説明

ツイストペアケーブル

【課題】コネクタ圧着時の圧力や布設時の曲げ、屈曲などによる絶縁体の損傷、耐圧不良や混触、電気特性の劣化の防止を図る。
【解決手段】本発明のツイストペアケーブルにおける対撚線1は、軟銅撚線や錫めっき軟銅撚線等の可撓性を有する導体61の外周に絶縁体62を設けて成る絶縁コア線6を2本撚り合わせたもので構成され、4対の対撚線1はそれぞれ異なるピッチでより合わされている。
対撚線1を構成する絶縁体62は、導体61の外周に設けられ、発泡率が30〜70%もポリエチレン樹脂から成る発泡層62aと、発泡層62aの外周に設けられ、厚さが0.03〜0.06mmの高密度ポリエチレン樹脂から成るスキン層62bとで構成され、全体として絶縁コア線6のコア外径は1.0mm以下とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツイストペアケーブルに係り、特に、LAN(Local Area Network)の伝送において、FA(Factory Automation System)関連等のような、配線に稼動部を有する環境で耐屈曲性を必要とし、且つイミュニティ(Immunity:妨害耐性)とEMI(Electro Magnetic Interference)の対策が求められる場合に好適するツイストペアケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のLAN用ツイストペアケーブルとして、図2に示すような構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
同図において、従来のLAN用ツイストペアケーブルは、それぞれ異なるピッチでより合わせて成る4対の対撚線1の集合体の外周に順次設けられた押え巻3、遮蔽層4およびシ−ス5とで構成されている。なお、図中、符号6は、導体61の外周に絶縁体62を設けて成る絶縁コア線、7はドレンワイヤーを示している。
【0004】
このような構成のLAN用ツイストペアケーブルにおいては、耐屈曲性を向上させるために、対撚線1の絶縁コア線6を構成する導体61として撚線導体が使用され、また、遮蔽特性を向上させるために、アルミ箔とポリエステルテープを積層した金属箔ラミネートプラスチックテープの巻回層などから成る遮蔽層4が設けられている。
【0005】
しかしながら、このような構成のLAN用ツイストペアケーブルにおいて、所定の規格(カテゴリー5e、TIA/EIA−568−B.2およびJISX5150:2004の規格)の電気特性を満足させるためには、次のような難点があった。
【0006】
第1に、上記のように、対撚線1の集合体2上に遮蔽層4を設けると、絶縁コア線6の静電容量が大きくなることから、上記規格の電気特性を満足させるためには、静電容量の大きさに対応して絶縁コア線6のコア外径を太らせるか、絶縁コア線6を構成する絶縁体62を発泡させて静電容量を小さくしなければならない。
【0007】
第2に、上記のように、絶縁コア線6のコア外径を太らせた場合、既存コネクタとの嵌合性を考慮すると、絶縁コア線6の外径を上限で約1.0mmとしなければならないため、絶縁体62を発泡させる必要がある。
【0008】
第3に、上記において、絶縁体62の発泡率を30%を超えて発泡させると、絶縁体62の強度が著しく弱まる傾向があり、ひいてはコネクタ圧着時の圧力や布設時の曲げ、屈曲などで絶縁体62が損傷し、耐圧不良や混触等により電気特性の劣化を引き起こす虞があった。
【0009】
【特許文献1】特開2000−164048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の難点を解決するためになされたもので、無遮蔽時に充実絶縁を施した場合と同等のコア外径とスキン層を設けることで、充実絶縁に近似する絶縁強度が得られ、ひいては、コネクタ圧着時の圧力や布設時の曲げ、屈曲などによる絶縁体の損傷、耐圧不良や混触、電気特性の劣化を防止することができ、既存のコネクタにも嵌合可能な耐屈曲、耐ノイズ性のツイストペアケーブルを提供することを目的としている
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様であるツイストペアケーブルは、複数の対撚線の集合体の外周に遮蔽層およびシ−スを備えるツイストペアケーブルにおいて、対撚線を構成する絶縁コア線は、導体の外周に絶縁体を備え、絶縁体は、導体の外周に設けられる発泡層と、発泡層の外周に設けられるスキン層とを備えるものである。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様であるツイストペアケーブルにおいて、発泡層の発泡率は、30〜70%とされているものである。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1の態様であるツイストペアケーブルにおいて、発泡層の発泡率は、45〜60%とされているものである。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様の何れかの態様であるツイストペアケーブルにおいて、スキン層62bの厚さは、0.30〜0.06mmとされているものである。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1の態様乃至第4の態様の何れかの態様であるツイストペアケーブルにおいて、導体は、撚線導体から成るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の態様乃至第5の態様のツイストペアケーブルによれば、絶縁コア線の絶縁体と使用している例えばポリエチレン樹脂を発泡させることにより、絶縁コア線の電気特性を向上させると共にコア外径を細くすることができ、また、発泡層の外周に充実タイプのスキン層を設けることにより、ケーブルの布設やコネクタ圧着中に付与される圧力に対して絶縁コア線の強度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のツイストペアケーブルを適用した実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明のツイストペアケーブルの横断面図を示している。なお、同図において、図2と共通する部分には同一の符号が付されている。
【0019】
図1において、本発明のツイストペアケーブルは、例えば4対の対撚線1を撚り合させて成る集合体2と、集合体2の外周に順次設けられた不織布などによる押え巻層3、遮蔽層4および塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂の押出被覆などにより形成されるシ−ス5とを備えている。
【0020】
各対撚線1は、軟銅撚線や錫めっき軟銅撚線等の可撓性を有する導体61の外周に絶縁体62を設けて成る絶縁コア線6を2本撚り合わせたもので構成され、各対撚線1はそれぞれ異なるピッチでより合わされている。
【0021】
絶縁コア線6を構成する絶縁体62は、導体61の外周に設けられたポリエチレン樹脂から成る発泡層62aと、発泡層62aの外周に設けられた硬質の樹脂、例えば高密度ポリエチレン樹脂から成るスキン層62bとで構成され、絶縁コア線6のコア外径は、モジュラコネクタの使用を想定した場合の制限から0.8〜1.0mmとされている。
【0022】
ここで、発泡層62aの発泡率は30〜70%とすることが好ましい。発泡率を30%以上としたのは、発泡率が30%未満では、絶縁コアの外径をモジュラコネクタ使用想定時の上限である1.0mmに収めることが難しいからであり、発泡率を70%以下としたのは、発泡率が70%を超えると、スキン層を設けても、コネクタ圧着や布設に耐え得る絶縁強度を維持することが困難だからである。
【0023】
なお、発泡層62aの発泡率は45〜60%とすることがより好ましい。
発泡率を45%以上としたのは、45%未満では、LAN用ツイストペアケーブルの規格で規定された電気特性の特性インピーダンスが、要求の100Ωに対し、許容公差範囲(Category5では±15Ω)の下限に分布して、最適な特性が得難いからであり、発泡率を60%以下としたのは、60%を超えると、通常の発泡絶縁材料では、絶縁押出作業時に安定した発泡状態を維持することが難しいからである。
【0024】
また、スキン層62bの厚さは0.03〜0.06mmとすることが好ましい。
スキン層62bの厚さを0.03mm以上としたのは、0.03mm未満では、絶縁コアの目標の絶縁強度が得られないからであり、スキン層62bの厚さを0.06mm以下としたのは、0.06mmを超えると、その分、上げなくてはならない発泡率が60%を超えてしまう可能性があるからである。
【0025】
次に、遮蔽層4は、例えばアルミ箔等の金属箔とポリエステルテープ等のプラスチックテープを積層して成る金属箔ラミネートプラスチックテープを金属箔面を内側に向けて巻回したもので構成されている。なお、遮蔽層4は、直径が0.1〜0.12mm程度の錫めっき軟銅線による金属編組、若しくは、アモルファステープや鉄テープなどの磁性箔テープの巻回層の何れか、またはこれらの組み合わせから成るもので構成してもよい。
【0026】
なお、図中、符号7は遮蔽層4として、金属箔ラミネートプラスチックテープの巻回層を使用した場合に金属箔に接するように縦添えされる0.4〜0.5mm程度の錫めっき軟銅線などから成るドレンワイヤーを示している。
【0027】
このような構成のツイストペアケーブルによれば、第1に、導体61が可撓性を有する軟銅撚線等で構成されていることから、耐屈曲性の良好なツイストペアケーブルが得られ、第2に、対撚線の集合体の外周に遮蔽層4が設けられていることから、耐ノイズを向上させることができ、第3に、発泡層62aの発泡率を30〜70%とすることで、無遮蔽時に充実絶縁を施した場合における絶縁コア線と同等のコア外径が得られ、第4に、スキン層62bの厚さを0.03〜0.06mmに設定することで、充実絶縁における絶縁コア線の場合と近似する絶縁強度が得られ、第5に、スキン層62bが存在することで、発泡層62aの発泡率を30%以上に設定しても、コネクタ圧着時の圧力や布設時の曲げ、屈曲などによる絶縁体62の損傷や、耐圧不良や混触、電気特性の劣化を抑えることができ、第6に、既存コネクタにも嵌合可能な耐屈曲性、耐ノイズの良好なケーブルを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
前述の実施例においては、4対の対撚線を使用した場合について述べているが、本発明は4対の対撚線に限定されず、必要に応じてその対数を増減することができる。また、前述の実施例においては、LAN用ツイストペアケーブルについて述べているが、本発明はLAN用として用いるものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例におけるツイストペアケーブルの横断面図。
【図2】従来のツイストペアケーブルの横断面図。
【符号の説明】
【0030】
1・・・対撚線
4・・・遮蔽層
5・・・シ−ス
6・・・絶縁コア線
61・・・導体
62・・・絶縁体
62a・・・発泡層
62b・・・スキン層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の対撚線の集合体の外周に遮蔽層およびシ−スを備えるツイストペアケーブルにおいて、
前記対撚線を構成する絶縁コア線は、導体の外周に絶縁体を備え、
前記絶縁体は、前記導体の外周に設けられる発泡層と、前記発泡層の外周に設けられるスキン層とを備えることを特徴とするツイストペアケーブル。
【請求項2】
前記発泡層の発泡率は、30〜70%であることを特徴とする請求項1記載のツイストペアケーブル。
【請求項3】
前記発泡層の発泡率は、45〜60%であることを特徴とする請求項1記載のツイストペアケーブル。
【請求項4】
前記スキン層の厚さは、0.30〜0.06mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載のツイストペアケーブル。
【請求項5】
前記導体は、撚線導体から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項記載のツイストペアケーブル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の対撚線の集合体の外周に遮蔽層およびシ−スを備えるツイストペアケーブルにおいて、
前記対撚線を構成する絶縁コア線は、導体の外周に絶縁体を備え、
前記絶縁体は、前記導体の外周に設けられる発泡層と、前記発泡層の外周に設けられるスキン層とを備えることを特徴とするツイストペアケーブル。
【請求項2】
前記発泡層の発泡率は、30〜70%であることを特徴とする請求項1記載のツイストペアケーブル。
【請求項3】
前記発泡層の発泡率は、45〜60%であることを特徴とする請求項1記載のツイストペアケーブル。
【請求項4】
前記スキン層の厚さは、0.03〜0.06mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載のツイストペアケーブル。
【請求項5】
前記導体は、撚線導体から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項記載のツイストペアケーブル。

【図1】
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【図2】
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