説明

ソフトウェア評価システム

【課題】 サーバ装置の役割を果たす機器に対する負荷テストを、低コストで実現する。
【解決手段】 汎用の情報機器に、Transferorと呼ばれる転送用モジュールを搭載し、サーバ装置の役割を果たす機器に対する通信を、前記Transferorを経由して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、企業内LAN等のネットワークに接続するための機能を有するプリンタ装置、乃至スキャナ装置、乃至ファクシミリ装置、乃至プリンタ及びスキャナ及びファクシミリの何れかの機能を組み合わせた複合機を、汎用の情報機器を用いて構築したサーバ装置、乃至サーバ装置の役割を果たすプリンタ装置、乃至サーバ装置の役割を果たすスキャナ装置、乃至サーバ装置の役割を果たすファクシミリ装置、乃至サーバ装置の役割を果たすプリンタ及びスキャナ及びファクシミリの何れかの機能を組み合わせた複合機、と組み合わせて、一つのシステムとして動作させる場合の、サーバ装置乃至サーバ装置の役割を果たす各種装置に対する負荷テストに関わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタ装置、及びプリンタ機能だけでなくスキャナ機能やファクシミリ機能、コピー機能などを併せて有する複合機 (以下「複合機」と略す) は、企業内LAN等のネットワークに接続することがますます多くなっている。このため、企業内LANに多数台繋がったこれらの機器の設定を集中制御するために、1台のコンピュータ、もしくは1台のプリンタ装置、もしくは1台の複合機を、これら多数台の機器の設定情報を司るサーバ装置として用い、そのサーバ装置の役割を果たす機器に対して、複数のプリンタ装置及び複合機から、自動的に通信を行って設定情報を取得することによって、それら複数のプリンタ装置及び複合機に自動的にその設定が行われる機能が搭載されつつある。この機能に対して、例えば、コピー機能の排紙の設定として「片面2枚の裏が白い原稿を読み取った場合は、必ず両面1枚へコピーする」といった紙を節約する設定をオフィスの方針とした場合に、そのオフィス内に設置されたコピー機能を有するすべての複合機に対して手動でその設定をするのではなく、一台の複合機に設定するだけで同じ設定が自動的に他の複合機に施されるといった使い方により、上記方針の遵守が手間のかからない形で可能である。また別の例としては、部門IDを以って印字枚数の課金管理を行っている場合に、1台のプリンタ装置もしくはプリンタ機能を有する複合機に部門IDの設定をすれば自動的に他の装置に同じ設定が行われるため、多数の部門IDを以って多数のプリンタ装置及びプリンタ機能を有する複合機の印字枚数の課金管理をする際の手番が軽減できる、という使い方がある。
【0003】
前記のように、1台のコンピュータ、もしくは1台のプリンタ装置、もしくは1台の複合機を、多数台の機器の設定情報を司るサーバ装置として用い、そのサーバ装置の役割を果たす機器に対して、複数のプリンタ装置及び複合機から、自動的に通信を行って設定情報を取得する場合、サーバ装置の役割を果たす機器に対するアクセス集中に起因する障害を未然に防ぐことが重要である。その目的に対する手段としては、サーバ装置の役割を果たす機器に対する負荷テストが主に用いられる。負荷テストは、例えば、特許文献1のような手段を用いて実施される。
【特許文献1】特開2003−46569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記のような手段を用いて負荷テストを実施する場合、送信パケット及び受信パケットの内部に記されたネットワークアドレスを、ドライバレイヤで書き換える必要が生じる。このため、サーバ装置の役割を果たす機器に対する通信元が、汎用のコンピュータではなくプリンタ装置乃至複合機である場合や、汎用のコンピュータであってもドライバレイヤの変更が許されない場合などには、負荷テストが不可能であるか、もし可能であったとしても、送受信ソフトウェアの一部分を、ドライバレイヤの変更が可能なコンピュータに移植する必要があるため、多大な工数を要するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、比較的低コストで入手可能な、汎用の情報機器に、Transferorと呼ばれる転送用モジュールを搭載し、サーバ装置の役割を果たす機器に対する通信を、前記Transferorを経由して行うという手段を用いる。また、Transferorに対して、通信元であるプリンタ装置及び複合機を多数用意せずに、少数の通信元から複数回の通信を仕掛け、更にその複数回の通信に関してTransferor上で同期を取ることによって、サーバ装置の役割を果たす機器に対する負荷テストを、低コストで実現する、という手段を用いる。
【発明の効果】
【0006】
本発明を施したソフトウェア評価システムを用いることで、
(1) 被管理プリンタの台数を増やすことなく、
(2) 被管理プリンタの機器設定取得機能ファームウェアを変更することなく、
(3) 統合管理用プリンタの機器設定取得機能ファームウェアを変更することなく、
(4) プリンタに比べて比較的安価な汎用の情報機器を数台用意するだけで、
統合管理用プリンタに対して数十台〜数百台の被管理プリンタからの機器設定情報取得があったものと同等の高負荷環境のシミュレーションを行い、テストを行うことが可能となる。これによって、通信相手の台数が多数に上る場合の、動作確認及びデバッグといった一連のテスト操作に関して、コストを抑えつつ、実動作によって行う手段が提供される。このことによって、プリンタ装置もしくはプリンタ機能を有する複合機、及びそれらに対する管理ソフトウェアの品質向上のみならず、それらの製品の品質に対する、お客様の安心感を生み出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(実施例1)
本発明を施したソフトウェア評価システムを説明するために、そのソフトウェア評価システムで評価を行う対象である、機器設定情報取得の構成に関して説明する。
【0008】
図1は、機器設定情報取得の構成の一例をあらわす図である。この例では、統合管理用プリンタ1、及び被管理プリンタ2〜5の、合計5台のプリンタが、LAN6によってネットワーク接続されている。被管理プリンタ2〜5は、ユーザからの指示に応じて、もしくは定期的に、統合管理用プリンタ1に対して、LAN6を経由して、設定情報の取得を行う。取得は例えばWebサービス・リクエスト等の手段を用いて行われる。この機能により、ユーザがプリンタ1に対する設定の変更を指示するだけで、プリンタ2〜5にも同じ設定が施される。
【0009】
この例では、プリンタを「統合管理用プリンタ」及び「被管理プリンタ」として区別して説明しているが、実際には「統合管理プリンタ」の機能と「被管理プリンタ」の機能の両者がプリンタに搭載されていても良い。すなわち、「統合管理プリンタ」の機能と「被管理プリンタ」の機能の両方を「機器設定情報取得機能」として搭載したプリンタ1〜プリンタ5が、LAN6によってネットワーク接続され、役割としてプリンタ1が統合管理用の役割を、プリンタ2〜5が被管理の役割を果たす、という形態も可である。
【0010】
図1によって示される例においては、機器設定情報取得の機能をテストする際に、被管理プリンタ4台から、統合管理用プリンタ1台に対する、機器設定情報の取得がテスト可能である。しかし「1台のプリンタが管理できる台数」の上限を上げて、大規模なネットワークにおいて例えば「数百台のプリンタから1台のプリンタに対する、機器設定情報の取得テスト」すなわち「負荷テスト」を行うためには、図1によって示されるような形態では、プリンタも数百台必要になってしまう。通常、プリンタ装置には汎用の電子部品に加えて、ドラムやレーザー装置といった、プリンタ特有の、しかもコストがかかる部品が多用されているため、図1によって示されるような形態では、テストに多大なコストがかかる。
【0011】
図2は、機器設定情報取得の構成の、別の一例をあらわす図である。この例では、統合管理用PC11、及び被管理プリンタ12〜15が、LAN16によってネットワーク接続されている。被管理プリンタ12〜15は、定期的に統合管理用PC11に対して、LAN16を経由して、設定情報の取得を行う。この機能により、ユーザがPC11に対して、各プリンタの設定を保存するだけで、プリンタ12〜15に同じ設定が施される。この形態においても、大規模ネットワークに関する負荷テストには、多大なコストがかかる。
【0012】
図3は、機器設定情報取得の構成の、別の一例をあらわす図である。この例では、統合管理用PC21、及びプリンタドライバ等のプリンタに関する設定及びソフトウェアを保持する被管理PC22〜25が、LAN26によってネットワーク接続されている。被管理PC22〜25は、定期的に統合管理用PC21に対して、LAN26を経由して、設定情報の取得を行う。この機能により、ユーザがPC21に対して、例えば各プリンタドライバの設定を保存するだけで、PC22〜25にも同じ設定が施される。この形態においても、大規模ネットワークに関する負荷テストには、多大なコストがかかる。
【0013】
図4は、送信プロトコルがWebサービス・リクエストである場合の、機器設定情報取得の通信の概念図である。被管理プリンタ31から統合管理用プリンタ32に対して、HTTPプロトコルを用いて、設定情報のリクエストが行われる。設定情報をリクエストする「被管理プリンタ」は役割上"Requestor"と呼ばれ、設定情報のリクエストを受けて情報を提供する「統合管理用プリンタ」は役割上"Provider"と呼ばれる。
【0014】
前記図1〜図4で示した機器設定情報取得の形態に対して、高負荷状態のシミュレーションを行うための、本発明を施したソフトウェア評価システムの例を説明する。
【0015】
図5は、本発明を施したソフトウェア評価システムの構成図である。統合管理用プリンタ41及び被管理プリンタ42に加えて、Simulator Agent PC 43及び44が、LAN45を介して接続されている。第5図においては、Simulator Agent PCを2台としているが、Simulator Agent PCはそれ以上の台数に増やすことも可能である。
【0016】
図6は、本発明を施したソフトウェア評価システムにおいて、Simulator Agent PC上にTransferorを導入することを説明するための図である。Simulator Agent PC上には、Transferorと呼ばれるソフトウェアを複数導入する。Transferorは、Simulator Agent PCに割り当てられたIPアドレスとは別個のIPアドレスをそれぞれバインドし、TCP/IP及びUDP/IPパケットの待ち受けを行う。バインドするIPアドレスの設定は、例えばSimulator Agent PC上で100台分のTransferorを動作させたい場合、ユーザが予め「シミュレーションに172.24.4.1〜100を用いる」といった設定ファイルを作っておくといった手段を用いて行う。
【0017】
Transferorの役割は、パケットを受信し、そのパケットを自身からの送信であるかのようにネットワーク上の別ノードに転送することである。被管理プリンタには、統合管理用プリンタのIPアドレス、すなわち設定情報を取得すべきIPアドレスの設定を行うことが可能であるが、高負荷状態のシミュレーションにおいては、ユーザの指示によって、統合管理用プリンタのIPアドレスの代わりにそれぞれのTransferorのIPアドレスを設定し、被管理プリンタからそれぞれのTransferorへリクエストを行う。Transferorはそのパケットを自身からの送信であるかのように統合管理用プリンタに転送する。これによって、統合管理用プリンタにおいて、複数の被管理プリンタからの設定情報取得が行われたものと同じ状態を作り出すことが可能である。
【0018】
Transferorは様々なTCP/IP及びUDP/IPパケットをハンドリングできるが、本実施例では被管理プリンタから統合管理用プリンタへの機器設定情報取得をWebサービス・リクエストによって行うものとして説明する。また、本実施例では、Simulator Agent PC43上で、Transferorを10個動作させることにより、統合管理用プリンタに対してあたかも10台の被管理プリンタからの設定情報取得があったかのような高負荷環境のシミュレーションを行うものとして説明する。
【0019】
図7は、本発明を施したソフトウェア評価システムにおける、Transferorの処理をあらわす流れ図であり、本発明の特徴を最も簡潔にあらわすものである。Transferorは処理を開始すると(S1)、予め設定しておいたIPアドレス172.24.4.n(nは1〜10の何れか)をバインドし、パケットの待ち受けを行う(S2)。Requestorすなわち被管理プリンタからのRequestを受信すると(S3)、受信パケットの送信元IPアドレスを自身のIPアドレス172.24.4.nに書き換える(S4)。次にTransferorは、送信先IPアドレスをProviderすなわち統合管理用プリンタのIPアドレスである172.24.2.1と変更して、受信したパケットをProviderに対して転送し(S5)、Providerからの返信を待ち受ける(S6)。Providerからの返信を受信すると、Transferorは受信パケットの送信元IPアドレスを自身のIPアドレス172.24.4.nに書き換える(S7)。次にTransferorは、送信先IPアドレスをRequestorすなわち被管理プリンタのIPアドレスである172.24.1.1と変更して、受信したパケットをRequestorに対して転送する(S8)。この処理は、ユーザがTransferorに対して処理の終了を指示するまで(S9)行われる。処理の終了が指示されると、TransferorはIPアドレス172.24.4.nのバインドを解除し(S10)、処理を終了する(S11)。
【0020】
図8は、本発明を施したソフトウェア評価システムにおける、負荷テストのシーケンス図である。Requestorすなわち被管理プリンタから見ると、複数の統合管理用プリンタに対して機器設定情報取得リクエストを行っているだけであるが、図7の処理を行うTransferorの導入により、Providerすなわち統合管理用プリンタから見ると、複数の被管理プリンタからの機器設定情報取得リクエスト受信と同じ状態となる。図7に示した処理全体を繰り返すことによって、更に高負荷を実現することも可能である。また、Simulator Agent PCを増やすことで、更に動作させるTransferorを増やすことも可能である。例えば、10台のSimulator Agent PC上でそれぞれ100台分のTransferorを動作させることで、1,000台の被管理プリンタから1台の統合管理用プリンタへの設定情報取得リクエストが発生した状況を実現することも可能である。
【0021】
本実施例に示したソフトウェア評価システムによって、ユーザは図9のような形で
(1) 被管理プリンタの台数を増やすことなく、
(2) 被管理プリンタの機器設定取得機能ファームウェアを変更することなく、
(3) 統合管理用プリンタの機器設定取得機能ファームウェアを変更することなく、
(4) プリンタに比べて比較的安価な汎用の情報機器を数台用意するだけで、
統合管理用プリンタに対して数十台〜数百台の被管理プリンタからの機器設定情報取得があったものと同等の高負荷環境のシミュレーションを行い、テストを行うことが可能となる。これによって、テストに必要なコストを抑えつつ、大規模ユーザ環境における不具合を未然に防ぐことができる。
【0022】
(実施例2)
実施例1においては、Transferorの操作をそれぞれのSimulator Agent PC上で行う例を示したが、更に大規模な環境のシミュレーションを行うためにSimulator Agent PCを増やしたい場合、それぞれのSimulator Agent PC上でTransferorの操作を行わずに、別途コントロール用のPCをネットワークに繋げて、そのPCからリモート且つ集中で各Simulator Agent PC上の各Transferorの操作を行うようにした方が便利である。本実施例では、実施例1で示した構成に対して、Simulator Controller PCを導入した例を示す。
【0023】
図10及び図11は、本発明を施したソフトウェア評価システムの、別の一例の構成図である。統合管理用プリンタ71、被管理プリンタ72、Simulator Agent PC 74及び75に加えて、Simulator Controller PC73が、LAN76を介して接続されている。Simulator Controller PC73には、IPアドレス172.24.5.1が割り振られている。
【0024】
図12は、本実施例における、負荷テストのシーケンス図である。Simulator Agent PC上でのTransferorの起動は、Simulator Controller PCからの通信、例えばWebサービス・リクエストによって行われる。Webサービス・リクエストには、それぞれのSimulator Agent PC上で何台分のTransferorを動作させるかといった設定情報も含めることが可能である。また、機器設定情報取得のテストが終了した際には、Simulator Controller PCからSimulator Agent PCに対する要求によって、各Transferor上でどのようなパケットがどのようなタイミングで通過したかの処理ログを取得することができるため、パフォーマンス・チューニングなどが容易なものとなっている。
【0025】
(実施例3)
実施例2においては、被管理プリンタの操作を被管理プリンタ上で行う例を示したが、被管理プリンタの機器設定情報取得プログラムをPCに移植して擬似被管理プリンタPCとして動作させることによって、機器設定情報取得の開始をSimulator Controller PCからリモートで自動的に行うようにした方が便利である。本実施例では、実施例2で示した構成に対して、擬似被管理プリンタPCを導入した例を示す。
【0026】
図13及び図14は、本発明を施したソフトウェア評価システムの、別の一例の構成図である。被管理プリンタの代わりとして擬似被管理プリンタPC92が、統合管理用プリンタ91、Simulator Controller PC93、Simulator Agent PC 94及び95と、LAN96を介して接続されている。
【0027】
図15は、本実施例における、負荷テストのシーケンス図である。擬似被管理プリンタPC上で動作する、被管理プリンタから移植された機器設定情報取得プログラムは、Simulator Controller PCからの通信、例えばWebサービス・リクエストによって起動される。Webサービス・リクエストには、それぞれのTransferorに対して機器設定情報取得プログラムによるリクエストをどういったタイミングで動作させるか、例えば1秒ごとに順次取得リクエストを出す等といった設定情報も含めることが可能である。
【0028】
図16は、本実施例における、Transferorの処理をあらわす流れ図である。S21の処理開始は、Simulator Controller PCからのWebサービス・リクエストによって行われ、図7のS9の代わりとして、Simulator Controller PCからの終了命令の待機(S29)が行われる。その他の処理は、図7に示した処理と同等である。
【0029】
プリンタよりも高速なCPUを搭載するPCに被管理プリンタの機器設定情報取得プログラムを移植し、擬似被管理プリンタPCとして動作させることによって、統合管理用プリンタに対するリクエストの間隔を短くすることができるため、更に高負荷な状態を作り出すことが可能である。
【0030】
(実施例4)
実施例1及び実施例2及び実施例3においては、Transferorを用いて高負荷を実現する例を示した。しかし、Requestorすなわち被管理プリンタ及び擬似被管理プリンタPCは1台であるため、統合管理用プリンタに対する機器設定情報リクエストは順次行われる。本実施例では、Transferorに同期用の通信インタフェースを設け、Simulator Controller PCからその同期用通信インタフェースを用いることで、順次行われる処理をできるだけ同時に近付ける例を示す。
【0031】
図17は、本発明を施したソフトウェア評価システムにおける、負荷テストのシーケンス図であり、本発明の特徴をもっともよくあらわすものである。Requestorすなわち被管理プリンタ及び擬似被管理プリンタPCからの各Transferorに対するリクエストは順次行われるが、Transferorは受信したパケットを保持したまま待機する。すべてのTransferorに対するリクエストが終了した後、RequestorからSimulator Controller PCに対して、Finish Notificationすなわちアタック準備完了の通知が行われ、例えばSimulator Controller PC上ではユーザ・インタフェース上で「準備完了」が表示される。ユーザがこの「準備完了」に応じて「アタック開始」を指示すると、Simulator Controller PCからSimulator Agent PC上の各Transferorに対して"Release All Packets"すなわちアタックの開始が指示される。各Transferorは、この指示に応じてProviderすなわち統合管理用プリンタに対するパケットの一斉転送を行う。一般的に、PCに搭載されるCPUの処理速度はプリンタ装置に搭載されるCPUの処理速度よりも速いか、もしくは早いものが用意できるため、Requestorが被管理プリンタの実機である場合はこの処理によって、
(1) Requestorからはゆっくりと、パケットを順次各Transferorに送って、
(2) ダムに溜まった水のごとく各Transferor上でパケットを貯めておき、
(3) Simulator Controller PCからの指示で、ダムを決壊させるかのごとく一斉にパケットをProviderに送る
ことが可能である。このことによって、更に高負荷な環境を実現することができる。また、各Transferorに対する"Release All Packets"の指示のタイミングを変更することで、例えば被管理プリンタからの統合管理プリンタに対する機器設定情報要求が複数のリクエストによるものであって、そのうち2番目のリクエストに関して最も大きな負荷を掛けたい場合、"Release All Packets"指示による同期をその2番目のリクエストのみに掛けるといった処理が可能となる。このような同期処理をシナリオとして設定する手段を設けることで、更に大規模ユーザ環境の実動作に近い高負荷のシミュレーションを実現することが可能である。
【0032】
図18は、本実施例における、Transferorの処理をあらわす流れ図である。S44において、Simulator Controller PCからのRelease要求の待機が行われる。その他の処理は、図16に示した処理と同等である。
【0033】
図19は、本実施例において、Simulator Agent PCを1台ではなく複数台導入した場合の、負荷テストのシーケンス図である。図19においてはSimulator Agent PCを2台としているが、本実施例における同期処理は、Simulator Agent PCが更に増えた場合に有効である。例えば、10台のSimulator Agent PC上でそれぞれ100台ずつのTransferorを起動し、"Release All Packets"要求を用いれば、1,000台の被管理プリンタから1台の統合管理用プリンタに対する機器設定情報要求が集中的に発生する状況をシミュレーションすることが可能である。
【0034】
本実施例に示したソフトウェア評価システムによって、ユーザは
(1) 被管理プリンタの台数を増やすことなく、
(2) 被管理プリンタの機器設定取得機能ファームウェアを変更することなく、
(3) 統合管理用プリンタの機器設定取得機能ファームウェアを変更することなく、
(4) プリンタに比べて比較的安価な汎用の情報機器を数台用意するだけで、
統合管理用プリンタに対して数十台〜数百台の被管理プリンタからの機器設定情報取得があったものと同等の高負荷環境のシミュレーションを行い、テストを行うことが可能となる。これによって、テストに必要なコストを抑えつつ、大規模ユーザ環境における不具合を未然に防ぐことができる。
【0035】
(実施例5)
実施例4では、Transferorに同期用の通信インタフェースを設け、Simulator Controller PCからその同期用通信インタフェースを用いることで、順次行われる処理をできるだけ同時に近付ける例を示したが、同期用の通信インタフェースを用いずに、"Release All Packets"と同等の処理を、各Simulator Agent PC上に搭載された時計を用いて行うことも可能である。
【0036】
図20は、本発明を施したソフトウェア評価システムにおいて、Transferorに対して予めパケットのリリース時刻を設定しておく場合の、負荷テストのシーケンス図である。なお、時刻設定と共に、NTPプロトコルを用いる等によって、複数存在するSimulator Agent PC間で時計を合わせておけば、更に確実な同期を行うことが可能である。
【0037】
図21は、本実施例における、Transferorの処理をあらわす流れ図である。Transferorは処理を開始すると(S61)、予め設定しておいたIPアドレス172.24.4.nをバインドし(S62)、Simulator Controller PCからのリリース時刻設定Webサービス・リクエストを待ち受ける(S63)。リリース時刻設定Webサービスのリクエストが行われると、Transferorは設定されたリリース時刻をメモリないしディスクに保存し(S64)、パケットの待ち受けを行う(S65)。Requestorすなわち被管理プリンタからの機器設定情報Requestを受信すると、Transferorは現在の時刻をOS等から取得しつつ(S66)、S64において保存されたリリース時刻に到達するのを待つ(S67)。到達するとTransferorは、受信パケットの送信元IPアドレスを自身のIPアドレス172.24.4.nに書き換える(S68)。次にTransferorは、送信先IPアドレスをProviderすなわち統合管理用プリンタのIPアドレスである172.24.2.1と変更して、受信したパケットをProviderに対して転送し(S69)、Providerからの返信を待ち受ける(S70)。Providerからの返信を受信すると、Transferorは受信パケットの送信元IPアドレスを自身のIPアドレス172.24.4.nに書き換える(S71)。次にTransferorは、送信先IPアドレスをRequestorすなわち被管理プリンタのIPアドレスである172.24.1.1と変更して、受信したパケットをRequestorに対して転送する(S72)。この処理は、Simulator Controller PCからの終了命令を受信するまで(S73)行われる。終了命令を受信すると、TransferorはIPアドレス172.24.4.nのバインドを解除し(S74)、処理を終了する(S75)。
【0038】
本実施例は実施例4と比べて、Simulator Agent PCに搭載された時計がより正確であるか、もしくはSimulator Agent PCの台数が非常に多く同期用通信インタフェースによる同期が難しい場合に有効である。
【0039】
(実施例6)
実施例4及び実施例5では、被管理プリンタ及び擬似被管理プリンタPCが1台の場合の例を示したが、被管理プリンタの機種によって統合管理用プリンタに対する機器設定情報取得リクエストの内容が異なり、ユーザが複数の機種を企業内LANで用いている場合のシミュレーションのために、図22〜図24に示すように、被管理プリンタ及び擬似被管理プリンタPCを複数台用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】機器設定情報取得の構成の一例をあらわす図である。
【図2】機器設定情報取得の構成の、別の一例をあらわす図である。
【図3】機器設定情報取得の構成の、別の一例をあらわす図である。
【図4】送信プロトコルがWebサービス・リクエストである場合の、機器設定情報取得の通信の概念図である。
【図5】実施例1のソフトウェア評価システムの構成図である。
【図6】実施例1のソフトウェア評価システムにおいて、Simulator Agent PC上にTransferorを導入することを説明するための図である。
【図7】実施例1のソフトウェア評価システムにおける、Transferorの処理をあらわす流れ図である。
【図8】実施例1のソフトウェア評価システムにおける、負荷テストのシーケンス図である。
【図9】実施例1のソフトウェア評価システムにおいて、Simulator Agent PC上にTransferorを導入することを説明するための図である。
【図10】実施例2のソフトウェア評価システムの構成図である。
【図11】実施例2のソフトウェア評価システムの構成図である。
【図12】実施例2のソフトウェア評価システムにおける、負荷テストのシーケンス図である。
【図13】実施例3のソフトウェア評価システムの構成図である。
【図14】実施例3のソフトウェア評価システムの構成図である。
【図15】実施例3のソフトウェア評価システムにおける、負荷テストのシーケンス図である。
【図16】実施例3のソフトウェア評価システムにおける、Transferorの処理をあらわす流れ図である。
【図17】実施例4のソフトウェア評価システムにおける、負荷テストのシーケンス図である。
【図18】実施例4のソフトウェア評価システムにおける、Transferorの処理をあらわす流れ図である。
【図19】実施例4のソフトウェア評価システムにおける、負荷テストのシーケンス図である。
【図20】実施例5のソフトウェア評価システムにおける、負荷テストのシーケンス図である。
【図21】実施例5のソフトウェア評価システムにおける、Transferorの処理をあらわす流れ図である。
【図22】実施例6のソフトウェア評価システムの構成図である。
【図23】実施例6のソフトウェア評価システムの構成図である。
【図24】実施例6のソフトウェア評価システムにおける、負荷テストのシーケンス図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク上で、サーバ装置、乃至サーバ装置の役割を果たすプリンタ装置、乃至サーバ装置の役割を果たすスキャナ装置、乃至サーバ装置の役割を果たすファクシミリ装置、乃至サーバ装置の役割を果たすプリンタ及びスキャナ及びファクシミリの何れかの機能を組み合わせた複合機、に対するアクセスが集中する高負荷状態のシミュレーションを行うためのソフトウェア評価システムであって、
前記サーバ装置乃至サーバ装置の役割を果たす各種装置に対する、クライアント装置、乃至クライアント装置の役割を果たすプリンタ装置、乃至クライアント装置の役割を果たすスキャナ装置、乃至クライアント装置の役割を果たすファクシミリ装置、乃至クライアント装置の役割を果たすプリンタ及びスキャナ及びファクシミリの何れかの機能を組み合わせた複合機、からの通信を複数エミュレートする手段を有し、
前記複数の通信の通信先を、前記サーバ装置乃至サーバ装置の役割を果たす各種装置ではなく、複数のアドレスが割り当てられた転送用の情報機器に変更する手段を有し、
転送用情報機器上で、個々の通信に関して、通信元アドレスを、転送用情報機器に割り当てられた複数のアドレスのうち何れかのアドレスに変更する手段を有し、転送先アドレスを、変更前の通信先であったサーバ装置乃至サーバ装置の役割を果たす各種装置のアドレスに変更する手段を有し、
前記転送用情報機器を介して、前記サーバ装置乃至サーバ装置の役割を果たす各種装置に対する通信を実行することにより、前記サーバ装置乃至サーバ装置の役割を果たす各種装置にアクセスが集中する高負荷状態のシミュレーションを行う手段を有する、ソフトウェア評価システム。
【請求項2】
前記ソフトウェア評価システムにおいて、前記転送用情報機器上で、複数の通信の同期を取る手段を有する、請求項1に記載のソフトウェア評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−98844(P2008−98844A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276627(P2006−276627)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】