説明

ゼリー剤およびコンドーム

【課題】精液溜のない亀頭形状に隙間なく適合するコンドームにおいて、人体とゴムの密着性を向上する。
【解決手段】上部には亀頭被装部21を、下部には陰茎を挿入する開口部23を有し、前記亀頭被装部先端21は精液溜を有さず亀頭に隙間なく適合する形状であるコンドーム20において、前記亀頭被装部21先端の内側に、ポリオール系化合物、カルボキシビリルポリマーを組み合わせたゼリー10を塗布するコンドーム20を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンドームおよびコンドームに塗布するゼリー剤の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム等の弾性体で作られた男性の性病予防用・避妊用のサックとしてコンドームは公知となっている。通常、コンドームは、亀頭被装部先端に精液溜を有している。例えば、特許文献1は、精液溜(特許文献中の符号5)を有するコンドームを開示している。精液溜とは、射精後の精液を溜めるための凸形状に形成された亀頭被装部先端の袋状突起である。
しかし、精液溜を有するコンドームは、装着時において、使用者の亀頭に隙間なく適合することができない。また、精液溜部分を中心に、シワや折り重なった部分ができる。そのため、使用者は、装着した場合においても装着してないかのような自然感を実感できない。このような背景から、近年、精液溜のない亀頭形状に隙間なく適合したコンドームが公知となっている。
【特許文献1】特開2003−199780号公報
【0003】
一方、コンドームは、亀頭被装部先端の内側にゼリーを塗布している。ゼリーは、亀頭とコンドームを密着させる役割を担っている。また、ゼリーは、装着時において、亀頭とコンドーム内部に空気が混入することを防止する役割を担っている。つまり、ゼリーは、コンドーム内部に空気が混入した場合に、性交時の摩擦によってゴムが破損することを防止している。
従来の精液溜を有するコンドームにおいては、精液溜部分にゼリー剤を塗布して精液溜部分を閉じておくことにより、精液溜への空気の流入を防ぐものがある。しかし、先端部を亀頭形状に構成した精液溜を有しないコンドームや、女性性器に装着されるコンドームにおいては、空気流入を抑制するために従来のゼリー剤を用いることは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の精液溜を有するコンドームの場合は、ゼリーは、精液溜すなわちゴムとゴムとを密着させる必要があった。しかし、精液溜のないコンドームの場合は、ゼリーは、亀頭すなわち人体とゴムとを密着させる必要がある。ここで、精液溜を有するコンドームに用いられていたゴムとゴムとを密着するゼリーは、精液溜の小さな空間において空気の流入を防ぎ、精液溜部分の密着を確保するものであり、装着前の拡がった状態から人体とゴムとを密着させる場合においては、十分な密着性を得ることが難しい。また、従来のゼリー剤は主に親水性のものを用いておりゴムへの付着性が少なく、付着位置にとどまることのできる時間が短くなる可能性がある。つまり、近年のコンドーム亀頭被装部先端の形状変化により、人体とゴムを密着させるゼリー剤が必要とされている。さらに、女性用コンドームの普及にともない、女性側に対してもフィット感を得やすいコンドームが要求されている。
そこで、このような課題を解決すべく、精液溜のない亀頭形状に隙間なく適合したコンドーム等において、人体とゴムの密着性を向上できるゼリー剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
本発明は、人体へのゴム膜の付着を安定させ、人体とゴム膜との密着性を確保するためのゼリー剤を用いるものである。ゼリー剤としては、ポリオール系化合物である、ポリエーテル系の高分子化合物、酢酸ビニル樹脂、エステルガム、又はポリイソブチレン等、もしくはこれらの組合せを用いることができる、特にポリエチレングリコールを用いることにより、ゼリー剤の厚みを少なくしながら、ゴム膜の密着性と安定性そしてクッション性を得ることができる。
【0006】
例えば、ポリオール系化合物の一つであるポリエチレングリコールは、無色透明な高粘性の物質である。ポリエチレングリコール系ポリマーは、親水性が付与された生分解性ポリマーである。ポリエチレングリコール系ポリマーは、ポリマー中のエチレンオキシド含量が増加するにしたがって親水性が増し、水に膨潤する。また、ポリエチレングリコール系ポリマーは、親水性薬剤との親和性にも優れている。
【0007】
カルボキシビニルポリマーは、アルカリの選択により水以外の溶剤も増粘することができる。さらに、カルボキシビニルポリマーは、水溶性のビニルポリマーであって、毒性や眼粘膜・皮膚に対する刺激はほとんどない。なお、カルボキシビニルポリマーの利用状況により、アルカリ剤の添加などにより適宜pHの調整が行われたものを用いるものである。
このカルボキシビニルポリマーは、安定した粘性が得られ、チキソトロピー性にも優れていることから化粧品に汎用されている。また、カルボキシビニルポリマーは、増粘効果が高く温度による粘度の変化が少なくかつ微生物による汚染がされ難いため、増粘剤として最も多く使用されている。これらを踏まえ、カルボキシビニルポリマーは、医薬品及び化粧品においてよく用いられている。
また、カルボキシビニルポリマーは、国内の医薬品において、直腸、膣又は尿道に使用された実績を有している。すなわち、カルボキシビニルポリマーは、人体の粘膜に対する安全性が高い物質である。
【0008】
防腐剤は、ゼリー剤に添加されて、ゼリー剤の貯蔵性を向上することができる。防腐剤としては、化粧品や目薬等に用いられる医薬品防腐剤を用いることができる。例えば、パラヒドロキシ安息香酸エステル類等ある。本発明において、防腐剤は特に限定されるものではなく、微生物の侵入・発育・増殖を防ぐものであれば良い。
なお、本発明のゼリー剤は、水分を含まないため、防腐剤の量を少なくすることができる。
【0009】
ゼリー剤は、重量比において、ポリエチレングリコールを90.0〜99.8に対して、カルボキシビニルポリマーが0.1から5.0となるようにするものである。そして、防腐剤を適量添加するものである。なお、これに水を加えて、ゼリー剤の調節を行うことも可能である。水を加えない場合には、ポリエチレングリコールを90w%以上とし、カルボキシビニルポリマーおよび添加剤を加えることによりゼリー剤を得ることができる。
このようにして、ゼリー剤は、ポリエチレングリコール及びカルボキシビニルポリマーの有する高粘性によって、人体とゴム製品との密着性を高めることができる。また、ゼリーは、ポリエチレングリコールが水に溶けやすいため、発汗等によっても密着性が損なわれることはない。さらに、ポリエチレングリコールは水に溶けることで水和熱を発生して人体温度同等となるため、使用者はゴム製品を装着した場合においても自然な装着感を実感できる。
【0010】
すなわち、請求項1においては、人体とゴムとを潤滑に密着させるゼリー剤において、
ポリオール系化合物と、カルボキシビニルポリマーとを含み、ポリオール系化合物が90.0から99.8重量パーセントであり、カルボキシビニルポリマーが0.1から5.0重量パーセントであるゼリー剤を用いる。
【0011】
さらに、請求項2においては、上記のゼリー剤をコンドームに塗布する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、ゼリー剤の成分中のポリオール系化合物は、無色透明な高粘性の物質であるため、ゴム製品と人体との密着性を向上することができる。また、同じくポリオール系化合物は、水分を吸収しやすいため、発汗等によっても密着性が損なわれることはない。さらに、同じくポリオール系化合物は、水和熱を発生するため、使用者への温感作用により装着感を向上できる。また、ゼリー剤の厚みが少なくても、十分な密着性と安定性と得ることができ、人体表面に対する一体感を得ることができる。また、ゴムに対する付着性が高く、かつ塗布した状態における性状の安定性および塗布した位置よりの移動が少ないため、位置の保持性が高いゼリー剤を得ることができる。
【0014】
請求項2においては、精液溜のない亀頭形状に隙間なく適合したコンドームにおいて、請求項1の効果を得ることができる。すなわち、コンドームと亀頭との密着性を向上することができる。また、亀頭の発汗等によっても密着性が損なわれることはない。さらに、使用者は、コンドームを装着した場合においても自然な装着感を実感できる。このようにして、精液溜のないコンドームの装着性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1はコンドームの全体的な構成を示した側面一部断面図、図2は被包装状態におけるコンドームを示す斜視一部断面図である。
【0016】
本発明の実施例において、ポリオール系化合物の一つであるポリエチレングリコールを用いたゼリー剤であるゼリー10について説明する。
ここでいうゼリー10は、衛生用品分野において、人体とゴム製品を密着かつ潤滑させるために用いるゼリーである。本実施例において、ゼリー10は、ポリエチレングリコールを主剤とするものであり、これにカルボキシビニルポリマー及び防腐剤を加えて調整するものである。実施例においては、ポリエチレングリコールが90.0から99.8重量パーセントであり、カルボキシビニルポリマーが0.1から5.0重量パーセントであるゼリー剤に、防腐剤を添加したものを用いる。
【0017】
次に、図1を用いて、ゼリー10を男性用コンドーム20に用いた例について説明する。
コンドーム20は、ラテックスゴムやポリウレタンゴムの薄膜をサック状にした避妊具である。また、コンドーム20は、粘膜の接触も遮断するため、HIV等の性感染症の予防にも一定の効果がある。コンドーム20は、コンドーム20は、男性用であり、勃起した状態のペニスにかぶせて使用する。
コンドーム20は、使用感や違和感を少なくするため、その膜厚は薄く作られており、厚みは約0.02〜0.1mm程度である。
【0018】
図1に示すように、コンドーム20は、亀頭被装部21、胴部22及び開口部23から一体的に形成されている。
ここで、コンドーム20の上部は亀頭被装部21により構成されており、亀頭被装部21は、亀頭に隙間なく適合するように、略亀頭形状に構成されている。亀頭被装部21は丸みをおびた略円錐形状もしくはイチゴ形状に構成されており、亀頭被装部21の下部においては胴部22よりも大径に構成されている。亀頭被装部21は、内側にゼリー10が塗布されている。なお、亀頭被装部21の膜は性交時などにおいて破れない十分な膜の厚みを確保しているものである。
亀頭被装部21の下部には胴部22が接続している。コンドーム20の下部において、開口部23は、周囲にリング部24を形成して開口されている。リング部24は、コンドーム20の膣内残留の抑制のため、コンドーム20を構成する膜を巻き返すことにより、胴部22よりも肉厚に形成されている。
なお、コンドーム20の全体には、シリコーン油が塗布されており、コンドーム20の外側表面および装着時における潤滑性を確保するものである。
【0019】
このような構成とすることで、使用者の亀頭とコンドーム20の亀頭被装部21内側とは、ゼリー10を介して密着される。
このようにして、ゼリー10は、コンドーム20の亀頭被装部21と使用者の亀頭との密着性を向上することができる。また、ゼリー10は、亀頭の発汗等によっても亀頭と亀頭被装部21との密着性が損なわれることを防止できる。なお、これらの密着性は、通常ラテックスゴムに塗布されるシリコーンオイルを介していても損なわれることはない。さらに、ゼリー10は、使用者がコンドーム20を装着した場合においても自然な装着感を与えることができる。
このようにして、精液溜のない亀頭形状に隙間なく適合したコンドーム20において、装着性を向上できる。
さらに、射精時においては、ゼリー10が精液との親和により、精液が局所的に溜まることを防ぎ、コンドーム20をより破れにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】コンドームの全体的な構成を示した側面一部断面図。
【図2】被包装状態におけるコンドームを示す斜視一部断面図。
【符号の説明】
【0021】
10 ゼリー
20 コンドーム
21 亀頭被装部
22 胴部
23 開口部
24 リング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体とゴムとを密着させるゼリー剤において、
ポリオール系化合物と、カルボキシビニルポリマーとを含み、ポリオール系化合物が90.0から99.8重量パーセントであり、カルボキシビニルポリマーが0.1から5.0重量パーセントであることを特徴とするゼリー剤。
【請求項2】
請求項1記載のゼリー剤を塗布する
ことを特徴とするコンドーム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−93283(P2008−93283A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280520(P2006−280520)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000107284)ジェクス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】