いは熱的原因で発生する引張応力を減少してセラミック管の強度を補強することができる。
【0022】また、セラミック管と膨張性マットとの間に断熱マットを介在させるようにしたので、セラミック管に圧縮応力を付与しながら、熱応力による引張応力を抑制することができるので、セラミック管の信頼性を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るセラミック管の補強構造を示す部分断面図
【図2】本発明に係るセラミック管の補強構造の別の態様を示す部分断面図
【図3】本発明によるセラミック管を濾筒として使用する集塵装置の概略図
【図4】本発明のセラミック管の補強構造を集塵装置の濾筒に適用した場合の部分断面図
【図5】本発明のセラミック管の補強構造の別の態様を示す部分断面図
【図6】本発明のセラミック管の補強構造の別の態様を示す部分断面図
【符号の説明】
10…セラミック管(多孔質)
12…膨張性マット
14…通気孔
16…金属環
18…断熱マット
20…集塵装置
21…含塵ガス
26…缶体
28…濾筒
30…管板
32…清浄ガス室
40…逆洗がす供給ダクト
47…清浄ガス排気ダクト
50…水室
54…保持部材
58…ベローズ
64…セラミック管(緻密質)

【特許請求の範囲】
【請求項1】セラミック管の胴体部外周に膨張性マットを介して金属環を嵌合して成り、前記膨張性マットの膨張力により前記セラミック管の外周面に圧縮応力を付与することを特徴とするセラミック管の補強構造。
【請求項2】前記セラミック管と前記膨張性マットとの間に断熱マットを介在させる請求項1のセラミック管の補強構造。
【請求項3】前記セラミック管が多孔質フィルタ管であると共に、前記金属環には多数の通気孔が形成され、且つ、前記膨張性マット及び断熱マットが通気性を有するものである請求項1又は2のセラミック管の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平8−109983
【公開日】平成8年(1996)4月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−245237
【出願日】平成6年(1994)10月11日
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)