説明

タンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械

【課題】長尺のテーブルをもつ工作機械のテーブル駆動装置を提供する。
【解決手段】タンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械1は、ベッド10上に摺動自在に支持される長尺のテーブル20を有する。門型のコラム30には加工ヘッド70が設けれ、5面加工を行なう。テーブル20の両端部には2基の駆動装置100,200が装備される。第1の駆動装置100は、固定されたボールネジ110に対してサーボ駆動されるボールナット120を有し、第1のテーブルエンジン150を駆動する。第1のテーブルエンジン150はテーブル20をその長さ寸法の半分程度まで駆動し、第2の駆動装置200に引き渡す。第2の駆動装置200は残りのストロークを駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型のワークを加工することができるタンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1、2は、ベッド上に2台のテーブルを装備して大型のワークを加工する工作機械が開示されている。
また、特許文献3は、ボールネジに螺合するナットキャリアを交換自在にベッド上に送られてくるテーブルに系合して駆動する工作機械が開示されている。
【特許文献1】特公昭61−013936号公報
【特許文献2】実公昭62−004429号公報
【特許文献3】特公平07−110463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
大型のワークを加工するために、大型のテーブルを装備する工作機械にあってはテーブルを駆動するボールネジの長尺化が必要となる。ところが、ボールネジを長くすると、いわゆる縄跳び現象が発生してネジの中央部が偏心回転しやすくなる。このためにボールネジの回転速度を早くすることが困難となり、送り速度の高速化が達成できない。
また、長尺のボールネジは加工も困難であり、運搬上の制的もある。
そこで、本発明の目的は、2本のボールネジとボールナットを備えた2基のテーブルエンジンを用いたタンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の工作機械は、基本的手段として、ベッドと、ベッド上に摺動自在に支持される長尺のテーブルと、テーブルの両端部側に配備される第1及び第2の駆動装置を備える。
【0005】
そして、第1の駆動装置は、ベッドの前側の位置に設置されるボールネジと、ボールネジに螺合するボールナットと、ボールネジまたはボールナットを駆動するサーボモータと、ボールナットと一体に駆動される第1のテーブルエンジンと、第1のテーブルエンジンとテーブルを離接自在に連結する連結装置を備え、第2の駆動装置は、ベッドの後側の位置に設置されるボールネジと、ボールネジに螺合するボールナットと、ボールネジまたはボールナットを駆動するサーボモータと、ボールナットと一体に駆動される第2のテーブルエンジンと、第2のテーブルエンジンとテーブルを離接自在に連結する連結装置を備える。
【0006】
また、第1の駆動装置のボールネジの長さ寸法と、第2の駆動装置のボールネジの長さ寸法は、テーブルの長さ寸法の略半分の長さ寸法である。
さらに、第1のテーブルエンジンがテーブルを駆動している間は、第2のテーブルエンジンはベッドの中央部に設定される待機位置で待機し、第2のテーブルエンジンがテーブルを駆動している間は、第1のテーブルエンジンはベッドの中央部に設定される待機位置で待機する。
また、第1の駆動装置と第2の駆動装置は同期してテーブルを駆動する制御区間を有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は以上の構成を備えることによって、2本のボールネジを用いて長尺のテーブルを駆動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明が適用される工作機械の例としてタンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械の外観を示す斜視図である。
全体を符号1で示すタンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械は、長尺のベッド10上に摺動自在に搭載される長尺のテーブル20を有する。ベッド上には3本のリニアガイド11,12,13が設けられて、テーブル20を支持する。
ベッド10の中央部には門型のコラム30が設けられ、コラム30の前面に沿って上下動するクロスレール40には、水平方向に移動するサドル50が装備される。サドル50は垂直方向に昇降するラム60を有し、ラム60の先端にとりつけられた加工ヘッド70により、テーブル20上のワークに対して5面加工を施す。
【0009】
このタンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械1は、テーブル20の前後に装備される2基の駆動装置100,200を有する。
符号Fで示すベッド10の前側に装備される第1の駆動装置100は、ベッド10上に両端が固定されるボールネジ110と、サーボモータで駆動されるボールナット120を有する第1のテーブルエンジン150を備える。
符号Rで示すベッド10の後側に装備される第2の駆動装置200も同様に、ベッド10上に両端が固定されるボールネジ210と、サーボモータで駆動されるボールナット220を有する第2のテーブルエンジン250を備える。
【0010】
図2は、第1の駆動装置100と第2の駆動装置200の配置を示す平面図、図3は第1の駆動装置の正面図、図4はテーブルの端部の平面図、図5はテーブルの端部を裏側から見た斜視図、図6はテーブルとテーブルエンジンの連結装置を示す断面図である。
【0011】
図2に示すように、第1の駆動装置100はベッド10の前側Fに取付部材111を介して一端が固定されるボールネジ110を有する。
ボールネジ110の他端部は、取付部材112を介してベッド10の内側に固定される。
第1のテーブルエンジン150は、ボールネジ110に案内されて第1の軸Xに沿って移動する。
【0012】
第2の駆動装置200は、ベッド10の後側Rに取付部材211を介して一端が固定されるボールネジ210を有する。
ボールネジ210の他端部は取付部材212を介してベッド10の内側に固定される。
第2のテーブルエンジン250はボールネジ210に案内されて第2の軸Xに沿って移動する。
【0013】
図3において、第1の駆動装置100の第1のテーブルエンジン150は、3個のリニアブロック151,152,153を有し、ベッド10上のリニアガイド11,12,13上を移動する。
ベッド10上に固定されたボールネジ110に螺合するボールナット120は、サーボモータにより駆動され、第1のテーブルエンジン150を第1の軸Xに沿って移動制御する。
【0014】
図4、図5、図6に示すように、テーブル20の両端部には連結部材22が設けられる。連結部材22は溝24を有し、この溝24に対して、第1のテーブルエンジン150に設けられた連結装置160のピストン161が係合することで第1のテーブルエンジン150とテーブル20は連結される。
連結装置160はシリンダ室162を有し、ピストン161を軸方向に駆動する。
ボールネジ110の上部はテーブル20にとりつけられたカバー180で覆われる。
【0015】
図7はボールナットのサーボ装置を示す断面図である。
ボールナットのサーボ装置130は、ハウジング131の内側に固定されるステータ132とロータ133により構成されるサーボモータを有する。ロータ133は、連結部材134を介してボールナット120に連結され、ボールナット120を回転駆動する。ボールナット120やロータ133とハウジング131の間にはベアリング141,142,143が装備される。
ボールナット120はボールネジ110に螺合し、ボールナット120の回転は軸方向の推力に変換させてサーボ装置130と一体の第1のテーブルエンジンを第1の軸X方向に駆動する。
【0016】
図8は、本発明の作用を示し、テーブル20を略7mのボールネジ2本を使用して14mのストロークで移動させる工程を示す。
図8の(a)は、テーブル20が機械原点X=0にある状態を示す。
第2のテーブルエンジン250は中間位置で待機している。
【0017】
図8の(b)は、テーブル20を第1のテーブルエンジン150により第1の軸Xに沿って、X=0からX=−6500mmまで駆動する状態を示す。その間には第2のテーブルエンジン250は中間位置の待機状態を維持する。
図8の(c)はテーブル20が第2のテーブルエンジン250に当接した状態を示す。第2のテーブルエンジン250の連結装置260を作動してテーブル20に連結させる。
X座標で−6500mmから−7500mmの間は、第1の軸Xと第2の軸Xは同期して動きながら、第2のテーブルエンジン250がテーブル20に連結し、その後第1のテーブルエンジン150の連結を解除し、テーブル20の駆動を受け渡す。
X座標で−7500mmを超えると、テーブル20は第2のテーブルエンジン250によってX座標−14000mmまで駆動される。
【0018】
図9は、第1の軸Xと第2の軸Xの位置と速度の関係を示す説明図である。
テーブル20を座標0から−14000へ同一速度で送る場合、第2のテーブルエンジン250は待機位置の−6500にテーブルが接近したら、接触する直前に加速を開始し、接触したとき同期を完了させ、第2のテーブルエンジン250を連結し、第1のテーブルエンジン150の連結を解除する。第2のテーブルエンジン250は、そのまま目的位置の−14000に位置決めする。一方第1のテーブルエンジン150は、連結を解除後、減速し、待機位置の−7500で停止し、待機する。
テーブル20を−14000から0へ同一速度で送る場合、上記の手順の逆の手順で制御を行なう。
以上に説明した装置は、テーブルエンジンの駆動する手段として、ボールナット側を駆動する手段を説明したが、ボールナットを駆動することにかえてボールネジ側を駆動することも当然に可能である。
【0019】
図10〜図12はボールネジを駆動する例を示す。
長尺のテーブル10の両側に第1の駆動装置100Aと第2の駆動装置200Aを備える。
第1の駆動装置100Aは、軸受421,422で回転自在に支持されるボールネジ410を備え、ボールネジ410はサーボモータ400により駆動される。ボールネジ410は、第1のテーブルエンジン150のボールナット430に螺合される。
第2の駆動装置200Aも同様に軸受521,522で回転自在に支持されるボールネジ510を備え、ボールネジ510はサーボモータ500により駆動される。ボールネジ510は、第2のテーブルエンジン250のボールナット530に螺合される。
【0020】
図12は、第2の駆動装置200Aの詳細を示し、サーボモータ500の出力軸とりつけられたギヤ502は歯車機構を介してボールネジ510にとりつけられたギヤ504を駆動する。ボールネジ510は軸受521,522で回転自在に支持される。ボールネジ510は第2のテーブルエンジン250にとりつけられたボールナット530に螺合する。ボールネジ510の回転量はエンコーダ506で検出される。
【0021】
本発明のタンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械は以上の様に、短い長さ寸法をもつボールネジ2本を用いて長いストロークを達成することができる。そこで、長尺のテーブルを用いて大型のワークに対して5面加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用されるタンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械の斜視図。
【図2】駆動装置の配置を示す平面図。
【図3】第1の駆動装置の正面図。
【図4】テーブルの端部の平面図。
【図5】テーブル端部を裏側から見た斜視図。
【図6】連結装置の断面図。
【図7】ボールナットのサーボ装置の断面図。
【図8】本発明の作用を示す説明図。
【図9】本発明の作用を示す説明図。
【図10】本発明の駆動装置の他の例を示す平面図。
【図11】本発明の駆動装置の他の例を示す平面図。
【図12】本発明の駆動装置の他の例を示す正面図。
【符号の説明】
【0023】
1 タンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械
10 ベッド
20 テーブル
30 コラム
40 クロスレール
50 サドル
60 ラム
70 加工ヘッド
100 第1の駆動装置
110 ボールネジ
120 ボールナット
150 第1のテーブルエンジン
160 連結装置
200 第2の駆動装置
210 ボールネジ
220 ボールナット
250 第2のテーブルエンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、ベッド上に摺動自在に支持される長尺のテーブルを備えた工作機械であって、テーブルの両端部側に配備される第1及び第2の駆動装置を備え、
第1の駆動装置は、ベッドの前側の位置に設置されるボールネジと、ボールネジに螺合するボールナットと、ボールネジまたはボールナットを駆動するサーボモータと、ボールナットと一体に駆動される第1のテーブルエンジンと、第1のテーブルエンジンとテーブルを離接自在に連結する連結装置を備え、
第2の駆動装置は、ベッドの後側の位置に設置されるボールネジと、ボールネジに螺合するボールナットと、ボールネジまたはボールナットを駆動するサーボモータと、ボールナットと一体に駆動される第2のテーブルエンジンと、第2のテーブルエンジンとテーブルを離接自在に連結する連結装置を備えるタンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械。
【請求項2】
第1の駆動装置のボールネジの長さ寸法と、第2の駆動装置のボールネジの長さ寸法は、テーブルの長さ寸法の略半分の長さ寸法である請求項1記載のタンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械。
【請求項3】
第1のテーブルエンジンがテーブルを駆動している間は、第2のテーブルエンジンはベッドの中央部に設定される待機位置で待機し、第2のテーブルエンジンがテーブルを駆動している間は、第1のテーブルエンジンはベッドの中央部に設定される待機位置で待機する請求項1記載のタンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械。
【請求項4】
第1の駆動装置と第2の駆動装置は同期してテーブルを駆動する制御区間を有する請求項1記載のタンデム駆動の長尺テーブルを有する工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−110880(P2010−110880A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288057(P2008−288057)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000114787)ヤマザキマザック株式会社 (80)
【Fターム(参考)】