説明

センサしきい値の設定方法

【課題】発光素子や回路構成部品の特性のばらつきに拘わらず、センサによる人体の有無の検知のためのしきい値を簡単に且つ適正に設定できるセンサしきい値の設定方法を提供する。
【解決手段】発光素子66と受光素子68とを有するセンサの人体検知の基準となるしきい値を設定するに際し、設定検知エリアの遠限に光反射体90を位置させた状態で発光素子66を発光させて、光反射体90からの反射光を受光素子68で受光し、その出力値をそのまましきい値として制御部によりしきい値メモリに記憶させ、設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動水栓等におけるセンサのしきい値の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発光素子から発した光を人体等の検知対象で反射させ、その反射光を受光素子で受光して、その受光量の大小に基づいて設定検知エリア内の検知対象の有無を検知するセンサが各種分野で広く用いられている。
【0003】
例えば自動水栓では発光素子と受光素子とを有するセンサを設け、発光素子から発した光を差し出された手で反射させて、その反射光を受光素子で受光し、受光量の大小に基づいて手を検知して吐水口から自動的に吐水するようにしている。
【0004】
通常、このセンサを備えた装置では受光素子で受光した反射光量を光電変換して出力し、その出力値を、マイコンを主要素とした制御部で予めしきい値メモリに記憶させてあるしきい値と比較し、そして出力値がしきい値よりも大きいときに検知対象有りと判定し、また出力値がしきい値に対して小さいときには検知対象無しと判定し、各種の制御を行う。
【0005】
ところでこの種センサを備えた装置、例えば上記の自動水栓では、発光素子の発光の駆動回路や受光素子で受光した光を光電変換する回路等を構成する部品に抵抗値のばらつきがあったり、発光素子の発光量にばらつきがあったりし、これに起因して検知対象が検知エリア内の同じ位置に位置していたとしても受光量、即ち光電変換後の出力値がばらついてしまう問題がある。
【0006】
従ってこれら回路部品や発光素子等のばらつきに拘わりなく上記のしきい値を一定の値に固定してしまうと、個々の製品ごとにセンサによる検知エリアが広狭ばらついてしまう。
特に公共トイレその他の手洗所に自動水栓を並べて設置してある場合、各自動水栓ごとの検知エリアのばらつきが目立ち易く、自動水栓の品質に対する信頼性が損なわれてしまう恐れがある。
【0007】
こうしたことから、従来にあっては工場出荷段階で各製品ごとにセンサの感度を調節することが行われている。
通常、このセンサの感度の調節は、具体的には光反射体を設定検知エリアの遠限においた状態で発光素子を発光させて反射光を受光素子で受光し、そして受光を光電変換した後の出力値が予め設定してあるしきい値に合致するように、発光の駆動回路に組み込んである可変抵抗を操作し発光量を調節すること、即ちそのことによって上記の出力値がしきい値と合致するように受光素子による受光量を調節することにより行う。
【0008】
或いは受光素子側の受光量を光電変換する回路に可変抵抗を組み込んでおいて、その可変抵抗を操作することで出力値をしきい値に合致させるようにする。
このようにすれば、発光素子や回路構成部品の特性のばらつきにも拘らず、個々の製品ごとに予め記憶させてある固定のしきい値とセンサによる検知エリアとを対応させることができる。
【0009】
しかしながら、工場出荷段階で例えば可変抵抗を作業者が操作して上記の調節作業を行う場合、その調節作業のために多くの手間と時間がかかる問題があり、加えてその調節作業のために作業者の熟練を必要とする問題があり、また作業者ごとに調節作業に個人的なばらつきが生じるといった問題も発生する。
【0010】
尚、下記特許文献1には「・・製品を出荷する際に、上記しきい値を適当と思われる一定の距離に手等の物体が存在するときの値に設定している。」との記載があり、工場出荷段階でしきい値を設定する旨開示されているが、その際にしきい値をどのようにして設定するかについて具体的な開示はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平2−164943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上のような事情を背景とし、発光素子や回路構成部品に特性のばらつきがあっても、これに拘わらずセンサによる検知対象の有無の検知のためのしきい値を簡単に且つ適正に設定することのできるセンサしきい値の設定方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
而して請求項1のものは、発光素子と受光素子とを有するセンサの該発光素子から発光した光の、人体等の検知対象からの反射光を受光素子で受光して光電変換し出力するとともに、出力値を制御部にてしきい値メモリに記憶させてあるしきい値と比較して、該しきい値に対する該出力値の大小に基づいて設定検知エリア内の検知対象の有無を検知するセンサの前記しきい値の設定方法であって、前記検知エリアの遠限に光反射体を位置させた状態で前記発光素子を発光させ、該光反射体からの反射光を前記受光素子で受光したときの前記出力値を前記しきい値として前記制御部にて前記しきい値メモリに記憶させることを特徴とする。
【0014】
請求項2のものは、請求項1において、前記センサが、該センサによる前記検知対象の検知に基づいて吐水を自動的に行う自動水栓のセンサであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0015】
以上のように本発明は、設定検知エリアの遠限に光反射体を位置させた状態で発光素子を発光させ、光反射体からの反射光を受光素子で受光したときの、光電変換による出力値をそのまましきい値として、しきい値メモリに記憶させるようになしたものである。
【0016】
即ち、従来にあってはしきい値メモリに一定のしきい値を予め記憶させ固定しておいて、設定検知エリアの遠限に置いた光反射体からの反射光量の光電変換の出力値がその一定のしきい値に合致するように、反射光量や光電変換の出力値を調節作業していたのに対し、本発明では設定検知エリア内の遠限に光反射体を位置させたときの受光素子による受光量を光電変換して得た出力値そのものをしきい値としてしきい値メモリに記憶させ設定するもので、従来にあってはしきい値が全ての製品に共通の固定のしきい値であったのに対し、本発明ではそのしきい値が個々の製品に対応した、個々の製品ごとに異なったしきい値として設定される。
【0017】
このように本発明によればしきい値が個々の製品ごとに設定検知エリアに対して正確に対応した値で設定され、しかも従来のように可変抵抗を操作する等の調節を作業者が個々の製品ごとに行う必要はなく、作業者は単に検知エリアの遠限に光反射体を位置させる作業を行うだけで良く、しきい値の設定作業も極めて短時間で簡単に行うことができる。
【0018】
更に本発明によれば、製品ごとの個々の発光素子や回路構成部品の特性のばらつきに拘わらず、即ちそれらに影響されることなく設定検知エリアに正確に対応した値でしきい値を設定することができ、またしきい値の設定に際して可変抵抗を調節作業する場合のように、個々の作業者によるばらつきを生ぜしめることもないし、作業に熟練を要することもなく、一律に設定検知エリアに対応してしきい値を設定作業することができる。
また各製品ごとにセンサの感度が一定に揃ったものとなり、センサを備えた装置の品質の信頼性を高めることができる。
【0019】
本発明では上記しきい値メモリとして、電気的にデータの消去及び書換えの可能な不揮発性の半導体メモリを用いることができる。
【0020】
また本発明は上記の光センサを備えた各種装置に適用可能であるが、請求項2に従って、センサによる検知対象の検知に基づいて吐水を自動的に行う自動水栓のセンサのしきい値設定方法として特に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の適用対象の一例としての自動水栓の図である。
【図2】図1の自動水栓におけるセンサ及び周辺部の要部断面図である。
【図3】本自動水栓の制御部による制御系統のブロック図である。
【図4】本実施形態のセンサしきい値の設定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明をキッチン用水栓として好適な自動水栓に適用した場合の実施形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
図1において、10はカウンタで、このカウンタ10上に起立する状態で水栓本体部12が設けられ、更にこの水栓本体部12から吐水管14が延び出している。
吐水管14は、管軸方向において吐水口16を有する先端側の吐水ヘッド18と、基端側の吐水管本体20との分割構造とされている。
【0023】
吐水管本体20には、可撓性を有する給水ホース(図示省略)が挿通されてそこに収納され、この給水ホースが吐水ヘッド18に接続されている。
吐水ヘッド18は、この給水ホースとともに吐水管本体20から引出可能とされている。
即ちこの例の自動水栓はホース収納式の自動水栓である。
【0024】
吐水管本体20には、その上面に原水用センサ26と、浄水用センサ28とが設けられている。
ここで原水用センサ26,浄水用センサ28は何れも光センサ(ここでは赤外線式光センサ)から成っている。即ち後述の発光素子66,76(図2参照)から光を発光し、そして人体等の検知対象(以下単に人体とする)による反射光を受光素子68,78で受光することで人体検知するようになっている。
これら原水用センサ26及び浄水用センサ28はそれぞれ上方に向けて、詳しくは使用者に向かって斜め前方の上方に向けて設けられている。
【0025】
即ち、吐水口16からの吐水の方向が下向きであるのに対し、これら原水用センサ26及び浄水用センサ28は、それぞれ検知方向が吐水の方向とは異なった方向とされており、吐水口16からの吐水方向前方の人体やその他の対象物を検知しない向きで設けられている。
【0026】
ここで原水用センサ26は、その検知方向前方即ち上方に使用者が手かざししたとき、これを検知して吐水口16から原水(水道水)、詳しくは水と湯とを所定比率で混合して適温に温度調節した温水を吐水させる。
原水用センサ26は、その後人体非検知となっても温水の吐水を継続させ、そして再び使用者による手かざし操作によって人体検知したとき、吐水口16からの温水の吐水を停止させる。
【0027】
浄水用センサ28もまた同様で、使用者の手かざし操作によって人体検知すると、そこで吐水口16から浄水(水道水を浄化した水)を吐水させる。
浄水用センサ28は、その後人体非検知となっても浄水の吐水を継続させ、そして再び使用者が手かざし操作をすることによって人体検知したときに、そこで浄水の吐水を停止させる。
即ち原水用センサ26,浄水用センサ28は、何れも人体検知するごとに吐水と止水とを交互に切り換える手かざし式の交互センサとされている。
【0028】
上記水栓本体部12は、その内部に設けられた混合弁30と、これを操作するレバーハンドル32とを有している。ここで混合弁30は、水と湯とを所定比率で混合して適温の温水とする。
レバーハンドル32は、左右回動操作によって水と湯との混合比率を調節し、即ち混合水の温度を調節し、また上下回動操作によって温水の吐水流量を調節する。
【0029】
この例において、給水元管からの水はカウンタ10下の止水栓34を経て給水路36を通じ混合弁30へと供給される。
また給湯元管からの湯が、止水栓38を経て給湯路40を通じ混合弁30へと供給される。
そして混合弁30に供給された水と湯とが、混合弁30で所定比率で混合されて適温の温水とされ、混合弁30から延び出した流出管へと流出せしめられる。
【0030】
この流出管には、上記の可撓性の給水ホースが接続されており、それら流出管と給水ホースとによって、その内部に流出路42が形成されている。
即ち上記可撓性を有する給水ホースは、カウンタ10の下方に垂れ下がっており、吐水ヘッド18とは反対側の端部が混合弁30から下向きに延び出した流出管に接続されている。
図中42Aは混合弁30側の流出路を、また42Bは給水ホース側の流出路をそれぞれ表している。
【0031】
カウンタ10の下方には、流出路42上にこれを開閉する原水用の電磁弁44が設けられていて、その電磁弁44の開閉により、吐水口16からの温水(原水)の吐水と止水とが行われる。
【0032】
この電磁弁44は、その作動制御を行うマイコンを主要素とした制御部46(図3参照)に電気的に接続されている。
この制御部46にはまた、上記の原水用センサ26及び浄水用センサ28が電気的に接続されている。
制御部46は、原水用センサ26による人体検知に基づいて電磁弁44を開閉制御し、吐水口16からの温水の吐水と止水とを制御する。
尚給水路36,給湯路40上には混合弁30側への水,湯の流れのみを許容し、逆方向の流れを阻止する逆止弁48が設けられている。
【0033】
給水元管からの水はまた、逆止弁48の下流部で給水路36から分岐した浄水路50に取り出され、そして浄水路50上に設けられた浄水器52の浄化カートリッジを通過してそこで浄化された上で、浄化後の水(浄水)が、混合弁30をバイパスして流出路42に導かれ、そしてその流出路42を通じて吐水ヘッド18の吐水口16から吐水されるようになっている。
この浄水路50上には、浄水器52への原水の流入側において浄水用の電磁弁54と定流量弁56とが設けられている。
【0034】
電磁弁54は制御部46に電気的に接続されており、制御部46による電磁弁54の開閉制御によって、吐水口16からの浄水の吐水と止水とが行われる。
詳しくは、浄水用センサ28による人体検知に基づいて電磁弁54が制御部46により開閉制御されることによって、浄水の吐水と止水とが行われる。
【0035】
図1に示しているように、吐水管14は逆U字状のグースネック形状をなしており、その最上位の部位から先端の吐水口16に向かって下がり形状をなしている。
そしてその最上位の部位と吐水管本体20の先端との間の中間部分に、上記の原水用センサ26と浄水用センサ28とが設けられている。
【0036】
詳しくは、吐水管14には平面形状が管軸方向に長い矩形状をなす、透光性の樹脂にて形成されたセンサ窓部60,62が管軸方向に、即ち使用者から見て上下方向に並べて設けられており、そしてそれらセンサ窓部60,62の裏側の位置に上記の原水用センサ26及び浄水用センサ28が管軸方向に並べて設けられている。
【0037】
図2に原水用センサ26,浄水用センサ28及び周辺の構成が具体的に示してある。
同図に示しているように、原水用センサ26は基板64上に発光素子66と受光素子68とを有しており、発光素子66から光を発光するとともに受光素子68によって反射光を受光し、その受光量の大小に基づいて、詳しくは後に述べるように受光を光電変換し得られた出力値(電圧値)の大小に基づいて検知エリア内の人体検知を行う。
【0038】
この原水用センサ26側の基板64上には、発光素子66と受光素子68との間の位置においてサウンダ69が搭載されている。
このサウンダ69は、原水用センサ26又は浄水用センサ28が人体検知したときにその検知音を発生し、使用者に対して原水用センサ26又は浄水用センサ28が人体検知したことを使用者に対して知らしめる。
【0039】
この原水用センサ26に隣接した下位置には、原水を表示する光表示部70が設けられている。
またこれに対応して、基板64上には光表示部70の直下の位置に光表示部70を光らせるためのLED72が搭載されている。
光表示部70は透光性の樹脂にて構成されており、LED72が点灯することによって光表示部70が光発色し表示を行う。
【0040】
この例において、LED72は赤(Red),緑(Green)及び青(Blue)を発色するLEDをユニット化した3色LEDから成っており、無段階で連続的に色変化が可能で、光表示部70をこれに対応した色で光発色させる。
【0041】
この例において、LED72は温水が吐水されていないときには点灯保持(ここではオレンジ色に点灯保持)し、また温水(又は水若しくは湯。この実施形態ではレバーハンドル32の操作によって温水のみならず水又は湯のみの吐水も可能である)が吐水されているときには点滅状態となって、現在温水(又は水若しくは湯)が吐水されていることを光表示部70にて表示させる。
【0042】
このとき、LED72は原水吐水中においては吐水温度に応じて発色を変化させ、その発色に基づいて現在の吐水温度を光表示部70にて表示させる。
即ち、吐水の温度が30℃以下の冷たい水のときには青色を発色し、また吐水の温度が中間の温度、具体的にはここでは38〜42℃のときにはオレンジ色を発色し、更に吐水の温度が高温のとき、具体的には45℃以上の高温のときには赤色を発色し、現在の吐水の温度を光表示部70にて表示させる。
【0043】
浄水用センサ28もまた、基板74上に発光素子76と受光素子78とを有しており、発光素子76から発光して反射光を受光素子78で受光し、そしてその受光量の大小に基づいて、詳しくは光電変換後の出力値の大小に基づいて検知エリア内の人体検知を行う。
【0044】
基板74上にはまた、これら発光素子76と受光素子78との間の位置においてLED80が搭載されている。
このLED80は、センサ窓部62の裏面に貼着されたシールに記された「交換」の文字を点灯によって光により浮き上がらせるもので、使用者はその「交換」の文字が浮き上がることによって、上記の浄水器52における浄化カートリッジが交換時期に来たことを知ることができる。
【0045】
この浄水用センサ28に隣接した上側位置には、浄水を表す透光性の樹脂から成る光表示部82が設けられており、またこれに対応して、基板74上にはその光表示部82の直下の位置にLED84が搭載されている。
光表示部82はLED84の点灯によって発色し表示を行う。
【0046】
この例では、LED84は浄水を吐水していないときには点灯保持(ここでは青色に点灯保持)して光表示部82を発色させ、現在浄水が吐水されていないことを表示せしめる。
また一方、浄水を吐水しているときにはLED84は点滅状態となって、光表示部82により現在浄水が吐水されていることをその発色により光表示せしめる。
【0047】
この例の自動水栓では、原水用センサ26における発光素子66が下側位置で受光素子68が上側位置に、また浄水用センサ28における発光素子76が上側位置で受光素子78が下側位置にそれぞれ配置されている。
【0048】
詳しくは、原水用センサ26の発光素子66が浄水用センサ28に対して反対側、即ち遠い側の下側位置に配置され、また浄水用センサ28の発光素子76が原水用センサ26に対して反対側、即ち遠い側の上側位置に配置され、そして原水用センサ26,浄水用センサ28における各受光素子68,78が互いに近い位置に配置されている。
【0049】
原水用センサ26,浄水用センサ28における発光素子66,76及び受光素子68,78がそのように配置されていることによって、使用者が原水用センサ26又は浄水用センサ28を手かざし操作したときに誤検知を生じないようになしてある。
【0050】
詳しくは、使用者が浄水を吐水させようとして浄水用センサ28上に手かざし操作したとき、原水用センサ26の発光素子66が浄水用センサ28から遠い側に配置してあることによって、原水用センサ26がこれを誤検知するのを防止し、また逆に使用者が温水を吐水させようとして原水用センサ26上に手かざし操作したとき、浄水用センサ28の発光素子76が原水用センサ26から遠い側に配置してあることによって、浄水用センサ28がこれを誤検知するのを防止している。
【0051】
この例では、基板74の下面に上記のマイコンを主要素とした制御部46が設けられている。
図3に、この制御部46による制御系統がブロック図として示してある。
図に示しているように原水用センサ26は、制御部46からのパルス信号により駆動回路が動作して発光素子66をパルス発光させ、そしてその反射光を受光素子68で受光して、その受光量が光電変換回路85にて光電変換され出力される。そしてその出力値(電圧値)が制御部46に入力される。
【0052】
同様に浄水用センサにおいても、制御部46からのパルス信号により駆動回路が動作して発光素子76がパルス発光し、そしてその反射光が受光素子78で受光されて、その受光量が光電変換回路87により光電変換され出力される。そしてその出力値(電圧値)が制御部46に入力される。
【0053】
そして制御部46によりそれらの出力値がしきい値メモリ86に予め記憶し、設定してあるしきい値と比較され、出力値がそのしきい値よりも高ければ人体が検知エリア内にあると判定されて、電磁弁44又は54に信号出力され、それら電磁弁44,54が開又は閉作動せしめられる。
【0054】
制御部46にはまた、原水を表示するLED72,浄水を表示するLED84,浄化カートリッジの交換表示用のLED80及び検知音を発生するサウンダ69が接続されており、それぞれが制御部46にて作動制御される。
尚制御部46には、流出路42の原水の温度を検知する温度検知センサとしてのサーミスタ88が接続されている。
制御部46はこのサーミスタ88にて検知した原水の温度に応じて、原水表示用のLED72の発色を制御する。
【0055】
この例では、しきい値メモリ86として電気的にデータの消去及び書換えの可能な不揮発性の半導体メモリであるEEPROM(イーイーピーロム)が用いられている。
即ち、従来にあってはしきい値メモリ86に一旦しきい値を記憶させ設定すると、その値は固定不変であったのに対し、この例ではしきい値メモリ86に対して制御部46により自在にデータの書込みが可能且つその値も可変であって、制御部46からの電気的な信号によって自在にしきい値を記憶させ、また変更することが可能である。
【0056】
而して従来にあってはしきい値メモリ86の設定しきい値が固定不変であって、原水用センサ26,浄水用センサ28のセンサ感度を工場出荷段階で調整する際に、予めしきい値メモリ86に記憶させ設定してある固定不変のしきい値に対して、原水用センサ26,浄水用センサ28からの出力値、詳しくは図4に示しているように設定検知エリアの遠限に光反射体90を位置させたときの受光素子68,78による受光の光量を光電変換して得た出力値が、その予め設定してある固定不変のしきい値に合致するように発光素子66,76からの発光量等を調整作業していた。
【0057】
これに対してこの実施形態では、検知エリアの遠限に光反射体90を置いたときの原水用センサ26,浄水用センサ28からの出力値を、そのまま制御部46がしきい値メモリ86にデータ格納し、これを検知エリア内の人体検知のためのしきい値として設定する。
従ってそのしきい値メモリ86に設定されるしきい値は全ての製品に共通の一定の値ではなく、各製品ごとにまちまちの値となる。
【0058】
この例において、しきい値の設定は詳細には次のようにして行う。
即ち、先ず設定操作部92を操作して制御部46に信号を送り、制御部46にしきい値の設定モードを実行させる。
そして図4に示しているように光反射体90を設定検知エリアの遠限に位置させ、その状態で発光素子66(又は76)を発光させ、その反射光を受光素子68(又は78)で受光させる。その受光は光電変換回路85又は87で光電変換され、出力値(電圧値)が制御部46に入力される。
【0059】
そして再び設定操作部92を操作して制御部46にしきい値決定信号を供給することで、制御部46は原水用センサ26又は浄水用センサ28からの出力値をそのまま人体検知のためのしきい値としてしきい値メモリ86に格納し記憶させて、これを決定のしきい値として設定する。
以後、制御部46は原水用センサ26,浄水用センサ28からの出力値としきい値メモリ86のしきい値とを比較して、その大小により検知エリア内に人体があるか無いかを判定する。
【0060】
尚この例ではしきい値設定のための専用の信号線を設けて、その信号線を通じてしきい値設定を行うようになしているが、例えばサーミスタ88からの信号線を利用して或いはその他の信号線を利用して、上記と同様のしきい値設定を行うようになすといったことも可能である。
【0061】
以上のような本実施形態によれば、人体検知のための基準となるしきい値が個々の製品ごとに設定検知エリアに対して正確に対応した値で設定され、しかも従来のように可変抵抗を操作する等の調節を作業者が個々の製品ごとに行う必要はなく、作業者は単に検知エリアの遠限に光反射体90を位置させる作業を行うだけで良く、しきい値の設定作業も極めて短時間で簡単に行うことができる。
【0062】
更に本実施形態によれば、製品ごとの個々の発光素子66,76や回路構成部品の特性のばらつきに拘わらず、即ちそれらに影響されることなく、設定検知エリアに正確に対応した値でしきい値を設定することができ、またしきい値の設定に際して可変抵抗を調節作業する場合のように、個々の作業者によるばらつきを生ぜしめることもないし、作業に熟練を要することもなく、一律に設定検知エリアに対応してしきい値を設定作業することができる。
また各製品ごとにセンサの感度が一定に揃ったものとなり、自動水栓の品質の信頼性を高めることができる。
【0063】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明は上記の原水用センサ26だけが設けられている自動水栓のしきい値設定方法として適用することも可能であるし、また上記実施形態ではセンサが吐水と止水とを交互に切り替える交互センサの場合であるが、人体検知することで自動吐水を行わせ、また人体非検知となることで自動止水するようになしてある自動水栓のセンサしきい値の設定方法として適用することも可能である。
更に場合によって水栓以外のセンサのしきい値設定方法として適用することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0064】
26 原水用センサ
28 浄水用センサ
46 制御部
66,76 発光素子
68,78 受光素子
86 しきい値メモリ
90 光反射体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と受光素子とを有するセンサの該発光素子から発光した光の、人体等の検知対象からの反射光を受光素子で受光して光電変換し出力するとともに、出力値を制御部にてしきい値メモリに記憶させてあるしきい値と比較して、該しきい値に対する該出力値の大小に基づいて設定検知エリア内の検知対象の有無を検知するセンサの前記しきい値の設定方法であって
前記検知エリアの遠限に光反射体を位置させた状態で前記発光素子を発光させ、該光反射体からの反射光を前記受光素子で受光したときの前記出力値を前記しきい値として前記制御部にて前記しきい値メモリに記憶させることを特徴とするセンサしきい値の設定方法。
【請求項2】
請求項1において、前記センサが、該センサによる前記検知対象の検知に基づいて吐水を自動的に行う自動水栓のセンサであることを特徴とするセンサしきい値の設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−164433(P2010−164433A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7061(P2009−7061)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】