説明

チューブポンプ

【課題】吐出精度やチューブの劣化を抑えることができるチューブポンプを提供すること。
【解決手段】チューブポンプ1は、チューブ40と、フック部材35と、チューブ受け部材31、32と、3個以上のフィンガー部材60と、駆動機構と、チューブ受け部材31、32の位置を調節する位置調節機構7とを備える。位置調節機構7は、チューブ受け台71、一対のガイド軸72、一対の固定軸73、カバー74、一対のネジ軸75、調節操作部76、一対の駆動プーリ77およびタイミングベルト78を備え、調節操作部76の操作によってタイミングベルト78および駆動プーリ77を介して一対のネジ軸75を進退させることで、これらのネジ軸75に接続したチューブ受け部材31,32を移動させてフィンガー部材60との隙間が調節される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ内の空間を開閉して液を吐出する蠕動型のチューブポンプに係り、特に、一定量の液を連続して吐出するチューブポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチューブポンプは、可撓性チューブをローラーやフィンガー等で変形させ、チューブ内を開閉する位置を順次変えていくことでチューブ内に液体を吸入しかつ順次送りだして吐出している。このようなチューブポンプは、シールが不要であり、滞流がない点で優れている。
このため、チューブポンプは、プリンター、輸液ポンプ、洗剤供給ポンプなどに広く利用されている。すなわち、チューブポンプは、薬液、電解液、添加剤、接着剤、その他の各種液体を吐出、移送する作業を行うポンプとして、量産工場、研究所などで広く利用されている。
【0003】
このようなチューブポンプでは、一般に、ローラーでチューブをしごいて液体を送り出すローラー式のチューブポンプが大半であった。
しかしながら、ローラー式のチューブポンプでは、チューブをしごいているために、チューブのへたりや移動が大きくなり、吐出精度を向上させることが難しいという問題があった。
【0004】
このため、ローラー式に比べて、精度が良く、チューブのへたりや移動が少ないという利点を備えるフィンガー式のチューブポンプも開発されている(例えば特許文献1参照)。
このフィンガー式のチューブポンプは、フィンガーを順次往復運動させてチューブを潰して液を送り出すものである。このようなフィンガー式のチューブポンプとして、2本のチューブを用いて液体を連続的に吐出でき、かつ、部品点数を抑えてコンパクトに構成可能なチューブポンプが本件出願人により考案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−256957号公報
【特許文献2】特開2010−248975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フィンガー式のチューブポンプでは、チューブを押圧するためのフィンガーと、このフィンガーの反対側に位置するチューブ受け部材との隙間にチューブを挟み、フィンガーの往復移動によってチューブをしごいている。このためフィンガーとチューブ受け部材との隙間がチューブの太さに対して広い場合には、液体を適切に送ることができず、一方隙間が狭い場合には、チューブに大きなストレスが作用してチューブがへたりやすくなるなどの問題を生じる。また、各種用途ごとにチューブの太さが異なったり、同一種別のチューブであっても太さにも個体差があったりすることから、個々のチューブに応じて隙間を調節できる機能が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、吐出精度やチューブの劣化を抑えることができるチューブポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のチューブポンプは、チューブと、第1および第2のチューブ係止部材と、チューブ受け部材と、少なくとも3個以上設けられたフィンガー部材と、前記チューブ受け部材の位置を調節する位置調節機構と、前記各フィンガー部材を駆動する駆動機構とを備えたチューブポンプであって、前記第1および第2のチューブ係止部材は、所定間隔離されて設けられ、前記各チューブ係止部材間には、チューブが着脱自在に係止されて張設され、前記チューブ受け部材は、前記チューブに沿って配置され、前記各フィンガー部材は、前記チューブを挟んで前記チューブ受け部材の反対側に配置されるチューブ押圧部を備え、前記位置調節機構は、前記チューブ受け部材に沿って設けられるチューブ受け台と、このチューブ受け台に回転自在に支持される一対の駆動プーリと、これら一対の駆動プーリに巻回されるタイミングベルトと、このタイミングベルトを周回駆動可能に設けられる調節操作部と、前記一対の駆動プーリの各々の回転と連動して前記チューブ受け台から前記チューブ受け部材に向かって進退可能に設けられる一対のネジ軸とを備え、前記調節操作部の操作によって前記タイミングベルトおよび駆動プーリを介して一対のネジ軸を進退させることで、これらのネジ軸に接続したチューブ受け部材を移動させて当該チューブ受け部材と前記チューブ押圧部との隙間を調節するものであり、前記駆動機構は、前記チューブ押圧部が前記チューブを押圧して前記チューブ受け部材との間で当該チューブを押し潰す位置と、このチューブを押し潰す位置よりも前記チューブ受け部材から離れる方向に前記チューブ押圧部が移動して当該チューブ内の流路を開放する位置との間で、往復移動するように前記各フィンガー部材を駆動し、かつ、前記各フィンガー部材を、一方のチューブ係止部材に係止された部分から他方のチューブ係止部材に係止された部分に向かって前記各チューブ押圧部が前記チューブを押し潰す位置に順次移動するように駆動することを特徴とする。
【0009】
以上の本発明によれば、位置調節機構の調節操作部を操作してチューブ受け部材とチューブ押圧部との隙間を調節することで、個々のチューブに応じた適切な隙間を確保することができる。従って、チューブの個体差を起因として液体の吐出量が安定しない場合などには、所望の吐出量となるように隙間を調節してからチューブポンプを運用することで、吐出精度を高めることができる。また、隙間を適宜な寸法に調節することで、チューブをしごく際の過大なストレスを抑制することができることから、チューブの劣化を抑えることができる。さらに、用途に応じた各種のチューブに対応することも可能となり、チューブポンプの利用範囲を拡大することができる。
また、位置調節機構が一対の駆動プーリおよびタイミングベルトを備え、各駆動プーリと連動して一対のネジ軸が進退移動することによってチューブ受け部材を移動させることで、チューブ受け部材を平行移動させることができ、隙間の調節操作を簡便かつ迅速に実行することができる。
【0010】
また、本発明のチューブポンプにおいて、前記位置調節機構は、前記チューブ受け部材に連結されるとともに前記チューブ受け台を貫通するガイド軸と、このガイド軸を介して前記チューブ受け部材を前記チューブ受け台に向かって付勢するバネとを備え、前記ネジ軸の先端を前記チューブ受け部材に当接させ、当該ネジ軸を前記チューブ受け部材に向かって前進させることで前記チューブ受け部材と前記チューブ押圧部との隙間が狭められ、当該ネジ軸を後退させることで前記バネに付勢された前記チューブ受け部材が移動して前記チューブ押圧部との隙間が拡げられることが好ましい。
このような構成によれば、位置調節機構のバネによってチューブ受け部材をチューブ受け台に向かって付勢しておき、このチューブ受け部材にネジ軸の先端を当接させて押圧することで、チューブ受け部材を移動させる際のガタを防止して隙間の調節精度を向上させることができる。
【0011】
さらに、本発明のチューブポンプにおいて、前記位置調節機構は、前記タイミングベルトの張力を調整する張力調整手段を備え、前記張力調整手段は、前記チューブ受け台に支持される張りアームと、この張りアームに回転自在に支持されて前記タイミングベルトを迂回させる張り車と、を備え、前記張りアームの操作によって前記張り車を移動させることで前記タイミングベルトの張力を調整することが好ましい。
このような構成によれば、張力調整手段によってタイミングベルトの張力を調整することで、タイミングベルトと駆動プーリとの空転を防止することができ、一対のネジ軸を確実に同期させてチューブ受け部材を平行移動させることができる。
【0012】
また、本発明のチューブポンプにおいて、前記チューブは、2本で構成されるとともに前記各チューブ係止部材間に互いに平行に張設され、前記チューブ受け部材は、第1および第2のチューブ受け部材から一対で構成され、これら第1および第2のチューブ受け部材の各々に対応して前記位置調節機構が一対で設けられ、前記2本のチューブのうちの一方に沿って前記第1のチューブ受け部材が配置され、前記2本のチューブのうちの他方に沿って前記第2のチューブ受け部材が配置され、前記フィンガー部材のチューブ押圧部は、前記2本のチューブ間に配置され、当該2本のチューブのうちの一方を押圧し、かつ、他方のチューブ内の流路を開放する位置と、一方のチューブ内の流路を開放し、かつ他方のチューブを押圧する位置との間を往復移動可能に設けられていることが好ましい。
【0013】
ここで、前記チューブとしては、チューブ押圧部で押圧される部分が2本のチューブとされていればよいため、2本のチューブが液供給側から液吐出側まで独立して設けられているものでもよいし、中間部が2本のチューブに分岐され、この2本のチューブの各端部同士がコネクタなどで連結されて1本のチューブに接続されているものでもよい。
以上の構成によれば、フィンガー部材が配置された部分に2本のチューブを配置し、この2本のチューブ間にチューブ押圧部が配置されたフィンガー部材を複数個設けている。そして、駆動機構により、フィンガー部材のチューブ押圧部が各チューブを押圧する位置間で往復移動しているため、2本のチューブを交互に押圧して、一方のチューブ内の流路を塞ぎ、かつ、他方のチューブ内の流路を開放する状態と、一方のチューブ内の流路を開放し、かつ、他方のチューブ内の流路を塞ぐ状態とを、1つのフィンガー部材の移動で実現できる。
【0014】
このため、2本のチューブの開閉動作は、180度異なる位相となるが、各チューブ毎に液体を順次送って吐出することができる。
また、2本のチューブの吐出側を1本のチューブに連結しておけば、2本のチューブから1本のチューブに合流された液体の流量をほぼ一定に維持できる。従って、吐出液の脈動を抑制でき、かつ、液を連続して吐出することができる。
そして、1個のフィンガー部材によって、2本のチューブを押圧させることができるので、フィンガー式のチューブポンプでありながら、部品点数の増加を防止でき、コンパクトでかつ安価なチューブポンプとすることができる。
さらに、第1および第2のチューブ受け部材のそれぞれに対応して位置調節機構が一対で設けられているので、2本のチューブ各々において吐出精度を高めるとともにチューブの劣化を抑制させることができる。すなわち、同一種別のチューブであっても、2本のチューブに個体差があることも想定されるため、各々のチューブに対してチューブ押圧部と各チューブ受け部材との隙間を調節可能としたことで、吐出精度をさらに一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態のチューブポンプを示す正面図である。
【図2】前記チューブポンプを示す側面図である。
【図3】前記チューブポンプを示す斜視図である。
【図4】前記チューブポンプのポンプ部を示す正面図である。
【図5】前記チューブポンプのポンプ部を示す側面図である。
【図6】前記チューブポンプの要部を示す平断面図である。
【図7】前記チューブポンプのフィンガー板を示す平面図である。
【図8】前記チューブポンプの位置調節機構を示す側面図である。
【図9】前記チューブポンプの位置調節機構を示す分解斜視図である。
【図10】前記チューブポンプの要部を示す平断面図である。
【図11】前記チューブポンプの要部を示す平断面図である。
【図12】前記チューブポンプの要部を示す平断面図である。
【図13】前記チューブポンプの要部を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態に係るチューブポンプの構成を説明する。
図1には、本実施形態のフィンガー式のチューブポンプ1を示す正面図が示され、図2には、チューブポンプ1の側面図が示され、図3には斜視図が示されている。
チューブポンプ1は、箱状の筐体2を備え、この筐体2内には、図4,5にも示すように、モーター4とポンプ部10とが設けられている。筐体2の上面には、当該チューブポンプ1を操作するための操作パネル3が設けられ、筐体2の背面には、モーター4を制御する信号線をコントローラーに接続するためのコネクタ15や、モーター4に電力を供給する電力線16が設けられている。
【0017】
ポンプ部10は、上下方向に離れて配置された平面略矩形状の一対の端板11A,11Bを備えている。端板11A,11B間には、各端板11A,11Bの四隅部に配置された4本の支持軸12が配置され、各端板11A,11Bは支持軸12の端部に当接されてネジで固定されている。
【0018】
下側の端板11Bには、モーターフランジ13が取り付けられている。モーターフランジ13には、前記モーター4が取り付けられている。モーター4は、ステッピングモーターやサーボモーターなどの制御モーターが用いられている。
モーター4の出力軸には、モーターフランジ13内に配置されたカップリングを介して駆動軸5が連結されている。
駆動軸5は、後述するようにスプライン軸であり、端板11A,11Bに対してボールベアリングを介して回転自在に支持されている。
従って、モーター4および駆動軸5により、本発明の駆動機構が構成されている。
【0019】
端板11Aの下面および端板11Bの上面には、それぞれ軸アーム21、受アーム22が各1つずつ取り付けられている。
上下の軸アーム21間には、第1のチューブ受け部材31が設けられ、上下の受アーム22間には、第2のチューブ受け部材32が設けられている。これらのチューブ受け部材31,32は、上下方向に延長された直方体状のブロックで構成され、互いに対向する面がチューブ受け面とされている。また、チューブ受け部材31,32は、後述する位置調節機構7を介して軸アーム21および受アーム22に取り付けられ、各チューブ受け部材31,32の位置、つまりチューブ受け面間の距離が位置調節機構7によって調節可能に構成されている。
【0020】
軸アーム21および受アーム22は、図5に示すように、基端側がアーム軸23を介して端板11A,11Bにそれぞれ回動自在に取り付けられている。
従って、チューブポンプ1を正面から見た際に、図3にも示すように、軸アーム21はチューブポンプ1の右側に上下に所定間隔離れて一対設けられ、受アーム22は左側に上下に所定間隔離れて一対設けられている。
【0021】
各軸アーム21、受アーム22間には、図6に示すように、付勢手段としてのコイルばね24が介在されている。このため、軸アーム21、受アーム22は、フリー状態では、前記コイルばね24によって、先端側が互いに離れた状態とされている。
各軸アーム21の先端には、図3にも示すように、トグル板軸25を介してトグル板26の上下のフランジ部261が取り付けられている。このため、トグル板26は、軸アーム21に対して回動自在に取り付けられている。
【0022】
トグル板26の各フランジ部261間には、図3,6に示すように、トグル外軸27が回動自在に取り付けられている。トグル外軸27には、連結板28を介してトグル受軸29が取り付けられている。
一方、受アーム22の先端には、トグル受軸29の上下両端が係止可能な係止溝221が形成されている。
従って、一般的なトグル機構と同様に、トグル受軸29の上下端部を受アーム22の係止溝221に係止した状態で、トグル板26を受アーム22側に移動すると、トグル外軸27がトグル板軸25よりも外側に移動し、トグル板軸25が取り付けられた軸アーム21と、トグル外軸27に連結板28を介して連結されたトグル受軸29が係止された受アーム22との距離が短くなる。このため、各軸アーム21、受アーム22は、図6の先端側が開いた状態から、コイルばね24を圧縮して各軸アーム21、受アーム22がほぼ平行に配置された状態となり、この状態で維持される。
【0023】
図1〜5に示すように、端板11A,11Bには、チューブ係止部材であるフック部材35がそれぞれ取り付けられている。各フック部材35は、同一部材であり、それぞれチューブ40を係止する溝を有して形成されている。このような上下一対のフック部材35に渡ってチューブ40が装着されている。
【0024】
チューブ40は、Y字状に形成された2つのコネクタ41と、各コネクタ41の2つの分岐連結部間に取り付けられた2本の中間チューブ42A,42Bと、コネクタ41の連結部に端部が取り付けられた端部チューブ43A,43Bとを備えて構成されている。
従って、中間チューブ42A,42Bにより、チューブ40において分岐された中間部の2本のチューブが構成されている。また、一方の端部チューブ43Aにより、チューブ40における液供給側端部のチューブが構成され、他方の端部チューブ43Bにより、チューブ40における液吐出側端部のチューブが構成されている。
【0025】
端板11A,11B間には、複数のフィンガー部材60が配置されている。本実施形態では、15枚のフィンガー部材60が配置されている。
各フィンガー部材60は、図6,7に示すように、プラスチック製で薄板状に形成されたフィンガー板61と、リング状のボールベアリング67と、円板状のカム68とを備えている。
【0026】
フィンガー板61は、図7に示すように、固定部62と、移動部63と、駆動軸部64と、第1ヒンジ部65と、第2ヒンジ部66とを備えて、一体に成型されている。
固定部62は、支持軸12が挿通される孔621が形成された一対の固定軸部622と、各固定軸部622間を連結する連結板部623とを備えている。連結板部623は、固定軸部622に比べて厚さ寸法が小さくされ、軽量化が図られている。
【0027】
移動部63は、図7において、平面略J字状に形成された本体部631と、この本体部631から突出されたチューブ押圧部632とを備えている。この移動部63の輪郭部分はリブ状に肉厚に形成され、中間部分は薄板状に形成されている。
そして、固定部62の各固定軸部622部分と、移動部63とは、一対の第1ヒンジ部65で連結されている。各第1ヒンジ部65は、固定軸部622に連続する第1変形部651と、第1変形部651に連続する補強部652と、補強部652および移動部63間に設けられた第2変形部653とを備えている。補強部652も周囲がリブ状に形成され、中間部分は薄板状に形成されている。
各変形部651,653は、補強部652に比べて幅寸法が薄く形成され、変形部651,653が撓む(変形する)ことで、固定部62に対して移動部63は、図7において左右方向に移動可能とされている。このため、チューブ押圧部632も左右方向に移動可能とされている。
【0028】
駆動軸部64は、前記ボールベアリング67が配置される貫通孔641Aが形成されたリング部641と、リング部641に連続して形成された連結部642とを備えている。連結部642も周囲がリブ状に形成され、中間部分は薄板状に形成されている。
そして、駆動軸部64と、移動部63の本体部631とは、一対の第2ヒンジ部66で連結されている。
各第2ヒンジ部66は、本体部631に連続する第1変形部661と、第1変形部661に連続する平面三日月形の補強部662と、補強部662および連結部642間に設けられた第2変形部663とを備えている。補強部662も周囲がリブ状に形成され、中間部分は薄板状に形成されている。
各変形部661,663は、補強部662に比べて幅寸法が薄く形成され、変形部661,663が撓む(変形する)ことで、移動部63に対して駆動軸部64は、図7において上下方向に移動可能とされている。
【0029】
駆動軸部64の貫通孔641Aには、図6に示すように、ボールベアリング67を介してカム68が配置されている。
カム68は、平面円形に形成され、外周部はリブ状に肉厚に形成され、中間部分は薄板状に形成されている。そして、この薄板部分に駆動軸5が嵌合する嵌合孔681が形成されている。嵌合孔681は、カム68の平面中心から偏心した位置に形成されている。そして、カム68には、この嵌合孔681の中心からカム68の外周までが最も長い部分を容易に識別できるように、段部682が形成されている。
【0030】
ここで、前記駆動軸5はスプライン軸とされ、軸方向に沿って14個のキー(突条部)が形成されている。一方、カム68には、前記スプライン軸のキーが嵌合する14個の溝が形成されている。
フィンガー部材60は、孔621に支持軸12が挿通された状態で、上下方向に15個積み重ねられている。そして、各フィンガー部材60のカム68は、駆動軸5に対する嵌合位置が、最上段の1段目のフィンガー部材60から最下段の15段目のフィンガー部材60に向かうにしたがって、駆動軸5のキー1つずつ分だけ順次ずれるようにされている。従って、各カム68の位相は、1段目から15段目に向かうにしたがって、順次360/14度毎ずれており、1段目および15段目のフィンガー部材60のカム68の位相は同位相とされている。
【0031】
図4および図8,9にも示すように、位置調節機構7は、軸アーム21側および受アーム22側に一対で設けられ、それぞれチューブ受け台71、一対のガイド軸72、一対の固定軸73、カバー74、一対のネジ軸75、調節操作部76、一対の駆動プーリ77、タイミングベルト78、および張力調整手段79を備えて構成されている。
なお、左右一対の位置調節機構7は同一構成を備えていることから、各図において、左右の位置調節機構7のうちの一方のみに各部の符号を記載し、他方の符号を省略することがある。
【0032】
チューブ受け台71は、各チューブ受け部材31,32と平行に設けられ、上下方向に延長された略直方体状のブロックで構成され、その上下端部が軸アーム21または受アーム22に対してスクリュネジ711により固定されている。このチューブ受け台71とチューブ受け部材31,32とは、上下に離隔して設けられる一対のガイド軸72によって連結されている。
【0033】
ガイド軸72は、その一端側がチューブ受け部材31,32にピン止め固定されるとともに、他端側がチューブ受け台71を貫通して設けられ、このガイド軸72の他端部に固定されたバネ座721とチューブ受け台71との間に圧縮バネ722が設けられている。従って、圧縮バネ722がバネ座721を介してガイド軸72をカバー74から押し出す方向に付勢することで、チューブ受け部材31,32は、チューブ受け台71に近づく方向に付勢された状態で支持されている。
【0034】
固定軸73は、その一端側がチューブ受け台71にねじ止め固定されるとともに、その他端側にワッシャ等を介してカバー74が取り付けられている。この固定軸73には、張力調整手段79の一部を構成する従動プーリ793が回転自在に取り付けられている。
カバー74は、平断面がコ字形に形成され、その背面部741に調節操作部76が取り付けられている。また、カバー74の背面部741には、ガイド軸72の他端部(バネ座721)を挿通させる挿通孔742が形成されている。
【0035】
ネジ軸75は、チューブ受け台71に固定された雌ネジ部材751にねじ込まれるとともに、その一端部をチューブ受け部材31,32に当接させて設けられている。このネジ軸75の他端側には、雌ネジ部材751を貫通してカバー74側に延びる軸部752が固定され、この軸部752は軸受け753を介してカバー74の背面部741に回転自在、かつ軸方向に進退自在に支持されている。また、軸部752と駆動プーリ77とはピン止め固定され、互いに相対回転不能かつ移動不能に連結されている。
【0036】
調節操作部76は、カバー74の背面部741に固定されるベース761と、このベース761に挿通された操作軸762と、操作軸762に連結された操作ダイアル763と、操作軸762の回転位置を所定の調節位置に拘束するロック部764とを有して構成されている。操作軸762の先端部はチューブ受け台71に軸支され、この操作軸762には、タイミングベルト78を周回駆動するための操作車765が固定されている。また、ベース761には、操作軸762の調節位置を数値で表示する表示部766が設けられている。
【0037】
駆動プーリ77は、ネジ軸75の軸部752を介してチューブ受け台71に回転自在に支持されており、この駆動プーリ77の周面には、タイミングベルト78と噛合する複数の歯が形成されている。この駆動プーリ77は、タイミングベルト78によって回転されることで、ネジ軸75を回転させてチューブ受け台71に対して進退駆動するように構成されている。なお、ネジ軸75に連結された駆動プーリ77も進退移動することとなるが、駆動プーリ77とタイミングベルト78とが滑るか、またはタイミングベルト78が撓むことで、進退移動量が吸収できるようになっている。
【0038】
タイミングベルト78は、その内面に連続する複数の歯を有した無端ベルトであって、一対の駆動プーリ77に巻回されるとともに、調節操作部76の操作車765および一対の従動プーリ793と噛合して設けられている。従って、操作ダイアル763の操作によって操作軸762および操作車765を回転させることで、タイミングベルト78が周回駆動され、一対の駆動プーリ77が同期して回転駆動されるようになっている。
【0039】
張力調整手段79は、チューブ受け台71とカバー74との間に設けられる張りアーム791と、この張りアーム791に回転自在に支持される一対の張り車792と、固定軸73に支持された一対の従動プーリ793とを有して構成されている。張りアーム791は、調節操作部76の操作軸762に回動自在に支持されるとともに、張りアーム791の一部がカバー74から外部に突出して設けられ、回動操作可能に構成されている。一対の張り車792は、タイミングベルト78の周回軌道外側から当接し、従動プーリ793で案内されたタイミングベルト78を内側に迂回させるように設けられている。従って、張りアーム791を回動操作して張り車792を移動させ、これらの張り車792でタイミングベルト78の迂回量を大きくすることで、タイミングベルト78の張力を増大させる(張力を調整する)ことができるようになっている。また、チューブ受け台71には、各張り車792の軸に直交してイモネジが螺合されており、張力を調整した後にイモネジを締め込んで各張り車792の軸に当接させ、張り車792の位置を固定することで、タイミングベルト78の張力が維持できるようになっている。
【0040】
以上のような位置調節機構7によるチューブ受け部材31,32とフィンガー部材60のチューブ押圧部632との隙間の調節方法は、以下の通りである。
調節操作部76のロック部764の拘束を解除してから操作ダイアル763を回転操作すると、操作軸762を介して操作車765が回転し、これによりタイミングベルト78が周回駆動される。なお事前に、張力調整手段79の張りアーム791を回動操作し、張り車792でタイミングベルト78を周回軌道の内側に押し付けておくことで、タイミングベルト78の張力を増大させて緩みを防止することができ、操作車765や駆動プーリ77との空転が防止できる。このようにタイミングベルト78を周回駆動させることで、一対の駆動プーリ77が同期して回転駆動され、この駆動プーリ77に連動してネジ軸75が回転し、雌ネジ部材751中を進退移動する。
【0041】
ここで、本実施形態におけるネジ軸75は、左ネジとされおり、操作ダイアル763を反時計回りに操作することでネジ軸75がチューブ受け部材31,32に向かって前進し、操作ダイアル763を時計回りに操作することでネジ軸75がチューブ受け部材31,32から離れる方向に後退するようになっている。また、調節操作部76の表示部766には、目盛が表示され、操作ダイアル763の時計回りへの回転操作によって目盛の数値が1つずつ増加し、この1目盛当たりのネジ軸75の進退移動距離が0.01mmに設定されている。
【0042】
従って、例えば操作ダイアル763を反時計回りに操作し、ネジ軸75をチューブ受け部材31,32に向かって前進させた場合には、ネジ軸75に押されたチューブ受け部材31,32が圧縮バネ722の付勢力に抗してチューブ受け台71から離れる方向(チューブ押圧部632側であり一方側)に移動し、チューブ受け部材31,32とチューブ押圧部632との隙間が狭められる。一方、操作ダイアル763を時計回りに操作し、ネジ軸75を雌ネジ部材751内部側(他方側)に向かって後退させた場合には、圧縮バネ722の付勢力によってチューブ受け部材31,32がチューブ受け台71に接近するように移動し、チューブ受け部材31,32とチューブ押圧部632との隙間が広げられる。このように隙間調節した後に、調節操作部76のロック部764で操作軸762の回転を拘束すれば、操作車765、タイミングベルト78および駆動プーリ77を介してネジ軸75の回転および進退移動も規制されることとなり、調節した隙間寸法が維持される。
【0043】
次に、本実施形態の作用について、図11〜13の動作説明図も参照して説明する。
モーター4により駆動軸5を回転させると、カム68が回転する。カム68は駆動軸5の回転中心に対して偏心されており、かつ、フィンガー部材60の固定部62は、孔621に支持軸12が挿通されて固定されている。このため、カム68が回転すると、後述するように、フィンガー板61のチューブ押圧部632が左右に往復移動する。
また、カム68は、駆動軸5の14条のキーに順次ずれて嵌合されているため、各フィンガー板61のチューブ押圧部632は、位相がずれながら左右に往復駆動される。
【0044】
ここで、図10に示すように、カム68の段部682が図面において右側に配置されている場合、つまり駆動軸5の回転中心からカム68の外周までが最も長い位置が右側に配置されている場合は、駆動軸部64も駆動軸5に対して右側に移動する。
第2ヒンジ部66は、変形部661,663が図10において左右方向に延長されているため、駆動軸部64の左右方向の変位はそのまま移動部63に伝達し、移動部63も駆動軸5に対して右側に移動する。この際、第1ヒンジ部65の各変形部651,653が変形して固定部62に対する移動部63の移動を許容している。
【0045】
移動部63が右側に移動すると、チューブ押圧部632がチューブ受け部材31側に移動し、中間チューブ42Aがチューブ受け部材31およびチューブ押圧部632で押圧されて潰される。このため、中間チューブ42A内の空間(流路)が閉じられる。
一方、チューブ押圧部632および第2のチューブ受け部材32間の隙間寸法は広がるため、中間チューブ42Bは潰されず、内部の空間(流路)も開かれている。
【0046】
この図10の状態から、駆動軸5が図中時計回り方向に90度回転し、図11の状態になると、カム68の段部682は図11の下側つまりチューブポンプ1の正面側に移動する。
この状態では、駆動軸部64は、駆動軸5に対して図中下側に移動する。この駆動軸部64の移動は、第2ヒンジ部66の変形部661,663が変形することで吸収される。そして、カム68は、駆動軸5に対して左右方向には移動していないので、チューブ押圧部632は、カム68が図7から図10の状態に回転する際に、各チューブ受け部材31、32間の隙間の中心位置に徐々に移動する。
【0047】
このため、チューブ押圧部632が押圧されて潰されていた中間チューブ42Aの流路は徐々に開かれる。一方、チューブ押圧部632は、中間チューブ42Bを徐々に押圧する。ただし、チューブ押圧部632の流路は断面積が徐々に小さくなるが、完全に閉じられていない。
【0048】
この図11の状態から、駆動軸5が図中時計回り方向に90度回転し、図12の状態になると、カム68の段部682は図12の左側に移動する。
この状態では、駆動軸部64は、駆動軸5に対して図中左側に移動し、第1ヒンジ部65の変形部651,653が変形して移動部63も左側に移動する。
チューブ押圧部632は、カム68が図11から図12の状態に回転する際に、各チューブ受け部材31、32間の隙間の中心位置から第2のチューブ受け部材32側に徐々に移動する。
【0049】
移動部63が左側に移動すると、チューブ押圧部632がチューブ受け部材32側に移動し、中間チューブ42Bがチューブ受け部材32およびチューブ押圧部632で押圧されて潰される。このため、中間チューブ42B内の空間(流路)が閉じられる。
一方、チューブ押圧部632およびチューブ受け部材31間の隙間寸法は広がるため、中間チューブ42Aの流路はさらに開かれる。
【0050】
この図12の状態から、駆動軸5が図中時計回り方向に90度回転し、図13の状態になると、カム68の段部682は図13の上側つまりチューブポンプ1の背面側に移動する。
この状態では、駆動軸部64は、駆動軸5に対して図中上側に移動する。この駆動軸部64の移動は、第2ヒンジ部66の変形部661,663が変形することで吸収される。そして、カム68は、駆動軸5に対して左右方向には移動していないので、チューブ押圧部632は、カム68が図12から図13の状態に回転する際に、各チューブ受け部材31、32間の隙間の中心位置に徐々に移動する。
このため、チューブ押圧部632が押圧されて潰されていた中間チューブ42Bの流路は徐々に開かれる。一方、チューブ押圧部632は、中間チューブ42Aを徐々に押圧し、チューブ押圧部632の流路は断面積が徐々に小さくなるが、完全に閉じられていない。
【0051】
この図13の状態から、駆動軸5が図中時計回り方向に90度回転すると、図10の状態に戻る。従って、駆動軸5およびカム68が一回転すると、フィンガー部材60のチューブ押圧部632は、チューブ受け部材31,32間を一往復する。この動作を繰り返すことで、各中間チューブ42A,42Bが交互に押圧される。
また、図4に示すように、上下に積層された15個のフィンガー部材60は、前述したように、カム68の位相が順次ずらされているため、チューブ押圧部632の左右方向の位置も順次ずれている。このため、各チューブ押圧部632は、上下方向に沿って略サインカーブとなるように配置されている。
【0052】
以上の構成のチューブポンプ1を用いて所定の液体を吐出するには、まず、図6に示すように、トグル板26を開いて、軸アーム21および受アーム22の先端部間を開いた状態とし、チューブ40をフック部材35に引っ掛けて取り付ける。この際、チューブ40の中間チューブ42A,42Bは、若干テンションが加わってチューブ押圧部632の左右位置で上下方向に直線状に配置されるようにしている。各中間チューブ42A,42Bはテンションが加わるため、中間チューブ42A,42Bは前後左右に動かないようにセットされる。
【0053】
次に、トグル板26を受アーム22側に移動して閉じる。すると、先端側が開いていた軸アーム21、受アーム22も互いに平行に配置され、チューブ受け部材31、32も中間チューブ42A,42Bに接触した状態になる。
そして、チューブ40の端部チューブ43Aを液供給側、例えば、液体が貯蔵されている容器に接続し、端部チューブ43Bを液吐出側、例えば吐出ノズルなどに接続する。
以上により、チューブポンプ1の準備作業が終了する。
【0054】
次に、外部のコントローラーおよび操作パネル3によりモーター4を駆動する。モーター4の駆動により、駆動軸5が回転すると、各フィンガー部材60のチューブ押圧部632が左右に移動し、各中間チューブ42A,42Bの流路を閉じたり、開いたりすることで、端部チューブ43A側から液が吸引され、端部チューブ43Bに移送される。
すなわち、最下段のフィンガー部材60のチューブ押圧部632で一方の中間チューブ42A,42Bが閉じられていた状態から、順次一段上のフィンガー部材60で中間チューブ42A,42Bが閉じられていくため、各中間チューブ42A,42Bにおいて流路閉鎖位置は、順次上方に移動する。
【0055】
そして、閉じられていた流路が開くと、負圧が発生して端部チューブ43A側から液体を吸引する。吸引された液体は、端部チューブ43Aからコネクタ41で分離され、各中間チューブ42A,42Bに移動する。
各中間チューブ42A,42B内では、チューブ押圧部632により各流路が順次開閉されることにより、液体は徐々に中間チューブ42A,42B内を上方に移動し、コネクタ41から端部チューブ43B内を移動して吐出される。
この際、各中間チューブ42A,42Bの開閉タイミングは、位相が180度異なるため、端部チューブ43Aから各中間チューブ42A,42Bに分離され、再度、端部チューブ43Bに合流した液体の吐出量は常に一定に維持される。
【0056】
ここで、液体の吐出量が一定にならない場合や、所定の吐出量が得られない場合には、前述した位置調節機構7による調節を実施する。具体的には、チューブ受け部材31,32とフィンガー部材60のチューブ押圧部632との隙間が狭すぎる場合、中間チューブ42A,42Bが潰され過ぎていて流路の断面積が小さくなっていることから、所定の吐出量が得られない。この場合には、操作ダイアル763を(例えば、反時計回りに回転操作し、チューブ受け部材31,32とチューブ押圧部632との隙間を広げるように調節することで、吐出量が増加する。一方、チューブ受け部材31,32とチューブ押圧部632との隙間が広すぎる場合、押圧した際に中間チューブ42A,42Bの流路が閉じないことから、液体を送ることができず所定の吐出量が得られない。この場合には、操作ダイアル763を(例えば、時計回りに回転操作し、チューブ受け部材31,32とチューブ押圧部632との隙間を狭めるように調節することで、液体が吐出可能となる。
【0057】
以上のように操作ダイアル763の回転操作を適宜に繰り返すことで、吐出量が最大となる適正な調節位置が求まり、この調節位置にてロック部764で拘束することで、所定の吐出量が維持されることとなる。
また、液体の吐出量が一定にならない、つまり吐出液が脈動するような場合は、左右のチューブ受け部材31,32においてチューブ押圧部632との隙間がばらついていることが考えられる。従って、モーター4を駆動して液体を吐出させた状態で、左右の位置調節機構7における各操作ダイアル763を同時に操作し、脈動しなくなるまで調節操作を繰り返すようにしてもよい。
【0058】
また、液体の吐出作業が終了した場合など、チューブ40を交換する場合には、モーター4を停止し、トグル板26を開き、フック部材35に係止されていたチューブ40を取り外す。そして、洗浄・乾燥されたチューブ40や、別途用意されている他のチューブ40を、フック部材35に係止し、トグル板26を閉じることで、再度、液体の吐出動作を行うことができる。また、チューブ40を交換した際には、位置調節機構7によるチューブ受け部材31,32とチューブ押圧部632との隙間調節を実施することが望ましい。
【0059】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。
複数のフィンガー部材60を用いたフィンガー式のチューブポンプ1において、2本の中間チューブ42A,42Bの押圧を、1つのフィンガー部材60を移動させることで実現することができる。このため、1本のチューブ毎に、それぞれ異なるフィンガーを設ける場合に比べて、フィンガー部材60の数を半減できる。
このため、2本のチューブ42A,42Bを用いたフィンガー式のチューブポンプ1であっても、部品点数の増加を抑えることができるので、チューブポンプ1をコンパクトに構成でき、かつ、安価に製造できる。
【0060】
さらに、フィンガー部材60は、固定部62、移動部63、駆動軸部64、第1ヒンジ部65、第2ヒンジ部66が一体に形成されたフィンガー板61を用いているので、駆動軸5およびカム68の回転動作により、フィンガー板61のチューブ押圧部632を往復駆動させることができる。一方、通常のチューブポンプのフィンガー部材は、カムによって軸方向に進退し、突出時にチューブを押し、戻った際にチューブを開放している。この際、フィンガー部材をカムに連動させるため、フィンガー部材は常時カムに当接するようにバネなどでカム側に付勢されている。このため、フィンガー部材が戻った際にもチューブを押圧させることは、前記バネ力の調整なども必要となり、実現が困難である。このため、従来のフィンガー部材をカムに付勢して駆動する場合には、2本のチューブを1つのフィンガー部材で押圧することは困難である。これに対し、本実施形態のフィンガー部材60の構成を採用すれば、ヒンジ機構を用いてチューブ押圧部632を左右に往復駆動できるので、チューブ押圧部632の両側にチューブを配置することで、各チューブを交互に押圧することができる。
【0061】
また、2本のチューブ42A,42Bに対する各々のチューブ受け部材31,32の位置を位置調節機構7で調節可能にしたことで、チューブ42A,42Bの個体差を起因として液体の吐出量が安定しない場合などには、所望の吐出量となるようにチューブ受け部材31,32とチューブ押圧部632との隙間を調節することで、吐出精度を高めることができる。また、隙間を適宜な寸法に調節することで、チューブ42A,42Bをしごく際の過大なストレスを抑制することができることから、チューブ42A,42Bの劣化を抑えることができる。
【0062】
また、左右の位置調節機構7を各々独立して操作可能にしたことで、左右のチューブ42A,42Bの太さにばらつきがあったとしても、それぞれに対応した隙間に調節することができ、吐出液の脈動を抑制して吐出量を一定に維持することができる。また、左右の位置調節機構7では、それぞれ1つの操作ダイアル763の操作によって一対のネジ軸75を進退させ、チューブ受け部材31,32を平行移動させることができるので、調節操作を容易かつ高精度に実施することができる。
【0063】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良ならびに設計の変更が可能である。
例えば、2本の中間チューブ42A,42Bの押圧を、1つのフィンガー部材60を移動させることで実現したチューブポンプ1を例示したが、本発明のチューブポンプは、2本のチューブを用いて液体を吐出するものに限らず、1本のチューブをフィンガー部材で押圧して液体を吐出するものであってもよい。また、2本あるいは3本以上のチューブを別々のフィンガー部材で押圧して液体を吐出するものであってもよく、この場合には、各チューブに対応したチューブ受け部材を設け、これらの各チューブ受け部材を位置調節機構によって移動可能に構成すればよい。
【0064】
また、前記実施形態では、調節操作部76のロック部764によって操作軸762を拘束することで、操作車765、タイミングベルト78および駆動プーリ77を介してネジ軸75の移動を規制するようにしていたが、このような構成に限られない。すなわち、調節操作部76を単なる調節操作のためだけに用い、ネジ軸75の移動を規制してチューブ受け部材31,32とチューブ押圧部632との隙間を一定に維持する機構(規制手段)を別体としてもよい。具体的に規制手段としては、一方または両方のネジ軸75に係合してネジ軸75の移動を規制可能なものでもよいし、駆動プーリ77に係合可能なものでもよく、さらにはタイミングベルト78や操作車765に係合してこれらの回転を規制するように構成されていてもよい。さらに、規制手段としては、直接または間接にネジ軸75の進退移動を規制するものに限らず、チューブ受け部材31,32の移動を規制するような構成であってもよい。このような規制手段によってチューブ受け部材31,32とチューブ押圧部632との隙間を一定に保つことで、液体の吐出量を安定させて高い吐出精度が維持できる。
【0065】
また、フィンガー板61の構成も前記実施形態に限定されず、適宜な形態のフィンガー板が利用可能である。さらに、フィンガー板61を変形させるカム68と駆動軸部64との間にボールベアリング67を介在させていたが、ボールベアリング67を設けずに、直接カム68を駆動軸部64の貫通孔641Aに配置してもよい。
また、貫通孔641Aの内周面に溝を形成してアウターレースとし、カム68の外周面に溝を形成してインナーレースとし、これらの間にボール(必要に応じて保持器)を配置して直接ボールベアリングを構成してもよい。
また、前記実施形態では、フィンガー部材60を15個設けていたが、フィンガー部材60の数は、より少なくてもよいし、多くてもよい。ただし、フィンガー部材60の数が少ないと、吐出液の変動が大きくなるため、吐出量をほぼ一定にすることが難しくなる。
一方、フィンガー部材60の数を多くすると、チューブポンプ1が大型化し、コストも増大する。従って、これらの点を考慮してフィンガー部材60の数を設定すればよい。
【0066】
また、チューブとしては、前記実施形態のものに限らない。例えば、液供給側から前記中間部までは2本の独立したチューブとし、これらのチューブの液吐出側をコネクタ41で連結して液吐出側の端部チューブ43Bに接続してもよい。
さらに、チューブとしては、液供給側から中間部、液吐出側まで完全に独立した2本のチューブを用いてもよい。
また、前記実施形態では、チューブ押圧部632とチューブ受け部材31、32間にそれぞれ1本ずつチューブ42A,42Bを配置していたが、それぞれ2本以上のチューブを配置してもよい。すなわち、チューブ押圧部632とチューブ受け部材31、32との間において、チューブ押圧部632の突出方向に複数本のチューブを並べ、複数本のチューブをチューブ押圧部632およびチューブ受け部材31、32で挟んで押圧することで、各チューブの流路を開閉してもよい。このように構成すれば、チューブの本数に応じて吐出量を増大できる。
【0067】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1…チューブポンプ、4…モーター、7…位置調節機構、10…ポンプ部、31、32…チューブ受け部材、35…フック部材、40…チューブ、42A,42B…中間チューブ、60…フィンガー部材、71…チューブ受け台、72…ガイド軸、73…固定軸、74…カバー、75…ネジ軸、76…調節操作部、77…駆動プーリ、78…タイミングベルト、79…張力調整手段、632…チューブ押圧部、722…圧縮バネ、791…張りアーム、792…張り車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブと、第1および第2のチューブ係止部材と、チューブ受け部材と、少なくとも3個以上設けられたフィンガー部材と、前記チューブ受け部材の位置を調節する位置調節機構と、前記各フィンガー部材を駆動する駆動機構とを備えたチューブポンプであって、
前記第1および第2のチューブ係止部材は、所定間隔離されて設けられ、前記各チューブ係止部材間には、チューブが着脱自在に係止されて張設され、
前記チューブ受け部材は、前記チューブに沿って配置され、
前記各フィンガー部材は、前記チューブを挟んで前記チューブ受け部材の反対側に配置されるチューブ押圧部を備え、
前記位置調節機構は、前記チューブ受け部材に沿って設けられるチューブ受け台と、このチューブ受け台に回転自在に支持される一対の駆動プーリと、これら一対の駆動プーリに巻回されるタイミングベルトと、このタイミングベルトを周回駆動可能に設けられる調節操作部と、前記一対の駆動プーリの各々の回転と連動して前記チューブ受け台から前記チューブ受け部材に向かって進退可能に設けられる一対のネジ軸とを備え、前記調節操作部の操作によって前記タイミングベルトおよび駆動プーリを介して一対のネジ軸を進退させることで、これらのネジ軸に接続したチューブ受け部材を移動させて当該チューブ受け部材と前記チューブ押圧部との隙間を調節するものであり、
前記駆動機構は、前記チューブ押圧部が前記チューブを押圧して前記チューブ受け部材との間で当該チューブを押し潰す位置と、このチューブを押し潰す位置よりも前記チューブ受け部材から離れる方向に前記チューブ押圧部が移動して当該チューブ内の流路を開放する位置との間で、往復移動するように前記各フィンガー部材を駆動し、かつ、前記各フィンガー部材を、一方のチューブ係止部材に係止された部分から他方のチューブ係止部材に係止された部分に向かって前記各チューブ押圧部が前記チューブを押し潰す位置に順次移動するように駆動する
ことを特徴とするチューブポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のチューブポンプにおいて、
前記位置調節機構は、前記チューブ受け部材に連結されるとともに前記チューブ受け台を貫通するガイド軸と、このガイド軸を介して前記チューブ受け部材を前記チューブ受け台に向かって付勢するバネとを備え、前記ネジ軸の先端を前記チューブ受け部材に当接させ、当該ネジ軸を前記チューブ受け部材に向かって前進させることで前記チューブ受け部材と前記チューブ押圧部との隙間が狭められ、当該ネジ軸を後退させることで前記バネに付勢された前記チューブ受け部材が移動して前記チューブ押圧部との隙間が拡げられる
ことを特徴とするチューブポンプ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のチューブポンプにおいて、
前記位置調節機構は、前記タイミングベルトの張力を調整する張力調整手段を備え、
前記張力調整手段は、前記チューブ受け台に支持される張りアームと、この張りアームに回転自在に支持されて前記タイミングベルトを迂回させる張り車と、を備え、前記張りアームの操作によって前記張り車を移動させることで前記タイミングベルトの張力を調整する
ことを特徴とするチューブポンプ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のチューブポンプにおいて、
前記チューブは、2本で構成されるとともに前記各チューブ係止部材間に互いに平行に張設され、
前記チューブ受け部材は、第1および第2のチューブ受け部材から一対で構成され、これら第1および第2のチューブ受け部材の各々に対応して前記位置調節機構が一対で設けられ、前記2本のチューブのうちの一方に沿って前記第1のチューブ受け部材が配置され、前記2本のチューブのうちの他方に沿って前記第2のチューブ受け部材が配置され、
前記フィンガー部材のチューブ押圧部は、前記2本のチューブ間に配置され、当該2本のチューブのうちの一方を押圧し、かつ、他方のチューブ内の流路を開放する位置と、一方のチューブ内の流路を開放し、かつ他方のチューブを押圧する位置との間を往復移動可能に設けられている
ことを特徴とするチューブポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−144991(P2012−144991A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1795(P2011−1795)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000111373)ノイベルク有限会社 (10)
【Fターム(参考)】