説明

チューブラック

【課題】チューブラックの保管スペースを低減しつつ、チューブラック転倒の可能性を低減する。
【解決手段】チューブラック10の本体部12の側面底部近傍には、可動片18が設けられる。この可動片18は、その後端に接続された板バネ26により幅方向外側に付勢されている。したがって、外部から力が付加されない場合、可動片18は、本体部12の側面から外側に突出する。その結果、チューブラック10の底面は、幅方向に広がり、転倒の可能性が低減される。板バネ26の付勢力に抗して可動片18が幅方向内側に押されると、可動片18はガイド溝20内に完全収容される。その結果、チューブラック10の底面幅は狭まり、保管に要するスペースが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験管やサンプル容器、スピッツなどのチューブ体を複数、起立させた状態で収容するチューブラックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被検体から採取された血液等の検体は、試験管やスピッツなどのチューブ体に収容される。このチューブ体は、収容した検体がこぼれないように、また、搬送を容易にするために、チューブラックにより起立保持される。
【0003】
ここで、通常、各チューブ体には、その管理を容易にするためのバーコードラベル等の識別媒体が貼着されている。そして、各チューブ体に貼着されているバーコードラベル等が示す情報を光学的に読み取って当該チューブ体に収容されている検体の情報を収集、管理することが多い。この識別媒体の読み取りの際、チューブ体をチューブラックから取り出さなくても済むように、通常、チューブラックは、複数のチューブ体を一列に並べて保持する構成となっている。そのため、チューブラックの多くは、チューブ体の配設方向に長尺な形状となり、比較的、安定感に乏しい形状となる。その結果、チューブラックが転倒しやすいという問題があった。
【0004】
そこで、従来から、チューブラックの転倒を防止するための技術が多数提案されている。例えば、特許文献1〜4には、チューブラックを、検体処理装置やラック収容容器などのチューブラック以外の他部材の一部と係合可能に構成し、この係合によりチューブラックの転倒を防止する技術が開示されている。かかる技術によれば、配設方向に長尺で幅方向長さが小さい、不安定な形状のチューブラックであっても転倒を防止することができる。
【0005】
【特許文献1】特許第2704357号明細書
【特許文献2】特許第3625332号明細書
【特許文献3】特開2001−272408号公報
【特許文献4】登録実用新案第3047943号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術はいずれも、チューブラックを検体処理装置等の他部材にセットした際には有効に機能するものの、当該他部材から取り外された場合には、やはり、チューブラックが転倒しやすいという問題がある。
【0007】
そこで、他部材から取り外された場合でも、チューブラックの転倒を防止または低減するためにチューブラックを幅広の形状とすることも考えられる。しかし、この場合は、チューブラックの保管に要するスペースが大きくなってしまうという問題が発生する。
【0008】
そこで、本発明では、保管に要するスペースを低減しつつ、転倒の可能性を低減でき得るチューブラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のチューブラックは、複数のチューブ体を起立状態で保持するチューブラックであって、チューブ体を起立した状態で保持する複数の保持穴が奥行方向に一列に配設された本体部と、本体部の底部近傍において本体部の幅方向に進退する可動片であって、進出時には本体部から突出してチューブラックの底面の一部として機能し、退出時にはその一部が本体部の幅内に納まる可動片と、を備えることを特徴とする。
【0010】
好適な態様では、さらに、複数のチューブラックが隣接配置された際に、隣接する他のチューブラックの可動片を収容する収容空間を備える。他の好適な態様では、可動片は、奥行方向の力を幅方向の力に変換可能な形状である。
【0011】
他の好適な態様では、さらに、可動片を幅方向外側に付勢する弾性部材を備える。この弾性部材は、幅方向の力を受けて形状変形する板バネであることが望ましい。また、この弾性部材は、可動片に一体成形されることが望ましい。
【0012】
他の好適な態様では、可動片は複数設けられており、複数の可動片は、本体部の右側面から突出する可動片と、本体部の左側面から突出する可動片と、をそれぞれ1以上含む。このとき、複数の可動片は、180度回転対称となる位置に設けられていることが望ましい。
【0013】
他の好適な態様では、さらに、本体部の一部と当接することで、可動片の進退位置を規制する当接体を備える。この当接体は、可動片と一体成形されることが望ましい。また、可動片は、本体部の側面に形成されたガイド溝に沿って進退自在であり、ガイド溝は、その前端に、ガイド溝の開口幅を一時的に狭くするとともに当接体が当接する当接壁が形成されており、当接体は、ガイド溝に可動片を挿入する際に、ガイド溝の前端における開口幅に応じて弾性変形可能であることが望ましい。
【0014】
他の好適な態様では、可動片は、その底面が本体部の底面より僅かに高くなる位置に設けられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、必要に応じて可動片が幅方向に進退する。換言すれば、必要に応じて、チューブラックの底面幅が可変する。その結果、チューブラックの保管に要するスペースを低減しつつ、転倒の可能性を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態であるチューブラック10の斜視図である。このチューブラック10は、複数のチューブ体を起立させた状態で保持するラックである。ここで、チューブ体とは、試験管やスピッツ、サンプル容器などの有底の筒状容器を指す。チューブ体には、被検体から採取された血液等の検体が収容される場合が多い。そして、チューブ体に収容された検体は、検体処理装置により各種処理、例えば、分注処理や成分分析処理などが施される。また、所定の処理が終了した検体は、チューブ体に収容された状態で、一定期間、保管される場合も多い。
【0017】
検体を収容したチューブ体を起立保持するチューブラック10は、図1に図示するように、単独で配置されるだけでなく、図2に図示するように互いに間隔を開けずに隣接配置される場合も多い。例えば、検体処理装置において、処理実行前、あるいは、処理終了済のチューブラック10は、図2に図示するように、互いに間隔を開けることなく隣接配置される場合が多い。この場合、検体処理装置の搬送手段は、必要に応じて、隣接配置された複数の処理前のチューブラック10から単一のチューブラック10をスライド移動させて取り出したり、処理済のチューブラック10をスライド移動させて他の処理済チューブラック10に隣接させたりする。また、所定の処理が終了した検体を保管する場合も、図2に図示するように、複数のチューブラック10は、検体の保管倉庫内において、隣接配置される場合が多い。
【0018】
本実施形態のチューブラック10の本体部12には、チューブ体が挿入される保持穴14が複数(図示例では10個)形成されている。この複数の保持穴14は、一列に並んで形成されている。そのため、チューブラック10は、この保持穴14の配設方向に長尺な略直方形状となっている。各保持穴14の側面には、チューブ体に貼着されたバーコードラベルを外部に露出させるための切り欠き16が形成されている。すなわち、通常、各チューブ体には、当該チューブ体の識別情報等を示すバーコードラベルが貼着されている。このバーコードラベルは、チューブ体をチューブラック10から取り外すことなく読み取れることが望ましい。そのため、チューブラック10には、保持穴14に挿入されたチューブ体に貼着されたバーコードラベルを外部に露出させる切り欠き16が形成されている。
【0019】
ところで、既述したとおり、このチューブラック10は、複数の保持穴14が一列に並んで形成されており、配設方向に長尺な略直方形状となっている。逆に言えば、幅の長さに比して奥行き長さが大きいため、比較的、安定感に乏しい形状といえる。この場合、チューブラック10が転倒しやすいという問題がある。そこで、保持穴14を一列だけでなく、複数列としてチューブラック10を幅広にすることが考えられる。しかし、保持穴14を複数列として、チューブ体を複数列に並べた場合、各チューブ体に貼着されたバーコードラベルを読み取ることが困難になる。また、保持穴14を一列だけとしたまま、チューブラック10の幅を広げることも考えられるが、この場合、チューブラック10の保管スペースが増加する。
【0020】
そこで、本実施形態では、チューブラック10(ひいては検体)の保管に要するスペースを低減しつつ、チューブラック10の転倒を防止または低減するために、チューブラック10の構成を特殊なものとしている。具体的には、本実施形態のチューブラック10は、幅方向に進退自在の可動片18を備えている。可動片18は、バネ部材(図1、図2では図示せず)によって幅方向外側(図1におけるW方向)に付勢されており、本体部12の側面底部近傍に形成されたガイド溝20に沿って進退自在となっている。可動片18は、その底面が本体部12の底面とほぼ同じ高さになるような位置に設けられている。したがって、可動片18がバネ部材の付勢力によりガイド溝20から突出した状態(進出状態)のときには、当該可動片18の底面はチューブラック10の底面の一部として機能し、本体部12の底面とともにチューブラック10を支持する。一方、可動片18が、バネ部材の付勢力に抗して幅方向内側に移動した状態(退出状態)のときには、当該可動片18は、ガイド溝20内に完全収容され、本体部12の幅内に収まるようになっている。つまり、この可動片18によって、チューブラック10全体としての底面の幅が可変するようになっている。
【0021】
より具体的に、この可動片18について詳説する。図3(a)は可動片18の上面図、図3(b)は可動片18の斜視図である。また、図4はチューブラック10の側面図、図5は底面図である。
【0022】
可動片18は、上面視略三角形状の板状部材であり、その略三角形の頂点が幅方向外側に向くように本体部12に取り付けられている。したがって、可動片18が進出状態の場合、チューブラック10の幅方向(図3における矢印w方向)およびチューブラック10の奥行方向(図3における矢印d方向)に対して傾斜した辺22(以下、「当接辺22」という)がチューブラック10の本体部12に形成されたガイド溝20から露出することになる。
【0023】
ここで、既述したとおり、チューブラック10は、検体処理装置の搬送手段等により、隣接する他のチューブラック10に沿ってスライド移送される場合がある(図2参照)。換言すれば、隣接する二つのチューブラック10は、奥行方向に相対移動する場合がある。このとき、可動片18の当接辺22は、隣接する他のチューブラック10から奥行方向の力を受けることになる。後に詳説するが、当接辺22は、この奥行方向の力を、幅方向の力に変換し、可動片18に伝達する。そして、これにより、可動片18は幅方向内側へと退出することが可能となる。
【0024】
ところで、この可動片18は、既述したように、進出時には本体部12の底面とともにチューブラック10の底面として機能する。そのため、可動片18の底面は本体部12の底面とほぼ同じ高さに設けられている。ただし、厳密には、別個の部材である本体部12の底面と可動片18の底面とを同一高さとすることは困難な場合が多い。したがって、実際には、可動片18は、その底面が本体部12の底面より僅かに高い位置になるように設けることが望ましい。かかる位置に可動片18を設けることにより、組付誤差等により可動片18の組み付け位置が微小にずれても、可動片18の底面が本体部12の底面より低くなってチューブラック10全体としての安定性が低下するといった問題が生じにくくなる。
【0025】
なお、ここで説明した可動片18の形状は一例であり、当然、他の形状であってもよい。ただし、他の形状であっても、奥行方向の力を幅方向の力に変換でき得る形状、例えば、上面視略台形形状や、半円形状などであることが望ましい。また、可動片18の材質等は特に限定されないが、検体に各種処理が施されることを考慮すると、耐薬性の強い材質から構成されることが望ましい。また、チューブラック10の軽量化やコスト低減、可動片18の成形の容易化などを考慮すると樹脂等を用いることが望ましい。さらに、チューブラックを廃棄する際を考慮するのであれば、生分解性プラスチックなどを用いるとなおよい。
【0026】
可動片18の後端には、可動片18を幅方向外側に付勢するバネ部として機能する一対の板バネ26が接続されている。この一対の板バネ26は、可動片18と一体成型されており、可動片18の後端面の両端から緩やかな曲線を描きながら延びている。この一対の板バネ26は、互いに同じ大きさの弾性を備えており、幅方向の力を受けた際には、可動片18の後端面との間隙を狭めるべく、その形状を変形させる。そして、この変形により可動片18の幅方向への進退が可能となっている。
【0027】
また、本実施形態では、既述したとおり、可動片18の進退を許容する板バネ26を、可動片18と一体的に成型しているため、部品点数を低減でき、チューブラック10全体の製造工程の簡易化、また、コスト低減ができる。ただし、当然ながら、この板バネ26を可動片18と別体として構成してもよい。また、所望の弾性(バネ定数)が得られるのであれば、板バネ26の形状や肉厚は適宜、変更してもよい。また、可動片18を幅方向に付勢でき得るのであれば、板バネ26に限らず、他の弾性体、たとえば、コイルスプリングやトーションバネ、ゴムやスプリングなどの強弾性材料からなる部材などを用いてもよい。
【0028】
可動片18の両側面には、ガイド溝20の前端に形成された当接壁30(図5参照)に当接する当接体28が設けられている。この当接体28は、上面視略U字形状であり、その先端(自由端)が幅方向外側に向いた形状となっている。一方、当接壁30は、ガイド溝20の前端の両側に設けられており、ガイド溝20の開口を一時的に狭める役割を果たしている。そして、可動片18が進出状態のとき、当接体28は、当接壁30に当接し、可動片18の更なる進出を阻害する。つまり、当接体28および当接壁30は、可動片18のストッパとして機能しており、可動片18がガイド溝20から抜け落ちるのを防止している。
【0029】
ここで、本実施形態の当接体28は、肉薄の板材を略U字状に折り曲げたような形状であり、奥行方向の力を受けた際に、可動片18の側面に近づく方向に弾性変形するようになっている。また、この当接体28は、既述の板バネ26と同様に、部品点数を低減するべく、可動片18と一体的に成型されている。当接体28をかかる構成としているのは、可動片18の本体部12への組み付けを容易にするためである。すなわち、板バネ26および当接体28を可動片18と一体成型した場合、1回の挿入作業で可動片18、板バネ26、当接体28の全てをガイド溝20に挿入することができる。また、当接体28を弾性変形可能な形状とすることにより、板バネ26および当接体28と一体成形された可動片18をガイド溝20に挿入する際、ガイド溝20の開口幅に応じて当接体28が弾性変形する。その結果、特殊な作業を行うことなく、可動片18等をガイド溝20に挿入することができる。ガイド溝20に可動片18が挿入されれば、当接体28は元の形状に戻り、開口幅より広がる。その結果、その可動片18のガイド溝20からの抜け落ちが防止される。
【0030】
なお、当然ながら、ここで説明した当接体28の構成は一例であり、適宜、変更可能である。したがって、当接体28と可動片18は別体として構成されてもよく、また、その形状等も適宜、変更してもよい。
【0031】
次に、この可動片18の進退時の動きについて詳説する。図6は図5におけるB部拡大図であり、図6(a)は進出時の、図6(b)は退出時の様子をそれぞれ示している。本体部12のガイド溝20に可動片18を組み付けた場合、板バネ26の後端位置は、ガイド溝の後端面により規制される。そして、可動片18に外部から力が付加されていない場合(図6(a)の場合)、板バネ26の付勢力により可動片18は幅方向外側へと押し出される。ただし、可動片18の両側面に設けられた当接体28がガイド溝20の前端に設けられた当接壁30に当接することにより、可動片18の突出位置は規制される。その結果、可動片18は、図6(a)に図示するように、その一部が外部に露出した状態となる。このとき、可動片18の底面は、チューブラック10の底面の一部として機能する。換言すれば、このとき、チューブラック10は、その底面幅は広がった状態となっている。そのため、チューブラック10の安定感がより向上され、転倒が効果的に防止または低減される。
【0032】
次に、この状態で、チューブラック10が隣接する他のチューブラック10に対して奥行方向に相対移動する場合を考える。この場合、可動片18は、隣接する他のチューブラック10の側面により押圧され、奥行方向の力を受ける。この奥行方向の力は、可動片18の当接辺22によって幅方向の力に変換される。そして、可動片18が幅方向内側向きの力を受けて幅方向内側へと移動すると、図6(b)に図示するように、板バネ26は、可動片18との間隙が狭くなるように弾性変形する。そして、最終的には、可動片18はガイド溝20内に完全収容される。つまり、本実施形態によれば、隣接する他のチューブラック10を奥行方向に相対移動させる場合など、可動片18の突出が不要な場合には、可動片18はガイド溝20内に収まる。その結果、チューブラック10全体として高い安定感を維持しつつも、チューブラック10の保管に必要なスペースを低減できる。また、チューブラック10の移送動作などを円滑に行うことができる。
【0033】
ところで、本実施形態のチューブラック10は、図5などから明らかなように、二つの可動片18を備えている。すなわち、本実施形態において、可動片18は、本体部12の互いに対向する一対の側面それぞれに一つずつ設けられている。換言すれば、二つの可動片18は、互いに反対方向に突出する構成となっている。そのため、可動片18が単一の場合に比べて、チューブラック10の底面幅が広くなる。そして、その結果、チューブラック10の安定感をより向上でき、転倒の危険性をより低減できる。
【0034】
また、本実施形態のチューブラック10は、図2に図示するように、互いに間隔を開けることなく複数のチューブラック10が隣接配置された際に、隣接する他のチューブラック10から突出した(進出状態の)可動片18を収容する収容溝34も備えている。収容溝34は、隣接する他のチューブラック10に設けられた可動片18の進出位置に相当する位置、すなわち、本体部12の側面底部近傍に設けられており、少なくとも進出状態の可動片18を収容できる程度の大きさを備えている。
【0035】
この収容溝34による可動片18の収容の様子を図7を用いて説明する。図7は、二つのチューブラック10を隣接配置した際の概略底面図である。二つのチューブラック10が間隔を開けることなく隣接配置されると、一つのチューブラック10の可動片18は、他のチューブラック10の収容溝34付近に位置することになる。このとき、可動片18は、外部からの力を受けないため、他のチューブラック10の収容溝34内に進出し、収容される。
【0036】
このように、可動片18を収容する収容溝34を設けることにより、複数のチューブラック10を隣接配置したときにおける各チューブラック10の底面幅を大きくすることができ、転倒を防止または低減できる。一方で、このとき幅狭の本体部12を互いに間隙なく配置することが可能であるため、チューブラック10の保管に要するスペースを低減できる。
【0037】
また、この収容溝34に可動片18が収容された状態は、収容溝34および可動片18が係合した状態ともいえる。そして、収容溝34および可動片18の係合関係により、隣接配置された複数のチューブラック10は、一体化された一つのユニットのようになる。その結果、複数のチューブラック10は互いに支えあうような関係となるため、その安定感がより向上し、転倒の危険性がより低下する。
【0038】
さらに、この収容溝34を設けることにより板バネ26の劣化を低減できる。すなわち、収容溝34を設けず、可動片18をガイド溝20内に完全収容させた状態のまま複数のチューブラック10を隣接配置することも当然考えられる。しかし、この場合、長時間にわたり、板バネ26に幅方向の力が付加され続けることになる。その結果、板バネ26の劣化が大きくなり、チューブラック10の寿命低下を招く場合がある。一方、可動片18を進出状態で収容溝34に収容することにより、複数のチューブラック10を隣接配置したときには、板バネ26に過剰な力は付加されないことになる。その結果、板バネ26の劣化が生じにくくなり、チューブラック10の寿命が長くなる。
【0039】
ところで、図5、図7から明らかなように、本実施形態では、チューブラック10の左前および右後に可動片18を、チューブラックの左後および右前に収容溝34をそれぞれ設けている。換言すれば、可動片18および収容溝34は、180度回転対称となる位置に設けられている。したがって、チューブラック10を180度回転させて向きを変えても、可動片18および収容溝34の位置関係は変化しない。そのため、複数のチューブラック10を隣接配置するとき、ユーザは、チューブラック10の向きを考慮する必要がなく、容易に、複数のチューブラック10を並べることができる。
【0040】
次に、このチューブラック10の取り扱いについて簡単に説明する。図1に図示するように、一つのチューブラックを単独で用いる場合には、可動片18には幅方向の力は付加されない。そのため、可動片18は、幅方向外側に進出した状態となる。このとき、可動片18の底面は、チューブラック10の底面の一部として機能する。したがって、このとき、チューブラック10の底面は、幅方向に広がった状態となり、より安定した状態となっている。その結果、一つのチューブラック10を単独で使用する際における、チューブラック10の転倒の可能性を効果的に低減できる。
【0041】
また、チューブラック10を隣接配置させるべく、隣接するチューブラック10を奥行方向にスライド移送させる場合、可動片18は、隣接する他のチューブラック10の側面により奥行き方向に押圧される。可動片18の当接辺22は、この奥行き方向の力を幅方向内側の力に変換し、可動片18へと伝達する。これにより、板バネ26は弾性変形し、可動片18は幅方向内側へと移動する。そして、最終的には、可動片18はガイド溝20内に完全収容され、一時的に、本体部12の底面幅がチューブラック10の底面幅となる。その結果、複数のチューブラック10を互いに間隙を開けることなくスライド移動させることが可能となる。
【0042】
そして、スライド移動により、複数のチューブラック10が互いに間隔を開けることなく隣接配置されると、可動片18は、隣接する他のチューブラック10の収容溝34付近に位置する。このとき、可動片18には外部の力は付加されないので、板バネ26は元の形状に戻るべく可動片18を幅方向外側に押し出す。これにより、可動片18は進出状態となり収容溝34に収容される。このとき、チューブラック10の底面幅は広がった状態となる。また、隣接するチューブラック10同士が係合され、互いに支持しあう関係となるため、チューブラックの転倒の危険性がより効果的に低減される。
【0043】
以上の説明で明らかなように本実施形態によれば、チューブラック10の保管に要するスペースを低減しつつ、転倒の危険性を低減できる。また、可動片18を、奥行方向の力を幅方向の力に変換でき得る形状としているため、チューブラック10のスライド動作等も円滑に行える。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態であるチューブラックの斜視図である。
【図2】チューブラックの配置例を示す図である。
【図3】(a)は可動片の上面図であり、(b)は可動片の斜視図である。
【図4】チューブラックの側面図である。
【図5】チューブラックの底面図である。
【図6】図5におけるB部の拡大図であって、(a)は可動片進出時の、(b)は可動片退出時の様子を示す。
【図7】チューブラックを隣接配置した際におけるチューブラック底面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 チューブラック、12 本体部、14 保持穴、18 可動片、20 ガイド溝、22 当接辺、26 板バネ、28 当接体、30 当接壁、34 収容溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチューブ体を起立状態で保持するチューブラックであって、
チューブ体を起立した状態で保持する複数の保持穴が奥行方向に一列に配設された本体部と、
本体部の底部近傍において本体部の幅方向に進退する可動片であって、進出時には本体部から突出してチューブラックの底面の一部として機能し、退出時にはその一部が本体部の幅内に納まる可動片と、
を備えることを特徴とするチューブラック。
【請求項2】
請求項1に記載のチューブラックであって、さらに、
複数のチューブラックが隣接配置された際に、隣接する他のチューブラックの可動片を収容する収容空間を備えることを特徴とするチューブラック。
【請求項3】
請求項1または2に記載のチューブラックであって、
可動片は、奥行方向の力を幅方向の力に変換可能な形状であることを特徴とするチューブラック。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のチューブラックであって、さらに、
可動片を幅方向外側に付勢する弾性部材を備えることを特徴とするチューブラック。
【請求項5】
請求項4に記載のチューブラックであって、
弾性部材は、幅方向の力を受けて形状変形する板バネであることを特徴とするチューブラック。
【請求項6】
請求項4または5に記載のチューブラックであって、
弾性部材は、可動片に一体成形されることを特徴とするチューブラック。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のチューブラックであって、
可動片は複数設けられており、
複数の可動片は、本体部の右側面から突出する可動片と、本体部の左側面から突出する可動片と、をそれぞれ1以上含むことを特徴とするチューブラック。
【請求項8】
請求項7に記載のチューブラックであって、
複数の可動片は、180度回転対称となる位置に設けられていることを特徴とするチューブラック。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のチューブラックであって、さらに、
本体部の一部と当接することで、可動片の進退位置を規制する当接体を備えることを特徴とするチューブラック。
【請求項10】
請求項9に記載のチューブラックであって、
当接体は、可動片と一体成形されることを特徴とするチューブラック。
【請求項11】
請求項10に記載のチューブラックであって、
可動片は、本体部の側面に形成されたガイド溝に沿って進退自在であり、
ガイド溝は、その前端に、ガイド溝の開口幅を一時的に狭くするとともに当接体が当接する当接壁が形成されており、
当接体は、ガイド溝に可動片を挿入する際に、ガイド溝の前端における開口幅に応じて弾性変形可能であることを特徴とするチューブラック。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のチューブラックであって、
可動片は、その底面が本体部の底面より僅かに高くなる位置に設けられることを特徴とするチューブラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−8789(P2008−8789A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180283(P2006−180283)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【出願人】(591083336)株式会社ビー・エム・エル (31)
【Fターム(参考)】