説明

チャコールフィルタ付きメントールシガレット

【課題】非喫煙時にメントールの揮散・移行をより一層抑制することで、シガレットを蔵置した後であっても、喫煙時にはメントール香料を十分に放出できるとともに、製造が容易なチャコールフィルタ付きメントールシガレットを提供する。
【解決手段】圧延シートタバコまたは押し出しシートタバコの刻を8重量%以上の割合で含有するタバコ充填材からなるタバコロッドとこのタバコロッドの外周を巻装するシガレット巻紙とを備えるタバコ部、およびこのタバコ部の一端に取り付けられたチャコールフィルタを備えるフィルタ部を備え、前記圧延シートタバコまたは押し出しシートタバコの刻に、メントールを包接したシクロデキストリンが配合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャコールフィルタ付きメントールシガレットに関する。
【背景技術】
【0002】
メントールは、シガレットの香喫味に清涼感を与えるものとして好まれている。しかし、メントールは、揮発性の高い化合物である。このため、チャコールフィルタを備えたシガレットにメントールを添加すると、シガレットのパッケージ内で、その保管中にメントールがチャコールに移行し、喫煙時のメントール香喫味が減少する。メントールを吸着したチャコールは、タバコの主流煙中の成分除去能が低下する。
【0003】
特表2005−508648号公報は、チャコールフィルタ付きシガレットにおいて、メントールをマイクロカプセル化し、そのマイクロカプセルをタバコ刻、タバコフィルター等に添加することを開示している。このマイクロカプセルの被覆材(殻)は、約35℃〜約200℃の融点を有するワックス性の熱溶融性物質または常温より高くかつタバコ刻の熱分解温度よりも低い温度で溶融する物質によって構成されている。
【0004】
しかしながら、従来のメントールマイクロカプセルは、メントールの包接機能はあるものの、チャコールフィルタとの併用を考えた場合、単純に包接体をタバコ刻に混入するだけでは、特にシガレットを蔵置した後に、通常製品レベルのメントールデリバリー量を実現するまでには至らない。技術的な困難は、チャコールフィルタを併用した具体的なシガレット設計範囲を明確化することである。すなわち、本発明者により、従来の知見では現行のタバコ巻き上げ機で製品として満足できるシガレットを製造することは困難であることが見いだされた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、非喫煙時にメントールの揮散・移行をより一層抑制することで、シガレットを蔵置した後であっても、喫煙時にはメントール香料を十分に放出できるとともに、製造が容易なチャコールフィルタ付きメントールシガレットを提供することを目的とする。
【0006】
ここで、メントール香料の十分な放出とは、シガレットの吸口端において、タール(T)当りのメントール(M)重量比(以下、M/T比という)として0.03〜0.04程度のメントールの送給(デリバリー)量に相当する。M/T比が0.03未満であるとメントールの喫味が不十分である。事実、現在世界で販売されているメントールシガレットにおいても、M/T比は0.03〜0.04である。
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、メントール香料をシクロデキストリンに包接させ、その包接体を、圧延シートタバコまたは押し出しシートタバコの刻に配合することにより、所期の目的が達成できることを見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によると、圧延シートタバコまたは押し出しシートタバコの刻を8重量%以上の割合で含有するタバコ充填材からなるタバコロッドとこのタバコロッドの外周を巻装するシガレット巻紙とを備えるタバコ部、およびこのタバコ部の一端に取り付けられたチャコールフィルタを備えるフィルタ部を備え、前記圧延シートタバコまたは押し出しシートタバコの刻に、メントールを包接したシクロデキストリンが配合されていることを特徴とするチャコールフィルタ付きメントールシガレットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aは、包装したシガレットを蔵置した後のメントールのデリバリー量の相対値を蔵置期間に対して示すグラフである。
【図1B】図1Bは、包装したシガレットを蔵置した後のメントールのデリバリー量の相対値を蔵置期間に対して示すグラフである。
【図2】図2は、包装せずにシガレットを蔵置した後のメントールのデリバリー量の相対値を蔵置期間に対して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の種々の態様を説明する。
【0011】
本発明のチャコールフィルタ付きメントールシガレットは、圧延シートタバコまたは押し出しシートタバコの刻を8重量%以上の割合で含有するタバコ充填材からなるタバコロッドとこのタバコロッドの外周を巻装するシガレット巻紙とを有するタバコ部、およびこのタバコ部の一端に取り付けられたチャコールフィルタを備えるフィルタ部を備える。前記圧延シートタバコまたは押し出しシートタバコの刻には、メントールを包接したシクロデキストリンが配合されている。
【0012】
本発明では、メントールの揮散を抑制するために、メントールをシクロデキストリン(CD)に包接させたメントールのCD包接体(メントール/CD包接体)を用いるものである。メントール/CD包接体は、当該分野でよく知られており、市販されている。メントール/CD包接体は、5〜15重量%のメントールを含有し得る。
【0013】
本発明においては、メントール/CD包接体を圧延シートタバコまたは押し出しシートタバコの刻に含有させ、その刻を用いてタバコ充填剤を構成する。圧延シートタバコおよび押し出しシートタバコは、それ自体当該分野でよく知られている(例えば、特公平7−40907号公報参照)。圧延シートタバコおよび押し出しシートタバコは、基本的に、タバコ屑(タバコ葉屑、刻屑、粉タバコ、中骨等)に結合剤(カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、スターチ、アルギン酸ナトリウム等)、補強剤(パルプの解繊物等)、さらに必要に応じて保湿剤(プロピレングリコールとコーンシロップとの混合物)、耐水化剤(グリオキサール等)を加えるとともに適量の水を添加し、その混合物(原料混合物)を一対のローラにより圧延するか、押し出し機により押し出すことにより製造することができる。
【0014】
本発明では、圧延シートタバコまたは押し出しシートタバコの原料混合物にメントール/CD包接体を配合し、そのメントール/CD包接体含有原料混合物を上記のように圧延または押し出して、メントール/CD包接体を含有する圧延シートタバコまたは押し出しシートタバコを得、これを裁刻して、メントール/CD包接体含有シートタバコ刻を得る。
【0015】
得られたメントール/CD包接体含有シートタバコ刻を、好ましくは通常の葉タバコ刻等と混合して、タバコ充填材を提供する。このタバコ充填材中に占めるメントール/CD包接体含有シートタバコ刻の割合は、8重量%以上である。これにより、タバコ充填材全体に均一かつ安定にメントール/CD包接体を含めることができ、このタバコ充填材を用いて通常のタバコ巻き上げ機で支障なくシガレットを作製することができる。
【0016】
こうして得られるタバコ充填材を、常法により、シガレット巻紙で巻装し、得られたタバコ部の一端にチップペーパを用いてチャコールフィルタを備えるフィルタ部を取り付ける。シガレット巻紙は、通常のシガレットに用いられているものであればよく、例えば亜麻パルプ等のパルプを用いて作製することができる。シガレット巻紙は、通常、炭酸カルシウム等の填料含有しており、さらにはクエン酸ナトリウム等の燃焼調節剤を有することができる。
【0017】
チャコールフィルタは、それ自体周知であり、例えば、セルロースアセテート繊維のトウにチャコール(活性炭)粒子を分散させたものである。
【0018】
本発明のチャコールフィルタ付シガレットにおいて、メントール/CD包接体は、タバコ充填材に添加するだけでなく、フィルタ部にも添加することができる。その場合、フィルタ部は、チャコールフィルタセクションと、チャコールフィルタセクションから離間して(通常はその下流側に)配置されたプレーンフィルタセクションとにより構成され、このチャコールフィルタセクションとプレーンフィルタセクション(セルロースアセテートトウ等のフィルタ材だけからなるフィルタセクション)との間のキャビティにメントール/CD包接体を充填することができる。キャビティ充填自体は、当該分野でよく知られている。
【0019】
また、メントール/CD包接体は、シガレット巻紙にも添加することができる。その場合、カルボキシメチルセルロース等の結合剤とともにメントール/CD包接体を懸濁させた水性懸濁液を、例えばグラビアコーターを用いて、シガレット巻紙に塗布し、乾燥することができる。
【0020】
このように、本発明においては、メントール/CD包接体を少なくともタバコ充填材中に提供するものである。メントール/CD包接体をシガレット巻紙のみに提供した場合には、メントールの十分な放出(M/T比0.03〜0.04)を達成しようとすると、メントール/CD包接体の量を増加させなければならない。その結果タバコ主流煙中の一酸化炭素(CO)の量が増加して、タール当たりのCOの比(C/T比)が増大し、好ましいC/T比2.0以下を維持できない。
【0021】
他方、メントール/CD包接体をフィルタ部のみに提供した場合には、喫煙時にメントールの十分な放出を達成できない。
【0022】
本発明のシガレットにおいて、メントールの総量は、タバコ充填材の重量の3%以下の割合であることが好ましい。本発明のシガレットは、このようなメントール量で、タバコ主流煙中のCO量を増加させずに(C/T比を2.0以下に維持して)、主流煙中に十分な量のメントールを放出することができる。本発明において、メントール/CD包接体を、タバコ充填材に加えて、シガレット巻紙および/またはフィルタ部にも提供する場合、メントール全量の30重量%以上がタバコ充填材に提供されることが好ましい。
【0023】
なお、メントールの総量は、タバコ充填材の重量の0.4%以上なければ、メントールの十分な喫味を味わうことができない。
【0024】
メントールを包接するCDとしては、β型、γ型のいずれでもよいが、メントール/CD包接体を、メントール/CD包接体含有シートタバコ刻を介してタバコ充填材に提供する場合および/またはシガレット巻紙に提供する場合には、シガレットの燃焼時にメントールの高いデリバリー量を実現し得るγ−型CDを用いることが好ましい。メントール/CD包接体をフィルタ部に提供する場合には、メントールの保持能力が高いβ−CDを用いることが好ましい。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0026】
実施例1〜3、比較例1〜4
フィルタ中チャコール量50mg、フィルタ長27mm、タバコロッド長57mmのチャコールフィルタ付シガレットを作製した。メントール/CD(β−CDまたはγ−CD)包接体は、いずれも塩水港精糖株式会社から市販されているものを用いた。これらメントール/CD包接体は、8〜12重量%のメントールを含有するものであった。各シガレットの仕様を表1に示す。
【0027】
比較例1のシガレットでは、タバコ充填材は、通常の葉タバコ刻からなり、メントールはCDに包接せず、溶媒(エタノール)に溶解し、噴霧することによりタバコ充填材に添加した。
【0028】
比較例2のシガレットでは、タバコ充填材は、通常の葉タバコ刻からなり、フィルタ部のみにメントール/CD包接体を提供した。
【0029】
比較例3および4のシガレットでは、タバコ充填材は、通常の葉タバコ刻からなり、シガレット巻紙のみにメントール/CD包接体を提供した。
【0030】
実施例1のシガレットでは、タバコ充填材にメントール/CD包接体を提供した。
【0031】
実施例2のシガレットでは、タバコ充填材およびシガレット巻紙にメントール/CD包接体を提供した。
【0032】
実施例3のシガレットでは、タバコ充填材、シガレット巻紙およびフィルタ部にメントール/CD包接体を提供した。
【0033】
タバコ充填材にメントール/CD包接体を添加するに当たっては、タバコ細粉55重量%、補強剤(パルプ解繊物)10重量%、結合剤(コーンスターチ)5重量%、およびメントール/CD包接体30重量%を混合機に入れ、適量の水分を添加した後、攪拌混合した。得られた混合物を水平対向式の一対のローラを用いてシート状に圧延成形し、これを乾燥して圧延シートタバコを作製した。作製した圧延シートタバコを細刻し、タバコ充填材中に27〜30重量%配合した(残りは通常の葉タバコ刻)。
【0034】
また、シガレット巻紙にメントール/CD包接体を提供するに当たっては、カルボキシメチルセルロースとともにメントールを懸濁させた水性懸濁液をグラビアコートした。
【0035】
フィルタ部へのメントール/CD包接体の添加は、長さ27mmのフィルタ部において、15mmのチャコールアセテートセクションと7mmのセルロースアセテート繊維トウからなるプレーンフィルタセクションの間にキャビティを設け、そのキャビティに充填することによって行った。
【0036】
なお、表1に示すメントール量(%)は、タバコ充填材の重量を基準とするものである。
【表1】

【0037】
こうして作製した各シガレットを、気温22℃、相対湿度60%の下で2ヶ月間蔵置した。各シガレットを喫煙器(Borgwaldt社製RM26)にセットし、ISOの標準喫煙条件に準じて喫煙させた。各シガレットにつき、ガラス繊維フィルタおよびガスバッグで煙成分を捕集した。ガスクロマトグラフ分析システム(Agilent社製6890A)を用いて主流煙中のタール量並びにメントール量を、またマイクロガスクロマトグラフ(Agilent社製3000A)を用いて主流煙中のCO量を測定し、C/T比およびM/T比を算出した。結果を表2に示す。
【表2】

【0038】
表2に示すように、比較例1のシガレットは、メントールを包接せずにそのまま使用しているため、蔵置中にメントールがチャコールに吸着し、喫煙時にメントールはほとんどデリバリーされない。また、比較例2のシガレットでは、メントール/CD包接体をフィルタ部のみに添加しているので、十分なメントールデリバリーが達成できない。また、比較例3および4のシガレットについての結果からわかるように、シガレット巻紙のみにメントール/CD包接体を添加した場合、比較例3のシガレットのように煙中成分であるCOやタールの量を増加させない場合には、十分なメントールデリバリーが達成できない。また、メントール/CD包接体を巻紙のみに添加し、一般的なメントールタバコ製品レベルのM/T比(0.03以上)を実現しようとした場合、比較例4のシガレットのように、主流煙中のCOやタールの量が激増してしまう。これは、巻紙の坪量が増加する結果、COやタールの生成量が増加するためである。
【0039】
これに対し、実施例1〜3のシガレットのように、メントール/CD包接体をタバコ充填材に添加した場合には、一般的なメントールタバコ製品相当のメントールデリバリー量を実現できる。
【0040】
また、実施例2のシガレットのように、メントール/CD包接体をタバコ充填材およびシガレット巻紙に添加した場合には、実施例1のようにタバコ充填材のみに添加する場合と比べて、少ないタバコ充填材へのメントール/CD包接体の添加量で、実施例1と同等のメントールデリバリー量を実現できる。これは、メントール/CD包接体を巻紙に添加した際の、メントールの主流煙への移行率が、タバコ充填材のそれと比べて高いためである。
【0041】
さらに、実施例3のシガレットのように、メントール/CD包接体をタバコ充填材、シガレット巻紙およびフィルタ部に添加した場合には、実施例1や2のようにフィルタ部に添加しない場合と比べて、メントールデリバリー量は大幅には増加しないものの、喫煙時のメントール香喫味をさらに改善することが可能である。
【0042】
このように、上に示した手法を用いることにより、従来困難とされていたチャコールフィルタ付シガレットのメントール化を実現できる。
【0043】
実施例4〜5、比較例5
実施例1〜3、比較例1〜4の手法を用いて、フィルタ中チャコール量20mg、フィルタ長27mm、タバコロッド長57mmのチャコールフィルタ付シガレットを作製した。各シガレットの仕様を表3に示す。
【0044】
ここで、タバコ充填材にメントール/CD包接体を以下のようにして添加した。すなわち。タバコ細粉35重量%、補強剤(パルプ解繊物)10重量%、結合剤(コーンスターチ)5重量%、およびメントール/CD包接体50重量%を混合機に入れ、適量の水分を添加した後、攪拌混合した。得られた混合物を水平対向式の一対のローラを用いてシート状に圧延成形し、これを乾燥して圧延シートタバコを作製した。作製した圧延シートタバコを細刻し、タバコ充填材中に12〜15重量%配合した(残りは通常の葉タバコ刻)。
【表3】

【0045】
こうして作製した各シガレットを、気温22℃、相対湿度60%の下で2ヶ月間蔵置し、実施例1〜3、比較例1〜4におけるように主流煙中のメントール量を測定した。結果を表4に示す。
【表4】

【0046】
比較例5のシガレットは、比較例1と同様に、メントールを包接せずにそのまま使用しているため、蔵置中にメントールがチャコールに吸着し、喫煙時にメントールはほとんどデリバリーされない。
【0047】
これに対し、実施例4〜5のシガレットのように、メントール/CD包接体をタバコ充填材に添加した場合には、一般的なメントールタバコ製品相当のメントールデリバリー量を実現できる。また、実施例2のシガレットと同様に、実施例5のシガレットでは、メントール/CD包接体をタバコ充填材のみに添加する場合と比べて、少ないタバコ充填材へのメントール/CD包接体の添加量で、実施例1と同等のメントールデリバリー量を実現できる。
【0048】
ここで、実施例4〜5のシガレットのようにフィルタ中チャコール量を20mgとした場合には、先に示した実施例1〜3のシガレットのようなフィルタ中50mgのチャコール量と比べて、より少ないタバコ充填材へのメントール/CD包接体の添加量で、一般的なメントールタバコ製品相当のメントールデリバリー量を実現できる。
【0049】
実施例6〜8、比較例6
実施例1〜3、比較例1〜4の手法を用いて、フィルタ中チャコール量50mg、フィルタ長27mm、タバコロッド長57mmのチャコールフィルタ付シガレットを作製した。各シガレットの仕様を表5に示す。
【表5】

【0050】
実施例6〜8、比較例6のシガレットを、通常の市販品と同様の形態で包装し(1つのパッケージにつき20本)、温度および湿度が以下のとおり制御された蔵置環境1および2の下で蔵置した。
【0051】
蔵置環境1:気温22℃、相対湿度60%の一定条件
蔵置環境2:気温50℃、相対湿度23%での14時間の蔵置と、その後の、気温25℃、相対湿度65%での10時間の蔵置を繰り返し行う。
【0052】
所定期間蔵置後のシガレットについての主流煙中のメントール量を、実施例1〜3、比較例1〜4におけるように測定した。結果を図1に示す。図1Aは、蔵置環境1で蔵置したシガレットについての結果であり、図1Bは、蔵置環境2で蔵置したシガレットについての結果である。図1において、線a〜cは、実施例6〜8のシガレットについての結果を示し、線dは、比較例6のシガレットについての結果を示す。
【0053】
図1に示す結果から、メントールをCDに包接することなく直接タバコ充填材に添加した比較例6のシガレットでは、シガレット作製直後は市販メントールタバコ製品レベルのメントールデリバリー量を達成しているものの、いずれの蔵置環境下での蔵置でも、蔵置時間の経過とともに、メントールデリバリー量が大幅に減少することがわかる。
【0054】
これに対し、実施例6〜8のシガレットでは、蔵置時間が経過してもメントールデリバリー量の変化が少ない。このことは、メントールをCDに包接することにより、蔵置中のメントールのチャコールへの移行(吸着)が大幅に抑制されたことを意味する。また、気温および相対湿度が高い蔵置環境2の下においても、メントールのデリバリー量の変化が小さく、メントールの貯蔵安定性に優れていることがわかる。
【0055】
次に、実施例6〜8、比較例6で作製したシガレットを、包装することなく、蔵置環境1の下で蔵置し、蔵置後のシガレットについてのメントールの相対量を上記と同様に測定した。結果を図2に示す。この場合でも、メントールをCDに包接することなく直接タバコ充填材に添加した比較例6のシガレットでは蔵置時間の経過とともに、メントールデリバリー量が大幅に減少するのに対し、メントール/CD包接体を添加した実施例6〜8のシガレットでは、蔵置時間が経過してもメントールデリバリー量の変化が少ない。
【0056】
この結果は、メントール/CD包接体を用いた技術がチャコールフィルタ付メントールシガレットの実現に止まらず、メントールを添加したタバコ刻の取り扱いに大きな自由度を与えるものとなり得ることを示している。すなわち、従来行われているタバコ刻へのメントール添加手法では、図2に示したとおり、添加したメントールがタバコ刻から急速に揮発する。そのため、製造工程における、タバコ刻にメントールを添加した直後のシガレット巻上・包装時のメントールの揮発、非メントールタバコ製品への移り香防止対策の必要性、あるいは販売直後の消費者におけるパッケージ開封後のメントール揮発によるメントール香喫味の減少などの問題をはらんであるのが現状であるが、CDにメントールを包接することによって、このような問題を解決できることを示している。
【0057】
以上述べたように、本発明により、従来困難とされていたチャコールフィルタ付シガレットのメントール化を実現できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延シートタバコまたは押し出しシートタバコの刻を8重量%以上の割合で含有するタバコ充填材からなるタバコロッドとこのタバコロッドの外周を巻装するシガレット巻紙とを備えるタバコ部、およびこのタバコ部の一端に取り付けられたチャコールフィルタを備えるフィルタ部を備え、前記圧延シートタバコまたは押し出しシートタバコの刻に、メントールを包接したシクロデキストリンが配合されていることを特徴とするチャコールフィルタ付きメントールシガレット。
【請求項2】
前記フィルタ部が、メントールを包接したシクロデキストリンを含むことを特徴とする請求項1に記載のチャコールフィルタ付きメントールシガレット。
【請求項3】
メントールの総量が、タバコ充填材の重量の3%以下の割合で存在することを特徴とする請求項1に記載のチャコールフィルタ付きメントールシガレット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−210223(P2012−210223A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149739(P2012−149739)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【分割の表示】特願2009−516216(P2009−516216)の分割
【原出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】