説明

ダクトの測定口構造

【課題】ダクトの形状や太さに関わらず、容易に設けることができる測定口構造を提供する。
【解決手段】センサーをダクト1内に挿入するための測定口構造であって、ダクト1の側面に形成された開口部10と、開口部10に取り外し自在に取り付けられる、弾性材料で構成された封止部材11からなり、封止部材11の周面には、開口部10の縁部を受容する溝14が連続して形成されている。封止部材11の周面に連続して形成された溝14に開口部10の縁部を受容させて、封止部材11を開口部10に取り付けることにより、測定口構造を塞いだ状態にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風速、圧力、温度等を測定するセンサーをダクト内に挿入するための測定口構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物における空気ダクト(以下、単に「ダクト」という)の設置時や改修時などでは、風速、圧力、温度等を測定するセンサーをダクト内に挿入し、ダクト内の通風の状態を確認する作業が行われる。このため、ダクトの側面には、センサーをダクト内に挿入するための測定口構造が設けられている。
【0003】
従来、ダクトの測定口構造として、ダクトの側面に漏斗状の筒体を取り付けたものが知られている(例えば特許文献1参照)。また、ダクトの側面にパッキンを取り付け、該パッキンに放射状の切込みを設ける構成も知られている(例えば特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭57−32417号公報
【特許文献2】実願昭54−132768号(実開昭56−58414号)のマイクロフィルム
【特許文献3】実用新案登録第2547749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記筒体の底面は平面に形成されている。このため、円筒形状のいわゆる丸ダクトに筒体を取り付ける場合、ダクトの側面の曲率に合わせた専用の台座を用いる必要があった。また、太さの異なる丸ダクト毎に、その曲率に合った台座を用意しなければならなかった。更に、丸ダクトに測定口構造を設ける場合、ダクトに下孔を開口させる工程に加えて、台座を取り付ける工程、筒体を取り付ける工程の3工程が必要であり、作業が煩雑であった。
【0006】
一方、測定口構造は、空調設備の試運転時や改修時などで使用された後は、使用頻度がさほど多くはない。このため、ほとんど使用されないにも関わらず、ダクトの側面に筒体が突出した状態で取り付けられている従来の測定口構造は、意匠的にも好ましくない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ダクトの形状や太さに関わらず、容易に設けることができる測定口構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、センサーをダクト内に挿入するための測定口構造であって、ダクトの側面に形成された開口部と、該開口部に取り外し自在に取り付けられる、弾性材料で構成された封止部材からなり、前記封止部材の周面には、前記開口部の縁部を受容する溝が連続して形成されている、測定口構造が提供される。
【0009】
この測定口構造にあっては、封止部材の周面に連続して形成された溝に開口部の縁部を受容させて、封止部材を開口部に取り付けることにより、測定口構造を塞いだ状態にすることができる。この場合、封止部材は弾性材料で構成されているため、丸ダクトのようにダクトの側面が曲面であっても、封止部材が変形することにより、測定口構造を塞いだ状態を維持できる。また、封止部材を弾性変形させることにより、ダクト側面の開口部から封止部材を容易に取り外すことができる。そして、封止部材を取り外した状態で、開口部を通じてセンサーをダクト内に挿入することが可能となる。
【0010】
この測定口構造において、前記封止部材の中央から周面に達しない位置まで放射状の切り込みが設けられることにより、前記封止部材の周囲から中央に伸びる複数の舌片が設けられていても良い。この場合、封止部材を開口部に取り付けた状態で、複数の舌片を押し広げて封止部材の中央に隙間を形成させ、該隙間を通じてセンサーをダクト内に挿入することが可能となる。
【0011】
また、前記複数の舌片は、互いに隣接する舌片の縁部が重なるように設けられていても良い。この場合、互いに隣接する舌片の縁部が重なることにより、シール性能が向上し、ダクト内への外気の混入およびダクト内から外部への空気の漏出が回避される。
【0012】
また、前記複数の舌片は、互いに隣接する舌片の縁部同士を付き合わせた状態において、前記複数の舌片がダクトの外方もしくは内方に膨出するように設けられていても良い。例えば、ダクト内の気圧が大気圧よりも高い場合、前記複数の舌片がダクトの内方に膨出するように設けることにより、ダクト内から外部への空気の漏出が効果的に回避される。また一方、ダクト内の気圧が大気圧よりも低い場合、前記複数の舌片がダクトの外方に膨出するように設けることにより、ダクト内への外気の混入が効果的に回避される。
【0013】
更に、前記封止部材の中央から周面に達しない位置まで設けられた放射状の切り込みを塞ぐ栓を備えていても良い。この場合、栓を封止部材に取り付けることにより、ダクト内への外気の混入およびダクト内から外部への空気の漏出がより確実に回避される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ダクトの形状や太さに関わらず、容易に測定口構造を設けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態にかかる測定口構造を備えたダクトの説明図である。
【図2】図1のA−A位置における封止部材の断面図である。
【図3】栓を取り付けた封止部材の断面図である。
【図4】放射状の切り込みが設けられた封止部材の正面図である。
【図5】放射状の切り込みが設けられた封止部材の正面図であり、複数の舌片を押し広げた状態である。
【図6】互いに隣接する舌片の縁部が重なるように設けられている封止部材の正面図である。
【図7】互いに隣接する舌片の縁部同士を付き合わせることにより、外方もしくは内方に膨出するように設けられている封止部材の側面図である。
【図8】図7の封止部材において、複数の舌片が押し広げられた状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、ダクト1の側面には、風速、圧力、温度等を測定する各種のセンサー(図示せず)を挿入するための開口部10が形成されている。本発明の実施の形態にかかる測定口構造は、この開口部10に封止部材11を取り外し自在に取り付けた構成である。
【0017】
ダクト1は、断面形状が円形の丸ダクト、断面形状が四角形の角ダクトなど、いずれの断面形状でも良いが、図示の例では、丸ダクトが用いられている。ダクト1は、例えば鋼板を螺旋状に巻いて溶接したスパイラルダクトである。このため、ダクト1の側面は、曲面になっている。
【0018】
封止部材11は、例えば合成ゴムや樹脂などの弾性材料で構成されている。封止部材11は、円形状の開口部10を塞ぐべく全体として略円板形状をなしている。封止部材11の中央部分は円形の薄肉部12に形成され、薄肉部12の周囲を囲むように肉厚部13が形成されている。封止部材11の直径(肉厚部13の外径)は、開口部10の直径よりも僅かに大きい。但し、封止部材11の周面(肉厚部13の外周面)には、環状の溝14が連続して形成されている。このため、図2に示すように、封止部材11を開口部10にはめ込んで、開口部10の縁部を溝14に受容させることにより、開口部に封止部材11を取り付けることができる。
【0019】
封止部材11の一方の側面には、肉厚部13の内周面で囲まれた円筒形状の凹部15が設けられている。この凹部15には、図3に示すように、円筒形状の栓16をはめ込むことができる。
【0020】
以上のように構成された測定口構造は、ゴム等の弾性材料からなる封止部材11を変形させて、開口部10の縁部を溝14に受容させるように封止部材11を開口部10にはめ込むことにより、開口部10に封止部材11を簡単に取り付けることができる。こうして、開口部10に封止部材11を取り付けることにより、測定口構造は閉塞された状態となる。このように測定口構造を閉塞させる場合、封止部材11は弾性材料で構成されているため、丸ダクトのようにダクト1の側面が曲面であっても、封止部材11が変形することにより、閉塞された状態を維持できる。
【0021】
また、このように開口部10に封止部材11を取り付けた場合、図3に示すように、円筒形状の栓16を封止部材11の側面に形成された凹部15にはめ込むと良い。このように栓16をはめ込むことにより、肉厚部13が外側から押されて変形することを防止して、開口部10の縁部を溝14に受容させた状態を維持することができる。これにより、開口部10の縁部が溝14から不用意に外れることが無く、測定口構造を確実に閉塞させておくことができる。
【0022】
一方、測定口構造を開放させる場合は、封止部材11の周面を内側に押し込み、開口部10の縁部が溝14から抜け出るようにする。この場合、予め凹部15から栓16を取り外すことにより、肉厚部13を外側から押して容易に変形させることができる。こうして、ゴム等の弾性材料からなる封止部材11を弾性変形させることにより、ダクト1の開口部10から封止部材11を容易に取り外すことができる。これにより、測定口構造は開放された状態となり、開口部10を通じてセンサー等をダクト1の内部に挿入することが可能となる。
【0023】
なお、本発明の測定口構造は、以上の形態に限られるものではない。図4に示すように、封止部材11の中央から周面に達しない位置まで放射状の切り込み20が設けられていても良い。この図4に示す実施の形態では、肉厚部13で囲まれた薄肉部12に、中央から放射状の切り込み20が設けられることにより、封止部材11の中央(薄肉部12)には、封止部材11の周囲から中央に伸びる複数の二等辺間隔形状の舌片21が設けられている。
【0024】
この図4に示す封止部材11をダクト1の側面の開口部10に取り付けた測定口構造は、通常の状態では、封止部材11の中央に設けられた複数の舌片21は、弾力によっていずれも平板形状となり、測定口構造は閉塞された状態となっている。この場合、肉厚部13の内周面で囲まれ凹部15に栓16をはめ込むことにより、閉塞された状態はより確実になる。
【0025】
また、封止部材11の中央に設けられた複数の舌片21は、図5に示すように、容易に変形することができる。例えば、封止部材11をダクト1の側面の開口部10に取り付けたままの状態で、ピトー管などのセンサーを差し込むことにより、複数の舌片21を容易に押し広げて封止部材11の中央の隙間22からダクト1の内部に挿入できる。このため、封止部材11をダクト1の側面の開口部10に取り付けたまま、複数の舌片21を押し広げて形成された隙間22を通じて、センサー等をダクト1の内部に差し込むことが可能である。
【0026】
また、図6に示すように、放射状の切り込み20によって形成された複数の舌片21において、互いに隣接する舌片21の縁部が重なるように設けられていても良い。このように、隣接する舌片21の縁部が重なっていることにより、測定口構造は閉塞された状態ではシール性能が向上し、ダクト1の内部への外気の混入およびダクト1の内部から外部への空気の漏出が回避される。
【0027】
また、図7に示すように、放射状の切り込み20によって形成された複数の舌片21は、互いに隣接する舌片21の縁部同士を付き合わせた状態において、複数の舌片21がダクト1の外方もしくは内方に膨出するように設けられていても良い。例えば図7に示すように、舌片21の縁部同士を付き合わせた状態において、複数の舌片21がダクト1の外方に膨出していれば、ダクト1の外方からダクト1の内方に向って圧力Pがかかった場合、互いに隣接する舌片21の縁部同士に押し合う力が作用することになる。かかる場合、互いに隣接する舌片21の縁部同士を密着させながら、複数の舌片21がダクト1の外方に膨出した状態を保つことにより、ダクト1の外方からダクト1の内方に向う圧力Pに抗することができる。一方、この例において、ダクト1の内方からダクト1の外方に向って圧力Pがかかった場合は、図8に示すように、複数の舌片21が圧力Pによってダクト1の外方に向って押し広げられてしまう。
【0028】
このため、図7に示すように、互いに隣接する舌片21の縁部同士を付き合わせた状態において、複数の舌片21が膨出する形態の封止部材11を用いる場合、例えば、ダクト1の外部の圧力がダクト1の内部の圧力よりも高い場合は、複数の舌片21がダクト1の外方に膨出するように、ダクト1の側面の開口部10に封止部材11を取り付けることが望ましい。例えば、測定口構造が送風機の上流側にあり、測定口構造の位置においてダクト1の内部が負圧になるような場合は、複数の舌片21がダクト1の外方に膨出するように、ダクト1の側面の開口部10に封止部材11を取り付ける。これにより、ダクト1の外部から内部への空気の混入が効果的に回避される。
【0029】
逆に、ダクト1の内部の圧力がダクト1の外部の圧力よりも高い場合は、複数の舌片21がダクト1の内方に膨出するように、ダクト1の側面の開口部10に封止部材11を取り付けることが望ましい。例えば、測定口構造が送風機の下流側にあり、測定口構造の位置においてダクト1の内部が正圧になるような場合は、複数の舌片21がダクト1の内方に膨出するように、ダクト1の側面の開口部10に封止部材11を取り付ける。これにより、ダクト1の内部から外部への空気の漏出が効果的に回避される。
【0030】
なお、封止部材11には、市販品のゴムブッシング(電材)を利用することができる。市販品を用いれば入手も容易であり、簡単に予備も準備でき、安価な測定口構造を提供できる。また、ゴムブッシングは、電気工事と同様の作業により、ダクト1の側面の開口部10に取り付け、取り外すことができる。
【0031】
ダクト1の側面に設ける開口部10は、直径12〜13mm程度で、封止部材11の直径(肉厚部13の外径)は、16mm程度が好ましい。例えば、ダクト1内の風量測定には熱線式のセンサーが用いられることが多いが、熱線式のセンサーの直径は10mm程度である。熱線式のセンサーを開口部10に差し込んだ場合、開口部10の直径が12〜13mm程度であれば、熱線式のセンサーの周囲からのリークが少なくなり、正確な測定が可能となる。
【0032】
なお、本発明の測定口構造は丸ダクトに限らず、角ダクトにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、建造物に設置されるダクト設備に有用である。
【符号の説明】
【0034】
1 ダクト
10 開口部
11 封止部材
12 薄肉部
13 肉厚部
14 溝
15 凹部
16 栓
20 切り込み
21 舌片
22 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサーをダクト内に挿入するための測定口構造であって、
ダクトの側面に形成された開口部と、該開口部に取り外し自在に取り付けられる、弾性材料で構成された封止部材からなり、
前記封止部材の周面には、前記開口部の縁部を受容する溝が連続して形成されている、測定口構造。
【請求項2】
前記封止部材の中央から周面に達しない位置まで放射状の切り込みが設けられることにより、前記封止部材の周囲から中央に伸びる複数の舌片が設けられている、請求項1に記載の測定口構造。
【請求項3】
前記複数の舌片は、互いに隣接する舌片の縁部が重なるように設けられている、請求項2に記載の測定口構造。
【請求項4】
前記複数の舌片は、互いに隣接する舌片の縁部同士を付き合わせた状態において、前記複数の舌片がダクトの外方もしくは内方に膨出するように設けられている、請求項2または3に記載の測定口構造。
【請求項5】
前記封止部材の中央から周面に達しない位置まで設けられた放射状の切り込みを塞ぐ栓を備えている、請求項2〜4のいずれかに記載の測定口構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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