説明

タイルパネル及びその施工方法

【課題】輸送時等における過大な変形を防止することができる可撓性タイルパネルと、このタイルパネルの施工方法を提供する。
【解決手段】タイルパネル1は、裏打ちパネル2の前面に複数枚のタイル3を張り付け、すべてのタイル3に跨るように反り防止用シート4をタイル3の前面に貼着したものである。反り防止用シートとしては、合成樹脂フィルムのほか、クロス又は繊維入り合成樹脂フィルムなどが用いられる。このタイルパネル1を接着剤によって壁下地に軽く張り付けた後、反り防止用シート4を剥し、タイル3を押して下地不陸に追従させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は裏打ちパネルの前面にタイルを張り付けてなるタイルパネルに係り、特に裏打ちパネルが厚みの小さい金属パネルなど可撓性を有している場合に採用されるタイルパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
裏打ちパネルの前面にタイルを張り付けてなるタイルパネルは広く用いられている(特許文献1〜3)。このタイルパネルによれば施工現場でタイルを手張りする作業が不要となり、タイル張りの施工工期が著しく短くなると共に、タイル職人の手間賃も節約され、コスト安である。
【0003】
このタイルパネルの裏打ちパネルとして可撓性パネルを採用すると、下地(壁下地)に不陸が存在していても、タイルパネルが不陸に追従して変形するので、張り付け仕上りが良好となると共に、施行後のガタツキや剥離が防止される(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−83031
【特許文献2】特開2004−44263
【特許文献3】実公昭61−41896
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可撓性裏打ちパネルにタイルを張り付けたタイルパネルは輸送時や施工時などの取扱い時に目地に沿って曲り易い。即ち、タイルパネルの中央部が前方へ突き出すように凸反りし易い。そして、この凸反りの程度が大きくなると、タイルが割れたり、目地切れしたりするおそれがある。また、裏打ちパネルが金属パネルの場合、金属パネルが座屈する如く塑性変形してしまい、施工に用いることができなくなってしまうおそれもある。
【0006】
本発明は、輸送時等における過大な凸反り変形を防止することができる可撓性タイルパネルと、このタイルパネルの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタイルパネルは、下地の不陸に追従して変形しうる可撓性を有した裏打ちパネルと、該裏打ちパネルの前面に貼り付けられた複数枚のタイルとを有するタイルパネルにおいて、複数枚の該タイルの前面に跨って、タイルパネルの反り防止用シートが剥離可能に貼着されていることを特徴とするものである。
【0008】
この反り防止用シートは、タイルパネルの全タイルに跨って貼着されていることが好ましい。
【0009】
裏打ちパネルに第1のタイルと、該第1のタイルよりも厚みの小さい第2のタイルとが混在して張り付けられている場合、反り防止用シートは第1のタイルの前面に貼着されていることが好ましい。
【0010】
本発明のタイルパネル施工方法は、上記のタイルパネルを下地に張るタイルパネル施工方法であって、該下地に接着剤を塗布する工程と、該タイルパネルを接着剤層に当接させる工程と、該タイルパネルから前記反り防止用シートを剥離させる工程と、タイルパネルのタイルを押さえ込む工程とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイルパネルは、前面に反り防止用シートが貼着されているので、輸送時や施工時等にタイルパネルの凸反りが抑制される。このため、輸送時や施工時等における反りによってタイルが割れることが防止される。また、裏打ちパネルに塑性変形などの損傷が生じることが防止される。
【0012】
反り防止用シートをタイルパネルの全タイルに跨って貼着すると、タイルパネルの全方位にわたって反りが抑制される。タイルのすべてが同一厚みの場合、反り防止用シートをすべてのタイルに貼着することが好ましい。厚みの異なるタイルが混在して張り付けられているタイルパネルの場合は、厚みの大きいタイルにのみ反り防止用シートを張り付けるのが好ましい。
【0013】
このタイルパネルを下地に施工するには、下地またはタイルパネル裏面に接着剤を塗布し、タイルパネルを接着剤層に当接させた後、タイルパネルから反り防止用シートを剥離する。これにより、タイルパネルが変形可能となるので、タイルを押し込みタイルパネルを下地不陸に追従させて変形させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係るタイルパネルの正面図である。
【図2】反り防止用シートを剥した図1のタイルパネルの正面図である。
【図3】(a)は図1のIIIa−IIIa線断面図、(b)は図2のIIIb−IIIb線断面図である。
【図4】別の実施の形態に係るタイルパネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1〜3は本発明の実施の形態に係るタイルパネル1を示すものである。このタイルパネル1は、裏打ちパネル2の前面に複数枚のタイル3を張り付け、すべてのタイル3に跨るように反り防止用シート4をタイル3の前面に貼着したものである。
【0017】
裏打ちパネル2の曲げ剛性は1mm幅当り0.3〜100KNmm程度が好適である。裏打ちパネルとしてはアルミ板、ガルバリウム鋼板、ステンレス鋼板等の金属パネルが好ましいが、FRP板、スレート板、合板、MDF(木系繊維板)、発泡倍率3〜10倍程度の発泡ポリプロピレンなどの樹脂発泡ボード等が好適である。裏打ちパネルの厚みは、合板であれば3〜5.5mm、MDF(木系繊維)であれば、3〜6mm、石膏ボードであれば、5.5〜7mm、金属板(ガルバリウム鋼板、アルミニウム、ステンレスなど)であれば、0.27〜1mm、フレキシブルボードであれば2〜3mm、樹脂発泡ボードであれば2〜25mm、FRPであれば1〜3mm程度が好ましい。
【0018】
裏打ちパネルにタイルを張るための接着剤としては、エポキシ系、ウレタン系、シリコン系、変性シリコン系、アクリル系などが好適であるが、これに限定されない。タイルとしては、陶器質タイル、せっ器質タイル、磁器質タイル、軽焼タイル、天然石材などのいずれでもよい。
【0019】
タイル間の目地には、モルタル系、樹脂モルタル系、樹脂系(シリコン、エポキシ等)などの目地材を充填してもよく、目地を充填しない空目地としてもよい。また、タイル同士を突き付けるようにして実質的に目地幅ゼロとしてもよい。
【0020】
タイルの寸法、形状は、一辺が30〜300mm程度の正方形又は長方形が好適である。タイルの厚さは3〜15mm程度が好適である。タイルパネルの寸法は60cm×90cm、30×210cmなどが例示されるが、これに限定されない。
【0021】
反り防止用シートとしては、引っ張り弾性率が0.1〜3GPa特に0.2〜0.5GPa程度のものが好適である。反り防止用シートの具体例としては、厚さ20〜1000μm特に50〜200μm程度の合成樹脂フィルムのほか、クロス又は繊維入り合成樹脂フィルム、接着剤付き布、クラフト紙などが挙げられるが、これに限定されない。
【0022】
反り防止用シート4をタイル3の前面に貼着するには、アクリル系粘着剤などの粘着材を用いるのが好ましいが、水溶性接着剤を用いてもよい。水溶性接着剤は反り防止用シートとしてクラフト紙又は布などの透水性シートを用いた場合に好適であり、施工後に水をスプレーすること等によりタイルから剥すことができる。
【0023】
図1〜3のタイルパネル1では、すべてのタイルの前面に反り防止用シート4を貼着しているが、タイルとして厚みの異なるものを混在させて裏打ちパネル2に張り付けた場合は、最も厚みの大きいタイルの前面に反り防止用シートを張り付けるのが好ましい。
【0024】
図4(a)は、かかるタイルパネル1Aの拡大断面図、図4(b)は反り防止用シート4を剥した状態のタイルパネル1Aの拡大断面図である。
【0025】
このタイルパネル1Aでは、厚みの大きいタイル3と、厚みの小さいタイル3Aの2種類のタイルを裏打ちパネル2に貼着している。ただし、厚みがさらに異なるタイルを裏打ちパネル2に貼着してもよい。いずれの場合も、最も厚みの大きいタイル3に反り防止用シート4を貼着するのが好ましい。ただし、厚みが最大厚みのタイルよりも極くわずかに小さいタイルが張り付けられていた場合、最大厚みのタイルとそれに近い厚みのタイルとに反り防止用シートを貼着してもよい。
【0026】
このように構成されたタイルパネル1,1Aは、前面に反り防止用シート4が貼着されているので、輸送時や施工時等における凸反りが抑制される。このため、輸送時や施工時等における反りによってタイル3,3Aが割れることが防止される。また、裏打ちパネル2に塑性変形などの損傷が生じることが防止される。なお、裏打ち材2が存在するので、タイルパネル1,1Aは凹反りは殆どしない。
【0027】
図1〜3の実施の形態では、反り防止用シート4をタイルパネル1の全タイル3に跨って貼着しているので、タイルパネル1の全方位にわたって凸反りが抑制される。図4のタイルパネル1Aにおいても、厚みの大きいタイル3をタイルパネル1Aの全域に配材することにより、タイルパネル1Aは全方位にわたって凸反りが抑制される。
【0028】
このタイルパネル1,1Aを下地に施工するには、下地またはタイルパネル裏面に接着剤を塗布し、タイルパネル1,1Aを接着剤層に当接させた後、タイルパネル1,1Aから反り防止用シート4を剥離する。これにより、タイルパネル1,1Aが変形可能となるので、タイル3,3Aを押し込みタイルパネル1,1Aを下地不陸に追従させて変形させる。これにより、仕上りの良好なタイル張り壁面を構築することができる。
【実施例】
【0029】
実施例1
裏打ちパネルとして厚さ5.5mm、60cm×90cmの発泡樹脂製のものを用い、60×60×7mmのタイル(株式会社LIXIL製、商品名エコカラット)をアクリル系接着剤で張り付けてタイルパネルを製作した。タイル同士は突き付け、目地材は充填しなかった。このタイルパネルに対し、厚み100μmのポリオレフィン繊維入りの合成樹脂シートよりなる反り防止用シート(引張弾性率0.33GPa)を貼着した。このタイルパネル1を、タイル側が裏打ちパネルの下側となるように水平台上に載せ、両端を掴んで持ち上げたところ、反り量は約60mmであり、十分に施工が可能であった。
【0030】
比較例1
これに対し、反り防止用シートを貼着しなかったこと以外は同一構成のタイルパネルについて同様にして持ち上げたところ、タイルパネルの反り量が約230mmと変形が大きく、運搬や施工が困難であった。この試験より、本発明によると、タイルパネルの輸送時や施工時の取り扱いが容易になることが認められた。
【符号の説明】
【0031】
1,1A タイルパネル
2 裏打ちパネル
3,3A タイル
4 反り防止用シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地の不陸に追従して変形しうる可撓性を有した裏打ちパネルと、
該裏打ちパネルの前面に貼り付けられた複数枚のタイルと
を有するタイルパネルにおいて、
複数枚の該タイルの前面に跨って、タイルパネルの反り防止用シートが剥離可能に貼着されていることを特徴とするタイルパネル。
【請求項2】
請求項1において、前記反り防止用シートは、タイルパネルの全タイルに跨って貼着されていることを特徴とするタイルパネル。
【請求項3】
請求項2において、前記裏打ちパネルに第1のタイルと、該第1のタイルよりも厚みの小さい第2のタイルとが混在して張り付けられており、前記反り防止用シートは、該第1のタイルの前面に貼着されていることを特徴とするタイルパネル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイルパネルを下地に張るタイルパネル施工方法であって、
該下地に接着剤を塗布する工程と、
該タイルパネルを接着剤層に当接させる工程と、
該タイルパネルから前記反り防止用シートを剥離させる工程と、
タイルパネルのタイルを押さえ込む工程と
を有することを特徴とするタイルパネル施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−72232(P2013−72232A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212797(P2011−212797)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】