チップ状固体電解コンデンサ
【課題】低ESL化したチップ状固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】本発明に係るチップ状固体電解コンデンサ8は、陰極と陽極の2つの極性部分を有する複数のコンデンサ素子1を樹脂封止してなるチップ状固体電解コンデンサであって、所定の間隔をおいて配置された2つの第1電極(5)と、第1電極(5)の間に配置された1つの第2電極(6)とを備える。対を構成する2つのコンデンサ素子(1a、1b)は、陽極が陰極を中心として、左右方向に互い違いになるように配置し、陰極を前記第1帯状導体および第2帯状導体に接続するとともに、陽極を該第2帯状導体の両隣に配置された別々の前記第1帯状導体にそれぞれ接続されている。そのときに使用されるコンデンサ素子の陽極リードは、対を構成した時に近づく方向に中心軸からずらして配置することを特徴とする。
【解決手段】本発明に係るチップ状固体電解コンデンサ8は、陰極と陽極の2つの極性部分を有する複数のコンデンサ素子1を樹脂封止してなるチップ状固体電解コンデンサであって、所定の間隔をおいて配置された2つの第1電極(5)と、第1電極(5)の間に配置された1つの第2電極(6)とを備える。対を構成する2つのコンデンサ素子(1a、1b)は、陽極が陰極を中心として、左右方向に互い違いになるように配置し、陰極を前記第1帯状導体および第2帯状導体に接続するとともに、陽極を該第2帯状導体の両隣に配置された別々の前記第1帯状導体にそれぞれ接続されている。そのときに使用されるコンデンサ素子の陽極リードは、対を構成した時に近づく方向に中心軸からずらして配置することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ状固体電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器は、年々、小形/薄形化、高効率化、および高速化が進められている。これに伴い、電子機器に搭載される半導体素子(チップ部品)には、小形/薄形化と、大容量化、高周波対応のための低ESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)化/低ESL(Equivalent Series Inductance:等価直列インダクタンス)化という、相反する性能が要求されるようになってきている。
【0003】
ところで、各種電子機器ではセラミックコンデンサが多用されているが、大容量を必要とされる回路では、タンタル等の弁作用金属を用いたチップ状固体電解コンデンサが用いられている。
【0004】
弁作用金属を用いたチップ状固体電解コンデンサを低ESR化/低ESL化する構造としては、2つの陽極電極と、前記陽極の間に配置された1つの陰極の3端子を有し、パッケージ内に偶数個となる複数のコンデンサ素子を配置し、コンデンサ素子の陽極が陰極を中心として、左右方向に互い違いになるように配置されるものが提案されている。
(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−012828号公報
【特許文献2】特願2008−316726
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のチップ状固体電解コンデンサは、多数の素子を内蔵し、かつ下面電極構造とすることで低ESR化を実現している。
【0007】
しかしながら、特許文献1による方法では、陰極部が2つの陽極電極と接続されない形で配置されており、体積効率が悪くなっているため静電容量および低ESR化が制限されてしまうという欠点があった。また、逆方向に配置された偶数個の素子の陽極リード同士が対となる部分が存在せず、磁界の打ち消し合いが起こりにくく、特に高周波領域では充放電時に発生する磁界の影響でインピーダンスが高くなってしまうという欠点もあった。
【0008】
また、特許文献2に記載のチップ状固体電解コンデンサは、コンデンサ素子対を形成しており、かつ内部素子の長さが制限されておらず、磁界の中心軸が、素子の長さ方向に位置ずれしていない構成をしている。よって、各素子に流れる充放電電流がそれぞれ逆方向となり、発生する磁界が互いに打ち消し合うため、高周波領域で磁界の影響を受けて発生する逆起電力が低減され低ESL化を実現している。
【0009】
しかしながら、さらなる低ESL化の要求があり、本発明は、高周波領域まで低インピーダンス特性を実現でき、かつ低ESL特性を有するチップ状固体電解コンデンサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る固体電解コンデンサは、陰極と陽極の2つの極性部分を有する複数のコンデンサ素子を樹脂封止してなるチップ状固体電解コンデンサであって、
所定の間隔をおいて配置された2つの第1電極と、
前記第1電極の間に配置された1つの第2電極と、
を備え、
前記複数のコンデンサ素子のうち、任意の2つのコンデンサ素子はコンデンサ素子対を構成し、
前記コンデンサ素子対を構成する2つのコンデンサ素子は、陽極が陰極を中心として、左右方向に互い違いになるように配置され、前記陽極がそれぞれ別々の前記第1電極に接続されるとともに、前記陰極が前記第2電極に接続され、さらに、前記コンデンサ素子の陽極が接続されていない側の前記陽極電極に絶縁性を有するマスキング部が配置され、前記陰極が前記マスキング部上に配置されており、
該コンデンサ素子の陽極リードをコンデンサ素子の中心軸から側面方向にずらし、コンデンサ素子対の各陽極リードが近づいた側面同士が近づく様に配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のこの構成によれば、コンデンサ素子対を構成する2つのコンデンサ素子の陽極が陰極を中心として、左右方向に互い違いになるように配置し、コンデンサ素子対の各陽極リードが近づいた側面同士を近接配置することで、磁界の打ち消し合いが作用しているコンデンサ素子対で、より効果的に磁界の打ち消し合いが起こるため、高周波領域で磁界の影響を受けて発生する逆起電力が低減され、より低ESL化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1に係る固体電解コンデンサの外装樹脂封止前の状態を示す平面図である。
【図2】実施例1に係るコンデンサ素子と陽極リードの埋設位置を示す平面図である。
【図3】実施例1に係る固体電解コンデンサの断面図であって、(A)は横断面図、(B)は(A)の線B−Bにおける縦断面図である。
【図4】実施例2に係る固体電解コンデンサの外装樹脂封止前の状態を示す平面図である。
【図5】実施例2に係るコンデンサ素子と陽極リードの埋設位置を示す平面図である。
【図6】実施例2に係る固体電解コンデンサの断面図であって、(A)は横断面図、(B)は(A)の線B−Bにおける縦断面図である。
【図7】従来例1に係る固体電解コンデンサの外装樹脂封止前の状態を示す平面図である。
【図8】従来例1に係るコンデンサ素子と陽極リードの埋設位置を示す平面図である。
【図9】従来例1に係る固体電解コンデンサの断面図であって、(A)は横断面図、(B)は(A)の線B−Bにおける縦断面図である。
【図10】従来例2に係る固体電解コンデンサの外装樹脂封止前の状態を示す平面図である。
【図11】従来例2に係るコンデンサ素子と陽極リードの埋設位置を示す平面図である。
【図12】従来例2に係る固体電解コンデンサの断面図であって、(A)は横断面図、(B)は(A)の線B−Bにおける縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1、実施例2、従来例1および、従来例2はそれぞれ、図3、図6、図9、図12に示すように長さ7.3mm、幅4.3mm、高さ1.5mmのチップサイズに、表1に示すサイズの素子が幅方向に4個並ぶ形で配置されるパターンの配置とした。
なお、実施例1、実施例2および、従来例2の定格電圧は6.3V、静電容量の狙い値は、100μFである。従来例1は従来例2で使用した素子と同じ弁作用金属粉末、密度、焼結温度としたが、溶接しない第1電極側と接触しない長さまで短寸化した。
【0014】
[実施例1]
図1に、実施例1に係る固体電解コンデンサ素子の、外装樹脂封止前の状態を示す。
コンデンサ素子1は、弁作用金属であるタンタル粉末に陽極リードを埋設しながら、該タンタル粉末を表1に示す素子サイズでプレス成形および焼結して多孔質体とし、該多孔質体の表面に誘電体酸化皮膜層を形成してコンデンサ陽極体を作製した後に、さらに該コンデンサ陽極体の表面に、陰極としての導電性高分子層と、陰極引出層としてのカーボン層および銀層とを順次形成して作製した。なお、陽極リードは、成形時に図2、表1に示す様に、コンデンサ素子の側面方向に対して中心軸から0.6mmずらして配置した。
【0015】
後に、陽極電極5となる帯状導体5’、および陰極電極6となる帯状導体6’は、予め各帯状導体の長軸方向が平行になるように、所定の間隔をおいて配置した。
【0016】
続いて、作製した複数のコンデンサ素子1のうちの任意の2つのコンデンサ素子(例えば、1a、1b)でコンデンサ素子対を構成し、対を構成するコンデンサ素子1a、1bの陰極を、帯状導体の長軸方向に隣り合うように配置した。そして、各陽極リード2と帯状導体5’とを金属ブロック3を介して接続した。さらに、コンデンサ素子1a、1bの陰極引出層を、帯状導体6’に導電性接着剤4を介して接続し、かつ帯状導体5’に絶縁性を有するマスキング部7を配置した後、前記マスキング部7上に配置した。
【0017】
その後、接続が完了した複数のコンデンサ素子1を一括して外装樹脂で封止し、得られた外装樹脂封止体を線α−α、線β−β、線γ−γの位置で切断し、個片化した。
【0018】
[実施例2]
図4に、実施例2に係る固体電解コンデンサ素子の、外装樹脂封止前の状態を示す。
実施例1と同様にコンデンサを作製した。その際、全てのコンデンサ素子の陽極リードは、成形時に図5、表1に示す様に、コンデンサ素子の側面方向に対して同一の方向に、中心軸から0.3mmずらして配置した。
【0019】
[従来例1]
図7に、従来例1に係る固体電解コンデンサ素子の、外装樹脂封止前の状態を示す。
コンデンサ素子1は、表1に示す素子サイズで、実施例1と同様にコンデンサ素子を作製した。その際、全ての陽極リードは、成形時に図8、表1に示す様に、コンデンサ素子の中心軸に沿って配置させた。
【0020】
後に、陽極電極5となる帯状導体5’、および陰極電極6となる帯状導体6’は、予め各帯状導体の長軸方向が平行になるように、所定の間隔をおいて配置した。
【0021】
続いて、作製した複数のコンデンサ素子1を、帯状導体の長軸方向に2つ連続して同方向に配置し(例えば、1c、1d)、続いて2つ連続して逆方向に配置(例えば、1e、1f)した。そして、各陽極リード2と帯状導体5’とを金属ブロック3を介して接続した。さらに、コンデンサ素子1a、1bの陰極引出層を、帯状導体6’に導電性接着剤4を介して接続した。
【0022】
その後、接続が完了した複数のコンデンサ素子1を一括して外装樹脂で封止し、得られた外装樹脂封止体を線α−α、線β−β、線γ−γで切断し、個片化した。
【0023】
[従来例2]
図10に、従来例2に係る固体電解コンデンサ素子の、外装樹脂封止前の状態を示す。
実施例1と同様にコンデンサを作製した。その際、全てのコンデンサ素子の陽極リードは、成形時に図11、表1に示す様に、コンデンサ素子の中心軸に沿って配置させた。
【0024】
実施例1〜2および従来例で使用したコンデンサ素子の寸法および陽極リードの配置位置を表1に示す。
【表1】
【0025】
[比較検討結果]
実施例1〜2および従来例に係るチップ状固体電解コンデンサを各100個作製し、ESR、ESL値の測定を行った。その測定結果(平均値)を表2に示す。なお、ESR値はヒューレットパッカード社製のLCR測定器で測定し、ESL値はアジレント社製のインピーダンス・アナライザで測定した。測定温度は、いずれも室温とした。
【表2】
【0026】
表2に示すように、実施例1および実施例2に係る固体電解コンデンサでは、対を構成するコンデンサ素子の充放電電流の通り道となる陽極リード同士が近づいたことにより、充放電時に発生する磁界の軸が近くなり磁界の打ち消し合いがより効果的になり、従来例に比べてESLを大幅に低減することができた。
特に、対を構成するコンデンサ素子の陽極リード同士の位置が最も近い実施例1に係る固体電解コンデンサでは、磁界の打ち消し合いが効果的に起こり、従来例に比べて、ESLをより大幅に低減することができた。
従来例2は素子サイズが限定され、上述の通り磁界の打ち消し合いが起こりにくいことから静電容量が小さく、ESR、ESLも悪い結果となった。
【0027】
以上、本発明に係る固体電解コンデンサの好ましい実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
また、陽極リードの配置箇所は、コンデンサ素子の側面までずらす時に磁界の打ち消し合いが最も効果的となるが、陽極リードをコンデンサ素子に配置する容易性を考慮すると、素子端面から0.1mm以上離すことがより望ましい。
【0029】
なお、各実施例では、陽極材料としてタンタルを使用したが、ニオブ等の他の弁作用金属に置き換えてもよい。さらに、各実施例では、陰極材料として導電性高分子を使用したが、二酸化マンガン等の他の陰極材料に置き換えてもよい。このような置き換えを行っても同等の効果が得られることは、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【符号の説明】
【0030】
1 コンデンサ素子
2 陽極リード
3 金属ブロック
4 導電性接着剤
5 陽極電極
6 陰極電極
7 マスキング部
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ状固体電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器は、年々、小形/薄形化、高効率化、および高速化が進められている。これに伴い、電子機器に搭載される半導体素子(チップ部品)には、小形/薄形化と、大容量化、高周波対応のための低ESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)化/低ESL(Equivalent Series Inductance:等価直列インダクタンス)化という、相反する性能が要求されるようになってきている。
【0003】
ところで、各種電子機器ではセラミックコンデンサが多用されているが、大容量を必要とされる回路では、タンタル等の弁作用金属を用いたチップ状固体電解コンデンサが用いられている。
【0004】
弁作用金属を用いたチップ状固体電解コンデンサを低ESR化/低ESL化する構造としては、2つの陽極電極と、前記陽極の間に配置された1つの陰極の3端子を有し、パッケージ内に偶数個となる複数のコンデンサ素子を配置し、コンデンサ素子の陽極が陰極を中心として、左右方向に互い違いになるように配置されるものが提案されている。
(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−012828号公報
【特許文献2】特願2008−316726
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のチップ状固体電解コンデンサは、多数の素子を内蔵し、かつ下面電極構造とすることで低ESR化を実現している。
【0007】
しかしながら、特許文献1による方法では、陰極部が2つの陽極電極と接続されない形で配置されており、体積効率が悪くなっているため静電容量および低ESR化が制限されてしまうという欠点があった。また、逆方向に配置された偶数個の素子の陽極リード同士が対となる部分が存在せず、磁界の打ち消し合いが起こりにくく、特に高周波領域では充放電時に発生する磁界の影響でインピーダンスが高くなってしまうという欠点もあった。
【0008】
また、特許文献2に記載のチップ状固体電解コンデンサは、コンデンサ素子対を形成しており、かつ内部素子の長さが制限されておらず、磁界の中心軸が、素子の長さ方向に位置ずれしていない構成をしている。よって、各素子に流れる充放電電流がそれぞれ逆方向となり、発生する磁界が互いに打ち消し合うため、高周波領域で磁界の影響を受けて発生する逆起電力が低減され低ESL化を実現している。
【0009】
しかしながら、さらなる低ESL化の要求があり、本発明は、高周波領域まで低インピーダンス特性を実現でき、かつ低ESL特性を有するチップ状固体電解コンデンサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る固体電解コンデンサは、陰極と陽極の2つの極性部分を有する複数のコンデンサ素子を樹脂封止してなるチップ状固体電解コンデンサであって、
所定の間隔をおいて配置された2つの第1電極と、
前記第1電極の間に配置された1つの第2電極と、
を備え、
前記複数のコンデンサ素子のうち、任意の2つのコンデンサ素子はコンデンサ素子対を構成し、
前記コンデンサ素子対を構成する2つのコンデンサ素子は、陽極が陰極を中心として、左右方向に互い違いになるように配置され、前記陽極がそれぞれ別々の前記第1電極に接続されるとともに、前記陰極が前記第2電極に接続され、さらに、前記コンデンサ素子の陽極が接続されていない側の前記陽極電極に絶縁性を有するマスキング部が配置され、前記陰極が前記マスキング部上に配置されており、
該コンデンサ素子の陽極リードをコンデンサ素子の中心軸から側面方向にずらし、コンデンサ素子対の各陽極リードが近づいた側面同士が近づく様に配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のこの構成によれば、コンデンサ素子対を構成する2つのコンデンサ素子の陽極が陰極を中心として、左右方向に互い違いになるように配置し、コンデンサ素子対の各陽極リードが近づいた側面同士を近接配置することで、磁界の打ち消し合いが作用しているコンデンサ素子対で、より効果的に磁界の打ち消し合いが起こるため、高周波領域で磁界の影響を受けて発生する逆起電力が低減され、より低ESL化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1に係る固体電解コンデンサの外装樹脂封止前の状態を示す平面図である。
【図2】実施例1に係るコンデンサ素子と陽極リードの埋設位置を示す平面図である。
【図3】実施例1に係る固体電解コンデンサの断面図であって、(A)は横断面図、(B)は(A)の線B−Bにおける縦断面図である。
【図4】実施例2に係る固体電解コンデンサの外装樹脂封止前の状態を示す平面図である。
【図5】実施例2に係るコンデンサ素子と陽極リードの埋設位置を示す平面図である。
【図6】実施例2に係る固体電解コンデンサの断面図であって、(A)は横断面図、(B)は(A)の線B−Bにおける縦断面図である。
【図7】従来例1に係る固体電解コンデンサの外装樹脂封止前の状態を示す平面図である。
【図8】従来例1に係るコンデンサ素子と陽極リードの埋設位置を示す平面図である。
【図9】従来例1に係る固体電解コンデンサの断面図であって、(A)は横断面図、(B)は(A)の線B−Bにおける縦断面図である。
【図10】従来例2に係る固体電解コンデンサの外装樹脂封止前の状態を示す平面図である。
【図11】従来例2に係るコンデンサ素子と陽極リードの埋設位置を示す平面図である。
【図12】従来例2に係る固体電解コンデンサの断面図であって、(A)は横断面図、(B)は(A)の線B−Bにおける縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1、実施例2、従来例1および、従来例2はそれぞれ、図3、図6、図9、図12に示すように長さ7.3mm、幅4.3mm、高さ1.5mmのチップサイズに、表1に示すサイズの素子が幅方向に4個並ぶ形で配置されるパターンの配置とした。
なお、実施例1、実施例2および、従来例2の定格電圧は6.3V、静電容量の狙い値は、100μFである。従来例1は従来例2で使用した素子と同じ弁作用金属粉末、密度、焼結温度としたが、溶接しない第1電極側と接触しない長さまで短寸化した。
【0014】
[実施例1]
図1に、実施例1に係る固体電解コンデンサ素子の、外装樹脂封止前の状態を示す。
コンデンサ素子1は、弁作用金属であるタンタル粉末に陽極リードを埋設しながら、該タンタル粉末を表1に示す素子サイズでプレス成形および焼結して多孔質体とし、該多孔質体の表面に誘電体酸化皮膜層を形成してコンデンサ陽極体を作製した後に、さらに該コンデンサ陽極体の表面に、陰極としての導電性高分子層と、陰極引出層としてのカーボン層および銀層とを順次形成して作製した。なお、陽極リードは、成形時に図2、表1に示す様に、コンデンサ素子の側面方向に対して中心軸から0.6mmずらして配置した。
【0015】
後に、陽極電極5となる帯状導体5’、および陰極電極6となる帯状導体6’は、予め各帯状導体の長軸方向が平行になるように、所定の間隔をおいて配置した。
【0016】
続いて、作製した複数のコンデンサ素子1のうちの任意の2つのコンデンサ素子(例えば、1a、1b)でコンデンサ素子対を構成し、対を構成するコンデンサ素子1a、1bの陰極を、帯状導体の長軸方向に隣り合うように配置した。そして、各陽極リード2と帯状導体5’とを金属ブロック3を介して接続した。さらに、コンデンサ素子1a、1bの陰極引出層を、帯状導体6’に導電性接着剤4を介して接続し、かつ帯状導体5’に絶縁性を有するマスキング部7を配置した後、前記マスキング部7上に配置した。
【0017】
その後、接続が完了した複数のコンデンサ素子1を一括して外装樹脂で封止し、得られた外装樹脂封止体を線α−α、線β−β、線γ−γの位置で切断し、個片化した。
【0018】
[実施例2]
図4に、実施例2に係る固体電解コンデンサ素子の、外装樹脂封止前の状態を示す。
実施例1と同様にコンデンサを作製した。その際、全てのコンデンサ素子の陽極リードは、成形時に図5、表1に示す様に、コンデンサ素子の側面方向に対して同一の方向に、中心軸から0.3mmずらして配置した。
【0019】
[従来例1]
図7に、従来例1に係る固体電解コンデンサ素子の、外装樹脂封止前の状態を示す。
コンデンサ素子1は、表1に示す素子サイズで、実施例1と同様にコンデンサ素子を作製した。その際、全ての陽極リードは、成形時に図8、表1に示す様に、コンデンサ素子の中心軸に沿って配置させた。
【0020】
後に、陽極電極5となる帯状導体5’、および陰極電極6となる帯状導体6’は、予め各帯状導体の長軸方向が平行になるように、所定の間隔をおいて配置した。
【0021】
続いて、作製した複数のコンデンサ素子1を、帯状導体の長軸方向に2つ連続して同方向に配置し(例えば、1c、1d)、続いて2つ連続して逆方向に配置(例えば、1e、1f)した。そして、各陽極リード2と帯状導体5’とを金属ブロック3を介して接続した。さらに、コンデンサ素子1a、1bの陰極引出層を、帯状導体6’に導電性接着剤4を介して接続した。
【0022】
その後、接続が完了した複数のコンデンサ素子1を一括して外装樹脂で封止し、得られた外装樹脂封止体を線α−α、線β−β、線γ−γで切断し、個片化した。
【0023】
[従来例2]
図10に、従来例2に係る固体電解コンデンサ素子の、外装樹脂封止前の状態を示す。
実施例1と同様にコンデンサを作製した。その際、全てのコンデンサ素子の陽極リードは、成形時に図11、表1に示す様に、コンデンサ素子の中心軸に沿って配置させた。
【0024】
実施例1〜2および従来例で使用したコンデンサ素子の寸法および陽極リードの配置位置を表1に示す。
【表1】
【0025】
[比較検討結果]
実施例1〜2および従来例に係るチップ状固体電解コンデンサを各100個作製し、ESR、ESL値の測定を行った。その測定結果(平均値)を表2に示す。なお、ESR値はヒューレットパッカード社製のLCR測定器で測定し、ESL値はアジレント社製のインピーダンス・アナライザで測定した。測定温度は、いずれも室温とした。
【表2】
【0026】
表2に示すように、実施例1および実施例2に係る固体電解コンデンサでは、対を構成するコンデンサ素子の充放電電流の通り道となる陽極リード同士が近づいたことにより、充放電時に発生する磁界の軸が近くなり磁界の打ち消し合いがより効果的になり、従来例に比べてESLを大幅に低減することができた。
特に、対を構成するコンデンサ素子の陽極リード同士の位置が最も近い実施例1に係る固体電解コンデンサでは、磁界の打ち消し合いが効果的に起こり、従来例に比べて、ESLをより大幅に低減することができた。
従来例2は素子サイズが限定され、上述の通り磁界の打ち消し合いが起こりにくいことから静電容量が小さく、ESR、ESLも悪い結果となった。
【0027】
以上、本発明に係る固体電解コンデンサの好ましい実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
また、陽極リードの配置箇所は、コンデンサ素子の側面までずらす時に磁界の打ち消し合いが最も効果的となるが、陽極リードをコンデンサ素子に配置する容易性を考慮すると、素子端面から0.1mm以上離すことがより望ましい。
【0029】
なお、各実施例では、陽極材料としてタンタルを使用したが、ニオブ等の他の弁作用金属に置き換えてもよい。さらに、各実施例では、陰極材料として導電性高分子を使用したが、二酸化マンガン等の他の陰極材料に置き換えてもよい。このような置き換えを行っても同等の効果が得られることは、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【符号の説明】
【0030】
1 コンデンサ素子
2 陽極リード
3 金属ブロック
4 導電性接着剤
5 陽極電極
6 陰極電極
7 マスキング部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と陽極の2つの極性部分を有する複数のコンデンサ素子を樹脂封止してなるチップ状固体電解コンデンサであって、
所定の間隔をおいて配置された2つの第1電極と、
前記第1電極の間に配置された1つの第2電極と、
を備え、
前記複数のコンデンサ素子のうち、任意の2つのコンデンサ素子はコンデンサ素子対を構成し、
前記コンデンサ素子対を構成する2つのコンデンサ素子は、陽極が陰極を中心として、左右方向に互い違いになるように配置され、前記陽極がそれぞれ別々の前記第1電極に接続されるとともに、前記陰極が前記第2電極に接続され、さらに、前記コンデンサ素子の陽極が接続されていない側の前記陽極電極に絶縁性を有するマスキング部が配置され、前記陰極が前記マスキング部上に配置されており、
上記コンデンサ素子の陽極リードをコンデンサ陽極体の側面方向にずらし、コンデンサ素子対の各陽極リードが近づいた側面同士が近づく様に配置することを特徴とするチップ状固体電解コンデンサ。
【請求項1】
陰極と陽極の2つの極性部分を有する複数のコンデンサ素子を樹脂封止してなるチップ状固体電解コンデンサであって、
所定の間隔をおいて配置された2つの第1電極と、
前記第1電極の間に配置された1つの第2電極と、
を備え、
前記複数のコンデンサ素子のうち、任意の2つのコンデンサ素子はコンデンサ素子対を構成し、
前記コンデンサ素子対を構成する2つのコンデンサ素子は、陽極が陰極を中心として、左右方向に互い違いになるように配置され、前記陽極がそれぞれ別々の前記第1電極に接続されるとともに、前記陰極が前記第2電極に接続され、さらに、前記コンデンサ素子の陽極が接続されていない側の前記陽極電極に絶縁性を有するマスキング部が配置され、前記陰極が前記マスキング部上に配置されており、
上記コンデンサ素子の陽極リードをコンデンサ陽極体の側面方向にずらし、コンデンサ素子対の各陽極リードが近づいた側面同士が近づく様に配置することを特徴とするチップ状固体電解コンデンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−14601(P2011−14601A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155357(P2009−155357)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
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