説明

ダイナミックガンマ補正回路

【目的】 種々入力画像に応じて最適なガンマ補正値を得ることができ(ガンマ特性を可変することができ)、画像のコントラスト等を常に良好な状態とする。
【構成】 入力映像信号による画像をディスプレイに表示する際、同入力映像信号をディジタル変換したデータに基づいてガンマ補正出力を得るガンマ補正回路で、このA/D変換されたデータの上位所定ビット数をデコードして入力映像信号による画像の階調レベルを分割可能とするデコーダ部4と、このデコードにより分割された各階調レベル領域にある画素数をカウントする第1乃至第4のカウンタ部5,6,7,8と、予め複数のガンマ補正パターンを記憶し、上記A/D変換されたデータをアドレスとするとともに、上記カウントされたデータを上位ビットアドレスとし、上記階調レベルの分布状態に応じたガンマ補正パターンに切り替え可能とするガンマ補正ROM部9とを備え、上記入力映像信号の1フレームあるいは数フレーム毎にガンマ補正を可変可能とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は液晶プロジェクタ等に用いられるガンマ補正回路に係り、特に詳しくは入力映像信号による画像の階調レベル分布状態に応じて最適なガンマ補正を可能とするダイナミックガンマ補正回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のガンマ補正回路は、例えば図9に示す構成をしており、入力映像信号(ビデオ信号)をディジタル変換するA/D変換回路1と、予め液晶ディスプレイのガンマ特性に対応するガンマ補正用のデータを記憶し、A/D変換回路1からのディジタル信号をアドレスとするガンマ補正ROM部2と、このガンマ補正ROM部2から読み出されたデータをアナログ変換して液晶ディスプレイのガンマ補正出力とするD/A変換部3とを備え、上記ガンマ補正ROM部2をテーブルとして入力映像信号に応じて液晶ディスプレイの階調特性を補正することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記入力映像による画像が自然画である場合、その自然画は例えば図10に示す階調レベルの分布状態で、色々な階調レベルに渡っているだけなく、例えば図11に示す階調レベル分布を有するものもある。それに対して、上記ガンマ補正回路によるガンマ値がCRTガンマ補正と同じ値に合わせられており、例えば図10に示す階調レベル分布を標準とした画像でコントラスト、明るさを調整すると、例えば図11に示す階調レベル分布を有する画像に対しては黒部分が浮き、コントラストがなくなってしまうという問題点があった。すなわち、上記図10に示す階調レベル分布を有する画像はその分布が明部から暗部に広がっており、コントラストのとれた画像であるのに対して、上記図11に示す階調レベルを有する画像はその分布が明るい方に片寄っており、コントラストが小さい黒が浮いた画像になってしまうからである。
【0004】この場合、例えば当該液晶ディスプレイ装置のブライトを下げてコントラストを調整し、つまりガンマ特性を変えればよいが、種々画像に応じて変えなければならず、煩わしくて面倒である。
【0005】この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は種々入力画像に応じて最適なガンマ補正値を得ることができ(ガンマ特性を可変することができ)、画像のコントラスト等を常に良好な状態とすることができるようにしたダイナミックガンマ補正回路を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この発明は、入力映像信号による画像を液晶ディスプレイに表示する際、同入力映像信号をディジタル変換したデータに基づいてガンマ補正出力を得るガンマ補正回路で、上記入力映像信号をディジタル変換するA/D変換手段と、このA/D変換されたデータの上位所定ビット数をデコードして上記入力映像信号による画像の階調レベル領域を分割可能とするデコーダ手段と、このデコードにより分割された各階調レベル領域にある画素の数をカウントするカウンタ手段と、予め複数のガンマ補正パターンを記憶し、上記A/D変換されたデータをアドレスとするとともに、上記カウント結果により選択されたパターンデータを上位ビットアドレスとし、上記階調レベルの分布状態に応じたガンマ補正パターンに切り替え可能とするガンマ補正記憶手段と、このガンマ補正記憶手段から読み出されたデータをアナログ変換してガンマ補正出力とするD/A変換手段とを備え、上記入力映像信号の1フレームあるいは数フレーム毎にガンマ補正を可変可能としたことを要旨とする。
【0007】
【作用】上記構成としたので、上記デコーダ手段によって入力映像信号による画像の階調レベルが所定領域に分割され、この分割された所定階調レベル領域にある画素数が上記カウンタ手段で検出され、このカウント数の検出により入力映像信号による画像の階調レベルの分布状態が検出される。
【0008】また、上記カウント数により選択されたパターンデータがガンマ補正ROM手段の上位アドレスとされることから、同ガンマ補正ROM手段に記憶されている1つのガンマ補正パターンが選択され、かつ上記入力映像信号をA/D変換したデータがそのガンマ補正ROM手段のアドレスとされることから、その選択されたガンマ補正パターンのデータが読み出されて当該ガンマ補正出力とされる。
【0009】したがって、入力映像信号による画像の階調レベル分布状態に応じたガンマ補正を行うことができ、例えば黒浮き画像の場合その黒浮きを抑えてコントラストの大きい画像を得ることができる。
【0010】
【実施例】以下、この発明の実施例を図1乃至図8を参照して説明する。なお、図中、図9と同一部分には同一符号を付し重複説明は省略する。
【0011】図1において、このダイナミックガンマ補正回路は、入力映像信号をディジタル変換するA/D変換部1、このA/D変換されたデータ(例えば8ビット)の上位所定ビット数(例えば2ビット)をデコード(2ビット/4ビット)して入力映像信号による画像の階調レベルを分割可能とするデコーダ部4と、このデコードにより分割された各階調レベル領域にある画素数をカウントし、フレーム同期信号(入力映像信号による)でリセットされる第1乃至第4のカウンタ部5,6,7,8と、予め複数のガンマ補正パターンを記憶し、上記A/D変換されたデータをアドレスとするとともに、上記カウントされた数の基準数以上のものをデータとする上位ビットアドレスとし、上記階調レベルの分布状態に応じたガンマ補正パターンに切り替え可能とするガンマ補正ROM部9と、このガンマ補正ROM部9から読み出されたデータをアナログ変換してガンマ補正出力とするD/A変換部3とを備え、上記入力映像信号の1フレームあるいは数フレーム毎にガンマ補正を行うようになっている。
【0012】次に、上記構成のダイナミックガンマ補正回路の動作を図2乃至図8を参照して詳しく説明すると、入力映像信号による画像を液晶ディスプレイに表示するに際して、同入力映像信号がA/D変換回路1でディジタルに変換され、このディジタル変換されたデータがガンマ補正用ROM部9のアドレスとされる。
【0013】このとき、上記ディジタル変換されたデータの上位2ビット(00,01,10,11)がデコーダ部4に入力されて4ビットの信号に変換され、この変換された信号が第1乃至第4のカウンタ部5,6,7,8に入力されてカウントされる。
【0014】この場合、入力映像信号の1フレームあるいは数フレーム毎に、第1のカウンタ部5において上記ディジタル変換されたデータの上位2ビット00の信号(0〜63階調レベル領域にある画素数)がカウントされ、第2のカウンタ部6において上記ディジタル変換されたデータの上位2ビット01の信号(64〜127階調レベル領域にある画素数)がカウントされ、第3のカウンタ部7においては上記ディジタル変換されたデータの上位2ビット10の信号(128〜191階調レベル領域にある画素数)がカウントされ、第4のカウンタ部8において上記ディジタル変換されたデータの上位2ビット11の信号(192〜255階調レベル領域にある画素数)がカウントされる。そして、上記第1乃至第4のカウンタ部5,6,7,8によって得られたカウント値が予め設定されている値を越えている場合には出力がH(1)とされ、越えていない場合には出力がL(0)とされ、これら出力が上記ディジタル変換されたデータと同じく、ガンマ補正ROM部9のアドレス(上位ビット)とされる。すなわち、上記カウントされた値によってガンマ補正ROM部9に記憶されている複数ガンマ補正パターンが選択され、この選択されたガンマ補正パターンのデータが上記ディジタル変換されたデータによって読み出される。このようにして第1乃至第4のカウンタ部5,6,7,8によって入力映像信号による画像の階調レベル分布状態が検出され、この分布状態に応じてガンマ補正ROM部9から読み出された8ビットのデータがD/A変換部3に入力されてアナログ変換され、このアナログ変換された信号がガンマ補正出力とされる。
【0015】ここで、上記第1乃至第4のカウンタ部5,6,7,8の出力は、例えば液晶パネルの画素数が640×480(=307200)である場合、上記4つの階調レベル領域にある画素数が平均の76800(307200/4)個より極端に少なく例えば10%以下の数値より小さいと論理レベルL(0)となり、その数値より大きいと論理レベルH(1)となる。また、上記ディジタル変換されたデータの上位2ビット(00),(01),(10),(11)の組合せによる(0000)〜(1111)の16通りのガンマ補正パターンをガンマ補正部9に記憶しておくことになる。
【0016】上記ガンマ補正パターンについて説明すると、図2に示すように、入力映像信号による画像が暗く、1〜63階調レベル領域がHで、それ以外がLである場合((0001)の場合)には図3の波線に示すように明るい方にシフトするガンマ値のガンマ補正データで構成したパターンになっている。また、図4および図5R>5に示すように、1〜63階調レベル領域および192〜255階調レベル領域がLで、64〜127階調レベル領域および128〜191階調レベル領域がHであり(0110)、入力映像信号による画像の黒部分が浮いている場合には黒浮きを抑えてコントラストを大きくするガンマ値のガンマ補正データで構成したパターンになっている。さらに、図6および図7に示すように、192〜255階調レベル領域がHで、それ以外がLであり(1000)、入力映像信号による画像が明る過ぎる部分がある場合には明るい部分をシフトするガンマ値のガンマ補正データで構成したパターンになっている。なお、各階調レベル領域がすべてLである場合((0000)の場合)は存在しないためスルーとするパターン(禁止)になっており、各階調レベル領域がすべてHである場合((1111)の場合)は補正不用としてスルーとするパターンになっている。
【0017】上記ダイナミックガンマ補正回路による補正結果の一例を説明すると、例えば図11に示す階調レベル分布を有している画像の場合黒の部分が浮いているが、その黒の浮きが少なくなり、コントラストが大きい階調レベル分布(図8に示す)を有する画像を得ることができる。
【0018】なお、上記実施例では、入力映像信号による画像の階調レベル分布状態を検出する際、4つの階調レベル領域毎に検出しているが、さらに分割した領域毎に検出し、さらにガンマ補正ROM部9に記憶しておくガンマ補正パターンをより多し、より最適なガンマ補正を行うようにしてもよい。
【0019】このように、入力映像信号による画像の階調レベル分布状態を1フレームあるいは数フレーム毎に検出し、かつ所定階調レベル毎に検出し、この階調レベルに最適なガンマ補正パターンに切り替え、この切り替えたガンマ補正パターンのデータによって上記画像のガンマ補正を行うようにしたので、ガンマ補正の結果得られる画像の階調レベル分布を最適なものとすることができ、例えば黒浮き画像の場合その黒浮きを抑え、コントラストを大きくすることができ、またフレームメモリ等を用いることなく、デコーダおよびカウンタの簡単な回路を付加するだけで済むため、安価に済ませられる。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、この発明のダイナミックガンマ補正回路によれば、入力映像信号をディジタル変換するデータの上位所定ビット数をデコードして入力映像信号による画像の階調レベルを分割可能とするデコーダ部と、このデコードにより分割された各階調レベル領域にある画素数をカウントするカウンタ手段と、予め複数のガンマ補正パターンを記憶し、上記ディジタル変換されたデータをアドレスとするとともに、上記カウントされた結果得られるパターンデータを上位ビットアドレスとし、上記階調レベルの分布状態に応じたガンマ補正パターンに切り替え可能とするガンマ補正ROM部とを備え、このガンマ補正ROM部から読み出されたデータをアナログ変換してガンマ補正出力とし、上記入力映像信号の1フレームあるいは数フレーム毎にガンマ補正を可変可能としたので、種々入力画像に応じて最適なガンマ補正値を得ることができ(ガンマ特性を可変することができ)、例えば黒浮き画像の場合その黒浮きを抑えてコントラストを大きくすることができ、つまり画像のコントラスト等を自動的に良好な状態とすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示すダイナミックガンマ補正回路の概略的ブロック線図である。
【図2】図1に示すダイナミックガンマ補正回路の動作を説明するための画像の階調レベル分布の概略的グラフ図である。
【図3】図1に示すダイナミックガンマ補正回路の動作を説明するための概略的グラフ図である。
【図4】図1に示すダイナミックガンマ補正回路の動作を説明するための画像の階調レベル分布の概略的グラフ図である。
【図5】図1に示すダイナミックガンマ補正回路の動作を説明するための概略的グラフ図である。
【図6】図1に示すダイナミックガンマ補正回路の動作を説明するための画像の階調レベル分布の概略的グラフ図である。
【図7】図1に示すダイナミックガンマ補正回路の動作を説明するための概略的グラフ図である。
【図8】図1に示すダイナミックガンマ補正回路の動作を説明するための画像の階調レベル分布の概略的グラフ図である。
【図9】従来のガンマ補正回路の概略的ブロック線図である。
【図10】自然画の階調レベル分布を説明するための概略的グラフ図である。
【図11】図9に示すガンマ補正回路の動作を説明するための概略的グラフ図である。
【符号の説明】
1 A/D変換部
3 D/A変換部
4 デコーダ部
5 第1のカウンタ部
6 第2のカウンタ部
7 第3のカウンタ部
8 第4のカウンタ部
9 ガンマ補正ROM部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 入力映像信号による画像を液晶ディスプレイに表示する際、同入力映像信号をディジタル変換したデータに基づいてガンマ補正出力を得るガンマ補正回路で、前記入力映像信号をディジタル変換するA/D変換手段と、該A/D変換されたデータの上位所定ビット数をデコードして前記入力映像信号による画像の階調レベルを分割可能とするデコーダ手段と、該デコードにより分割された各階調レベル領域にある当該画素数をカウントするカウンタ手段と、予め複数のガンマ補正パターンを記憶し、前記A/D変換されたデータをアドレスとするとともに、前記カウントした結果のパターンデータを上位ビットアドレスとし、前記階調レベルの分布状態に応じたガンマ補正パターンに切り替え可能とするガンマ補正記憶手段と、該ガンマ補正記憶手段から読み出されたデータをアナログ変換してガンマ補正出力とするD/A変換手段とを備え、前記入力映像信号の1フレームあるいは数フレーム毎にガンマ補正を可変可能としたことを特徴とするダイナミックガンマ補正回路。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開平6−178153
【公開日】平成6年(1994)6月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−351206
【出願日】平成4年(1992)12月7日
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)