説明

ターミナルソケット

【課題】 簡単な構造で、且つ容易にリレーの抜脱を行うことができ、しかもターミナルソケットの小型化(低背化)が図れるターミナルソケットを提供する。
【解決手段】 リレーが装着されるソケット本体に回動可能に設けられ、リレーの抜脱時には、回動操作することによりリレーをソケット本体から抜脱するリリースレバー11を備えたターミナルソケットであって、リリースレバー11の両側部11A,11A内面には、リリースレバー11の軸部12(回動中心)から遠ざかる方向に沿って、リレーの抜脱時にリレー底面を押圧してリレーを押し上げる複数の押上げ部50,51が設けられており、押上げ部50,51は、リレーがソケット本体に装着された状態において、軸部12から遠ざかるに従って、その高さ位置が順次低くなるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソケット本体に装着されたリレーを、ソケット本体から抜脱するリリースレバーを備えたターミナルソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、制御盤内におけるリレーに対する結線作業を簡略化して誤配線を防止するために、ターミナルソケットが用いられている。このターミナルソケットは、リレー端子と配線とを接続する端子板を備えた本体と、リレーが装着されるリレー装着部を有するケースとから構成される。本体には、ケースの端子用貫通孔を貫通したリレー端子が挿入される端子用挿入孔と、ケースの配線用貫通孔を貫通した配線が挿入される配線用挿入孔とケースの工具用貫通孔を貫通した工具が挿入される工具用挿入孔とを含む配線結線部と、端子用挿入孔と配線用結線部との間を連通する端子板収納部とが、形成されている。
【0003】
このようなターミナルソケットにおいては、保守点検作業を容易に行うためには、簡単な操作で、リレー装着部からリレーを抜脱する必要がある。
【0004】
このため、従来のターミナルソケットには、リレー装着部からリレーを抜脱するためのリリースレバーが設けられている(たとえば、特許文献1参照)。図6は、従来のターミナルソケットのリリースレバーを説明するための図である。この図の例では、リリースレバー101は、正面略L字形を有する成形体であり、その角部両側面に回動軸102を同一軸心上に突設してある。さらに、前記リリースレバー101は、その水平部101aに後述するリレーを円滑に押し上げる円弧面103を形成してある。さらに、垂直部101bの上端部には係止爪104を延在している。
【0005】
そして、前記リリースレバー101の回動軸102を、ケース200のスリットを介し、ベースの挿入溝の両側に形成した軸孔に嵌合することにより、リリースレバー101がベースに回動可能に支持される。特に、図6に示すように、リリースレバー101は後方のみならず、前方にも回動する。
【0006】
前記ターミナルソケットからリレーを取り外す場合には、リリースレバー101を回動させることにより(図6)、その水平部101aの円弧面103でリレーの底面を押し上げて浮き上がらせ、リレーを取り外せばよい。
【0007】
しかし、この文献の例では、リレー装着部からリレーを完全に抜脱できない。すなわち、回動するリリースレバー101においてリレーの背面の上端部に当接する当接部の上端、及び、リレーの前面に当接する操作部の前端部が円弧状の軌跡を描くと、リレー装着部からリレーを抜脱する際にリレーに回転力が作用してリレー端子に変形を生じ易いとともに、リレー装着部に装着されたリレーの前面と操作部の前端部との間に間隙が形成されてリレーを完全に抜脱できないという問題がある。
【0008】
この問題を解決するために、図7に示すターミナルソケットが提案されている。図7は、ケースのリレー装着部においてリリースレバーの支持側と反対に位置する壁部150の高さを高くしたものである。このような壁部150を設けることで、抜脱されるリレーの移動方向を規制することができる。この結果、リレーの抜脱が円滑に行われる。
【0009】
【特許文献1】特開2002−298715号公報(段落0022、0024、図15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、図7の例では、ケースの高さが高くなるため、ソケットが大型化するという問題がある。
【0011】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡単な構造で、リレーの抜脱を円滑に行うことができ、しかもターミナルソケットの小型化(低背化)が図れるターミナルソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、リレーが装着されるソケット本体に回動可能に設けられ、リレーの抜脱時には、回動操作することによりリレーをソケット本体から抜脱するリリースレバーを備えたターミナルソケットであって、前記リリースレバーの両側部のうちの少なくとも一方の側部内面には、リリースレバーの回動中心から遠ざかる方向に沿って、リレーの抜脱時にリレー底面を押圧してリレーを押し上げる複数の押上げ部が設けられており、これら複数の押上げ部は、リレーがソケット本体に装着された状態において、リリースレバーの回動中心から遠ざかるに従って、その高さ位置が順次低くなるように配置されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、リリースレバーが回動するに従って、複数の押上げ部が、順番にリレー底面に接し、リレーを押し上げていく。この結果、ソケット本体の壁部によってリレーの移動方向を規制することなく、リレーがソケット本体から容易に抜脱される。また、多段階でリレーを押し上げるので、1段階で押し上げる場合に比べて、リースレバーの操作力を軽減することができる。また、リリースレバー側部内面に押上げ部を設ければよいので、リリースレバーの構造は複雑にならない。さらに、ソケット本体に高い壁部を設けなくてもよいので、ターミナルソケットの小型化(低背化)を図ることができる。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のターミナルソケットであって、前記複数の押上げ部は、一体的に形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載のターミナルソケットであって、前記複数の押上げ部は、別個に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リリースレバーが回動するに従って、リリースレバー側部内面に設けられた複数の押上げ部が、順番にリレー底面に接し、リレーを押し上げていく。この結果、ソケット本体の壁部によってリレーの移動方向を規制することなく、リレーがソケット本体から容易に抜脱される。また、このように多段階で押し上げる場合は、1段階で押し上げる場合に比べて、リリースレバーの操作力を軽減することが可能となる。また、リリースレバー側部内面に押上げ部を設ければよいので、リリースレバーの構造は複雑にならない。さらに、ソケット本体に高い壁部を設けなくてもよいので、ターミナルソケットの小型化(低背化)を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を、図1〜図5の図面を用いて説明する。図1は、本発明にかかるターミナルソケットの要部の外観図である。本発明に係るターミナルソケットは、上面にリレー載置部14が形成されたケース10と、このケース10の内部に下面側から収納される図示しない本体と、ケース10の側面に回動可能に設けられたリリースレバー11と、によって構成される。
【0018】
ケース10は背面において開放した中空の筐体である。図2は、本発明のターミナルソケットを複数連結して使用する例を示す図である。図2に示すように、複数個の本発明のターミナルソケットは、支持レール(DINレール)18に着脱可能に装着して使用することができる。この図に示す例におけるターミナルソケットでは、ケースの10前面の上側には出力端子用の結線用貫通部15が形成されている。各結線用貫通部15は同一の形状を呈している。また、この図に示すように、結線用貫通部15は配線用貫通孔15aと工具用貫通孔15bとによって構成されていてもよい。配線用貫通孔15aには、ケース1の上面に装着されたリレー30(図5参照)の各出力端子31(図5参照)に接続されるべき配線が貫通する。また、工具用貫通孔15bには、配線を挟持する端子板のクランプバネを操作する工具が貫通する。
【0019】
上記結線用貫通部15はリレー30における各極の出力端子31に対応している。即ち、リレーには、1極ごとにノーマルクローズ(NC)、ノーマルオープン(NO)及びコモンの合計3本の出力端子31が設けられている。したがって、4極型のリレーでは上下3本を1組として左右方向に4列の出力端子31が設けられており、2極型のリレーでは上下3本を1組として左右方向に2列の出力端子31が設けられている。この実施形態に係るリレーソケットは2極型のリレー30を用いるものが示されている。
【0020】
ケース10の前面において結線用貫通部15の下方には、リレー載置部14が形成されている。このリレー載置部14にリリースレバー11を介してリレーが装着される。リレー載置部14においてリレーの底面に対向する部分には、端子用貫通孔16が形成されている。この端子用貫通孔16には、リレー30の底面30A(図5参照)から突出した出力端子31及びコイル端子32(図5参照)が貫通する。
【0021】
リリースレバー11は、通常、図2に示すように、リレー載置部14の下方に設ける。これは、操作者がリレー30を抜脱するさいに操作を容易に行うためである。
【0022】
ケース10の前面においてリレー載置部14のさらに下方には、コイル端子32用の結線用貫通部17が左右2箇所に形成されている。結線用貫通部17は、結線用貫通部15とは逆に、下側の配線用貫通孔17aと上側の工具用貫通孔17bとからなり、配線用貫通孔17aにはリレー30のコイル端子32に接続されるべき配線が貫通し、工具用貫通孔17bにはクランプバネを操作する工具が貫通する。
【0023】
図3は、本発明のターミナルソケットにかかるリリースレバーの一例を示す図である。リリースレバー11は、図1に示すように、正面略L字形を有する成形体である。その角部近傍にはボス部11aが形成されており、このボス部11aがリレー載置部14において側面側に突出した軸部12に外嵌することにより、リリースレバー11はリレー載置部14において矢印M及びN(図1参照)方向に可動自在に支持されている。
【0024】
リリースレバー11において、左右の側部11A,11Aの内面には、内面下部の左右方向における中間部に突起部11bが形成されている。突起部11bは、リレー載置部14に装着されたリレー30を脱離する際に、リレー30の底面30Aに接触するように構成されている。
【0025】
リリースレバー11において、左右の側部11A,11Aの間には、側部11A,11Aの上下方向中間位置に、当接部材11cが形成されている。当接部材11cは、リレー載置部14に載置されたリレー30の背面に当接している。また、側部11A,11Aの上部には、リリースレバー11を回動操作するための操作部11B(図3参照)が形成されている。
【0026】
図4は、本発明のターミナルソケットにおけるリリースレバーの側部内面を示す図である。図4を参照して、突起部11bの構造をさらに詳述する。突起部11bには、リレー30の抜脱時にリレー底面30Aに接してリレー30を押し上げる第1押上げ部50及び第2押上げ部51が設けられている。第1押上げ部50は、リレー底面30Aに線で接することが可能な半円弧状に形成されており、第2押上げ部51は、リレー底面30Aに面で接することが可能なように、軸部12から遠ざかる方向に下り勾配となる傾斜面とされている。そして、第2押上げ部51の高さ位置は、第1押上げ部50の高さ位置よりも低く配置されている。これにより、リレー30の抜脱時に第1押上げ部50によってリレー30を押し上げ、次いで第2押上げ部51によってリレー30を押し上げる、2段階の押し上げが可能となり、リレー30を容易に抜脱することが可能となる。また、1段階で押し上げる場合に比べて、わずかな力でリレー30を抜脱することができる。
【0027】
以下に、図5を用いて、リレーの抜脱の機構を説明する。図5は、リレーの抜脱の機構を説明する概念図である。図5において、(a)ないし(d)は、上図がリレー30とリレー載置部14との関係を示す図であり、下図はリレー底面30Aと突起部11bとの関係を示す拡大図である。
【0028】
図1に示す状態では、リリースレバー11は、閉じた状態にある。この状態においてはリレー載置部14に載置されたリレー30は、突起部11bの第1押上げ部50に接した状態にある(図5(a))。
【0029】
リレー30が突起部11bの第1押上げ部50に接した状態で、リリースレバー11が軸部12を中心にM方向に回動すると、突起部11bの第1押上げ部50がリレー底面30Aを押圧する。これによって、図5(b)に示すように、リレー30は回転しコイル端子32がリレー載置部14から引き出される。
【0030】
さらに、リリースレバー11が軸部12を中心にM方向に回動すると、リレー30は、さらに回転して、リレー載置部14から引き出され、突起部11bの第2押上げ部51に接する(図5(c))。
【0031】
リレー30が突起部11bの第2押上げ部51に接した状態で、リリースレバー11が軸部12を中心にM方向に回動すると、第2押上げ部51がリレーの底面を押圧する。これによって、図5(d)に示すように、出力端子31がリレー載置部14から引き出され、リレー30はリレー載置部14から完全に引き出される。このように2段階でリレー30を押し上げることにより、抜脱されるリレー30の移動方向を規制することなく、リレー30をリレー載置部14から完全に引き出すことができる。
【0032】
(その他の事項)
図5に示す例では、コイル端子32が設けられている側から出力端子31が設けられている側に向かってリレー30を抜脱するようにしたけれども、出力端子31が設けられている側からコイル端子32が設けられている側に向かって抜脱するようにしてもよい。ただし、通常コイル端子32より出力端子31のほうが、端子数が多いので、出力端子31側のリレー底面30Aが、コイル端子32側のリレー底面30Aより、より強固にソケット本体に載置されている。したがって、図5に示すようにリレー30を抜脱すると、リレー30の抜脱が円滑に行われるので、好ましい。
【0033】
図4の例では、第1押上げ部50及び第2押上げ部51は単一の突起部11bに形成されていたが、別個の突起部に第1押上げ部50及び第2押上げ部51を分離して形成してもよい。即ち、第1押上げ部50と第2押上げ部51とは別個に形成した構成であってもよい。
【0034】
また、この図の例では、2つの押上げ部50,51で、2段階でリレー30の抜脱を行ったけれども、3以上の押上げ部により多段階でリレー30の抜脱を行うようにしてもよい。なお、この場合には、複数の押上げ部は、リレー30がソケット本体に装着された状態において、軸部12(リリースレバーの回動中心)から遠ざかるに従って、その高さ位置が順次低くなるように配置することが必要である。仮に、高さ位置が同じであれば、多段階で押し上げることができないからである。
【0035】
さらに、この図の例では、第1押上げ部50は線で、第2押上げ部51は面で、それぞれリレー底面30Aに接するものが示されているが、リレー底面30Aに接することができるものであれば、この構成に限定されない。すなわち、第1押上げ部50と第2押上げ部51とが、ともに線または面でリレー底面30Aに接するものであっても、第1押上げ部50は面で、第2押上げ部51は線で、それぞれリレー底面30Aに接するものであってもよい。また、線や面でなく点で構成してもかまわない。なお、第2押上げ部51の傾斜面の傾斜角度は、適宜調整すれば、リレー30を斜め姿勢からまっすぐな姿勢により近づけて抜脱することが可能となる。
【0036】
なお、図3の例では、リリースレバー11において側部の間には、リレー載置部14の前面に平行に、側部11A,11Aに設けた突起部11bと一体的に形成された補強部材11dが設けられている。これは、リリースレバー11に強度を持たせるために設けたものである。したがって、補強部材11dは、突起部11bと一体的に形成される必要はなく、別個に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ソケット本体に装着されたリレーを、ソケット本体から抜脱するリリースレバーを備えたターミナルソケットに好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかるターミナルソケットの要部の外観図である。
【図2】本発明のターミナルソケットを複数連結して使用する例を示す図である。
【図3】本発明のターミナルソケットにかかるリリースレバーの一例を示す図である。
【図4】本発明のターミナルソケットにおけるリリースレバーの側面の内壁を示す図である。
【図5】本発明のターミナルソケットにおけるリリースレバーがリレーを載置部から抜脱する機構を説明する図である。
【図6】従来のターミナルソケットのリリースレバーを説明するための図である。
【図7】他の従来のターミナルソケットのリリースレバーを説明するための図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ケース
11 リリースレバー
12 軸部
14 リレー載置部
15 結線用貫通孔
15a 配線用貫通孔
15b 工具用貫通孔
16 端子用貫通孔
17 コイル端子用の結線用貫通部
18 支持レール
30 リレー
30A リレー底面
31 出力端子
32 コイル端子
50 第1押上げ部
51 第2押上げ部
101 リリースレバー
102 回動軸
103 円弧面
104 係止爪
150 壁部
200 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リレーが装着されるソケット本体に回動可能に設けられ、リレーの抜脱時には、回動操作することによりリレーをソケット本体から抜脱するリリースレバーを備えたターミナルソケットであって、
前記リリースレバーの両側部のうちの少なくとも一方の側部内面には、リリースレバーの回動中心から遠ざかる方向に沿って、リレーの抜脱時にリレー底面を押圧してリレーを押し上げる複数の押上げ部が設けられており、
これら複数の押上げ部は、リレーがソケット本体に装着された状態において、リリースレバーの回動中心から遠ざかるに従って、その高さ位置が順次低くなるように配置されていることを特徴とするターミナルソケット。
【請求項2】
前記複数の押上げ部は、一体的に形成されている、請求項1記載のターミナルソケット。
【請求項3】
前記複数の押上げ部は、別個に形成されている、請求項1記載のターミナルソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−156177(P2006−156177A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346155(P2004−346155)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】