タッチセンサー
【課題】 タッチされたことを検出する電極の数が少なくても分解能を上げられる。
【解決手段】 電極P2と上に隣接する電極P3とはM字状の境界線11bで区切られており、電極P2の上部は電極P3の下部の頂部間に喰い込んでいる。また、電極P2と下に隣接する電極P1とはM字状の境界線11aで区切られており、電極P2の下部は電極P1の上部の頂部間に喰い込んでいる。このように、電極P2は、電極P3および電極P1と横方向において重なるように形成されている。これにより、フェーダーセンサーFdに指10をタッチさせると、3つの電極P3,P4,P5にタッチするようになり、タッチ状態に応じたレベル信号が検出回路12a〜12fから出力される。この出力の加重平均値を演算回路13において算出することにより、タッチした指10の位置情報を高分解能で得ることができる。
【解決手段】 電極P2と上に隣接する電極P3とはM字状の境界線11bで区切られており、電極P2の上部は電極P3の下部の頂部間に喰い込んでいる。また、電極P2と下に隣接する電極P1とはM字状の境界線11aで区切られており、電極P2の下部は電極P1の上部の頂部間に喰い込んでいる。このように、電極P2は、電極P3および電極P1と横方向において重なるように形成されている。これにより、フェーダーセンサーFdに指10をタッチさせると、3つの電極P3,P4,P5にタッチするようになり、タッチ状態に応じたレベル信号が検出回路12a〜12fから出力される。この出力の加重平均値を演算回路13において算出することにより、タッチした指10の位置情報を高分解能で得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響信号処理にかかるパラメーターを操作するコントローラーに備えられるタッチセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンピューターを用いる音響信号処理装置において、ディジタル信号処理により演奏データの録音や編集、ミキシング等の音響処理作業を行うことが知られている。音響信号処理装置で使用するコンピューターは、PC(パーソナルコンピューター)等の汎用のコンピューターとされ、音響信号処理装置に必要なオーディオインターフェースやMIDI(Musical Instrument Digital Interface)インターフェースなどの各種ハードウェア装置を備えている。また、コンピューターには音響信号処理機能を実行させるためのアプリケーションプログラムが実装されている。これにより、コンピューターにおいて、音響信号の録音や編集、あるいはエフェクト付与やミキシング等の音響信号処理機能が実現される。このような音響信号処理装置は、デジタルオーディオワークステーション(Digital Audio Workstation:DAW)と呼ばれている。このDAW機能をコンピューターに実行させるアプリケーションプログラムを、以下の説明においては「DAWソフト」という。
【0003】
PCで動作するDAWソフトは充実しており、PCにDAWソフトをインストールすることで個人でも簡単に音楽制作ができるようになる。また、DAWソフトの機能も増えてパラメーターが増加しており、マウス操作のみで全てのパラメーターを操作することは困難になってきている。このため、DAWソフトがインストールされたPCに、DAW操作のための専用のコントローラーを接続して、このコントローラーに備えられているタッチセンサーを使用してDAWのパラメーターをリモートコントロールすることが行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Steinberg Media Technologies GmbH CC121オペレーションマニュアル,[online], [平成23年2月10日検索],インターネット<ftp://ftp.steinberg.net/Download/Hardware/CC121/CC121_OperationManual_ja.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DAWソフトがインストールされたPCに外部接続されるコントローラーは、片手に持ってもう一方の手で操作できる程度の大きさの小型コントローラーとされており、コントローラーのパネルには、各種の操作子が設けられている。操作子には、縦に細長いタッチセンサーからなる複数本(例えば、4本)のフェーダーセンサーが含まれている。このフェーダーセンサー上で指をスライドさせることにより、フェーダーセンサーにそれぞれアサインされているチャンネルのフェーダーレベルを調整することができる。フェーダーセンサーによる調整では、細かなフェーダーレベルを調整することが望まれているが、細かなレベルで調整するにはフェーダーセンサーの分解能を上げる必要がある。フェーダーセンサーの分解能は、フェーダーセンサーに形成されているタッチされたことを検出する電極の数で決定されるが、コントローラーが小型とされていることからフェーダーセンサーも小型になってしまい、上記した電極の数を多く形成することができないことになる。従って、タッチセンサーの分解能を上げられないと云う問題点があった。
そこで、本発明は、タッチされたことを検出する電極の数が少なくても分解能を上げることができるコントローラーに備えられるタッチセンサーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のタッチセンサーは、音響信号処理にかかるパラメーターを操作するコントローラーに備えられるタッチセンサーであって、絶縁性の基板の一面に形成され、タッチされた際に3つ以上の電極パターンに同時にタッチされるように、隣接する電極パターンとの境界線が斜め方向に形成されて、隣接する電極パターンと横方向において重なるように形成されている複数の電極と、前記電極パターンのそれぞれのタッチ状態に応じて、対応する前記電極から出力されるレベル信号に、当該電極の並び順に応じた重み係数を乗算して全ての前記電極から出力される前記レベル信号の加重平均値を算出することにより、タッチした位置に対応するセンサー出力を得る演算手段とを備えることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タッチされた際に3つ以上の電極に同時にタッチされる電極パターンの形状とされており、複数の電極パターンのそれぞれのタッチ状態に応じて、複数の電極からそれぞれ出力されるレベル信号に、当該電極の並び順の重み係数を乗算して加重平均値を算出することにより、タッチした位置に対応するセンサー出力を得ていることから、電極の数以上の分解能を得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーを備えるコントローラーをPCに接続した構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例にかかるフェーダーセンサーを備えるコントローラーが接続されたPC上で動作中のDAWソフトのGUI画面の一例を示す図である。
【図3】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーとセンサー回路の構成を示す図である。
【図4】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーの検出回路の回路図の一例である。
【図5】発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーの検出回路の各部の信号波形を示す波形図である。
【図6】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーの電極の構成を示す図である。
【図7】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーのタッチ位置を検出する概要を示す図である。
【図8】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーの具体的な構成を示す図である。
【図9】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーのタッチ位置を検出する他の概要を示す図である。
【図10】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーの電極の他の構成を示す図である。
【図11】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーの電極のさらに他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーを備えるコントローラーをPCに接続した構成を示す図を図1に示す。
図1において、PC1には演奏データの録音や編集、あるいはエフェクト付与やミキシング等の音響処理機能を実現するためのDAW(Digital Audio Workstation)と呼ばれるアプリケーションソフトであるDAWソフトがインストールされている。DAWソフトを操作するための専用のコントローラーである2台の外部リモートコントローラー2と外部リモートコントローラー3とがPC1に接続されている。PC1には周辺機器とPC1とを結ぶシリアルインタフェース規格のひとつであるUSB(Universal Serial Bus)インタフェースの複数のUSB端子が装備されており、外部リモートコントローラー2,3にもUSB端子が装備されている。PC1と外部リモートコントローラー2,3とは、それぞれのUSB端子間をUSBケーブルで接続することにより、相互に通信可能に接続されている。外部リモートコントローラー2,3は、DAWソフトにおける入力チャンネルや出力チャンネルのパラメーターをリモートコントロールすることができる。
【0010】
図1に示す例ではPC1には2台の外部リモートコントローラー2,3が接続されているが、n台(nは、例えば4とされる。)までの外部リモートコントローラーが接続可能とされている。外部リモートコントローラー2,3は同じ構成とされており、外部リモートコントローラー2を例に挙げて、その構成を以下に説明する。
図1に示すように外部リモートコントローラー2は、4本のフェーダーセンサーFd2a,Fd2b,Fd2c,Fd2dを備えている。4本のフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dは、縦に細長いタッチセンサーからなり、タッチセンサー上において指をタッチした位置により、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにそれぞれアサインされているチャンネルのフェーダーレベルを設定することができる。フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dでカバーされた内側には、長軸に沿ってほぼ等間隔で配置された複数個のLEDからなる表示部Lv2a,Lv2b,Lv2c,Lv2dが設けられている。表示部Lv2a〜Lv2dでは、アサインされた各チャンネルのフェーダーの位置(フェーダーレベル)に相当するLEDが点灯される。そして、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2d上に指をタッチすると、タッチした位置にフェーダーの位置が移動されることから、移動されたフェーダーの位置に連動して表示部Lv2a〜Lv2dで点灯されるLEDが移動するようになる。この場合、フェーダーの位置はフェーダーレベルに相当することから、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2d上に指をタッチすることでフェーダーレベルを調整できるようになる。
外部リモートコントローラー3は、外部リモートコントローラー2と同様の構成とされていることから説明は省略するが、フェーダーセンサーFd3a〜Fd3d上に指をタッチすることで、フェーダーセンサーFd3a〜Fd3dにそれぞれアサインされているチャンネルのフェーダーレベルを調整できる。
【0011】
次に、図1に示すように外部リモートコントローラー2,3が接続されていると共にDAWソフトが起動されているPC1におけるDAWのGUI(Graphical User Interface)画面4の一例を図2に示す。図示する例では、DAWのGUI画面4にはシーケンサーのウィンドウ4aとミキサーのウィンドウ4bとが表示されている。ウィンドウ4aは、楽曲を制作できるGUIとされ演奏データの複数トラックの情報、および、トラック毎の演奏データが時系列的に細長い矩形状で表示されている。再生ボタンを押すと、カーソル4cがテンポに応じた速度で右側に移動していき、カーソル位置の各トラックにおける演奏データが再生される。また、DAWソフトではミキサー機能が実現され、再生される際には、各トラックの音響信号がミキサーにより混合されて出力されるようになる。ウィンドウ4bには、各トラックの音響信号を混合するミキサーのGUIであり、各トラックの混合レベルを調整するための複数チャンネル分のフェーダーが少なくとも表示されており、そのフェーダーを画面上でドラッグして移動することにより、当該フェーダーにアサインされたチャンネル(トラック)のフェーダーレベルを調整して、混合されるレベルを調整することができる。
ウィンドウ4bには、例えば12チャンネル分のフェーダーが表示されており、ウィンドウ4aに表示されている各トラックからなるチャンネルを各フェーダーにアサインすることができる。
【0012】
外部リモートコントローラー2では、ウィンドウ4bに表示されているフェーダーに替えて、フェーダーの位置をリモートコントロールすることができる。この場合、外部リモートコントローラー2の4本のフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにそれぞれアサインされたチャンネルのフェーダーの位置がリモートコントロールされる。フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dには、任意の連続する昇順の4チャンネルをアサインすることができ、連続しないランダムなチャンネルはアサインすることができない。アサインされた4チャンネルは、外部リモートコントローラー2上の「Channel」に設けられているチャンネル移動ボタンや「Bank」に設けられているバンク移動ボタンを押すことにより変更することができる。ここで、「Channel」のボタンCd2(「<」)を押すと、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされているチャンネルが1つづつチャンネル番号が減少する方向に移動される。例えば、ch3〜ch6がフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされていた場合に、ボタンCd2(「<」)を押すとフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにはch2〜ch5がアサインされるようになる。また、「Channel」のボタンCu2(「>」)を押すと、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされているチャンネルが1つづつチャンネル番号が増加する方向に移動される。例えば、ch3〜ch6がフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされていた場合に、ボタンCu2を押すとフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにはch4〜ch7がアサインされるようになる。ウィンドウ4bに表示されているチャンネルは左側から右側に向かって順次チャンネル番号が増加していることから、ボタンCd2(「<」)はチャンネルレフトボタン、ボタンCu2(「>」)はチャンネルライトボタンとなる。
【0013】
また、「Bank」のボタンBd2(「<」)を押すと、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされているチャンネルが1バンクとされる4チャンネル分づつチャンネル番号が減少する方向に移動する。例えば、ch6〜ch9がフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされていた場合に、ボタンBd2を押すとフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにはch2〜ch5がアサインされるようになる。また、「Bank」のボタンBu2(「>」)を押すと、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされているチャンネルが1バンクとされる4チャンネル分ずつチャンネル番号が増加する方向に移動する。例えば、ch6〜ch9がフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされていた場合に、ボタンBu2を押すとフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにはch10〜ch13がアサインされるようになる。すなわち、ボタンBd2(「<」)はバンクレフトボタン、ボタンBu2(「>」)はバンクライトボタンとなる。
このように、チャンネル移動ボタンであるCd2,Cu2あるいはバンク移動ボタンであるBd2,Bu2を押すことにより、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dに任意の連続する4チャンネルをアサインすることができる。
【0014】
上記したように、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dには、PC1のウィンドウ4bで選択されているチャンネルとは独立して連続する昇順の4チャンネルをアサインすることができるが、ボタンCd2(「<」)とボタンSh2(「Shift」)とを押した場合はボタンCd2の機能が「Select 」に変更されて、PC1のウィンドウ4bで選択中のチャンネルを先頭にした連続する昇順の4チャンネルがフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにそれぞれアサインされる。例えば、ch3がウィンドウ4bで選択中の場合はch3〜ch6がフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされるようになる。また、ボタンCu2(「<」)とボタンSh2(「Shift」)とを押した場合はボタンCu2の機能が「Meter 」に変更されて、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされているチャンネルの入力レベルが各表示部Lv2a〜Lv2dに表示される。なお、ボタンCu2(「<」)とボタンSh2(「Shift」)とを押したレベルメーター表示中に任意のフェーダーセンサーFd2a〜Fd2d上で指をスライド操作すると、操作されたフェーダーの表示部は一定時間フェーダーの位置を表示した後、再びレベルメーター表示となる。なお、外部リモートコントローラー2が起動された時は、上記レベルメーター表示機能はオフされている。
外部リモートコントローラー3においても、上記した外部リモートコントローラー2と同様の機能を有しており外部リモートコントローラー2,3は同様の動作を行う。
【0015】
ここで、本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーFdとセンサー回路の構成を図3に示す。フェーダーセンサーFdは、外部リモートコントローラー2、外部リモートコントローラー3・・・に備えられているフェーダーセンサーFd2a〜Fd2d,Fd3a〜Fd3d・・・である。
フェーダーセンサーFdは、図3に示すように絶縁性の細長い矩形状の基板11からなり、基板11の一面に複数の電極P1,P2,P3,P4,P5,P6の電極パターンが形成されている。基板11は、ガラスエポキシ基板やテフロン基板とされる。図示する例では、6つの電極P1〜P6の電極パターンが下から上に向かって順次配列されて形成されており、若干の電極数は増減することができる。電極P1と上に隣接する電極P2とは境界線11aで電気的に絶縁されており、境界線11aはM字状の形状に形成されており、電極P1の上部の尖った頂部は電極P2の下部の尖った頂部間に喰い込んでいる。このように、電極P1の上部の頂部と電極P2の下部の頂部とは横方向において重なるように形成されている。
【0016】
また、電極P2と上に隣接する電極P3とを電気的に絶縁している境界線11bもM字状の形状とされて、電極P2の上部の頂部と電極P3の下部の頂部とは横方向において重なるように形成されている。さらに、電極P3と上に隣接する電極P4とを電気的に絶縁している境界線11cもM字状の形状とされて、電極P3の上部の頂部と電極P4の下部の頂部とは横方向において重なるように形成されている。さらにまた、電極P4と上に隣接する電極P5とを電気的に絶縁している境界線11dもM字状の形状とされて、電極P4の上部の頂部と電極P5の下部の頂部とは横方向において重なるように形成されている。さらにまた、電極P5と上に隣接する電極P6とを電気的に絶縁している境界線11eもM字状の形状とされて、電極P5の上部の頂部と電極P6の下部の頂部とは横方向において重なるように形成されている。上記した境界線11a〜11eは中心線に対して左右対称に形成されていることから、電極P1〜P6も中心線に対して左右対称に形成されている。そして、上下に隣接する電極同士が重なるように、かつ、中心線に対して左右対称の形状に形成されていることから、指でフェーダーセンサーFdにタッチした場合に、どの部位にタッチしても少なくとも3つの電極に指がタッチするようになる。そして、タッチした3つの電極を含む全ての電極における指のタッチ状態を検出して、検出されたタッチ状態から指がタッチしたフェーダーセンサーFd上の位置を後述するように算出することにより、フェーダーセンサーFdの電極数以上の分解能とされた位置情報を得るようにしている。
【0017】
電極P1には検出回路12aが接続され、検出回路12aからは電極P1への指のタッチ状態に応じたレベル信号が出力される。また、電極P2には検出回路12bが接続され、電極P3には検出回路12cが接続され、電極P4には検出回路12dが接続され、電極P5には検出回路12eが接続され、電極P6には検出回路12fが接続され、検出回路12b〜12fからは電極P2〜P6へのそれぞれの指のタッチ状態に応じたレベル信号がそれぞれ出力される。検出回路12a〜12fには、指のタッチ状態を検出するために発振器(OSC)14からのパルス信号がそれぞれ供給されており、検出回路12a〜12fから出力される電極P1〜P6へのタッチ状態に応じたそれぞれのレベル信号は演算回路13に供給されて、演算回路13においてフェーダーセンサーFdにタッチされた指の位置が算出されて、センサー出力として出力される。具体的には、図3に示すように指10がフェーダーセンサーFd上にタッチされた場合は、指10が電極P3,P4,P5の3つの電極にタッチされる。この場合、指10が電極P3,P4,P5にタッチしている面積の大きさに対応するレベルのレベル信号が、電極P3,P4,P5に接続されている検出回路12c、12d、12eからそれぞれ出力される。また、指10がタッチされなかった電極P1,P2,P6に接続されている検出回路12a、12b、12fからはほぼ0レベルのレベル信号が出力される。検出回路12a〜12fからのレベル信号は演算回路13に供給されて、全てのレベル信号を用いて加重平均値が算出される。この加重平均値の算出においては、電極P1〜P6の並び順に応じた重み係数がそれぞれのレベル信号に乗算されることから、演算回路13において算出された加重平均値は、フェーダーセンサーFdのどの位置に指がタッチされたかを示すセンサー出力となる。
【0018】
検出回路12a〜12fは同様の回路とされており、これらの検出回路12の回路例を図4に示し、この回路図における検出回路12の各部の信号波形を図5に示す。
図4に示す回路図の検出回路12には、発振器(OSC)14で発振された図5のAに示す周期Tの矩形波とされたパルスAが供給される。このパルスAは、排他的論理和ゲート(EX-OR)21の第1入力に入力されると共に、抵抗R1を介してEX-OR21の第2入力に入力される。また、パルスAは他の検出回路にも共通して供給される。抵抗R1とEX-OR21の第2入力との接続点には、フェーダーセンサーFdのいずれかの電極Pが接続される。電極Pに指10がタッチされると、電極Pは指10の等価的な静電容量Coを介してアースされることになる。すると、抵抗R1の経路を通るパルスAは抵抗R1と静電容量Coとの時定数により立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジが、図5のBに示すように遅れて立ち上がりあるいは立ち下がるようになる。すなわち、パルスAは抵抗R1と静電容量Coとの時定数に応じて遅延されて、遅延したパルスBがEX-OR21の第2入力に入力されるようになる。
【0019】
これにより、パルスBの遅延時間に相当した図5のCに示すパルス幅PwのパルスCが、EX-OR21から出力されるようになる。このパルスCは、パルスAの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのタイミングで発生されることから、パルスAの2倍の周期で発生され、ローパスフィルタ(LPF)22により直流化されてA/D変換器23に供給される。すなわち、LPF22は抵抗R2とコンデンサC2とから構成されるが、抵抗R2とコンデンサC2との時定数は、周期Tよりかなり大きくされているため、図5のDに示すようにパルスCのパルス幅Pwに対応して直流化されたレベル信号VdcがLPF22から出力される。このレベル信号Vdcは、上記した電極Pへのタッチ状態に応じたレベル信号であり、その値は、電極Pにタッチしている指10の面積の大きさに対応する。
【0020】
ここで、指10の電極Pへの押圧力等が変化して指10が電極Pにタッチしている面積が大きくなったとすると、指10の等価的な静電容量Coが大きくなりEX-OR21の第2入力に入力されるパルスBが図5のBの破線で示すようにより遅延するようになる。これにより、パルスBの遅延時間に相当したパルスCのパルス幅が図5のCの破線で示すようにPw’と広くなって、EX-OR21から出力されるようになる。パルス幅Pw’のパルスCはLPF22により直流化されるが、パルス幅Pwより広いことからそのレベル信号Vdc’はレベル信号Vdcより高くなる。また、指10の電極Pへの押圧力等が変化して指10が電極Pにタッチしている面積が小さくなった場合は、指10の等価的な静電容量Coが小さくなりEX-OR21の第2入力に入力されるパルスBの遅延量は小さくなる。これにより、パルスBの遅延時間に相当したパルスCのパルス幅が狭くなって、EX-OR21から出力されるようになる。この狭くなったパルス幅のパルスCはLPF22により直流化されるが、パルス幅Pwより狭いことからそのレベル信号はレベル信号Vdcより低くなる。このように、指10が電極Pにタッチしている面積に対応するレベルのレベル信号がLPF22から出力されるようになる。
LPF22から出力されるアナログのレベル信号が入力されるA/D変換器23では、入力されたレベル信号を、例えば符号ビットを含んで16ビットのデジタルのレベル信号に変換して出力している。検出回路12から出力されるデジタルのレベル信号は、演算回路13に供給される。
【0021】
フェーダーセンサーFdについてより詳細に図6を参照して説明する。図6には本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーFdの電極の構成が詳細に示されている。
6つの電極P1〜P6の各電極パターンは細長い矩形状の基板11の一面に形成されており、それぞれの電極P1〜P6の電極パターンは、指10でフェーダーセンサーFdにタッチした場合に、少なくとも3つの電極パターンに指10がタッチするようにM字状で中心線に対して左右対称の形状に形成され、上下の両側に隣接する2つの電極パターンと横方向において重なるように形成されている。例えば、図示する領域aにおいて電極P5の電極パターンに隣接する電極P4の電極パターンの上側の頂部と電極P6の電極パターンの下側の頂部とが横方向において電極P5の電極パターンに重なるように形成されている。電極P2〜P4の電極パターンも同様とされ、上下の両側に隣接する2つの電極パターンと横方向において重なるようにM字状に形成されている。この場合、領域aの下側および/または上側の領域bにおいては、横方向において重なる電極パターンは2つとされているが、図3に示すように指10がフェーダーセンサーFdにタッチする面積は領域bの高さ方向の幅を超えている。これにより、指10でフェーダーセンサーFdにタッチした場合に、少なくとも3つの電極P1〜P6の電極パターンに指10がタッチするようになる。
なお、両端の電極P1,P6の電極パターンでは隣接する電極パターンが片側にしかないため、電極P1,P6の電極パターンでは隣接する片側の電極パターンとだけ重なるように形成されている。このため、フェーダーセンサーFdの上端側あるいは下端側に指10をタッチした場合は、2つの電極パターンにしかタッチしない場合もある。
【0022】
このような電極P1〜P6の電極パターンが形成されているフェーダーセンサーFdにおいて、図7に示すように指10がタッチしたものとする。この場合は、3つの電極P3,P4,P5に指10がタッチするようになり、3つの電極P3,P4,P5がそれぞれ接続されている検出回路12c〜12eから、指10のタッチ状態に応じた大きさのレベル信号Vdc3,Vdc4,Vdc5がそれぞれ出力される。そして、電極P4の電極パターンに指10がタッチしている面積が一番大きいことから、電極P4の検出回路12dから出力されるレベル信号Vdc4のレベルが一番大きくなる。次いで、電極P5の電極パターンに指10がタッチしている面積が大きいことから、電極P5の検出回路12eから出力されるレベル信号Vdc5のレベルが次に大きくなり、電極P3の電極パターンに指10がタッチしている面積が一番小さいことから、電極P3の検出回路12cから出力されるレベル信号Vdc3のレベルが一番小さくなる。また、指10がタッチしていない電極P1,P2,P6の検出回路12a,12b,12fからはほぼ0レベルのレベル信号が出力される。
【0023】
全ての検出回路12a〜12fからのレベル信号Vdc1〜Vdc6が入力される演算回路13は、次式(1)に示す加重平均算出法によりフェーダーセンサーFdにタッチした指10の位置PSを算出する。
PS=(m1×Vdc1+m2×Vdc2+m3×Vdc3+m4×Vdc4+m5×Vdc5+m6×Vdc6)/(Vdc1+Vdc2+Vdc3+Vdc4+Vdc5+Vdc6) (1)
(1)式において、Vdc1〜Vdc6は、検出回路12a〜12fからそれぞれ出力されるレベル信号であり、m1〜m6はレベル信号Vdc1〜Vdc6にそれぞれ乗算される電極の並び順に応じた重み係数である。重み係数m1〜m6は、例えば0,1,2,3,4,5とされるが、この重み係数に限るものではない。
ここで、レベル信号Vdc1〜Vdc6が符号ビットを含んで16ビットとされていると、演算回路13では16ビットの演算が行われるが、演算回路13から出力されるフェーダーセンサーFdに指がタッチされた位置PSを示すセンサー出力は0〜127(7ビット)に丸められる。これにより、電極数がP1〜P6の6電極数とされた時に、タッチした指10の位置PSの分解能は128/6倍となり、高分解能のセンサー出力を得ることができるようになる。なお、0〜127のセンサー出力において、最小値「0」は最下段の電極P1の位置に対応し、最大値「127」は最上段の電極P6の位置に対応しており、最下段の電極P1から最上段の電極P6までの位置を0〜127の値で示すことができる。また、電極P1〜P6は中心線に対して左右対称に形成されていることから、電極P1からの位置が変わらなければタッチした指が中心線から横方向へずれてもセンサー出力はほぼ同じ値を示すようになる。
【0024】
次に、図3に示すフェーダーセンサーFdとセンサー回路とを基板上に設けるようにした具体的な構成を図8(a)(b)に示す。図8(a)は基板30の表面の構成を示す図であり、図8(b)は基板30の裏面の構成を示す図である。
図8(a)に示すように基板30の表面には、その周囲の縁部を残して図3に示す電極P1〜P6の電極パターンが形成されている。電極P1〜P6の電極パターンは、上記したようにM字状に形成された中心線に対して左右対称の形状の境界線で、上下に隣接する電極パターンと区切られた電極パターンとされている。これにより、電極P1〜P6の電極パターンは、中心線に対して左右対称の形状に形成されている。電極P1の電極パターンの紙面上の右側にスルーホール15aが形成されており、同様にして電極P2〜P6の電極パターンの紙面上の右側にスルーホール15b〜15fがそれぞれ形成されている。また、基板30の裏面には集積回路とされた検出回路12a〜12fが、表面に形成された電極P1〜P6に対応して配置されており、検出回路12a〜12fのそれぞれの入力端子は裏面に形成されたパターンとスルーホール15a〜15fを介して、それぞれ対応する電極P1〜P6に接続されている。
【0025】
さらに、基板30の裏面には集積回路とされたOSC14が配置されており、OSC14の出力は裏面に形成されたパターンにより検出回路12a〜12fのパルス入力端子に接続されている。これにより、OSC14からのパルスが検出回路12a〜12fにそれぞれ供給されると共に、検出回路12a〜12fの入力端子には、それぞれ電極P1〜P6が接続されるようになる。そして、検出回路12a〜12fのそれぞれの出力端子は、基板30の裏面に配置された集積回路とされた演算回路13の入力端子と、裏面に形成されたパターンによりそれぞれ接続されている。これにより、演算回路13に検出回路12a〜12fから出力されるレベル信号Vdc1〜Vdc6がそれぞれ入力されて、上記(1)式による加重平均値算出法が実行され、フェーダーセンサーFdにタッチした指10の位置PSが高分解能で検出されるようになる。
上記したように、基板30の表面と裏面とにフェーダーセンサーFdと、検出回路、OSCおよび演算回路からなるセンサー回路とを設けることにより、コンパクトな構成とすることができ、小型の外部リモートコントローラに内蔵するに好適な構成とすることができる。
【0026】
次に、本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーFdのタッチ位置を検出する他の概要を図9に示す。本発明にかかるフェーダーセンサーFdは、2本の指が同時にフェーダーセンサーFdにタッチされた際に、2本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたことを検出して、それぞれの指がタッチされた位置のセンサー出力を出力することができる。以下に、図9を参照しながら2本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたことの検出、および、それぞれの指がタッチされた位置のセンサー出力を出力することについて説明する。
図9に示すように、指10aと指10bとがフェーダーセンサーFdに同時にタッチされたとする。この場合は、3つの電極P1,P2,P3に指10aがタッチするようになり、3つの電極P1,P2,P3がそれぞれ接続されている検出回路12a〜12cから、指10aのタッチ状態に応じたレベル信号Vdc1,Vdc2,Vdc3がそれぞれ出力される。また、指10bが3つの電極P4,P5,P6にタッチするようになり、3つの電極P4,P5,P6がそれぞれ接続されている検出回路12d〜12fから、指10bのタッチ状態に応じたレベル信号Vdc4,Vdc5,Vdc6がそれぞれ出力される。
【0027】
そして、電極P2の電極パターンに指10aがタッチしている面積は大きいことから、電極P2の検出回路12bから出力されるレベル信号Vdc2の出力レベルは大きくなる。また、電極P5の電極パターンに指10bがタッチしている面積も大きいことから、電極P5の検出回路12eから出力されるレベル信号Vdc5の出力レベルも大きくなる。さらに、電極P3の電極パターンに指10aがタッチしている面積および電極P4に指10bがタッチしている面積もかなり大きいことから、電極P3の検出回路12cから出力されるレベル信号Vdc3の出力レベルがかなり大きくなると共に、電極P4の検出回路12dから出力されるレベル信号Vdc4の出力レベルもかなり大きくなる。さらにまた、電極P1の電極パターンに指10aがタッチしている面積および電極6の電極パターンに指10bがタッチしている面積が小さいことから、電極P1の検出回路12aから出力されるレベル信号Vdc1および電極P6の検出回路12fから出力されるレベル信号Vdc6の出力レベルは小さくなる。
このように、2本の指10b,12がフェーダーセンサーFdに同時にタッチされている場合は、1本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされている場合に比べてレベル信号が出力される電極の数が増加することになる。そこで、演算回路13において検出回路12a〜12fからのレベル信号Vdc1〜Vdc6の分散値を算出すると、図3に示すように1本の指10がフェーダーセンサーFdにタッチしている場合に算出される分散値に比べて、図9に示すように指10bと指10aとの2本がフェーダーセンサーFdにタッチしている場合に算出される分散値が大きい値となることがわかる。
【0028】
これを利用すると、演算回路13において分散値を算出することにより、フェーダーセンサーFdに1本の指がタッチされたのか2本の指がタッチされたのかを判定することができる。すなわち、演算回路13において検出回路12a〜12fからのレベル信号Vdc1〜Vdc6の分散値を算出して、算出した分散値が所定の値より小さい場合は1本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたと演算回路13において判定することができ、算出された分散値が所定の値より大きい場合には2本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたと演算回路13において判定することができる。なお、分散値SCは
SC={(レベル信号−レベル信号平均値)の2乗}の総和÷レベル信号の数
で算出できる。
【0029】
そして、演算回路13において1本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたと判定された場合は、上記(1)式を用いた加重平均算出法によりフェーダーセンサーFdにタッチされた1本の指の位置PSを算出する。
また、演算回路13において2本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたと判定された場合は、図9に示すようにフェーダーセンサーFdの領域を下側の領域である第1領域と上側の領域である第2領域に等分に分割して、それぞれの領域において加重平均算出法によりフェーダーセンサーFdにタッチした指の位置を演算回路13で算出する。この場合、演算回路13は次の(2)式を用いた加重平均算出法により第1領域にタッチした指10aの位置PS1を算出する。
PS1=(m1×Vdc1+m2×Vdc2+m3×Vdc3)/(Vdc1+Vdc2+Vdc3) (2)
(2)式において、Vdc1〜Vdc3は、電極P1〜P3に接続されている検出回路12a〜12cからそれぞれ出力されるレベル信号であり、m1〜m3はレベル信号Vdc1〜Vdc3にそれぞれ乗算される電極P1〜P3の並び順に応じた重み係数である。重み係数m1〜m3は、例えば0,1,2とされるが、この重み係数に限るものではない。
【0030】
また、演算回路13は次の(3)式を用いた加重平均算出法により第2領域にタッチした指10bの位置PS2を算出する。
PS2=(m4×Vdc4+m5×Vdc5+m6×Vdc6)/(Vdc4+Vdc5+Vdc6) (3)
(3)式において、Vdc4〜Vdc6は、電極P4〜P6に接続されている検出回路12d〜12fからそれぞれ出力されるレベル信号であり、m4〜m6はレベル信号Vdc4〜Vdc6にそれぞれ乗算される電極P4〜P6の並び順に応じた重み係数である。重み係数m4〜m6は、例えば0,1,2とされるが、この重み係数に限るものではない。
ここで、レベル信号Vdc1〜Vdc6が符号ビットを含んで16ビットとされていると、演算回路13では16ビットの演算が行われるが、演算回路13から出力されるフェーダーセンサーFdに指がタッチされた位置PS1,PS2を示すそれぞれのセンサー出力は0〜127(7ビット)に丸められる。これにより、電極数がP1〜P6の6つの電極数とされた時に、タッチした指10a,10bの位置PS1,PS2の分解能は128/6倍となり、高分解能のセンサー出力を得ることができるようになる。
上記したように、本発明にかかるフェーダーセンサーFdにおいては、まず、演算回路13において分散値を算出して、フェーダーセンサーFdに1本の指がタッチされているか2本の指がタッチされているかを判定し、次いで、電極の領域を等分してそれぞれの領域において加重平均算出法の演算を行って、それぞれの領域において指がタッチされた位置を算出している。
【0031】
次に、フェーダーセンサーFdが備える電極の他の構成例を図10(a)(b)に、電極のさらに他の構成例を図11(a)(b)に示す。
図10(a)に示す電極の構成例では、フェーダーセンサーFdの基板31に6つの電極P1〜P6の電極パターンが形成されており、電極P1〜P6の電極パターン同士を区切る境界線31a,31b,31c,31d,31eが正弦波状で中心線に対して左右対称の形状とされている。これにより、6つの電極P1〜P6の電極パターンも中心線に対して左右対称の正弦波状とされ、電極パターンの上部の頂部は上側に隣接する電極パターンの下部の頂部間に喰い込んでおり、電極パターンの下部の頂部は下側に隣接する電極パターンの上部の頂部間に喰い込んでいる。このように、正弦波状とされた電極パターンは横方向の領域aにおいて3つの電極の電極パターンが重なるように形成されていることを特徴としている。
また、図10(b)に示す電極の構成例では、フェーダーセンサーFdの基板32に6つの電極P1〜P6の電極パターンが形成されており、電極P1〜P6の電極パターン同士を区切る境界線32a,32b,32c,32d,32eが台形状で中心線に対して左右対称の形状とされている。これにより、6つの電極P1〜P6の電極パターンも中心線に対して左右対称の台形状とされ、電極パターンの上部の頂部は上側に隣接する電極パターンの下部の頂部間に喰い込んでおり、電極パターンの下部の頂部は下側に隣接する電極パターンの上部の頂部間に喰い込んでいる。このように、台形状とされた電極パターンは横方向の領域aにおいて3つの電極の電極パターンが重なるように形成されていることを特徴としている。
【0032】
さらに、図11(a)に示す電極の構成例では、フェーダーセンサーFdの基板33に6つの電極P1〜P6の電極パターンが形成されており、電極P1〜P6の電極パターン同士を区切る境界線33a,33b,33c,33d,33eが階段状で中心線に対して左右対称の形状とされている。これにより、6つの電極P1〜P6の電極パターンも中心線に対して左右対称の階段状とされ、電極パターンの上部は上側に隣接する電極パターンの下部の間に喰い込んでおり、電極パターンの下部は下側に隣接する電極パターンの上部の間に喰い込んでいる。このように、階段状とされた電極パターンは、横方向の領域aにおいて3つの電極の電極パターンが重なるように形成されていることを特徴としている。
さらにまた、図11(b)に示す電極の構成例では、フェーダーセンサーFdの基板34に6つの電極P1〜P6の電極パターンが形成されており、電極P1〜P6の電極パターン同士を区切る境界線34a,34b,34c,34d,34eが三角状で中心線に対して左右対称の形状とされている。この場合、電極パターンの上部は上側に隣接する電極パターンの下部の間に喰い込んでいる。これにより、6つの電極P1〜P6の電極パターンも中心線に対して左右対称の三角状とされ、三角状とされた電極パターンは、横方向の領域aにおいて3つの電極の電極パターンが重なるように形成されていることを特徴としている。
【0033】
上記した図10(a)(b)および図11(a)(b)に示す中心線に対して左右対称の電極パターンとされた電極のフェーダーセンサーFdにおいては、指がフェーダーセンサーFdにタッチした場合に、少なくとも電極P1〜P6の3つの電極パターンに指がタッチするようになる。なお、フェーダーセンサーFdにおける領域aの下側および/または上側の領域bにおいては、横方向において重なる電極のパターンは2つとされているが、指がフェーダーセンサーFdにタッチする面積は領域bの高さ方向の幅を超えている。これにより、指でフェーダーセンサーFdにタッチした場合に、少なくとも電極P1〜P6の3つの電極パターンに指がタッチするようになる。また、電極P1〜P6は中心線に対して左右対称に形成されていることから、電極P1からの位置が変わらなければタッチした指が中心線から横方向へずれてもセンサー出力はほぼ同じ値を示すようになる。
なお、両端の電極P1,P6のパターンには隣接する電極パターンが片側にしかないため、電極P1,P6のパターンでは片側にだけ隣接する電極パターンと重なるように形成されている。このため、フェーダーセンサーFdの上端側あるいは下端側に指をタッチした場合は、2つの電極パターンにしかタッチしない場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0034】
上記の説明では、演算回路13において検出回路12a〜12fからのレベル信号Vdc1〜Vdc6の分散値を算出して、算出した分散値の大きさに応じて1本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたか、2本の指がフェーダーセンサーにタッチされたかを判断していたが、分散値に代えて標準偏差値の大きさに応じて1本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたか、2本の指がフェーダーセンサーにタッチされたかを判断してもよい。この場合は、標準偏差値が所定の値より小さい場合は1本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたと判定することができ、算出された分散値が所定の値より大きい場合には2本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたと判定することができる。
以上説明した本発明のタッチセンサの実施例であるフェーダーセンサーFdにおいては、フェーダーセンサーFd上に指をタッチすることで、そのフェーダーセンサーFdにアサインされているチャンネルのフェーダーレベルを調整していたが、これに替えて、フェーダーセンサーFd上で指をスライドすることで、スライド量に応じてフェーダーセンサーFdにアサインされているチャンネルのフェーダーレベルを調整するようにしてもよい。この場合、フェーダーセンサーFd上のスライド操作の始点の位置と終点の位置とを検出して、始点の位置と終点の位置との差分でスライド量を算出すればよい。
また、本発明のタッチセンサーはフェーダーセンサーに適用できるだけでなく、分解能を向上したい一般的に用いられているタッチセンサーに適用することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 PC(パーソナルコンピュータ)、2,3 外部リモートコントローラー、4 GUI画面、4a ウィンドウ、4b ウィンドウ、4c カーソル、10,10a,10b 指、11 基板、11a〜11e 境界線、12 検出回路、12a〜12f 検出回路、13 演算回路、14 OSC、15a〜15f スルーホール、23 A/D変換器、30 基板、31 基板、31a〜31e 境界線、32 基板、32a〜32e 境界線、33 基板、33a〜33e 境界線、34 基板、34a〜34e 境界線、Fd フェーダーセンサー、Fd2a〜Fd2d フェーダーセンサー、Fd3a〜Fd3d フェーダーセンサー、P 電極、P1〜P6 電極、Bd2,Bu2,Cd2,Cu2 ボタン、Lv2a,Lv2b,Lv2c,Lv2d 表示部、Bd3,Bu3,Cd3,Cu3 ボタン、Lv3a,Lv3b,Lv3c,Lv3d 表示部、Sh2、Sh3 ボタン
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響信号処理にかかるパラメーターを操作するコントローラーに備えられるタッチセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンピューターを用いる音響信号処理装置において、ディジタル信号処理により演奏データの録音や編集、ミキシング等の音響処理作業を行うことが知られている。音響信号処理装置で使用するコンピューターは、PC(パーソナルコンピューター)等の汎用のコンピューターとされ、音響信号処理装置に必要なオーディオインターフェースやMIDI(Musical Instrument Digital Interface)インターフェースなどの各種ハードウェア装置を備えている。また、コンピューターには音響信号処理機能を実行させるためのアプリケーションプログラムが実装されている。これにより、コンピューターにおいて、音響信号の録音や編集、あるいはエフェクト付与やミキシング等の音響信号処理機能が実現される。このような音響信号処理装置は、デジタルオーディオワークステーション(Digital Audio Workstation:DAW)と呼ばれている。このDAW機能をコンピューターに実行させるアプリケーションプログラムを、以下の説明においては「DAWソフト」という。
【0003】
PCで動作するDAWソフトは充実しており、PCにDAWソフトをインストールすることで個人でも簡単に音楽制作ができるようになる。また、DAWソフトの機能も増えてパラメーターが増加しており、マウス操作のみで全てのパラメーターを操作することは困難になってきている。このため、DAWソフトがインストールされたPCに、DAW操作のための専用のコントローラーを接続して、このコントローラーに備えられているタッチセンサーを使用してDAWのパラメーターをリモートコントロールすることが行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Steinberg Media Technologies GmbH CC121オペレーションマニュアル,[online], [平成23年2月10日検索],インターネット<ftp://ftp.steinberg.net/Download/Hardware/CC121/CC121_OperationManual_ja.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DAWソフトがインストールされたPCに外部接続されるコントローラーは、片手に持ってもう一方の手で操作できる程度の大きさの小型コントローラーとされており、コントローラーのパネルには、各種の操作子が設けられている。操作子には、縦に細長いタッチセンサーからなる複数本(例えば、4本)のフェーダーセンサーが含まれている。このフェーダーセンサー上で指をスライドさせることにより、フェーダーセンサーにそれぞれアサインされているチャンネルのフェーダーレベルを調整することができる。フェーダーセンサーによる調整では、細かなフェーダーレベルを調整することが望まれているが、細かなレベルで調整するにはフェーダーセンサーの分解能を上げる必要がある。フェーダーセンサーの分解能は、フェーダーセンサーに形成されているタッチされたことを検出する電極の数で決定されるが、コントローラーが小型とされていることからフェーダーセンサーも小型になってしまい、上記した電極の数を多く形成することができないことになる。従って、タッチセンサーの分解能を上げられないと云う問題点があった。
そこで、本発明は、タッチされたことを検出する電極の数が少なくても分解能を上げることができるコントローラーに備えられるタッチセンサーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のタッチセンサーは、音響信号処理にかかるパラメーターを操作するコントローラーに備えられるタッチセンサーであって、絶縁性の基板の一面に形成され、タッチされた際に3つ以上の電極パターンに同時にタッチされるように、隣接する電極パターンとの境界線が斜め方向に形成されて、隣接する電極パターンと横方向において重なるように形成されている複数の電極と、前記電極パターンのそれぞれのタッチ状態に応じて、対応する前記電極から出力されるレベル信号に、当該電極の並び順に応じた重み係数を乗算して全ての前記電極から出力される前記レベル信号の加重平均値を算出することにより、タッチした位置に対応するセンサー出力を得る演算手段とを備えることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タッチされた際に3つ以上の電極に同時にタッチされる電極パターンの形状とされており、複数の電極パターンのそれぞれのタッチ状態に応じて、複数の電極からそれぞれ出力されるレベル信号に、当該電極の並び順の重み係数を乗算して加重平均値を算出することにより、タッチした位置に対応するセンサー出力を得ていることから、電極の数以上の分解能を得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーを備えるコントローラーをPCに接続した構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例にかかるフェーダーセンサーを備えるコントローラーが接続されたPC上で動作中のDAWソフトのGUI画面の一例を示す図である。
【図3】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーとセンサー回路の構成を示す図である。
【図4】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーの検出回路の回路図の一例である。
【図5】発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーの検出回路の各部の信号波形を示す波形図である。
【図6】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーの電極の構成を示す図である。
【図7】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーのタッチ位置を検出する概要を示す図である。
【図8】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーの具体的な構成を示す図である。
【図9】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーのタッチ位置を検出する他の概要を示す図である。
【図10】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーの電極の他の構成を示す図である。
【図11】本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーの電極のさらに他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーを備えるコントローラーをPCに接続した構成を示す図を図1に示す。
図1において、PC1には演奏データの録音や編集、あるいはエフェクト付与やミキシング等の音響処理機能を実現するためのDAW(Digital Audio Workstation)と呼ばれるアプリケーションソフトであるDAWソフトがインストールされている。DAWソフトを操作するための専用のコントローラーである2台の外部リモートコントローラー2と外部リモートコントローラー3とがPC1に接続されている。PC1には周辺機器とPC1とを結ぶシリアルインタフェース規格のひとつであるUSB(Universal Serial Bus)インタフェースの複数のUSB端子が装備されており、外部リモートコントローラー2,3にもUSB端子が装備されている。PC1と外部リモートコントローラー2,3とは、それぞれのUSB端子間をUSBケーブルで接続することにより、相互に通信可能に接続されている。外部リモートコントローラー2,3は、DAWソフトにおける入力チャンネルや出力チャンネルのパラメーターをリモートコントロールすることができる。
【0010】
図1に示す例ではPC1には2台の外部リモートコントローラー2,3が接続されているが、n台(nは、例えば4とされる。)までの外部リモートコントローラーが接続可能とされている。外部リモートコントローラー2,3は同じ構成とされており、外部リモートコントローラー2を例に挙げて、その構成を以下に説明する。
図1に示すように外部リモートコントローラー2は、4本のフェーダーセンサーFd2a,Fd2b,Fd2c,Fd2dを備えている。4本のフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dは、縦に細長いタッチセンサーからなり、タッチセンサー上において指をタッチした位置により、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにそれぞれアサインされているチャンネルのフェーダーレベルを設定することができる。フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dでカバーされた内側には、長軸に沿ってほぼ等間隔で配置された複数個のLEDからなる表示部Lv2a,Lv2b,Lv2c,Lv2dが設けられている。表示部Lv2a〜Lv2dでは、アサインされた各チャンネルのフェーダーの位置(フェーダーレベル)に相当するLEDが点灯される。そして、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2d上に指をタッチすると、タッチした位置にフェーダーの位置が移動されることから、移動されたフェーダーの位置に連動して表示部Lv2a〜Lv2dで点灯されるLEDが移動するようになる。この場合、フェーダーの位置はフェーダーレベルに相当することから、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2d上に指をタッチすることでフェーダーレベルを調整できるようになる。
外部リモートコントローラー3は、外部リモートコントローラー2と同様の構成とされていることから説明は省略するが、フェーダーセンサーFd3a〜Fd3d上に指をタッチすることで、フェーダーセンサーFd3a〜Fd3dにそれぞれアサインされているチャンネルのフェーダーレベルを調整できる。
【0011】
次に、図1に示すように外部リモートコントローラー2,3が接続されていると共にDAWソフトが起動されているPC1におけるDAWのGUI(Graphical User Interface)画面4の一例を図2に示す。図示する例では、DAWのGUI画面4にはシーケンサーのウィンドウ4aとミキサーのウィンドウ4bとが表示されている。ウィンドウ4aは、楽曲を制作できるGUIとされ演奏データの複数トラックの情報、および、トラック毎の演奏データが時系列的に細長い矩形状で表示されている。再生ボタンを押すと、カーソル4cがテンポに応じた速度で右側に移動していき、カーソル位置の各トラックにおける演奏データが再生される。また、DAWソフトではミキサー機能が実現され、再生される際には、各トラックの音響信号がミキサーにより混合されて出力されるようになる。ウィンドウ4bには、各トラックの音響信号を混合するミキサーのGUIであり、各トラックの混合レベルを調整するための複数チャンネル分のフェーダーが少なくとも表示されており、そのフェーダーを画面上でドラッグして移動することにより、当該フェーダーにアサインされたチャンネル(トラック)のフェーダーレベルを調整して、混合されるレベルを調整することができる。
ウィンドウ4bには、例えば12チャンネル分のフェーダーが表示されており、ウィンドウ4aに表示されている各トラックからなるチャンネルを各フェーダーにアサインすることができる。
【0012】
外部リモートコントローラー2では、ウィンドウ4bに表示されているフェーダーに替えて、フェーダーの位置をリモートコントロールすることができる。この場合、外部リモートコントローラー2の4本のフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにそれぞれアサインされたチャンネルのフェーダーの位置がリモートコントロールされる。フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dには、任意の連続する昇順の4チャンネルをアサインすることができ、連続しないランダムなチャンネルはアサインすることができない。アサインされた4チャンネルは、外部リモートコントローラー2上の「Channel」に設けられているチャンネル移動ボタンや「Bank」に設けられているバンク移動ボタンを押すことにより変更することができる。ここで、「Channel」のボタンCd2(「<」)を押すと、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされているチャンネルが1つづつチャンネル番号が減少する方向に移動される。例えば、ch3〜ch6がフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされていた場合に、ボタンCd2(「<」)を押すとフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにはch2〜ch5がアサインされるようになる。また、「Channel」のボタンCu2(「>」)を押すと、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされているチャンネルが1つづつチャンネル番号が増加する方向に移動される。例えば、ch3〜ch6がフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされていた場合に、ボタンCu2を押すとフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにはch4〜ch7がアサインされるようになる。ウィンドウ4bに表示されているチャンネルは左側から右側に向かって順次チャンネル番号が増加していることから、ボタンCd2(「<」)はチャンネルレフトボタン、ボタンCu2(「>」)はチャンネルライトボタンとなる。
【0013】
また、「Bank」のボタンBd2(「<」)を押すと、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされているチャンネルが1バンクとされる4チャンネル分づつチャンネル番号が減少する方向に移動する。例えば、ch6〜ch9がフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされていた場合に、ボタンBd2を押すとフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにはch2〜ch5がアサインされるようになる。また、「Bank」のボタンBu2(「>」)を押すと、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされているチャンネルが1バンクとされる4チャンネル分ずつチャンネル番号が増加する方向に移動する。例えば、ch6〜ch9がフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされていた場合に、ボタンBu2を押すとフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにはch10〜ch13がアサインされるようになる。すなわち、ボタンBd2(「<」)はバンクレフトボタン、ボタンBu2(「>」)はバンクライトボタンとなる。
このように、チャンネル移動ボタンであるCd2,Cu2あるいはバンク移動ボタンであるBd2,Bu2を押すことにより、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dに任意の連続する4チャンネルをアサインすることができる。
【0014】
上記したように、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dには、PC1のウィンドウ4bで選択されているチャンネルとは独立して連続する昇順の4チャンネルをアサインすることができるが、ボタンCd2(「<」)とボタンSh2(「Shift」)とを押した場合はボタンCd2の機能が「Select 」に変更されて、PC1のウィンドウ4bで選択中のチャンネルを先頭にした連続する昇順の4チャンネルがフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにそれぞれアサインされる。例えば、ch3がウィンドウ4bで選択中の場合はch3〜ch6がフェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされるようになる。また、ボタンCu2(「<」)とボタンSh2(「Shift」)とを押した場合はボタンCu2の機能が「Meter 」に変更されて、フェーダーセンサーFd2a〜Fd2dにアサインされているチャンネルの入力レベルが各表示部Lv2a〜Lv2dに表示される。なお、ボタンCu2(「<」)とボタンSh2(「Shift」)とを押したレベルメーター表示中に任意のフェーダーセンサーFd2a〜Fd2d上で指をスライド操作すると、操作されたフェーダーの表示部は一定時間フェーダーの位置を表示した後、再びレベルメーター表示となる。なお、外部リモートコントローラー2が起動された時は、上記レベルメーター表示機能はオフされている。
外部リモートコントローラー3においても、上記した外部リモートコントローラー2と同様の機能を有しており外部リモートコントローラー2,3は同様の動作を行う。
【0015】
ここで、本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーFdとセンサー回路の構成を図3に示す。フェーダーセンサーFdは、外部リモートコントローラー2、外部リモートコントローラー3・・・に備えられているフェーダーセンサーFd2a〜Fd2d,Fd3a〜Fd3d・・・である。
フェーダーセンサーFdは、図3に示すように絶縁性の細長い矩形状の基板11からなり、基板11の一面に複数の電極P1,P2,P3,P4,P5,P6の電極パターンが形成されている。基板11は、ガラスエポキシ基板やテフロン基板とされる。図示する例では、6つの電極P1〜P6の電極パターンが下から上に向かって順次配列されて形成されており、若干の電極数は増減することができる。電極P1と上に隣接する電極P2とは境界線11aで電気的に絶縁されており、境界線11aはM字状の形状に形成されており、電極P1の上部の尖った頂部は電極P2の下部の尖った頂部間に喰い込んでいる。このように、電極P1の上部の頂部と電極P2の下部の頂部とは横方向において重なるように形成されている。
【0016】
また、電極P2と上に隣接する電極P3とを電気的に絶縁している境界線11bもM字状の形状とされて、電極P2の上部の頂部と電極P3の下部の頂部とは横方向において重なるように形成されている。さらに、電極P3と上に隣接する電極P4とを電気的に絶縁している境界線11cもM字状の形状とされて、電極P3の上部の頂部と電極P4の下部の頂部とは横方向において重なるように形成されている。さらにまた、電極P4と上に隣接する電極P5とを電気的に絶縁している境界線11dもM字状の形状とされて、電極P4の上部の頂部と電極P5の下部の頂部とは横方向において重なるように形成されている。さらにまた、電極P5と上に隣接する電極P6とを電気的に絶縁している境界線11eもM字状の形状とされて、電極P5の上部の頂部と電極P6の下部の頂部とは横方向において重なるように形成されている。上記した境界線11a〜11eは中心線に対して左右対称に形成されていることから、電極P1〜P6も中心線に対して左右対称に形成されている。そして、上下に隣接する電極同士が重なるように、かつ、中心線に対して左右対称の形状に形成されていることから、指でフェーダーセンサーFdにタッチした場合に、どの部位にタッチしても少なくとも3つの電極に指がタッチするようになる。そして、タッチした3つの電極を含む全ての電極における指のタッチ状態を検出して、検出されたタッチ状態から指がタッチしたフェーダーセンサーFd上の位置を後述するように算出することにより、フェーダーセンサーFdの電極数以上の分解能とされた位置情報を得るようにしている。
【0017】
電極P1には検出回路12aが接続され、検出回路12aからは電極P1への指のタッチ状態に応じたレベル信号が出力される。また、電極P2には検出回路12bが接続され、電極P3には検出回路12cが接続され、電極P4には検出回路12dが接続され、電極P5には検出回路12eが接続され、電極P6には検出回路12fが接続され、検出回路12b〜12fからは電極P2〜P6へのそれぞれの指のタッチ状態に応じたレベル信号がそれぞれ出力される。検出回路12a〜12fには、指のタッチ状態を検出するために発振器(OSC)14からのパルス信号がそれぞれ供給されており、検出回路12a〜12fから出力される電極P1〜P6へのタッチ状態に応じたそれぞれのレベル信号は演算回路13に供給されて、演算回路13においてフェーダーセンサーFdにタッチされた指の位置が算出されて、センサー出力として出力される。具体的には、図3に示すように指10がフェーダーセンサーFd上にタッチされた場合は、指10が電極P3,P4,P5の3つの電極にタッチされる。この場合、指10が電極P3,P4,P5にタッチしている面積の大きさに対応するレベルのレベル信号が、電極P3,P4,P5に接続されている検出回路12c、12d、12eからそれぞれ出力される。また、指10がタッチされなかった電極P1,P2,P6に接続されている検出回路12a、12b、12fからはほぼ0レベルのレベル信号が出力される。検出回路12a〜12fからのレベル信号は演算回路13に供給されて、全てのレベル信号を用いて加重平均値が算出される。この加重平均値の算出においては、電極P1〜P6の並び順に応じた重み係数がそれぞれのレベル信号に乗算されることから、演算回路13において算出された加重平均値は、フェーダーセンサーFdのどの位置に指がタッチされたかを示すセンサー出力となる。
【0018】
検出回路12a〜12fは同様の回路とされており、これらの検出回路12の回路例を図4に示し、この回路図における検出回路12の各部の信号波形を図5に示す。
図4に示す回路図の検出回路12には、発振器(OSC)14で発振された図5のAに示す周期Tの矩形波とされたパルスAが供給される。このパルスAは、排他的論理和ゲート(EX-OR)21の第1入力に入力されると共に、抵抗R1を介してEX-OR21の第2入力に入力される。また、パルスAは他の検出回路にも共通して供給される。抵抗R1とEX-OR21の第2入力との接続点には、フェーダーセンサーFdのいずれかの電極Pが接続される。電極Pに指10がタッチされると、電極Pは指10の等価的な静電容量Coを介してアースされることになる。すると、抵抗R1の経路を通るパルスAは抵抗R1と静電容量Coとの時定数により立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジが、図5のBに示すように遅れて立ち上がりあるいは立ち下がるようになる。すなわち、パルスAは抵抗R1と静電容量Coとの時定数に応じて遅延されて、遅延したパルスBがEX-OR21の第2入力に入力されるようになる。
【0019】
これにより、パルスBの遅延時間に相当した図5のCに示すパルス幅PwのパルスCが、EX-OR21から出力されるようになる。このパルスCは、パルスAの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのタイミングで発生されることから、パルスAの2倍の周期で発生され、ローパスフィルタ(LPF)22により直流化されてA/D変換器23に供給される。すなわち、LPF22は抵抗R2とコンデンサC2とから構成されるが、抵抗R2とコンデンサC2との時定数は、周期Tよりかなり大きくされているため、図5のDに示すようにパルスCのパルス幅Pwに対応して直流化されたレベル信号VdcがLPF22から出力される。このレベル信号Vdcは、上記した電極Pへのタッチ状態に応じたレベル信号であり、その値は、電極Pにタッチしている指10の面積の大きさに対応する。
【0020】
ここで、指10の電極Pへの押圧力等が変化して指10が電極Pにタッチしている面積が大きくなったとすると、指10の等価的な静電容量Coが大きくなりEX-OR21の第2入力に入力されるパルスBが図5のBの破線で示すようにより遅延するようになる。これにより、パルスBの遅延時間に相当したパルスCのパルス幅が図5のCの破線で示すようにPw’と広くなって、EX-OR21から出力されるようになる。パルス幅Pw’のパルスCはLPF22により直流化されるが、パルス幅Pwより広いことからそのレベル信号Vdc’はレベル信号Vdcより高くなる。また、指10の電極Pへの押圧力等が変化して指10が電極Pにタッチしている面積が小さくなった場合は、指10の等価的な静電容量Coが小さくなりEX-OR21の第2入力に入力されるパルスBの遅延量は小さくなる。これにより、パルスBの遅延時間に相当したパルスCのパルス幅が狭くなって、EX-OR21から出力されるようになる。この狭くなったパルス幅のパルスCはLPF22により直流化されるが、パルス幅Pwより狭いことからそのレベル信号はレベル信号Vdcより低くなる。このように、指10が電極Pにタッチしている面積に対応するレベルのレベル信号がLPF22から出力されるようになる。
LPF22から出力されるアナログのレベル信号が入力されるA/D変換器23では、入力されたレベル信号を、例えば符号ビットを含んで16ビットのデジタルのレベル信号に変換して出力している。検出回路12から出力されるデジタルのレベル信号は、演算回路13に供給される。
【0021】
フェーダーセンサーFdについてより詳細に図6を参照して説明する。図6には本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーFdの電極の構成が詳細に示されている。
6つの電極P1〜P6の各電極パターンは細長い矩形状の基板11の一面に形成されており、それぞれの電極P1〜P6の電極パターンは、指10でフェーダーセンサーFdにタッチした場合に、少なくとも3つの電極パターンに指10がタッチするようにM字状で中心線に対して左右対称の形状に形成され、上下の両側に隣接する2つの電極パターンと横方向において重なるように形成されている。例えば、図示する領域aにおいて電極P5の電極パターンに隣接する電極P4の電極パターンの上側の頂部と電極P6の電極パターンの下側の頂部とが横方向において電極P5の電極パターンに重なるように形成されている。電極P2〜P4の電極パターンも同様とされ、上下の両側に隣接する2つの電極パターンと横方向において重なるようにM字状に形成されている。この場合、領域aの下側および/または上側の領域bにおいては、横方向において重なる電極パターンは2つとされているが、図3に示すように指10がフェーダーセンサーFdにタッチする面積は領域bの高さ方向の幅を超えている。これにより、指10でフェーダーセンサーFdにタッチした場合に、少なくとも3つの電極P1〜P6の電極パターンに指10がタッチするようになる。
なお、両端の電極P1,P6の電極パターンでは隣接する電極パターンが片側にしかないため、電極P1,P6の電極パターンでは隣接する片側の電極パターンとだけ重なるように形成されている。このため、フェーダーセンサーFdの上端側あるいは下端側に指10をタッチした場合は、2つの電極パターンにしかタッチしない場合もある。
【0022】
このような電極P1〜P6の電極パターンが形成されているフェーダーセンサーFdにおいて、図7に示すように指10がタッチしたものとする。この場合は、3つの電極P3,P4,P5に指10がタッチするようになり、3つの電極P3,P4,P5がそれぞれ接続されている検出回路12c〜12eから、指10のタッチ状態に応じた大きさのレベル信号Vdc3,Vdc4,Vdc5がそれぞれ出力される。そして、電極P4の電極パターンに指10がタッチしている面積が一番大きいことから、電極P4の検出回路12dから出力されるレベル信号Vdc4のレベルが一番大きくなる。次いで、電極P5の電極パターンに指10がタッチしている面積が大きいことから、電極P5の検出回路12eから出力されるレベル信号Vdc5のレベルが次に大きくなり、電極P3の電極パターンに指10がタッチしている面積が一番小さいことから、電極P3の検出回路12cから出力されるレベル信号Vdc3のレベルが一番小さくなる。また、指10がタッチしていない電極P1,P2,P6の検出回路12a,12b,12fからはほぼ0レベルのレベル信号が出力される。
【0023】
全ての検出回路12a〜12fからのレベル信号Vdc1〜Vdc6が入力される演算回路13は、次式(1)に示す加重平均算出法によりフェーダーセンサーFdにタッチした指10の位置PSを算出する。
PS=(m1×Vdc1+m2×Vdc2+m3×Vdc3+m4×Vdc4+m5×Vdc5+m6×Vdc6)/(Vdc1+Vdc2+Vdc3+Vdc4+Vdc5+Vdc6) (1)
(1)式において、Vdc1〜Vdc6は、検出回路12a〜12fからそれぞれ出力されるレベル信号であり、m1〜m6はレベル信号Vdc1〜Vdc6にそれぞれ乗算される電極の並び順に応じた重み係数である。重み係数m1〜m6は、例えば0,1,2,3,4,5とされるが、この重み係数に限るものではない。
ここで、レベル信号Vdc1〜Vdc6が符号ビットを含んで16ビットとされていると、演算回路13では16ビットの演算が行われるが、演算回路13から出力されるフェーダーセンサーFdに指がタッチされた位置PSを示すセンサー出力は0〜127(7ビット)に丸められる。これにより、電極数がP1〜P6の6電極数とされた時に、タッチした指10の位置PSの分解能は128/6倍となり、高分解能のセンサー出力を得ることができるようになる。なお、0〜127のセンサー出力において、最小値「0」は最下段の電極P1の位置に対応し、最大値「127」は最上段の電極P6の位置に対応しており、最下段の電極P1から最上段の電極P6までの位置を0〜127の値で示すことができる。また、電極P1〜P6は中心線に対して左右対称に形成されていることから、電極P1からの位置が変わらなければタッチした指が中心線から横方向へずれてもセンサー出力はほぼ同じ値を示すようになる。
【0024】
次に、図3に示すフェーダーセンサーFdとセンサー回路とを基板上に設けるようにした具体的な構成を図8(a)(b)に示す。図8(a)は基板30の表面の構成を示す図であり、図8(b)は基板30の裏面の構成を示す図である。
図8(a)に示すように基板30の表面には、その周囲の縁部を残して図3に示す電極P1〜P6の電極パターンが形成されている。電極P1〜P6の電極パターンは、上記したようにM字状に形成された中心線に対して左右対称の形状の境界線で、上下に隣接する電極パターンと区切られた電極パターンとされている。これにより、電極P1〜P6の電極パターンは、中心線に対して左右対称の形状に形成されている。電極P1の電極パターンの紙面上の右側にスルーホール15aが形成されており、同様にして電極P2〜P6の電極パターンの紙面上の右側にスルーホール15b〜15fがそれぞれ形成されている。また、基板30の裏面には集積回路とされた検出回路12a〜12fが、表面に形成された電極P1〜P6に対応して配置されており、検出回路12a〜12fのそれぞれの入力端子は裏面に形成されたパターンとスルーホール15a〜15fを介して、それぞれ対応する電極P1〜P6に接続されている。
【0025】
さらに、基板30の裏面には集積回路とされたOSC14が配置されており、OSC14の出力は裏面に形成されたパターンにより検出回路12a〜12fのパルス入力端子に接続されている。これにより、OSC14からのパルスが検出回路12a〜12fにそれぞれ供給されると共に、検出回路12a〜12fの入力端子には、それぞれ電極P1〜P6が接続されるようになる。そして、検出回路12a〜12fのそれぞれの出力端子は、基板30の裏面に配置された集積回路とされた演算回路13の入力端子と、裏面に形成されたパターンによりそれぞれ接続されている。これにより、演算回路13に検出回路12a〜12fから出力されるレベル信号Vdc1〜Vdc6がそれぞれ入力されて、上記(1)式による加重平均値算出法が実行され、フェーダーセンサーFdにタッチした指10の位置PSが高分解能で検出されるようになる。
上記したように、基板30の表面と裏面とにフェーダーセンサーFdと、検出回路、OSCおよび演算回路からなるセンサー回路とを設けることにより、コンパクトな構成とすることができ、小型の外部リモートコントローラに内蔵するに好適な構成とすることができる。
【0026】
次に、本発明のタッチセンサーの実施例であるフェーダーセンサーFdのタッチ位置を検出する他の概要を図9に示す。本発明にかかるフェーダーセンサーFdは、2本の指が同時にフェーダーセンサーFdにタッチされた際に、2本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたことを検出して、それぞれの指がタッチされた位置のセンサー出力を出力することができる。以下に、図9を参照しながら2本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたことの検出、および、それぞれの指がタッチされた位置のセンサー出力を出力することについて説明する。
図9に示すように、指10aと指10bとがフェーダーセンサーFdに同時にタッチされたとする。この場合は、3つの電極P1,P2,P3に指10aがタッチするようになり、3つの電極P1,P2,P3がそれぞれ接続されている検出回路12a〜12cから、指10aのタッチ状態に応じたレベル信号Vdc1,Vdc2,Vdc3がそれぞれ出力される。また、指10bが3つの電極P4,P5,P6にタッチするようになり、3つの電極P4,P5,P6がそれぞれ接続されている検出回路12d〜12fから、指10bのタッチ状態に応じたレベル信号Vdc4,Vdc5,Vdc6がそれぞれ出力される。
【0027】
そして、電極P2の電極パターンに指10aがタッチしている面積は大きいことから、電極P2の検出回路12bから出力されるレベル信号Vdc2の出力レベルは大きくなる。また、電極P5の電極パターンに指10bがタッチしている面積も大きいことから、電極P5の検出回路12eから出力されるレベル信号Vdc5の出力レベルも大きくなる。さらに、電極P3の電極パターンに指10aがタッチしている面積および電極P4に指10bがタッチしている面積もかなり大きいことから、電極P3の検出回路12cから出力されるレベル信号Vdc3の出力レベルがかなり大きくなると共に、電極P4の検出回路12dから出力されるレベル信号Vdc4の出力レベルもかなり大きくなる。さらにまた、電極P1の電極パターンに指10aがタッチしている面積および電極6の電極パターンに指10bがタッチしている面積が小さいことから、電極P1の検出回路12aから出力されるレベル信号Vdc1および電極P6の検出回路12fから出力されるレベル信号Vdc6の出力レベルは小さくなる。
このように、2本の指10b,12がフェーダーセンサーFdに同時にタッチされている場合は、1本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされている場合に比べてレベル信号が出力される電極の数が増加することになる。そこで、演算回路13において検出回路12a〜12fからのレベル信号Vdc1〜Vdc6の分散値を算出すると、図3に示すように1本の指10がフェーダーセンサーFdにタッチしている場合に算出される分散値に比べて、図9に示すように指10bと指10aとの2本がフェーダーセンサーFdにタッチしている場合に算出される分散値が大きい値となることがわかる。
【0028】
これを利用すると、演算回路13において分散値を算出することにより、フェーダーセンサーFdに1本の指がタッチされたのか2本の指がタッチされたのかを判定することができる。すなわち、演算回路13において検出回路12a〜12fからのレベル信号Vdc1〜Vdc6の分散値を算出して、算出した分散値が所定の値より小さい場合は1本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたと演算回路13において判定することができ、算出された分散値が所定の値より大きい場合には2本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたと演算回路13において判定することができる。なお、分散値SCは
SC={(レベル信号−レベル信号平均値)の2乗}の総和÷レベル信号の数
で算出できる。
【0029】
そして、演算回路13において1本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたと判定された場合は、上記(1)式を用いた加重平均算出法によりフェーダーセンサーFdにタッチされた1本の指の位置PSを算出する。
また、演算回路13において2本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたと判定された場合は、図9に示すようにフェーダーセンサーFdの領域を下側の領域である第1領域と上側の領域である第2領域に等分に分割して、それぞれの領域において加重平均算出法によりフェーダーセンサーFdにタッチした指の位置を演算回路13で算出する。この場合、演算回路13は次の(2)式を用いた加重平均算出法により第1領域にタッチした指10aの位置PS1を算出する。
PS1=(m1×Vdc1+m2×Vdc2+m3×Vdc3)/(Vdc1+Vdc2+Vdc3) (2)
(2)式において、Vdc1〜Vdc3は、電極P1〜P3に接続されている検出回路12a〜12cからそれぞれ出力されるレベル信号であり、m1〜m3はレベル信号Vdc1〜Vdc3にそれぞれ乗算される電極P1〜P3の並び順に応じた重み係数である。重み係数m1〜m3は、例えば0,1,2とされるが、この重み係数に限るものではない。
【0030】
また、演算回路13は次の(3)式を用いた加重平均算出法により第2領域にタッチした指10bの位置PS2を算出する。
PS2=(m4×Vdc4+m5×Vdc5+m6×Vdc6)/(Vdc4+Vdc5+Vdc6) (3)
(3)式において、Vdc4〜Vdc6は、電極P4〜P6に接続されている検出回路12d〜12fからそれぞれ出力されるレベル信号であり、m4〜m6はレベル信号Vdc4〜Vdc6にそれぞれ乗算される電極P4〜P6の並び順に応じた重み係数である。重み係数m4〜m6は、例えば0,1,2とされるが、この重み係数に限るものではない。
ここで、レベル信号Vdc1〜Vdc6が符号ビットを含んで16ビットとされていると、演算回路13では16ビットの演算が行われるが、演算回路13から出力されるフェーダーセンサーFdに指がタッチされた位置PS1,PS2を示すそれぞれのセンサー出力は0〜127(7ビット)に丸められる。これにより、電極数がP1〜P6の6つの電極数とされた時に、タッチした指10a,10bの位置PS1,PS2の分解能は128/6倍となり、高分解能のセンサー出力を得ることができるようになる。
上記したように、本発明にかかるフェーダーセンサーFdにおいては、まず、演算回路13において分散値を算出して、フェーダーセンサーFdに1本の指がタッチされているか2本の指がタッチされているかを判定し、次いで、電極の領域を等分してそれぞれの領域において加重平均算出法の演算を行って、それぞれの領域において指がタッチされた位置を算出している。
【0031】
次に、フェーダーセンサーFdが備える電極の他の構成例を図10(a)(b)に、電極のさらに他の構成例を図11(a)(b)に示す。
図10(a)に示す電極の構成例では、フェーダーセンサーFdの基板31に6つの電極P1〜P6の電極パターンが形成されており、電極P1〜P6の電極パターン同士を区切る境界線31a,31b,31c,31d,31eが正弦波状で中心線に対して左右対称の形状とされている。これにより、6つの電極P1〜P6の電極パターンも中心線に対して左右対称の正弦波状とされ、電極パターンの上部の頂部は上側に隣接する電極パターンの下部の頂部間に喰い込んでおり、電極パターンの下部の頂部は下側に隣接する電極パターンの上部の頂部間に喰い込んでいる。このように、正弦波状とされた電極パターンは横方向の領域aにおいて3つの電極の電極パターンが重なるように形成されていることを特徴としている。
また、図10(b)に示す電極の構成例では、フェーダーセンサーFdの基板32に6つの電極P1〜P6の電極パターンが形成されており、電極P1〜P6の電極パターン同士を区切る境界線32a,32b,32c,32d,32eが台形状で中心線に対して左右対称の形状とされている。これにより、6つの電極P1〜P6の電極パターンも中心線に対して左右対称の台形状とされ、電極パターンの上部の頂部は上側に隣接する電極パターンの下部の頂部間に喰い込んでおり、電極パターンの下部の頂部は下側に隣接する電極パターンの上部の頂部間に喰い込んでいる。このように、台形状とされた電極パターンは横方向の領域aにおいて3つの電極の電極パターンが重なるように形成されていることを特徴としている。
【0032】
さらに、図11(a)に示す電極の構成例では、フェーダーセンサーFdの基板33に6つの電極P1〜P6の電極パターンが形成されており、電極P1〜P6の電極パターン同士を区切る境界線33a,33b,33c,33d,33eが階段状で中心線に対して左右対称の形状とされている。これにより、6つの電極P1〜P6の電極パターンも中心線に対して左右対称の階段状とされ、電極パターンの上部は上側に隣接する電極パターンの下部の間に喰い込んでおり、電極パターンの下部は下側に隣接する電極パターンの上部の間に喰い込んでいる。このように、階段状とされた電極パターンは、横方向の領域aにおいて3つの電極の電極パターンが重なるように形成されていることを特徴としている。
さらにまた、図11(b)に示す電極の構成例では、フェーダーセンサーFdの基板34に6つの電極P1〜P6の電極パターンが形成されており、電極P1〜P6の電極パターン同士を区切る境界線34a,34b,34c,34d,34eが三角状で中心線に対して左右対称の形状とされている。この場合、電極パターンの上部は上側に隣接する電極パターンの下部の間に喰い込んでいる。これにより、6つの電極P1〜P6の電極パターンも中心線に対して左右対称の三角状とされ、三角状とされた電極パターンは、横方向の領域aにおいて3つの電極の電極パターンが重なるように形成されていることを特徴としている。
【0033】
上記した図10(a)(b)および図11(a)(b)に示す中心線に対して左右対称の電極パターンとされた電極のフェーダーセンサーFdにおいては、指がフェーダーセンサーFdにタッチした場合に、少なくとも電極P1〜P6の3つの電極パターンに指がタッチするようになる。なお、フェーダーセンサーFdにおける領域aの下側および/または上側の領域bにおいては、横方向において重なる電極のパターンは2つとされているが、指がフェーダーセンサーFdにタッチする面積は領域bの高さ方向の幅を超えている。これにより、指でフェーダーセンサーFdにタッチした場合に、少なくとも電極P1〜P6の3つの電極パターンに指がタッチするようになる。また、電極P1〜P6は中心線に対して左右対称に形成されていることから、電極P1からの位置が変わらなければタッチした指が中心線から横方向へずれてもセンサー出力はほぼ同じ値を示すようになる。
なお、両端の電極P1,P6のパターンには隣接する電極パターンが片側にしかないため、電極P1,P6のパターンでは片側にだけ隣接する電極パターンと重なるように形成されている。このため、フェーダーセンサーFdの上端側あるいは下端側に指をタッチした場合は、2つの電極パターンにしかタッチしない場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0034】
上記の説明では、演算回路13において検出回路12a〜12fからのレベル信号Vdc1〜Vdc6の分散値を算出して、算出した分散値の大きさに応じて1本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたか、2本の指がフェーダーセンサーにタッチされたかを判断していたが、分散値に代えて標準偏差値の大きさに応じて1本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたか、2本の指がフェーダーセンサーにタッチされたかを判断してもよい。この場合は、標準偏差値が所定の値より小さい場合は1本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたと判定することができ、算出された分散値が所定の値より大きい場合には2本の指がフェーダーセンサーFdにタッチされたと判定することができる。
以上説明した本発明のタッチセンサの実施例であるフェーダーセンサーFdにおいては、フェーダーセンサーFd上に指をタッチすることで、そのフェーダーセンサーFdにアサインされているチャンネルのフェーダーレベルを調整していたが、これに替えて、フェーダーセンサーFd上で指をスライドすることで、スライド量に応じてフェーダーセンサーFdにアサインされているチャンネルのフェーダーレベルを調整するようにしてもよい。この場合、フェーダーセンサーFd上のスライド操作の始点の位置と終点の位置とを検出して、始点の位置と終点の位置との差分でスライド量を算出すればよい。
また、本発明のタッチセンサーはフェーダーセンサーに適用できるだけでなく、分解能を向上したい一般的に用いられているタッチセンサーに適用することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 PC(パーソナルコンピュータ)、2,3 外部リモートコントローラー、4 GUI画面、4a ウィンドウ、4b ウィンドウ、4c カーソル、10,10a,10b 指、11 基板、11a〜11e 境界線、12 検出回路、12a〜12f 検出回路、13 演算回路、14 OSC、15a〜15f スルーホール、23 A/D変換器、30 基板、31 基板、31a〜31e 境界線、32 基板、32a〜32e 境界線、33 基板、33a〜33e 境界線、34 基板、34a〜34e 境界線、Fd フェーダーセンサー、Fd2a〜Fd2d フェーダーセンサー、Fd3a〜Fd3d フェーダーセンサー、P 電極、P1〜P6 電極、Bd2,Bu2,Cd2,Cu2 ボタン、Lv2a,Lv2b,Lv2c,Lv2d 表示部、Bd3,Bu3,Cd3,Cu3 ボタン、Lv3a,Lv3b,Lv3c,Lv3d 表示部、Sh2、Sh3 ボタン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響信号処理にかかるパラメーターを操作するコントローラーに備えられるタッチセンサーであって、
絶縁性の基板の一面に形成され、タッチされた際に3つ以上の電極パターンに同時にタッチされるように、隣接する電極パターンとの境界線が斜め方向に、かつ、中心線に対して左右対称に形成されて、隣接する電極パターンと横方向において重なるように形成されている複数の電極と、
前記電極パターンのそれぞれのタッチ状態に応じて、対応する前記電極から出力されるレベル信号に、当該電極の並び順に応じた重み係数を乗算して全ての前記電極から出力される前記レベル信号の加重平均値を算出することにより、タッチした位置に対応するセンサー出力を得る演算手段と、
を備えることを特徴とするタッチセンサー。
【請求項2】
斜め方向に、かつ、中心線に対して左右対称に形成されている前記境界線の頂部が、隣接する前記電極パターンにおける頂部間に喰い込んで形成されることにより、隣接する前記電極パターンと横方向において重なるように形成されていることを特徴とする請求項1記載のタッチセンサー。
【請求項3】
前記演算手段は、前記複数の電極から出力されるレベル信号の分散値を演算し、その分散値の大きさに応じて1本の指がタッチされたか2本の指がタッチされたかを判定し、
指が1本タッチされたと判定された場合は、前記演算手段において、前記電極パターンのそれぞれのタッチ状態に応じて、対応する前記電極から出力されるレベル信号に、当該電極の並び順に応じた重み係数を乗算して全ての前記電極から出力される前記レベル信号の加重平均値を算出することにより、タッチした位置に対応するセンサー出力を得るようにし、
指が2本タッチされたと判定された場合は、前記演算手段において、前記複数の電極を第1領域と第2領域とに分割して、前記第1領域における複数の前記電極パターンのそれぞれのタッチ状態に応じて、対応する前記電極から出力されるレベル信号に、当該電極の並び順に応じた重み係数を乗算して前記第1領域における前記電極から出力される前記レベル信号の加重平均値を算出することにより、前記第1領域においてタッチした位置に対応する第1センサー出力を得ると共に、前記第2領域における複数の前記電極パターンのそれぞれのタッチ状態に応じて、対応する前記電極から出力されるレベル信号に、当該電極の並び順に応じた重み係数を乗算して前記第2領域における前記電極から出力される前記レベル信号の加重平均値を算出することにより、前記第2領域においてタッチした位置に対応する第2センサー出力を得ることを特徴とする請求項1または2記載のタッチセンサー。
【請求項1】
音響信号処理にかかるパラメーターを操作するコントローラーに備えられるタッチセンサーであって、
絶縁性の基板の一面に形成され、タッチされた際に3つ以上の電極パターンに同時にタッチされるように、隣接する電極パターンとの境界線が斜め方向に、かつ、中心線に対して左右対称に形成されて、隣接する電極パターンと横方向において重なるように形成されている複数の電極と、
前記電極パターンのそれぞれのタッチ状態に応じて、対応する前記電極から出力されるレベル信号に、当該電極の並び順に応じた重み係数を乗算して全ての前記電極から出力される前記レベル信号の加重平均値を算出することにより、タッチした位置に対応するセンサー出力を得る演算手段と、
を備えることを特徴とするタッチセンサー。
【請求項2】
斜め方向に、かつ、中心線に対して左右対称に形成されている前記境界線の頂部が、隣接する前記電極パターンにおける頂部間に喰い込んで形成されることにより、隣接する前記電極パターンと横方向において重なるように形成されていることを特徴とする請求項1記載のタッチセンサー。
【請求項3】
前記演算手段は、前記複数の電極から出力されるレベル信号の分散値を演算し、その分散値の大きさに応じて1本の指がタッチされたか2本の指がタッチされたかを判定し、
指が1本タッチされたと判定された場合は、前記演算手段において、前記電極パターンのそれぞれのタッチ状態に応じて、対応する前記電極から出力されるレベル信号に、当該電極の並び順に応じた重み係数を乗算して全ての前記電極から出力される前記レベル信号の加重平均値を算出することにより、タッチした位置に対応するセンサー出力を得るようにし、
指が2本タッチされたと判定された場合は、前記演算手段において、前記複数の電極を第1領域と第2領域とに分割して、前記第1領域における複数の前記電極パターンのそれぞれのタッチ状態に応じて、対応する前記電極から出力されるレベル信号に、当該電極の並び順に応じた重み係数を乗算して前記第1領域における前記電極から出力される前記レベル信号の加重平均値を算出することにより、前記第1領域においてタッチした位置に対応する第1センサー出力を得ると共に、前記第2領域における複数の前記電極パターンのそれぞれのタッチ状態に応じて、対応する前記電極から出力されるレベル信号に、当該電極の並び順に応じた重み係数を乗算して前記第2領域における前記電極から出力される前記レベル信号の加重平均値を算出することにより、前記第2領域においてタッチした位置に対応する第2センサー出力を得ることを特徴とする請求項1または2記載のタッチセンサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−50866(P2013−50866A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188805(P2011−188805)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]