説明

チャック装置および旋盤

【課題】保持時にワークに歪みが発生しにくいチャック装置および旋盤を提供することを課題とする。
【解決手段】チャック装置2は、チャック本体20と、チャック本体20に配置され磁性材料製のワークWを保持する移動式保持部225、235を有する移動式保持部材22、23と、チャック本体20に配置されワークWの軸方向端面に当接する固定式保持部210を有する固定式当金21と、を備える。移動式保持部225、235は、磁性材料製であり、少なくともワークWを励磁して発生する磁力によりワークWに吸着する。移動式保持部225、235は、ワークWに吸着した位置で、ワークWを保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを所定の位置に保持するチャック装置および当該チャック装置を有する旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネットチャック装置は、磁性材料製のワーク(加工対象物)を磁力で吸引して保持している。すなわち、マグネットチャック装置の保持面にワークの被保持面が磁気吸着することにより、ワークは保持されている。
【0003】
しかしながら、ワークが脆弱であり、かつ保持面と被保持面とが整合していない場合、ワークを保持する際に、保持面に整合するように被保持面が吸引され、ワークが歪んだ状態で(弾性復元力を蓄積した状態で)保持されるおそれがある。この場合、歪んだワークに対して、切削などの加工が施されてしまう。このため、磁気吸引力を解除すると、ワークは自身の弾性復元力により、元の形状に戻ろうとして再び変形する。したがって、結果的にワークの加工精度が低下してしまう。
【0004】
この点に鑑みて、特許文献1には、まず弱励磁状態でワークを保持面に弱く吸着し、次に流体圧によりピンを突出させワークの下面を支持し、最後に強励磁状態に切り替えてワークを保持面に強く吸着するマグネットチャック装置が開示されている。ピン突出の際、ワークは保持面に弱く吸着している。このため、ワークがピンによりリフトアップされるのを抑制することができる。
【0005】
また、特許文献2には、まずピンを突出させワークの下面を支持し、次に磁力によりワークを保持面に吸着するマグネットチャック装置が開示されている。ピンに対しては、流体の流体圧と、ばねの弾性力と、が互いに反対方向に作用している。すなわち、流体圧はピンを突出させる方向に、弾性力はピンを没入させる方向に、各々作用している。ばねの弾性力を調整することにより、ワークがピンによりリフトアップされるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−315538号公報
【特許文献2】特開2009−255221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2のマグネットチャック装置によると、保持面と被保持面との不整合を、移動可能なピンにより補うことができる。すなわち、保持面に対して被保持面が部分的に浮いている場合、保持面から突出するピンにより、浮いている被保持面を支持することができる。このため、ワークを保持する際に、保持面に整合するように被保持面が吸引されにくい。したがって、歪みのない状態(自然状態)に近い状態のワークに対して、切削などの加工を施すことができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1、2のピンは、流体圧や弾性力などにより駆動され、ワークの被保持面に当接している。このため、ピンに押圧されることにより、やはりワークが歪んでしまう。したがって、その分、ワークの加工精度が低下してしまう。
【0009】
本発明のチャック装置および旋盤は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、保持時にワークに歪みが発生しにくいチャック装置および旋盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するため、本発明のチャック装置は、チャック本体と、該チャック本体に配置され磁性材料製のワークを保持する移動式保持部を有する移動式保持部材と、該チャック本体に配置され該ワークの軸方向端面に当接する固定式保持部を有する固定式当金と、を備えるチャック装置であって、前記移動式保持部は、磁性材料製であり、少なくとも前記ワークを励磁して発生する磁力により該ワークに吸着することを特徴とする。
【0011】
ワークは磁性材料製である。このため、ワークは、ワーク外部からの磁場により励磁され、磁化する。つまり、ワークは磁石になる。一方、移動式保持部材の移動式保持部も磁性材料製である。また、移動式保持部は移動可能である。したがって、移動式保持部は、磁化したワークに吸着する。移動式保持部は、ワークに吸着した位置で、ワークを保持する。
【0012】
本発明のチャック装置によると、移動式保持部が、保持対象であるワークに吸引されることにより、駆動される。このため、移動式保持部が流体圧や弾性力などによりワーク反対側から押圧され駆動される場合と比較して、ワークに歪みが発生しにくい。したがって、切削などの加工後に磁力を解除しても、ワークが変形しにくい。よって、ワークの加工精度が向上する。
【0013】
また、移動式保持部は、保持対象であるワークからの磁力により、ワークに吸着している。このため、移動式保持部とワークとの間に隙間が発生しにくい。したがって、加工時にワークをしっかりと保持することができる。
【0014】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記ワークに吸着した状態の前記移動式保持部を固定するロック機構部を備える構成とする方がよい。本構成によると、ワークに吸着した移動式保持部を、ロック機構部により固定することができる。このため、加工時にワークをしっかりと保持することができる。
【0015】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記移動式保持部材は、前記ワークの前記軸方向端面を保持する移動式当金および該ワークの側周面を保持する移動式爪のうち、少なくとも一方である構成とする方がよい。本構成によると、移動式当金の移動式保持部によりワークの軸方向端面を保持することができる。また、移動式爪の移動式保持部によりワークの側周面を保持することができる。
【0016】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記移動式保持部材は、前記移動式当金であり、該移動式当金の前記移動式保持部は、前記固定式保持部に当接した前記ワークの前記軸方向端面に対して軸方向に離間して設定される非吸着位置と、該固定式保持部に当接した該ワークの該軸方向端面に吸着する吸着位置と、の間を往復動可能な構成とする方がよい。
【0017】
本構成によると、ワークの保持は以下の手順で行われる。まず、移動式当金の移動式保持部を非吸着位置に待機させた状態で、固定式当金の固定式保持部をワークの軸方向端面に当接させる。次に、移動式当金の移動式保持部を非吸着位置から吸着位置まで移動させることにより、移動式保持部をワークの軸方向端面に当接させる。そして、固定式保持部および移動式保持部により、ワークを保持する。
【0018】
本構成によると、非吸着位置から吸着位置まで移動する際の移動式保持部の駆動力は、ワークからの磁力である。このため、移動式保持部が吸着位置に到達しても、つまり移動式保持部がワークの軸方向端面に吸着しても、ワークが固定式保持部からずれにくい。また、本構成によると、固定式保持部により、ワークの大まかな加工位置を決定することができる。
【0019】
(5)好ましくは、上記(3)の構成において、前記移動式保持部材は、前記移動式爪であり、該移動式爪の前記移動式保持部は、前記固定式当金に当接した前記ワークの側周面に対して径方向に離間して設定される非吸着位置と、該固定式保持部に当接した該ワークの該側周面に吸着する吸着位置と、の間を往復動可能な構成とする方がよい。
【0020】
本構成によると、ワークの保持は以下の手順で行われる。まず、移動式爪の移動式保持部を非吸着位置に待機させた状態で、固定式当金の固定式保持部をワークの軸方向端面に当接させる。次に、移動式爪の移動式保持部を非吸着位置から吸着位置まで移動させることにより、移動式保持部をワークの側周面に当接させる。そして、固定式保持部および移動式保持部により、ワークを保持する。
【0021】
本構成によると、非吸着位置から吸着位置まで移動する際の移動式保持部の駆動力は、ワークからの磁力である。このため、移動式保持部が吸着位置に到達しても、つまり移動式保持部がワークの側周面に吸着しても、ワークが固定式保持部からずれにくい。また、本構成によると、固定式保持部により、ワークの大まかな加工位置を決定することができる。
【0022】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記固定式当金は三つ配置され、前記ワークの前記軸方向端面は、三つの該固定式当金の前記固定式保持部に少なくとも三点で当接する構成とする方がよい。
【0023】
チャック装置がワーク保持用の平面状の保持面を有している場合、巨視的には、ワークの軸方向端面は保持面に全面的に面接触している。しかしながら、微視的には、ワークの軸方向端面は保持面に三点の当接点で当接している。保持面が平面状の場合、当該三点の当接点の位置を制御することは困難である。
【0024】
この点、本構成によると、三つの固定式保持部がワークの軸方向端面に当接している。このため、固定式保持部の位置により、チャック装置とワークとの当接点の位置を調整することができる。
【0025】
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記移動式保持部材は、前記移動式保持部に摺接する磁性材料製の摺動部材を備える構成とする方がよい。
【0026】
本構成によると、チャック本体、移動式保持部材、ワークを巡る磁気回路を形成しやすくなる。また、磁性材料製の摺動部材はチャック本体側に固定配置されているため、磁力により、ワークと移動式保持部材とチャック本体とを一体とすることができる。また、磁力を利用して、ワークに吸着した位置で、移動式保持部を固定することができる。ただし、勿論、上記(2)の構成のロック機構部を用いて移動式保持部を固定してもよい。
【0027】
(8)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記移動式保持部材は、前記移動式保持部に摺接する非磁性材料製の摺動部材を備える構成とする方がよい。
【0028】
本構成によると、移動式保持部と摺動部材との間の摺動界面付近に、ワークの加工屑が吸着しにくい。このため、チャック装置のメンテナンスが容易である。また、ワークの加工屑により、移動式保持部の移動が阻害されにくい。
【0029】
(9)上記課題を解決するため、本発明の旋盤は、上記(1)ないし(8)のいずれかのチャック装置と、前記ワークに切削加工を施すバイトを有する工具台と、該工具台を少なくとも二軸方向に動かすスライド部と、を備えることを特徴とする。
【0030】
本発明の旋盤によると、移動式保持部材の移動式保持部が、ワークに吸引されることにより、駆動される。このため、ワークに歪みが発生しにくい。したがって、切削加工後に磁力を解除しても、ワークが変形しにくい。よって、ワークの加工精度が向上する。
【0031】
また、移動式保持部は、ワークからの磁力により、ワークに吸着している。このため、移動式保持部とワークとの間に隙間が発生しにくい。したがって、切削加工時にワークをしっかりと保持することができる。
【0032】
(10)好ましくは、上記(9)の構成において、前記チャック装置または前記スライド部は、前記ワークを励磁する励磁部を有する構成とする方がよい。チャック装置が励磁部を有する場合、ワークはチャック装置により磁化される。スライド部が励磁部を有する場合、ワークは工具台を介してスライド部により磁化される。本構成によると、ワークに当接するチャック装置、工具台を利用して、ワークを磁化することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、保持時にワークに歪みが発生しにくいチャック装置および旋盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第一実施形態の旋盤の透過斜視図である。
【図2】同旋盤のブロック図である。
【図3】同旋盤のチャック装置の上面図である。
【図4】同チャック装置の固定式当金の斜視図である。
【図5】同固定式当金の透過分解斜視図である。
【図6】同固定式当金の径方向断面図である。
【図7】同チャック装置の移動式当金の斜視図である。
【図8】同移動式当金の透過分解斜視図である。
【図9】同移動式当金のケース部およびベース部付近の透過分解斜視図である。
【図10】同ケース部付近の透過分解斜視図である。
【図11】同移動式当金の径方向断面図である。
【図12】同チャック装置の移動式爪の斜視図である。
【図13】同移動式爪の透過分解斜視図である。
【図14】同移動式爪のケース部およびベース部付近の透過分解斜視図である。
【図15】同ケース部付近の透過分解斜視図である。
【図16】同移動式爪の径方向断面図である。
【図17】ワーク保持方法の位置決めステップにおける、同チャック装置の固定式当金の径方向断面図である。
【図18】同ステップにおける、同チャック装置の移動式当金の径方向断面図である。
【図19】同ステップにおける、同チャック装置の移動式爪の径方向断面図である。
【図20】ワーク保持方法の吸着ステップにおける、同チャック装置の移動式当金の径方向断面図である。
【図21】同ステップにおける、同チャック装置の移動式爪の径方向断面図である。
【図22】図20の円XXII内の拡大図である。
【図23】図21の円XXIII内の拡大図である。
【図24】ワーク保持方法の固定ステップにおける、同チャック装置の移動式当金の径方向断面図である。
【図25】同ステップにおける、同チャック装置の移動式爪の径方向断面図である。
【図26】同チャック装置の移動式当金の動作説明図である。(a)は非吸着位置である。(b)は吸着位置である。
【図27】同チャック装置の移動式爪の動作説明図である。(a)は非吸着位置である。(b)は吸着位置である。
【図28】ワーク保持方法の位置決めステップにおける、第二実施形態の旋盤のチャック装置の移動式当金の径方向断面図である。
【図29】ワーク保持方法の固定ステップにおける、同移動式当金の径方向断面図である。
【図30】(a)は、ワーク保持方法の固定ステップにおける、第三実施形態の旋盤のチャック装置の模式図である。(b)は、ワーク切削加工中における、同チャック装置の模式図である。(c)は、ワーク切削加工後における、同チャック装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の旋盤の実施の形態について説明する。以下の説明は、本発明のチャック装置の説明を兼ねるものである。
【0036】
<第一実施形態>
[旋盤の構成]
まず、本実施形態の旋盤の構成について説明する。図1に、本実施形態の旋盤の透過斜視図を示す。図2に、同旋盤のブロック図を示す。図1、図2に示すように、本実施形態の旋盤1は、主軸51が上下方向に延在するいわゆる立型旋盤である。旋盤1は、チャック装置2と、工具台3と、スライド部4と、テーブル5と、制御装置6と、ベッド70と、コラム72と、を備えている。
【0037】
(テーブル5、ベッド70)
テーブル5は、テーブル本体50と、主軸51と、を備えている。主軸51は、ベッド70に収容されている。主軸51の上端は、ベッド70の前部上面から突出している。テーブル本体50は、主軸51の上端に固定されている。
【0038】
ベッド70の後部には、主軸モータ710と、中間軸711と、制御装置6と、が収容されている。主軸モータ710の駆動軸の上端と中間軸711の上端との間には、ベルト712が巻き架けられている。中間軸711の下端と主軸51の下端との間には、ベルト713が巻き架けられている。主軸モータ710の駆動力は、ベルト712、中間軸711、ベルト713、主軸51を介して、テーブル本体50に伝達される。すなわち、テーブル本体50は、主軸モータ710の駆動力により、水平面内における主軸51の軸周りに回転可能である。
【0039】
(コラム72)
コラム72は、ベッド70の後部の前上部に配置されている。コラム72は、ボールねじ部721と、X軸モータ722と、を備えている。ボールねじ部721は、左右方向に延在している。X軸モータ722の駆動軸は、ボールねじ部721のシャフト部に連結されている。
【0040】
(スライド部4、工具台3)
スライド部4は、X軸スライド部40と、Z軸スライド部41と、ボールねじ部402と、Z軸モータ403と、を備えている。
【0041】
X軸スライド部40は、X軸下スライド720と、X軸スライド400と、を備えている。X軸下スライド720は、コラム72の前方に固定されている。X軸下スライド720は、左右方向(X軸方向に対応)に延在している。X軸スライド400は、X軸下スライド720に係合している。X軸スライド400は、X軸下スライド720に対して、左右方向に移動可能である。X軸スライド400には、ボールねじ部721のナット部が取り付けられている。X軸モータ722の駆動力は、ボールねじ部721のシャフト部およびナット部を介して、X軸スライド400に伝達される。すなわち、X軸スライド400は、X軸モータ722の駆動力により、左右方向に移動可能である。
【0042】
Z軸スライド部41は、Z軸下スライド401と、Z軸スライド410と、を備えている。Z軸下スライド401は、上下方向(Z軸方向に対応)に延在している。Z軸下スライド401は、X軸スライド400の前方に配置されている。ボールねじ部402は、上下方向に延在している。Z軸モータ403は、Z軸下スライド401の上端に配置されている。Z軸モータ403の駆動軸は、ボールねじ部402のシャフト部に連結されている。
【0043】
Z軸スライド410は、Z軸下スライド401に係合している。Z軸スライド410は、Z軸下スライド401に対して、上下方向に移動可能である。Z軸スライド410には、ボールねじ部402のナット部が取り付けられている。Z軸モータ403の駆動力は、ボールねじ部402のシャフト部およびナット部を介して、Z軸スライド410に伝達される。すなわち、Z軸スライド410は、Z軸モータ403の駆動力により、上下方向に移動可能である。
【0044】
工具台3は、Z軸スライド410の下端に配置されている。工具台3には、バイト30が取り付けられている。バイト30により、SUJ(JIS G4805 高炭素クロム軸受鋼)材製であって円筒状のワークWの内周面、外周面、および端面に切削加工が施される。工具台3は、X軸スライド部40により左右方向に、Z軸スライド部41により上下方向に、二軸方向に駆動される。
【0045】
(制御装置6)
図2に示すように、制御装置6は、コンピューター60と、入出力インターフェイス61と、モータ駆動回路と、励磁部駆動回路と、を備えている。モータ駆動回路は、X軸モータ722、Z軸モータ403、主軸モータ710に、電気的に接続されている。励磁部駆動回路は、後述するチャック装置2の励磁部24に、電気的に接続されている。制御装置6は、X軸スライド部40、Z軸スライド部41を駆動して、工具台3を操作している。また、制御装置6は、励磁部24(具体的には電磁石)をオンオフ制御している。
【0046】
[チャック装置2の構成]
図1に示すように、チャック装置2(図1においては簡略化して示す。)は、テーブル本体50に取り付けられている。このため、チャック装置2は、主軸モータ710の駆動力により、水平面内における主軸51の軸周りに回転可能である。チャック装置2は、バイト30がワークWに切削加工を施す際、ワークWを下方および径方向外側から保持、固定している。
【0047】
図3に、本実施形態の旋盤のチャック装置の上面図を示す。表1に、チャック装置2の周方向配置一覧表を示す。表1の角度と、図3の角度(チャック本体20の中心角)と、は対応している。
【表1】

【0048】
図3、表1に示すように、チャック装置2は、チャック本体20と、三個の固定式当金21と、十二個の移動式爪22と、九個の移動式当金23と、励磁部24と、ロック機構部25、26と、十二個のセパレータ28と、二十四個のガイド部29と、を備えている。
【0049】
(チャック本体20、励磁部24、セパレータ28、ガイド部29)
チャック本体20は、SC(JIS G4051 機械構造用炭素鋼)材製であって円板状を呈している。チャック本体20は、図1に示すテーブル本体50に取り付けられている。
【0050】
二十四個のガイド部29は、各々、断面T字の溝状を呈している。ガイド部29は、チャック本体20の上面に凹設されている。二十四個のガイド部29は、チャック本体20の中心に対して、放射状に延在している。二十四個のガイド部29は、15°ごとに配置されている。
【0051】
十二個のセパレータ28は、各々、エポキシ樹脂製であって径方向外側に開口するU字状を呈している。セパレータ28は、チャック本体20の上面に埋設されている。セパレータ28は、ガイド部29の径方向内端を囲むように、配置されている。十二個のセパレータ28は、30°ごと(0°位置、30°位置・・・)に配置されている。
【0052】
励磁部24は、電磁石である。励磁部24は、磁極(N極とS極)を備えている。N極は、セパレータ28のU字内側に配置されている。S極は、セパレータ28のU字外側に配置されている。このため、N極(0°位置、30°位置・・・)と、S極(15°位置、45°位置・・・)と、は15°ごとに交互に配置されている。また、周方向に隣り合うN極とS極とは、セパレータ28により仕切られている。
【0053】
(固定式当金21、移動式爪22、移動式当金23の配置)
0°位置〜120°位置までの間の区間L1においては、固定式当金21(0°位置)、移動式爪22(15°位置)、移動式当金23(30°位置)、移動式爪22(45°位置)、移動式当金23(60°位置)、移動式爪22(75°位置)、移動式当金23(90°位置)、移動式爪22(105°位置)、固定式当金21(120°位置)の順に、各部材が15°ごとに配置されている。なお、120°位置〜240°位置までの間の区間L2、240°位置〜360°位置までの間の区間L3においても、同様に各部材が配置されている。
【0054】
(固定式当金21)
図4に、本実施形態の旋盤のチャック装置の固定式当金の斜視図を示す。図5に、同固定式当金の透過分解斜視図を示す。図6に、同固定式当金の径方向断面図を示す。図4〜図6に示すように、固定式当金21は、固定式保持部210と、二個の被ガイド部211と、二本のボルト212と、を備えている。
【0055】
固定式保持部210は、SC材製であって直方体ブロック状を呈している。固定式保持部210は、ガイド部29の上方に配置されている。固定式保持部210の上面の径方向内側には、平面状の固定式保持面210aが、一段高く配置されている。図3に示すように、固定式保持面210aは、ワークWの下端面を下方から保持している。ワークWの下端面は、本発明の「軸方向端面」の概念に含まれる。
【0056】
二個の被ガイド部211は、各々、SC材製であって断面T字状を呈している。被ガイド部211は、ガイド部29の内部に配置されている。被ガイド部211は、ガイド部29に沿って、径方向に摺動可能である。二本のボルト212は、固定式保持部210と、二個の被ガイド部211と、を上下方向に連結している。
【0057】
固定式当金21は、ワークWの径に応じて、ボルト212を緩めた状態で、ガイド部29に沿って径方向に移動可能である。ボルト212を増し締めすることにより、固定式当金21の径方向位置を決定することができる。
【0058】
(移動式当金23)
図7に、本実施形態の旋盤のチャック装置の移動式当金の斜視図を示す。図8に、同移動式当金の透過分解斜視図を示す。図9に、同移動式当金のケース部およびベース部付近の透過分解斜視図を示す。図10に、同ケース部付近の透過分解斜視図を示す。図11に、同移動式当金の径方向断面図を示す。
【0059】
図7〜図11に示すように、移動式当金23は、ケース部230と、二個の被ガイド部231と、二本のボルト232と、ベース部233と、二本のボルト234と、移動式保持部235と、シャフト236と、ボルト236cと、カラー237と、ガイド板238と、二本のボルト238bと、を備えている。ケース部230は、本発明の「磁性材料製の摺動部材」の概念に含まれる。
【0060】
図7〜図9に示すように、ベース部233は、SC材製であって平板状を呈している。ベース部233は、長方形状の窓部233aを備えている。ベース部233は、ガイド部29の上方に配置されている。
【0061】
ケース部230は、SC材製であってブロック状を呈している。ケース部230は、ベース部233の上面に配置されている。二本のボルト234は、ケース部230と、ベース部233と、を上下方向に連結している。図10、図11に示すように、ケース部230は、保持部挿通孔230aと、ロック機構部挿通孔230cと、を備えている。保持部挿通孔230aは、ケース部230を上下方向に貫通している。保持部挿通孔230aの下端には、拡径部230bが配置されている。ロック機構部挿通孔230cは、径方向に延在している。ロック機構部挿通孔230cの径方向外端は、ケース部230の径方向外面に開口している。ロック機構部挿通孔230cの径方向内端は、保持部挿通孔230aの中間部に連通している。すなわち、保持部挿通孔230aと、ロック機構部挿通孔230cと、はT字状に連通している。
【0062】
図7、図8、図11に示すように、二個の被ガイド部231は、各々、SC材製であって断面T字状を呈している。被ガイド部231は、ガイド部29の内部に配置されている。被ガイド部231は、ガイド部29に沿って、径方向に摺動可能である。二本のボルト232のうち、径方向内側の長軸のボルト232は、ケース部230およびベース部233と、被ガイド部211と、を上下方向に連結している。二本のボルト232のうち、径方向外側の短軸のボルト232は、ベース部233と、被ガイド部211と、を上下方向に連結している。
【0063】
移動式当金23は、ワークWの径に応じて、ボルト232を緩めた状態で、ガイド部29に沿って径方向に移動可能である。ボルト232を増し締めすることにより、移動式当金23の径方向位置を決定することができる。
【0064】
図10、図11に示すように、移動式保持部235は、SC材製であって、上下方向に延在する円柱状を呈している。移動式保持部235は、保持部挿通孔230aに挿通されている。移動式保持部235は、移動式保持面235aと、シャフト収容凹部235bと、テーパ面235cと、フランジ部235dと、を備えている。フランジ部235dは、移動式保持部235の下端に配置されている。フランジ部235dは、拡径部230bに収容されている。フランジ部235dは、移動式保持部235が、ケース部230から上方に脱落するのを防止している。移動式保持面235aは、平面状を呈している。移動式保持面235aは、移動式保持部235の上面(頂面)に配置されている。図3に示すように、移動式保持面235aは、ワークWの下端面を下方から保持している。図10、図11に戻って、シャフト収容凹部235bは、移動式保持部235の下面に開口している。上方から下方に向かって尖るテーパ面235cは、移動式保持部235の外周面に配置されている。テーパ面235cは、ロック機構部挿通孔230cの径方向内端に表出している。
【0065】
カラー237は、SC材製であって、上下方向に延在する円筒状を呈している。カラー237は、シャフト収容凹部235bの内側に配置されている。
【0066】
シャフト236は、SC材製であって、上下方向に延在する円柱状を呈している。シャフト236は、胴部236aと、頸部236bと、を備えている。胴部236aは、シャフト収容凹部235b(具体的にはカラー237)の内側に配置されている。頸部236bは、胴部236aの下端に配置されている。頸部236bは、胴部236aよりも小径である。図9、図11に示すように、頸部236bは、ベース部233の窓部233a内に配置されている。
【0067】
図10、図11に示すように、ガイド板238は、SC材製であって長方形板状を呈している。ガイド板238は、ベース部233の窓部233a内に配置されている。ガイド板238は、ガイド部238aを備えている。ガイド部238aは、ガイド板238の径方向内縁に凹設されている。ガイド部238aは、径方向に延在している。ガイド板238は、移動式保持部235、シャフト236が、ケース部230から下方に脱落するのを防止している。二本のボルト238bは、ケース部230と、ガイド板238と、を上下方向に連結している。ボルト236cは、上下方向に延在している。ボルト236cは、頸部236bの下端面に螺設されている。ボルト236cおよび胴部236aは、ガイド部238aに対して、頸部236bが、上下方向にがたつくのを抑制している。
【0068】
(ロック機構部26)
図10、図11に示すように、ロック機構部26は、胴部260と、ボール部261と、を備えている。ロック機構部26は、ロック機構部挿通孔230cに挿通されている。胴部260は、SC材製であって、径方向に延在する円柱状を呈している。胴部260の外周面のねじ部は、ロック機構部挿通孔230cの内周面のねじ部に、螺合している。ボール部261は、SC材製であって真球状を呈している。ボール部261は、胴部260の径方向内端に埋設されている。ボール部261は、自身の球中心周りに、回転可能である。ボール部261は、テーパ面235cに型対称のカット面261aを備えている。図11に示すように、胴部260を増し締めすることにより、カット面261aはテーパ面235cに圧接する。
【0069】
(移動式爪22)
図12に、本実施形態の旋盤のチャック装置の移動式爪の斜視図を示す。図13に、同移動式爪の透過分解斜視図を示す。図14に、同移動式爪のケース部およびベース部付近の透過分解斜視図を示す。図15に、同ケース部付近の透過分解斜視図を示す。図16に、同移動式爪の径方向断面図を示す。
【0070】
図12〜図16に示すように、移動式爪22は、ケース部220と、二個の被ガイド部221と、二本のボルト222と、ベース部223と、二本のボルト224と、移動式保持部225と、シャフト226と、ボルト226cと、カラー227と、ガイド板228と、二本のボルト228bと、を備えている。ケース部220は、本発明の「磁性材料製の摺動部材」の概念に含まれる。
【0071】
図12〜図14に示すように、ベース部223は、SC材製であって平板状を呈している。ベース部223は、ガイド部29の上方に配置されている。
【0072】
ケース部220は、SC材製であって、周方向右側または周方向左側から見て中央が上方に突出する、T字状を呈している。ケース部220は、ベース部223の上面に配置されている。二本のボルト224は、ケース部220と、ベース部223と、を上下方向に連結している。図15、図16に示すように、ケース部220は、保持部挿通孔220aと、ロック機構部挿通孔220cと、を備えている。保持部挿通孔220aは、ケース部220を径方向に貫通している。保持部挿通孔220aの径方向外端には、拡径部220bが配置されている。ロック機構部挿通孔220cは、上下方向に延在している。ロック機構部挿通孔220cの上端は、ケース部220の上面に開口している。ロック機構部挿通孔220cの下端は、保持部挿通孔220aの中間部に連通している。すなわち、保持部挿通孔220aと、ロック機構部挿通孔220cと、はT字状に連通している。
【0073】
図12、図13、図16に示すように、二個の被ガイド部221は、各々、SC材製であって断面T字状を呈している。被ガイド部221は、ガイド部29の内部に配置されている。被ガイド部221は、ガイド部29に沿って、径方向に摺動可能である。二本のボルト222のうち、径方向内側の長軸のボルト222は、ケース部220およびベース部223と、被ガイド部211と、を上下方向に連結している。二本のボルト222のうち、径方向外側の短軸のボルト222は、ベース部223と、被ガイド部211と、を上下方向に連結している。
【0074】
移動式爪22は、ワークWの径に応じて、ボルト222を緩めた状態で、ガイド部29に沿って径方向に移動可能である。ボルト222を増し締めすることにより、移動式爪22の径方向位置を決定することができる。
【0075】
図15、図16に示すように、移動式保持部225は、SC材製であって、径方向に延在する円柱状を呈している。移動式保持部225は、保持部挿通孔220aに挿通されている。移動式保持部225は、移動式保持面225aと、シャフト収容凹部225bと、テーパ面225cと、フランジ部225dと、を備えている。フランジ部225dは、移動式保持部225の径方向外端に配置されている。フランジ部225dは、拡径部220bに収容されている。フランジ部225dは、移動式保持部225が、ケース部220から径方向内側に脱落するのを防止している。移動式保持面225aは、平面状を呈している。移動式保持面225aは、移動式保持部225の径方向内端面に配置されている。図3に示すように、移動式保持面225aは、ワークWの外周面を径方向外側から保持している。ワークWの外周面は、本発明の「側周面」の概念に含まれる。図15、図16に戻って、シャフト収容凹部225bは、移動式保持部225の径方向外端面に開口している。径方向内側から径方向外側に向かって尖るテーパ面225cは、移動式保持部225の外周面に配置されている。テーパ面225cは、ロック機構部挿通孔220cの下端に表出している。
【0076】
カラー227は、SC材製であって、径方向に延在する円筒状を呈している。カラー227は、シャフト収容凹部225bの内側に配置されている。
【0077】
シャフト226は、SC材製であって、径方向に延在する円柱状を呈している。シャフト226は、胴部226aと、頸部226bと、を備えている。胴部226aは、シャフト収容凹部225b(具体的にはカラー227)の内側に配置されている。頸部226bは、胴部226aの径方向外端に配置されている。頸部226bは、胴部226aよりも小径である。
【0078】
図15、図16に示すように、ガイド板228は、SC材製であって長方形板状を呈している。ガイド板228は、ガイド部228aを備えている。ガイド部228aは、ガイド板228の上縁に凹設されている。ガイド部228aは、上下方向に延在している。ガイド板228は、移動式保持部225、シャフト226が、ケース部220から径方向外側に脱落するのを防止している。二本のボルト228bは、ケース部220と、ガイド板228と、を径方向に連結している。ボルト226cは、径方向に延在している。ボルト226cは、頸部226bの径方向外端面に螺設されている。ボルト226cおよび胴部226aは、ガイド部228aに対して、頸部226bが、径方向にがたつくのを抑制している。
【0079】
(ロック機構部25)
図15、図16に示すように、ロック機構部25は、胴部250と、ボール部251と、を備えている。ロック機構部25は、ロック機構部挿通孔220cに挿通されている。胴部250は、SC材製であって、上下方向に延在する円柱状を呈している。胴部250の外周面のねじ部は、ロック機構部挿通孔220cの内周面のねじ部に、螺合している。ボール部251は、SC材製であって真球状を呈している。ボール部251は、胴部250の下端に埋設されている。ボール部251は、自身の球中心周りに、回転可能である。ボール部251は、テーパ面225cに型対称のカット面251aを備えている。図16に示すように、胴部250を増し締めすることにより、カット面251aはテーパ面225cに圧接する。
【0080】
[ワーク保持方法]
次に、本実施形態の旋盤を用いたワーク保持方法について説明する。ワーク保持方法は、位置決めステップと、吸着ステップと、固定ステップと、を有している。
【0081】
(位置決めステップ)
図17に、ワーク保持方法の位置決めステップにおける、本実施形態の旋盤のチャック装置の固定式当金の径方向断面図を示す。図18に、同ステップにおける、同チャック装置の移動式当金の径方向断面図を示す。図19に、同ステップにおける、同チャック装置の移動式爪の径方向断面図を示す。
【0082】
本ステップにおいては、まず、図3に示すように、ガイド部29に沿って三個の固定式当金21、十二個の移動式爪22、九個の移動式当金23をスライドさせることにより、ワークWの径に応じて、三個の固定式当金21、十二個の移動式爪22、九個の移動式当金23の径方向位置を決定する。
【0083】
次に、図17に示すように、三個の固定式当金21の固定式保持面210aに、ワークWの下端面を載置する。ワークWの下端面は、三個の固定式保持面210aにより、少なくとも三点で支持される。
【0084】
続いて、作業者が、図1に示すZ軸スライド410に取り付けたダイヤルゲージ(インジケーター)の触手をワークWの内周面に当接させながら、主軸51を回転させる。そして、ワークWの径方向中心と、主軸51の回転中心と、を一致させる。
【0085】
図18に示すように、移動式当金23の移動式保持部235は、通常時、非吸着位置に待機している。非吸着位置においては、ワークWの下端面(つまり図17に示す固定式保持面210a)に対して、移動式保持面235aが、隙間G1だけ下方に離間している。
【0086】
図19に示すように、移動式爪22の移動式保持部225は、通常時、非吸着位置に待機している。非吸着位置においては、ワークWの外周面に対して、移動式保持面225aが、隙間G2だけ径方向外側に離間している。
【0087】
(吸着ステップ)
図20に、ワーク保持方法の吸着ステップにおける、本実施形態の旋盤のチャック装置の移動式当金の径方向断面図を示す。図21に、同ステップにおける、同チャック装置の移動式爪の径方向断面図を示す。
【0088】
本ステップにおいては、図2、図3に示すように、制御装置6が励磁部24の電磁石をオンにする。電磁石をオンにすると、発生する磁界により、図3、図17に示すように、三つの固定式当金21が励磁され磁化される。ここで、三つの固定式当金21にはワークWが載置されている。このため、ワークWも励磁され磁化される。すなわち、ワークWが磁石になる。
【0089】
ワークWが磁化されると、図20に示すように、ワークWの磁力により、移動式当金23の移動式保持部235が上昇し、ワークWの下端面に吸着する。すなわち、移動式保持部235が非吸着位置から吸着位置まで移動する。
【0090】
同様に、ワークWが磁化されると、図21に示すように、ワークWの磁力により、移動式爪22の移動式保持部225が径方向内側に移動し、ワークWの外周面に吸着する。すなわち、移動式保持部235が非吸着位置から吸着位置まで移動する。
【0091】
(固定ステップ)
図22に、図20の円XXII内の拡大図を示す。図23に、図21の円XXIII内の拡大図を示す。図24に、ワーク保持方法の固定ステップにおける、本実施形態の旋盤のチャック装置の移動式当金の径方向断面図を示す。図25に、同ステップにおける、同チャック装置の移動式爪の径方向断面図を示す。
【0092】
図22に示すように、移動式保持部235が移動すると、ロック機構部26のカット面261aと、移動式保持部235のテーパ面235cと、の間に隙間G3が発生する。同様に、図23に示すように、移動式保持部225が移動すると、ロック機構部25のカット面251aと、移動式保持部225のテーパ面225cと、の間に隙間G4が発生する。
【0093】
本ステップにおいては、図24に示すように、ロック機構部26の胴部260を増し締めすることにより、カット面261aをテーパ面235cに圧接させる。そして、吸着位置の状態で、つまりワークWの下端面に吸着した状態で、移動式保持部235を固定する。 同様に、本ステップにおいては、図25に示すように、ロック機構部25の胴部250を増し締めすることにより、カット面251aをテーパ面225cに圧接させる。そして、吸着位置の状態で、つまりワークWの外周面に吸着した状態で、移動式保持部225を固定する。ワーク保持方法においては、このようにして、ワークWを下方および径方向外側から保持する。
【0094】
その後、図1に示す旋盤1は、ワークWに切削加工を施す。まず、図2に示す制御装置6が、図1に示すテーブル5を回転駆動する。つまり、チャック装置2およびワークWを回転させる。それから、図2に示す制御装置6が、図1に示すバイト30を用いて、ワークWに所定の切削加工を施す。
【0095】
旋盤1から加工後のワークWを取り出す際は、まず、制御装置6が励磁部24の電磁石をオフにすることにより、ワークWに対する移動式保持部235、225の吸着力を解除する。次に、ロック機構部26、25の胴部260、250を緩め、移動式保持部235、225を吸着位置から非吸着位置まで移動させる。なお、移動式保持部235は、自重により、非吸着位置まで落下する。最後に、三個の固定式当金21に載置されたワークWを取り出す。
【0096】
[作用効果]
次に、本実施形態の旋盤の作用効果について説明する。図26に、本実施形態の旋盤のチャック装置の移動式当金の動作説明図を示す。(a)は非吸着位置を、(b)は吸着位置を、それぞれ示す。図27に、同チャック装置の移動式爪の動作説明図を示す。(a)は非吸着位置を、(b)は吸着位置を、それぞれ示す。なお、図26、図27の角度は、図3、表1に対応している。
【0097】
図26に示すように、本実施形態のチャック装置2によると、ワークWの下端面の面精度が悪い場合であっても、ワークWの下端面に移動式当金23の移動式保持部235が吸着することにより、ワークWの下端面の形状に倣って、移動式当金23によりワークWを保持することができる。
【0098】
同様に、図27に示すように、本実施形態のチャック装置2によると、ワークWの外周面の面精度が悪い場合であっても、ワークWの外周面に移動式爪22の移動式保持部225が吸着することにより、ワークWの外周面の形状に倣って、移動式爪22によりワークWを保持することができる。この保持は、移動式当金23でワークWを保持した状態、または従来の三ツ爪チャックなどでワークWを軽くクランプした状態で、ワークWの径方向中心と主軸51の回転中心とを合わせた後の保持工程であり、移動式爪22の保持力では、ワークWの位置は基本的に動かない。
【0099】
このように、本実施形態のチャック装置2によると、移動式保持部235、225が流体圧や弾性力などによりワーク反対側から押圧され駆動される場合と比較して、ワークWに歪みが発生しにくい。したがって、加工後に磁力を解除しても、ワークWが変形しにくい。よって、ワークWの加工精度が向上する。
【0100】
また、移動式保持部235、225は、保持対象であるワークWからの磁力により、ワークWに吸着している。このため、移動式保持部235、225とワークWとの間に隙間が発生しにくい。したがって、加工時にワークWをしっかりと保持することができる。また、移動式保持部235がワークWからの磁力に吸引されて動くため、ワークWが軽量の場合であっても、ワークWが固定式保持部210からリフトアップされにくい。
【0101】
また、移動式保持部235、225がワークWからの磁力により動くため、スプリングなどの押圧部材を用いる場合と比較して、移動式保持部235、225の動作信頼性が高い。
【0102】
また、本実施形態のチャック装置2によると、図24、図25に示すように、ワークWに吸着した移動式保持部235、225を、ロック機構部26、25により固定することができる。このため、ワークWに歪みを与えずに保持した移動式保持部235、225の位置が、ワークWの加工時における切削負荷力や回転による遠心力に負けて動くことがない。
【0103】
また、本実施形態のチャック装置2によると、図1に示す旋盤1でワークWに切削加工を施す際、図2に示す励磁部24はオンのままである。この点においても、加工時にワークWをしっかりと保持することができる。
【0104】
加工時にワークWをしっかりと保持することができると、ワークWとチャック装置2とが一体化されるため、擬似的にワークWの質量(mass)を大きくすることができる。したがって、加工時にワークがびびりにくい。このように、本実施形態のチャック装置2によると、ワークWの振動減衰性が高い。
【0105】
また、本実施形態のチャック装置2によると、図18〜図21に示すように、非吸着位置から吸着位置まで移動する際の移動式保持部235、225の駆動力は、ワークWからの磁力である。このため、移動式保持部235、225が吸着位置に到達しても、つまり移動式保持部235、225がワークWに吸着しても、図17に示すように、ワークWが固定式保持部210からずれにくい。また、本実施形態のチャック装置2によると、固定式保持部210により、ワークWの大まかな加工位置を決定することができる。
【0106】
また、本実施形態のチャック装置2によると、図3、図17に示すように、三つの固定式保持部210がワークWの下端面に当接している。このため、固定式保持部210の位置により、チャック装置2とワークWとの当接点の位置を調整することができる。
【0107】
また、本実施形態のチャック装置2によると、図18〜図21に示すように、移動式保持部235、225に摺接するケース部230、220がSC材製である。このため、チャック本体20、移動式保持部材(移動式当金23、移動式爪22)、ワークWを巡る磁気回路を形成しやすくなる。また、SC材製のケース部230、220はチャック本体20側に固定配置されているため、磁力により、ワークWと移動式保持部材(移動式当金23、移動式爪22)とチャック本体20とを一体とすることができる。
【0108】
また、本実施形態のチャック装置2によると、図24、図25に示すように、移動式保持部235、225と、シャフト236、226(カラー237、227)と、の間の摺動界面が、上方(ワークW側)に開口していない。このため、当該摺動界面に、ワークWの加工屑が進入しにくい。
【0109】
また、本実施形態のチャック装置2によると、図24、図25に示すように、シャフト236、226(頸部236b、226b)と、ガイド部238a、228aと、の間の摺動界面が、上方(ワークW側)に開口していない。このため、当該摺動界面に、ワークWの加工屑が進入しにくい。
【0110】
また、本実施形態のチャック装置2によると、図18〜図21に示すように、非吸着位置から吸着位置まで移動する際の移動式保持部235、225の移動方向とガイド部238a、228aの延在方向とが、一致している。このため、移動式保持部235、225の移動を円滑に行うことができる。
【0111】
また、本実施形態のチャック装置2によると、図24に示すように、ワークWの加工時に、カット面261aとテーパ面235cとが、移動式保持部235の移動方向(上下方向)に対して交差する方向に当接している。このため、加工時に移動式保持部235が下方に移動しにくい。同様に、図25に示すように、ワークWの加工時に、カット面251aとテーパ面225cとが、移動式保持部225の移動方向(径方向)に対して交差する方向に当接している。このため、加工時に移動式保持部225が径方向外側に移動しにくい。
【0112】
<第二実施形態>
本実施形態の旋盤と第一実施形態の旋盤との相違点は、移動式当金用のロック機構部がねじ止め式ではなく、リンク式になっている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0113】
図28に、ワーク保持方法の位置決めステップにおける、本実施形態の旋盤のチャック装置の移動式当金の径方向断面図を示す。なお、図18と対応する部位については、同じ符号で示す。図29に、ワーク保持方法の固定ステップにおける、本実施形態の旋盤のチャック装置の移動式当金の径方向断面図を示す。なお、図24と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0114】
図28、図29に示すように、ケース部230のロック機構部挿通孔230cの内側には、円筒状のカラー230dが配置されている。
【0115】
ロック機構部27は、胴部270と、ボール部271と、ケース部272と、コイルスプリング273と、スライダ274と、第一アーム275と、第二アーム276と、ブラケット277と、グリップ278と、を備えている。
【0116】
ブラケット277は、SC材製であって、下方に開口するC字板状を呈している。ブラケット277は、ベース部233の上面に伏設されている。第二アーム276は、SC材製であって細板状を呈している。第二アーム276は、ブラケット277に回転可能に取り付けられている。グリップ278は、第二アーム276の径方向外端に取り付けられている。第一アーム275は、SC材製であって細板状を呈している。第一アーム275の径方向外端は、第二アーム276の径方向内端に、揺動可能に取り付けられている。スライダ274は、SC材製であって、径方向に延在する棒状を呈している。スライダ274の径方向外端は、第一アーム275の径方向内端に、揺動可能に取り付けられている。
【0117】
ケース部272は、SC材製であって円筒状を呈している。ケース部272は、径方向に延在している。ケース部272は、ロック機構部挿通孔230c(具体的にはカラー230d)の内側に、径方向に往復動可能に挿通されている。コイルスプリング273は、ケース部272の内側の径方向外端に収容されている。コイルスプリング273は、スライダ274の径方向内端に接続されている。胴部270は、SC材製であって円柱状を呈している。胴部270は、ケース部272の内側であってコイルスプリング273の径方向内側に配置されている。ボール部271は、SC材製であって真球状を呈している。ボール部271は、胴部270の径方向内端に埋設されている。ボール部271は、自身の球中心周りに、回転可能である。ボール部271は、テーパ面235cに型対称のカット面271aを備えている。
【0118】
図28に示すように、移動式当金23の移動式保持部235は、通常時、非吸着位置に待機している。ワークWが励磁されると、移動式保持部235が上昇し、ワークWに吸着する。すなわち、移動式保持部235が、図28に示す非吸着位置から図29に示す吸着位置まで、移動する。この状態で、作業者(または、Z軸スライド410(図1参照)に取り付けられた、グリップ上下動部材としてのL型バー)がグリップ278を押し下げると、第二アーム276が図28、図29における反時計回りに、第一アーム275が図28、図29における時計回りに、互いに連動して揺動する。この際、第一アーム275の径方向内端は、径方向内側に移動する。このため、スライダ274も径方向内側に移動し、ボール部271のカット面271aがテーパ面235cに圧接する。なお、スライダ274の移動量と、カット面271aとテーパ面235cとの間の距離と、の較差は、コイルスプリング273が収縮することにより吸収される。
【0119】
本実施形態の旋盤と、第一実施形態の旋盤とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の旋盤のチャック装置によると、作業者がグリップ278を動かすだけで、移動式当金23の移動式保持部235を固定、解放することができる。このため、ワーク保持方法の固定ステップ、固定ステップ後にワークWを解放する解放ステップを簡単に実行することができる。
【0120】
また、Z軸スライド410(図1参照)に取り付けられたL型バーを用いてグリップ278を下げ上げする場合は、スライド部4のX軸動作、Z軸動作を利用して、ワーク保持方法の固定ステップ、解放ステップを自動的に実行することができる。
【0121】
<第三実施形態>
本実施形態の旋盤と第一実施形態の旋盤との相違点は、移動式当金用のロック機構部がねじ止め式ではなく、エア式になっている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。なお、説明においては、図18、図19を援用する。
【0122】
図30(a)に、ワーク保持方法の固定ステップにおける、本実施形態の旋盤のチャック装置の模式図を示す。図30(b)に、ワーク切削加工中における、本実施形態の旋盤のチャック装置の模式図を示す。図30(c)に、ワーク切削加工後における、本実施形態の旋盤のチャック装置の模式図を示す。なお、図26、図27と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0123】
ロック機構部28aは、ポンプ280と、電磁弁281と、移動式爪側配管282と、移動式当金側配管283と、エアシリンダ(図略)と、を備えている。ポンプ280は、電磁弁281、移動式爪側配管282を介して、移動式爪22に配置された胴部250(図19参照。ただしロック機構部挿通孔220cに螺合していない。)を往復動可能なエアシリンダに接続されている。また、ポンプ280は、電磁弁281、移動式当金側配管283を介して、移動式当金23に配置された胴部260(図18参照。ただしロック機構部挿通孔230cに螺合していない。)を往復動可能なエアシリンダに接続されている。
【0124】
図30(a)に示すように、固定ステップにおいては、まず、ポンプ280と、移動式爪側配管282および移動式当金側配管283と、が連通するように、制御装置6が、電磁弁281を切り替える。次に、制御装置6がポンプ280を駆動することにより、移動式爪側配管282および移動式当金側配管283の内圧を昇圧し、エアシリンダを駆動する。そして、図19に示すように、ボール部251で移動式保持部225を吸着位置のまま固定する。並びに、図18に示すように、ボール部261で移動式保持部235を吸着位置のまま固定する。
【0125】
図30(b)に示すように、ワーク切削加工中においては、移動式爪側配管282および移動式当金側配管283を封止するように、制御装置6が、電磁弁281を切り替える。すなわち、移動式爪側配管282および移動式当金側配管283の内圧を保持し、エアシリンダ、つまりボール部251、261を固定する。
【0126】
図30(c)に示すように、ワーク切削加工後においては、移動式爪側配管282および移動式当金側配管283と、外部と、が連通するように、制御装置6が、電磁弁281を切り替える。すなわち、移動式爪側配管282および移動式当金側配管283の内圧を減圧し、エアシリンダ、つまりボール部251、261の固定を解除する。
【0127】
本実施形態の旋盤と、第一実施形態の旋盤とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の旋盤のチャック装置によると、ワークWをチャック装置に載置した後の作業を、全て制御装置6により自動的に行うことができる。
【0128】
<その他>
以上、本発明のチャック装置および旋盤の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0129】
上記実施形態においては、ワークWの材質をSUJ材製とした。また、チャック本体20、固定式保持部210、被ガイド部211、ベース部233、223、ケース部230、220、被ガイド部231、221、移動式保持部235、225、カラー237、227、シャフト236、226、ガイド板238、228、胴部260、250、ボール部261、251などの材質を、SC材製とした。しかしながら、これらの部材の材質は特に限定しない。図3に示すセパレータ28により隔離されたN極、S極間にワークWを経由する磁気回路を形成できればよい。例えば、ニッケル、鉄、コバルト、ガドリニウム、およびこれらを一種類以上を含む合金のような、強磁性材料であればよい。また、図2に示す励磁部24がオンになった際に磁化が発生し、オフになった際に磁化が0(あるいはワークWの取り扱いに支障がない程度の残留磁化が残ってもよい)になるような、軟磁性材料であればよい。
【0130】
上記実施形態においては、図3に示すセパレータ28の材質をエポキシ樹脂製としたが、エポキシ樹脂以外の樹脂、エラストマーなど、他の非磁性材料製としてもよい。
【0131】
上記実施形態においては、図3に示す励磁部24をチャック装置2に配置したが、励磁部24を図1に示すスライド部4、工具台3に配置してもよい。この場合、磁気回路の形成方法により当該磁気回路に含まれなくなる部材(例えば、チャック本体20、被ガイド部211、ベース部233、223、ケース部230、220、被ガイド部231、221、カラー237、227、シャフト236、226、ガイド板238、228、胴部260、250、ボール部261、251)などの材質を、ステンレス鋼(SUS(例えばJIS G4303 G4304 G4305))のうち非磁性材料製(オーステナイト系)としてもよい。また、固定式当金21を、非磁性材料製(オーステナイト系)としてもよい。また、工具台3としてタレット式(旋回式)の工具台を用いてもよい。
【0132】
上記実施形態においては、ケース部230、220をSC材製(磁性材料製)としたが、ケース部230、220をステンレス鋼(オーステナイト系)などの非磁性材料製としてもよい。この場合、ケース部230、220は、本発明の「非磁性材料製の摺動部材」の概念に含まれる。こうすると、ケース部230、220にワークWの加工屑が吸着しにくい。このため、チャック装置2のメンテナンスが容易である。また、ワークWの加工屑により、移動式保持部235、225の移動が阻害されにくい。
【0133】
上記実施形態においてはチャック装置2にロック機構部25〜28aを配置したが、ロック機構部25〜28aを配置しなくてもよい。この場合は、図2に示す励磁部24がロック機構部25〜28aを兼ねる。つまり、励磁部24の磁力により、移動式保持部235、225を吸着位置に固定する。
【0134】
上記実施形態においては、本発明の旋盤を図1に示す立型旋盤として具現化したが、主軸51が水平方向に延在する横型旋盤として具現化してもよい。上記実施形態においては、移動式爪22によりワークWの外周面を保持したが、ワークWの内周面を保持してもよい。
【0135】
上記実施形態においては、チャック装置2に移動式爪22および移動式当金23を共に配置したが、いずれか一方だけを配置してもよい。例えば、ワークWの径方向の耐荷重性が高い場合、磁力を用いる移動式爪22の代わりに、押圧力を用いてワークWを径方向外側から挟持、固定する爪を用いてもよい。
【0136】
上記実施形態のワーク保持方法の位置決めステップにおける、固定式当金21、移動式爪22、移動式当金23のスライド方法は特に限定しない。固定式当金21、移動式爪22、移動式当金23を一つずつスライドさせてもよい。また、固定式当金21、移動式爪22、移動式当金23を複数同期させてスライドさせてもよい。
【0137】
第二実施形態の図28、図29に示すリンク機構は特に限定しない。スライダ274が動けばよい。例えば、3点リンク、4点リンクなどを用いてもよい。また、トグル機構などの倍力機構を用いてもよい。
【0138】
第二実施形態においては、図28、図29に示すように、作業者がグリップ278を動かしたが、図2に示す制御装置6で図1に示す工具台3を駆動することにより、グリップ278を動かしてもよい。第二実施形態の図28、図29にロック機構部27は、図16に示す移動式爪22の移動式保持部225を固定するために用いてもよい。
【0139】
第三実施形態においては、エアによりボール部251、261を駆動したが、他の流体(気体(窒素、不活性ガスなど)、液体(水、オイルなど))によりボール部251、261を駆動してもよい。
【0140】
ワークWとしては、例えば薄肉のベアリング(外輪、内輪)、トルクコンバーターのカバーなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0141】
1:旋盤、2:チャック装置、3:工具台、4:スライド部、5:テーブル、6:制御装置。
20:チャック本体、21:固定式当金、22:移動式爪、23:移動式当金、24:励磁部、25〜27:ロック機構部、28:セパレータ、28a:ロック機構部、29:ガイド部、30:バイト、40:X軸スライド部、41:Z軸スライド部、50:テーブル本体、51:主軸、60:コンピューター、61:入出力インターフェイス、70:ベッド、72:コラム。
210:固定式保持部、210a:固定式保持面、211:被ガイド部、212:ボルト、220:ケース部(磁性材料製の摺動部材)、220a:保持部挿通孔、220b:拡径部、220c:ロック機構部挿通孔、221:被ガイド部、222:ボルト、223:ベース部、224:ボルト、225:移動式保持部、225a:移動式保持面、225b:シャフト収容凹部、225c:テーパ面、225d:フランジ部、226:シャフト、226a:胴部、226b:頸部、226c:ボルト、227:カラー、228:ガイド板、228a:ガイド部、228b:ボルト、230:ケース部(磁性材料製の摺動部材)、230a:保持部挿通孔、230b:拡径部、230c:ロック機構部挿通孔、230d:カラー、231:被ガイド部、232:ボルト、233:ベース部、233a:窓部、234:ボルト、235:移動式保持部、235a:移動式保持面、235b:シャフト収容凹部、235c:テーパ面、235d:フランジ部、236:シャフト、236a:胴部、236b:頸部、236c:ボルト、237:カラー、238:ガイド板、238a:ガイド部、238b:ボルト、250:胴部、251:ボール部、251a:カット面、260:胴部、261:ボール部、261a:カット面、270:胴部、271:ボール部、271a:カット面、272:ケース部、273:コイルスプリング、274:スライダ、275:第一アーム、276:第二アーム、277:ブラケット、278:グリップ、280:ポンプ、281:電磁弁、282:移動式爪側配管、283:移動式当金側配管、400:X軸スライド、401:Z軸下スライド、402:ボールねじ部、403:Z軸モータ、410:Z軸スライド、710:主軸モータ、711:中間軸、712:ベルト、713:ベルト、720:X軸下スライド、721:ボールねじ部、722:X軸モータ。
G1〜G4:隙間、L1〜L3:区間、W:ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック本体と、該チャック本体に配置され磁性材料製のワークを保持する移動式保持部を有する移動式保持部材と、該チャック本体に配置され該ワークの軸方向端面に当接する固定式保持部を有する固定式当金と、を備えるチャック装置であって、
前記移動式保持部は、磁性材料製であり、少なくとも前記ワークを励磁して発生する磁力により該ワークに吸着することを特徴とするチャック装置。
【請求項2】
前記ワークに吸着した状態の前記移動式保持部を固定するロック機構部を備える請求項1に記載のチャック装置。
【請求項3】
前記移動式保持部材は、前記ワークの前記軸方向端面を保持する移動式当金および該ワークの側周面を保持する移動式爪のうち、少なくとも一方である請求項1または請求項2に記載のチャック装置。
【請求項4】
前記移動式保持部材は、前記移動式当金であり、
該移動式当金の前記移動式保持部は、前記固定式保持部に当接した前記ワークの前記軸方向端面に対して軸方向に離間して設定される非吸着位置と、該固定式保持部に当接した該ワークの該軸方向端面に吸着する吸着位置と、の間を往復動可能な請求項3に記載のチャック装置。
【請求項5】
前記移動式保持部材は、前記移動式爪であり、
該移動式爪の前記移動式保持部は、前記固定式当金に当接した前記ワークの側周面に対して径方向に離間して設定される非吸着位置と、該固定式保持部に当接した該ワークの該側周面に吸着する吸着位置と、の間を往復動可能な請求項3に記載のチャック装置。
【請求項6】
前記固定式当金は三つ配置され、
前記ワークの前記軸方向端面は、三つの該固定式当金の前記固定式保持部に少なくとも三点で当接する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のチャック装置。
【請求項7】
前記移動式保持部材は、前記移動式保持部に摺接する磁性材料製の摺動部材を備える請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のチャック装置。
【請求項8】
前記移動式保持部材は、前記移動式保持部に摺接する非磁性材料製の摺動部材を備える請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のチャック装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のチャック装置と、
前記ワークに切削加工を施すバイトを有する工具台と、
該工具台を少なくとも二軸方向に動かすスライド部と、
を備える旋盤。
【請求項10】
前記チャック装置または前記スライド部は、前記ワークを励磁する励磁部を有する請求項9に記載の旋盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−18078(P2013−18078A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153002(P2011−153002)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】