説明

ダンプ車両の後部煽戸開閉装置

【課題】ロック装置のロックが解除されて上開き状態にされた後部煽戸を閉じる際に、操作レバーを操作することなく後部煽戸を全閉できるようにする。
【解決手段】後部煽戸7と第3リンク部材13とを相対回動不能にロックするロック装置14は、操作レバー15cと、ロッド部材14aと、第3リンク部材13に固設された嵌合部材14cと、操作レバー15cをロック位置側に付勢する付勢部材15bと、を有する。ロッド部材14aの先端部には、軸方向に対して傾斜した傾斜面14aaが形成されており、この傾斜面14aaは、上開き状態にある後部煽戸7が操作レバー15cをロック位置に配置したまま全閉位置に向かって回動される際に、嵌合部材14cに当たってロッド部材14aを基端側へスライドさせるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷箱をシャシフレーム上で傾動させるダンプ装置を備えたダンプ車両の後部煽戸開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷箱をシャシフレーム上で水平状態から後ろ下がり状態に傾動させるダンプ動作により荷箱内の積荷を後方へ排出するダンプ車両が公知である(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示されているダンプ車両は、ダンプ装置による荷箱の傾動動作に連動して、その荷箱の後部煽戸を自動的に上開き開閉させる後部煽戸開閉装置を備えている。
【0003】
この後部煽戸開閉装置では、後部煽戸の後面に付設されている操作レバーを操作することにより、荷箱を水平状態にしたまま後部煽戸を手動で上開き開閉することもできるようになっている。
【0004】
上記操作レバーは、後部煽戸と荷箱の傾動に連動するリンク部材とを相対回動不能にロックするロック装置をロック状態又はロック解除状態に切換るためのものである。このロック装置の機構を簡単に説明すると、上記操作レバーには、後部煽戸の後面にスライド自在に支持されたロッド部材の基端部が連結されている。このロッド部材は荷箱の傾動に連動するリンク部材に固設された嵌合部材に、当該荷箱が水平状態にあって後部煽戸が全閉状態にあるときに嵌入可能となっている。
【0005】
操作レバーをロック解除位置からロック位置へ操作してロッド部材を嵌合部材の嵌合孔に嵌入した場合、後部煽戸とリンク部材とが相対回動不能にロックされ、後部煽戸が全閉状態で固定されるようになっている。一方、操作レバーをロック位置からロック解除位置へ操作してロッド部材を嵌合部材の嵌合孔から脱抜させた場合、後部煽戸と上記リンク部材との相対回動が許容され、後部煽戸は上開き開閉自在となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−163034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記後部煽戸開閉装置では、後部煽戸が上開き状態にあっても、スプリングによって操作レバーがロック位置に配置されるようになっているため、上開き状態の後部煽戸を全閉状態にする際は、面倒でも後部煽戸が全閉する前に操作レバーをロック位置からロック解除位置に操作し、後部煽戸の全閉後に操作レバーをロック解除位置からロック位置に戻すことが必要であった。仮に操作レバーを操作することなく、操作レバーがロック位置に配置されたまま、上開き状態の後部煽戸を全閉しようとすれば、後部煽戸が全閉する直前に、ロッド部材の側面と嵌合部材とが干渉して、それ以上後部煽戸が閉じなくなる構造になっているからである。
【0008】
本発明は、かかる問題に鑑みて創案されたものであり、ロック装置のロックが解除されて上開き状態にされた後部煽戸を閉じる際に、操作レバーを操作することなく後部煽戸を全閉できるようにしたダンプ車両の後部煽戸開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するための手段として、本発明のダンプ車両の後部煽戸開閉装置は、以下のように構成されている。すなわち、荷箱の後部煽戸の後面に車幅方向軸回りに回動自在に連結されたリンク部材を有するリンク機構と、前記後部煽戸と前記リンク部材とを相対回動不能にロックするロック装置と、を備えている。前記後部煽戸は、前記リンク部材と相対回動不能にロックされているときに、前記リンク機構により前記荷箱の傾動に連動して上開き開閉可能となり、前記ロックが解除されているときに、前記荷箱の傾動から独立して上開き開閉自在となる。また、前記ロック装置は、操作レバーと、前記操作レバーに連動して軸方向にスライドするように、前記後部煽戸の後面に支持されたロッド部材と、前記荷箱が水平状態にあって前記後部煽戸が全閉状態にあるときに、前記操作レバーがロック位置に配置されることで前記ロッド部材が嵌入され、前記操作レバーがロック解除位置に配置されることで嵌入された前記ロッド部材が脱抜されるように、前記リンク部材に固設された嵌合部材と、前記操作レバーをロック位置側に付勢する付勢部材と、を有する。また、上記ダンプ車両の後部煽戸開閉装置は上開き状態にある前記後部煽戸を前記操作レバーをロック位置に配置したまま全閉位置に向かって回動させた場合に、前記ロッド部材が前記嵌合部材に当たるように構成されている。そして、前記ロッド部材の先端部には、軸方向に対して傾斜した傾斜面が形成されており、この傾斜面は、上開き状態にある前記後部煽戸が前記操作レバーをロック位置に配置したまま全閉位置に向かって回動される際に、前記嵌合部材に当たってロッド部材を基端側へスライドさせるように形成されている。なお、上記傾斜面は、軸方向に対して傾斜した平面に限定されるものではない。すなわち、上記傾斜面は、上開き状態にある前記後部煽戸が前記操作レバーをロック位置に配置したまま全閉位置に向かって回動される際に、前記嵌合部材に当たってロッド部材を基端側へスライドさせるように形成されているものであればよく、例えば、上記傾斜面には、軸方向に対して概ね傾斜した曲面なども含まれる。
【0010】
かかる構成を備えるダンプ車両の後部煽戸開閉装置によれば、手動で上開き状態にした後部煽戸を手動で全閉する場合、後部煽戸が全閉位置に到達する前に、嵌合部材がロッド部材の先端部に形成された傾斜面に当たり、当該傾斜面を押圧してロッド部材を付勢部材の付勢力に抗してスライドさせる。そして、そのロッド部材は、後部煽戸が全閉位置に到達する際に、付勢部材の付勢力により嵌合部材に嵌入される。
【0011】
前記後部煽戸の後面には、前記操作レバーをロック位置で挟持する挟持装置が設けられていることが望ましい。
【0012】
かかる構成を備えるダンプ車両の後部煽戸開閉装置によれば、操作レバーが挟持装置に挟持されているか否かを目視確認することにより、操作レバーがロック位置にあるか否かを確認することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のダンプ車両の後部煽戸開閉装置によれば、手動で上開き状態にした後部煽戸を操作レバーを操作することなく手動で全閉させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ダンプ車両の荷箱およびその周辺部の一部を後方から視た図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】ダンプ車両の荷箱の底面図である。
【図5】図1のC部を後部煽戸に直交する方向から視た拡大図である。
【図6】挟持装置等を車両左側から視た図であって、後部煽戸および操作レバーを断面化した図である。
【図7】荷箱が水平状態のまま後部煽戸が全開放された状態を示す図である。断面部位は図3と同様である。
【図8】手動で上開き状態にした後部煽戸を手動で閉じる際に、ロッド部材の先端部に形成された傾斜面が嵌合部材に当たる様子を示す図である。断面部位は図3と同様である。
【図9】手動で上開き状態にした後部煽戸を手動で閉じる際に、ロッド部材の先端部が嵌合部材上に乗り上げた様子を示す図である。断面部位は図3と同様である。
【図10】荷箱の傾動に連動して後部煽戸が全開放された状態を示す図である。断面部位は図3と同様である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態において例示するダンプ車両1は、軽自動車(道路運送車両法の施行規則で定められている軽自動車)仕様のものであり、そのシャシフレーム3の後端より後ろ側、例えば車両後端位置にテールランプ4が設置されている。このテールランプ4は、視認性、視野角等の点から法令の規定に基づき定められた告示において規定されたサイズに適合するものであって、シャシフレーム3の側部スペースに収まりきらない車幅方向寸法を有するものとなっている。
【0017】
ダンプ車両1の荷箱2はシャシフレーム3上に固定されたサブフレーム5上に設置されており、このサブフレーム5の後部ヒンジ5aを中心にしてシャシフレーム3に対して後ろ下がり状態に傾動させるダンプ装置6を備えている。ダンプ装置6は、周知の装置であり、後部ヒンジ5aのほか、後部ヒンジ5aより前方に設置されて荷箱2の前部を昇降させる図示しない伸縮シリンダ等のアクチュエータによって構成されている。なお、ダンプ装置6は、後ろ下がり状態に傾斜した荷箱2を水平状態(走行状態)に復帰させるためにも使用される。
【0018】
荷箱2の後部煽戸7は、その下端部と荷箱2との間に設けられたヒンジ7aを中心にして上開き可能に設けられている。この後部煽戸7は、その後面に設けられた左右一対のストッパ7b,7bが後述する車幅方向部材22に当接するまで開方向へ回動可能となっている。また、後部煽戸7は、その左右両側部に車幅方向外側に断面L字状に屈曲した係合片7cを有しており、この係合片7cが荷箱2の後端両側部に立設されたポスト9の後端面に全閉位置で係合する。これにより、後部煽戸7が全閉位置より前方に回動してしまうことを規制している。
【0019】
また、ダンプ車両1は、ダンプ装置6による荷箱2の傾動に連動して、その荷箱2の後部煽戸7を上開き開閉させる後部煽戸開閉装置8を備えている。
【0020】
荷箱2の後端両側部に立設されたポスト9,9間には、これらのポスト9,9同士が撓まない(変形しない)ようにするための補強部材として車幅方向に延びた車幅方向部材22が架設されている。
【0021】
<後部煽戸開閉装置の構成>
以下、後部煽戸開閉装置8について更に詳細に説明する。図1〜図4に示すように、後部煽戸開閉装置8は、第1リンク部材11、第2リンク部材12および第3リンク部材13を有するリンク機構と、ロック装置14とを備えている。
【0022】
第1リンク部材11は、荷箱2の底部にその中間部が第1車幅方向軸16を中心に回動自在に連結されている。例えば図示するように、荷箱2の底部に下方に延出した左右一対の板材からなる支持部材17が固設され、この支持部材17に、第1リンク部材11の中間部が第1車幅方向軸16を介して回動自在に連結されている。
【0023】
第1リンク部材11の車両前方端部には、ローラ11aが設けられており、第1リンク部材11は、このローラ11aを介してその車両前方端部をサブフレーム5に設けられた支持板5b上に沿って移動可能となっている。一方、第1リンク部材11の車両後方端部は、第1リンク部材11の回動支点である第1車幅方向軸16より高い位置において、第2リンク部材12の前端部に第2車幅方向軸18を介して回動自在に連結されている。
【0024】
第2リンク部材12は、後端部が第3リンク部材13の一端部に第3車幅方向軸20を介して回動自在に連結されている。第2リンク部材12には、第1〜第3リンク部材11〜13の位置関係の調整を容易にするためにその長さ調整機能を備えるもの(例えばターンバックルを備えるもの)が採用されている。
【0025】
第3リンク部材13は、その他端部が後部煽戸7の後面に第4車幅方向軸21を介して回動自在に連結されている。第3リンク部材13は左右一対のものとされており、左右一対の第3リンク部材13,13間に後述の嵌合部材14cが固設されている。
【0026】
なお、既述の第1〜第4車幅方向軸16,18,20,21は、その名称、図面等から明らかなように、車幅方向に延在している軸である。
【0027】
ロック装置14は、後部煽戸7と第3リンク部材13とを相対回動不能にロックするためのものである。このロック装置14により後部煽戸7と第3リンク部材13とが相対回動不能にロックされ、荷箱2が水平状態を維持している間は、後部煽戸7が全閉状態に固定されるようになっている。図5に示すように、このロック装置14は、ロッド部材14a、ロッド部材案内部14b1,14b2、嵌合部材14c、切換操作部15等を備えている。
【0028】
ロッド部材14aは、後部煽戸7の後面に固設されたロッド部材案内部14b1,14b2にスライド自在に支持されており、その軸方向にのみ移動することが可能となっている。このロッド部材14aの先端部には、軸方向対して傾斜した傾斜面14aa(図3参照)が形成されている。この傾斜面14aaは、操作レバー15cがロック位置に配置された状態で、上開き状態にある後部煽戸7を全閉位置に向かって回動させる際に、嵌合部材14cに当たって当該ロッド部材14aを基端側へスライドさせるように形成されている。なお、本実施形態におけるロッド部材14aとしては、中実角柱材が採用されているが、円筒材、角筒材、中実円柱材等を採用してもよい。
【0029】
嵌合部材14cは、左右一対の第3リンク部材13,13間において、第3車幅方向軸20と第4車幅方向軸21との間の位置に固設されている。これにより、ロッド部材14aが嵌合部材14cの嵌合孔14caに嵌入すると、後部煽戸7と第3リンク部材13とが相対回動不能にロックされるようになっている。また、嵌合部材14cは、荷箱2が水平状態にあって後部煽戸7が全閉状態にあるときに、操作レバー15cがロック位置に配置されることで、ロッド部材14aが嵌合孔14caに嵌入され、操作レバー15cがロック解除位置に配置されることでロッド部材14aが嵌合孔14caから脱抜されるように設けられている。図に例示する嵌合部材14cは、板厚方向を第3リンク部材13の回動方向に直交する方向に向けて配置した板材からなり、その板材のロッド部材14aの傾斜面14aaに当たるエッジ部分に面取り14cb(図3参照)が施されている。
【0030】
切替操作部15は、ロック装置14を手動操作によりロック状態又はロック解除状態の何れかに切替えるためのものである。この切替操作部15は、ロッド部材14aに固設されたアーム部15aと、このアーム部15aを介してロッド部材14aと連動するように設けられた操作レバー15cと、アーム部15aを介してロッド部材14aおよび後述の操作レバー15cをロック位置側(嵌合部材14c側)に付勢する付勢部材15bと、を備えている。例えば、図示するように、アーム部15aは、その基端部がロッド部材14aの上端部に一体に設けられており、当該上端部から側方に延出したものとすることができる。また、図5に示すように、アーム部15aには、車幅方向に長い長穴15aaが形成され、この長穴15aaにピン15abを介して操作レバー15cの中間部が回動自在に連結されている。
【0031】
操作レバー15cは、基端部が後部煽戸7に設けられた支点5cに軸支され、後部煽戸7の後面に沿って回動自在に設けられている。この操作レバー15cは、後部煽戸7のヒンジ7aを中心とした回動半径の1/2位置より遠心側に設けられている。
【0032】
付勢部材15bは、例えばコイルスプリングからなり、引っ張り状態で、一端がアーム部15aの先端部に係合され、他端が後部煽戸7に係合されている。
【0033】
図5の符号5dは、後部煽戸7の後面から突出した突起を示している。この突起5dは、操作レバー15cのロック解除側(上方回動側)への回動範囲を画定している。
【0034】
図5の符号10は、操作レバー15cをロック位置で挟持する挟持装置である。この挟持装置10は、操作レバー15cをロック位置で挟持することにより、同レバー15cをロック位置に保持する役割を果たす。また、挟持装置10は、操作レバー15cがロック位置にあることを視覚的に確認し易くする役割をも果たす。
【0035】
上記挟持装置10は、図6に示すように、後部煽戸7の後面に溶接されたブラケット10aと、このブラケット10a上に固定された挟持部材10bとを備えている。挟持部材10bは、一体成形された樹脂材からなり、基礎部10b1、一対の挟持部10b2および一対の案内板10b3を有している。
【0036】
基礎部10b1は、ブラケット10a上に所定の固定手段にて固定されている。
【0037】
一対の挟持部10b2は、基礎部10b1上に形成され、図6において実線で示すロック位置にある操作レバー15cを挟持する。挟持部10b2は、操作レバー15cの長手方向から視て同レバー15cの外周に沿った円弧状に形成されている。また、挟持部材10bには、操作レバー15cが上記ロック位置とロック解除位置(図6において2点鎖線で示す操作レバー15cの位置)との間を移動する際に当該操作レバー15cを出入りさせる開口10b4が形成されている。通常、開口10b4の開口幅Tは、操作レバー15cの直径より小さいが、操作レバー15cが開口10b4を通過する際には挟持部10b2が弾性変形して上記開口幅Tが拡大する。
【0038】
一対の案内板10b3は、一対の挟持部10b2の先端部から連続して形成され、操作レバー15cのロック解除位置側に向かって拡開している。この案内板10b3は、ロック解除位置からロック位置に移動する操作レバー15cを開口10b4に案内するためのものである。
【0039】
<後部煽戸開閉装置の動作>
次に、後部煽戸開閉装置8の動作について説明する。
【0040】
図2および図3は、ダンプ車両1の荷箱2が水平状態にあり、後部煽戸7が後方にやや傾斜した状態で荷箱2の後部開口を全閉した状態を示している。このとき、第1リンク部材11は、その前方端部が荷箱2の底部2aと支持板5b上とに挟まれているため回動不能となっており、後部煽戸7と第3リンク部材13とは、ロック装置14によって相対回動不能にロックされ、第1リンク部材11と第3リンク部材13とは第2リンク部材12を介して連結されていることから、後部煽戸7は全閉状態で固定されている。
【0041】
上記状態より操作レバー15cをロック位置からロック解除位置に回動操作してロッド部材14aを嵌合部材14cの嵌合孔14caから脱抜させると(ロックを解除すると)、後方にやや傾斜した状態にある後部煽戸7は、第3リンク部材13に対して相対回動自在(上開き開閉自在)になり、自重によってヒンジ7aを中心として開方向へ回動する。後部煽戸7は、自身に設けられているストッパ7b(図1参照)が荷箱2と一体回動する車幅方向部材22に当接するまで開放され、最終的に、図7に示すように全開状態となり、荷箱2の荷台面から連続した平坦面を形成する。操作レバー15cの操作によりロックが解除された後、操作レバー15cから手が離されると、操作レバー15cおよびロッド部材14aは、付勢部材15bによってロック位置に戻される。もちろん、操作レバー15cおよびロッド部材14aがロック位置に戻されても、ロッド部材14aは嵌合部材14cの嵌合孔14caに嵌入しないので、後部煽戸7と第3リンク部材13とは相対回動自在のままであり、後部煽戸7は上開き開閉自在のままである。
【0042】
図7に示す状態より、後部煽戸7を閉鎖する場合は、操作レバー15cを操作することなく(操作レバー15cが付勢部材15bによりロック位置に配置されたまま)、後部煽戸7を手で持ち上げてヒンジ7aを中心に図3に示す元の全閉位置まで回動させるだけでよい。すなわち、後部煽戸7を持ち上げて回動させると、図8に示すように、後部煽戸7が全閉位置に到達する前に、第3リンク部材13に固設された嵌合部材14cがロッド部材14aの先端部の傾斜面14aaに当たり、当該傾斜面14aaを押圧してロッド部材14aを基端側(ロック解除位置側)に付勢部材15b(図5参照)の付勢力に抗してスライドさせる。そして、図9に示すように、ロッド部材14aの先端部は、嵌合部材14c上に完全に乗り上げた後、図3に示すように、後部煽戸7が全閉位置に到達する際に、付勢部材15bの付勢力により嵌合部材14cの嵌合孔14caに嵌入され、後部煽戸7が全閉状態に固定される。
【0043】
このように本実施形態に係る後部煽戸開閉装置8によれば、手動で上開き状態にした後部煽戸5を操作レバー15cを操作することなく手動で全閉させることができる。
【0044】
また、操作レバー15cをロック位置で挟持する挟持装置10が作業者の目に付きやすい後部煽戸の後面に設けられているので、操作レバー15cが挟持装置10に挟持されていることを目視確認することにより、操作レバー15cがロック位置に戻ったことを確認することができる。
【0045】
したがって、本実施形態に係る後部煽戸開閉装置8によれば、上開き状態にした後部煽戸5を手動で全閉させること、および、全閉後に操作レバー15cがロック位置へ復帰したことの確認を操作レバー15cに触れることなく行うことができる。
【0046】
次に、荷箱2の傾動に連動させて後部煽戸7を上開き開閉させる際の動作について説明する。
【0047】
この場合、図3に示すように、予め、ロック装置14をロック状態として、後部煽戸7と第3リンク部材13とを相対回動不能にロックする。ダンプ装置6によって、荷箱2を水平状態から後ろ下がり状態に傾動させると、第1リンク部材11の支点である第1車幅方向軸16が荷箱2の傾動に伴って上方移動する。同時に、後方に傾斜状態で配置されている後部煽戸7が、その自重により、第3リンク部材13とともに、ヒンジ7a回りに開方向へ回動する。後部煽戸7の自重による回動力は、第3リンク部材13および第2リンク部材12を介して第1リンク部材11を第1車幅方向軸16回り(図3において左回り)に回動させる回動力として作用する。後部煽戸7は、ストッパ7bが既述の車幅方向部材22に当接するまで荷箱2に対して開方向に回動し、最終的に、図10に示すような全開状態となり、後部煽戸7は、荷箱2の荷台面から連続した平坦面を形成する。後部煽戸7が全開状態となるまでの間(換言すると、荷箱2の傾斜角が所定値以下のとき)、第1リンク部材11の前方端部は、ローラ11aを介して支持板5b上に支持され、その回動が規制される。したがって、第3リンク部材13および第2リンク部材12を介して後部煽戸7の自重が回動力として作用する第1リンク部材11の回動が支持板5bによって規制され、その間、荷箱2の傾動量に応じて後部煽戸7の開度が決まるようになっている。後部煽戸7が全開した後は、荷箱2の更なる傾動によって第1リンク部材11の車両前方端部(ローラ11a)は支持板5b上から上方へ離れる。
【0048】
その後、ダンプ装置6によって後ろ下がり状態に傾斜した荷箱2を水平状態に向かって傾動させると、荷箱2と共に降下する第1リンク部材11の前方端部がローラ11aを介して支持板5bに上方へ押圧され、第1車幅方向軸16回り(図7において右回り)に回動する。すると、この第1リンク部材11の回動力が第2リンク部材12を介して、第3リンク部材13および後部煽戸7をヒンジ7aを中心に一体回動させる力として作用する。そして、最終的に図3に示したように、荷箱2が水平状態に復帰し、第1リンク部材11およびこれに連動する第2〜第3リンク部材12〜13は動作を停止して、後部煽戸7は同図に示す全閉位置に戻る。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、荷箱をシャシフレーム上で傾動させるダンプ装置を備えたダンプ車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
2 荷箱
7 後部煽戸
8 後部煽戸開閉装置
10 挟持装置
13 第3リンク部材
14 ロック装置
14a ロッド部材
14aa 傾斜面
14c 嵌合部材
15b 付勢部材
15c 操作レバー
21 第4車幅方向軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷箱の後部煽戸の後面に車幅方向軸回りに回動自在に連結されたリンク部材を有するリンク機構と、
前記後部煽戸と前記リンク部材とを相対回動不能にロックするロック装置と、
を備え、
前記後部煽戸は、前記リンク部材と相対回動不能にロックされているときに、前記リンク機構により前記荷箱の傾動に連動して上開き開閉可能となり、前記ロックが解除されているときに、前記荷箱の傾動から独立して上開き開閉自在となり、
前記ロック装置は、
操作レバーと、
前記操作レバーに連動して軸方向にスライドするように、前記後部煽戸の後面に支持されたロッド部材と、
前記荷箱が水平状態にあって前記後部煽戸が全閉状態にあるときに、前記操作レバーがロック位置に配置されることで前記ロッド部材が嵌入され、前記操作レバーがロック解除位置に配置されることで嵌入された前記ロッド部材が脱抜されるように、前記リンク部材に固設された嵌合部材と、
前記操作レバーをロック位置側に付勢する付勢部材と、
を有し、
上開き状態にある前記後部煽戸を前記操作レバーをロック位置に配置したまま全閉位置に向かって回動させた場合に、前記ロッド部材が前記嵌合部材に当たるように構成された、ダンプ車両の後部煽戸開閉装置において、
前記ロッド部材の先端部には、軸方向に対して傾斜した傾斜面が形成されており、この傾斜面は、上開き状態にある前記後部煽戸が前記操作レバーをロック位置に配置したまま全閉位置に向かって回動される際に、前記嵌合部材に当たってロッド部材を基端側へスライドさせるように形成されている、ことを特徴とするダンプ車両の後部煽戸開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダンプ車両の後部煽戸開閉装置において、
前記後部煽戸の後面には、前記操作レバーをロック位置で挟持する挟持装置が設けられていることを特徴とするダンプ車両の後部煽戸開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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