説明

チャンバ装置

【課題】チャンバ内に配置された要素の特性や性能が劣化することを抑制する。
【解決手段】チャンバ装置は、レーザ装置および前記レーザ装置から出力されるレーザ光を集光するための集光光学系と共に用いられるチャンバ装置であって、レーザ装置から出力されたレーザ光を通過させる入射口が設けられたチャンバと、チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するように構成されたターゲット供給部と、チャンバ内でターゲット物質にレーザ光が照射することで発生したターゲット物質のデブリを付着させるデブリ入射面を含む回収部と、回収部から流出したデブリを回収する回収容器とを備え、デブリ入射面は、前記デブリが入射する方向に対して垂直でない方向に傾いていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チャンバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP方式による極端紫外(EUV)光生成装置では、チャンバ内でターゲット物質にレーザ光を照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化し、このプラズマ化したターゲット物質から放射される光のうち所望の波長、たとえば13.5nmの波長のEUV光を選択的に集光する。EUV光の集光には、ある一点で放射された光を集光する凹面状の反射面を備えた集光ミラーが用いられる。集光ミラーにより集光されたEUV光は、露光装置に導波され、フォトリソグラフィやレーザ加工等に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−266234号公報
【概要】
【0004】
本開示の一態様によるチャンバ装置は、レーザ装置および前記レーザ装置から出力されるレーザ光を集光するための集光光学系と共に用いられるチャンバ装置であって、レーザ装置から出力されたレーザ光を通過させる入射口が設けられたチャンバと、チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するように構成されたターゲット供給部と、チャンバ内でターゲット物質にレーザ光が照射することで発生したターゲット物質のデブリを付着させるデブリ入射面を含む回収部と、回収部から流出したデブリを回収する回収容器とを備え、デブリ入射面は、前記デブリが入射する方向に対して垂直でない方向に傾いていてもよい。
【0005】
また、本開示の他の態様によるチャンバ装置は、レーザ装置および前記レーザ装置から出力されるレーザ光を集光するための集光光学系と共に用いられるチャンバ装置であって、前記レーザ装置から出力されたレーザ光を通過させる入射口が設けられたチャンバと、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するように構成されたターゲット供給部と、前記所定の領域に磁場を形成するように構成された磁場生成部と、前記チャンバ内で前記ターゲット物質にレーザ光が照射することで発生した前記ターゲット物質のデブリのうち前記磁場に沿って移動したデブリを回収するように構成された回収部と、前記回収部の少なくとも一部を所定の温度範囲内に維持するように構成された温度調節部とを備え、前記温度調節部が、前記回収部を冷却するように構成された冷却器と、前記回収部を加熱するように構成された加熱部と、前記回収部の温度を検出するように構成された温度センサと、前記温度センサで検出された温度に基づいて前記冷却器および前記加熱部のうち少なくとも1つを制御するように構成された制御部とを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1】図1は、本開示の実施の形態1によるEUV光生成装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示されるEUV光生成装置のEUV光の軸を含む他の面に沿って切断した断面における構成を概略的に示す。
【図3A】図3Aは、実施の形態1によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図3B】図3Bは、図3Aに示されるデブリ回収部をイオン流が入射する方向に見た構成を概略的に示す。
【図4】図4は、本開示の実施の形態2によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図5】図5は、実施の形態2の変形例によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図6】図6は、本開示の実施の形態3によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図7】図7は、実施の形態3の変形例によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図8】図8は、本開示の実施の形態4によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図9】図9は、実施の形態4の変形例1によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図10】図10は、実施の形態4の変形例2によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図11】図11は、本開示の実施の形態5によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図12】図12は、実施の形態5の変形例1によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図13】図13は、実施の形態5の変形例2によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図14A】図14Aは、本開示の実施の形態6によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図14B】図14Bは、図14Aに示されるデブリ回収部をイオン流が入射する方向に見た構成を概略的に示す。
【図15】図15は、実施の形態6の変形例1によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図16】図16は、実施の形態6の変形例2によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図17】図17は、実施の形態6の変形例3によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図18A】図18Aは、本開示の実施の形態7によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図18B】図18Bは、図18Aに示されるデブリ回収部をイオン流が入射する方向に見た構成を概略的に示す。
【図19A】図19Aは、本開示の実施の形態8によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。
【図19B】図19Bは、図19Aに示されるデブリ回収部をイオン流が入射する方向に見た構成を概略的に示す。
【図20A】図20Aは、本開示の実施の形態10による磁場Bの電磁石コイルの中心軸と鉛直方向とを含む面に沿ってデブリ回収部を切断した際の断面における構成を概略的に示す。
【図20B】図20Bは、図20Aに示されるデブリ回収部をイオン流が入射する方向に見た構成を概略的に示す。
【図21】図21は、図20Aおよび図20Bに示されるフランジ部分の組立体の構成を概略的に示す分解図である。
【図22】図22は、本開示の実施の形態11によるデブリ回収部を磁場Bの電磁石コイルの中心軸と鉛直方向とを含む面に沿って切断した際の断面構成を概略的に示す。
【実施の形態】
【0007】
以下、本開示を実施するための形態を添付の図面を参照に詳細に説明する。なお、以下の説明において、各図では本開示の内容を理解できる程度に形状、大きさ、および位置関係等が概略的に示されてあるに過ぎず、従って、本開示は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係等に限定されるものではない。また、各図では、構成の明瞭化のため、断面におけるハッチングの一部が省略されている。さらに、後述において例示される数値は、本開示の好適な例に過ぎず、従って、本開示は例示された数値に限定されるものではない。
【0008】
実施の形態1
本開示の実施の形態1によるEUV光生成装置について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態1によるEUV光生成装置の構成を概略的に示す断面図である。図1は、EUV集光ミラー12で反射されるEUV光L2の軸AXを含む面に沿ってEUV光生成装置1を切断した断面である。
【0009】
図1に示されるように、EUV光生成装置1は、内部にEUV光L2の生成空間を画定するチャンバ10を備えてもよい。このチャンバ10には、ドロップレットジェネレータ13が設けられてもよい。ドロップレットジェネレータ13は、EUV光L2の発生源となるターゲット物質である錫(Sn)を溶融した状態で蓄えてもよい。ドロップレットジェネレータ13の先端には、ノズル13aが設けられていてもよい。ドロップレットジェネレータ13は、ノズル13aの先端がチャンバ10内のプラズマ生成領域P1に含まれる所定の位置に向けられるように配置されるのが好ましい。SnのドロップレットDは、ノズル13aの先端からプラズマ生成領域P1へ向けて出力されてもよい。ドロップレットジェネレータ13は、たとえばその内部圧力を利用して溶融Snを液滴状のドロップレットDとしてノズル13a先端から出力してもよい。ただし、これに限定されない。たとえば、いわゆる静電引出し型のドロップレットジェネレータや、いわゆる静電引出し加速型のドロップレットジェネレータなどが、ドロップレットジェネレータ13として用いられてもよい。静電引出し型のドロップレットジェネレータは、ノズル13a先端に対向する位置に、溶融Snを静電気力によって引き出すための電極が配置された構成を備えてもよい。静電引出し加速型のドロップレットジェネレータは、上述の電極に加えて、引き出されたドロップレットDを静電気力で加速させるための別の電極がさらに配置された構成を備えてもよい。
【0010】
チャンバ10内のプラズマ生成領域P1に供給されたドロップレットDには、外部のドライバレーザから出力されたレーザ光L1がチャンバ10に設けられたウィンドウ11を介して照射されてもよい。その際、ドロップレットDには、EUV集光ミラー12の中央に設けられた貫通孔12aを介してレーザ光L1が照射されてもよい。ドライバレーザがレーザ光L1を出力するタイミングは、ドロップレットDがプラズマ生成領域P1に到着する時刻にレーザ光L1がプラズマ生成領域P1を照射するようなタイミングに調節されているとよい。これにより、ドロップレットDがプラズマ生成領域P1内でプラズマ化し得る。プラズマ化したドロップレットDからは、プラズマが脱励起する際に所定の波長のEUV光L2を含む光が放射され得る。チャンバ10内には、プラズマ生成領域P1内で放射された光のうち所定の波長のEUV光L2を選択的に反射するEUV集光ミラー12が配置されてもよい。EUV集光ミラー12で反射されたEUV光L2は、EUV光生成装置1と露光装置(不図示)との接続部分である露光装置接続部19内の所定の位置(中間集光点IF)に一旦集光され、その後、露光装置へ導波されてもよい。
【0011】
チャンバ10には、プラズマ生成領域P1を通過したドロップレットDや、レーザ光L1に照射されてもプラズマ化しなかったドロップレットDの一部等を回収するためのターゲット回収部14が設けられてもよい。このターゲット回収部14は、たとえばドロップレットジェネレータ13のノズル13a先端とプラズマ生成領域P1とを結ぶ直線の延長線上に配置されてもよい。ただし、ドロップレットDの軌跡がカーブしている場合、ターゲット回収部14はカーブする軌跡の延長線上に配置されるのが好ましい。
【0012】
図2は、図1に示されるEUV光生成装置1をEUV光L2の軸AXを含む他の面に沿って切断した断面の構成を概略的に示す。
【0013】
図2に示されるように、EUV光生成装置1は、チャンバ10外に配置される磁場生成部15と、チャンバ10内に配置されるデブリ回収部16と、を備えてもよい。磁場生成部15は、チャンバ10を挟むように配置される一対の電磁石コイル15aを含んでもよい。磁場生成部15は、2つの電磁石コイル15aのボアの中心を結ぶ線がチャンバ10内のプラズマ生成領域P1を通るように配置されるのが好ましい。これにより、磁場生成部15は、プラズマ生成領域P1を包含する磁場Bを生成し得る。以降、2つの電磁石コイル15aのボアの中心を結ぶ線を、電磁石コイルの中心軸と称する。磁場Bは、EUV光L2が生成される際にプラズマ生成領域P1内で発生したターゲット物質(Sn)のデブリのうち帯電しているデブリをトラップし得る。磁場Bにトラップされたデブリは、ローレンツ力によってイオン流FLを形成し得る。イオン流FLの流れる先には、デブリ回収部16が配置されてもよい。イオン流FLが磁場Bに沿って流れることで、プラズマ生成領域P1内で発生したデブリがデブリ回収部16に回収され得る。
【0014】
つぎに、実施の形態1によるデブリ回収部16が、図面を参照して詳細に説明される。図3Aは、実施の形態1によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。図3Aは、磁場Bの電磁石コイルの中心軸を含む面に沿ってデブリ回収部を切断した際の断面の構成を示す。図3Bは、図3Aに示されるデブリ回収部をイオン流FLが入射する方向から見た構成を概略的に示す。
【0015】
図3Aおよび図3Bに示されるように、デブリ回収部16は、イオン流FLとして入射したSnのデブリを捕捉する部材として、たとえば円柱状の多孔質部材(ポーラス材料)102を備えてもよい。多孔質部材102は、その表面に内部の複数の空隙と連通する無数の開口を備えてもよい。多孔質部材102にイオン流FLとして入射したデブリD1は、失活したのち凝集して液体となってもよい。液体となったデブリD1は、多孔質部材102の表面の開口から内部の空隙まで毛細管現象により染み込み得る。これにより、デブリD1が多孔質部材102の内部に捕捉され、貯蔵され得る。
【0016】
デブリ回収部16は、多孔質部材102を加熱するためのヒータ101を備えてもよい。ヒータ101には、たとえばチャンバ10の外部に配置される電源108から電流が供給されてもよい。ヒータ101は、多孔質部材102をデブリD1が溶融状態にある温度範囲内に加熱してもよい。たとえば、ターゲット物質をSnとした場合、ヒータ101は、多孔質部材102を、Snの融点である232℃以上に加熱してもよい。これにより、多孔質部材102が入射したデブリD1を捕捉できる状態に保たれ得る。なお、多孔質部材102の温度は、多孔質部材102を構成する材料とターゲット物質とが反応する温度未満に保たれるのが好ましい。たとえば、SnとCuとは280℃以上で反応し得る。そのため、ターゲット物質をSnとし、多孔質部材102の材料がCuを含む場合、多孔質部材102は、280℃未満に保たれるのが好ましい。多孔質部材102の温度は、電源108からヒータ101に流される電流を電源108に接続された温度コントローラ109が制御することで制御されてもよい。
【0017】
多孔質部材102は、溶融したSnに対してぬれ性が高い材料で構成されていることが好ましい。以下の表1に、各種材料の溶融Snに対するぬれ性およびSnイオンに対するスパッタ率を示す。ぬれ性が高い場合、一般的に接触角が低い値となる。溶融したSnに対してぬれ性が高い材料には、たとえば表1に示されるように、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、シリコン(Si)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)などが含まれ得る。デブリに対してぬれ性の高い材料が用いられることで、多孔質部材102に入射したデブリを効率よくその内部へ染み込ませることができる。これにより、多孔質部材102のデブリが入射する面上に存在するSn(デブリD1)を低減させることが可能となる。この結果、多孔質部材102に捕捉されたSn(デブリD1)がイオン流FLによってスパッタされる量を低減できる。
【0018】
【表1】

【0019】
以上のような構成を備えることで、実施の形態1によれば、EUV光L2の生成の際に発生したデブリをデブリ回収部16で回収することが可能となる。その結果、デブリがチャンバ10内に配置された要素に付着することでその特性や性能が劣化することを抑制できる。
【0020】
以上の説明では、デブリ回収部16について説明したが、たとえば同様の構成をターゲット回収部14にも適用することが可能である。その場合、プラズマ生成領域P1を通過したターゲット物質をターゲット回収部14で回収することが可能となるため、ターゲット物質がチャンバ10内に配置された要素に付着することでその特性や性能が劣化することを抑制できる。
【0021】
実施の形態2
つぎに、本開示の実施の形態2によるEUV光生成装置およびデブリ回収部について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態2によるEUV光生成装置は、図1および図2に示されるEUV光生成装置1と同様の構成を備えてもよい。ただし、実施の形態2によるEUV光生成装置は、デブリ回収部16に替えてデブリ回収部216を備えてもよい。
【0022】
図4は、実施の形態2によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。図4には、磁場Bの電磁石コイルの中心軸を含む面に沿ってデブリ回収部を切断した際の断面の構成を示す。図4に示されるように、デブリ回収部216は、多孔質部材102の温度を検出するための温度センサ211を備えてもよい。デブリ回収部216のその他の構成は、図3に示されるデブリ回収部16と同様の構成であってよい。温度センサ211で検出された温度は、温度コントローラ109に入力されてもよい。温度コントローラ109は、入力された温度に基づいて電源108からヒータ101に流される電流をフィードバック制御してもよい。これにより、多孔質部材102の温度が的確に所定の温度範囲(たとえば232℃以上280℃未満)内に制御され得る。
【0023】
その他の構成および動作は、上述した実施の形態1における構成および動作と同様であってよいため、ここでは重複する説明を省略する。
【0024】
変形例
図5は、実施の形態2の変形例によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。上述の実施の形態2で例示された多孔質部材102は、図5のデブリ回収部216Aに示されるようなメッシュ部材(ポーラス材料)202に置き換えることも可能である。メッシュ部材202は、たとえばワイヤやリボン等が3次元に交差する3次元メッシュ構造を備えてもよい。メッシュ部材202は、多孔質部材102と同様に、表面に内部の複数の空隙と連通する無数の開口を備えてもよい。メッシュ部材202にイオン流FLとして入射したデブリD1は、表面の開口から内部の空隙まで染み込み得る。これにより、デブリD1がメッシュ部材202の内部に捕捉され、貯蔵され得る。
【0025】
多孔質部材102は、液状のターゲット物質を毛細管現象等により内部に染み込ませることができる構造の部材であれば、如何なる部材で構成されてもよい。このような部材には、3次元メッシュ構造のメッシュ部材202の他に、たとえば数μmの微粒子を焼結させた部材や繊維状の部材を固めた部材などが含まれ得る。また、多孔質部材がメッシュ部材等に置き換えられた構成は、他の実施の形態およびそれらの変形例にも適用することが可能である。
【0026】
実施の形態3
本開示の実施の形態3によるEUV光生成装置およびデブリ回収部について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態3によるEUV光生成装置は、図1および図2に示されるEUV光生成装置1と同様の構成を備えてもよい。ただし、実施の形態3によるEUV光生成装置は、デブリ回収部16に替えてデブリ回収部316を備えてもよい。
【0027】
図6は、実施の形態3によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。図6は、磁場Bの電磁石コイルの中心軸を含む面に沿ってデブリ回収部を切断した際の断面の構成を示す。図6に示されるように、デブリ回収部316は、多孔質部材102のイオン流FLが入射する面にメッシュ部材303を備えてもよい。このメッシュ部材303は、たとえば図5に示されるメッシュ部材202と同様の構造を有する部材で構成されてもよい。デブリ回収部316のその他の構成は、図4に示されるデブリ回収部216と同様の構成であってよい。メッシュ部材303にイオン流FLとして入射したデブリD1は、メッシュ部材303の表面の開口から内部に染み込んだ後、デブリD1の入射面に対して反対側の面に接触するように配置された多孔質部材102に染み込み得る。これにより、デブリD1が多孔質部材102の内部に捕捉され、貯蔵され得る。メッシュ部材303は、多孔質部材102よりもデブリD1に対してぬれ性が低いことが好ましい。
【0028】
メッシュ部材303は、たとえば上記の表1に示された、イオン流FLの入射に対してスパッタリングされ難い材料を用いて構成されることが好ましい。この材料には、たとえば炭素(C)、タングステン(W)、シリコン(Si)、タングステンカーバイド(WC)、チタン(Ti)、炭化ケイ素(SiC)およびアルミニウム(Al)などが含まれ得る。
【0029】
その他の構成および動作は、上述した実施の形態およびその変形例における構成および動作と同様であってよいため、ここでは重複する説明を省略する。
【0030】
変形例
図7は、実施の形態3の変形例によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。上述の実施の形態3で例示されたメッシュ部材303は、図7のデブリ回収部316Aに示されるような多孔質部材304に置き換えることも可能である。多孔質部材304は、多孔質部材102と同様に、表面に内部の複数の空隙と連通する無数の開口を備えてもよい。多孔質部材304にイオン流FLとして入射したデブリD1は、多孔質部材304の表面の開口から内部に染み込んだ後、デブリD1の入射面に対して反対側の面に接触するように配置された多孔質部材102に染み込み得る。これにより、デブリD1が多孔質部材102の内部に捕捉され得る。多孔質部材304は、イオン流FLが入射することによってスパッタリングされ難い材料を用いて構成されるのが好ましい。また、多孔質部材304は、多孔質部材102よりもデブリD1に対してぬれ性が低いことが好ましい。
【0031】
メッシュ部材303および多孔質部材304は、液状のターゲット物質を毛細管現象等により内部に染み込ませることができる構造の部材であれば、如何なる部材で構成されてもよい。このような部材には、たとえば数μmの微粒子を焼結させた部材や繊維状の部材を固めた部材などが含まれ得る。メッシュ部材303および多孔質部材304のイオン流FLが入射する方向の合計の厚さは数十μmでよい。デブリ回収部のイオン流FLが入射する面にメッシュ部材303または多孔質部材304が設けられた構成は、他の実施の形態およびその変形例にも適用することが可能である。
【0032】
実施の形態4
本開示の実施の形態4によるEUV光生成装置およびデブリ回収部について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態4によるEUV光生成装置は、図1および図2に示されるEUV光生成装置1と同様の構成を備えてもよい。ただし、実施の形態4によるEUV光生成装置は、デブリ回収部16に替えてデブリ回収部416を備えてもよい。
【0033】
図8は、実施の形態4によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。図8は、磁場Bの電磁石コイルの中心軸を含む面に沿ってデブリ回収部を切断した際の断面の構成を示す。図8に示されるように、デブリ回収部416は、図4に示されるデブリ回収部216と同様の構成を備えてもよい。ただし、デブリ回収部416は、多孔質部材102に替えて多孔質部材402を備えてもよい。多孔質部材402は、たとえば図4に示される多孔質部材102と同様の部材を用いて構成されてもよい。多孔質部材402は、イオン流FLが入射する面にポケット411を備えてもよい。ポケット411の開口径は、たとえばイオン流FLの横断面よりも幅広であるとよい。イオン流FLが入射する面にイオン流FLを受けるカップ状のポケット411が設けられることで、イオン流FLが入射することによって生成されたスパッタ物が、ポケット411の側面で捕捉され得る。これにより、スパッタ物がチャンバ10内へ飛散することを防止できる。
【0034】
その他の構成および動作は、上述した実施の形態およびその変形例における構成および動作と同様であってよいため、ここでは重複する説明を省略する。
【0035】
変形例1
図9は、実施の形態4の変形例1によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。上述の実施の形態4で例示された多孔質部材402は、図9に示されるデブリ回収部416Aのように、多孔質部材402aに置き換えることも可能である。多孔質部材402aでは、多孔質部材402におけるカップ状のポケット411が、円錐台形状のポケット412に置き換えられてもよい。ポケット412の側面がイオン流FLの入射方向に対して傾斜していることで、個々のデブリによってポケット412の側面が受ける単位面積当たりのSnの衝突密度を低減することが可能となる。その結果、イオン流FLが入射することによるスパッタを低減することが可能となる。
【0036】
変形例2
図10は、実施の形態4の変形例2によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。上述の多孔質部材402または402aは、図10に示されるデブリ回収部416Bのように、多孔質部材402bに置き換えることも可能である。多孔質部材402bは、たとえば多孔質部材402におけるカップ状のポケット411に替えて、開口部413と、空洞部414とを備えてもよい。開口部413は、イオン流FLが入射する面に位置するとよい。開口部413の開口径は、たとえばイオン流FLの横断面よりも幅広であるとよい。空洞部414は、多孔質部材402bに対してイオン流FLが入射する面よりも多孔質部材402bの内部に位置し、開口部413と連通していてもよい。空洞部414の最大の内径は、開口部413の開口径よりも幅広であるとよい。多孔質部材402bの内部に開口部413よりも幅広い空間(空洞部414)を設けることで、イオン流FLが入射することによって発生したスパッタ物がチャンバ10内へ飛散することをより確実に抑制することが可能となる。
【0037】
実施の形態5
本開示の実施の形態5によるEUV光生成装置およびデブリ回収部について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態5によるEUV光生成装置は、図1および図2に示されるEUV光生成装置1と同様の構成を備えてもよい。ただし、実施の形態5によるEUV光生成装置は、デブリ回収部16に替えてデブリ回収部516を備えてもよい。
【0038】
図11は、実施の形態5によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。図11は、磁場Bの電磁石コイルの中心軸を含む面に沿ってデブリ回収部を切断した際の断面の構成を示す。図11に示されるように、デブリ回収部516は、カップ状のポケット411の底部、すなわちイオン流FLが入射する面に、スパッタ防止部であるメッシュ部材511をさらに備えてもよい。このメッシュ部材511は、たとえば図6に示されるメッシュ部材303と同様の構造の部材を用いて構成されてもよい。デブリ回収部516のその他の構成は、図8に示されるデブリ回収部416と同様の構成であってもよい。メッシュ部材511にイオン流FLとして入射したデブリD1は、メッシュ部材511の表面の開口から内部に染み込んだ後、デブリD1の入射面に対して反対側の面に接触するように配置された多孔質部材402に染み込み得る。これにより、デブリD1が多孔質部材402の内部に捕捉され、貯蔵され得る。メッシュ部材511は、多孔質部材402よりもデブリD1に対してぬれ性が低いことが好ましい。
【0039】
その他の構成および動作は、上述した実施の形態およびその変形例における構成および動作と同様であってよいため、ここでは重複する説明を省略する。
【0040】
変形例1
図12は、実施の形態5の変形例1によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。変形例1によるデブリ回収部516Aは、図11に示されるデブリ回収部516と同様に、円錐台形状のポケット412の底部、すなわちイオン流FLが入射する面に、スパッタ防止部であるメッシュ部材511を備えてもよい。デブリ回収部516Aのその他の構成は、図9に示されるデブリ回収部416Aと同様の構成であってよい。メッシュ部材511にイオン流FLとして入射したデブリD1は、メッシュ部材511の表面の開口から内部に染み込んだ後、デブリD1の入射面に対して反対側の面に接触するように配置された多孔質部材402aに染み込み得る。これにより、デブリD1が多孔質部材402aの内部に捕捉され得る。メッシュ部材511は、多孔質部材402aよりもデブリD1に対してぬれ性が低いことが好ましい。
【0041】
変形例2
図13は、実施の形態5の変形例2によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。変形例2によるデブリ回収部516Bは、図11に示されるデブリ回収部516および図12に示されるデブリ回収部516Aと同様に、スパッタ防止部であるメッシュ部材511を備えてもよい。メッシュ部材511は、多孔質部材402b内の空洞部414においてイオン流FLが入射する面に設けられてもよい。デブリ回収部516Bのその他の構成は、図10に示されるデブリ回収部416Bと同様の構成であってよい。メッシュ部材511にイオン流FLとして入射したデブリD1は、メッシュ部材511の表面の開口から内部に染み込んだ後、デブリD1の入射面に対して反対側の面に接触するように配置された多孔質部材402bに染み込み得る。これにより、デブリD1が多孔質部材402bの内部に捕捉され得る。メッシュ部材511は、多孔質部材402bよりもデブリD1に対してぬれ性が低いことが好ましい。
【0042】
実施の形態6
本開示の実施の形態6によるEUV光生成装置およびデブリ回収部について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態6によるEUV光生成装置は、図1および図2に示されるEUV光生成装置1と同様の構成を備えてもよい。ただし、実施の形態6によるEUV光生成装置は、デブリ回収部16に替えてデブリ回収部616を備えてもよい。
【0043】
図14Aは、実施の形態6によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。図14Aは、磁場Bの電磁石コイルの中心軸を含む面に沿ってデブリ回収部を切断した際の断面の構成を示す。図14Bは、図14Aに示されるデブリ回収部をイオン流FLが入射する方向から見た構成を概略的に示す。図14Aおよび図14Bに示されるように、デブリ回収部616は、円板状の多孔質部材602と、多孔質部材602のイオン流FLが入射する面側に設けられた円板状のメッシュ部材603と、を備えてもよい。多孔質部材602は、たとえば図4に示される多孔質部材102と同様の部材を用いて構成されてもよい。メッシュ部材603は、たとえば図6に示されるメッシュ部材303と同様の構造の部材を用いて構成されてもよい。メッシュ部材603にイオン流FLとして入射したデブリD1は、メッシュ部材603の表面の開口から内部に染み込んだ後、デブリD1の入射面に対して反対側の面に接触するように配置された多孔質部材602に染み込み得る。これにより、デブリD1が多孔質部材602の内部に捕捉され得る。メッシュ部材603は、多孔質部材602よりもデブリD1に対してぬれ性が低いことが好ましい。多孔質部材602の代わりに、板材が用いられてもよい。この板材は、溶融したデブリに対してぬれ性が低いことが好ましい。
【0044】
デブリ回収部616は、多孔質部材602およびメッシュ部材603を、デブリであるSnが溶融する温度以上に加熱するためのヒータ601を備えてもよい。温度コントローラ109は、温度センサ211で検出された温度に基づいて、電源108からヒータ601に流される電流を制御してもよい。これにより、多孔質部材602およびメッシュ部材603の温度が、的確に所定の温度範囲(たとえばSnの融点(232℃)以上)内に制御され得る。
【0045】
多孔質部材602およびメッシュ部材603の温度がSnの融点以上の温度に調節されると、多孔質部材602内部に捕捉されたSn(デブリD1)は、溶融状態に保たれ得る。そのため、溶融したSn(デブリD1)が鉛直方向(紙面下方向)に向かって流れ得る。多孔質部材602およびメッシュ部材603の下方には、回収容器610が設けられてもよい。回収容器610は、多孔質部材602およびメッシュ部材603のうち少なくとも一方と接続する部分に開口を有してもよい。多孔質部材602およびメッシュ部材603から下方へ流れる溶融Snは、回収容器610に流れ込み得る。これにより、多孔質部材602およびメッシュ部材603に捕捉されたデブリD1が、デブリD2として回収容器610内に貯蔵され得る。
【0046】
以上のように、デブリD1を捕捉するユニットとは別にデブリD2を蓄えるユニットを設けることで、たとえば多孔質部材またはメッシュ部材の内部にSn(デブリD1)が貯蔵される場合と比較して、より多くのSnを貯蔵しておくことが可能となる。その結果、メンテナンスの回数を低減することができる。また、メッシュ部材603を多孔質部材602よりもデブリD1に対するぬれ性が低い部材で構成することで、回収容器610への溶融Snの流れ込みをスムーズにすることができる。回収容器610には、回収容器610の温度をその内部に貯蔵されるSnが溶融する温度に保つためのヒータ611が設けられてもよい。回収容器610の温度をSnが溶融する温度に保つことで、回収容器610内でのSnを液状に保つことができ、デブリD2の貯蔵に利用できる容積効率を向上できる。
【0047】
その他の構成および動作は、上述した実施の形態およびその変形例における構成および動作と同様であってよいため、ここでは重複する説明を省略する。
【0048】
変形例1
図15は、実施の形態6の変形例1によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。変形例1によるデブリ回収部616Aは、メッシュ部材603のデブリD1が入射する面に、たとえばイオン流FLの横断面よりも幅広の開口613が開口された円筒状の多孔質部材612を備えてもよい。デブリ回収部616Aのその他の構成は、図14Aおよび図14Bに示されるデブリ回収部616と同様の構成であってよい。このように、イオン流FLが入射する面にイオン流FLを受ける円筒状の多孔質部材612が設けられることで、イオン流FLが入射することによって発生したスパッタ物が、多孔質部材612の開口内壁面で捕捉され得る。これにより、スパッタ物がチャンバ10内へ飛散することを抑制できる。図14Aおよび図14Bに示されるデブリ回収部616におけるヒータ601は、多孔質部材602およびメッシュ部材603に加えて多孔質部材612を温めることが可能なヒータ601aに置き換えられてもよい。
【0049】
変形例2
図16は、実施の形態6の変形例2によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。変形例2によるデブリ回収部616Bは、図14Aおよび図14Bに示されるデブリ回収部616と同様の構成を備えてもよい。ただし、デブリ回収部616Bにおける回収容器610は、チャンバ10外に配置されてもよい。多孔質部材602およびメッシュ部材603と回収容器610との間には、多孔質部材602およびメッシュ部材603の下方から流れ出した溶融Snを回収容器610に導くためのドレイン管620が設けられてもよい。このドレイン管620は、たとえばヒータ621によってSnが溶融する温度(たとえば融点232℃以上)に温められてもよい。このような構成によれば、他の構成要素による占積制約の多いチャンバ10内に回収容器610を配置する必要がなくなる。その結果、比較的大容量の回収容器610をチャンバ10外に設けることが可能となり、メンテナンスの回数を低減できる。
【0050】
変形例3
図17は、実施の形態6の変形例3によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。変形例3によるデブリ回収部616Cは、図14Aおよび図14Bに示されるデブリ回収部616と同様の構成を備えてもよい。ただし、デブリ回収部616Cは、回収容器610に替えて、多孔質部材602およびメッシュ部材603から分離された回収容器630を備えてもよい。回収容器630は、チャンバ10の内壁面において多孔質部材602およびメッシュ部材603の下方に取り付けられてもよい。この回収容器630は、図示しない着脱機構によってチャンバ10に対して着脱可能であってもよい。多孔質部材602およびメッシュ部材603で捕捉されたデブリD1(溶融Sn)は、主にメッシュ部材603から流れ出し、下方にある回収容器630にデブリD2として回収され得る。このような構成によれば、チャンバ10内から回収容器630のみが取り出せるため、メンテナンスの手間を低減することが可能となる。
【0051】
実施の形態7
本開示の実施の形態7によるEUV光生成装置およびデブリ回収部について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態7によるEUV光生成装置は、図1および図2に示されるEUV光生成装置1と同様の構成を備えてもよい。ただし、実施の形態7によるEUV光生成装置は、デブリ回収部16に替えてデブリ回収部716を備えてもよい。
【0052】
図18Aは、実施の形態7によるデブリ回収部の構成を概略的に示す断面図である。図18Aは、磁場Bの電磁石コイルの中心軸を含む面に沿ってデブリ回収部を切断した際の断面の構成を示す。図18Bは、図18Aに示されるデブリ回収部をイオン流FLが入射する方向から見た構成を概略的に示す。図18Aおよび図18Bに示されるように、デブリ回収部716は、縦長な板状の多孔質部材702を備えてもよい。多孔質部材702は、たとえば図4に示される多孔質部材102と同様の部材を用いて構成されてもよい。
【0053】
多孔質部材702の長手方向における一方の端の形状は、半円形状であってもよい。多孔質部材702はその半円形状の部分が鉛直方向における上方に位置するように配置されてもよい。多孔質部材702の半円形状の部分を含む一部には、温度コントローラ109に接続された温度センサ211および電源108に接続されたヒータ701が設けられてもよい。温度コントローラ109は、ヒータ701が、温度センサ211で検出された温度に基づいて、多孔質部材702の温度が所定の温度範囲(たとえば232℃以上280℃未満)内の温度となるように電源108をフィードバック制御してもよい。これにより、多孔質部材702に捕捉されたSnのデブリD1が、溶融した状態に維持されつつ、鉛直方向の下方へ流れ得る。
【0054】
多孔質部材702における鉛直方向下方に配置される他方の端は、ヒータ701よりも下方へ突出してもよい。この突出した部分は、多孔質部材702の上方で捕捉されたSnを貯蔵するための貯蔵部702aとして機能してもよい。貯蔵部702aは、ヒータ701によって直接加熱されないため、Snの融点より低い温度となり得る。したがって、多孔質部材702の上方から流れ落ちてきた溶融Snは、貯蔵部702aに流れ込んだ後に放冷されて固化し得る。これにより、Snが貯蔵部702aにデブリD3として貯蔵され得る。
【0055】
その他の構成および動作は、上述した実施の形態およびその変形例における構成および動作と同様であってよいため、ここでは重複する説明を省略する。
【0056】
実施の形態8
上述の実施の形態では、デブリ回収部においてイオン流FLが入射する部分を、多孔質部材やメッシュ部材などの液体のデブリを浸透させることができる部材で構成した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。たとえば、イオン流FLが入射する部分にデブリを浸透させない部材が配置されてもよい。このような部材は、溶融したデブリに対してぬれ性の低い材料で構成されることが好ましい。以下、この場合を実施の形態8として、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は、上述した実施の形態6の変形例2によるデブリ回収部をベースとする。
【0057】
図19Aは、磁場Bの電磁石コイルの中心軸と鉛直方向とを含む面に沿ってデブリ回収部を切断した際の断面の構成を概略的に示す。図19Bは、図19Aに示されるデブリ回収部をイオン流FLが入射する方向から見た構成を概略的に示す。
【0058】
図19Aおよび図19Bに示されるように、実施の形態8によるデブリ回収部816は、図16に示されるデブリ回収部616Bと同様の構成を備えてもよい。ただし、デブリ回収部816は、多孔質部材602およびメッシュ部材603(図16参照)に替えて、板材802を備えてもよい。板材802は、たとえばホルダ801に保持されてもよい。板材802の表面には、被膜803が形成されてもよい。
【0059】
板材802には、熱伝導率が高い材料が用いられるとよい。熱伝導率が高い材料には、たとえば銅などの金属材料、SiC等のセラミック材料などが含まれ得る。被膜803には、たとえば溶融したデブリに対するぬれ性が低く、かつ、耐スパッタリング性に優れた材料が用いられるのが好ましい。また、被膜803にはデブリ(実施の形態8ではSn)との反応性が低い材料が用いられることが好ましい。さらに、デブリをクリーニングするために水素ガス等の反応性ガスがチャンバ10内に導入される場合は、被膜803には反応性ガスとの反応性が低い材料が用いられることが好ましい。このような材料には、SiCやカーボン(C)などが含まれ得る。材料にSiCを用いた場合には、CVD(Chemical Vapor Deposition)を用いて被膜803を形成することができる。被膜803の表面は、ある程度粗いことが好ましい。そこで、被膜803の表面は、粗く研磨された面であってもよいし、成膜したままの状態の面であってもよい。
【0060】
デブリ回収部816の温度は、イオン流FLが衝突することによって上昇し得る。被膜803の表面の温度は、デブリであるSnが溶融する温度以上であることが好ましい。ただし、必要以上に被膜803の表面の温度が高すぎると、被膜803の表面に付着したSnがスパッタリングされ易くなる場合がある。そのため、被膜803の表面の温度は、所定の範囲内に収まるように制御されることが好ましい。そこで実施の形態8では、図19Aおよび図19Bに示されるように、デブリ回収部816に冷却器808が設けられてもよい。冷却器808には、冷却されたシリコン油や有機化合物液体などの冷却媒体を流すための管809が連結されてもよい。管809の一部は、板材802の内部または裏面を通るように配管されてもよい。この管809内を冷却器808で冷却された冷却媒体が流れることで、被膜803の表面の温度が高くなりすぎないように、板材802を冷却することができる。この冷却器808および管809は、上述したいずれの実施の形態に対しても適用することができる。
【0061】
温度コントローラ109は、温度センサ211で検出された温度がたとえば予め設定された第1の閾値温度を超えると、冷却器808を駆動してもよい。これにより、管809内に冷却された冷却媒体が送出され、板材802を介して被膜803の表面が冷却され得る。たとえば、第1の閾値温度は後述する第2の閾値温度よりも高い温度としてよい。また、第1の閾値温度は、被膜803および板材802が熱的に変性する温度未満に設定されてもよい。その場合、板材802が冷却され、結果として、板材802表面に形成された被膜803が冷却され得る。管809内へは、たとえば温度センサ211で検出された温度が予め設定された第2の閾値温度を下回るまで、継続して冷却媒体が送り出されてもよい。第2の閾値温度(<第1の閾値温度)は、たとえばターゲット物質(Sn)の溶融温度よりも高い温度に設定されてもよい。
【0062】
以上のような構成および動作により、実施の形態8では、イオン流FLが衝突する被膜803の表面の温度がデブリ(Sn)の溶融温度以上に保たれ得る。被膜803の表面は、溶融したデブリに対するぬれ性が低い。そのため、被膜803の表面に付着したデブリは、溶融した状態で自重により鉛直方向下方へ流れ得る。デブリの流れた先には、図16に示される構成と同様に、ドレイン管620が設けられてもよい。ドレイン管620の下流側には、回収容器610が設けられてもよい。その場合、鉛直方向下方へ流れるデブリは、ドレイン管620を通って回収容器610に回収され得る。
【0063】
なお、実施の形態8では、冷却器808に代えて、加熱冷却が可能な恒温サーキュレータ等が用いられてもよい。また、その他の構成および動作は、上述した実施の形態およびその変形例における構成および動作と同様であってよいため、ここでは重複する説明を省略する。
【0064】
実施の形態9
つづいて、実施の形態8で例示された板材802の材料について、以下により具体的に説明する。実施の形態8における板材802は、以下に例示されるような、溶融Snに対してぬれ性の低い材料で構成されてもよい。この場合、板材802の表面には、被膜803が形成されなくともよい。すなわち、実施の形態9では、デブリが入射する面に、以下に例示されるような、溶融Snに対してぬれ性の低い材料が配置されていればよい。
【0065】
上述の実施の形態8において述べられたように、被膜803には、たとえば溶融したデブリに対するぬれ性が低く、かつ、耐スパッタリング性に優れた材料が用いられるのが好ましい。一般に、接触角度θが0°<θ≦90°の材料は、浸漬濡れの特性を有する。そのため、溶融したデブリに対して接触角度θが0°<θ≦90°の材料で被膜803が形成された場合、被膜803の表面に付着したデブリは、被膜803表面に浸り得る。一方、接触角度θがθ>90°の材料は、付着濡れの特性を有する。そのため、溶融したデブリに対して接触角度θがθ>90°の材料で被膜803が形成された場合、被膜803の表面に付着したデブリは、濡れが進行し難く、被膜803の表面に留まり得る。その後、被膜803の表面に付着したデブリは、自重により鉛直方向下方へ移動し得る。
【0066】
以下の表2に、上述の実施の形態において例示したデブリである溶融Snに対する接触角度と材料との関係を示す。
【0067】
【表2】

【0068】
表2を参照すると明らかなように、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、グラファイト、ダイヤモンド、酸化珪素(SiOx)および酸化モリブデン(MoOx)は、溶融Snに対する接触角度θが90°より大きく、溶融Snに対するぬれ性が低い。そのため、これらの材料は、被膜803および板材802の材料として好適であり得る。
【0069】
上記表2に例示される材料以外にも、タングステン(W)およびタンタル(Ta)は、酸化処理されることによって溶融Snに対するぬれ性が低くなる。そのため、これらの材料も、被膜803および板材802の材料として好適であり得る。
【0070】
次に、溶融Snと各種材料との反応性について、以下に述べる。一般に、高融点材料であるタングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)などは、Snに対して安定した特性を有する。すなわち、これらの材料は、Snとの反応性が低い。
【0071】
炭化珪素(SiC)、窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、グラファイト、ダイヤモンド、酸化珪素(SiOx)および酸化モリブデン(MoOx)もまた、溶融Snに対して安定した特性を有する。すなわち、これらの材料も、溶融Snとの反応性が低い。
【0072】
さらに、酸化タングステン(WO)および酸化タンタル(Ta)も、溶融Snに対して安定した特性を有する。すなわち、これらの材料も、溶融Snとの反応性が低い。
【0073】
以上のことから、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、グラファイト、ダイヤモンド、酸化珪素(SiOx)、酸化モリブデン(MoOx)、酸化タングステン(WO)および酸化タンタル(Ta)のうちいずれかを、被膜803および板材802の材料とするのが好ましい。あるいは、これらの材料のうち1つ以上を含む材料を、被膜803および板材802の材料としてもよい。
【0074】
また、デブリに対するスパッタ率が低いという観点からは、炭素(C)を被膜803および板材802の材料とすることも考えられる。
【0075】
実施の形態10
実施の形態10について、図面を参照に詳細に説明する。実施の形態10では、実施の形態8で例示したデブリ回収部816に実施の形態9で例示したぬれ性の低い材料が用いられてもよい。さらに、実施の形態10では、ヒータと冷却器との組み合わせによってデブリ回収部の温度が制御されてもよい。
【0076】
(構成)
図20Aは、磁場Bの電磁石コイルの中心軸と鉛直方向とを含む面に沿ってデブリ回収部を切断した際の断面の構成を概略的に示す。図20Bは、図20Aに示されるデブリ回収部をイオン流FLが入射する方向から見た構成を概略的に示す。図21は、図20Aおよび図20Bに示されるフランジ部分の組立体の構成を概略的に示す分解図である。
【0077】
図20Aおよび図20Bに示されるように、実施の形態10によるデブリ回収部916は、基板902と、ヒートシンク911と、温度コントローラ109と、温度センサ211と、ヒータ912と、電源108と、冷却器808と、管809と、受け部921と、ドレイン管923とを備えてもよい。
【0078】
基板902には、熱伝導性の高い材料が用いられてもよい。この材料は、たとえば銅(Cu)等の金属材料や炭化珪素(SiC)等のセラミック材料であってもよい。基板902の表面には、被膜903がコーティングされていてもよい。基板902の材料にCuを用いた場合、基板902表面は、ニッケルを含む被膜903にてコーティングされていてもよい。あるいは、被膜903には、上述した被膜803と同様に、ターゲット物質(たとえばSn)に対するぬれ性の低い材料が用いられてもよい。その際、被膜903には、スパッタリングに強い材料が用いられるのが好ましい。被膜903の材料は、SiCやカーボングラファイト(C)などであってもよい。好ましくは、被膜903は、化学蒸着後に研磨されないCVD−SiC膜が用いられるとよい。
【0079】
また、図21に示されるように、基板902の裏面側には、ヒータ912、ヒートシンク911およびフランジ930が、基板902に近い側から順にこの順番で設けられてもよい。図21のように、ヒートシンク911およびフランジ930は、一体の部材として形成されてもよいが、図20Aのように、それぞれ別体として形成された部材を接合したものであってもよい。基板902およびヒータ912は、基板902の外縁と係合可能な固定リング904を用いてヒートシンク911に固定されてもよい。固定リング904を用いたヒートシンク911への固定は、ネジによる締結であってもよいし、ロウ付けや溶接による固定であってもよい。
【0080】
ヒータ912は、円環形状であってもよい。ヒータ912は、減圧熱分解CVD法で製造されたセラミックであってもよい。このセラミックは、たとえば熱分解窒化ホウ素と熱分解グラファイトとが積層された構成を備えてもよい。
【0081】
ヒートシンク911とヒータ912との間には、空間913が画定されていてもよい。ヒートシンク911は、ヒータ912の外周部および内周部の少なくともいずれかでヒータ912に接触していればよい。空間913には、ヒートシンク911とヒータ912との間の熱伝導を調節するよう、不活性ガスや空気などの気体が所望の圧力で封入されていてもよい。または、空間913には、ヒートシンク911よりも熱伝導率の低い液体または固体の物質が充填されてもよい。
【0082】
また、図20Aに示されるように、ヒートシンク911内部の冷却媒体通路には、冷却器808に接続された冷却媒体流路である管809が接続されていてもよい。フランジ930は、チャンバ10に対して脱着可能であることが好ましい。フランジ930とチャンバ10との接続には、ボルト930aなどが用いられてもよい。チャンバ10には、デブリ回収部916をチャンバ10の外部から装着するための開口10aが設けられていてもよい。その場合、フランジ930は、チャンバ10の開口10aを気密に封止可能であることが好ましい。
【0083】
温度センサ211は、基板902の表面温度を検出してもよい。温度センサ211は、ヒートシンク911に接触しないように設けられてもよい。温度センサ211によって検出された温度値は、温度コントローラ109に入力されてもよい。温度コントローラ109は、温度センサ211から入力される温度値に基づいて、冷却器808および電源108を制御してもよい。
【0084】
基板902に入射したイオン流FLは、失活したのち冷却され凝集することで、液体のデブリD1となってもよい。液体のデブリD1は、デブリに対してぬれ性の低い被膜903の表面に液滴の状態で付着し得る。デブリD1は、温度制御された被膜903の表面を液滴のまま鉛直方向下方へ流れ落ち得る。鉛直方向下方へ流れ落ちたデブリD1は、受け部921を介してドレイン管923内に流れ込んでもよい。ドレイン管923内を流れたデブリD1は、たとえば収容容器610(図19Aおよび図19B参照)内に貯蔵されてもよい。受け部921およびドレイン管923は、デブリD1の融点以上にヒータ等で加熱されてもよい。
【0085】
(動作)
実施の形態10によるデブリ回収部916の動作を説明する。冷却器808は、ヒートシンク911内の管809に一定流量の冷却媒体を流すように構成されてもよい。冷却器808は、たとえば、ラジエータ等の熱交換装置とポンプ等の圧送装置とを含んでもよい。冷却媒体は、冷却されたシリコン油や有機化合物液体などの他、水であってもよい。温度コントローラ109は、温度センサ211によって検出された温度に基づいて電源108からヒータ912に供給される電流を制御してもよい。それにより、ヒータ912が基板902を所望の温度範囲内の温度に加熱し得る。温度コントローラ109の設定温度は、被膜903の表面において、ターゲット物質(たとえばSn)の融点以上の温度であってもよい。
【0086】
実施の形態10では、被膜903の材料には、ターゲット物質に対するぬれ性が比較的低い材料が用いられている。そのため、被膜903の表面温度をターゲット物質の融点以上の温度に制御することで、被膜903表面に付着したデブリD1を液滴の状態で鉛直方向下方に落下させることができる。液滴状のデブリD1は、漏斗状の受け部921を介してドレイン管923内に流れ込み、その後、たとえば収容容器610(図19Aおよび図19B参照)内に貯蔵されてもよい。
【0087】
(作用)
実施の形態10によれば、デブリ回収部916における被膜903の表面温度をターゲット物質の融点よりも高い温度に制御することができる。デブリ回収部916における少なくとも被膜903の表面温度は、EUV光生成装置1の運転初期や運転状態の変更時(たとえばデューティ比の変更時)であっても、ターゲット物質の融点よりも高い温度に制御され得る。そのため、デブリ回収部916の表面に固体状のターゲット物質が蓄積して固着することを抑制し得る。それにより、イオンなどの粒子とデブリ回収部916に固着したターゲット物質(デブリD1)との衝突によってターゲット物質がスパッタリングされ得る。その結果、スパッタリングによって飛散したデブリがチャンバ内の光学素子に付着してその性能を低下させることを抑制し得る。さらに、ヒータ912とヒートシンク911との間に空間913が設けられることで、ヒータ912とヒートシンク911との直接の接触面積が小さくされている。それにより、熱伝導を制限することができる。そのような構成によれば、コントローラ109による設定温度よりも低い沸点を持つ冷却媒体を用いた場合でも、冷却媒体が沸騰することを抑制できる。その結果、冷却媒体として安価な水を使用することができる。
【0088】
(その他)
実施の形態10では、電源108からヒータ912に供給する電流を一定の電流とし、代わりに、冷却媒体の流量を制御することで、被膜903表面の温度が制御されてもよい。その場合、冷却媒体の流量を制御するための制御バルブが管809に設けられてもよい。温度コントローラ109は、被膜903の表面温度を所定の温度範囲(たとえばターゲット物質の融点以上)に制御するために、管809に設けられた制御バルブを制御してもよい。あるいは、温度コントローラ109は、制御バルブを制御する代わりに、冷却器808内のポンプ等の圧送装置による冷却媒体の圧送流量を制御してもよい。
【0089】
または、温度コントローラ109は、電源108からヒータ912に供給される電流と、冷却器808から管809に流される冷却媒体の流量との両方を制御してもよい。
【0090】
上述のような溶融Snに対してぬれ性の低い材料は、実施の形態1〜10およびそれらの変形例で例示されたデブリ回収部において、デブリが入射する部分にも適用可能である。デブリが入射する部分には、たとえば、デブリ回収部を構成する部分として、多孔質部材102、メッシュ部材202、多孔質部材402、多孔質部材402a、多孔質部材402b、多孔質部材602および多孔質部材702が含まれ得る。また、デブリが入射する部分には、これらの部材のスパッタを防止するためのスパッタ防止部として、メッシュ部材303、多孔質部材304、メッシュ部材511、メッシュ部材603および多孔質部材612が含まれ得る。
【0091】
実施の形態11
上述した実施の形態において、イオン流FLの入射面は、重力方向に対してやや傾いていてもよい。たとえば実施の形態10のように、ターゲット材料(Sn)に対してぬれ性の低い材料をデブリ回収部916のイオン入射面(基板902もしくは被膜903)に用いた場合、デブリ回収部916は、そのイオン流FLの入射面が重力方向に対して傾いて設置されてもよい。この際、入射面が傾く方向は、重力方向からみて入射面が見えるような方向であるとよい。つまり、地面を仮定した場合、上空に対するように傾くとよい。図22は、実施の形態11によるデブリ回収部を磁場Bの電磁石コイルの中心軸と重力方向とを含む面に沿って切断した際の断面構成を概略的に示す。図22では、図20Aと同様の構成に同一の符号が付されている。
【0092】
図22に示されるように、実施の形態11によるデブリ回収部916Aは、実施の形態10によるデブリ回収部916と同様の構成を備えてもよい。ただし、デブリ回収部916Aは、ヒートシンク911に替えてヒートシンク911Aを備えてもよい。
【0093】
ヒートシンク911Aは、たとえば略円柱状の部材であってもよい。この円柱状の部材における2つの平面のうちの一方の面は、回転対称である円柱の回転軸に対して垂直よりやや傾いた面であってもよい。ヒートシンク911Aは、この一方の面が上空に対するように傾いた状態で、チャンバ10に設置されてもよい。ヒータ912、被膜903を伴う基板902は、この一方の面に設けられてもよい。これにより、イオン流FLの入射面(基板902もしくは被膜903)が上空に対するように傾いた状態となり得る。
【0094】
以上で説明したように、イオン流FLの入射面(基板902もしくは被膜903)を上空に対するように傾いた状態とすることで、入射面に付着したデブリD1が入射面を伝って重力方向へ流れ得る。それにより、デブリD1が入射面の縁以外の部分から離れて落下することを抑制できる。その結果、デブリD1が、受け部921に到達せずに、チャンバ10内の要素(たとえばEUV集光ミラー12等)に付着したり、チャンバ10内に拡散したりする確率を低減できる。また、より多くのデブリD1が受け部921を介してドレイン管923内へ流れ込むため、より多くのデブリD1を回収することが可能となる。
【0095】
ヒートシンク911A内に配設された管809は、入射面側の部分がこの入射面と略平行であるとよい。その場合、イオン流FLの入射面を効率的且つ効果的に冷却し得る。その他の構成は、上述した実施の形態と同様であってもよい。
【0096】
上記実施の形態およびその変形例は本開示を実施するための例にすぎず、本開示はこれらに限定されるものではなく、仕様等に応じて種々変形することは本開示の範囲内である。更に本開示の範囲内において、他の様々な実施の形態が可能であることは上記記載から自明である。例えば各実施の形態に対して適宜例示された変形例は、他の実施の形態に対して適用することも可能であることは言うまでもない。
【0097】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0098】
1 EUV光生成装置
10 チャンバ
10a 開口
11 ウィンドウ
12 EUV集光ミラー
12a 貫通孔
13 ドロップレットジェネレータ
13a ノズル
14 ターゲット回収部
15 磁場生成部
15a 電磁石コイル
16、216、216A、316、316A、416、416A、416B、516、516A、516B、616、616A、616B、616C、716、816、916、916A デブリ回収部
19 露光装置接続部
101、601、601a、611、621、701 ヒータ
102、304、402、402a、402b、602、612、702 多孔質部材
108 電源
109 温度コントローラ
202、303、511、603 メッシュ部材
211 温度センサ
411、412 ポケット
413 開口部
414 空洞部
610、630 回収容器
613 開口
620 ドレイン管
702a 貯蔵部
801 ホルダ
802 板材
803 被膜
808 冷却器
809 管
902 基板
903 被膜
904 固定リング
911、911A ヒートシンク
912 ヒータ
913 空間
921 受け部
923 ドレイン管
930 フランジ
930a ボルト
AX 軸
B 磁場
D ドロップレット
D1、D2、D3 デブリ
FL イオン流
IF 中間集光点
L1 レーザ光
L2 EUV光
P1 プラズマ生成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ装置および前記レーザ装置から出力されるレーザ光を集光するための集光光学系と共に用いられるチャンバ装置であって、
前記レーザ装置から出力されたレーザ光を通過させる入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するように構成されたターゲット供給部と、
前記チャンバ内で前記ターゲット物質にレーザ光が照射することで発生した前記ターゲット物質のデブリを付着させるデブリ入射面を含む回収部と、
前記回収部から流出したデブリを回収する回収容器とを備え、
前記デブリ入射面は、前記デブリが入射する方向に対して垂直でない方向に傾いている、
チャンバ装置。
【請求項2】
レーザ装置および前記レーザ装置から出力されるレーザ光を集光するための集光光学系と共に用いられるチャンバ装置であって、
前記レーザ装置から出力されたレーザ光を通過させる入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するように構成されたターゲット供給部と、
前記所定の領域に磁場を形成するように構成された磁場生成部と、
前記チャンバ内で前記ターゲット物質にレーザ光が照射することで発生した前記ターゲット物質のデブリのうち前記磁場に沿って移動したデブリを回収するように構成された回収部と、
前記回収部の少なくとも一部を所定の温度範囲内に維持するように構成された温度調節部とを備え、
前記温度調節部は、
前記回収部を冷却するように構成された冷却器と、
前記回収部を加熱するように構成された加熱部と、
前記回収部の温度を検出するように構成された温度センサと、
前記温度センサで検出された温度に基づいて前記冷却器および前記加熱部のうち少なくとも1つを制御するように構成された制御部とを含む、
チャンバ装置。
【請求項3】
前記回収部は、前記デブリが入射する第1面を備えた基板を含み、
前記加熱部は、前記基板における前記第1面の反対側に位置する第2面の少なくとも一部と接触し、
前記冷却器は、冷却媒体と、該冷却媒体が接する冷却部材とを含み、
前記冷却部材は、前記基板における前記第2面の少なくとも一部と接触し、
前記加熱部と前記冷却部材との間の少なくとも一部には、空間が存在する、
請求項2記載のチャンバ装置。
【請求項4】
前記冷却器は、一定の流量の冷却媒体を用いて前記回収部を冷却し、
前記制御部は、前記温度センサで検出された温度に基づいて前記加熱部を制御する、
請求項2記載のチャンバ装置。
【請求項5】
前記加熱部は、発熱部に一定の電流を流して前記回収部を加熱し、
前記制御部は、前記温度センサで検出された温度に基づいて前記冷却器を制御する、
請求項2記載のチャンバ装置。
【請求項6】
前記冷却器は、冷却媒体を供給する供給部と、該供給部から供給された冷却媒体が流れる管と、該管内に流れる前記冷却媒体の流量を制御する制御バルブとを含み、
前記冷却器は、冷却媒体を用いて前記回収部を冷却し、
前記加熱部は、発熱部に一定の電流を流して前記回収部を加熱し、
前記制御部は、前記温度センサで検出された温度に基づいて前記制御バルブを制御する、
請求項2記載のチャンバ装置。
【請求項7】
前記回収部における前記デブリが入射する面は、炭化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、グラファイト、ダイヤモンド、酸化珪素、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化タンタルおよび炭素のうち少なくとも1つを含む材料で形成される、請求項2記載のチャンバ装置。
【請求項8】
前記回収部における前記デブリが入射する面は、前記デブリが入射する方向に対して垂直でない方向に傾いている、請求項2記載のチャンバ装置。
【請求項9】
前記冷却媒体は、水を含む、請求項3記載のチャンバ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−84892(P2013−84892A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107377(P2012−107377)
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】