説明

ダイアフラムポンプおよび電子部品の製造装置

【課題】 脈動をきわめて少なくでき、チェック弁を用いる必要が無くて逆流が可能なダイアフラムポンプを提供すること。
【解決手段】 ダイアフラムポンプ1は、ベースブロック2と、ダイアフラム8と、ダイアフラムを往復駆動する駆動手段とを備える。ベースブロック2は、3本以上の液体流路を有し、各液体流路は凹部23〜25を3個以上有する。ダイアフラム8は各凹部23〜25とで複数のバルブ室や計量室を区画形成する。駆動手段は、各凹部に対しダイアフラムを挟んで配置された押圧ロッド73〜75と、各押圧ロッド73〜75を凹部に近づく方向に移動してバルブ室や計量室内の容積を徐々に小さくし、最終的に計量室をダイアフラムで密閉する吐出動作および押圧ロッドを凹部から離れる方向に移動してバルブ室や計量室の容積を徐々に大きくする吸入動作を、各押圧ロッド毎に設定された所定のタイミングで実行可能な押圧部材駆動制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定された所定量の液体を移送するダイアフラムポンプおよび電子部品の製造装置に係り、酸性・アルカリ性等の薬液や、はんだ用ペースト、アルコール等の溶剤や接着剤等の種々の液体を、脈動が少なくかつ連続して移送(吐出)することができるダイアフラムポンプに利用できる。また、ダイアフラムポンプから接着剤を吐出して半導体チップを基板に固定するダイボンダや、ダイアフラムポンプから樹脂を吐出してLEDチップを封止して発光ダイオード(LED)を製造する製造装置等の各種電子部品の製造装置に利用できる。
【背景技術】
【0002】
ダイアフラム(ダイヤフラム)を用いたダイアフラムポンプは、ダイアフラムを合成樹脂製の薄膜にすることなどで、送る液にダメージを与えない、液漏れ防止用のシール材を用いる必要がない、液が金属に触れない構造も可能などの利点があり、化学・薬品、半導体、印刷などの広い分野で使用されている。
【0003】
このようなダイアフラムポンプとしては、ダイアフラムを往復駆動することで液の吸入、吐出を行うため、通常は、脈動が発生してしまう。
そこで、ダイアフラムポンプにおいて脈動を抑えるため、2個のダイアフラムポンプを設け、吐出側に脈動がでないように各ダイアフラムポンプを互いに補完的に組み合わせたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、3つのチャンバーを順次ダイアフラムで塞ぐことで、逆止弁を設けずにポンプとして機能させたものも知られている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−042069号公報
【特許文献2】米国特許第5593290号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1のダイアフラムポンプでは、逆流防止用の逆止弁(チェック弁)を設けており、液を逆流させることができないという問題があった。
また、特許文献2のポンプでは、流体によってダイアフラムを変形させており、駆動動作の高速化が困難であるとともに、複数の系統のチャンバーを平行に配置しているため、小型・軽量化が難しいという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、脈動をきわめて少なくでき、チェック弁を用いる必要が無くて逆流が可能であり、かつ、小型・軽量化が容易なダイアフラムポンプおよびこのダイアフラムポンプを用いた電子部品の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダイアフラムポンプは、流路ブロックと、この流路ブロックに密着して設けられたダイアフラムと、このダイアフラムを往復駆動する駆動手段とを備えるダイアフラムポンプであって、前記流路ブロックおよびダイアフラムで区画形成され、かつ、液体の吸入流路および吐出流路を連通する少なくとも3本以上の液体流路が設けられ、前記流路ブロックは、前記ダイアフラムが密着されるダイアフラム密着面の中心軸部分に吸入流路または吐出流路の一方が形成され、前記ダイアフラム密着面の外周側に吸入流路または吐出流路の他方が形成され、各液体流路の途中には、前記吸入流路に連通された吸入側バルブ室と、前記吐出流路に連通された吐出側バルブ室と、吸入側バルブ室および吐出側バルブ室の間に形成されて各バルブ室に連通された計量室とがそれぞれ設けられ、前記駆動手段は、前記吸入側バルブ室に対しダイアフラムを挟んで配置されて前記吸入側バルブ室に対応して設けられた吸入側押圧部材と、前記吐出側バルブ室に対しダイアフラムを挟んで配置されて前記吐出側バルブ室に対応して設けられた吐出側押圧部材と、前記計量室に対しダイアフラムを挟んで配置されて前記計量室に対応して設けられた計量室用押圧部材と、前記各押圧部材の駆動を制御する押圧部材駆動制御部と、を備えて構成され、前記押圧部材駆動制御部は、回転駆動源と、この回転駆動源で回転されるカムと、前記各押圧部材をカムのカム面に当接させる付勢手段とを有するとともに、前記吸入側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックに密着するまで動かして前記吸入側バルブ室を密閉する吸入側バルブ密閉動作、前記吐出側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの吐出側バルブ室に対応する部分を流路ブロックに密着するまで動かして前記吐出側バルブ室を密閉する吐出側バルブ密閉動作、前記吸入側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動して流路ブロックに密着しているダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックから離して前記吸入側バルブ室を開放する吸入側バルブ開放動作、前記吐出側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動して流路ブロックに密着しているダイアフラムの吐出側バルブ室に対応する部分を流路ブロックから離して前記吐出側バルブ室を開放する吐出側バルブ開放動作、計量室用押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの計量室に対応する部分を流路ブロックに近づけて前記計量室内の容積を徐々に小さくする容積減少動作、および、計量室用押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動してダイアフラムの計量室に対応する部分を流路ブロックから遠ざけて計量室の容積を徐々に大きくする容積増大動作を、前記カムを回転駆動源で回転させて各押圧部材をカム面に追従して往復駆動させることで、各押圧部材毎に設定された所定のタイミングで実行させることを特徴とする。
【0009】
このような本発明においては、各液体流路に設けられた各バルブ室や計量室に対応する押圧部材を所定のタイミングで往復駆動することで、各バルブ室を開閉したり、計量室の容積を増大させたり、減少させることができる。このため、各押圧部材を所定のタイミングで動かすことで、チェック弁を用いなくても逆流を防止でき、液体を移送できる。従って、チェック弁を備えていないので、各押圧部材の駆動を逆転させて液体を逆流させることができる。
また、3本以上の液体流路を形成し、各液体流路にそれぞれ前記各バルブ室や計量室を設け、かつ各バルブ室や計量室に対応する押圧部材を設けて各液体流路毎に液体の移送タイミングを設定できるので、各液体流路毎の液体移送タイミングを所定位相だけずらすことで、一定量の液体を連続して移送することができ、脈動の少ないポンプにすることができる。
さらに、本発明は、従来のダイアフラムポンプのように、ダイアフラム全体を進退駆動するのではなく、1枚のダイアフラムにおいて、各バルブ室や計量室に対応する部分を個別に駆動しているので、ダイアフラム全体に比べて非常に狭い領域のみを駆動すればよく、ダイアフラム自体の変形等による液移送量の誤差を小さくできる。このため、液移送量が微量であっても、精度よく移送することができる。
その上、ダイアフラムを設けることで、押圧部材等の駆動手段側を、液体流路やバルブ室、計量室等の液体が流れる側と区画できる。従って、シール材を設ける必要が無く、その分、部品点数も少なくできる。
さらに、ダイアフラムは弾性変形可能なゴム等で構成されるため、銀ペーストやはんだペースト、シリカ粉が混入された樹脂などの粒子を含む液体であっても、粒子を潰すことなく吐出でき、液体にダメージを与えることなく移送できる。
また、本発明では、ダイアフラム密着面の中心軸部分に吸入流路または吐出流路の一方を形成し、ダイアフラム密着面の外周側に吸入流路または吐出流路の他方を形成しているので、吸入流路および吐出流路間を連通する3本以上の流体流路を中心軸部分から外周に向かって放射状や螺旋状に形成できる。さらに、各流体流路に対応して設けられた各押圧部材は、回転駆動源によってカムを回転させるだけで、カム面に追従して往復駆動される。このため、押圧部材駆動制御部は、端面にカム面を有するカムと、このカムを回転させるモータ等の回転駆動源と、各押圧部材をカム面に当接させるバネ等の付勢手段で構成でき、ダイアフラムポンプを小型・軽量化できる。従って、各種製品の生産ラインにおいて、接着剤や各種ペースト等の吐出に本発明のダイアフラムポンプを利用する際にも、ロボットのアームに取り付けて、高速、高加速度で移動させることができ、生産ラインのタクトタイムの短縮を実現でき、生産性向上に寄与することができる。
さらに、本発明では、モータ等からなる回転駆動源でカムを回転させるだけで、各押圧部材を所定のタイミングで繰り返し動作させることができる。この際、各押圧部材の1サイクル動作毎の液体移送量は一定に設定できるため、カムの回転速度を調整するだけで、単位時間当たりの液体移送量を調整できる。従って、ダイアフラムポンプにおける液移送量の制御を非常に簡単に行うことができ、使い勝手の良いダイアフラムポンプ(ディスペンサ)を実現できる。
【0010】
本発明において、前記バルブ室用押圧部材および計量室用押圧部材は、前記カム面側の端面に形成された略半球状の凹部と、前記凹部に配置されて前記カム面に当接可能なボールとを有し、前記カム面とボールとの摩擦係数に比べて、ボールと前記凹部との摩擦係数が小さく設定されていることを特徴とする。
【0011】
このような本発明においては、各押圧部材に形成した凹部と、この凹部に配置されるボールとで、カム面に当接するカムフォロワを構成できる。このため、従来のローラを用いた場合に比べ、カム面やカムフォロワ部分を小型化でき、その分、ダイアフラムポンプ自体も小型化することができる。すなわち、ローラを用いた場合には、押圧部材から外周に向かってローラ軸を突設し、このローラ軸にローラを回転自在に配置しなければならないため、カム面に沿って公転するローラの移動軌跡の直径も大きくなり、カムの直径もローラの移動軌跡に対応して大きくしなければならない。
これに対し、本発明では、押圧部材の凹部にボールを配置すればよく、押圧部材から外周側に突出する部分もないため、ボールの移動軌跡の直径を小さくでき、ダイアフラムポンプの構造を簡易にできて容易に小型化することができる。
さらに、本発明では、カム面とボール間の摩擦係数に比べて、ボールとこのボールを保持する凹部間の摩擦係数を低く設定しているので、公転に伴いボールに対して回転軸直交方向等の力が加わっても、その力は押圧部材の凹部とボールとが滑ることで吸収される。このため、カム面とボールとの間では横滑り等が発生せず、カム面に対して滑ることなくボールを転動させることができる。従って、カム面を従来のように摩擦を考慮して含油樹脂などで形成する必要が無く、金属等の硬い部材で形成でき、かつボールも硬い部材で構成できるので、押圧部材のストローク量の誤差を減少でき、液体の吐出精度を向上させることができる。
【0012】
本発明のダイアフラムポンプにおいては、前記押圧部材駆動制御部は、前記計量室に対応して設けられた計量室用押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの計量室に対応する部分を流路ブロックに密着させて計量室を密閉し、かつ、吸入側バルブ室に対応して設けられた吸入側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動してダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックから離して吸入流路から吸入側バルブ室に液体を吸入する吸入工程と、吐出側バルブ室に対応して設けられた吐出側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの吐出側バルブ室に対応する部分を流路ブロックに密着させて吐出側バルブ室を密閉し、かつ、前記計量室用押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動してダイアフラムの計量室に対応する部分を流路ブロックから離して計量室の容積を増大させるとともに、吸入側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロック側に移動させて吸入側バルブ室の容積を減少させて吸入側バルブ室から計量室に液体を移送する第1移送工程と、前記吐出側バルブ室を密閉した状態のまま、前記吸入側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックに密着させて吸入側バルブ室を密閉し、液体を吸入側バルブ室および吐出側バルブ室間つまり計量室部分に区画して計量する計量工程と、前記吸入側バルブ室を密閉した状態のまま、前記計量室用押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動して計量室の容積を減少させるとともに、吐出側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動して吐出側バルブ室の容積を増大させて計量室から吐出側バルブ室に液体を移送する第2移送工程と、前記計量室を密閉し、吐出側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動して吐出側バルブ室の容積を減少させて吐出側バルブ室から吐出流路に液体を移送する吐出工程とを実行させることが好ましい。
【0013】
このような本発明においては、吸入工程および吐出工程では、計量室を密閉しているので、吸入工程において計量室側から吸入側バルブ室に液体が逆流したり、吐出工程において吐出側バルブ室から計量室側に液体が逆流することがない。従って、各押圧部材の動作のみで確実に液体の逆流を防止でき、チェック弁を設ける必要がない。
また、吸入側バルブ室および吐出側バルブ室を密閉し、液体を各バルブ室間すなわち計量室部分に区画して計量する計量工程を設けたので、各液体流路における液移送量を精度よく設定できる。
【0014】
本発明のダイアフラムポンプにおいては、前記押圧部材駆動制御部は、計量室を密閉した状態で、吸入側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動して吸入流路から吸入側バルブ室に液体を吸入するとともに、吐出側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動して吐出側バルブ室から吐出流路に液体を移送することで吸入工程および吐出工程を同時に実行させることが好ましい。
このような本発明においては、吸入工程および吐出工程を同時に行うことで、液体の移送工程の1サイクルを短くでき、効率的に液を移送できる。
【0015】
本発明のダイアフラムポンプにおいて、前記押圧部材駆動制御部は、前記吐出側バルブ室を密閉した状態のまま、吸入側バルブ室に対応して設けられた吸入側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動してダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックから離して吸入流路と計量室とを連通させ、前記計量室に対応して設けられた計量室用押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動してダイアフラムの計量室に対応する部分を流路ブロックから離して計量室の容積を増大させて吸入流路から吸入側バルブ室を介して計量室に液体を吸入する吸入工程と、前記吐出側バルブ室を密閉した状態のまま、前記吸入側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックに密着させて吸入側バルブ室を密閉し、液体を吸入側バルブ室および吐出側バルブ室間に区画して計量する計量工程と、前記吸入側バルブ室を密閉した状態のまま、吐出側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動して計量室と吐出流路とを連通させ、前記計量室に対応して設けられた計量室用押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動して計量室の容積を減少させて計量室から吐出側バルブ室を介して吐出流路に液体を移送する吐出工程と、を実行させることが好ましい。
【0016】
このような本発明においては、吸入工程では吐出側バルブ室を密閉し、吐出工程では吸入側バルブ室を密閉し、計量工程では各バルブ室を密閉しているので、各工程において吐出流路から吸入流路に液体が逆流することがない。従って、各押圧部材の動作のみで確実に液体の逆流を防止でき、チェック弁を設ける必要がない。
また、吸入側バルブ室および吐出側バルブ室を密閉し、液体を各バルブ室間すなわち計量室部分に区画して計量する計量工程を設けたので、各液体流路における液移送量を精度よく設定できる。
【0017】
本発明のダイアフラムポンプにおいては、前記押圧部材駆動制御部は、前記吐出工程を、吐出量を徐々に増大する吐出量増大工程と、吐出量を徐々に減少する吐出量減少工程とを備えて構成し、前記複数の吐出側バルブ室からの吐出工程において、いずれか1つの吐出側バルブ室における吐出工程が吐出量増大工程である場合に、他の1つの吐出側バルブ室における吐出工程を吐出量減少工程とすることで、吐出量を一定量に維持することが好ましい。
【0018】
このような本発明においては、1つの液体流路から吐出流路への液体移送が終了する際に、他の液体流路から吐出流路への液体移送の開始を一部重なって行えるので、各液体流路からの液体移送の切換をスムーズに行え、一定量の液体移送を継続することができ、脈動が少ない液体移送を容易に実現できる。
【0019】
本発明のダイアフラムポンプにおいては、前記各流体流路に形成された吸入側バルブ室、計量室、吐出側バルブ室は、互いにダイアフラム密着面の中心軸を中心とする円周方向に第1設定角度毎ずれて形成され、かつ前記中心軸からの寸法が異なるように形成され、前記各流体流路に形成された吸入側バルブ室同士、計量室同士、吐出側バルブ室同士は、互いにダイアフラム密着面の中心軸を中心とする円周方向に第2設定角度毎ずれて形成され、前記各バルブ室および計量室はダイアフラム密着面の中心軸から螺旋状に配置されていることが好ましい。
【0020】
ここで、前記第1設定角度は30°であり、前記第2設定角度は72°であり、前記流体流路、吸入側バルブ室、計量室、吐出側バルブ室は5セット設けられていることが好ましい。
【0021】
このような本発明においては、各バルブ室および計量室を中心軸から螺旋状に配置しているので、各バルブ室および計量室の配置スペースをコンパクトにでき、ダイアフラムポンプを小型化できる。
また、各バルブ室および計量室の配置位置を第1設定角度毎ずらしているので、各バルブ室および計量室に対応して配置される各押圧部材をカムで駆動する場合、カムのカム面の位相をずらす必要が無く、カム面の各領域を中心軸から放射状に配置できるので、カムを容易に製造できる。
また、90°回転することで1サイクル作動できるようにカム面を90°毎に形成すれば、カムを1回転させた際に、各液体流路は4サイクルの液体移送動作を行うことができる。従って、例えば液体流路を5つ設ければ、ポンプ全体では、カムの1回転により5×4=20サイクルの液体移送動作を実現でき、その分、カム1回転あたりの液体移送量も増加でき、脈動も少なくできる。
【0022】
本発明のダイアフラムポンプにおいては、前記各流体流路に形成された吸入側バルブ室、計量室、吐出側バルブ室は、互いにダイアフラム密着面の中心軸を中心とする円周方向に直線状に形成され、かつ前記中心軸からの寸法が異なるように形成され、前記各流体流路に形成された吸入側バルブ室同士、計量室同士、吐出側バルブ室同士は、互いにダイアフラム密着面の中心軸を中心とする円周方向に第2設定角度毎ずれて形成され、前記各バルブ室および計量室はダイアフラム密着面の中心軸から放射線状に配置されていることが好ましい。
【0023】
このような本発明においては、各バルブ室および計量室を中心軸から放射線状に配置しているので、各バルブ室および計量室を容易に製造できる。
また、90°回転することで1サイクル作動できるようにカム面を90°毎に形成すれば、カムを1回転させた際に、各液体流路は4サイクルの液体移送動作を行うことができる。従って、例えば液体流路を5つ設ければ、ポンプ全体では、カムの1回転により5×4=20サイクルの液体移送動作を実現でき、その分、カム1回転あたりの液体移送量も増加でき、脈動も少なくできる。
【0024】
本発明のダイアフラムポンプにおいては、前記流路ブロックのダイアフラムが密着されるダイアフラム密着面には凹溝が形成され、前記ダイアフラムの流路ブロックに密着される流路ブロック密着面は平面状に形成され、前記液体流路は、流路ブロックの凹溝およびダイアフラムの流路ブロック密着面で区画形成されていることが好ましい。
流路ブロック側に流体流路となる凹溝を形成すれば、ダイアフラムは平面状のシンプルな形状にできる。このため、摩耗などした際に交換する必要がある消耗品であるダイアフラムを安価に提供できる。また、流路ブロック側に液体流路を形成すれば、液体流路の寸法精度を高くできるので、液体移送量の精度も安定させることができ、移送量のバラツキを低減できる。
【0025】
また、本発明のダイアフラムポンプにおいては、前記流路ブロックのダイアフラムが密着されるダイアフラム密着面は平面状に形成され、前記ダイアフラムの流路ブロックに密着される流路ブロック密着面には凹溝が形成され、前記液体流路は、流路ブロックのダイアフラム密着面およびダイアフラムの凹溝で区画形成されているものでもよい。
ダイアフラム側に流体流路となる凹溝を形成すれば、流路ブロックのダイアフラム密着面は平面状に構成できる。金属製の流路ブロックに凹溝を形成する場合、金型を作って流路ブロックを製造するか、凹溝を切削加工などで形成する必要がある。金属成型加工用の金型を利用する場合、初期費用が高くなる。一方、切削加工の場合、加工コストが嵩み、かつ、バルブ室、計量室、連通溝をあまり小さく加工できないため、極微量の液体の移送が困難になる。
これに対し、ダイアフラム側に凹溝を形成する場合、ゴム製のダイアフラムを成型するゴム型は比較的安価であるため、初期費用を抑えることができ、かつ、ゴム型を利用することで、バルブ室や計量室、連通溝などを有する液体流路も小さくでき、極微量の液体の移送も容易に行うことができる。
【0026】
なお、本発明においては、流路ブロックのダイアフラム密着面およびダイアフラムの流路ブロック密着面の両方に凹溝を形成してもよい。また、本発明においては、前記凹溝は、吸入側バルブ室、計量室、吐出側バルブ室をそれぞれ区画形成する吸入側バルブ室用凹部、計量室用凹部、吐出側バルブ室用凹部と、前記吸入側バルブ室用凹部および前記吸入流路を連通する連通溝と、前記吐出側バルブ室用凹部および吐出流路を連通する連通溝と、各バルブ室用凹部および計量室用凹部間を連通する連通溝とを備えて構成すればよい。この際、前記凹部の幅寸法は、前記各連通溝の溝幅寸法と同一でもよいし、溝幅寸法よりも大きく形成してもよい。これらの各寸法は、移送する液量等に応じて設定すればよい。
【0027】
本発明のダイアフラムポンプにおいては、前記カムのカム面は、カムの回転軸に対して直交する平面を備え、この平面には、カムの回転中心軸を中心とする同心円状に配置された3本のカム溝が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、カム溝の深さを適宜変更することで各押圧部材の移動を制御できる。
なお、カムフォロワとしてボールを用いた場合、カム溝は、丸溝つまり断面形状が略円弧状の溝を形成すればよく、ボールエンドミル加工などで形成でき、加工コストを低減できる。
【0028】
本発明の電子部品の製造装置は、前述のダイアフラムポンプと、このダイアフラムポンプの前記吸入流路に液体を供給する液体供給手段と、前記吐出流路に設けられた吐出ノズルと、前記ダイアフラムポンプの駆動手段を制御するコントローラとを備えて構成され、前記液体供給手段から供給される液体を前記ダイアフラムポンプを介して吐出ノズルから吐出して電子部品を製造することを特徴とする。
このような電子部品の製造装置では、極微量の液体を精度良く移送できる前述のダイアフラムポンプを用いているので、前記吐出ノズルから極微量の液体を高精度に吐出できる。また、銀粉やシリカ粉等の粒子を含む液体であっても、その粒子を潰すことなく吐出できる。このため、半導体チップの接着やLEDチップの封入等の製造において不良品の発生を低減でき、製造効率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1には、本発明の第1実施形態のダイアフラムポンプ1が示されている。
ダイアフラムポンプ1は、ベースブロック2と、保持リングブロック3と、ガイドブロック4と、取付ブロック5と、駆動ユニット6とを備えている。
各ブロック2〜5の四隅には図示しない貫通孔が形成されている。そして、各ブロック2〜5は、ベースブロック2および保持リングブロック3を貫通してガイドブロック4にねじ込まれる連結ボルトや、取付ブロック5を介してガイドブロック4にねじ込まれる連結ボルト、取付ブロック5を介して駆動ユニット6にねじ込まれる連結ボルト等で組み立てられている。この際、位置決めピンも用いられており、各ブロック同士の位置合わせが行われている。
【0030】
ベースブロック2は、図2,3に示すように、ガイドブロック4に対向するダイアフラム密着面である凹部形成面21を有する。凹部形成面21は、略円形に区画形成された平面部分で構成されている。この凹部形成面21には、その中心軸部分に液の吐出流路または吸入流路となるポート22が形成され、その周囲に複数の凹部23〜25が形成されている。
【0031】
ポート22は、凹部形成面21の中心からベースブロック2の他方の面26まで貫通して形成されている。
本実施形態においては、ポート22の面26側の開口部分にノズル部材27が取り付けられており、ポート22は吐出ポート(吐出流路)として利用されている。
【0032】
凹部形成面21には、凹部形成面21の外周に沿って形成された第1凹部23と、その内周側に形成された第2凹部24と、その内周側つまりポート22の周囲に配置された第3凹部25とが設けられている。各凹部23〜25は球面状の凹部とされている。そして、第1凹部23は連通溝281を介して凹部形成面21の外周側に連通されている。第2凹部24は、連通溝282を介して第1凹部23に連通され、連通溝283を介して第3凹部25に連通されている。第3凹部25は、連通溝284を介してポート22に連通されている。
【0033】
従って、ベースブロック2のダイアフラム密着面である凹部形成面21に形成された第1凹部23、第2凹部24、第3凹部25、連通溝281〜284により、ダイアフラム密着面に形成される凹溝が構成され、この凹溝およびダイアフラム8で区画される空間により流体流路280が形成されている。この流体流路280は、本実施形態では5個(5セット)設けられている。
すなわち、第1凹部23として、5個の第1凹部23A〜23Eが形成され、第2凹部24として5個の第2凹部24A〜24Eが形成され、第3凹部25として5個の第3凹部25A〜25Eが形成されている。
【0034】
本実施形態においては、図4に示すように、第1凹部23(23A〜23E)と、第2凹部24(24A〜24E)とは、各凹部23,24の中心とポート22の中心とを結ぶ線の交差角度が第1設定角度である30度となるように配置されている。同様に、第2凹部24(24A〜24E)と、第3凹部25(25A〜25E)とも、各凹部24,25の中心とポート22の中心とを結ぶ線の交差角度が30度(第1設定角度)となるように配置されている。
また、各凹部23,24,25は、ポート22の中心から各凹部23,24,25の中心までの長さが、徐々に小さくなるように設定されている。
従って、各凹部23A〜23E,24A〜24E,25A〜25Eは、ポート22を中心として螺旋状(スパイラル状)に配置されている。
【0035】
また、本実施形態においては、凹部23〜25は5セット配置され、各第1凹部23A〜23E同士はポート22の周囲に360/5=72度(第2設定角度)ピッチで配置されている。他の第2凹部24A〜24E同士、第3凹部25A〜25Eも72度(第2設定角度)ピッチで配置されている。
【0036】
保持リングブロック3は、略円筒状に形成されてベースブロック2の外周に取り付けられている。具体的には、ベースブロック2のフランジ28と、ガイドブロック4との間に挟持されている。保持リングブロック3には液供給孔あるいは吐出孔となるポート31が形成されている。本実施形態では、ポート31にはネジが形成され、液移送用チューブ30が取り付けられている。
【0037】
保持リングブロック3のポート31は、貫通孔32を介して保持リングブロック3の内周側つまり保持リングブロック3とベースブロック2との間に形成された空間33に連通されている。
空間33において、貫通孔32よりもフランジ28側にはOリング等からなるシール材34が配置され、空間33内の液体がフランジ28および保持リングブロック3の当接面部分から外部に漏洩しないようにされている。
【0038】
また、保持リングブロック3のガイドブロック4側の端面には、ダイアフラム8が取り付けられている。すなわち、保持リングブロック3の端面には、リング状の凹溝35が形成され、この凹溝35にダイアフラム8の端縁が配置されている。このダイアフラム8の端縁は、保持リングブロック3およびガイドブロック4で挟持されている。
従って、前記空間33は、シール材34およびダイアフラム8で区画され、この空間内の液体が外部に漏れないように構成されている。本実施形態では、空間33によって、液体の吸入流路が構成され、ベースブロック2および保持リングブロック3により流路ブロックが構成されている。
このため、本実施形態では、第1凹部23により吸入側バルブ室用凹部が構成され、第2凹部24により計量室用凹部が構成され、第3凹部25により吐出側バルブ室用凹部が構成されている。
【0039】
ダイアフラム8は、弾性変形可能なゴム(合成ゴム、天然ゴム)等で構成され、略円盤状に形成されている。ダイアフラム8のベースブロック2に密着する流路ブロック密着面は平面(フラット)状に形成されている。また、ダイアフラム8の押圧ロッド73〜75が当接する押圧ロッド当接面も平面状に形成されている。また、本実施形態では、ダイアフラム8の厚さは約1mm程度とされている。
【0040】
また、凹部形成面21と、この凹部形成面21に対向するガイドブロック4の端面41との間は、例えば0.9mmなどと前記ダイアフラム8の厚さ寸法よりも僅かに小さくされている。このため、各ブロック2〜5を組み付けた際には、ダイアフラム8は、凹部23〜25以外の平面部分と、ガイドブロック4とで挟持され、ダイアフラム8は所定の圧力で凹部形成面21に押し付けられる。従って、各凹部23〜25は、凹部形成面21に密着されたダイアフラム8で区画され、連通溝281〜284のみで他の凹部23〜25と連通可能に構成されている。このため、第1凹部23およびダイアフラム8で区画された空間により吸入側バルブ室が構成され、第2凹部24およびダイアフラム8で区画された空間により計量室が構成され、第3凹部25およびダイアフラム8で区画された空間により吐出側バルブ室が構成されている。また、各連通溝281〜284およびダイアフラム8で区画された空間により、各連通路が構成されている。そして、流体流路280は、これらの各バルブ室、計量室および連通路を備えて構成されている。
【0041】
ガイドブロック4には、図5にも示すように、ベースブロック2の各凹部23〜25の形成位置に対応するガイド孔43〜45が軸方向に貫通して形成されている。すなわち、第1凹部23A〜23Eと同軸となる位置に、それぞれ第1ガイド孔43A〜43Eが形成されている。また、第2凹部24A〜24Eと同軸となる位置に、第2ガイド孔44A〜44Eが形成されている。さらに、第3凹部25A〜25Eと同軸となる位置に第3ガイド孔45A〜45Eが形成されている。
各ガイド孔43〜45は、軸方向の中間部に段差が形成されて直径が異なっており、端面41側が小径孔部46、取付ブロック5側が小径孔部46よりも径の大きな大径孔部47とされている。
【0042】
各ガイド孔43〜45には、押圧部材である押圧ロッド73〜75が挿入されている。すなわち、第1ガイド孔43A〜43Eには、第1押圧ロッド73がそれぞれ挿入され、第2ガイド孔44A〜44Eには、第2押圧ロッド74がそれぞれ挿入され、第3ガイド孔45A〜45Eには、第3押圧ロッド75がそれぞれ挿入されている。そして、吸入側バルブ室に対応して設けられた第1押圧ロッド73により吸入側押圧部材が構成され、計量室に対応して設けられた第2押圧ロッド74により計量室用押圧部材が構成され、吐出側バルブ室に対応して設けられた第3押圧ロッド75により吐出側押圧部材が構成されている。
【0043】
各押圧ロッド73〜75は、各ガイド孔43〜45の小径孔部46部分に挿入される小径部76と、大径孔部47部分に挿入される大径部77とを備えている。小径部76の軸方向寸法は、小径孔部46よりも長く形成され、このため、図3に示すように、小径孔部46および大径孔部47間の段差と、小径部76および大径部77間の段差との間には空間が形成されている。この空間には、コイルバネ78が配置され、各押圧ロッド73〜75をダイアフラム8から離れる方向に付勢している。
【0044】
各押圧ロッド73〜75のダイアフラム8側の端面は球面状に形成されている。このため、各押圧ロッド73〜75をダイアフラム8側に移動すると、ダイアフラム8は各凹部23〜25の球面に密着するように構成されている。但し、連通溝281〜284は幅寸法が小さいため、連通溝281〜284内にダイアフラム8が入り込むことはなく、連通溝281〜284は常時連通状態に維持される。
一方、押圧ロッド73〜75の他方の端面には、略半球状の凹部が形成され、この凹部にはボール79が収納されている。
【0045】
取付ブロック5は、内部に断面略円形の貫通孔が形成された筒状に形成され、その内部貫通孔には駆動ユニット6で回転駆動されるカム51が配置されている。このカム51は、駆動ユニット6の出力軸61に直接取り付けてもよいが、本実施形態では、スプラインボス52、スプライン軸53を介して出力軸61に取り付けられている。すなわち、出力軸61にはスプライン軸53がピン54により一体的に回転可能に取り付けられている。また、カム51にはスプラインボス52が圧入されている。スプラインボス52およびカム51は、スプライン軸53に対して出力軸61の軸方向にスライド移動可能に、かつスプライン軸53および出力軸61と一体に回転可能に構成されている。
【0046】
カム51およびスプラインボス52は、ボールベアリング55によって取付ブロック5に対して回動自在に支持されている。ボールベアリング55およびカム51は、スペーサリング56を介して皿バネ57によってガイドブロック4側に付勢され、押圧ロッド73〜75はコイルバネ78でカム51側に付勢されているので、カム51のカム面511は常にボール79に当接されている。従って、皿バネ57およびコイルバネ78により、押圧ロッド73〜75のボール79をカム51のカム面511に当接させる付勢手段が構成されている。
【0047】
カム51は、図6に示すように、端面にカム面511が形成された端面カム(立体カム)で構成され、カム面511は、図7に示すカム線図に応じたカム形状を有している。すなわち、カム51は、中心軸部分に貫通孔が形成され、その周囲にリング状にカム面511が形成されている。
カム面511の形状を、図7のカム線図で示す。このカム線図のy軸は、カム面511が最もダイアフラム8側に近い部分をカム最低位置(y=0)、最も遠い部分をカム最高位置(本実施形態の一例では、例えばy=0.5mm)に設定されている。一方、x軸は、カム最低位置(y=0)に第1押圧ロッド73のボール79が当接されている状態を0°とし、その位置からのカム51の回転角度つまりボール79に対するカム面511の相対回転角度が表されている。なお、カム線図には、ボール79の中心位置の移動軌跡も記載されている。
なお、本実施形態では、カム面511は90°で1サイクルとされ、90°から180°、180°から270°、270°から360°はその繰り返しであるため、0°から90°の部分で説明する。
【0048】
カム51の回転角度が0°から15°までのカム面511Aは最低位置(y=0)の状態のままである。つまり、カム面511Aは、カム51の回転軸に直交する平面で構成されている。
15°から27°までのカム面511Bは、円周方向の形状が、例えば、
y=(x−15)2/864で表される二次曲線とされている。
27°から33°までのカム面511Cは、円周方向の形状が、例えば、
y=x/36-7/12で表される直線である。
【0049】
33°から57°までのカム面511Dは、円周方向の形状が、例えば、
y=0.5-(x−45)2/864で表される二次曲線である。
57°から63°までのカム面511Eは、円周方向の形状が、例えば、
y=-x/36+23/12で表される直線である。
【0050】
63°から75°までのカム面511Fは、円周方向の形状が、例えば、
y=(x−75)2/864で表される二次曲線である。
75°から90°まではカム面511Gは、カム面511Aと同じ平面である。
【0051】
これらの各カム面511A〜511Gは、カム面511の中心軸から放射状に形成されている。すなわち、各カム面511A〜511Gの境界線は、カム面511の中心軸から放射状に配置される直線である。
【0052】
従って、駆動ユニット6によってスプライン軸53、スプラインボス52、カム51が回転すると、前記カム面511の形状に沿って、前記ボール79および押圧ロッド73〜75は軸方向に進退する。押圧ロッド73〜75が凹部23〜25側に移動すると、ダイアフラム8の凹部23〜25に対応する部分(ダイアフラム8において押圧ロッド73〜75が当接する凹部対応部)および凹部23〜25で区画形成される各バルブ室や計量室の容積が減少し、最終的には凹部対応部が凹部23〜25の内面に密着する。すなわち、押圧ロッド73〜75は、容積減少動作を行う。
また、この状態から押圧ロッド73〜75が凹部23〜25から離れる方向に移動すると、ダイアフラム8の凹部対応部は密着していた凹部23〜25の内面から離れ、凹部23〜25およびダイアフラム8間に区画形成される各バルブ室や計量室の容積が増大する。すなわち、押圧ロッド73〜75は、容積増大動作を行う。
【0053】
ここで、押圧ロッド73〜75とボール79との摩擦係数は、ボール79とカム面511の摩擦係数よりも低くなるように、各押圧ロッド73〜75、ボール79、カム51の材質、コーティング処理の有無、コーティング方法等が設定されている。
具体的には、ボール79はタングステンカーバイト等の超硬質合金等で構成された硬質ボールとされている。また、カム51も焼き入れ研磨された炭素工具鋼等の金属等で構成され、カム面511は硬質なものとされている。
一方、各押圧ロッド73〜75およびスプラインボス52は、プラスチック(合成樹脂)などで構成されたものが利用できる。ここで、押圧ロッド73は、通常、ボール79に比べて軟質な樹脂材で構成されるが、その表面をDLCコーティング等でボール79と同程度の硬度としたものを利用しても良い。要するに、ボール79との摩擦係数が、カム面511に比べて各押圧ロッド73〜75側が低くなるように、各材質等が選定されていればよい。なお、各押圧ロッド73〜75は、軟質といってもボール79に比較してのことであり、カム面511の変位をボール79および各押圧ロッド73〜75を介してダイアフラム8に伝達しなければならないため、そのような当接によって変形しないような強度は確保されている。
【0054】
駆動ユニット6は、出力軸61を回転可能な回転駆動源であればよく、各種モータが利用できる。本実施形態では、減速機付のサーボモータで構成されている。
取付ブロック5には、取付プレート9がビス止めされている。この取付プレート9を利用して、ダイアフラムポンプ1を各種製造装置やロボットアーム等に取り付けて使用できるように構成している。
【0055】
なお、本実施形態では、各流体流路280毎に液体の移送が実行されるため、各流体流路280毎にポンプが構成されているといえる。つまり本実施形態では、流体流路280に設けられた各バルブ室、計量室(凹部23〜25)、押圧ロッド73〜75、連通路(連通溝281〜284)、ダイアフラム8によって液体移送用の各ポンプが構成され、これら複数のポンプによって一定量の液体を脈動少なく連続的に移送できるダイアフラムポンプ1が構成されている。
また、本実施形態では、カム51、スプラインボス52、スプライン軸53、皿バネ57、駆動ユニット6、コイルバネ78によって押圧ロッド73〜75の駆動を制御する押圧部材駆動制御部が構成され、この押圧部材駆動制御部と押圧ロッド73〜75とでダイアフラム8を往復駆動する駆動手段が構成されている。
【0056】
次に、本実施形態の作用について図8〜12を参照して説明する。
[押圧ロッドの動作説明]
まず、各押圧ロッド73〜75自体の動作に関し、説明する。各押圧ロッド73〜75は、カム51のカム面511の形状に応じた動作を行う。
【0057】
前述したように、カム51の回転角度が0°から15°まではカム面511は最低位置(y=0)の状態のままであり、ボール79および押圧ロッド73〜75は、ダイアフラム8を凹部23〜25の内周面に密着させた状態のまま、その軸方向には移動しない。
15°から27°までのカム面511により、ボール79および押圧ロッド73〜75は、等加速度運動でダイアフラム8から離れる方向に移動する。
27°から33°までのカム面511により、ボール79および押圧ロッド73〜75は、等速度運動でダイアフラム8から離れる方向に移動する。
【0058】
33°から45°までのカム面511により、ボール79および押圧ロッド73〜75は、等加速度運動でダイアフラム8から離れる方向に移動する。
45°から57°までのカム面511により、ボール79および押圧ロッド73〜75は、等加速度運動でダイアフラム8に近づく方向に移動する。
57°から63°までのカム面511により、ボール79および押圧ロッド73〜75は、等速度運動でダイアフラム8に近づく方向に移動する。
【0059】
63°から75°までのカム面511により、ボール79および押圧ロッド73〜75は、等加速度運動でダイアフラム8から離れる方向に移動する。
75°から90°まではカム面511により、最低位置(y=0)の状態のままであり、ボール79および押圧ロッド73〜75は、ダイアフラム8を凹部23〜25の内周面に密着させた状態のまま、その軸方向には移動しない。
【0060】
90°から180°、180°から270°、270°から360°までは、0°から90°と同じカム面511であるため、上記動作が繰り返し実行される。
従って、各押圧ロッド73〜75は、前記カム面511に各ボール79が当接し、自転しながら、カム面511に沿って移動(公転)することで、軸方向に進退移動し、カム51が1回転すると、各押圧ロッド73〜75は4往復進退移動することになる。この際のストローク量は、本実施形態では0.5mmに設定されている。
そして、各押圧ロッド73〜75の進退に応じて前記ダイアフラム8が凹部23〜25に密着する方向に移動して各バルブ室や計量室の容積を小さくしたり、凹部23〜25から離れる方向に移動して各バルブ室や計量室の容積を大きく広げることで、各バルブ室や計量室内への液体の吸入や各バルブ室や計量室からの液体の吐出が行われる。
【0061】
[各ポンプ(3本の押圧ロッド)の動作説明]
次に、ダイアフラムポンプ1を構成する各ポンプの動作に関し、第1ガイド孔43A、第2ガイド孔44A、第3ガイド孔45Aに挿入される第1押圧ロッド73、第2押圧ロッド74、第3押圧ロッド75の動作を例に説明する。
なお、以下の説明において、カム51は、図2に示す凹部形成面21に対して反時計方向に回転し(カム51をカム面511側から見た場合には時計方向の回転である)、凹部形成面21の外周側の空間33から液を吸入し、中心のポート22から吐出するように動作する。
【0062】
図8(A)は、第1押圧ロッド73のボール79がカム面511の0°位置にある場合である。この際、第2押圧ロッド74は、第1押圧ロッド73に対して30°遅れの位置に配置されているので、そのボール79はカム面511の330°位置にある。同様に、第3押圧ロッド75は、第2押圧ロッド74に対して30°遅れの位置に配置されているので、そのボール79はカム面511の300°位置にある。
従って、第1押圧ロッド73は、変位0つまりダイアフラム8を第1凹部23Aに押し付けて密着しており、第1凹部23Aおよびダイアフラム8の凹部対応部で区画される吸入側バルブ室は密閉状態とされる。第2押圧ロッド74は、変位0.25つまり移動ストロークの半分の位置に移動している。第3押圧ロッド75も、変位0.25つまり移動ストロークの半分の位置に移動している。各押圧ロッド74,75がこれらの位置にあるため、第2凹部24A、第3凹部25Aおよびダイアフラム8の各凹部対応部で区画される計量室および吐出側バルブ室の容積は、各押圧ロッド74,75の位置に応じた容積となっている。
【0063】
図8(A)の状態からカム51が15°回転すると、図8(B)の状態となる。すなわち、第1押圧ロッド73のボール79はカム面511の15°位置に達するが、その間のカム面511Aは平面であるため、第1押圧ロッド73は変位せず、吸入側バルブ室を密閉した状態のままである。
この際、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面511の330°から345°まで移動し、第2押圧ロッド74は、変位0.25mmから0mmの位置までダイアフラム8側に移動する。この移動に伴い、計量室の容積は徐々に小さくなるため、計量室内の液体は連通溝283を介して吐出側バルブ室側に移送される。
また、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面511の300°から315°まで移動し、第3押圧ロッド75は、変位0.25mmから0.5mmの位置までダイアフラム8から離れる方向に移動する。この移動に伴い、吐出側バルブ室の容積は徐々に大きくなるため、計量室から移送された液体が吐出側バルブ室に吸入される。従って、図8(A)〜図8(B)の間は第2移送工程が実施される。
【0064】
図8(B)の状態からカム51が12°回転すると、図9(C)の状態となる。すなわち、第1押圧ロッド73のボール79はカム面511の15°から27°位置に達し、第1押圧ロッド73は、変位0mmから1/6mmの位置までダイアフラム8から離れる方向に移動する。この移動に伴い、吸入側バルブ室の容積は徐々に大きくなるため、凹部形成面21の外周側の空間33から連通溝281を介して吸入側バルブ室に液体が吸入される。
この際、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面511の345°から357°まで移動し、第2押圧ロッド74は、軸方向には変位0mmの位置のまま移動しない。このため、ダイアフラム8は第2凹部24Aに密着し続けるため、計量室は密閉された状態に維持され、この計量室を介した液体の移動は行われない。
また、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面511の315°から327°まで移動し、第3押圧ロッド75は、変位0.5mmから1/3mmの位置までダイアフラム8に近づく方向に移動する。この移動に伴い、吐出側バルブ室の容積は徐々に小さくなるため、吐出側バルブ室内の液体は連通溝284を介してポート22に移送される。このため、ポート22の端部のノズル部材27から吐出側バルブ室の容積減少に応じた液体が吐出される。
従って、図8(B)〜図9(C)の間は、液体の吸入工程および吐出工程が同時に実施される。
【0065】
図示を略すが、第1押圧ロッド73のボール79がカム面511の27°から33°位置に達するまでカム51が回転すると、第1押圧ロッド73は、変位1/6mmから1/3mmの位置までダイアフラム8から離れる方向にさらに移動する。この移動に伴い、吸入側バルブ室の容積は徐々に大きくなるため、凹部形成面21の外周側から連通溝281を介して吸入側バルブ室に液体が吸入され、吸入工程が継続する。
この際、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面511の357°から3°まで移動し、第2押圧ロッド74は、軸方向には変位0mmの位置のまま移動しない。このため、ダイアフラム8は第2凹部24Aに密着し続けるため、計量室は密閉された状態に維持され、この計量室を介した液体の移動は行われない。
また、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面511の327°から333°まで移動し、第3押圧ロッド75は、変位1/3mmから1/6mmの位置までダイアフラム8に近づく方向にさらに移動する。この移動に伴い、吐出側バルブ室の容積はさらに小さくなるため、吐出側バルブ室内の液体のポート22への移送やノズル部材27からの液体吐出は継続し、吐出工程が継続する。
【0066】
さらにカム51が回転し、第1押圧ロッド73のボール79がカム面511の33°から45°位置に達すると、図9(D)に示す状態となる。
すなわち、第1押圧ロッド73は、変位1/3mmから0.5mmの位置までダイアフラム8から離れる方向に移動する。第1押圧ロッド73が0.5mmの位置に達すると、カム51側への移動ストロークエンドとなり、吸入側バルブ量室の容積は最大となるため、空間33から吸入側バルブ室への液体吸入工程が完了する。
この際、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面511の3°から15°の位置まで移動し、第2押圧ロッド74は、軸方向には変位0mmの位置のまま移動しない。このため、計量室は密閉状態に維持される。
また、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面511の333°から345°まで移動し、第3押圧ロッド75は、変位1/6mmから0mmの位置までダイアフラム8に近づく方向に移動する。この移動に伴い、吐出側バルブ室の容積はさらに小さくなるため、吐出側バルブ室内の液体のポート22への移送やノズル部材27からの液体吐出が、第3押圧ロッド75のボール79がカム面511の345°の位置に移動するまで継続する。そして、第3押圧ロッド75のボール79が、カム面511の345°の位置に移動すると、ダイアフラム8が第3凹部25Aに密着し、吐出側バルブ室は密閉状態とされるため、吐出側バルブ室つまり流体流路280からポート22への液体吐出は停止し、液体吐出工程が完了する。
従って、液体吸入工程および液体吐出工程は、図8(B)から図9(D)まで実施される。
【0067】
さらにカム51が回転し、第1押圧ロッド73のボール79がカム面511の45°から57°位置に達すると、図10(E)に示す状態となる。
すなわち、第1押圧ロッド73は、変位0.5mmから1/3mmの位置までダイアフラム8に近づく方向に移動する。この移動に伴い、吸入側バルブ室の容積は徐々に小さくなるため、吸入側バルブ室から連通溝282を介して計量室に液体が移送される。
この際、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面511の15°から27°の位置まで移動し、第2押圧ロッド74は、変位0mmから1/6mmの位置までダイアフラム8から離れる方向に移動する。この移動に伴い、計量室の容積は徐々に大きくなるため、吸入側バルブ室から連通溝282を介して計量室に液体が吸入される。従って、第1移送工程が実施される。
また、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面511の345°から357°まで移動し、第3押圧ロッド75は、軸方向には変位0mmの位置のまま移動しない。このため、吐出側バルブ室は密閉状態に維持され、吐出側バルブ室からポート22への液体吐出は停止状態に維持される。
【0068】
図示を略すが、第1押圧ロッド73のボール79がカム面511の57°から63°位置に達するまでカム51が回転すると、第1押圧ロッド73は、変位1/3mmから1/6mmの位置までダイアフラム8に近づく方向にさらに移動する。この移動に伴い、吸入側バルブ室の容積はさらに小さくなるため、吸入側バルブ室から計量室への液体移送(第1移送工程)も継続する。
この際、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面511の27°から33°の位置まで移動し、第2押圧ロッド74は、変位1/6mmから1/3mmの位置までダイアフラム8から離れる方向に移動する。この移動に伴い、計量室の容積は徐々に大きくなるため、吸入側バルブ室から計量室への液体吸入(第1移送工程)も継続する。
また、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面511の357°から3°まで移動し、第3押圧ロッド75は、軸方向には変位0mmの位置のまま移動しない。このため、吐出側バルブ室は密閉状態に維持され、吐出側バルブ室からポート22への液体吐出は停止状態に維持される。
【0069】
さらにカム51が回転し、第1押圧ロッド73のボール79がカム面511の63°から75°位置に達すると、図10(F)に示す状態となる。
すなわち、第1押圧ロッド73は、変位1/6mmから0mmの位置までダイアフラム8に近づく方向にさらに移動する。この移動に伴い、吸入側バルブ室の容積はさらに小さくなって、吸入側バルブ室から計量室への液体移送が継続し、第1押圧ロッド73が変位0mmの位置に移動した時点で、ダイアフラム8が第1凹部23Aに密着して吸入側バルブ室は密閉され、液体移送も停止し、第1移送工程が完了する。
この際、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面511の33°から45°の位置まで移動し、第2押圧ロッド74は、変位1/3mmから0.5mmの位置までダイアフラム8から離れる方向に移動する。このため、第2押圧ロッド74が0.5mmの位置に移動するまで吸入側バルブ室から計量室への液体吸入が継続し、0.5mmの位置に達した時点で第1移送工程が完了する。
また、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面511の3°から15°まで移動し、第3押圧ロッド75は、軸方向には変位0mmの位置のまま移動しない。このため、吐出側バルブ室は密閉状態に維持され、吐出側バルブ室からポート22への液体吐出は停止状態に維持される。
従って、図9(D)から図10(F)まで第1移送工程が実施され、図10(F)になった時点で吸入側バルブ室および吐出側バルブ室が密閉され、液体は計量室に区画されるため、液体は計量室の容積で計量され、計量工程が実施されることになる。
【0070】
さらに、第1押圧ロッド73のボール79がカム面511の75°から90°位置に達するまでカム51が回転すると、図8(A)に示す状態に戻る。すなわち、第1押圧ロッド73は、変位0mmの位置のまま移動しない。このため、吸入側バルブ室は密閉状態に維持され、計量室への液体移送も停止状態に維持される。
この際、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面511の45°から60°の位置まで移動し、第2押圧ロッド74は、変位0.5mmから0.25mmの位置までダイアフラム8に近づく方向に移動する。この移動に伴い、計量室の容積は徐々に小さくなるため、計量室から吐出側バルブ室に液体が移送される。
また、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面511の15°から30°まで移動し、第3押圧ロッド75は、変位0mmから0.25mmの位置までダイアフラム8から離れる方向に移動する。この移動に伴い、吐出側バルブ室の容積は徐々に大きくなる、計量室から移送された液体が吐出側バルブ室に吸入される。従って、第2移送工程は、図10(F)から図8(B)まで実施される。
【0071】
カム面511の90°〜180°、180°〜270°、270°〜360°は、0°〜90°と同一形状である。つまり、第1押圧ロッド73のボール79がカム面511の90°位置にある状態は、図8(A)と同一であるから、以降は前記動作が繰り返される。このため、説明を省略する。
【0072】
以上に説明した各押圧ロッド73〜75の回転角度に対する変位量の変化を図11のグラフに示す。
なお、図11においては、説明の都合上、前述の15°から105°までの90°の範囲を0°から90°として説明している。また、図11では、凹部形成面21において外周側に配置される第1押圧ロッド73を「外」、内周側に配置される第3押圧ロッド75を「内」、各押圧ロッド73,75間に配置される第2押圧ロッド74を「中」と表示している。
図11に示すように、第1押圧ロッド73は、0°から12°(前記説明では15°から27°)までは等加速度運動でダイアフラム8から離れる方向に移動する。この際、単位角度(例えば1°)当たりの変化量は徐々に大きくなるように設定されている。
続いて、第1押圧ロッド73は、12°から18°(前記説明では27°から33°)までは等速度運動でダイアフラム8から離れる方向に移動する。この場合、単位角度当たりの変化量は一定である。
さらに、第1押圧ロッド73は、18°から30°(前記説明では33°から45°)までは等加速度運動でダイアフラム8から離れる方向に移動する。この場合、単位角度当たりの変化量は徐々に小さくなるように設定されている。
【0073】
また、第1押圧ロッド73は、30°から42°(前記説明では45°から57°)までは等加速度運動でダイアフラム8に近づく方向に移動する。この場合、単位角度当たりの変化量は徐々に大きくなるように設定されている。
続いて、第1押圧ロッド73は、42°から48°(前記説明では57°から63°)までは等速度運動でダイアフラム8に近づく方向に移動する。この場合、単位角度当たりの変化量は一定である。
さらに、第1押圧ロッド73は、48°から60°(前記説明では63°から75°)までは等加速度運動でダイアフラム8に近づく方向に移動する。この場合、単位角度当たりの変化量は徐々に小さくなるように設定されている。
また、第1押圧ロッド73は、60°から90°(前記説明では75°から105°)までは変位量0の位置で停止している。
【0074】
一方、第2押圧ロッド74は、第1押圧ロッド73に対し30°遅れで同一の動きを行う。つまり、第2押圧ロッド74は、0°から30°までは停止しているが、30°から90°の範囲では前記第1押圧ロッド73の0°から60°の範囲と同じ動作を行う。
また、第3押圧ロッド75も、第2押圧ロッド74に対して30°遅れ(第1押圧ロッド73に対して60°遅れ)で同一の動きを行う。つまり、第3押圧ロッド75は、30°から60°までは停止しているが、60°から30°の範囲では前記第1押圧ロッド73の0°から60°の範囲と同じ動作を行う。
【0075】
このような動作を行う際に、ポート22への液体吐出は、前述の通り、第3押圧ロッド75が変位0.5mmから0mmとなる間(前記図11における0°から30°の間)に行われる。
そこで、カム51が90°回転する間の各吐出側バルブ室(第3凹部25A〜25E)からの液体吐出量の変化を図12のグラフに示す。なお、図12において、吐出側バルブ室(第3凹部25A〜25E)からの液体吐出量をそれぞれ1〜5の番号で示している。
【0076】
第3凹部25Aに対応する第3押圧ロッド75は、0°から12°の間は、単位角度当たりの変位量が徐々に大きくなる等加速度運動で移動するため、図12に示すように、液体の吐出量も徐々に増加する。従って、吐出量増大工程が実施される。
また、12°から18°の間は、第3押圧ロッド75は、単位角度当たりの変位量が一定の等速度運動で移動するため、液体の吐出量も一定となる。従って、吐出量一定工程が実施される。
さらに、18°から30°の間は、第3押圧ロッド75は、単位角度当たりの変位量が徐々に小さくなる等加速度運動で移動するため、液体の吐出量も徐々に減少する。従って、吐出量減少工程が実施される。
【0077】
一方、吐出側バルブ室(第3凹部25B)からの液体吐出は、各第3押圧ロッド75が72°の角度のずれがあり、かつカム51のカム面511は90°毎に同じカム面とされているため、図12に示すように、18°から48°の範囲で第3凹部25Aと同じような吐出動作が行われる。そして、第3凹部25Aからの液体吐出量が徐々に減少(吐出量減少工程中)している際に、第3凹部25Bからの液体吐出量は徐々に増大(吐出量増大工程)しており、これらの合計吐出量が一定となるように各カム面511が設定されている。同時に、この合計吐出量は、各第3押圧ロッド75が等速度運動で移動して一定の吐出量を吐出している場合(例えば、第3凹部25Aの12°〜18°の吐出量)と同一となるようにも設定されている。
【0078】
他の吐出側バルブ室(第3凹部25C〜25E)からの液体吐出も、同様に各18°毎位相が異なる状態で動作しているため、図12に示すように、ダイアフラムポンプ1からは一定量の液体が吐出されることになる。
そして、ダイアフラムポンプ1は、ポンプとして機能する5個の流体流路280を有し、カム面511は90°回転する毎に1往復するように構成されているため、カム51が1回転した際には20個分のポンプが作動していることになる。そして、この間、一定量の液体が連続的に吐出および吸引され、無脈動で連続する吸入及び吐出が行われる。
なお、ダイアフラムポンプ1において、カム51の1回転毎の吐出量は一定であるため、カム51の回転速度を調整することで単位時間当たりの吐出量は制御できる。
【0079】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)凹部形成面21に複数の凹部23A〜23E,24A〜24E,25A〜25Eを形成し、これらの凹部23A〜23E,24A〜24E,25A〜25Eを覆うダイアフラム8を配置し、各凹部23A〜23E,24A〜24E,25A〜25Eに対応して複数の押圧ロッド73,74,75を設けて5つのポンプを形成し、各押圧ロッド73〜75の動作をカム51によって設定したので、カム51の回転に伴う液体の吸入量および吐出量つまり移送量を一定にでき、駆動ユニット6を一定速度で回転させれば一定量の液体を無脈動で連続して移送できる。
特に、吸入側バルブ室、吐出側バルブ室を密閉して計量室に液体を区画する計量工程を有するので、微量の液体であっても高精度に移送できる。
その上、ダイアフラムポンプ1における時間当たりの移送量は、駆動ユニット6の回転スピードのみで調整でき、制御を非常に容易に行うことができる。
【0080】
(2)ダイアフラム8を用いながらも無脈動の連続ポンプを構成できるので、吐出可能な液体の種類の制限が少なく、様々な用途に広く利用することができる。すなわち、接液部分は、ベースブロック2、保持リングブロック3、ダイアフラム8のみであるため、これらの部品の材質を適宜選択すれば、様々な種類の液体を移送できる。さらに、ダイアフラム8は弾性変形可能なゴム等で構成されるため、銀ペーストやはんだペーストなどの液体であっても、粒子を潰すことなく吐出でき、液体にダメージを与えることなく移送できる。
また、プランジャポンプのようにプランジャにシール材を当接させて液漏れを防止する場合、プランジャをシール材に対して摺動させることになるため、液体がプランジャやシール材に対して擦れてしまう。このため、UV硬化性接着剤や嫌気性接着剤等のシール材等に擦れることで重合しやすい液体を移送する場合、液体の一部が重合して固まってしまうなど、液体にダメージが与えやすい。これに対し、本実施形態では、ダイアフラム8を用いることでシール材を不要にでき、液体が擦れる部分も無くすことができるので、UV硬化性接着剤や嫌気性接着剤等の液体もダメージを与えることなく移送できる。
このため、ダイアフラムポンプ1は、様々な液体を移送でき、化学、半導体、印刷などの広い分野で利用できる。
【0081】
(3)各流体流路280における各バルブ室、計量室の少なくとも1つは必ずダイアフラム8が凹部23〜25に密着して密閉されるため、チェック弁を用いなくても逆流を防止できる。従って、カム51を逆方向に回転させることで、ポート22側から凹部形成面21の外周側の空間33に液を移送することもでき、逆流可能なダイアフラムポンプ1を容易に構成できる。
また、チェック弁がある場合、チェック弁の液供給側と吐出側とで圧力差があると、チェック弁部分で液が漏れてしまうため、液供給側を加圧して液体を圧送したりすることができない。これに対し、本実施形態では、凹部23〜25を密閉することでチェック弁を不要にしているので、液供給側を加圧したり、液吐出側が負圧状態の場合等、圧力差があっても利用することができる。このため、液を加圧して供給でき、流体流路280内に液を隙間無く充填しながら移送できるので、液体の吐出精度も向上できる。その上、高粘度の液体の移送も可能になるため、移送できる液体の種類をより一層増やすことができ、様々な液体のディスペンサとして広く利用できる。
【0082】
(4)ダイアフラム8によって押圧ロッド73〜75やカム51等の駆動部側と液体が移送されるポンプ部側とが区画されており、駆動部側への液漏れを防止するシール材などを別途設ける必要がない。さらに、押圧ロッド73〜75は、0.5mmのストロークで往復駆動するだけの単純な動作でよいため、構成を簡易にでき、容易に小型化できる。このため、極微量の液体吐出を行う小型のポンプ1とすることができ、半導体等の製造ラインにおいて、ロボットアームに取り付けて用いることもできる。
【0083】
(5)凹部23A〜23E,24A〜24E,25A〜25Eや押圧ロッド73〜75を、ポート22を中心にスパイラル状に配置しているので、凹部形成面21の面積をコンパクトにすることができる。このため、ダイアフラムポンプ1を小型化することができる。
【0084】
(6)さらに、第1押圧ロッド73、第2押圧ロッド74、第3押圧ロッド75は、位相をずらして作動させなければならない。位相をずらす場合、カム面511において各押圧ロッド73〜75に対応する領域をずらすことで実現することもできるが、カムの製造が煩雑になる。これに対し、本実施形態では、第1凹部23A〜23E、第2凹部24A〜24E、第3凹部25A〜25Eを、ポート22を中心とする回転方向にそれぞれ30°毎ずらして配置しているので、カム51のカム面511において各押圧ロッド73〜75に対応する領域はずらす必要が無く、直線状に形成することができるため、カム51を容易に製造できる。
【0085】
(7)ダイアフラム8は、凹部形成面21を覆う大きさの1枚ものでよいため、容易に製造でき、コストも低減できる。その上、一般的なダイアフラムポンプ1では、ダイアフラム8全体を往復駆動させることで液体吐出を行うため、ダイアフラム8自体の変形による吐出誤差が発生し、極微量の液を精度よく送ることは困難である。
これに対し、本実施形態では、ダイアフラム8全体を往復駆動させるのではなく、第1凹部23A〜23E、第2凹部24A〜24E、第3凹部25A〜25Eに対応する部分(凹部対応部)のみを往復駆動させればよいため、押圧ロッド73〜75の動作に追従してダイアフラム8を精度よく動かすことができる。さらに、各凹部23〜25に対応するダイアフラム8の一部分、つまり面積の小さな部分のみを動かして液体を移送しているので、移送量も微量にできる。従って、極微量の液体を精度よく移送できるポンプを実現でき、極微量用液体吐出装置(ディスペンサ)としても利用できる。
その上、ダイアフラム8は、流路ブロック密着面および押圧ロッド当接面がそれぞれ平面状のシンプルな形状であるため安価に製造でき、ダイアフラム8が摩耗などした場合もダイアフラム8を低コストで交換できる。
【0086】
(8)カム面511に当接するカムフォロワを、押圧ロッド73〜75と、この押圧ロッド73〜75に保持されたボール79とを備えて構成したので、カム面511やカムフォロワで構成される駆動部分を小型化することができる。すなわち、ボール79の代わりにローラを用いた場合には、ローラを回転自在に支持する回転軸が必要となり、この回転軸は外周方向に突出させなければならないため、ローラのカム面に沿った移動(公転)軌跡の直径も大きくなる。これに対し、本実施形態ではボール79を用いているので、ローラ軸を不要にでき、その分、移動軌跡の直径を小さくできてダイアフラムポンプ1を小型化することができる。
【0087】
(9)ローラを用いた場合には、平面カムとローラとの間で横滑りが生じるため、平面カムを含油樹脂で形成してローラの摩耗を減少させる必要があり、このため、ローラとの圧接時の含油樹脂の変形によって、プランジャのストローク量の誤差が生じ、液体の吐出精度が低下する。
これに対し、本実施形態では、カム面511にボール79を当接させており、カム面511とボール79間の摩擦係数に比べて押圧ロッド73〜75とボール79間の摩擦係数を低く設定しているので、公転に伴いボール79に対し円周方向等の力が加わっても、その力は押圧ロッド73〜75とボール79とが滑ることで吸収される。このため、カム面511とボール79との間では横滑り等が発生せず、ボール79はカム面511に対して滑ることなく転動することができる。従って、カム面511を従来のように摩擦を考慮して含油樹脂などで形成する必要が無く、金属等の硬い部材で形成でき、かつボール79も硬い部材で構成できるので、押圧ロッド73〜75のストローク量の誤差を減少でき、液体の吐出精度を向上させることができる。
さらに、押圧ロッド73〜75の進退は、カム面511の形状により一義的に設定されるから、カム面511の形状を適宜に設定することにより、押圧ロッド73〜75の動きを正確に制御でき、脈動のない正確な吐出を行うことができる。
【0088】
(10)さらに、押圧ロッド73〜75は、樹脂などのボール79に比べて柔らかい部材で構成されるが、ボール79の約半球部分を収納可能な半球状の凹部でボール79を保持しているので、ボール79および凹部間で滑りが生じる場合、その滑りによって生じる力を凹部の広い面積で支持することができ、押圧ロッド73〜75の変形を防止できる。
これにより、押圧ロッド73〜75の移動量の誤差を発生させることがなく、押圧ロッド73〜75の動きを正確に制御でき、液体の移送量が極微量であっても精度よく送ることができる。
【0089】
(11)コイルバネ78を設け、各押圧ロッド73〜75をカム面511側に付勢しているので、各押圧ロッド73〜75をカム面511に確実に追従させることができる。さらに、カム51全体は皿バネ57によってダイアフラム8側に付勢されているので、各押圧ロッド73〜75が変位0の位置、つまりダイアフラム8を凹部23〜25に押し付けている場合の位置をある程度自動的に合わせることができる。すなわち、押圧ロッド73〜75をダイアフラム8にある程度の力で押し付けると、ダイアフラム8が凹部23〜25に密着し、かつある程度圧縮された時点で前記押し付け力とバランスが取れて押圧ロッド73〜75の位置が決められる。従って、本実施形態のように、スペーサリング56の高さ寸法等によって、カム51を設計上決められる位置に概略合わせておけば、後は、皿バネ57によってカム51をダイアフラム8側に押し付けることで、各押圧ロッド73〜75の位置つまりカム51の位置を自動的に調整することができる。このため、各部品の加工精度をあまり高くしなくても、ダイアフラムポンプ1の組立時にカム51の位置を正確に設定できるため、加工作業性を向上でき、比較的安価に製造できる。
【0090】
(12)回転駆動源である駆動ユニット6によってカム51を回転させるだけで、各押圧ロッド73〜75をカム面に追従して往復駆動できる。このため、押圧部材駆動制御部をコンパクトにでき、小型・軽量のダイアフラムポンプ1を実現できる。従って、各種製品の生産ラインにおいて、接着剤や各種ペースト等の吐出に利用する際にも、ダイアフラムポンプ1をロボットのアームに取り付けて、高速、高加速度で移動させることができ、生産ラインのタクトタイムの短縮を実現でき、生産性向上に寄与することができる。
【0091】
(13)さらに、本発明では、モータ等からなる駆動ユニット6でカム51を回転させるだけで、各押圧ロッド73〜75を所定のタイミングで繰り返し動作させることができる。この際、各押圧ロッド73〜75の1サイクル動作毎の液体移送量は一定に設定できるため、カム51の回転速度を調整するだけで、単位時間当たりの液体移送量を調整できる。従って、ダイアフラムポンプ1における液移送量の制御を非常に簡単に行うことができ、使い勝手の良いダイアフラムポンプ1(ディスペンサ)を実現できる。
【0092】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について図13,14を参照して説明する。
第2実施形態のダイアフラムポンプ1Aは、ベースブロック2A、ダイアフラム8Aの構成が前記第1実施形態のダイアフラムポンプ1と相違する。すなわち、ベースブロック2Aにおいて、ダイアフラム8Aが密着するダイアフラム密着面21Aは、第1実施形態の凹部23〜25、連通溝281〜284が形成された凹部形成面21と異なり、溝や凹部が形成されていない平面(フラット面)とされている。
【0093】
また、ダイアフラム8Aは、ベースブロック2A側に面する流路ブロック密着面81と、押圧ロッド73〜75側に面する押圧ロッド当接面82とを備えて略円板状に形成されている。
流路ブロック密着面81は、第1実施形態のダイアフラム8のような平面状ではなく、図14(B),(C)に示すように、凹部23〜25と連通溝281〜284とが形成されている。すなわち、第1実施形態の凹部形成面21と同様に、各凹部23〜25と連通溝281〜284が形成されている。
【0094】
また、押圧ロッド当接面82には、図14(A)に示すように、各凹部23〜25に対応した位置に球面状の凸部83〜85が形成されている。これにより、図14(B)に示すように、凹部23〜25が形成された部分の肉厚も他の部分と略同一となるように構成されている。このダイアフラム8Aは、ゴム製であり、ゴム型(ゴム成形用金型)を利用して成形できる。
【0095】
ダイアフラム8Aは、図13に示すように、ベースブロック2Aおよび保持リングブロック3からなる流路ブロックと、ガイドブロック4とで挟持固定されている。また、各凸部83〜85は、ガイドブロック4のガイド孔43〜45の位置に配置され、各押圧ロッド73〜75が当接可能とされている。
従って、ダイアフラム8Aの凹部23〜25およびベースブロック2Aのダイアフラム密着面21Aで区画形成される空間により吸入側バルブ室、計量室、吐出側バルブ室が構成されている。また、各連通溝281〜284およびダイアフラム密着面21Aで区画形成される空間により各連通路が構成されている。
また、押圧ロッド73〜75のダイアフラム8A側の端面は、平面状とされ、各凸部83〜85全体を効果的に押し込むことができるようにされている。但し、前記第1実施形態と同様の端面が球面状の押圧ロッド73〜75を用いてもよい。
【0096】
このような本実施形態においても、ダイアフラム8Aおよびベースブロック2A間に各バルブ室、計量室、連通路が形成されている点および各バルブ室や計量室の容積が押圧ロッド73〜75の進退駆動に伴い変動する点は前記第1実施形態と同一であるため、前記第1実施形態と同じ動作で液体の移送動作が行われる。
【0097】
このような本実施形態では前記第1実施形態と同様の作用効果を奏するほか、以下の効果も得られる。
すなわち、ベースブロック2Aではなく、ダイアフラム8Aに凹部23〜25、連通溝281〜284を形成しているので、初期投資費用を抑えることができ、ダイアフラムポンプ1Aの生産台数が比較的少量の場合には、コストを低減できるとともに、極微量の液体の移送を容易に行うことができる。すなわち、第1実施形態のように金属製のベースブロック2に凹部23〜25等を形成する場合、金型を作成して成形するか、工作機械で加工する必要がある。金型を用いればベースブロック2の生産コストは低減できるが、金型自体の製造に費用がかさむため、初期投資費用が増大する。一方、工作機械で加工する場合、加工コストが高くなるとともに、加工の都合上、凹部23〜25の容積を小さくすることが難しい。
これに対し、ダイアフラム8Aに凹部23〜25、連通溝281〜284を形成する場合、ゴム製のダイアフラム8Aはゴム型を利用して成形すればよい。このゴム型は、金属製品を成形する金型に比べて安価であるため、初期費用を抑えることができ、かつ、ゴム型を利用することで、計量室や流路も小さくでき、極微量の液体の移送も容易に行うことができる。
【0098】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について図15〜24を参照して説明する。
第3実施形態のダイアフラムポンプ1Bは、流路ブロック130およびカム150の構成が前記第1実施形態のダイアフラムポンプ1と相違する。すなわち、流路ブロック130は、金属製のベース部材131と、ポリプロピレン等の合成樹脂製の当接部材132とで構成されている。
【0099】
当接部材132は、ダイアフラム8が密着するダイアフラム密着面としての凹部形成面132Aを備えている。凹部形成面132Aには、図2に示す第1実施形態の凹部形成面21と同じ凹部23〜25や連通溝281〜284が形成されている。
また、当接部材132には、複数の突起132Bが形成され、この突起132Bをベース部材131の嵌合孔131Aに挿入することで位置決めされている。
さらに、当接部材132の中心軸部分にはポート22となる貫通孔が形成されている。このポート22にはステンレスなどで構成されたノズル連結部材133が圧入されている。
【0100】
ノズル連結部材133は、流路ブロック130にねじ止めされるノズル部材27によって流路ブロック130に固定されている。そして、このノズル連結部材133が当接部材132のポート22に圧入されていることで、当接部材132はベース部材131に密着した状態で固定されている。
また、ノズル連結部材133と当接部材132間には、液漏れ防止用のOリングが配置されている。
そして、吐出流路である当接部材132のポート22から吐出された液体は、ノズル連結部材133およびノズル部材27を介してポンプ外部に吐出されるように構成されている。
【0101】
流路ブロック130には、液体を供給するチューブや容器が取り付けられる連結具160が袋ナットで止められている。そして、流路ブロック130には、連結具160の液体供給路161に連通する貫通孔32と、この貫通孔32に連通し、かつダイアフラム8の外周に沿って形成されたリング状の空間33とが形成されている。
前記当接部材132の外周側には、空間33と凹部23とを連通する切欠溝からなる連通溝281が形成されており、本実施形態においても空間33により吸入流路が構成されている。
【0102】
ダイアフラム8は、ベース部材131およびケースブロック10で挟持されている。ケースブロック10の中心軸部分には貫通孔が形成され、この貫通孔部分にガイドブロック4が保持されている。ガイドブロック4の構成は、第1実施形態と同様であるため説明を略す。
なお、ガイドブロック4は、取付ブロック5の内部貫通孔に配置された円筒状の押圧部材12を介して皿バネ11によって流路ブロック130側に付勢され、ダイアフラム8に所定の圧力で当接するように構成されている。
【0103】
駆動ユニット6の出力軸61には、スプライン軸53が固定され、スプライン軸53にはスプラインボス52が嵌合されている。スプラインボス52は、ボールベアリング55を介して押圧部材12に対し回動自在に支持されている。また、スプラインボス52は、カム150に圧入され、カム150と一体的に回転するように構成されている。
カム150は、スプラインボス52およびボールベアリング55を介して皿バネ57によりガイドブロック4側に付勢されている。
一方、ガイドブロック4にガイドされている押圧ロッド73〜75は、コイルバネ78でカム150側に付勢されている。従って、押圧ロッド73〜75に設けられてカムフォロワとして機能するボール79は、所定の圧力で常時、カム150のカム面に当接されている。
【0104】
カム150の回転軸に直交する端面には、図16に示すように、回転中心軸を中心とする略同心円状に形成された3本のカム溝151〜153が形成されている。
第1カム溝151は、第1押圧ロッド73のボール79がガイドされるカム溝であり、図17(A)にも示すように、カム150の最外周側に形成されている。
第2カム溝152は、第2押圧ロッド74のボール79がガイドされるカム溝であり、図17(B)にも示すように、カム溝151の内周側に形成されている。
第3カム溝153は、第3押圧ロッド75のボール79がガイドされるカム溝であり、図17(C)にも示すように、カム溝152の内周側つまりカム150の最内周側に形成されている。
【0105】
各カム溝151〜153のカム線図を、図18〜20に示す。各カム線図のy軸は、カム150の端面の平面部分をy=0とした際に、カム溝151〜153においてボール79が当接する底面部分つまりカム面の高さ位置(深さ)を示し、カム溝151〜153の底面において最もダイアフラム8側に近い部分(溝の浅い部分)をカム最低位置(y=0.2)、最も遠い部分(溝の深い部分)をカム最高位置(本実施形態の一例では、例えばy=0.7mm)としている。一方、x軸は、カム最低位置(y=0.2)に第1押圧ロッド73のボール79が当接されている状態を0°とし、その位置からのカム150の回転角度つまりボール79に対するカム面の相対回転角度が表されている。なお、カム線図には、ボール79の中心位置の移動軌跡も記載されている。
なお、本実施形態では、各カム溝151〜153のカム面は90°で1サイクルとされ、90°から180°、180°から270°、270°から360°はその繰り返しであるため、0°から90°の部分で説明する。
【0106】
カム溝151のカム線図は、図18に示すように、カム150の回転角度が0°から30°までのカム面は最低位置(y=0.2)の状態のままである。つまり、カム面は、カム150の回転軸に直交する平面で構成されている。
30°から39°までのカム面は、例えば、y=(x−30)2/810+1/5で表される二次曲線とされている。
39°から48°までのカム面は、例えば、y=x/45-17/30で表される直線である。
48°から57°までのカム面は、例えば、y=-(x−52.5)2/405+11/20で表される二次曲線である。
57°から66°までのカム面は、例えば、y=x/45+53/30で表される直線である。
66°から75°までのカム面は、例えば、y=(x−75)2/810+1/5で表される二次曲線である。
75°から90°まではカム面は、最低位置(y=0.2)の状態のままである。
【0107】
カム溝152のカム線図は、図19に示すように、カム150の回転角度が0°から9°までのカム面は最低位置(y=0.3)の状態のままである。
9°から18°までのカム面は、例えば、y=(x−9)2/810+3/10で表される二次曲線とされている。
18°から27°までのカム面は、例えば、y=x/45で表される直線である。
27°から36°までのカム面は、例えば、y=-(x−36)2/810+7/10で表される二次曲線である。
36°から54°までのカム面は、例えば、y=0.7で表される直線である。
54°から63°までのカム面は、例えば、y=-(x−54)2/810+7/10で表される二次曲線である。
63°から72°まではカム面は、例えば、y=-x/45+2で表される直線である。
72°から81°までのカム面は、例えば、y=(x−81)2/810+3/10で表される二次曲線である。
81°から90°まではカム面は、y=0.3の状態のままである。
【0108】
カム溝153のカム線図は、図20に示すように、カム150の回転角度が0°から15°までのカム面は最低位置(y=0.2)の状態のままである。
15°から24°までのカム面は、例えば、y=(x−15)2/810+1/5で表される二次曲線とされている。
24°から33°までのカム面は、例えば、y=x/45-7/30で表される直線である。
33°から42°までのカム面は、例えば、y=-(x−37.5)2/405+11/20で表される二次曲線である。
42°から51°までのカム面は、例えば、y=-x/45+43/30で表される直線である。
51°から60°までのカム面は、例えば、y=(x−60)2/810+1/5で表される二次曲線である。
60°から90°まではカム面は、例えば、y=0.2で表される直線である。
【0109】
従って、駆動ユニット6によってスプライン軸53、スプラインボス52、カム150が回転すると、前記各カム溝151〜153のカム面の形状に沿って、前記ボール79および押圧ロッド73〜75は軸方向に進退する。
押圧ロッド73〜75が凹部23〜25側に移動すると、ダイアフラム8の凹部23〜25に対応する部分(ダイアフラム8において押圧ロッド73〜75が当接する凹部対応部)および凹部23〜25で区画形成される各バルブ室や計量室の容積が減少し、容積減少動作が行われる。また、y=0.2(基準深さ)の位置にボール79が当接していれば凹部対応部が凹部23〜25の内面に密着し、各バルブ室等の密閉動作が行われる。
押圧ロッド73〜75が凹部23〜25から離れる方向に移動して、ダイアフラム8の凹部対応部が密着していた凹部23〜25の内面から離れると各バルブ室の開放動作が行われる。さらに、押圧ロッド73〜75が凹部23〜25から離れる方向に移動すると、凹部23〜25およびダイアフラム8間に区画形成される各バルブ室や計量室の容積増大動作が行われる。
【0110】
次に、第3実施形態の作用について図21〜24を参照して説明する。
[押圧ロッドの動作説明]
まず、各押圧ロッド73〜75自体の動作に関し、説明する。各押圧ロッド73〜75は、カム150の各カム溝151〜153の形状に応じた動作を行う。この際、各押圧ロッド73〜75は、前記第1実施形態と同様に、第1設定角度つまり30°毎ずれて配置されている。このため、押圧ロッド73のボール79が図18において60°の位置にあるときに、押圧ロッド74のボール79は図19における30°の位置にあり、押圧ロッド75のボール79は図20における0°の位置にある。
これらの各押圧ロッド73〜75の変位をグラフに示すと図21に示すようになる。図21では、第1押圧ロッド73の変位を「入口」、第2押圧ロッド74の変位を「計量」、第3押圧ロッド75の変位を「出口」と表示している。
【0111】
[各ポンプ(3本の押圧ロッド)の動作説明]
次に、ダイアフラムポンプ1を構成する各ポンプの動作に関し、第1ガイド孔43A、第2ガイド孔44A、第3ガイド孔45Aに挿入される第1押圧ロッド73、第2押圧ロッド74、第3押圧ロッド75の動作を例に説明する。
なお、以下の説明において、カム150は、前記第1実施形態と同じく、凹部形成面132Aに対して反時計方向に回転し(カム150をカム面側から見た場合には時計方向の回転である)、凹部形成面21の外周側の空間33から液を吸入し、中心のポート22から吐出するように動作する。
【0112】
図22(A)は、第1押圧ロッド73のボール79がカム面の0°位置にある場合である。この際、第2押圧ロッド74は、第1押圧ロッド73に対して30°遅れの位置に配置されているので、そのボール79はカム面の330°位置にある。同様に、第3押圧ロッド75は、第2押圧ロッド74に対して30°遅れの位置に配置されているので、そのボール79はカム面の300°位置にある。
従って、第1押圧ロッド73は、変位y=0.2つまりダイアフラム8を凹部23Aに押し付けて密着しており、第1凹部23Aおよびダイアフラム8の凹部対応部で区画される吸入側バルブ室は密閉状態とされる。第2押圧ロッド74は、変位0.6556の位置に移動している。第3押圧ロッド75も、変位0.4333の位置に移動している。各押圧ロッド74,75がこれらの位置にあるため、第2凹部24A、第3凹部25Aおよびダイアフラム8の各凹部対応部で区画される計量室および吐出側バルブ室の容積は、各押圧ロッド74,75の位置に応じた容積となっている。また、計量室および吐出側バルブ室は、連通路283,284を介してポート22に連通している。
【0113】
図22(A)の状態からカム150が21°回転すると、図22(B)の状態となる。すなわち、第1押圧ロッド73のボール79はカム面の21°位置に達するが、その間のカム面は平面であるため、第1押圧ロッド73は変位せず、吸入側バルブ室を密閉した状態のままである。
この際、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面の330°から351°まで移動し、第2押圧ロッド74は、変位0.6556mmから0.3mmの位置までダイアフラム8側に移動する。この移動に伴い、計量室の容積は徐々に小さくなるため、計量室内の液体は連通溝283を介して吐出側バルブ室に移送される。
また、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面の300°から321°まで移動し、第3押圧ロッド75は、変位0.4333mmから一旦0.55mmの位置までダイアフラム8から離れる方向に移動した後、再度、0.3mmの位置までダイアフラム8側に移動する。この移動に伴い、吐出側バルブ室の容積は一旦大きくなって計量室から液体を吸入する。次に、吐出側バルブ室の容積が徐々に小さくなるため、液体は吐出側バルブ室からポート22に吐出される。なお、吐出側バルブ室の容積が減少する際に、計量室の容積も、常に吐出側バルブ室よりも小さくなるように順次減少しており、かつ、吸入側バルブ室は閉塞状態に維持されているため、吐出側バルブ室の容積が減少した際に、液体は計量室側に逆流することなく、順次ポート22側に吐出される。
【0114】
図22(B)の状態からカム150が9°回転すると、図23(C)の状態となる。すなわち、第1押圧ロッド73のボール79はカム面の21°から30°の位置に達する。この30°までは、第1押圧ロッド73は、変位0.2mmを維持し、吸入側バルブ室は密閉状態に維持される。
また、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面の351°から360°まで移動する。この間、第2押圧ロッド74は、変位0.3mmを維持する。変位0.3mmの場合、ダイアフラム8は第2凹部24Aに密着せず、隙間が形成されるので、計量室は所定の容積の状態に維持される。
また、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面の321°から330°まで移動し、第3押圧ロッド75は、変位0.3mmから0.2mmの位置までダイアフラム8側に移動する。この移動に伴い、吐出側バルブ室は密閉される。
【0115】
従って、図22(A)から図23(C)まではポート22から液体が順次吐出されるため、吐出工程が実施される。また、図23(C)の状態になると、吐出側バルブ室が密閉されるため、吐出工程が終了する。
【0116】
図23(C)の状態からカム150が9°回転すると、図23(D)の状態となる。すなわち、第1押圧ロッド73のボール79はカム面の30°から39°まで移動する。このため、第1押圧ロッド73は、変位0.2mmから0.3mmの位置までダイアフラム8から離れる方向に移動し、吸入側バルブ室の容積は増大する。この容積の拡大に伴い、空間33から連通溝281を介して液体が吸入側バルブ室に順次吸入される。
また、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面の360°から9°まで移動し、第2押圧ロッド74は変位0.3mmの位置に維持される。従って、計量室は所定の容積の状態に維持される。
また、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面の330°から339°まで移動し、第3押圧ロッド75は変位0.2mmの位置に維持される。この移動に伴い、吐出側バルブ室は密閉状態に維持される。
【0117】
図23(D)の状態からカム150が27°回転すると、図24(E)の状態となる。すなわち、第1押圧ロッド73のボール79はカム面の39°から66°の位置に達する。この際、第1押圧ロッド73は、変位0.3mmから一旦0.55mm(52.5°)までダイアフラム8から離れる方向に移動した後、再度、0.3mmの位置までダイアフラム8側に移動する。
また、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面の9°から36°まで移動し、第2押圧ロッド74は変位0.3mmから0.7mmの位置までダイアフラム8側に移動する。この移動に伴い、計量室の容積は徐々に大きくなる。
ここで、吸入側バルブ室の容積は、一旦大きくなってから減少する。このため、液体は空間33から吸入側バルブ室に吸入され、その後、吸入側バルブ室から吐出される。この際、計量室の容積は順次大きくなるため、吸入側バルブ室から吐出された液体は計量室に吸入される。
なお、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面の339°から6°まで移動し、第3押圧ロッド75は変位0.2mmの位置に維持される。このため、吐出側バルブ室は密閉状態のまま維持される。
【0118】
図24(E)の状態からカム150が9°回転すると、図24(F)の状態となる。すなわち、第1押圧ロッド73のボール79はカム面の66°から75°の位置に達する。この際、第1押圧ロッド73は、変位0.3mmから0.2mmまでダイアフラム8側に移動し、吸入側バルブ室が密閉される。
また、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面の36°から45°まで移動し、第2押圧ロッド74は変位0.7mmの位置で維持される。このため、計量室の容積は変化しない。
さらに、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面の6°から15°まで移動し、第3押圧ロッド75は変位0.2mmの位置に維持される。このため、吐出側バルブ室は密閉状態のまま維持される。
従って、図23(C)から図24(F)まで、つまり第1押圧ロッド73のボール79がカム面の30°から75°まで移動し、吸入側バルブ室が密閉状態からその容積が徐々に増加し、その後減少して、再度密閉するまでの期間で液体を吸入する吸入工程が実施される。
また、図24(F)の状態、つまり吸入側バルブ室が密閉されることで、吸入工程が終了する。
さらに、図24(F)の状態では、吸入側バルブ室および吐出側バルブ室が密閉されるので、液体は吸入側バルブ室および吐出側バルブ室間、具体的には計量室および連通溝282,283部分の所定の容積空間内に区画される。従って、液体を所定の容積空間に区画して計量する計量工程が実施される。
【0119】
図24(F)の状態からカム150が15°回転すると、図22(A)の状態に戻る。すなわち、第1押圧ロッド73のボール79はカム面の75°から90°の位置に達する。この際、第1押圧ロッド73は、変位0.2mmに維持され、吸入側バルブ室も密閉状態に維持される。
また、第2押圧ロッド74のボール79は、カム面の45°から60°の位置まで移動し、第2押圧ロッド74は変位0.7mmから0.6556mmの位置まで移動する。このため、計量室の容積は徐々に減少する。
さらに、第3押圧ロッド75のボール79は、カム面の15°から30°の位置まで移動し、第3押圧ロッド75は変位0.2mmから0.4333mmの位置まで移動する。このため、吐出側バルブ室が開放状態とされ、その容積は徐々に増大し、計量室から吐出側バルブ室に液体が吸入される。
【0120】
カム面の90°〜180°、180°〜270°、270°〜360°は、0°〜90°と同一形状である。つまり、第1押圧ロッド73のボール79がカム面の90°位置にある状態は、図22(A)と同一であるから、以降は前記動作が繰り返される。このため、説明を省略する。
【0121】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、各吐出側バルブ室(第3凹部25B)からの液体吐出は、各第3押圧ロッド75が72°の角度のずれがあり、かつカム150のカム面は90°毎に同じカム面とされているため、各18°毎位相が異なる状態で動作する。このため、ダイアフラムポンプ1Bからも一定量の液体が吐出されることになる。
そして、ダイアフラムポンプ1Bは、ポンプとして機能する5個の流体流路280を有し、カム面は90°回転する毎に1往復するように構成されているため、カム150が1回転した際には20個分のポンプが作動していることになる。そして、この間、一定量の液体が連続的に吐出および吸引され、脈動が少なくかつ連続する吸入及び吐出が行われる。
なお、ダイアフラムポンプ1Bにおいても、カム150の1回転毎の吐出量は一定であるため、カム150の回転速度を調整することで単位時間当たりの吐出量は制御できる。
【0122】
このような本実施形態においても、ダイアフラム8および当接部材132間に各バルブ室や、計量室、連通路が形成されている点および各バルブ室や計量室の容積が押圧ロッド73〜75の進退駆動に伴い変動する点は前記第1実施形態と同一であるため、前記第1実施形態と同じ動作で液体の移送動作が行われる。
【0123】
このような本実施形態では前記第1実施形態と同様の作用効果を奏するほか、以下の効果も得られる。
すなわち、流路ブロック130を、ベース部材131および当接部材132で構成し、ポリプロピレン等の合成樹脂製の当接部材132に凹部23〜25、連通溝281〜284を形成しているので、当接部材132を樹脂成形品で構成でき、金属ブロックに凹部や連通溝を形成する場合に比べて製造コストを減少できる。
【0124】
また、第2押圧ロッド74は、最も流路ブロック130側に近づいた場合でも、ダイアフラム8を第2凹部24に密着させていないので、ダイアフラム8や当接部材132の摩耗等を軽減でき、ダイアフラムポンプ1Bの長寿命化を図ることができる。
さらに、計量室は密閉されることはないが、各バルブ室の一方は必ず密閉状態とされているので、吸入流路から吐出流路までが直通されることを確実に防止でき、ポンプ(ディスペンサ)としての機能を確実に維持できる。
また、カムフォロワとしてボール79を用いているので、カム150のカム溝151〜153は、底面が湾曲した丸溝でよく、このため、ボールエンドミルで加工することもできる。従って、カム150の製造コストも抑えることができ、ダイアフラムポンプ1Bを安価に製造できる。
【0125】
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、各凹部23A〜23E,24A〜24E,25A〜25Eをスパイラル状に配置していたが、図25に示すように、放射状に配置してもよい。この場合、カム51のカム面511において、第1凹部23A〜23Eに対応する第1カム面、第2凹部24A〜24Eに対応する第2カム面、第3凹部25A〜25Eに対応する第3カム面をそれぞれ30°ずらして形成すればよい。例えば、各カム面をリング状に形成し、30°ずらして組み合わせるようにすればよい。また、第3実施形態のように、カム150にカム溝を形成する場合には、位相をずらしてカム溝を形成すればよい。
【0126】
但し、前記各実施形態のほうが、凹部形成面21の直径を小さくできて、ダイアフラムポンプ1〜1Bをコンパクトに製造できる利点がある。なお、前記実施形態のようなスパイラル状の凹部23A〜23E,24A〜24E,25A〜25Eの加工は、放射線状のものに比べて困難な場合もあるが、近年の数値制御工作機械を用いれば比較的容易に加工することができる。さらに、凹部23A〜23E,24A〜24E,25A〜25Eは球面の一部分からなる曲面であり、僅かな凹みであるため、金型成型可能が可能であるため、金型を用意すれば容易に製造できる。
【0127】
さらに、凹部23〜25をダイアフラムまたは流路ブロックの一方に形成し、連通溝281〜284をダイアフラムまたは流路ブロックの他方に形成してもよい。要するに、ダイアフラムおよび流路ブロックによって、吸入側バルブ室、計量室、吐出側バルブ室および連通路からなる液体流路を区画形成できるようにダイアフラムおよび流路ブロックを構成すればよい。
【0128】
流体流路280つまり個々のポンプの数は、前記実施形態のように5個に限らず、3個以上であればよい。すなわち、各ポンプにおいては、液体移送を停止している状態、液体移送量が徐々に減少している状態、液体移送量が徐々に増加する状態を備えており、1つのポンプによる液体移送では脈動が生じる。このため、ポンプが2つの場合では、2つのポンプから同時に液が移送される状態を設定できないため、脈動を無くすことができない。このため、最低限3個のポンプが必要である。一方、ポンプの数を多くすれば、複数のポンプで同時に液体の移送を行えるため、各ポンプの液体移送量の増減の影響を受けにくくでき、脈動がより少ない一定量の液体移送を行うことができる。但し、ポンプの数が多くなると、凹部23〜25や押圧ロッド73〜75の数も増え、ダイアフラムポンプ1が大型化してしまう。従って、前記実施形態のようにポンプを5個設ければ、ポンプサイズを比較的小型化でき、かつ脈動が少なく一定量の液体移送を実現できる点で好ましい。
【0129】
また、各流体流路280に設けられる凹部23〜25の数は、3つに限らず、4つ以上でもよいが、3つあれば逆流を防止できるポンプを構成できるので、小型化の点では3つ設けることが好ましい。
さらに、凹部23〜25間の第1設定角度や、第2設定角度は、前記実施形態の30°、72°に限らず、凹部の数、流体流路280の本数に応じて設定すればよい。
【0130】
カム51,150のカム面511の形状は、前記実施形態のカム線図のものに限らない。例えば、各押圧ロッド73〜75が等加速度運動とされるカム面部分を、サインカーブのカム面などとしてもよく、要するに各押圧ロッド73〜75による液体移送量の合計が一定となるように各カム面を設計すればよい。
【0131】
流路ブロックの構成と、各カム51,150との組合せは前記各実施形態にものに限らない。例えば、第1実施形態において、第3実施形態のカム溝151〜153が形成されたカム150を用いてもよいし、第3実施形態において第1実施形態のカム51を用いてもよい。
【0132】
カム51,150を駆動する駆動機構の構造としては前記実施形態のものに限らない。例えば、スプラインボス52やスプライン軸53を用いずにカム51,150を直接出力軸に固定してもよいし、皿バネ57等を用いずにカム51,150の位置合わせをしてもよい。
【0133】
また、モータとしては、ステッピングモータ、サーボモータ、シンクロナスモータ、DCモータ、インダクションモータ、レバーシブルモータ、エアモータ等の種々のモータを利用することができる。
【0134】
さらに、第1,2実施形態においても、第3実施形態と同様なガイドブロック4をダイアフラム8側に付勢する付勢手段を設けてもよい。なお、付勢手段の構成は実施にあたって適宜設定できるが、例えば、図26に示すように、ガイドブロック4をケースブロック10の内側に軸方向に移動可能に配置し、このガイドブロック4を皿バネ11および円筒状の押圧部材12からなる付勢手段によってダイアフラム8側に付勢するように構成すればよい。
なお、図26の例では、ケースブロック10の内周側に樹脂製のガイドリング13を圧入し、このガイドリング13の内周に形成した歯と、ガイドブロック4の外周に形成した歯とを噛み合わせることで、ガイドブロック4を回転させずに軸方向のみに移動するように構成している。また、カム51、スプラインボス52、ボールベアリング55、皿バネ57は押圧部材12の内周側に配置している。
【0135】
ガイドブロック4をダイアフラム8側に付勢する付勢手段を設ければ、ベースブロック2やガイドブロック4の加工精度が多少低くても、液体の移送量の精度低下を防止できる。すなわち、前記第1,2実施形態のように、ベースブロック2、保持リングブロック3、ガイドブロック4の加工精度によって設定されるベースブロック2およびガイドブロック4間の隙間にダイアフラム8を配置した場合、その隙間寸法がダイアフラム8の厚さ寸法よりも大きければダイアフラム8が凹部形成面21に密着せず、液が漏れてしまうため、液体の移送量の精度が低下する。また、前記隙間寸法がダイアフラム8の厚さ寸法に比べて小さすぎてダイアフラム8を潰しすぎると、ダイアフラム8の一部が凹部23〜25や連通溝281〜284内にはみ出して流体流路280を塞いでしまい、液体を移送できないおそれがある。従って、前記第1,2実施形態では、ベースブロック2やガイドブロック4の加工精度を高くして前記隙間寸法を精度良く設定する必要がある。
これに対し、第3実施形態や図26に示す例のように、ガイドブロック4をダイアフラム8側に付勢するように構成すれば、ベースブロック2やガイドブロック4の加工精度をあまり高くしなくても、ダイアフラム8をベースブロック2に確実に密着できるとともに、ダイアフラム8を潰しすぎて流体流路280を塞ぐことも防止できるので、液体の移送量の精度低下を防止でき、かつ液体を確実に移送できる。
【0136】
また、前記実施形態では、連通溝281〜284の幅寸法は、凹部23〜25の幅寸法(直径)の1/6程度と小さくされていたが、凹部23〜25の幅寸法の1/2程度あるいは凹部23〜25の幅寸法と同じにしてもよく、移送する液体の種類などに応じて設定すればよい。なお、連通溝281〜284の幅寸法を広くすると、ダイアフラム8を潰しすぎた際に、ダイアフラム8が連通溝281〜284内にはみ出して流体流路280を塞ぎやすくなる。このため、連通溝281〜284の幅寸法を広くした場合には、ベースブロック2やガイドブロック4の加工精度を高くしてベースブロック2およびガイドブロック4間の隙間寸法精度を向上させたり、ガイドブロック4をダイアフラム8側に付勢する付勢手段を設けることが好ましい。
さらに、これら以外の部分の形状、構造、材質等も前記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0137】
なお、本発明のダイアフラムポンプ1〜1Bは、カム51を逆回転させることで逆流も可能であるため、ポート22側から液体を吐出する場合に限らず、ポート22側から液体を吸入する用途にも利用できる。
さらに、ダイアフラムポンプ1〜1Bは、前記実施形態のようにノズル部材27等を設けることで液体吐出装置(ディスペンサ)として利用できる他、所定の液体が流れているラインの流量計測値等に応じて微量の液をライン内に吐出して混合したり、ラインからサンプリングしたりする場合に利用できる。
【0138】
さらに、所定の液体が流れているラインにダイアフラムポンプ1〜1Bを介在させてポンプ前後のラインの圧力等が平衡状態となるように駆動ユニット6を作動させ、その平衡状態の駆動ユニット6の回転量やパルス数等から流量を測定してもよい。特に、本発明のダイアフラムポンプ1〜1Bは、極微量の液体を吸引・吐出することに適しているので極微量流量計としても利用できる。
【0139】
また、ダイアフラム8の材質は、ゴム製のものに限らず、フッ素樹脂等とゴム等を積層したものでもよい。このような構成によれば、ダイアフラム8の液に接する面を耐薬品性能が高いフッ素樹脂等で構成することで、使用できる液体の種類を大幅に増やすことができ、各種用途に利用できる。要するに、ダイアフラム8としては、押圧ロッド73〜75による押圧力で変形可能であり、かつ押圧ロッド73〜75の押圧力が解除された際には元の状態に戻ることができる弾性変形可能な材質であればよい。
なお、フッ素樹脂等のゴムに比べて変形し難い材質のものを利用した場合には、凹部23〜25の深さ寸法を例えば0.1mm程度に小さくしたり、形状等を工夫して、変形量の少ないダイアフラム8でも凹部23〜25に密着できるように構成すればよい。要するに、凹部23〜25の形状、寸法は、使用するダイアフラム8の材質や液体の移送量に応じて適宜設定すればよい。
【0140】
また、前記各実施形態では、凹部23〜25の幅寸法を連通溝281〜284よりも大きく形成していたが、各幅寸法を同一にしてもよい。例えば、図27に示すように、流路ブロックの中心軸に形成されたポート22から放射状に、凹溝を形成すればよい。凹溝は、断面円弧状でかつ幅寸法が一定の溝に形成すればよい。このような構成においても、凹溝の位置に合わせて各押圧ロッド73〜75を配置し、押圧ロッド73〜75を凹溝(流路ブロック)側に移動すれば、ダイアフラム8が凹溝に密着し、凹溝を閉鎖することができる。また、押圧ロッド73〜75を凹溝から離れる方向に移動すれば、ダイアフラム8が凹溝から離れ、凹溝を開放することができる。従って、幅寸法が一定の凹溝においても、各凹部23〜25や連通溝281〜284、つまり各バルブ室や計量室、連通路が実質的に形成されていることになる。
このような構成によれば、流路ブロックに幅寸法が一定の凹溝を複数本形成するだけでよいため、簡単な加工で済み、コストを低減できる。また、液体流路の溝幅を比較的大きくかつ一定にできるので、高粘度の液体であっても吐出しやすい。但し、図27に示すように、ダイアフラム8は、凹溝に対して、その溝長手方向の直交方向に線上に密着することになるため、前記実施形態に比べて密着面積が小さくなる。このため、前記各実施形態のほうが、流体流路の密閉性能が高いという利点がある。
【0141】
また、本発明のダイアフラムポンプは、電子部品の製造装置に組み込んで利用してもよい。すなわち、電子部品の製造装置は、前述のダイアフラムポンプと、このダイアフラムポンプの前記吸入流路に液体を供給する液体供給手段と、前記吐出流路に設けられた吐出ノズルと、前記ダイアフラムポンプの駆動手段を制御するコントローラとを備えて構成され、前記液体供給手段から供給される液体を前記ダイアフラムポンプを介して吐出ノズルから吐出して電子部品を製造するものとすればよい。
このような電子部品の製造装置では、極微量の液体を精度良く移送できる前述のダイアフラムポンプを用いているので、前記吐出ノズルから極微量の液体を高精度に吐出でき、かつ銀粉やシリカ粉等の粒子を含む液体であっても、その粒子を潰すことなく吐出できる。このため、前記ダイアフラムポンプを接着剤や樹脂などの各種液体を吐出するディスペンサとして利用でき、このようなディスペンサを用いた各種の電子部品の製造装置に利用できる。特に、極微量でかつ粒子を含む液体を高精度に吐出できることから、銀ペースト等の接着剤を用いて半導体チップを基板に接着するダイボンダや、シリカ粉等を含む樹脂でLEDチップを封入するLED製造装置等の電子部品の製造装置に最適である。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、無脈動でかつ一定量の液体移送を実現できるダイアフラムポンプに利用できる。また、ダイアフラムポンプから吐出される銀ペースト等の接着剤を用いて半導体チップを基板に接着するダイボンダや、ダイアフラムポンプから吐出される樹脂でLEDチップを封入するLED製造装置等の電子部品の製造装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の第1実施形態を示す図である。
【図2】前記実施形態のベースブロックの凹部形成面を示す平面図である。
【図3】前記実施形態の要部の断面図である。
【図4】凹部形成面における凹部の配置を説明する図である。
【図5】前記実施形態のガイドブロックを示す平面図である。
【図6】前記実施形態のカムを示す図であり、(A)はカムの断面図、(B)はカム面を示す平面図である。
【図7】前記実施形態のカムのカム線図ある。
【図8】前記実施形態の動作説明図であり、(A)は第1押圧ロッドがカム面の0°位置にある場合を示す図であり、(B)は第1押圧ロッドがカム面の15°位置にある場合を示す図である。
【図9】前記実施形態の動作説明図であり、(C)は第1押圧ロッドがカム面の27°位置にある場合を示す図であり、(D)は第1押圧ロッドがカム面の45°位置にある場合を示す図である。
【図10】前記実施形態の動作説明図であり、(E)は第1押圧ロッドがカム面の57°位置にある場合を示す図であり、(F)は第1押圧ロッドがカム面の75°位置にある場合を示す図である。
【図11】前記実施形態の第1〜3押圧ロッドのカム回転角度に対する変位量を示すグラフである。
【図12】前記実施形態における液体の移送量の変化を示すグラフである。
【図13】本発明の第2実施形態の要部の断面図である。
【図14】第2実施形態のダイアフラムを示す図であり、(A)はダイアフラムの押圧ロッド当接面を示す平面図、(B)は(A)のA−A線に沿った断面図、(C)はダイアフラムの流路ブロック密着面を示す平面図である。
【図15】第3実施形態の要部の断面図である。
【図16】第3実施形態のカムを示す図であり、(A)はカムの断面図、(B)はカム面を示す平面図である。
【図17】第3実施形態の各カム溝を個別に示す図である。
【図18】第3記実施形態のカムにおける第1カム溝のカム線図ある。
【図19】第3記実施形態のカムにおける第2カム溝のカム線図ある。
【図20】第3記実施形態のカムにおける第3カム溝のカム線図ある。
【図21】第3実施形態の第1〜3押圧ロッドのカム回転角度に対する変位量を示すグラフである。
【図22】第3実施形態の動作説明図であり、(A)は第1押圧ロッドがカム面の0°位置にある場合を示す図であり、(B)は第1押圧ロッドがカム面の21°位置にある場合を示す図である。
【図23】第3実施形態の動作説明図であり、(C)は第1押圧ロッドがカム面の30°位置にある場合を示す図であり、(D)は第1押圧ロッドがカム面の39°位置にある場合を示す図である。
【図24】第3実施形態の動作説明図であり、(E)は第1押圧ロッドがカム面の66°位置にある場合を示す図であり、(F)は第1押圧ロッドがカム面の75°位置にある場合を示す図である。
【図25】本発明の変形例の要部を示す平面図である。
【図26】本発明の他の変形例の要部を示す断面図である。
【図27】本発明の他の変形例の要部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0144】
1,1A,1B…ダイアフラムポンプ、2,2A…ベースブロック、3…保持リングブロック、4…ガイドブロック、5…取付ブロック、6…駆動ユニット、8,8A…ダイアフラム、10…ケースブロック、11…皿バネ、12…押圧部材、21,132A…ダイアフラム密着面である凹部形成面、21A…ダイアフラム密着面、22…ポート、23,23A〜23E…第1凹部、24,24A〜24E…第2凹部、25,25A〜25E…第3凹部、27…ノズル部材、30…液移送用チューブ、33…空間、43,43A〜43E…第1ガイド孔、44,44A〜44E…第2ガイド孔、45,45A〜45E…第3ガイド孔、51…カム、52…スプラインボス、53…スプライン軸、56…スペーサリング、57…皿バネ、61…出力軸、73…第1押圧ロッド、74…第2押圧ロッド、75…第3押圧ロッド、78…コイルバネ、79…ボール、81…流路ブロック密着面、82…押圧ロッド当接面、83〜85…凸部、130…流路ブロック、131…ベース部材、132…当接部材、151…第1カム溝、152…第2カム溝、153…第3カム溝、280…流体流路、281〜284…連通溝、511,511A〜511G…カム面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路ブロックと、この流路ブロックに密着して設けられたダイアフラムと、このダイアフラムを往復駆動する駆動手段とを備えるダイアフラムポンプであって、
前記流路ブロックおよびダイアフラムで区画形成され、かつ、液体の吸入流路および吐出流路を連通する少なくとも3本以上の液体流路が設けられ、
前記流路ブロックは、前記ダイアフラムが密着されるダイアフラム密着面の中心軸部分に吸入流路または吐出流路の一方が形成され、前記ダイアフラム密着面の外周側に吸入流路または吐出流路の他方が形成され、
各液体流路の途中には、前記吸入流路に連通された吸入側バルブ室と、前記吐出流路に連通された吐出側バルブ室と、吸入側バルブ室および吐出側バルブ室の間に形成されて各バルブ室に連通された計量室とがそれぞれ設けられ、
前記駆動手段は、
前記吸入側バルブ室に対しダイアフラムを挟んで配置されて前記吸入側バルブ室に対応して設けられた吸入側押圧部材と、
前記吐出側バルブ室に対しダイアフラムを挟んで配置されて前記吐出側バルブ室に対応して設けられた吐出側押圧部材と、
前記計量室に対しダイアフラムを挟んで配置されて前記計量室に対応して設けられた計量室用押圧部材と、
前記各押圧部材の駆動を制御する押圧部材駆動制御部と、を備えて構成され、
前記押圧部材駆動制御部は、回転駆動源と、この回転駆動源で回転されるカムと、前記各押圧部材をカムのカム面に当接させる付勢手段とを有するとともに、
前記吸入側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックに密着するまで動かして前記吸入側バルブ室を密閉する吸入側バルブ密閉動作、
前記吐出側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの吐出側バルブ室に対応する部分を流路ブロックに密着するまで動かして前記吐出側バルブ室を密閉する吐出側バルブ密閉動作、
前記吸入側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動して流路ブロックに密着しているダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックから離して前記吸入側バルブ室を開放する吸入側バルブ開放動作、
前記吐出側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動して流路ブロックに密着しているダイアフラムの吐出側バルブ室に対応する部分を流路ブロックから離して前記吐出側バルブ室を開放する吐出側バルブ開放動作、
計量室用押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの計量室に対応する部分を流路ブロックに近づけて前記計量室内の容積を徐々に小さくする容積減少動作、および、
計量室用押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動してダイアフラムの計量室に対応する部分を流路ブロックから遠ざけて計量室の容積を徐々に大きくする容積増大動作を、
前記カムを回転駆動源で回転させて各押圧部材をカム面に追従して往復駆動させることで、各押圧部材毎に設定された所定のタイミングで実行させることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記各バルブ室用押圧部材および計量室用押圧部材は、前記カム面側の端面に形成された略半球状の凹部と、前記凹部に配置されて前記カム面に当接可能なボールとを有し、
前記カム面とボールとの摩擦係数に比べて、ボールと前記凹部との摩擦係数が小さく設定されていることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記押圧部材駆動制御部は、
前記計量室に対応して設けられた計量室用押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの計量室に対応する部分を流路ブロックに密着させて計量室を密閉し、かつ、吸入側バルブ室に対応して設けられた吸入側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動してダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックから離して吸入流路から吸入側バルブ室に液体を吸入する吸入工程と、
吐出側バルブ室に対応して設けられた吐出側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの吐出側バルブ室に対応する部分を流路ブロックに密着させて吐出側バルブ室を密閉し、かつ、前記計量室用押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動してダイアフラムの計量室に対応する部分を流路ブロックから離して計量室の容積を増大させるとともに、吸入側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロック側に移動させて吸入側バルブ室の容積を減少させて吸入側バルブ室から計量室に液体を移送する第1移送工程と、
前記吐出側バルブ室を密閉した状態のまま、前記吸入側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックに密着させて吸入側バルブ室を密閉し、液体を吸入側バルブ室および吐出側バルブ室間に区画して計量する計量工程と、
前記吸入側バルブ室を密閉した状態のまま、前記計量室用押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動して計量室の容積を減少させるとともに、吐出側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動して吐出側バルブ室の容積を増大させて計量室から吐出側バルブ室に液体を移送する第2移送工程と、
前記計量室を密閉し、吐出側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動して吐出側バルブ室の容積を減少させて吐出側バルブ室から吐出流路に液体を移送する吐出工程とを実行させることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項4】
請求項3に記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記押圧部材駆動制御部は、計量室を密閉した状態で、吸入側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動して吸入流路から吸入側バルブ室に液体を吸入するとともに、吐出側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動して吐出側バルブ室から吐出流路に液体を移送することで吸入工程および吐出工程を同時に実行させることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記押圧部材駆動制御部は、
前記吐出側バルブ室を密閉した状態のまま、吸入側バルブ室に対応して設けられた吸入側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動してダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックから離して吸入流路と計量室とを連通させ、前記計量室に対応して設けられた計量室用押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動してダイアフラムの計量室に対応する部分を流路ブロックから離して計量室の容積を増大させて吸入流路から吸入側バルブ室を介して計量室に液体を吸入する吸入工程と、
前記吐出側バルブ室を密閉した状態のまま、前記吸入側押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動してダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックに密着させて吸入側バルブ室を密閉し、液体を吸入側バルブ室および吐出側バルブ室間に区画して計量する計量工程と、
前記吸入側バルブ室を密閉した状態のまま、吐出側押圧部材を流路ブロックから離れる方向に移動して計量室と吐出流路とを連通させ、前記計量室に対応して設けられた計量室用押圧部材を流路ブロックに近づく方向に移動して計量室の容積を減少させて計量室から吐出側バルブ室を介して吐出流路に液体を移送する吐出工程と、
を実行させることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれかに記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記押圧部材駆動制御部は、前記吐出工程を、吐出量を徐々に増大する吐出量増大工程と、吐出量を徐々に減少する吐出量減少工程とを備えて構成し、
前記複数の吐出側バルブ室からの吐出工程において、いずれか1つの吐出側バルブ室における吐出工程が吐出量増大工程である場合に、他の1つの吐出側バルブ室における吐出工程を吐出量減少工程とすることで、吐出量を一定量に維持することを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記各流体流路に形成された吸入側バルブ室、計量室、吐出側バルブ室は、互いにダイアフラム密着面の中心軸を中心とする円周方向に第1設定角度毎ずれて形成され、かつ前記中心軸からの寸法が異なるように形成され、
前記各流体流路に形成された吸入側バルブ室同士、計量室同士、吐出側バルブ室同士は、互いにダイアフラム密着面の中心軸を中心とする円周方向に第2設定角度毎ずれて形成され、
前記各バルブ室および計量室はダイアフラム密着面の中心軸から螺旋状に配置されていることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項8】
請求項7に記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記第1設定角度は、30°であり、前記第2設定角度は72°であり、前記流体流路、吸入側バルブ室、計量室、吐出側バルブ室は5セット設けられていることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記各流体流路に形成された吸入側バルブ室、計量室、吐出側バルブ室は、互いにダイアフラム密着面の中心軸を中心とする円周方向に直線状に形成され、かつ前記中心軸からの寸法が異なるように形成され、
前記各流体流路に形成された吸入側バルブ室同士、計量室同士、吐出側バルブ室同士は、互いにダイアフラム密着面の中心軸を中心とする円周方向に第2設定角度毎ずれて形成され、
前記各バルブ室および計量室はダイアフラム密着面の中心軸から放射線状に配置されていることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記流路ブロックのダイアフラムが密着されるダイアフラム密着面には凹溝が形成され、
前記ダイアフラムの流路ブロックに密着される流路ブロック密着面は平面状に形成され、
前記液体流路は、流路ブロックの凹溝およびダイアフラムの流路ブロック密着面で区画形成されていることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項11】
請求項1から請求項9のいずれかに記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記流路ブロックのダイアフラムが密着されるダイアフラム密着面は平面状に形成され、
前記ダイアフラムの流路ブロックに密着される流路ブロック密着面には凹溝が形成され、
前記液体流路は、流路ブロックのダイアフラム密着面およびダイアフラムの凹溝で区画形成されていることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記凹溝は、吸入側バルブ室、計量室、吐出側バルブ室をそれぞれ区画形成する吸入側バルブ室用凹部、計量室用凹部、吐出側バルブ室用凹部と、前記吸入側バルブ室用凹部および前記吸入流路を連通する連通溝と、前記吐出側バルブ室用凹部および吐出流路を連通する連通溝と、各バルブ室用凹部および計量室用凹部間を連通する連通溝とを備えて構成されていることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記カムのカム面は、カムの回転軸に対して直交する平面を備え、この平面には、カムの回転中心軸を中心とする同心円状に配置された3本のカム溝が形成されていることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載のダイアフラムポンプと、このダイアフラムポンプの前記吸入流路に液体を供給する液体供給手段と、前記吐出流路に設けられた吐出ノズルと、前記ダイアフラムポンプの駆動手段を制御するコントローラとを備えて構成され、
前記液体供給手段から供給される液体を前記ダイアフラムポンプを介して吐出ノズルから吐出して電子部品を製造することを特徴とする電子部品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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