説明

チューブポンプ

【課題】チューブの材質や室温などの使用条件に依らずに安定して送液する。
【解決手段】平行間隔を空けて配置された複数の軸線4a回りに回転可能に支持された複数のローラ4を有し、該複数のローラ4を環状の軌道に沿って軸線4aに直交する方向に移動させる駆動部5と、該駆動部5のローラ4との間に弾性を有するチューブ6を挟んで径方向に押し潰す押さえ部7と、チューブ6を加温する加温部8とを備えるチューブポンプ1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、チューブの一部をローラによってしごくことによりチューブ内の液体を送るチューブポンプにおいて、バネの付勢力によってローラがチューブを押し潰す構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−261864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、医療用として一般的に使用されているポリ塩化ビニル(PVC)製などのチューブの場合、温度によって弾性が比較的大きく変化し、温度が低くなると硬くなる。したがって、特許文献1のチューブポンプの場合、チューブが硬くなったときに、バネの付勢力によってチューブを十分に押し潰せないために送液量が低下したり、ローラを回転させるモータに負荷がかかってモータが停止したりしてしまうという問題がある。
【0005】
これに対処するために、バネとしてバネ定数のより大きなものを使用してローラがより大きな力でチューブを押し潰す構成にした場合、ローラとチューブとの間で生じる摩擦が大きくなるためにモータに要求されるトルクが大きくなる。すなわち、出力の大きい比較的大型のモータが必要となるが、そのようなモータは比較的小型のチューブポンプには適さない。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、チューブの材質や室温などの使用条件に依らずに安定して送液することができるチューブポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、平行間隔を空けて配置された複数の軸線回りに回転可能に支持された複数のローラを有し、該複数のローラを環状の軌道に沿って前記軸線に直交する方向に移動させる駆動部と、該駆動部の前記ローラとの間に弾性を有するチューブを挟んで径方向に押し潰す押さえ部と、前記チューブを加温する加温部とを備えるチューブポンプを提供する。
【0008】
本発明によれば、ローラと押さえ部との間にチューブを挟み、駆動部によってローラを環状の軌道に沿って移動させることにより、チューブ内の液体をローラによって順次送り出すことができる。
この場合に、チューブの材質や室温などの使用条件が変化しても、加温部によって、チューブが十分に高い弾性を有する温度にチューブを加温することにより、安定して送液することができる。
【0009】
上記発明においては、前記加温部が、前記押さえ部に設けられていてもよく、前記ローラに設けられていてもよい。
このようにすることで、ローラと押さえ部とに挟まれた位置においてチューブを効率的に加温することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記チューブの温度を測定する温度測定部と、該温度測定部によって測定された温度が所定温度になるように前記加温部を制御する制御部とを備えていてもよい。
このようにすることで、チューブの温度が所定温度に保たれるように、加温部によるチューブの加温をより正確に制御することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、チューブの材質や室温などの使用条件に依らずに安定して送液することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るチューブポンプの全体構成図である。
【図2】図1のチューブポンプの変形例を示す図である。
【図3】図1のチューブポンプのもう1つの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係るチューブポンプ1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係るチューブポンプ1は、図1に示されるように、液体バッグ2から生体試料を処理する容器3に処理液を送液する際に使用される。本実施形態に係るチューブポンプ1は、複数のローラ4を有し該ローラ4を所定の回転軸5a回りに回転させる駆動部5と、ローラ4との間にチューブ6を挟んで押し潰す押さえ部7と、該押さえ部7に設けられたヒータ(加温部)8および温度センサ(温度測定部)9と、ヒータ8の温度を制御する制御部10とを備えている。
【0014】
駆動部5は、図示しないモータによって回転軸5aを中心に回転させられる円板状のロータ5bを有し、該ロータ5bの外周上に複数(図示する例では3つ)のローラ4が間隔を空けて配置されている。各ローラ4は、回転軸5aと略平行な軸(軸線)4a回りに回転可能にロータ5bに支持されている。
【0015】
ロータ5bが回転軸5a回りに回転させられることにより、各ローラ4は環状の軌道上をその軸4aに対して略直交する方向に移動させられる。これにより、ローラ4は、押さえ部7との間に挟まれたチューブ6を径方向に押し潰しながら該チューブ6上を転がって移動する。
駆動部5の、押さえ部7と反対側には、チューブ6と接触していないローラ4およびロータ5bを保護する保護部11が設けられている。
【0016】
押さえ部7は、ロータ5bの外周に沿って湾曲し、2つのローラ4との間でチューブ6を挟んで押さえる押さえ面7aを有している。
ヒータ8は、シート状であり、押さえ面7a上に設けられている。
温度センサ9は、測定した温度の情報を制御部10に送信する。
【0017】
制御部10は、温度センサ9から送信されてくる温度が所定温度になるように、ヒータ8の設定温度を調節し、または、ヒータ8をオンオフする。具体的には、温度センサ9により測定された温度が所定温度よりも高い場合は、ヒータ8の電源をオフにし、または、ヒータ8の設定温度を下降させ、一方温度センサ9により測定された温度が所定温度より低い場合は、ヒータ8の電源をオンにし、または、ヒータ8の設定温度を上昇させる。
【0018】
所定温度は、使用されるチューブ6の材質や送液する液体の種類によって決定される。本実施形態においては、ローラ4と押さえ面7aとに挟まれた位置においてチューブ6の温度が37℃となるように決定される。所定温度は、例えば、チューブ6の、ローラ4と押さえ面7aとに挟まれた位置の温度と、チューブ6との間にヒータ8および押さえ部7を介して配置された温度センサ9によって測定される温度との関係を予め測定しおくことにより、決定することができる。
【0019】
このように構成されたチューブポンプ1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るチューブポンプ1を用いて液体バッグ2から容器3へ処理液を送液するには、液体バッグ2と容器3とに両端が接続された弾性を有するチューブ6を、押さえ面7aと2つのローラ4との間に挟む。そして、ロータ5bを回転させることにより、2つのローラ4がチューブ6を押し潰しながらチューブ6上を移動させられて、液体バッグ2から容器3へ向けて処理液を送り出すことができる。
【0020】
この場合に、本実施形態によれば、チューブ6としてPVC製などの温度によって弾性が変化しやすいものを使用しても、押さえ面7aおよびローラ4によって押し潰される部分においては、チューブ6の温度が37℃に保たれ、チューブ6が十分に弾性の高い状態に維持される。すなわち、室温などの使用条件に依らずに、ローラ4によるチューブ6の潰し量が一定に保たれ、また、ローラ4がチューブ6を押し潰したときにロータ5を回転させるモータへ過度な負荷がかかることがないので、安定して送液できるという利点がある。
【0021】
本実施形態においては、ヒータ8を押さえ部7の押さえ面7aに設けることとしたが、ヒータ8の配置はこれに限定されるものではなく、ヒータ8の熱が、チューブ6の、押さえ面7aとローラ4とに挟まれた部分に十分に効率的に伝導される配置であればよい。
【0022】
例えば、図2に示されるように、保護部11が、ローラ4と接触させられる接触面11aを有し、該接触面11aにヒータ8が設けられていてもよい。この場合、押さえ面7aと接触面11aの両方にヒータ8が設けられていてもよい。接触面11aにおいてヒータ8によって加温されたローラ4がその後にチューブ6と接触することにより、ローラ4からチューブ6へ熱が伝導され、チューブ6を加温することができる。
【0023】
または、図3に示されるように、ローラ4にヒータ8を設け、ローラ4を直接加温してもよい。なお、図3において、制御部10と各ヒータ8とは、図示しない配線により接続されている。
このように、ローラ4が加温される構成にしても、チューブ6の、押さえ面7aとローラ4とに挟まれた部分を効率的に加温し、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0024】
また、本実施形態においては、温度センサ9が、押さえ部7に設けられていることとしたが、温度センサ9の配置はこれに限定されるものはなく、押さえ面7aとローラ4との間に挟まれた位置においてチューブ6の温度を測定することができる配置であればよい。例えば、温度センサ9は、図2に示されるように、保護部11に設けられていてもよい。この場合にも、チューブ6の温度と、保護部11において温度センサ9によって測定される温度との関係を予め測定しておくことにより、ヒータ8の設定される所定温度を決定することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 チューブポンプ
2 液体バッグ
3 容器
4 ローラ
4a 軸(軸線)
5 駆動部
5a 回転軸
5b ロータ
6 チューブ
7 押さえ部
7a 押さえ面
8 ヒータ(加温部)
9 温度センサ(温度測定部)
10 制御部
11 保護部
11a 接触面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行間隔を空けて配置された複数の軸線回りに回転可能に支持された複数のローラを有し、該複数のローラを環状の軌道に沿って前記軸線に直交する方向に移動させる駆動部と、
該駆動部の前記ローラとの間に弾性を有するチューブを挟んで径方向に押し潰す押さえ部と、
前記チューブを加温する加温部とを備えるチューブポンプ。
【請求項2】
前記加温部が、前記押さえ部に設けられている請求項1に記載のチューブポンプ。
【請求項3】
前記加温部が、前記ローラに設けられている請求項1に記載のチューブポンプ。
【請求項4】
前記チューブの温度を測定する温度測定部と、
該温度測定部によって測定された温度が所定温度になるように前記加温部を制御する制御部とを備える請求項1に記載のチューブポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−132387(P2012−132387A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286299(P2010−286299)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)