説明

チップ型固体電解コンデンサ

【目的】 本発明はICカード用など超低背電子機器用チップ型固体電解コンデンサとして、陽極部の電極板と外部電極にかけて生ずるリアクタンスの影響を極力低減させて、共振点を1MHz 以上に高めたチップ型固体電解コンデンサを提供する。
【構成】 アルミニウムおよびアルミニウム合金からなる電極板の陽極において電極板と外部電極である半田の両者に対して接合性の高いアルミニウム−鉛又はアルミニウム−鉛−錫合金を介在させて電極板と外部電極を接合することによってなるチップ型固体電解コンデンサ。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はチップ型固体電解コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】チップ型固体電解コンデンサとしてこれまでタンタル電解コンデンサが広く実用化されており、タンタルパウダーを焼結してリード線を取り付け内部素子を形成している。従ってチップコンデンサの構造もそれに適した構造となっており、その基本的な構造は、図2R>2のようにタンタル焼結体から取り出された陽極内部リード9と外部陽極リード10とが接続され、陰極は外部陰極リード11を素子8に沿ってフォーミングされ、銀ペーストを介して接続されている。アルミニウム固体電解コンデンサの場合も焼結型の固体電解コンデンサの基本的な構造ではタンタル電解コンデンサと殆ど同一の構造となっている。しかしながら、アルミニウム固体電解コンデンサについては現在焼結型のコンデンサについては殆ど実用化されていない。
【0003】アルミニウム固体電解コンデンサについては、アルミニウム箔をエッチング処理により電極面積を拡大させた後、陽極酸化皮膜層を形成し、固体電解質層、陰極電解質層を順次形成し、偏平素子もしくは巻回素子として内部リードをそのまま外部電極としてコンデンサ製品を構成している。偏平素子の場合には内部リードを介さず陽極側では電極箔をそのまま外部電極(リードフレーム)に接合したり、陰極側では陰極導電層をそのまま外部電極(リードフレーム)に接合させている。たとえば、複数の偏平電極より構成されている素子は、陽極リード10は図3に示すように複数枚の溶接を行った後に、その先端部で外部陽極リードとの接合を行い、陽極については複数の偏平素子を銀ペーストにより接合し、外部陰極リード11との接合についてはやはり複数素子の上下いずれかの外局面に沿った形に外部リードのフォーミングを行い銀ペーストを介して接続されている。
【0004】また、アルミニウム固体電解コンデンサのチップ構造については上記の角型モールドチップの他に、巻回素子使用の場合は従来のアキシャルタイプの円筒ケースおよび従来の電極リードを有効に利用し、縦型のものと横型のものが実用化されている。これらの構造は従来の電解コンデンサの面実装対応を低コストで実現したものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、以上述べてきた構造のチップタイプの電解コンデンサでは、最近のICカードに代表される電子機器の薄手化には対応できないのが現状である。また高周波対応についても従来までの数kHz から1MHz さらには10MHz 程度の高周波への対応が要求されている。これらについては電解質の固体化によりある程度までは対応できたが、1MHz 以上になるとコンデンサの構造にまでメスを入れる必要がある。角型チップの場合も外装樹脂などで薄手化を図っているが、その基本的な構造上の問題まで解決できず、高周波対応薄手化チップコンデンサの構造について基本的な対応が迫られていた。
【0006】本発明はICカードなどの電子機器の薄手化に対応して、コンデンサの低背化を実現し、共振点を1MHz 以上と従来よりさらに高くするチップ型固体コンデンサを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明はアルミニウム又はアルミニウム合金電極板を用い、該電極にエッチング処理を行い有効表面積を拡大せしめた後、陽極酸化皮膜層、固体電解質層および陰極導電層を順次形成してなるコンデンサ素子と、外部電極構造として、陽極は上記電極板と金属を介し半田により構成され、陰極は陰極導電層と金属又は電導性接合層を介して半田により構成される固体電解コンデンサにおいて、上記素子の陽極外部電極構成部に用いる金属が、アルミニウム−鉛合金、又はアルミニウム−鉛−錫合金であることを特徴とする本発明を図1を用いて詳細に説明する。本コンデンサの陽極となる材料1はアルミニウムやアルミニウムとそのほかの弁作用を示す合金からなる板である。できるだけ低背なコンデンサとするために、この板の板厚は薄い方がよく、例えば0.1〜0.5mmが好ましい。この材料を片面もしくは両面についてエッチング、化成処理を施し、さらに陰極を取り出すために導電性に優れた固体電解質を含浸する。その後、陰極側はカーボン、銀ペーストとディップさせるなどして順次形成させる。これに対して、陽極側はマスキング樹脂4を介して陰極導電層と絶縁させる。そして、陽極には、電極板1と外部電極3間に金属2を介在させ、この金属にはアルミニウム−鉛合金あるいはアルミニウム−鉛−錫合金を用いる。ここで上記アルミニウム−鉛合金およびアルミニウム−鉛−錫合金の合金成分の含有量はアルミニウム−鉛合金の場合、鉛の含有量で30〜60at%の範囲が好ましく、アルミニウム−鉛−錫合金の場合、鉛と錫の含有量はそれぞれ30〜40at%、10〜20at%の範囲が好ましい。なお、この2種類の合金において合金元素が上記範囲外となるとAlおよびAl合金との濡れ性が不良となることから好ましくない。
【0008】また、アルミニウム−鉛合金又はアルミニウム−鉛−錫合金を電極板に接合させるためにはスポット溶接などの抵抗溶接による方法やレーザー溶接などが接合性を高めるという点から好ましいが、本発明においては特にその接合方法を特に限定しない。さらに、陽極側、陰極側とも外部電極となる半田で覆い、本発明のチップ型固体電解コンデンサとなる。
【0009】
【作用】本発明ではアルミニウムおよびアルミニウム合金からなる電極板と外部電極である半田との接合性を高めるために用いる金属を、電極板と半田の両方に濡れ性の良好なアルミニウム−鉛合金又はアルミニウム−鉛−錫合金とすることにより、電極板と外部電極との接合を一層良好にすることが可能となり、よって、電極板と外部電極にかけて生ずるリアクタンスの影響をかなり低減でき、従来に比べて共振点をはるかに高くすることが可能となる。
【0010】
【実施例】本発明の代表的な実施例を図1により説明する。図1の1は300μm厚みのアルミニウム板をエッチング処理、化成処理を施した後、固体電解質を含浸し、コロイダルカーボン、銀ペーストからなる陰極導電層を順次形成させて作製した平板素子である。2は該素子と半田外部電極3との接合を良好にせしめる目的で挿入させた合金で、1つのコンデンサ(No.1)ではAl−Pb50合金であり、もう1つのコンデンサ(No.2)ではAl−Pb35−Sn15合金である。この合金は電極板の端面にパルスレーザーにより接合した。4は平板素子の陽極取り出し部と固体電解質層および陰極導電層とを絶縁するマスキング樹脂である。5は陰極導電層と陰極半田外部電極6との接合性を良好にさせるために挿入されたニッケルである。このニッケルは0.5μm以下の径のニッケルパウダーをPMMA樹脂に分散させ塗布方式により形成させた。7は外装樹脂であり、上部下部は半田電極と同位置か内側に覆われている。また、比較例として図1中の2についても陰極5と同様の方法でニッケルを形成させたものを作った。
【0011】本発明のコンデンサと比較例のコンデンサについて、高周波特性を調べたところ、表1に示すような結果が得られた。本発明では共振点が1MHz を超え、インピーダンスも0.04Ωと極めて周波数特性の良好なコンデンサが得られた。一方、比較例では共振点が低く、インピーダンスも0.12Ωと高く、ICカードなどに用いるには周波数特性が不良なコンデンサであった。
【0012】
【表1】


【0013】
【発明の効果】本発明によれば、超低背化のチップ型固体電解コンデンサにおいて、1MHz 以上のリアクタンスが大幅に低減され高周波特性は極めて良好になった。このことにより超低背化と高周波特性を要求されるICカードなどへの固体電解コンデンサの実装が可能となり、またフロッピーディスクドライブなどのコンピューター関連電子機器の超薄型化、スイッチング電源のより薄型化、一般民生電気機器の薄型軽量化などが可能となり、その工業的且つ実用的価値は大きなものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のチップ型固体コンデンサの一例を示す説明図。
【図2】従来のタンタル固体コンデンサを示す説明図。
【図3】従来のアルミニウム固体コンデンサを示す説明図。
【符号の説明】
1 平板素子
2,5 介在金属層
3 外部電極(陽極)
4 マスキング樹脂
6 外部電極(陰極)
7 外装樹脂
8 素子
9 内部リード
10 外部陽極リード
11 外部陰極リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルミニウム又はアルミニウム合金電極板を用い、該電極にエッチング処理を行い有効表面積を拡大せしめた後、陽極酸化皮膜層、固体電解質層および陰極導電層を順次形成してなるコンデンサ素子と、外部電極構造として、陽極は上記電極板と金属を介し半田により構成され、陰極は陰極導電層と金属又は電導性接合層を介して半田により構成される固体電解コンデンサにおいて、上記素子の陽極外部電極構成部に用いる金属が、アルミニウム−鉛合金、又はアルミニウム−鉛−錫合金であることを特徴とするチップ型固体電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平5−275291
【公開日】平成5年(1993)10月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−71713
【出願日】平成4年(1992)3月27日
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)