チャネルドロップフィルタ
【課題】 本発明は、注意深い位相の取り扱いを必要とせず、設計にかかる手間を軽減できるチャネルドロップフィルタを提供することを目的とする。
【解決手段】 2次元フォトニック結晶に構成されたバス導波路と共振器とドロップ導波路を有し、共振器は共鳴モードが複数方向に広がるフィールド分布を有し、バス導波路は共振器と共鳴トンネル過程により結合され、ドロップ導波路は共振器と共鳴トンネル過程により結合され、バス導波路と共振器の結合定数と、ドロップ導波路と共振器の結合定数がほぼ等しい。
【解決手段】 2次元フォトニック結晶に構成されたバス導波路と共振器とドロップ導波路を有し、共振器は共鳴モードが複数方向に広がるフィールド分布を有し、バス導波路は共振器と共鳴トンネル過程により結合され、ドロップ導波路は共振器と共鳴トンネル過程により結合され、バス導波路と共振器の結合定数と、ドロップ導波路と共振器の結合定数がほぼ等しい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャネルドロップフィルタに関し、フォトニック結晶からなるチャネルドロップフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
2次元フォトニック結晶をプラットフォームとする平面光回路において、導波路と共振器の結合系は、数波長程度の面積で機能性を実現できることが示唆されており、超小型光回路を構成する上で注目すべき光回路構成である。
【0003】
例えば図1(A)に示すように、2本の導波路1,2の間に1つの共振器3を配置した構造は、一方の導波路(バス導波路)1から入力された光が共振器3と共鳴するとき、その光を他方の導波路(ドロップ導波路)2にドロップする波長選択フィルタとなる。ただし、この場合、共振器3に入った光が全てのポートP1〜P4に出力されるため、ドロップ効率は25%となる。
【0004】
そこで、特定のポートから光を出力するために干渉効果を利用したフィルタ(チャネルドロップフィルタ)が報告されている。
【0005】
図1(B)に示す構造は、2本の導波路1,2の間に2個の共振器3,4が配置されている。2個の共振器3,4の間隔を調整し、双方の共振器からドロップ導波路2に出力された光の位相をずらし干渉させることで、不要のポートP1〜P3ヘの光出力を打ち消し、特定のポートP4からの光出力を可能にしている(例えば非特許文献1参照。)。
【0006】
図1(C)の構造は、導波路1,2に反射点5,6を設置し、鏡面対称な構造とすることで、1つの共振器3を擬似的に2つの共振器として取り扱うことができる(例えば非特許文献2参照。)。
【非特許文献1】C.Manolatou et al.,IEEE Quantum Electron.,35,1322(1999)
【非特許文献2】B.S.Song et al.,50th Spring Meeting of The Jpn.Soc.of Appl.Phys.29a−YN−4,Yokohama(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1(B)の構造では、フォトニック結晶が周期構造であるため、共振器3,4の位置が離散的に決められてしまい、共振器間隔による位相の調整が非常に難しい。また、正確に共鳴周波数を同じくする共振器構造をつくることは作製技術上非常に困難である。さらに、例え共鳴周波数の等しい2つの共振器を作製できたとしても、デバイス構造を小さくするため共振器3,4の間隔Lを狭くすると、共振器モードの直接結合により共鳴周波数が2っに分裂してしまい、干渉条件を最適化できないなどの問題がある。
【0008】
図1(C)の構造では、上記の正確に共鳴周波数を同じくする共振器を作ることが困難であるという問題が解決される。しかし、位相の調整が困難である点は図1(B)と同じである。
【0009】
このように、干渉を利用したドロップフィルタは、注意深い位相の取り扱いが必要であり、それゆえ設計に多大な手間を要するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みなされたものであり、注意深い位相の取り扱いを必要とせず、設計にかかる手間を軽減できるチャネルドロップフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、2次元フォトニック結晶に構成されたバス導波路と共振器とドロップ導波路を有し、
前記共振器は共鳴モードが複数方向に広がるフィールド分布を有し、
前記バス導波路は前記共振器と共鳴トンネル過程により結合され、
前記ドロップ導波路は前記共振器と共鳴トンネル過程により結合され、
前記バス導波路と前記共振器の結合定数と、前記ドロップ導波路と前記共振器の結合定数がほぼ等しいことにより、バス導波路への反射を抑制してほぼ全ての光をドロップ導波路に出力でき、注意深い位相の取り扱いを必要とせず、設計にかかる手間を軽減できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、透過帯域がずれた複数の導波路から構成され、導波路境界で特定帯域の光を透過させないモードギャップ帯域を有し、
前記共振器は、前記モードギャップ帯域に共鳴周波数を有することにより、入力光のうち共鳴周波数の光をドロップ導波路に取り出し、モードギャップ帯域外の光を導波路境界を透過させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、透過帯域がずれた3以上の導波路から構成され、各導波路境界で光を透過させない特定帯域が異なる複数のモードギャップ帯域を有し、
前記複数のモードギャップ帯域それぞれに共鳴周波数を持つ複数の共振器を有することにより、複数の共振器それぞれの共鳴周波数の光を各共振器に対応するドロップ導波路から取り出すことができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、導波路を構成する線欠陥を挟んで対向するフォトニック結晶の空気穴列を導波路幅が狭くなるようシフトさせ、その外側の空気穴列を前記シフトさせた分だけ引き伸ばした幅変化導波路であることにより、格子不整合が生じることが無く、透過帯域を調整することができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項2記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記ドロップ導波路を、前記バス導波路と同一構成とし、前記共振器を前記バス導波路と前記ドロップ導波路で挟んで平行に配置し、
請求項8に記載の発明は、請求項7記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記ドロップ導波路の導波路境界から前記共振器の中心までの導波路長手方向の距離がフォトニック結晶の格子定数の6または7倍以上に設定したことにより、ドロップ導波路の導波路境界における前進波と後退波の干渉効果を除去できる。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記共振器の共鳴モードのフィールドが広がるΓM軸上の格子点、または前記格子点から1格子分シフトした位置に、前記ドロップ導波路の先端を配置したことにより、高いドロップ効率を得ることができる。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記共振器の中心から前記バス導波路の長手方向と直交するY軸方向にフォトニック結晶の格子定数の√3だけ離れた位置に、前記ドロップ導波路の先端を配置したことにより、高いドロップ効率を得ることができる。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項3乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記各共振器の共鳴モードのフィールドが広がるΓM軸上の格子点、または前記格子点から1格子分シフトした格子点位置に、各共振器に対応するドロップ導波路の先端を配置し、
前記各共振器の中心から前記バス導波路の長手方向と直交するY軸方向にフォトニック結晶の格子定数の√3を超えて離れた格子点位置に、前記各共振器に対応するドロップ導波路に隣接するドロップ導波路の先端を配置したことにより、隣接するドロップ導波路のクロストークを低減できる。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項11記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
Y軸方向と直交するX軸方向にN(Nは奇数)個の空気穴を取り除くことにより構成された共振器の中心から、X軸方向に格子定数の[(N−1)/2+3M]倍(Mは1以上の整数)だけ離れ、Y軸方向に格子定数のM√3倍だけ離れた位置にドロップ導波路の先端が配置され、隣の導波路との間隔を格子定数の[(N−1)/2+3M]倍とすることより、隣接するドロップ導波路の間隔を最適化できる。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項12記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
隣接するドロップ導波路の間隔は、前記フォトニック結晶の格子定数の7倍であることにより、隣接するドロップ導波路の間隔を最適化できる。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項4乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路に沿って配置した複数の共振器の共鳴周波数は、前記バス導波路の光伝搬方向に順に高くなる設定であり、
前記複数の共振器に結合する複数のドロップ導波路は、結合する共振器の共鳴周波数に合わせてカットオフ周波数が高くなる設定であるため、各ドロップ導波路におけるクロストークを低減できる。
【0022】
請求項15に記載の発明は、請求項1乃至14のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路を挟んで両側に共振器及びドロップ導波路を配置したことにより、フィルタ長を短縮できる。
【0023】
請求項16に記載の発明は、請求項15記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路の1つの導波路境界に対し、前記バス導波路を挟んで配置された2つの共振器を結合し、
前記2つの共振器の共鳴周波数を異ならせたことにより、1つの導波路境界で2つの共鳴周波数の光を取り出すことができる。
【0024】
請求項17に記載の発明は、請求項15記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路を挟んで配置される共振器の位置を互いにバス導波路の光伝搬方向にずらし、
前記バス導波路の1つの導波路境界に対し、1つの共振器を結合することにより、導波路境界と共振器とが1対1に対応し構造の最適化が容易となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、注意深い位相の取り扱いを必要とせず、設計にかかる手間を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態態について説明する。
【0027】
まず、従来の導波路と共振器を組み合わせた構造は、両者が結合するときに必ず光散乱が生じる。デバイスが大きなときはこの散乱は無視できるほど小さいが、デバイスを小さくするほどこの障害が大きくなる。このため、本発明では、2次元フォトニック結晶を用いる。これにより、導波路や共振器以外の領域への光散乱が原理的に禁止され、光デバイスを極限まで小型化ができる。
【0028】
本発明は、図2(A)に示す空気穴三角格子2次元フォトニック結晶をベースとしたドロップフィルタ構造を有する。空気穴三角格子2次元フォトニック結晶は、エアブリッジ構造のシリコンのスラブ10に三角格子状の空気穴12を設けたものである。ここで、三角格子状の空気穴12の結晶配位方向のΓK軸は隣接する2つ空気穴の中心を結ぶ方向であり、三角格子の3辺がΓK軸に対応する。また、ΓM軸は、隣接する2つ空気穴の中心を結ぶ直線(ΓK軸)に直交し、最短の空気穴の中心に向かう方向である。
【0029】
このフォトニック結晶で構成される共振器の共鳴モードは特定な方向に広がる指向性のあるフィールド分布を持つ。図2(B)に示すように、例えばX軸方向に隣接する3個の空気孔を取り除いて構成した共振器の共鳴モードは、共振器の両端から4つのΓM軸方向に広がるフィールド分布を持つ。このため、以降は共振器の共鳴モードと導波路を簡易的に図2(C)のように記述する。
<共鳴トンネル過程を用いる2ポートシステム=1入力ポート+1ドロップポート>
図3に示す構造では、X軸方向に延在するバス導波路14とドロップ導波路16を分断するように、共振器18が配置されている。バス導波路14から入力された光は、共振器18に共鳴したとき、ドロップ導波路16に出力される。図1と大きく異なる点は、バス導波路14への光出力が自動的にキャンセルされるところにある。この現象は「共鳴トンネル過程」として知られており、本発明ではこの過程を利用することにより、注意深い位相の取り扱いを必要としないフィルタを構成する。
【0030】
バス導波路14とドロップ導波路16の導波モードの直接結合より、バス導波路14,ドロップ導波路16それぞれの導波モードと共振器18の共鳴モードの結合のほうが強いとき、共鳴トンネル過程は、図4(A),(B),(C)、図5(A),(B),(C)に示す配置でも現れる。これらの構造はバス導波路14の位置と共鳴モードの位置と、共鳴モードの位置とドロップ導波路16の位置が対称であるため、それぞれの結合係数は等しい。つまり、バス導波路14と共振器18の結合定数K1と、共振器18とドロップ導波路16の結合定数K2が等しい。
【0031】
共鳴周波数において、バス導波路14への反射を完全に抑制し、全ての光をドロップ導波路16に出力させるためには、K1とK2が同じであればよいことは、共鳴トンネルの考え方より明らかであり、これらの構造により、高効率の2ポートドロップフィルタを構成することが可能となる。
【0032】
上述の結合係数K1,K2は、導波モードと共鳴モードのフィールドの重なり具合で決定される。ここで、共鳴モードのフィールド分布について着目すると、図2(B)に示す破線方向のフィールド分布はこの破線方向と直交するΓM軸を中心として対称となっている。つまり、図6(A),(B),(C)、図7(A),(B),(C)に示す構造でも、結合係数K1とK2を等しくすることができる。さらに、結合係数をほぼ合わせることができれば、構造が必ずしも対称である必要はない。図8(A),(B)に示すような構造でも、高効率の2ポートシステムを構成することができる。図8の詳細については後述する。
<共鳴トンネル過程を用いる3ポートシステム=1入力ポート+1ドロップポート+1スルーポート>
多ポートフィルタを構成するためには、少なくとも3ポートのドロップフィルタを構成し、これを組み合わせる必要がある。つまり、2ポートシステムでは、共鳴周波数以外の光は共振器に入ることができず、全てバス導波路に反射されてしまうため、多数のドロップ導波路を有する多ポートシステムを構成することは原理上不可能である。
【0033】
そこで、図9(A),(B)に示すような、2種類の導波路Wl,W2が直列に接続されて構成されるバス導波路構造をとる。バス導波路20を構成するW1,W2の構造は若干異なって透過帯域が少しずれており、W1,W2の境界にW1を伝播できるがW2に入ることができないバリアとしての周波数帯域(モードギヤツプ帯域)が存在する。次に、このモードギヤツプ帯域に共鳴周波数(共鳴モード)をもつ共振器22を、その中心のX軸位置がバス導波路20のW2側になるように配置する。
【0034】
次に、共振器22に対して、図4,図5,図6,図7,図8に示すドロップ導波路を配置する。このとき、ドロップ導波路とバス導波路が交差すると信号のクロストークの原因になるため、図10(A),(B),(C),(D)、図11(A),(B),(C),(D)、図12(A),(B)それぞれに示す構成でドロップ導波路24を配置する。ここで、ドロップ導波路24は、導波路W1で構成されており、W2’はバス導波路と構成を同じくするためにW1の先端部に付加的に設けられている。W2’は共鳴周波数において導波モードが存在しないように設定されているため、W2’を付加しなくても光をドロップすることは可能であるが、W2’=W2とすることで完全な対称系をつくることにより、反射を抑えてドロップ効率を向上することができる。
【0035】
共振器22の共鳴周波数をモードギャップ内に設定すると、W2,W2’には共鳴周波数の導波モードが存在しないため、図10(A),(B),(C),(D)、図11(A),(B),(C),(D)、図12(A),(B)の等価回路は、図5(A),(B),(C)、図6(A),(B),(C)、図7(A),(B),(C)、図8(A),(B)に示す2ポートシステムとなる。
【0036】
また、導波路W1とW2の両方に導波モードが存在する帯域の光は、共鳴周波数が存在しないため(共振器22はモードギヤツプ帯域に共鳴周波数をもつ)、上記帯域の光はドロップ導波路24に移ることができず、バス導波路20のW2を伝播する。以上の仕組みにより、共鳴トンネル過程を利用した3ポートシステム(1入力ポート+1ドロップポート+1スルーポート)が構成される。
<3ポートシステムの直並列接続>
次に多ポート化について検討する。
【0037】
図13(A),(B)に示すように、3種類の導波路Wl,W2,W3を直列に接続してバス導波路30を構成する。W1,W2,W3の構造は若干異なって透過帯域が少しずれており、W1,W2の境界にW1を伝播できるがW2に入ることができないバリアとしてのモードギヤツプ帯域が存在し、W2,W3の境界にW2を伝播できるがW3に入ることができないバリアとしてのモードギヤツプ帯域(W1,W2のモードギヤツプ帯域より高い周波数帯域)が存在する。
【0038】
共振器32はW1,W2のモードギヤツプ帯域に共鳴周波数を持ち、共振器33はW2,W3のモードギヤツプ帯域に共鳴周波数(共振器32の共鳴周波数より高い周波数)を持つ。
【0039】
例えば図13(A)の直列回路で図11(A)の3ポートシステムを用いた場合、W1、W2、W3ともに透過帯域における等価回路は図14(A)に示すようになり、共振器32の共鳴周波数における等価回路は図14(B)に示すようになり、共振器32の共鳴周波数における等価回路は図14(C)に示すようになる。なお、34,36はドロップ導波路である。
【0040】
ところで、図15(A),(B)に示すように、図10の3ポートシステムのバス導波路20が共通になるように、バス導波路20を挟んで上下両側に共振器22,23を配置して並列回路を構成する。共振器22および共振器23は、W1とW2のモードギャップ帯域内にそれぞれ異なる共鳴周波数を持ち独立である。
【0041】
例えば図15(A)の構成で図11(A)の3ポートフィルタを用いた場合、W1、W2ともに透過帯域における等価回路は図16(A)に示すようになり、共振器22の共鳴周波数における等価回路は図16(B)に示すようになり、共振器23の共鳴周波数における等価回路は図16(C)に示すようになる。つまり、1本のバス導波路20の両脇に2本のドロップ導波路と2個の共振器を配置することにより、1つの導波路境界で2つの共振器22,23に対するバリアを形成する並列回路を構成することが可能である。
【0042】
また、図17(A),(B)に示すように、3種類の導波路Wl,W2,W3が直列に接続してバス導波路30を構成し、W1,W2の境界にW1を伝播できるがW2に入ることができないバリアとしてのモードギヤツプ帯域が存在し、W2,W3の境界にW2を伝播できるがW3に入ることができないバリアとしてのモードギヤツプ帯域が存在する。共振器32はW1,W2のモードギヤツプ帯域に共鳴周波数を持ち、共振器33はW2,W3のモードギヤツプ帯域に共鳴周波数を持つ。
【0043】
図13(A),(B)ではバス導波路30よりY軸方向の下側に共振器32,33を配置しているのに対し、図17(A),(B)ではバス導波路30よりY軸方向の上下両側に共振器32,33を配置している。このため、図17(A),(B)では共振器32,33のX軸方向の離間距離を図13(A),(B)に対し小さくできる。
【0044】
例えば図18(A)の構成で図11(A)の3ポートシステムを用いた場合、W1、W2、W3ともに透過帯域における等価回路は図18(A)に示すようになり、共振器32の共鳴周波数における等価回路は図18(B)に示すようになり、共振器32の共鳴周波数における等価回路は図18(C)に示すようになる。これにより、共振器と導波路境界が1対1対応になるため、図15に示す構成よりも構造の最適化が容易となる。
【0045】
さらに、図19(A),(B)に示すように、透過帯域が連続的に変化するグレーディッド導波路をバス導波路40として用いる。共振器32の共鳴周波数の光は共振器32より手前(左側)のK軸位置までしか伝搬できず、共振器33の共鳴周波数の光は共振器33より手前のK軸位置までしか伝搬できないようにバス導波路40を設計する。これにより、図17と等価のチャネルドロップフィルタを構成することができる。
【0046】
例えば図19(A)の構成で図11(A)の3ポートフィルタを用いた場合、バス導波路40の透過帯域における等価回路は図20(A)に示すようになり、共振器32の共鳴周波数における等価回路は図20(B)に示すようになり、共振器32の共鳴周波数における等価回路は図20(C)に示すようになる。
【0047】
次に、上記の回路構成を組み合わせて、多ポートフィルタが構成可能であることを2次元シミュレーション結果と実験結果で示す。ここでは、空気穴三角格子2次元フォトニック結晶の格子定数a=400nm、空気穴半径=0.275a、スラブ厚=0.5aとした。
【0048】
図9〜図18に示した導波路W1、W2のモードギャップ帯域は、例えば非特許文献2に記載のヘテロ構造のように、導波路W1、W2を構成するフォトニック結晶の格子定数を変更することにより作成することができる。ただし、このような構造は格子不整合が必ず存在するため、他のフォトニック結晶デバイスを集積することが困難となる。
【0049】
そこで、本発明では、格子不整合の生じない幅変化導波路を採用する(特開2003−156642参照)。幅変化導波路は図21(A)に示すように、X軸方向に延在する導波路を構成する線欠陥を挟んで対向する空気穴列(白丸)を導波路幅が狭くなるようY軸方向にシフトさせ、さらにその外側の空気穴列(白丸)をシフトさせた分だけY軸方向に引き伸ばすことにより、透過帯域(導波帯域)を調整する。なお、図21(A)で黒丸はフォトニック結晶の空気穴を示している。
【0050】
図21(B)に線欠陥の幅WがWo(Wo=a×√3)の導波路の分散曲線を実線で示し、0.9Woの導波路の分散曲線を破線で示す。また、矢印で示す範囲が両導波路間のモードギャップ帯域である。
【0051】
このモードギャップ帯域に共鳴周波数をもつ共振器を図10(B)に示すように配置する。これにより、共鳴周波数の光を図21(C)に矢印で示す経路でドロップポートP3に出力し、モードギャップよりも高周波数側の光を図21(D)のに矢印で示す経路でスルーポートP2に出力することができる。
【0052】
次に、ドロップ効率と共振器位置の関係について検討する。前述のように、フォトニック結晶の共振器の共鳴モードはある程度指向性のあるフィールド分布をもっている。そのため、導波路モード(ドロップ導波路)と共振器モードはある程度限られた図22(A)に示す領域Aで結合する。
【0053】
結合領域Aが導波路W1内に存在すると、共振器から出力された光は、前進する方向(前進波)と、後退する方向(後退波)の2方向の導波モードに結合する。後退波は導波路W1,W2の境界で反射されるため、ある位相差をもって前進波と干渉する。この干渉がお互いを打ち消しあうように働くとき、ドロップ効率は低下する。位相差は領域AとW1,W2境界との距離Lと、導波路の伝播定数βの積で決定されるため、高いドロップ効率を実現するためには、共鳴周波数に合わせた距離Lと伝播定数βの調整が不可欠である。しかし、(1)フォトニック結晶が周期的であるためLは離散的にしか調整できない、(2)フォトニック結晶導波路は周波数分散が大きいため、伝播定数の周波数依存性が大きい、などの理由により位相の調整は非常に難しく、設計に手間がかかる。また、高い作製精度も要求される。
【0054】
このような干渉効果は、領域Aがドロップ導波路のW1に対しX軸方向の外側(つまりW2側)となるように共振器を配置することで低減できる。つまり、共鳴トンネル過程によって、共鳴モードと導波モードを結合させる。共鳴モードのフィールド分布から、図22(A)に示すように、Wl,W2境界から共振器の中心までのX軸方向(導波路長手方向)の距離Δが6a〜7a以上のとき、この条件が満足されると考えられる。
【0055】
ここで、W1,W2境界のモードギャップにより、導波路W2への光の進入を禁止する仕組みは非特許文献2と同じである。ただし、非特許文献2では、導波路境界を反射点として利用するのに対し、本発明では、W1,W2境界のモードギャップを共鳴トンネルのためのバリアとして利用する点が決定的に異なる。つまり、非特許文献2では、上記干渉効果を積極的に利用しているのに対し、本発明では上記干渉効果を抑制することを目指しており、この点において、モードギャップを利用する目的が決定的に異なる。
【0056】
距離△とドロップ効率の関係を図23に示す。導波路と共鳴モードが結合する領域Aは図4の下部に示すように4点ある。W1,W2境界との位置関係より、(Case1)4点すべてがW1に存在する場合、(Case2)2点がW1に存在する場合、(Case3)W1に領域Aがまったく存在しない場合、の3つに場合に分類される。図23では、Δ=−15a〜−7aがCase1に対応し、Δ=−6a〜+6aがCase2に対応し、Δ>+6aがCase3に対応する。
【0057】
結合領域が少ない場合は導波路と共振器の結合が弱くなるため、共鳴スペクトルが鋭くなる。これより、図23では透過スペクトルの鋭さから領域を分類することができる。Case1,2では干渉効果により、透過率がほぼ周期的に変化する。図中、○印は透過率が高い位置、×印は透過率が高い位置を示す。この周期性がCase3付近で崩れていることから、Case3は干渉効果が除外された領域であると考えることができる。
【0058】
またこのことは、図22(B)の共鳴モードのフィールド分布からも裏付けられる。加えて、Case2のΔ=+3a〜+6aの領域では干渉効果は残存するものの、お互いに強めあう干渉になり、取り出し効率が高いため、位相の問題を注意深く取り扱う必要がない。
【0059】
以上の結果から、△≧+6a〜+7aとなるように共振器を配置することで、注意深い位相の取り扱いを必要としないドロップフィルタを構成することができる。
【0060】
また、このことは次のように言い換えることもできる。つまり、共鳴モードのフィールドの広がりを示す矢印が導波路W1(バス導波路またはドロップ導波路)の領域に入らなければ、干渉の効果を除外できる。また、共鳴モードのフィールドの広がりを示す矢印が導波路W1に入っても、矢印とW1の交点から、W1とW2の境界までの距離が3a以下であれば、位相の問題を注意深く取り扱う必要がない。ここでは、図10(B)の構造について検討を行ったが、これらの条件は図10(A),(C),(D)及び図11(A)〜(D)の構成においても適用できる。
【0061】
次に図10(D)及び図11(A)〜(D)、図12(A),(B)の構成における共振器とドロップ導波路の位置関係について検討する。
【0062】
基本的には、前述のバス導波路と共振器の位置関係と等価の扱いをすればよい。ただし図24(A)に示すように、導波路Wl,W2,W3を直列接続した構造の3ポートシステムにおいて、デバイス長を短くするために共振器の間隔を狭くした配置を用いる場合、1つの共振器33の近くに3本のドロップ導波路34,36,38が存在することになる。なお、図24(B)にドロップ導波路34,36,38それぞれの延在する方向であるΓK軸を示す。
【0063】
つまり、共振器33が目的とするドロップ導波路36の他に、目的以外のドロップポート34,38にも光が出力されクロストークが発生する可能性がある。ここでは、このような信号のクロストークが起こらないドロップポートの配置について検討する。
【0064】
図25は、ドロップ効率がドロップ導波路の先端位置依存性を持つことを説明するための図を示す。ここでは、簡単のため、図11(A)のW2’が付加されていない場合を取り扱う。図25(A),(B)は、図24(A)に黒丸で示すドロップ導波路34の先端の位置を、各格子点(図25中に丸で示す空気穴の位置)に配置したときのドロップ効率を示している。図25(A)はバス導波路と共振器の結合係数が大きいときのドロップ効率分布を示し、図25(B)はバス導波路と共振器の結合係数が小さいときのドロップ効率分布を示す。ここでは輝度が低いほどドロップ効率は高くなる。
【0065】
図25(A),(B)のいずれの場合においても、図25(C)に示すΓM軸方向に延在する星印1〜4の位置及びそのΓM軸に直交するΓK軸方向に±aだけシフトした位置にドロップ導波路34の先端が存在すれば、バス導波路30との位置関係が対称でなくても高いドロップ効率を得ることができる。また、ドロップ導波路34の先端が共振器32の中心からY軸方向にa×√3だけ下側の黒丸印の位置であっても高いドロップ効率を達成できる。このことは、図12(A),(B)に示す構造が利用可能であることを示している。
【0066】
図25からドロップ導波路の配置を検討できる。
【0067】
図26(A)に図25(A)のドロップ効率を対数表示に変更したものを示す。この図は、共鳴モードと結合するドロップ導波路P3の先端を図25(C)のΓM軸方向に延在する星印1〜4の位置、または、その位置から1格子分ずれた位置に配置する場合、隣接するドロップポートP2の先端は共振器32の中心からY軸方向下側に伸ばし黒丸より更に下側の格子点(共振器32の中心からY軸方向にa×2×√3以上下側)の格子点位置、及びその格子点位置から±0.5aだけX軸方向にシフトした格子点位置に存在すればよいことを示している。
【0068】
これは、共鳴モードが共振器32の中心からY軸方向に伸びる対称軸に対し反対称(対称軸を境に符号が逆転)の分布を持っていること、および、導波モードが、導波路中央を通るΓM軸を対称軸として正対称(対称軸の左右で符号が同じ)であることに起因する。つまり、図26(A)は、共鳴モードおよび導波モードの対称性を利用することでクロストークを低減できることを示している。
【0069】
次に、図26(B)に示すように、1つの共振器32に対し3本のドロップ導波路Pl,P2,P3を配置したとき、それぞれのポートにおけるドロップ効率を図26(C)に示す。ここではドロップ導波路P3の先端位置を図25(C)の星印3の位置に固定し、さらに簡単のためドロップ導波路Pl.P2.P3を全て導波路W1に統一した。
【0070】
この結果は上述の検討に良く一致し、上述の検討の正確さを裏付けるものである。さらに図26(C)は、−20dB以下のクロストークを達成するためには、ドロップ導波路Pl,P2,P3の間隔が7aもしくは13a以上であればよいことを示している。
【0071】
このことは図41を用いて一般的に説明することができる。空気穴をN(Nは奇数)個の空気穴を取り除いた共振器130の共鳴モードのフィールド分布は、共振器130の端部から図2に示すΓM軸方向にフィールドが広がっている。そのため、図41に示すΓM軸上にドロップ導波路の先端が配置されたとき、ドロップ効率が良いことは図25との対比から明らかである。さらに、この共鳴モードのフィールド分布は一般的にY軸に対し反対称となることを考慮すると、図26の考察より、先端が共振器130の中心を通るY軸上に配置されたドロップ導波路と共鳴モードは結合しない。つまり、共振器130の中心からY軸方向にMa√3だけ離れた位置に、隣接する共振器から光を取り出すためのドロップ導波路の先端を配置し、その位置からY軸と直交するX軸方向にa[(N−1)/2+3M]だけ離れた位置に、着目している共振器130から光を取り出すためのドロップ導波路の先端を配置する。ここで、Mは1以上の整数である。例えば図26の場合N=3、M=2であり、ドロップ導波路の間隔が7aとなる。以上の構成により、クロストークの問題を解決することができる。
【0072】
さらに、ドロップ導波路の透過帯域(導波帯域)を調整することでクロストークの問題を解決することもできる。本発明では、導波路として図21に示す構造を用いる。図21(B)に示すように、導波路は幅を狭くすることでカットオフ周波数を高周波数側にシフトさせることができる。本発明では、この導波路と組み合わせる共振器の共鳴周波数を、バス導波路の光伝播方向に次第に高くなるように設定し、それに連動するようにバス導波路及びドロップ導波路のカットオフ周波数を高く設定することで、図13〜図18に示す多ポートフィルタを構成する。
【0073】
この場合、図27(A)に示す構成では、ドロップ導波路P3と結合する共振器32の共鳴周波数は、ドロップ導波路P3より光伝播方向で手前(図中左側)に位置するドロップ導波路P1,P2の透過帯域内に存在するため、ドロップ導波路P3だけでなく、共振器32に隣接するドロップ導波路P1,P2にも共振器32からの光が漏れる可能性がある。
【0074】
一方、図27(B)に示す構成で、ドロップ導波路を配置した場合、ドロップ導波路P1と結合する共振器32の共鳴周波数は、ドロップ導波路P3より光伝播方向で先(図中右側)に位置するドロップ導波路P2,P3の導波モード帯域外であるため、共振器32に隣接するドロップ導波路P2,P3に共振器32からの光が漏れるおそれは少なく、クロストークが生じない。
【0075】
以上の考察を踏まえ、以降に多ポートシステムの計算例を示す。
【0076】
図28(A)に2ポートドロップフィルタの一実施形態の構造図を示す。ここでは、導波路の曲がり効率を無視するため、1つのドロップポートで2つの信号を取り出している。バス導波路50は2つのモードギャップ帯域をつくるために、3種類の導波路Wl,W2,W3で構成されている。導波路の幅は、Wl=1.0Wo,W2=0.96Wo,W3=0.92Woである。また、モードギャップ領域ごとに2種類の共鳴周波数が用意されている。以上の構成により、4つの信号を共振器51a,51bと、共振器52a,52bから2つのドロップ導波路51c,52cのポートに分波する。
【0077】
図28(B)に透過スペクトルを示す。4つの信号が高い効率でドロップされていることがわかる。これにより、図10(A),(B),(C)の構造における多ポートフィルタが構成可能であることを証明している。
【0078】
図29(A)に4ポートドロップフィルタの一実施形態の構造図を示す。このフィルタは図12に示す3ポートドロップフィルタを図15の構成で多ポート化している。このとき、共振器53a〜56aに対するドロップ導波路53b〜56bの先端位置は、図25(C)の黒丸の位置に設定されている。バス導波路50は2つのモードギャップ帯域をつくるために、3種類の導波路W1,W2.W3で構成されている。導波路の幅は、Wl=1.0Wo,W2=0.96Wo,W3=0.92Woである。また、モードギャップ領域ごとに2種類の共鳴周波数が用意されている。ここでは簡単のため、ドロップ導波路53b〜56bはすべてW1とした。
【0079】
図29(B)に透過スペクトルを示す。4つの信号が高い効率で4つのドロップ導波路53b〜56bのポートに出力されていることがわかる。このことは、バス導波路と共振器の位置関係が共振器とドロップ導波路の位置関係と等しくない系において、両者における結合効率をほぼ等しくできたことを示している。さらにこの結果は、図10(D)、図11(A)〜(D)、図12(A),(B)に示すような、バス導波路とドロップ導波路が並行ではない構成で多ポートフィルタが実現できることを証明している。
【0080】
図30に10ポートドロップフィルタの第1実施形態の構造図を示す。ここでは、図29の構造を直列につなぎ、ドロップポート数を増やすことを試みた。バス導波路57は5つのモードギャップ帯域をつくるために、6種類の導波路で構成されている。導波路の幅は入射側から順に、1.0Wo,0.98Wo,0.96Wo,0.94Wo,0.92Wo,0.90Woである。また、モードギャップ領域ごとに、2種類の共鳴周波数が用意されている。共振器とドロップ導波路の相対位置関係、およびドロップ導波路の種類は図27と同じである。殆どのポートにおいて高い効率で信号が出力されていることが、図31(A)に示す透過スペクトルより分かる。図31(B)にはクロストーク特性を示す。
【0081】
図32に10ポートドロップフィルタの第2実施形態の構造図を示す。ここでは、図11(A)に示す3ポートドロップフィルタを図15の構成で多ポート化している。バス導波路60は5つのモードギャップ帯域をつくるために、6種類の導波路で構成されている。導波路の幅は入射側から順に、1.0Wo,0.98Wo,0.96Wo,0.94Wo,092Wo,0.90Woである。また、モードギャップ領域ごとに、2種類の共鳴周波数が用意されている。各共鳴周波数の光は共振器61a〜70aからドロップ導波路61b〜70bのポートに分波される。ここでは簡単のため、ドロップ導波路61b〜70bは全てその幅を1.00Woとし、図11(A)に示すW2’は付加しない。
【0082】
本構造の特徴は、図30よりもX軸方向の線幅を狭くして信号を取り出せるところにある。線幅を狭くするには、共振器と導波路の間隔を広く取り、結合係数を小さく設定すればよい。本構成ではバス導波路と共振器の間隔が図29,図30よりも空気穴一列分広く取られている。図33(A)に透過スペクトルを示し、図33(B)にクロストーク特性を示す。
【0083】
ただし、図29,30の構成でこの手法を用いることはできない。つまり、バス導波路と共振器の間隔を広くした分、共振器とドロップ導波路の間隔を広くして結合係数を小さくしなければならないのだが、共振器とドロップ導波路の結合位置(ドロップ導波路の先端位置)が図25(C)の黒丸位置の1点であるため、これに対応できない。一方、図32の構成は、図25(C)のΓM軸方向に延在する星印1〜4の位置にドロップ導波路の先端をシフトさせることで、共振器とドロップ導波路の結合係数を小さくすることに対応できる。
【0084】
ここで、ドロップ効率のポート依存性に注目する。図31(A)、図33(A)の透過スペクトルに見られるように、奇数ポートのドロップ効率が悪くなる傾向にあり、このことは、線幅を狭くすることにより顕著になる。これは、図30、図32の構成が、1つの導波路境界で2つの共振器に対するバリアを形成する並列回路であることが原因であると考えられる。このため、図17に示すように、共振器の位置関係をずらすことで、1つの導波路境界で1つの共振器に対するバリアを形成するフィルタを構成することでこの問題を解決することができる。
【0085】
そこで、図34の構造を提案する。図34は10ポートドロップフィルタの第3実施形態の構造図を示す。本構造は図11(A)に示す3ポートドロップフィルタが図17の構成で多ポート化している。バス導波路80は10のモードギャップ帯域をつくるために、11種類の導波路で構成されている。導波路の幅は、それぞれ1.0Woから0.90Woまで0.01Woずつ狭められている。また、モードギャップ領域ごとに、1種類の共鳴周波数が用意されている。各共鳴周波数の光は共振器81a〜90aからドロップ導波路81b〜90bのポートに分波される。ここでは簡単のため、ドロップ導波路81b〜90bは全てその幅を1.00Woとし、図11(A)に示すW2’は付加しない。
【0086】
図32と同様にX軸方向の線幅を狭くして信号を取り出しても、透過スペクトルは図35(A)に示すように、おおよそ全てのポートにおいて高いドロップ効率が達成されている。これにより、図17に示す構成の効果が証明される。図35(B)にクロストーク特性を示す。
【0087】
次に、クロストークのレベルに注目する。図30,32、34の構成は全てドロップポート間隔が10a(aは格子定数)である。図26(A)から明らかなように、この間隔は低いクロストークを目指すには不十分であり、図31(B)、図33(B)、図35(B)からもこのことは明らかである。クロストークはドロップポート間隔を広げることで低減することが可能であるが、このことはデバイス長を長くすることにつながる。
【0088】
そこで、図36の構造を提案する。図36は10ポートドロップフィルタの第4実施形態の構造図を示す。本構造は図11(A)に示す3ポートドロップフィルタを図17の構成で多ポート化している。さらに図26(A)説明したように、着目する共振器に結合するドロップ導波路の隣のドロップポートの先端を、着目する共振器の中心からY軸方向下側に伸ばし黒丸より更に下側の格子点の位置、及びその位置から±0.5aだけX軸方向にシフトした格子点上に配置している。
【0089】
この構成の場合、ドロップ導波路間隔が7aとなる。バス導波路100は10のモードギャップ帯域をつくるために、11種類の導波路で構成されている。導波路の幅は、それぞれ1.0Woから0.90Woまで0.01Woずつ狭められている。またモードギャップ領域ごとに、1種類の共鳴周波数が用意されている。各共鳴周波数の光は共振器101a〜110aからドロップ導波路101b〜110bのポートに分波される。ここでは簡単のため、ドロップ導波路101b〜110bは全てその幅を1.00Woとし、図11(A)に示すW2’は付加しない。
【0090】
X軸方向の線幅を狭くして信号を取り出しても、透過スペクトルは図37(A)に示すように、おおよそ全てのポートにおいて高いドロップ効率が達成されている。また、図37(B)に示すように、20dB以下のクロストークも達成されている。これにより、共鳴モードおよび導波モードの対称性を利用することでクロストークを低減できることが証明される。
【0091】
更に、図38の構造を提案する。図38は10ポートドロップフィルタの第5実施形態の構造図を示す。本構造は図36におけるバス導波路100の代りに、バスを構成する導波路の透過帯域が連続的に変化するグレーディッド導波路120を用いている。つまり、バス導波路100では導波路幅を7a間隔でステップ状に変化させたのに対し、グレーディッド導波路120導波路幅を連続的に変化させる。着目する共振器の共鳴周波数の光はバス導波路120を着目する共振器の手前までしか伝播できないように透過帯域を設計することにより、図36の構成とほぼ等価で、かつ、導波路境界における2次元結晶面外への散乱を抑制できる。なお、図36バス導波路100は11種類の導波路で構成されているが、各導波路境界で2次元結晶面に対し垂直方向に光散乱を生じ、その分だけドロップ効率が低下する。
【0092】
X軸方向の線幅を狭くして信号を取り出しても、透過スペクトルは図39(A)に示すように、おおよそ全てのポートにおいて高いドロップ効率が達成されている。また、図39(B)に示すように、20dB以下のクロストークも達成されている。これにより、グレーディッド導波路120のバス導波路への採用も有効な手段であることが証明される。
【0093】
また、図42の構造を提案する。図42は10ポートドロップフィルタの第6実施形態の構造図を示す。本構造は図10(D)に示す3ポートドロップフィルタを図17の構成で多ポート化している。バス導波路140は10のモードギャップ帯域をつくるために、11種類の導波路で構成されている。導波路の幅は、それぞれ1.0Woから0.90Woまで0.01Woずつ狭められている。またモードギャップ領域ごとに、1種類の共鳴周波数が用意されている。各共鳴周波数の光は共振器141a〜150aからドロップ導波路141b〜150bのポートに分波される。ここで、ドロップ導波路141b〜150bは順番に1.0Woから0.91Woまで0.01Woずつ狭められており、その先端部に付加的な導波路141c〜150cが設けられている。この付加的な導波路は141cから150cまで順番に0.99Woから0.90Woまで0.01Woずつ狭められている。
【0094】
図43(A),(B)は図42の構造における透過スペクトル、クロストーク特性を示す。 本構造では、共振器が導波路に対し斜めに配置されることで、共鳴モードのX軸方向のフィールドの広がり幅が狭くなるため、図34に示すドロップフィルタとドロップポートの間隔と同じであっても、図43(B)に示すように30dB程のクロストークレベルを達成することができる。さらに、図10(D)で説明したように、構造の対称性が良くなるため、反射を抑えてドロップ効率を高くすることができる。
【0095】
次に、実際のデバイスを作製し測定した結果を示す。
【0096】
図40(A)に構造を示す。バス導波路120は1つのモードギャップ帯域をつくるために、2種類の導波路W1,W2で構成されている。導波路の幅は、それぞれ1.0Wo,0.90Woである。またモードギャップ領域に、2種類の共鳴周波数が用意されている。以上の構成により、2つの信号を共振器121a,122aから2つのドロップ導波路121b,122bのポートに分波する2ポートドロップフィルタを作製した。
【0097】
図40(A)の構造を持つ3つのドロップフィルタの透過スペクトルを図40(B)に示す。それぞれのフィルタの共鳴周波数は少しずつずらされており、合計6本のピークを確認することができる。特に、第2フィルタでは、急峻な線幅(0.145nm)で、かつ、高い透過率(60%)が達成されている。
【0098】
以上のように、本発明の構造は、導波モードギャップと共鳴トンネル過程を利用することで、注意深い位相の取り扱いを必要としない3ポート(1入力ポート+1ドロップポート+1スルーポート)のドロップフィルタを提供することができる。本構造は複数の導波路を直列に接続してバス導波路を構成する直列回路と、バス導波路20の両側に共振器を配置する並列回路が可能であるため、マルチチャネルのドロップフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】従来のチャネルドロップフィルタの構造を示す図である。
【図2】空気穴三角格子2次元フォトニック結晶構造及びそれを利用した共振器を説明するための図である。
【図3】2ポートシステムの導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図4】2ポートシステムの導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図5】2ポートシステムの導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図6】2ポートシステムの導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図7】2ポートシステムの導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図8】2ポートシステムの導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図9】組み合わせ導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図10】組み合わせ導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図11】組み合わせ導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図12】組み合わせ導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図13】組み合わせ導波路を用いた直列回路を説明するための図である。
【図14】組み合わせ導波路を用いた直列回路の等価回路を説明するための図である。
【図15】組み合わせ導波路を用いた並列回路を説明するための図である。
【図16】組み合わせ導波路を用いた並列回路の等価回路を説明するための図である。
【図17】組み合わせ導波路を用いた直並列回路を説明するための図である。
【図18】組み合わせ導波路を用いた直並列回路の等価回路を説明するための図である。
【図19】グレーディッド導波路をバス導波路に用いた直並列回路を説明するための図である。
【図20】組み合わせ導波路と共振器を説明するための図である。
【図21】導波路と共振器を説明するための図である。
【図22】導波路と共振器の共鳴モードの結合を説明するための図である。
【図23】ドロップ効率と共振器位置の関係を説明するための図である。
【図24】共振器とドロップ導波路の位置関係を説明するための図である。
【図25】ドロップ効率のドロップ導波路の先端位置依存性を説明するための図である。
【図26】ドロップ導波路の配置を説明するための図である。
【図27】ドロップ導波路の配置とクロストークの関係を説明するための図である。
【図28】2ドロップポートフィルタの一実施形態を説明するための図である。
【図29】4ドロップポートフィルタの一実施形態を説明するための図である。
【図30】10ドロップポートフィルタの第1実施形態の構造図である。
【図31】10ドロップポートフィルタの第1実施形態の透過スペクトルとクロストーク特性を示す図である。
【図32】10ドロップポートフィルタの第2実施形態の構造図である。
【図33】10ドロップポートフィルタの第2実施形態の透過スペクトルとクロストーク特性を示す図である。
【図34】10ドロップポートフィルタの第3実施形態の構造図である。
【図35】10ドロップポートフィルタの第3実施形態の透過スペクトルとクロストーク特性を示す図である。
【図36】10ドロップポートフィルタの第4実施形態の構造図である。
【図37】10ドロップポートフィルタの第4実施形態の透過スペクトルとクロストーク特性を示す図である。
【図38】10ドロップポートフィルタの第5実施形態の構造図である。
【図39】10ドロップポートフィルタの第5実施形態の透過スペクトルとクロストーク特性を示す図である。
【図40】2ドロップポートフィルタデバイスを説明するための図である。
【図41】ドロップ導波路の配置を説明するための図である。
【図42】10ドロップポートフィルタの第6実施形態の構造図である。
【図43】10ドロップポートフィルタの第6実施形態の透過スペクトルとクロストーク
【符号の説明】
【0100】
20,30,40 バス導波路
22,23,32,33,51a,51b,52a,52b,53a〜56a,61a〜70a,81a〜90a,101a〜110a,130,141a〜150a 共振器
24,34,36,51c,52c,53b〜56b,61b〜70b,81b〜90b,101b〜110b,141b〜150b ドロップ導波路
141c〜150c 付加的な導波路
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャネルドロップフィルタに関し、フォトニック結晶からなるチャネルドロップフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
2次元フォトニック結晶をプラットフォームとする平面光回路において、導波路と共振器の結合系は、数波長程度の面積で機能性を実現できることが示唆されており、超小型光回路を構成する上で注目すべき光回路構成である。
【0003】
例えば図1(A)に示すように、2本の導波路1,2の間に1つの共振器3を配置した構造は、一方の導波路(バス導波路)1から入力された光が共振器3と共鳴するとき、その光を他方の導波路(ドロップ導波路)2にドロップする波長選択フィルタとなる。ただし、この場合、共振器3に入った光が全てのポートP1〜P4に出力されるため、ドロップ効率は25%となる。
【0004】
そこで、特定のポートから光を出力するために干渉効果を利用したフィルタ(チャネルドロップフィルタ)が報告されている。
【0005】
図1(B)に示す構造は、2本の導波路1,2の間に2個の共振器3,4が配置されている。2個の共振器3,4の間隔を調整し、双方の共振器からドロップ導波路2に出力された光の位相をずらし干渉させることで、不要のポートP1〜P3ヘの光出力を打ち消し、特定のポートP4からの光出力を可能にしている(例えば非特許文献1参照。)。
【0006】
図1(C)の構造は、導波路1,2に反射点5,6を設置し、鏡面対称な構造とすることで、1つの共振器3を擬似的に2つの共振器として取り扱うことができる(例えば非特許文献2参照。)。
【非特許文献1】C.Manolatou et al.,IEEE Quantum Electron.,35,1322(1999)
【非特許文献2】B.S.Song et al.,50th Spring Meeting of The Jpn.Soc.of Appl.Phys.29a−YN−4,Yokohama(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1(B)の構造では、フォトニック結晶が周期構造であるため、共振器3,4の位置が離散的に決められてしまい、共振器間隔による位相の調整が非常に難しい。また、正確に共鳴周波数を同じくする共振器構造をつくることは作製技術上非常に困難である。さらに、例え共鳴周波数の等しい2つの共振器を作製できたとしても、デバイス構造を小さくするため共振器3,4の間隔Lを狭くすると、共振器モードの直接結合により共鳴周波数が2っに分裂してしまい、干渉条件を最適化できないなどの問題がある。
【0008】
図1(C)の構造では、上記の正確に共鳴周波数を同じくする共振器を作ることが困難であるという問題が解決される。しかし、位相の調整が困難である点は図1(B)と同じである。
【0009】
このように、干渉を利用したドロップフィルタは、注意深い位相の取り扱いが必要であり、それゆえ設計に多大な手間を要するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みなされたものであり、注意深い位相の取り扱いを必要とせず、設計にかかる手間を軽減できるチャネルドロップフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、2次元フォトニック結晶に構成されたバス導波路と共振器とドロップ導波路を有し、
前記共振器は共鳴モードが複数方向に広がるフィールド分布を有し、
前記バス導波路は前記共振器と共鳴トンネル過程により結合され、
前記ドロップ導波路は前記共振器と共鳴トンネル過程により結合され、
前記バス導波路と前記共振器の結合定数と、前記ドロップ導波路と前記共振器の結合定数がほぼ等しいことにより、バス導波路への反射を抑制してほぼ全ての光をドロップ導波路に出力でき、注意深い位相の取り扱いを必要とせず、設計にかかる手間を軽減できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、透過帯域がずれた複数の導波路から構成され、導波路境界で特定帯域の光を透過させないモードギャップ帯域を有し、
前記共振器は、前記モードギャップ帯域に共鳴周波数を有することにより、入力光のうち共鳴周波数の光をドロップ導波路に取り出し、モードギャップ帯域外の光を導波路境界を透過させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、透過帯域がずれた3以上の導波路から構成され、各導波路境界で光を透過させない特定帯域が異なる複数のモードギャップ帯域を有し、
前記複数のモードギャップ帯域それぞれに共鳴周波数を持つ複数の共振器を有することにより、複数の共振器それぞれの共鳴周波数の光を各共振器に対応するドロップ導波路から取り出すことができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、導波路を構成する線欠陥を挟んで対向するフォトニック結晶の空気穴列を導波路幅が狭くなるようシフトさせ、その外側の空気穴列を前記シフトさせた分だけ引き伸ばした幅変化導波路であることにより、格子不整合が生じることが無く、透過帯域を調整することができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項2記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記ドロップ導波路を、前記バス導波路と同一構成とし、前記共振器を前記バス導波路と前記ドロップ導波路で挟んで平行に配置し、
請求項8に記載の発明は、請求項7記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記ドロップ導波路の導波路境界から前記共振器の中心までの導波路長手方向の距離がフォトニック結晶の格子定数の6または7倍以上に設定したことにより、ドロップ導波路の導波路境界における前進波と後退波の干渉効果を除去できる。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記共振器の共鳴モードのフィールドが広がるΓM軸上の格子点、または前記格子点から1格子分シフトした位置に、前記ドロップ導波路の先端を配置したことにより、高いドロップ効率を得ることができる。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記共振器の中心から前記バス導波路の長手方向と直交するY軸方向にフォトニック結晶の格子定数の√3だけ離れた位置に、前記ドロップ導波路の先端を配置したことにより、高いドロップ効率を得ることができる。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項3乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記各共振器の共鳴モードのフィールドが広がるΓM軸上の格子点、または前記格子点から1格子分シフトした格子点位置に、各共振器に対応するドロップ導波路の先端を配置し、
前記各共振器の中心から前記バス導波路の長手方向と直交するY軸方向にフォトニック結晶の格子定数の√3を超えて離れた格子点位置に、前記各共振器に対応するドロップ導波路に隣接するドロップ導波路の先端を配置したことにより、隣接するドロップ導波路のクロストークを低減できる。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項11記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
Y軸方向と直交するX軸方向にN(Nは奇数)個の空気穴を取り除くことにより構成された共振器の中心から、X軸方向に格子定数の[(N−1)/2+3M]倍(Mは1以上の整数)だけ離れ、Y軸方向に格子定数のM√3倍だけ離れた位置にドロップ導波路の先端が配置され、隣の導波路との間隔を格子定数の[(N−1)/2+3M]倍とすることより、隣接するドロップ導波路の間隔を最適化できる。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項12記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
隣接するドロップ導波路の間隔は、前記フォトニック結晶の格子定数の7倍であることにより、隣接するドロップ導波路の間隔を最適化できる。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項4乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路に沿って配置した複数の共振器の共鳴周波数は、前記バス導波路の光伝搬方向に順に高くなる設定であり、
前記複数の共振器に結合する複数のドロップ導波路は、結合する共振器の共鳴周波数に合わせてカットオフ周波数が高くなる設定であるため、各ドロップ導波路におけるクロストークを低減できる。
【0022】
請求項15に記載の発明は、請求項1乃至14のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路を挟んで両側に共振器及びドロップ導波路を配置したことにより、フィルタ長を短縮できる。
【0023】
請求項16に記載の発明は、請求項15記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路の1つの導波路境界に対し、前記バス導波路を挟んで配置された2つの共振器を結合し、
前記2つの共振器の共鳴周波数を異ならせたことにより、1つの導波路境界で2つの共鳴周波数の光を取り出すことができる。
【0024】
請求項17に記載の発明は、請求項15記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路を挟んで配置される共振器の位置を互いにバス導波路の光伝搬方向にずらし、
前記バス導波路の1つの導波路境界に対し、1つの共振器を結合することにより、導波路境界と共振器とが1対1に対応し構造の最適化が容易となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、注意深い位相の取り扱いを必要とせず、設計にかかる手間を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態態について説明する。
【0027】
まず、従来の導波路と共振器を組み合わせた構造は、両者が結合するときに必ず光散乱が生じる。デバイスが大きなときはこの散乱は無視できるほど小さいが、デバイスを小さくするほどこの障害が大きくなる。このため、本発明では、2次元フォトニック結晶を用いる。これにより、導波路や共振器以外の領域への光散乱が原理的に禁止され、光デバイスを極限まで小型化ができる。
【0028】
本発明は、図2(A)に示す空気穴三角格子2次元フォトニック結晶をベースとしたドロップフィルタ構造を有する。空気穴三角格子2次元フォトニック結晶は、エアブリッジ構造のシリコンのスラブ10に三角格子状の空気穴12を設けたものである。ここで、三角格子状の空気穴12の結晶配位方向のΓK軸は隣接する2つ空気穴の中心を結ぶ方向であり、三角格子の3辺がΓK軸に対応する。また、ΓM軸は、隣接する2つ空気穴の中心を結ぶ直線(ΓK軸)に直交し、最短の空気穴の中心に向かう方向である。
【0029】
このフォトニック結晶で構成される共振器の共鳴モードは特定な方向に広がる指向性のあるフィールド分布を持つ。図2(B)に示すように、例えばX軸方向に隣接する3個の空気孔を取り除いて構成した共振器の共鳴モードは、共振器の両端から4つのΓM軸方向に広がるフィールド分布を持つ。このため、以降は共振器の共鳴モードと導波路を簡易的に図2(C)のように記述する。
<共鳴トンネル過程を用いる2ポートシステム=1入力ポート+1ドロップポート>
図3に示す構造では、X軸方向に延在するバス導波路14とドロップ導波路16を分断するように、共振器18が配置されている。バス導波路14から入力された光は、共振器18に共鳴したとき、ドロップ導波路16に出力される。図1と大きく異なる点は、バス導波路14への光出力が自動的にキャンセルされるところにある。この現象は「共鳴トンネル過程」として知られており、本発明ではこの過程を利用することにより、注意深い位相の取り扱いを必要としないフィルタを構成する。
【0030】
バス導波路14とドロップ導波路16の導波モードの直接結合より、バス導波路14,ドロップ導波路16それぞれの導波モードと共振器18の共鳴モードの結合のほうが強いとき、共鳴トンネル過程は、図4(A),(B),(C)、図5(A),(B),(C)に示す配置でも現れる。これらの構造はバス導波路14の位置と共鳴モードの位置と、共鳴モードの位置とドロップ導波路16の位置が対称であるため、それぞれの結合係数は等しい。つまり、バス導波路14と共振器18の結合定数K1と、共振器18とドロップ導波路16の結合定数K2が等しい。
【0031】
共鳴周波数において、バス導波路14への反射を完全に抑制し、全ての光をドロップ導波路16に出力させるためには、K1とK2が同じであればよいことは、共鳴トンネルの考え方より明らかであり、これらの構造により、高効率の2ポートドロップフィルタを構成することが可能となる。
【0032】
上述の結合係数K1,K2は、導波モードと共鳴モードのフィールドの重なり具合で決定される。ここで、共鳴モードのフィールド分布について着目すると、図2(B)に示す破線方向のフィールド分布はこの破線方向と直交するΓM軸を中心として対称となっている。つまり、図6(A),(B),(C)、図7(A),(B),(C)に示す構造でも、結合係数K1とK2を等しくすることができる。さらに、結合係数をほぼ合わせることができれば、構造が必ずしも対称である必要はない。図8(A),(B)に示すような構造でも、高効率の2ポートシステムを構成することができる。図8の詳細については後述する。
<共鳴トンネル過程を用いる3ポートシステム=1入力ポート+1ドロップポート+1スルーポート>
多ポートフィルタを構成するためには、少なくとも3ポートのドロップフィルタを構成し、これを組み合わせる必要がある。つまり、2ポートシステムでは、共鳴周波数以外の光は共振器に入ることができず、全てバス導波路に反射されてしまうため、多数のドロップ導波路を有する多ポートシステムを構成することは原理上不可能である。
【0033】
そこで、図9(A),(B)に示すような、2種類の導波路Wl,W2が直列に接続されて構成されるバス導波路構造をとる。バス導波路20を構成するW1,W2の構造は若干異なって透過帯域が少しずれており、W1,W2の境界にW1を伝播できるがW2に入ることができないバリアとしての周波数帯域(モードギヤツプ帯域)が存在する。次に、このモードギヤツプ帯域に共鳴周波数(共鳴モード)をもつ共振器22を、その中心のX軸位置がバス導波路20のW2側になるように配置する。
【0034】
次に、共振器22に対して、図4,図5,図6,図7,図8に示すドロップ導波路を配置する。このとき、ドロップ導波路とバス導波路が交差すると信号のクロストークの原因になるため、図10(A),(B),(C),(D)、図11(A),(B),(C),(D)、図12(A),(B)それぞれに示す構成でドロップ導波路24を配置する。ここで、ドロップ導波路24は、導波路W1で構成されており、W2’はバス導波路と構成を同じくするためにW1の先端部に付加的に設けられている。W2’は共鳴周波数において導波モードが存在しないように設定されているため、W2’を付加しなくても光をドロップすることは可能であるが、W2’=W2とすることで完全な対称系をつくることにより、反射を抑えてドロップ効率を向上することができる。
【0035】
共振器22の共鳴周波数をモードギャップ内に設定すると、W2,W2’には共鳴周波数の導波モードが存在しないため、図10(A),(B),(C),(D)、図11(A),(B),(C),(D)、図12(A),(B)の等価回路は、図5(A),(B),(C)、図6(A),(B),(C)、図7(A),(B),(C)、図8(A),(B)に示す2ポートシステムとなる。
【0036】
また、導波路W1とW2の両方に導波モードが存在する帯域の光は、共鳴周波数が存在しないため(共振器22はモードギヤツプ帯域に共鳴周波数をもつ)、上記帯域の光はドロップ導波路24に移ることができず、バス導波路20のW2を伝播する。以上の仕組みにより、共鳴トンネル過程を利用した3ポートシステム(1入力ポート+1ドロップポート+1スルーポート)が構成される。
<3ポートシステムの直並列接続>
次に多ポート化について検討する。
【0037】
図13(A),(B)に示すように、3種類の導波路Wl,W2,W3を直列に接続してバス導波路30を構成する。W1,W2,W3の構造は若干異なって透過帯域が少しずれており、W1,W2の境界にW1を伝播できるがW2に入ることができないバリアとしてのモードギヤツプ帯域が存在し、W2,W3の境界にW2を伝播できるがW3に入ることができないバリアとしてのモードギヤツプ帯域(W1,W2のモードギヤツプ帯域より高い周波数帯域)が存在する。
【0038】
共振器32はW1,W2のモードギヤツプ帯域に共鳴周波数を持ち、共振器33はW2,W3のモードギヤツプ帯域に共鳴周波数(共振器32の共鳴周波数より高い周波数)を持つ。
【0039】
例えば図13(A)の直列回路で図11(A)の3ポートシステムを用いた場合、W1、W2、W3ともに透過帯域における等価回路は図14(A)に示すようになり、共振器32の共鳴周波数における等価回路は図14(B)に示すようになり、共振器32の共鳴周波数における等価回路は図14(C)に示すようになる。なお、34,36はドロップ導波路である。
【0040】
ところで、図15(A),(B)に示すように、図10の3ポートシステムのバス導波路20が共通になるように、バス導波路20を挟んで上下両側に共振器22,23を配置して並列回路を構成する。共振器22および共振器23は、W1とW2のモードギャップ帯域内にそれぞれ異なる共鳴周波数を持ち独立である。
【0041】
例えば図15(A)の構成で図11(A)の3ポートフィルタを用いた場合、W1、W2ともに透過帯域における等価回路は図16(A)に示すようになり、共振器22の共鳴周波数における等価回路は図16(B)に示すようになり、共振器23の共鳴周波数における等価回路は図16(C)に示すようになる。つまり、1本のバス導波路20の両脇に2本のドロップ導波路と2個の共振器を配置することにより、1つの導波路境界で2つの共振器22,23に対するバリアを形成する並列回路を構成することが可能である。
【0042】
また、図17(A),(B)に示すように、3種類の導波路Wl,W2,W3が直列に接続してバス導波路30を構成し、W1,W2の境界にW1を伝播できるがW2に入ることができないバリアとしてのモードギヤツプ帯域が存在し、W2,W3の境界にW2を伝播できるがW3に入ることができないバリアとしてのモードギヤツプ帯域が存在する。共振器32はW1,W2のモードギヤツプ帯域に共鳴周波数を持ち、共振器33はW2,W3のモードギヤツプ帯域に共鳴周波数を持つ。
【0043】
図13(A),(B)ではバス導波路30よりY軸方向の下側に共振器32,33を配置しているのに対し、図17(A),(B)ではバス導波路30よりY軸方向の上下両側に共振器32,33を配置している。このため、図17(A),(B)では共振器32,33のX軸方向の離間距離を図13(A),(B)に対し小さくできる。
【0044】
例えば図18(A)の構成で図11(A)の3ポートシステムを用いた場合、W1、W2、W3ともに透過帯域における等価回路は図18(A)に示すようになり、共振器32の共鳴周波数における等価回路は図18(B)に示すようになり、共振器32の共鳴周波数における等価回路は図18(C)に示すようになる。これにより、共振器と導波路境界が1対1対応になるため、図15に示す構成よりも構造の最適化が容易となる。
【0045】
さらに、図19(A),(B)に示すように、透過帯域が連続的に変化するグレーディッド導波路をバス導波路40として用いる。共振器32の共鳴周波数の光は共振器32より手前(左側)のK軸位置までしか伝搬できず、共振器33の共鳴周波数の光は共振器33より手前のK軸位置までしか伝搬できないようにバス導波路40を設計する。これにより、図17と等価のチャネルドロップフィルタを構成することができる。
【0046】
例えば図19(A)の構成で図11(A)の3ポートフィルタを用いた場合、バス導波路40の透過帯域における等価回路は図20(A)に示すようになり、共振器32の共鳴周波数における等価回路は図20(B)に示すようになり、共振器32の共鳴周波数における等価回路は図20(C)に示すようになる。
【0047】
次に、上記の回路構成を組み合わせて、多ポートフィルタが構成可能であることを2次元シミュレーション結果と実験結果で示す。ここでは、空気穴三角格子2次元フォトニック結晶の格子定数a=400nm、空気穴半径=0.275a、スラブ厚=0.5aとした。
【0048】
図9〜図18に示した導波路W1、W2のモードギャップ帯域は、例えば非特許文献2に記載のヘテロ構造のように、導波路W1、W2を構成するフォトニック結晶の格子定数を変更することにより作成することができる。ただし、このような構造は格子不整合が必ず存在するため、他のフォトニック結晶デバイスを集積することが困難となる。
【0049】
そこで、本発明では、格子不整合の生じない幅変化導波路を採用する(特開2003−156642参照)。幅変化導波路は図21(A)に示すように、X軸方向に延在する導波路を構成する線欠陥を挟んで対向する空気穴列(白丸)を導波路幅が狭くなるようY軸方向にシフトさせ、さらにその外側の空気穴列(白丸)をシフトさせた分だけY軸方向に引き伸ばすことにより、透過帯域(導波帯域)を調整する。なお、図21(A)で黒丸はフォトニック結晶の空気穴を示している。
【0050】
図21(B)に線欠陥の幅WがWo(Wo=a×√3)の導波路の分散曲線を実線で示し、0.9Woの導波路の分散曲線を破線で示す。また、矢印で示す範囲が両導波路間のモードギャップ帯域である。
【0051】
このモードギャップ帯域に共鳴周波数をもつ共振器を図10(B)に示すように配置する。これにより、共鳴周波数の光を図21(C)に矢印で示す経路でドロップポートP3に出力し、モードギャップよりも高周波数側の光を図21(D)のに矢印で示す経路でスルーポートP2に出力することができる。
【0052】
次に、ドロップ効率と共振器位置の関係について検討する。前述のように、フォトニック結晶の共振器の共鳴モードはある程度指向性のあるフィールド分布をもっている。そのため、導波路モード(ドロップ導波路)と共振器モードはある程度限られた図22(A)に示す領域Aで結合する。
【0053】
結合領域Aが導波路W1内に存在すると、共振器から出力された光は、前進する方向(前進波)と、後退する方向(後退波)の2方向の導波モードに結合する。後退波は導波路W1,W2の境界で反射されるため、ある位相差をもって前進波と干渉する。この干渉がお互いを打ち消しあうように働くとき、ドロップ効率は低下する。位相差は領域AとW1,W2境界との距離Lと、導波路の伝播定数βの積で決定されるため、高いドロップ効率を実現するためには、共鳴周波数に合わせた距離Lと伝播定数βの調整が不可欠である。しかし、(1)フォトニック結晶が周期的であるためLは離散的にしか調整できない、(2)フォトニック結晶導波路は周波数分散が大きいため、伝播定数の周波数依存性が大きい、などの理由により位相の調整は非常に難しく、設計に手間がかかる。また、高い作製精度も要求される。
【0054】
このような干渉効果は、領域Aがドロップ導波路のW1に対しX軸方向の外側(つまりW2側)となるように共振器を配置することで低減できる。つまり、共鳴トンネル過程によって、共鳴モードと導波モードを結合させる。共鳴モードのフィールド分布から、図22(A)に示すように、Wl,W2境界から共振器の中心までのX軸方向(導波路長手方向)の距離Δが6a〜7a以上のとき、この条件が満足されると考えられる。
【0055】
ここで、W1,W2境界のモードギャップにより、導波路W2への光の進入を禁止する仕組みは非特許文献2と同じである。ただし、非特許文献2では、導波路境界を反射点として利用するのに対し、本発明では、W1,W2境界のモードギャップを共鳴トンネルのためのバリアとして利用する点が決定的に異なる。つまり、非特許文献2では、上記干渉効果を積極的に利用しているのに対し、本発明では上記干渉効果を抑制することを目指しており、この点において、モードギャップを利用する目的が決定的に異なる。
【0056】
距離△とドロップ効率の関係を図23に示す。導波路と共鳴モードが結合する領域Aは図4の下部に示すように4点ある。W1,W2境界との位置関係より、(Case1)4点すべてがW1に存在する場合、(Case2)2点がW1に存在する場合、(Case3)W1に領域Aがまったく存在しない場合、の3つに場合に分類される。図23では、Δ=−15a〜−7aがCase1に対応し、Δ=−6a〜+6aがCase2に対応し、Δ>+6aがCase3に対応する。
【0057】
結合領域が少ない場合は導波路と共振器の結合が弱くなるため、共鳴スペクトルが鋭くなる。これより、図23では透過スペクトルの鋭さから領域を分類することができる。Case1,2では干渉効果により、透過率がほぼ周期的に変化する。図中、○印は透過率が高い位置、×印は透過率が高い位置を示す。この周期性がCase3付近で崩れていることから、Case3は干渉効果が除外された領域であると考えることができる。
【0058】
またこのことは、図22(B)の共鳴モードのフィールド分布からも裏付けられる。加えて、Case2のΔ=+3a〜+6aの領域では干渉効果は残存するものの、お互いに強めあう干渉になり、取り出し効率が高いため、位相の問題を注意深く取り扱う必要がない。
【0059】
以上の結果から、△≧+6a〜+7aとなるように共振器を配置することで、注意深い位相の取り扱いを必要としないドロップフィルタを構成することができる。
【0060】
また、このことは次のように言い換えることもできる。つまり、共鳴モードのフィールドの広がりを示す矢印が導波路W1(バス導波路またはドロップ導波路)の領域に入らなければ、干渉の効果を除外できる。また、共鳴モードのフィールドの広がりを示す矢印が導波路W1に入っても、矢印とW1の交点から、W1とW2の境界までの距離が3a以下であれば、位相の問題を注意深く取り扱う必要がない。ここでは、図10(B)の構造について検討を行ったが、これらの条件は図10(A),(C),(D)及び図11(A)〜(D)の構成においても適用できる。
【0061】
次に図10(D)及び図11(A)〜(D)、図12(A),(B)の構成における共振器とドロップ導波路の位置関係について検討する。
【0062】
基本的には、前述のバス導波路と共振器の位置関係と等価の扱いをすればよい。ただし図24(A)に示すように、導波路Wl,W2,W3を直列接続した構造の3ポートシステムにおいて、デバイス長を短くするために共振器の間隔を狭くした配置を用いる場合、1つの共振器33の近くに3本のドロップ導波路34,36,38が存在することになる。なお、図24(B)にドロップ導波路34,36,38それぞれの延在する方向であるΓK軸を示す。
【0063】
つまり、共振器33が目的とするドロップ導波路36の他に、目的以外のドロップポート34,38にも光が出力されクロストークが発生する可能性がある。ここでは、このような信号のクロストークが起こらないドロップポートの配置について検討する。
【0064】
図25は、ドロップ効率がドロップ導波路の先端位置依存性を持つことを説明するための図を示す。ここでは、簡単のため、図11(A)のW2’が付加されていない場合を取り扱う。図25(A),(B)は、図24(A)に黒丸で示すドロップ導波路34の先端の位置を、各格子点(図25中に丸で示す空気穴の位置)に配置したときのドロップ効率を示している。図25(A)はバス導波路と共振器の結合係数が大きいときのドロップ効率分布を示し、図25(B)はバス導波路と共振器の結合係数が小さいときのドロップ効率分布を示す。ここでは輝度が低いほどドロップ効率は高くなる。
【0065】
図25(A),(B)のいずれの場合においても、図25(C)に示すΓM軸方向に延在する星印1〜4の位置及びそのΓM軸に直交するΓK軸方向に±aだけシフトした位置にドロップ導波路34の先端が存在すれば、バス導波路30との位置関係が対称でなくても高いドロップ効率を得ることができる。また、ドロップ導波路34の先端が共振器32の中心からY軸方向にa×√3だけ下側の黒丸印の位置であっても高いドロップ効率を達成できる。このことは、図12(A),(B)に示す構造が利用可能であることを示している。
【0066】
図25からドロップ導波路の配置を検討できる。
【0067】
図26(A)に図25(A)のドロップ効率を対数表示に変更したものを示す。この図は、共鳴モードと結合するドロップ導波路P3の先端を図25(C)のΓM軸方向に延在する星印1〜4の位置、または、その位置から1格子分ずれた位置に配置する場合、隣接するドロップポートP2の先端は共振器32の中心からY軸方向下側に伸ばし黒丸より更に下側の格子点(共振器32の中心からY軸方向にa×2×√3以上下側)の格子点位置、及びその格子点位置から±0.5aだけX軸方向にシフトした格子点位置に存在すればよいことを示している。
【0068】
これは、共鳴モードが共振器32の中心からY軸方向に伸びる対称軸に対し反対称(対称軸を境に符号が逆転)の分布を持っていること、および、導波モードが、導波路中央を通るΓM軸を対称軸として正対称(対称軸の左右で符号が同じ)であることに起因する。つまり、図26(A)は、共鳴モードおよび導波モードの対称性を利用することでクロストークを低減できることを示している。
【0069】
次に、図26(B)に示すように、1つの共振器32に対し3本のドロップ導波路Pl,P2,P3を配置したとき、それぞれのポートにおけるドロップ効率を図26(C)に示す。ここではドロップ導波路P3の先端位置を図25(C)の星印3の位置に固定し、さらに簡単のためドロップ導波路Pl.P2.P3を全て導波路W1に統一した。
【0070】
この結果は上述の検討に良く一致し、上述の検討の正確さを裏付けるものである。さらに図26(C)は、−20dB以下のクロストークを達成するためには、ドロップ導波路Pl,P2,P3の間隔が7aもしくは13a以上であればよいことを示している。
【0071】
このことは図41を用いて一般的に説明することができる。空気穴をN(Nは奇数)個の空気穴を取り除いた共振器130の共鳴モードのフィールド分布は、共振器130の端部から図2に示すΓM軸方向にフィールドが広がっている。そのため、図41に示すΓM軸上にドロップ導波路の先端が配置されたとき、ドロップ効率が良いことは図25との対比から明らかである。さらに、この共鳴モードのフィールド分布は一般的にY軸に対し反対称となることを考慮すると、図26の考察より、先端が共振器130の中心を通るY軸上に配置されたドロップ導波路と共鳴モードは結合しない。つまり、共振器130の中心からY軸方向にMa√3だけ離れた位置に、隣接する共振器から光を取り出すためのドロップ導波路の先端を配置し、その位置からY軸と直交するX軸方向にa[(N−1)/2+3M]だけ離れた位置に、着目している共振器130から光を取り出すためのドロップ導波路の先端を配置する。ここで、Mは1以上の整数である。例えば図26の場合N=3、M=2であり、ドロップ導波路の間隔が7aとなる。以上の構成により、クロストークの問題を解決することができる。
【0072】
さらに、ドロップ導波路の透過帯域(導波帯域)を調整することでクロストークの問題を解決することもできる。本発明では、導波路として図21に示す構造を用いる。図21(B)に示すように、導波路は幅を狭くすることでカットオフ周波数を高周波数側にシフトさせることができる。本発明では、この導波路と組み合わせる共振器の共鳴周波数を、バス導波路の光伝播方向に次第に高くなるように設定し、それに連動するようにバス導波路及びドロップ導波路のカットオフ周波数を高く設定することで、図13〜図18に示す多ポートフィルタを構成する。
【0073】
この場合、図27(A)に示す構成では、ドロップ導波路P3と結合する共振器32の共鳴周波数は、ドロップ導波路P3より光伝播方向で手前(図中左側)に位置するドロップ導波路P1,P2の透過帯域内に存在するため、ドロップ導波路P3だけでなく、共振器32に隣接するドロップ導波路P1,P2にも共振器32からの光が漏れる可能性がある。
【0074】
一方、図27(B)に示す構成で、ドロップ導波路を配置した場合、ドロップ導波路P1と結合する共振器32の共鳴周波数は、ドロップ導波路P3より光伝播方向で先(図中右側)に位置するドロップ導波路P2,P3の導波モード帯域外であるため、共振器32に隣接するドロップ導波路P2,P3に共振器32からの光が漏れるおそれは少なく、クロストークが生じない。
【0075】
以上の考察を踏まえ、以降に多ポートシステムの計算例を示す。
【0076】
図28(A)に2ポートドロップフィルタの一実施形態の構造図を示す。ここでは、導波路の曲がり効率を無視するため、1つのドロップポートで2つの信号を取り出している。バス導波路50は2つのモードギャップ帯域をつくるために、3種類の導波路Wl,W2,W3で構成されている。導波路の幅は、Wl=1.0Wo,W2=0.96Wo,W3=0.92Woである。また、モードギャップ領域ごとに2種類の共鳴周波数が用意されている。以上の構成により、4つの信号を共振器51a,51bと、共振器52a,52bから2つのドロップ導波路51c,52cのポートに分波する。
【0077】
図28(B)に透過スペクトルを示す。4つの信号が高い効率でドロップされていることがわかる。これにより、図10(A),(B),(C)の構造における多ポートフィルタが構成可能であることを証明している。
【0078】
図29(A)に4ポートドロップフィルタの一実施形態の構造図を示す。このフィルタは図12に示す3ポートドロップフィルタを図15の構成で多ポート化している。このとき、共振器53a〜56aに対するドロップ導波路53b〜56bの先端位置は、図25(C)の黒丸の位置に設定されている。バス導波路50は2つのモードギャップ帯域をつくるために、3種類の導波路W1,W2.W3で構成されている。導波路の幅は、Wl=1.0Wo,W2=0.96Wo,W3=0.92Woである。また、モードギャップ領域ごとに2種類の共鳴周波数が用意されている。ここでは簡単のため、ドロップ導波路53b〜56bはすべてW1とした。
【0079】
図29(B)に透過スペクトルを示す。4つの信号が高い効率で4つのドロップ導波路53b〜56bのポートに出力されていることがわかる。このことは、バス導波路と共振器の位置関係が共振器とドロップ導波路の位置関係と等しくない系において、両者における結合効率をほぼ等しくできたことを示している。さらにこの結果は、図10(D)、図11(A)〜(D)、図12(A),(B)に示すような、バス導波路とドロップ導波路が並行ではない構成で多ポートフィルタが実現できることを証明している。
【0080】
図30に10ポートドロップフィルタの第1実施形態の構造図を示す。ここでは、図29の構造を直列につなぎ、ドロップポート数を増やすことを試みた。バス導波路57は5つのモードギャップ帯域をつくるために、6種類の導波路で構成されている。導波路の幅は入射側から順に、1.0Wo,0.98Wo,0.96Wo,0.94Wo,0.92Wo,0.90Woである。また、モードギャップ領域ごとに、2種類の共鳴周波数が用意されている。共振器とドロップ導波路の相対位置関係、およびドロップ導波路の種類は図27と同じである。殆どのポートにおいて高い効率で信号が出力されていることが、図31(A)に示す透過スペクトルより分かる。図31(B)にはクロストーク特性を示す。
【0081】
図32に10ポートドロップフィルタの第2実施形態の構造図を示す。ここでは、図11(A)に示す3ポートドロップフィルタを図15の構成で多ポート化している。バス導波路60は5つのモードギャップ帯域をつくるために、6種類の導波路で構成されている。導波路の幅は入射側から順に、1.0Wo,0.98Wo,0.96Wo,0.94Wo,092Wo,0.90Woである。また、モードギャップ領域ごとに、2種類の共鳴周波数が用意されている。各共鳴周波数の光は共振器61a〜70aからドロップ導波路61b〜70bのポートに分波される。ここでは簡単のため、ドロップ導波路61b〜70bは全てその幅を1.00Woとし、図11(A)に示すW2’は付加しない。
【0082】
本構造の特徴は、図30よりもX軸方向の線幅を狭くして信号を取り出せるところにある。線幅を狭くするには、共振器と導波路の間隔を広く取り、結合係数を小さく設定すればよい。本構成ではバス導波路と共振器の間隔が図29,図30よりも空気穴一列分広く取られている。図33(A)に透過スペクトルを示し、図33(B)にクロストーク特性を示す。
【0083】
ただし、図29,30の構成でこの手法を用いることはできない。つまり、バス導波路と共振器の間隔を広くした分、共振器とドロップ導波路の間隔を広くして結合係数を小さくしなければならないのだが、共振器とドロップ導波路の結合位置(ドロップ導波路の先端位置)が図25(C)の黒丸位置の1点であるため、これに対応できない。一方、図32の構成は、図25(C)のΓM軸方向に延在する星印1〜4の位置にドロップ導波路の先端をシフトさせることで、共振器とドロップ導波路の結合係数を小さくすることに対応できる。
【0084】
ここで、ドロップ効率のポート依存性に注目する。図31(A)、図33(A)の透過スペクトルに見られるように、奇数ポートのドロップ効率が悪くなる傾向にあり、このことは、線幅を狭くすることにより顕著になる。これは、図30、図32の構成が、1つの導波路境界で2つの共振器に対するバリアを形成する並列回路であることが原因であると考えられる。このため、図17に示すように、共振器の位置関係をずらすことで、1つの導波路境界で1つの共振器に対するバリアを形成するフィルタを構成することでこの問題を解決することができる。
【0085】
そこで、図34の構造を提案する。図34は10ポートドロップフィルタの第3実施形態の構造図を示す。本構造は図11(A)に示す3ポートドロップフィルタが図17の構成で多ポート化している。バス導波路80は10のモードギャップ帯域をつくるために、11種類の導波路で構成されている。導波路の幅は、それぞれ1.0Woから0.90Woまで0.01Woずつ狭められている。また、モードギャップ領域ごとに、1種類の共鳴周波数が用意されている。各共鳴周波数の光は共振器81a〜90aからドロップ導波路81b〜90bのポートに分波される。ここでは簡単のため、ドロップ導波路81b〜90bは全てその幅を1.00Woとし、図11(A)に示すW2’は付加しない。
【0086】
図32と同様にX軸方向の線幅を狭くして信号を取り出しても、透過スペクトルは図35(A)に示すように、おおよそ全てのポートにおいて高いドロップ効率が達成されている。これにより、図17に示す構成の効果が証明される。図35(B)にクロストーク特性を示す。
【0087】
次に、クロストークのレベルに注目する。図30,32、34の構成は全てドロップポート間隔が10a(aは格子定数)である。図26(A)から明らかなように、この間隔は低いクロストークを目指すには不十分であり、図31(B)、図33(B)、図35(B)からもこのことは明らかである。クロストークはドロップポート間隔を広げることで低減することが可能であるが、このことはデバイス長を長くすることにつながる。
【0088】
そこで、図36の構造を提案する。図36は10ポートドロップフィルタの第4実施形態の構造図を示す。本構造は図11(A)に示す3ポートドロップフィルタを図17の構成で多ポート化している。さらに図26(A)説明したように、着目する共振器に結合するドロップ導波路の隣のドロップポートの先端を、着目する共振器の中心からY軸方向下側に伸ばし黒丸より更に下側の格子点の位置、及びその位置から±0.5aだけX軸方向にシフトした格子点上に配置している。
【0089】
この構成の場合、ドロップ導波路間隔が7aとなる。バス導波路100は10のモードギャップ帯域をつくるために、11種類の導波路で構成されている。導波路の幅は、それぞれ1.0Woから0.90Woまで0.01Woずつ狭められている。またモードギャップ領域ごとに、1種類の共鳴周波数が用意されている。各共鳴周波数の光は共振器101a〜110aからドロップ導波路101b〜110bのポートに分波される。ここでは簡単のため、ドロップ導波路101b〜110bは全てその幅を1.00Woとし、図11(A)に示すW2’は付加しない。
【0090】
X軸方向の線幅を狭くして信号を取り出しても、透過スペクトルは図37(A)に示すように、おおよそ全てのポートにおいて高いドロップ効率が達成されている。また、図37(B)に示すように、20dB以下のクロストークも達成されている。これにより、共鳴モードおよび導波モードの対称性を利用することでクロストークを低減できることが証明される。
【0091】
更に、図38の構造を提案する。図38は10ポートドロップフィルタの第5実施形態の構造図を示す。本構造は図36におけるバス導波路100の代りに、バスを構成する導波路の透過帯域が連続的に変化するグレーディッド導波路120を用いている。つまり、バス導波路100では導波路幅を7a間隔でステップ状に変化させたのに対し、グレーディッド導波路120導波路幅を連続的に変化させる。着目する共振器の共鳴周波数の光はバス導波路120を着目する共振器の手前までしか伝播できないように透過帯域を設計することにより、図36の構成とほぼ等価で、かつ、導波路境界における2次元結晶面外への散乱を抑制できる。なお、図36バス導波路100は11種類の導波路で構成されているが、各導波路境界で2次元結晶面に対し垂直方向に光散乱を生じ、その分だけドロップ効率が低下する。
【0092】
X軸方向の線幅を狭くして信号を取り出しても、透過スペクトルは図39(A)に示すように、おおよそ全てのポートにおいて高いドロップ効率が達成されている。また、図39(B)に示すように、20dB以下のクロストークも達成されている。これにより、グレーディッド導波路120のバス導波路への採用も有効な手段であることが証明される。
【0093】
また、図42の構造を提案する。図42は10ポートドロップフィルタの第6実施形態の構造図を示す。本構造は図10(D)に示す3ポートドロップフィルタを図17の構成で多ポート化している。バス導波路140は10のモードギャップ帯域をつくるために、11種類の導波路で構成されている。導波路の幅は、それぞれ1.0Woから0.90Woまで0.01Woずつ狭められている。またモードギャップ領域ごとに、1種類の共鳴周波数が用意されている。各共鳴周波数の光は共振器141a〜150aからドロップ導波路141b〜150bのポートに分波される。ここで、ドロップ導波路141b〜150bは順番に1.0Woから0.91Woまで0.01Woずつ狭められており、その先端部に付加的な導波路141c〜150cが設けられている。この付加的な導波路は141cから150cまで順番に0.99Woから0.90Woまで0.01Woずつ狭められている。
【0094】
図43(A),(B)は図42の構造における透過スペクトル、クロストーク特性を示す。 本構造では、共振器が導波路に対し斜めに配置されることで、共鳴モードのX軸方向のフィールドの広がり幅が狭くなるため、図34に示すドロップフィルタとドロップポートの間隔と同じであっても、図43(B)に示すように30dB程のクロストークレベルを達成することができる。さらに、図10(D)で説明したように、構造の対称性が良くなるため、反射を抑えてドロップ効率を高くすることができる。
【0095】
次に、実際のデバイスを作製し測定した結果を示す。
【0096】
図40(A)に構造を示す。バス導波路120は1つのモードギャップ帯域をつくるために、2種類の導波路W1,W2で構成されている。導波路の幅は、それぞれ1.0Wo,0.90Woである。またモードギャップ領域に、2種類の共鳴周波数が用意されている。以上の構成により、2つの信号を共振器121a,122aから2つのドロップ導波路121b,122bのポートに分波する2ポートドロップフィルタを作製した。
【0097】
図40(A)の構造を持つ3つのドロップフィルタの透過スペクトルを図40(B)に示す。それぞれのフィルタの共鳴周波数は少しずつずらされており、合計6本のピークを確認することができる。特に、第2フィルタでは、急峻な線幅(0.145nm)で、かつ、高い透過率(60%)が達成されている。
【0098】
以上のように、本発明の構造は、導波モードギャップと共鳴トンネル過程を利用することで、注意深い位相の取り扱いを必要としない3ポート(1入力ポート+1ドロップポート+1スルーポート)のドロップフィルタを提供することができる。本構造は複数の導波路を直列に接続してバス導波路を構成する直列回路と、バス導波路20の両側に共振器を配置する並列回路が可能であるため、マルチチャネルのドロップフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】従来のチャネルドロップフィルタの構造を示す図である。
【図2】空気穴三角格子2次元フォトニック結晶構造及びそれを利用した共振器を説明するための図である。
【図3】2ポートシステムの導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図4】2ポートシステムの導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図5】2ポートシステムの導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図6】2ポートシステムの導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図7】2ポートシステムの導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図8】2ポートシステムの導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図9】組み合わせ導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図10】組み合わせ導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図11】組み合わせ導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図12】組み合わせ導波路と共振器の組み合わせを説明するための図である。
【図13】組み合わせ導波路を用いた直列回路を説明するための図である。
【図14】組み合わせ導波路を用いた直列回路の等価回路を説明するための図である。
【図15】組み合わせ導波路を用いた並列回路を説明するための図である。
【図16】組み合わせ導波路を用いた並列回路の等価回路を説明するための図である。
【図17】組み合わせ導波路を用いた直並列回路を説明するための図である。
【図18】組み合わせ導波路を用いた直並列回路の等価回路を説明するための図である。
【図19】グレーディッド導波路をバス導波路に用いた直並列回路を説明するための図である。
【図20】組み合わせ導波路と共振器を説明するための図である。
【図21】導波路と共振器を説明するための図である。
【図22】導波路と共振器の共鳴モードの結合を説明するための図である。
【図23】ドロップ効率と共振器位置の関係を説明するための図である。
【図24】共振器とドロップ導波路の位置関係を説明するための図である。
【図25】ドロップ効率のドロップ導波路の先端位置依存性を説明するための図である。
【図26】ドロップ導波路の配置を説明するための図である。
【図27】ドロップ導波路の配置とクロストークの関係を説明するための図である。
【図28】2ドロップポートフィルタの一実施形態を説明するための図である。
【図29】4ドロップポートフィルタの一実施形態を説明するための図である。
【図30】10ドロップポートフィルタの第1実施形態の構造図である。
【図31】10ドロップポートフィルタの第1実施形態の透過スペクトルとクロストーク特性を示す図である。
【図32】10ドロップポートフィルタの第2実施形態の構造図である。
【図33】10ドロップポートフィルタの第2実施形態の透過スペクトルとクロストーク特性を示す図である。
【図34】10ドロップポートフィルタの第3実施形態の構造図である。
【図35】10ドロップポートフィルタの第3実施形態の透過スペクトルとクロストーク特性を示す図である。
【図36】10ドロップポートフィルタの第4実施形態の構造図である。
【図37】10ドロップポートフィルタの第4実施形態の透過スペクトルとクロストーク特性を示す図である。
【図38】10ドロップポートフィルタの第5実施形態の構造図である。
【図39】10ドロップポートフィルタの第5実施形態の透過スペクトルとクロストーク特性を示す図である。
【図40】2ドロップポートフィルタデバイスを説明するための図である。
【図41】ドロップ導波路の配置を説明するための図である。
【図42】10ドロップポートフィルタの第6実施形態の構造図である。
【図43】10ドロップポートフィルタの第6実施形態の透過スペクトルとクロストーク
【符号の説明】
【0100】
20,30,40 バス導波路
22,23,32,33,51a,51b,52a,52b,53a〜56a,61a〜70a,81a〜90a,101a〜110a,130,141a〜150a 共振器
24,34,36,51c,52c,53b〜56b,61b〜70b,81b〜90b,101b〜110b,141b〜150b ドロップ導波路
141c〜150c 付加的な導波路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元フォトニック結晶に構成されたバス導波路と共振器とドロップ導波路を有し、
前記共振器は共鳴モードが複数方向に広がるフィールド分布を有し、
前記バス導波路は前記共振器と共鳴トンネル過程により結合され、
前記ドロップ導波路は前記共振器と共鳴トンネル過程により結合され、
前記バス導波路と前記共振器の結合定数と、前記ドロップ導波路と前記共振器の結合定数がほぼ等しいことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項2】
請求項1記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、透過帯域がずれた複数の導波路から構成され、導波路境界で特定帯域の光を透過させないモードギャップ帯域を有し、
前記共振器は、前記モードギャップ帯域に共鳴周波数を有することを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項3】
請求項2記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、透過帯域がずれた3以上の導波路から構成され、各導波路境界で光を透過させない特定帯域が異なる複数のモードギャップ帯域を有し、
前記複数のモードギャップ帯域それぞれに共鳴周波数を持つ複数の共振器を有することを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項4】
請求項3記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記複数のモードギャップ帯域は、前記バス導波路の光伝搬方向に順に前記特定帯域の周波数が高くなることを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項5】
請求項1記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、透過帯域が連続的に高周波数となるグレーディッド導波路であることを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、導波路を構成する線欠陥を挟んで対向するフォトニック結晶の空気穴列を導波路幅が狭くなるようシフトさせ、その外側の空気穴列を前記シフトさせた分だけ引き伸ばした幅変化導波路であることを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項7】
請求項2記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記ドロップ導波路を、前記バス導波路と同一構成とし、前記共振器を前記バス導波路と前記ドロップ導波路で挟んで平行に配置したことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項8】
請求項7記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記ドロップ導波路の導波路境界から前記共振器の中心までの導波路長手方向の距離がフォトニック結晶の格子定数の6または7倍以上に設定したことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記共振器の共鳴モードのフィールドが広がるΓM軸上の格子点、または前記格子点から1格子分シフトした位置に、前記ドロップ導波路の先端を配置したことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記共振器の中心から前記バス導波路の長手方向と直交するY軸方向にフォトニック結晶の格子定数の√3だけ離れた位置に、前記ドロップ導波路の先端を配置したことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項11】
請求項3乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記各共振器の共鳴モードのフィールドが広がるΓM軸上の格子点、または前記格子点から1格子分シフトした格子点位置に、各共振器に対応するドロップ導波路の先端を配置し、
前記各共振器の中心から前記バス導波路の長手方向と直交するY軸方向にフォトニック結晶の格子定数の√3を超えて離れた格子点位置に、前記各共振器に対応するドロップ導波路に隣接するドロップ導波路の先端を配置したことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項12】
請求項11記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
Y軸方向と直交するX軸方向にN(Nは奇数)個の空気穴を取り除くことにより構成された共振器の中心から、X軸方向に格子定数の[(N−1)/2+3M]倍(Mは1以上の整数)だけ離れ、Y軸方向に格子定数のM√3倍だけ離れた位置にドロップ導波路の先端が配置され、隣の導波路との間隔を格子定数の[(N−1)/2+3M]倍とすることを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項13】
請求項11または12記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
隣接するドロップ導波路の間隔は、前記フォトニック結晶の格子定数の7倍であることを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項14】
請求項4乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路に沿って配置した複数の共振器の共鳴周波数は、前記バス導波路の光伝搬方向に順に高くなる設定であり、
前記複数の共振器に結合する複数のドロップ導波路は、結合する共振器の共鳴周波数に合わせてカットオフ周波数が高くなる設定であることを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路を挟んで両側に共振器及びドロップ導波路を配置したことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項16】
請求項15記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路の1つの導波路境界に対し、前記バス導波路を挟んで配置された2つの共振器を結合し、
前記2つの共振器の共鳴周波数を異ならせたことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項17】
請求項15記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路を挟んで配置される共振器の位置を互いにバス導波路の光伝搬方向にずらし、
前記バス導波路の1つの導波路境界に対し、1つの共振器を結合することを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項1】
2次元フォトニック結晶に構成されたバス導波路と共振器とドロップ導波路を有し、
前記共振器は共鳴モードが複数方向に広がるフィールド分布を有し、
前記バス導波路は前記共振器と共鳴トンネル過程により結合され、
前記ドロップ導波路は前記共振器と共鳴トンネル過程により結合され、
前記バス導波路と前記共振器の結合定数と、前記ドロップ導波路と前記共振器の結合定数がほぼ等しいことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項2】
請求項1記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、透過帯域がずれた複数の導波路から構成され、導波路境界で特定帯域の光を透過させないモードギャップ帯域を有し、
前記共振器は、前記モードギャップ帯域に共鳴周波数を有することを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項3】
請求項2記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、透過帯域がずれた3以上の導波路から構成され、各導波路境界で光を透過させない特定帯域が異なる複数のモードギャップ帯域を有し、
前記複数のモードギャップ帯域それぞれに共鳴周波数を持つ複数の共振器を有することを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項4】
請求項3記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記複数のモードギャップ帯域は、前記バス導波路の光伝搬方向に順に前記特定帯域の周波数が高くなることを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項5】
請求項1記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、透過帯域が連続的に高周波数となるグレーディッド導波路であることを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路は、導波路を構成する線欠陥を挟んで対向するフォトニック結晶の空気穴列を導波路幅が狭くなるようシフトさせ、その外側の空気穴列を前記シフトさせた分だけ引き伸ばした幅変化導波路であることを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項7】
請求項2記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記ドロップ導波路を、前記バス導波路と同一構成とし、前記共振器を前記バス導波路と前記ドロップ導波路で挟んで平行に配置したことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項8】
請求項7記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記ドロップ導波路の導波路境界から前記共振器の中心までの導波路長手方向の距離がフォトニック結晶の格子定数の6または7倍以上に設定したことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記共振器の共鳴モードのフィールドが広がるΓM軸上の格子点、または前記格子点から1格子分シフトした位置に、前記ドロップ導波路の先端を配置したことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記共振器の中心から前記バス導波路の長手方向と直交するY軸方向にフォトニック結晶の格子定数の√3だけ離れた位置に、前記ドロップ導波路の先端を配置したことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項11】
請求項3乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記各共振器の共鳴モードのフィールドが広がるΓM軸上の格子点、または前記格子点から1格子分シフトした格子点位置に、各共振器に対応するドロップ導波路の先端を配置し、
前記各共振器の中心から前記バス導波路の長手方向と直交するY軸方向にフォトニック結晶の格子定数の√3を超えて離れた格子点位置に、前記各共振器に対応するドロップ導波路に隣接するドロップ導波路の先端を配置したことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項12】
請求項11記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
Y軸方向と直交するX軸方向にN(Nは奇数)個の空気穴を取り除くことにより構成された共振器の中心から、X軸方向に格子定数の[(N−1)/2+3M]倍(Mは1以上の整数)だけ離れ、Y軸方向に格子定数のM√3倍だけ離れた位置にドロップ導波路の先端が配置され、隣の導波路との間隔を格子定数の[(N−1)/2+3M]倍とすることを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項13】
請求項11または12記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
隣接するドロップ導波路の間隔は、前記フォトニック結晶の格子定数の7倍であることを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項14】
請求項4乃至6のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路に沿って配置した複数の共振器の共鳴周波数は、前記バス導波路の光伝搬方向に順に高くなる設定であり、
前記複数の共振器に結合する複数のドロップ導波路は、結合する共振器の共鳴周波数に合わせてカットオフ周波数が高くなる設定であることを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路を挟んで両側に共振器及びドロップ導波路を配置したことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項16】
請求項15記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路の1つの導波路境界に対し、前記バス導波路を挟んで配置された2つの共振器を結合し、
前記2つの共振器の共鳴周波数を異ならせたことを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【請求項17】
請求項15記載のチャネルドロップフィルタにおいて、
前記バス導波路を挟んで配置される共振器の位置を互いにバス導波路の光伝搬方向にずらし、
前記バス導波路の1つの導波路境界に対し、1つの共振器を結合することを特徴とするチャネルドロップフィルタ。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図23】
【図24】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図2】
【図21】
【図22】
【図25】
【図26】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図23】
【図24】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図2】
【図21】
【図22】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2006−71798(P2006−71798A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252860(P2004−252860)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]