説明

ダイナミックフォーカス電圧調整回路

【目的】 ブラウン管におけるダイナミックフォーカスに必要な水平及び垂直周期のパラボラ電圧の走査期間における各レベルを水平帰線期間及び垂直帰線期間それぞれのレベルを変化させることによりフォーカス電圧を調整する。
【構成】 水平及び垂直各パラボラ波の走査期間における各レベルはディジタルレベルとしてROM4、5に記憶されている。走査期間の前記ディジタルレベルは入力される水平同期信号1に従い、水平ごと、垂直ごと前記ROMより出力される。水平及び垂直の各帰線期間はコントロール部6が前記ROMを制御して、その帰線期間レベルを調整する。前記走査期間レベルと帰線期間レベルとの合成が水平及び垂直の各パラボラ波となり、帰線期間レベルが変わることで各パラボラ波の平均レベルが変化する。各パラボラ波はFBTよりの直流電圧に重なり、前記帰線期間レベル調整によりフォーカス電圧を変化することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ブラウン管におけるいわゆるダイナミックフォーカスにおいて、該ダイナミックフォーカスに必要な水平および垂直周期のパラボラ電圧の走査期間における各レベルを水平帰線期間および垂直帰線期間それぞれのレベルを変化させることによりフォーカス電圧を変えるようにしたダイナミックフォーカス電圧調整回路に関する。
【0002】
【従来の技術】図4(A)は従来のダイナミックフォーカス電圧生成の要部ブロック図、図4(B)はダイナミックフォーカス電圧を示す図である。以下、図4につき概略説明する。図4(A)において、垂直パラボラ電圧生成回路41および水平パラボラ電圧生成回路42で生成した垂直パラボラ電圧と水平パラボラ電圧は合成回路43で合成し、出力回路44で所定電圧に増幅後、コンデンサC1を介してブラウン管45のフォーカス電極へ印加される。一方、水平出力回路と接続されたフライバックトランス(FBT)の高圧巻線(N2)からは高圧の他、フォーカス電圧(直流)が得られる。このフォーカス電圧は調整用ボリューム(VR1)を介してブラウン管45のフォーカス電極へ印加される。
【0003】従って、ブラウン管45のフォーカス電極にはVR1で調整した直流フォーカス電圧VfとC1を介した前記垂直および水平のパラボラ電圧との合成電圧が印加される。この合成電圧の原理波形図は同図(B)のようになる。図示のように、画面中心から垂直および水平両方向とも離れる程(周辺部)、フォーカス電圧をパラボラ的に高くする。これにより、画面中心部と周辺部全域のフォーカスを適正にすることができる。一般に、パラボラ電圧の波形は固定にし、直流電圧VfをVR1で個々に調整して最適のフォーカス状態に設定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】適正フォーカス電圧は、高圧値と一定の関係があり(例えば、30〜40%)、電圧としては高い部類に属する。このような高い電圧をボリュームで調整する場合、微調整の段階では相当の注意力をもって調整する必要があった。特に、パラボラ波形を変えて調整する方法を併用した場合、変化して欲しくない部分もフォーカスが変わってしまい、これを補正するために前記ボリュームの再調整を要することになり、調整が容易ではない。本発明は、フォーカス調整をより容易なものとするため、垂直および水平各パラボラ波の帰線期間のレベルを変えることでフォーカス調整するようにしたダイナミックフォーカス電圧調整回路を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、フライバックトランスで生成した直流電圧に、ディジタル的に生成した水平周期のパラボラ電圧と垂直周期のパラボラ電圧とを重畳してなる電圧をフォーカス電圧としたダイナミックフォーカス回路において、ディジタル的に生成した前記水平周期のパラボラ電圧および垂直周期のパラボラ電圧における水平帰線期間および垂直帰線期間それぞれを所要レベルデータにしたダイナミックフォーカス電圧調整回路を提供するものである。
【0006】
【作用】水平および垂直各パラボラ波の走査期間における各レベルはディジタルレベルとしてそれぞれのROMに記憶されている。走査期間の前記ディジタルレベルは入力される水平同期信号に従い、水平ごと、垂直ごと前記ROMより出力される。水平および垂直の各帰線期間は外部から前記ROMを制御して、その出力レベルを可変する。前記走査期間レベルと帰線期間レベルとの合成が水平および垂直の各パラボラ波となり、帰線期間レベルが変わることで各パラボラ波の平均レベルが変化する。又は、換言すれば、平均レベルに対する走査期間レベルが変化する。この平均レベルはフライバックトランスよりの直流電圧に重なる(一致する)ので、前記帰線期間レベルを可変することでフォーカス電圧を変化することができることになる。
【0007】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明によるダイナミックフォーカス電圧調整回路を説明する。図1は本発明によるダイナミックフォーカス電圧調整回路の一実施例を示す要部ブロック図、図2は他の実施例を示す要部ブロック図である。図1において、1は水平同期信号、2は垂直同期信号、3は水平同期信号1から水平用クロックと垂直用クロックとを出力するPLL(位相同期回路)、4は水平パラボラ波レベルを予め書き込んである水平用ROM、5は垂直パラボラ波レベルを予め書き込んである垂直用ROM、6は水平用ROM4と垂直用ROM5とを制御して、それぞれの帰線期間レベルを可変するコントロール部、7と8は水平用ROM4と垂直用ROM5それぞれのディジタル出力レベルをアナログレベルに変換する水平用D/A変換部(7)と垂直用D/A変換部(8)、9と10は前記の各D/A変換部よりの信号から低域成分を通過させる水平用低域通過フィルタ(LPF)(9)と垂直用低域通過フィルタ(10)、11は前記各LPFよりの水平パラボラ波と垂直パラボラ波とを合成する合成部、12は合成されたパラボラ波を所定のレベルに増幅する増幅部である。また、図2において、図1と同等のものは同一符号を付し、13はROM4およびROM5よりのディジタルデータを合成する合成部、14は合成部13よりの合成ディジタルデータをアナログに変換するD/A変換部、15はD/A変換部よりの信号から低域成分を通過させるLPF、16は合成されたパラボラ波を所定のレベルに増幅する増幅部である。
【0008】次に、本発明の動作について説明する。最初に、図1につき説明する。PLL3から水平用ROM4と垂直用ROM5とへ出力される水平用クロックおよび垂直用クロックは、水平同期信号1に同期した信号であり、ブラウン管上の電子ビーム位置を表している。各クロック信号に基づき、水平用ROM4および垂直用ROM5は予め書き込まれた対応する走査期間の水平パラボラデータおよび垂直パラボラデータをそれぞれ出力する。
【0009】一方、コントロール部6は入力される水平同期信号1および垂直同期信号2それぞれから定まる水平帰線期間および垂直帰線期間におけるパラボラ波レベルを設定する。この設定はコントロール部6が水平用ROM4および垂直用ROM5を制御することにより行う。このように、走査期間はクロック信号に基づいたレベル、そして帰線期間はコントロール部6で設定したレベルの水平パラボラ波および垂直パラボラ波が各ROMから出力される。この帰線期間のレベルを変えたときの波形例を図3(A)、(B)に示す。この波形は垂直、水平いずれにもはてはまるものである。つまり、図中の周期Tが垂直の場合は1垂直周期となり、水平の場合は1水平周期になる。また、帰線期間レベルは正負の範囲で可変する。(A)が負方向、(B)が正方向に設定した場合を示し、この範囲内でレベルを可変する。このレベル可変で平均レベルが変化する。(A)の平均レベルV1と(B)の平均レベルV2とは相違し、V2>V1である。これを逆に、平均レベルから各走査期間の各レベルをみると(A)の方が(B)より小さな値となる。この平均レベルは後述のように、フライバックトランスよりの直流電圧に重なるので、ダイナミック的なフォーカス電圧が変化することになる。
【0010】以上説明の各ROM出力は各D/A変換部(7、8)でアナログ電圧に変換する。しかし、このアナログ電圧は各瞬時のディジタルレベルをアナログに変換するため階段状に変化するパラボラである。そこで、各LPF(9、10)により該階段状の高周波成分を除去して低周波成分のみを取り出して本来の滑らかなパラボラ波にする。各LPF(9、10)よりの水平パラボラと垂直パラボラとは合成部11で合成後、増幅部12で所定レベルに増幅する。増幅部12よりの合成パラボラ波はコンデンサC1を介し、直流電圧調整ボリュームVR1を介したフライバックトランスよりの直流電圧に重畳する。この重畳は前記合成パラボラ波の平均レベルが該直流電圧と一致するように重なる。
【0011】次に、図2につき説明する。図2の基本部分は図1と同じであり、水平パラボラ波と垂直パラボラ波との合成をROM出力段階で行い(合成部13)、合成したパラボラ波をD/A変換(D/A変換部14)、高周波除去(LPF15)および増幅(増幅部16)処理する方法である。増幅部16より出力される電圧は図1の場合と同一になる。本実施例の場合、D/A変換部とLPFが1系統ですみ、ブロック構成をシンプル化できるという特徴を有する。
【0012】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ブラウン管におけるダイナミックフォーカスにおける水平および垂直の各パラボラ波のレベルを、それぞれの帰線期間レベルを可変することで変化させることができるので、フライバックトランスよりの直流フォーカス電圧をボリュームにより変化する方法と併用することにより画面全体につき微細な調整をすることができる。特に、水平および垂直の各パラボラ自体をディジタル的に可変するような方法と本発明による方法とを併用した場合、例えば、パラボラ波形を変えてもその平均レベル(=直流フォーカス電圧)から画面中心部のレベルを帰線期間レベルを変えることで前記パラボラ波形を変える以前と同じ電圧値に維持することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるダイナミックフォーカス電圧調整回路の一実施例を示す要部ブロック図である。
【図2】本発明によるダイナミックフォーカス電圧調整回路の他の実施例を示す要部ブロック図である。
【図3】帰線期間レベルを変化したときのパラボラ波形の例を示す図である。
【図4】(A)は従来のダイナミックフォーカス電圧調整回路の一実施例を示す要部ブロック図、(B)は図4を説明するためのダイナミックフォーカス電圧を示す波形図である。
【符号の説明】
1 水平同期信号
2 垂直同期信号
3 PLL(位相同期回路)
4 水平用ROM
5 垂直用ROM
6 コントロール部
7 水平用D/A変換部
8 垂直用D/A変換部
9 水平用低域通過フィルタ(LPF)
10 垂直用低域通過フィルタ(LPF)
11 合成部
12 増幅部
13 合成部
14 D/A変換部
15 低域通過フィルタ(LPF)
16 増幅部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 フライバックトランスで生成した直流電圧に、ディジタル的に生成した水平周期のパラボラ電圧と垂直周期のパラボラ電圧とを重畳してなる電圧をフォーカス電圧としたダイナミックフォーカス回路において、ディジタル的に生成した前記水平周期のパラボラ電圧および垂直周期のパラボラ電圧における水平帰線期間および垂直帰線期間それぞれを所要レベルデータにしたことを特徴とするダイナミックフォーカス電圧調整回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平6−164969
【公開日】平成6年(1994)6月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−312366
【出願日】平成4年(1992)11月20日
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)