説明

チアゾリジンジオン誘導体の製造方法

【課題】 血糖降下剤として有用なN−ベンジルジオキソチアゾリジニルベンズアミド誘導体の合成中間体であるチアゾリジンジオン誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)


(式中、R及びRは同一又は異なって水素又は低級アルキル基を表し、Xは脱離基を表す。)で表される化合物を塩基の存在下チアゾリジン−2,4−ジオンと反応させることを特徴とする一般式(2)


(式中、R及びRは前述の通り。)で表されるチアゾリジンジオン誘導体の製造方法の提供。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は血糖降下剤及びインスリン感受性増強剤として有用なN−ベンジルジオキソチアゾリジニルベンズアミド誘導体の合成中間体である、一般式(2)


(式中、R及びRは同一又は異なって水素又は低級アルキル基を表す。)で表されるチアゾリジンジオン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】5−ベンジルチアゾリジンジオン誘導体の合成方法としては、ベンズアルデヒド誘導体とチアゾリジンジオンとの縮合により得られる5−ベンジリデンチアゾリジンジオン誘導体を接触還元(特開平8−104688)、あるいは金属水素化物により還元する方法(特表平7−502530)が公知である。
【0003】しかし、5−ベンジルチアゾリジンジオン誘導体を工業的スケールで製造する場合、接触還元では、高圧水素気流下、大量の触媒を必要とするので、作業に危険を伴う恐れがあった。また、金属水素化物による還元では、反応条件の設定が難しく、純度、収率等に再現性に欠けることがあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、N−ベンジルジオキソチアゾリジニルベンズアミド誘導体の合成中間体である5−ベンジルチアゾリジンジオン誘導体の製造方法に関して鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)


(式中、R及びRは同一又は異なって水素又は低級アルキル基を表し、Xは脱離基を表す。)で表される化合物を、塩基の存在下チアゾリジン−2,4−ジオンと反応させることにより、一般式(2)


(式中、R及びRは同一又は異なって水素又は低級アルキル基を表す。)が得られることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0005】本発明の関連するチアゾリジンジオン環のアルキル化についてはいくつかの例が知られている(特開平1−272573、 Synthesis 310,1971.等)が、カルボン酸誘導体を置換基とするアラルキル基によるアルキル化は今までに知られていなかった。
【0006】一般式(1)で表される化合物は公知(特開昭48−19539、Bull.Soc.Chim.Fr.,1969(5),1698.)であるか、または公知の方法によって合成することができる。
【0007】ここで低級アルキル基とはメチル、エチル、プロピルなど炭素数1〜4の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を示し、望ましくはメチル基であり、脱離基とはハロゲン、スルフォニルオキシ基を示し、望ましくはハロゲンである。
【0008】尚一般式(1)で表される安息香酸誘導体中、一般式(2)で表されるチアゾリジンジオン誘導体の合成出発物質として特に有用な5−ヨードメチル−2−メトキシ安息香酸メチルは文献未記載の新規化合物である。
【0009】一般式(1)の化合物によるチアゾリジン−2,4-ジオンのアルキル化は、テトラヒドロフランのような反応に不活性な溶媒中において、n−ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、ナトリウムアミドなどの塩基の存在下、−78℃から溶媒の沸点間の温度範囲で行われる。通常、反応終了後、過剰の塩基を水で分解し、酸性とすれば、一般式(2)の目的化合物を容易に得ることができる。
【0010】従来、一般式(2)の化合物が、ベンズアルデヒド誘導体とチアゾリジンジオンとの縮合により得られる5−ベンジリデンチアゾリジンジオン誘導体を接触還元して製造されていた(特開平9−048771)のに対し、本発明の方法によれば、原料化合物である一般式(1)の化合物はベンズアルデヒド誘導体に比べて安価に入手することができ、また、縮合後に還元工程も必要としないことから、大幅に工程数を減らすことができるので、工業的に有利な方法を提供されることが本発明の特徴である。
【0011】
【実施例】以下に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何らの制限を受けるものでは無い。
【0012】<実施例1> 5−ヨードメチル−2−メトキシ安息香酸メチルヨー化ナトリウム16.4g(109.4mmol)のアセトン100mLの溶液に、氷冷攪拌下、5−クロロメチル−2−メトキシ安息香酸メチル20.0g(99.7mmol)のアセトン25mLの溶液を添加した。室温にて14時間攪拌後、不溶物を濾別し溶媒を留去した。残留物を酢酸エチル150mLに溶解し、水100mLにて洗浄した。硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒留去し、褐色晶として表題化合物24.5g(80.2%)を得た。
1H-NMR(CDCl3, 60MHz) δ:3.90(6H,s),4.47(2H,s),6.90(1H,d,J=8.0Hz),7.48(1H,dd,J=2.0,8.0Hz),7.82(1H,d,J=2.0Hz).IR(KBr):1264,1298,1698cm-1 .
【0013】<実施例2> 5−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イル)メチル−2−メトキシ安息香酸メチルチアゾリジン−2,5−ジオン250mg(2.13mmol)を無水テトラヒドロフラン10mLに溶解し、−78℃にて1.47mol/Lのn-ブチルリチウム溶液2.9mL(4.26mmol)を加え、室温で30分攪拌した。反応液を氷冷後、5−ヨードメチル−2−メトキシ安息香酸メチル650mg(2.12mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液10mLを加えた。その後50℃にて2時間20分攪拌した。反応終了後、0.6mol/Lの塩酸10mLを加え、塩化メチレンにて抽出した(10mL×2)。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマト(ヘキサン:酢酸エチル=3:2)を用いて精製し、表題化合物310mg(49%)を得た。m.p. 150−152℃。
【0014】
【発明の効果】本発明によって提供されるチアゾリジンジオン誘導体の製造方法は、従来、ベンズアルデヒド誘導体とチアゾリジンジオンとの縮合により得られる5−ベンジリデンチアゾリジンジオン誘導体を接触還元して製造されていたのに対し、より安価なハロゲノメチルベンゼン誘導体を用い、製造中に還元工程も必要としないことから、大幅に工程数を減らすことができ、工業的に有利な方法を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(1)


(式中、R及びRは同一又は異なって水素又は低級アルキル基を表し、Xは脱離基を表す。)で表される化合物を塩基の存在下チアゾリジン−2,4−ジオンと反応させることを特徴とする一般式(2)


(式中、R及びRは前述の通り。)で表されるチアゾリジンジオン誘導体の製造方法。
【請求項2】 R及びRがメチル、Xがハロゲンであり、塩基がn−ブチルリチウムである請求項1記載のチアゾリジンジオン誘導体の製造方法。
【請求項3】 請求項1または2記載のチアゾリジオン誘導体の製造方法に使用される一般式(1)で表される安息香酸誘導体。
【請求項4】 5−ヨードメチル−2−メトキシ安息香酸メチルであることを特徴とする請求項3記載の安息香酸誘導体。

【公開番号】特開2001−354664(P2001−354664A)
【公開日】平成13年12月25日(2001.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−177117(P2000−177117)
【出願日】平成12年6月13日(2000.6.13)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【Fターム(参考)】