説明

タイヤを利用した植栽枠及び該植栽枠を使用した造園方法

【課題】草刈機や芝刈機の刃を傷めない柔軟性の高い材料で構成され、安価に得ることができる植栽枠を提供する。
【解決手段】本発明に係る植栽枠10Aは、ゴムタイヤのトレッド部11及びショルダー部12の全部又は一部を残して、残部を切除したものであることを特徴とする。この植栽枠10Aは、材料のゴムタイヤに柔軟性があるうえ、大量に発生する古タイヤを用いることができるため安価である。本発明に係る植栽枠10Bは、植栽枠10Aのトレッド部11が内側になるように表裏を反転させたものである。これにより、ショルダー部12がトレッド部の上端から外側を向くように伸びるため、外側に植えた芝生が内側に侵入しようとする際にネズミ返しのような効果を発揮し、その侵入を妨げる効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草花や樹木を植栽する植栽枠及び同植栽枠を利用した造園方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公園や庭園を構築するにあたって、芝生や草花や樹木等を適宜植栽するが、異種植物を混植するには、その管理上、境界を設ける事が適当である。例えば、芝生の中に樹木を植栽する際に、樹木の周囲を避けて芝生を貼っても芝生は匍匐拡大するため、時間の経過により樹木の直近まで芝生が覆う事になる。こうなると、芝刈り作業が面倒で時間を要し、樹木に施肥するにも芝生を一部剥ぎ取ったり穴を空ける必要があるなど面倒になる。
同様に、芝生の中に草花を植える際にも、芝生が草花の中まで侵入する為、芝生・草花共に管理作業が面倒になる。
【0003】
このため、ブロック、レンガ、板などを用いて境界を設ける例も多いが、これらは小灌木や草花を点景的に配置する例や小規模な庭園の場合には目立ち過ぎる等の不具合がある。また、芝刈り機や草刈機を使用する際に刈刃を傷めたり、その破片が飛び散り人体や構築物に障害を与える等の問題があり、さらには、費用も高額で移設も困難である。
【0004】
一般的なブロックやレンガで植栽枠を個々に構築する以外に、並べる事によりドーナツ状になる、デザイン性に優れた専用のブロック等も販売されているが、コンクリート等の硬い材質でできているため芝刈機や草刈機を使用する際に生じる恐れのある上記問題点は解決できず、費用も高額である。
【0005】
そこで、公園や庭園に芝生や草花や樹木等を植栽する際に、安価で、景観を悪くせず、草刈機や芝刈機の刃を傷めない柔軟性の高い材料で構成された安価な植栽枠が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平01-160436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の問題点を解決すべく、柔軟性が高い素材を用い、草花や植栽する樹木の大きさに合わせて複数サイズの植栽枠を安価に製造することが課題である。
また、最終的な価格を安価にするには、輸送費を下げる事が必要であるため、軽量で輸送容積の小さな製品を製造することも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る植栽枠は、ゴムタイヤのトレッド部及びショルダー部の全部又は一部を残して、残部を切除したものであることを特徴とする。
【0009】
本願において、トレッド部はゴムタイヤのうち路面に接する部分をいう。また、ショルダー部はゴムタイヤの側面(サイドウォール部)とトレッド部を繋ぐ、トレッド部及びサイドウォール部に対して傾斜した部分をいう。
【0010】
本発明の植栽枠は、トレッド部を縦に向け、ショルダー部を含む一部が地表に露出するように地中に埋めて用いる。そして、トレッド部よりも外側に芝生又はグラウンドカバーを植栽し、内側にそれら以外の樹木又は草花を植栽することにより、芝生やグラウンドカバーがトレッド部を超えて樹木や草花の側に侵入することを防ぐことができる。ここでグラウンドカバーは、地表を覆うために植栽される植物を指し、例えば、タマリュウ、ハツユキカズラ、セダム、フッキソウ、アジュガ等が該当する。
【0011】
本発明の植栽枠において、前記トレッド部が内側になるように該タイヤの表裏を反転させたものが好ましい。これにより、ショルダー部がトレッド部の上端から外側を向くように伸びるため、外側に植えた芝生が内側に侵入しようとする際にネズミ返しのような効果を発揮し、その侵入を妨げる効果がある。また、タイヤのトレッド部の模様や文字などが内側に向き、外から見えなくなるため、見た目が良い。
【0012】
本発明の植栽枠において、前記ゴムタイヤの円周上の1乃至複数箇所に切断部を設けることができる。この切断部は、使用時にその両側のトレッド部及びショルダー部の一部が重なるようにすることにより、植栽枠の径を微調整することができる。そのため、必要な大きさに合わせて植栽枠を設置し易くなる。
【0013】
本発明の植栽枠は、新品のゴムタイヤを用いることも可能であるが、大量に発生する古タイヤを材料として用いることができる。この場合、本発明の植栽枠は廃物の有効利用となる上、安価に提供することができる。また、ゴムタイヤには非常に多くのサイズがあることから、得られる植栽枠のサイズも多岐に亘り、樹木の大きさや草花のボリュームに合った植栽枠を提供できる。更に、大きなサイズの植栽枠の内側に、それより小さな植栽枠を入れることができる。これを同様に繰返すと、10種類以上の植栽枠を一つの保管・輸送単位として纏める事ができるため、保管・輸送費用の低減が可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、草刈機や芝刈機の刃を傷めない柔軟性の高い材料で構成された植栽枠を安価に得ることができる。また、本発明の植栽枠は、多彩なサイズを用意することができ、使用者が樹木の大きさや草花のボリュームに合ったものを選択することができる。更に、本発明の植栽枠は軽量であり、輸送費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る植栽枠の材料となるゴムタイヤを示す断面図(a)、本発明に係る植栽枠の第1の実施例を示す断面図(b)及び本発明に係る植栽枠の第2の実施例を示す断面図(c)。
【図2】本発明に係る植栽枠の第3の実施例(a)及び第4の実施例(b)を示す断面図。
【図3】本発明に係る植栽枠の第5の実施例(a)及び第6の実施例(b)を示す断面図。
【図4】本発明に係る植栽枠の変形例を示す上面図。
【図5】本発明に係る植栽枠を利用した造園方法を説明するための概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜図5を用いて、本発明に係る植栽枠及びそれを用いた造園方法の実施例を説明する。
【実施例】
【0017】
まず、図1(a)を用いて、本発明の植栽枠の材料となるゴムタイヤの一例を説明する。このゴムタイヤ10は、路面に接する部分であって、通常、溝が形成されたトレッド部11と、トレッド部11と後記サイドウォール部13をそれらに対して傾斜して接続するショルダー部12と、側面に該当するサイドウォール部13と、タイヤホイールに嵌め込まれるビード部14により構成されている。
【0018】
第1の実施例の植栽枠10Aは、トレッド部11とその両側のショルダー部12を残して、ショルダー部12とサイドウォール部13の境界(図1(a)に破線で示す位置)でゴムタイヤ10をカットした、即ちサイドウォール部13とビード部14を切除したものである(図1(b))。
【0019】
第2の実施例の植栽枠10Bは、ゴムタイヤ10として使用した際に地面と接触していた面が内側になるように、第1実施例の植栽枠10Aの表裏を反転させたものである(図1(c))。この構成によれば、ショルダー部12が外側に開くフレア状態になるため、後述するように、実際に使用した際に芝生が植栽枠の内側に侵入し難くなる。また、ショルダー部12に刻まれた文字などが内側に向くため、見栄えがよくなる。
【0020】
第3の実施例の植栽枠10Cは、トレッド部11の両側のショルダー部12のうちの一方(第1ショルダー部121)のみを残し、他方のショルダー部(第2ショルダー部122)をサイドウォール部13及びビード部14と共に除去したものである(図2(a))。第4の実施例の植栽枠10Dは、第3実施例の植栽枠10Cの表裏を反転させたものである(図2(b))。これら第3及び第4実施例では、ショルダー部を残した側を地表側に向けて使用することにより、芝生返し効果を得ることができる。一方、ショルダー部を除去した側を地表側に向けて使用すれば、地表に露出する部分を最小にすることができ、それにより植栽枠を目立たなくすることができる。
【0021】
第5の実施例の植栽枠10Eは、第2ショルダー部122側を第3実施例の植栽枠10Cよりも更にトレッド部11寄りから切断したもの(図3(a))であり、第6の実施例の植栽枠10Fは、第5実施例の植栽枠10Eの表裏を反転させたものである(図3(b))。これら第5実施例の植栽枠10E及び第6実施例の植栽枠10Fはそれぞれ、第3実施例の植栽枠10C及び第4実施例の植栽枠10Dと同様の効果を奏する。
【0022】
以上の実施例以外に、タイヤをカットする位置は、円筒状の枠が構成できる限り任意であり、また、左右共に同じ位置でも異なる位置で切除しても目的を達成することはできる。
【0023】
上記各実施例において、タイヤの円周上で1ないし複数個所に切断部21を設けてもよい(図4)。こうして切断することにより、既に植栽した樹木の周囲に植栽枠を設置し易くなるという効果がある。この切断部21は、使用時に切断部21の両側のトレッド部11及びショルダー部12の一部が重なるようにすることにより、植栽枠の径を微調整することができる。そのため、既に植栽した樹木の周囲に、必要な大きさに合わせて植栽枠を設置し易くなるという効果がある。
【0024】
図5を用いて、本発明に係る植栽枠を利用した造園方法の一実施例を説明する。この例では、第2実施例の植栽枠10Bを、ショルダー部12を含む一部が地表面30より適宣露出するように埋設している。そして、植栽枠10Bの内側には樹木31を植栽し、外側には芝生32を植栽する。このように使用することにより、植栽枠10Bの上側は外側に広がるフレア状態になり、匍匐茎を伸ばして伸張する芝生の匍匐茎が外側に誘導されるため、植栽枠10Bの内側に侵入しづらくなる。
【0025】
また、植栽枠10Bの内側に、地表が見えないようにバークチップ33を敷き詰めることにより、雑草の発生を防げるとともに、侵入した芝生が根を張れず容易に除去できることになる。
【符号の説明】
【0026】
10…ゴムタイヤ
10A、10B、10C、10D、10E、10F…植栽枠
11…トレッド部
12…ショルダー部
121…第1ショルダー部
122…第2ショルダー部
13…サイドウォール部
14…ビード部
21…切断部
30…地表面
31…樹木
32…芝生
33…バークチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムタイヤのトレッド部及びショルダー部の全部又は一部を残して、残部を切除したものであることを特徴とする植栽枠。
【請求項2】
前記トレッド部が内側になるように該ゴムタイヤの表裏を反転させたものであることを特徴とする請求項1に記載の植栽枠。
【請求項3】
前記ゴムタイヤの円周上の1乃至複数箇所に切断部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の植栽枠。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の植栽枠を、前記ショルダー部を含む一部が地表に露出するように地中に埋め、前記トレッド部よりも外側に芝生又はグラウンドカバーを植栽し、内側に樹木又は該芝生以外若しくは該グラウンドカバー以外の草花を植栽することを特徴とする造園方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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