説明

ティーバッグ

【課題】美麗な外観を有し、飲料に対して美麗な水色を付与することのできるティーバッグを提供すること。
【解決手段】基材シート表面に被膜を有するシートからなる袋体と、該袋体内に収容された被抽出物を備え、被膜は、揮発分5質量%のときの常温における水分活性が0.1〜0.4である茶抽出物を含有するものである、ティーバッグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティーバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、お茶やコーヒーは、それらのリフレッシュ作用やそれらに含まれるポリフェノールなどの健康・栄養機能が注目されるに伴い、その消費量が増加する傾向にある。現在では、プラスチックボトルや金属製の缶などに入れた飲料が、時と場所を問わず直接飲用できるという利便性と、例えばタンニンを増量配合するなどしてその機能性をより高めた飲料とすることにより、圧倒的な市場規模を獲得している。
【0003】
一方で、急須や抽出器で煎出する茶葉は、淹れたての風味が格段に優れているため依然として大きな市場を維持しているが、その利便性に劣るためあまり大きな成長率が期待できなくなっている。このような煎出したお茶のよさを生かしつつ、その利便性を改善するために、茶葉ティーバッグなどが提案され、広く利用されているが、市場規模としては未だ大きくない。即ち、単なる利便性の改善だけでは消費者の大きな支持を得ることは困難な状況であるということができる。
【0004】
そこで、利便性とは異なる観点で新たな機能を付与し付加価値を高めたティーバッグが提案されている。例えば、賦香料をシクロデキストリンで包接したシクロデキストリン包接化合物と水溶性高分子をティーバッグ用吊糸や基材に塗布することで、開封したときの原料の不快臭を抑制したティーバッグ(特許文献1)、袋部内の茶類に接しない上部に切込み又は通し穴を設け、そこに棒状物を貫入させることで、自立性が備わり抽出後にも形が崩れ難く外観の良いおしゃれで高級感のあるティーバッグ(特許文献2)、水溶性コラーゲン、水溶性グルコマンナン及びバナバ葉エキスから選ばれる少なくとも2種類以上を、焙煎大麦や茶葉と組み合わせた美容と健康に役立つティーバック(特許文献3)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−240665号公報
【特許文献2】特開2004−331144号公報
【特許文献3】特開2006−230221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、お茶などの飲料の嗜好性は、単に味だけでなく、飲料の水色の影響を受けることが多い。茶葉の煎汁は、茶葉の摘葉時期、産地、種類などの様々な条件により、異なる水色となる。また、緑茶であれば、微緑色、琥珀色、褐色などを呈し、紅茶であれば、微琥珀色、ピンク、赤色などを呈する。このような水色の好みは、専門家の推奨とは別に、特に若年層を中心に変わりつつあり、様々な水色の茶様飲料が望まれている。また、高級茶やハーブティーなどをおしゃれで高級感のあるティーバッグで楽しみたいという要望もある。
したがって、本発明の課題は、美麗な外観を有し、飲料に対して美麗な水色を付与することのできるティーバッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ティーバッグの袋体を構成する基材シートに、特定の性状を有する天然由来成分を含む被膜を形成することにより、均一で美麗な外観を有し、これを熱水などに浸漬したときに色落ちするとともに美麗な水色を効果的に付与できることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、基材シート表面に被膜を有するシートからなる袋体と、
該袋体内に収容された被抽出物
を備え、被膜は揮発分5質量%のときの常温における水分活性が0.1〜0.4である茶抽出物を含有するものである、ティーバッグを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のティーバッグは、被抽出物を収容すべき袋体の表面が特定性状を有する茶抽出物を含む被膜で覆われおり、均一で良好な皮膜であるため、茶由来成分による美麗な外観を有している。また、それを熱水などに浸漬すると、ティーバッグの色落ちとともに飲料に対して美麗な水色を付与することができる。このように、本発明によれば、飲料を調製する際の外観変化、飲料の水色により視覚的にも楽しむことができる付加価値の高いティーバッグを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のティーバッグは、袋体と、該袋体内に収容された被抽出物を備えるものである。袋体は被膜が形成された基材シートから構成されており、被膜はティーバッグの表面に存在し、外表面に露出しているのが好ましい。被膜は特定性状を有する茶抽出物を含有している。そして、ティーバッグを熱水などに浸漬して飲料を調製する際には、被膜が溶解して色落ちするとともに、飲料に対して美麗な水色が付与される。
【0011】
袋体を構成する基材シートとしては、繊維を交錯させて織るか、あるいは繊維を接着又は絡合することにより、全体としてシート状に形成したものであれば特に限定されず、ノンヒートシールタイプ及びヒートシールタイプのいずれも用いることができる。具体的には、織布、不織布、紙などを挙げることができる。
【0012】
織布及び不織布としては、材質がポリ乳酸、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなどの合成繊維であるか、又はこれら合成繊維の2種以上の組み合わせからなるものが好ましい。その坪量は、通常10〜50g/m2であり、好ましくは10〜30g/m2である。また、織布は、前述の坪量とともに、30〜70%、更に40〜65%の開口率を有するものが好ましい。
また、紙として、薄葉紙、抄紙などを使用することができる。薄葉紙は、材質がパルプ、又はパルプ/合成繊維の混抄紙であり、坪量が通常10〜50g/m2、好ましくは10〜30g/m2である。抄紙は、材質がポリエステル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維を50〜100質量%含み、残部が針葉樹パルプ(NBKP)やマーセル化パルプ、架橋パルプ等である混抄紙であり、坪量が通常15〜25g/m2である。
【0013】
本発明においては、基材シートとして、通液性の観点から、不織布や合成樹脂メッシュなどの多孔質シートが好適に使用される。この場合、被膜は、基材シート表面のみならず、基材シートを構成する繊維間を被覆していてもよい。
【0014】
袋体を構成する基材シートの表面には被膜が形成されているが、その被膜は揮発分5質量%のときの常温における水分活性(以下、単に「水分活性」とも称する)が0.1〜0.4である茶抽出物を含有するものである。茶抽出物の水分活性は、皮膜が均一で美麗な外観を有する観点、熱水に浸漬した際の水色の着色性の観点から、好ましくは0.15〜0.36、より好ましくは0.18〜0.3である。ここで、「水分活性(AW)」とは、一定温度において、測定する食品成分を一定の密閉容器に密封したときの容器内の平衡水蒸気圧Pと、同一条件下の水の平衡水蒸気圧P0との比(P/P0)として表わされる数値である。したがって、水分活性はAW=P/P0として表わされる(「総合食品辞典(同文書院)489頁;「食品加工の知識」(幸書房)13〜17頁;「食品と水分活性」John A.Troller,J.H.B.Christian著、平田孝、林徹訳、学会出版センター、1985年)。なお、本明細書において「揮発分」とは、105℃、2時間の乾燥減量より算出した値である。
【0015】
ところで、食品中に含まれる水分には結合水と遊離水とがある。結合水は、食品成分と強く結合し束縛されており溶媒としての作用を示さない。一方、遊離水は、食品成分に束縛されず溶媒としての機能を示し、微生物などがこの水を利用して繁殖する。遊離水の多いものほど、水分活性は大きくなり、遊離水100%の純水の水分活性は1である。水分活性は、このような意味から食品などに含まれる遊離水としての水分量を表し、食品素材の性質を表す一つの指標となる。なお、水分活性は、15〜35℃の常温では、一般に温度の影響をあまり大きく受けないので、本明細書では、この温度領域に於ける水分活性を「常温における水分活性」とする。
【0016】
本発明で使用する茶抽出物は、水分活性が0.1〜0.4の範囲内にあり、遊離水が少なく、結合水が多い。そのため、このような茶抽出物を含む被膜は、残存する遊離水が少ないため粘着性がなく、あるいは、十分な結合水の存在により、基材シート表面で被膜が連続となるので、均一で良好な被膜となる。
【0017】
本発明で使用する茶抽出物には、茶由来のタンニンが含まれている。茶抽出物の固形分中のタンニン含有量は、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは15〜100質量%、更に好ましくは18〜95質量%である。ここで、本明細書において「固形分」とは、105℃、2時間乾燥して揮発物質を除いた残分をいう。
【0018】
水分活性が0.1〜0.4である茶抽出物は、水/エタノールの容量比が100/0〜20/80である溶媒を用いて茶葉から抽出して得ることができる。抽出溶媒中のエタノール濃度が高くなるにつれ、茶抽出物の固形分中のタンニン含有量は増加する傾向にあるが、エタノール濃度が100%となると、茶抽出物の固形分中のタンニン含有量は急減する。かかる観点から、抽出溶媒の水/エタノールの容量比は、90/10〜25/75、更に85/15〜30/70であることが好ましい。
【0019】
また、エタノール濃度が高くなるにつれ、得られる茶抽出物は茶飲料本来の色彩を呈しやすくなる。また、このような茶抽出物を含む被膜を有するティーバッグを熱水などに浸漬すると、色素を残留することなく色落ちして茶飲料本来の美麗な水色を付与することができる。一方、エタノール濃度100%の溶媒から得られる茶抽出物は茶飲料本来とは掛け離れた色彩を呈しており、しかもこの茶抽出物を含む被膜を有するティーバッグは、熱水などに浸漬しても色素が残留して色落ちし難いため、茶飲料本来の美麗な水色を付与し難くなる。
【0020】
抽出に使用する茶葉としてはタンニンを含有すれば特に限定されないが、例えば、緑茶葉、紅茶葉、烏龍茶葉を挙げることができる。緑茶葉としては、例えば、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜炒り茶等が挙げられ、茎茶、棒茶、芽茶等も使用することができる。紅茶葉としては、例えば、ダージリン、アッサム、スリランカが挙げられ、また烏龍茶葉としては、例えば、武夷岩茶、鉄観音、黄金桂、水仙、烏龍、包種、色種を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、非重合体カテキン類を多く含む緑茶葉から抽出した緑茶抽出物を用いることが、皮膜が均一で美麗な外観を有する点、熱水に浸漬した際の水色の着色性の点から好ましい。ここで、「非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類と、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を併せての総称であり、非重合体カテキン類の含有量は上記8種の合計量に基づいて定義される。
【0021】
抽出方法としては、ニーダー抽出、攪拌抽出(バッチ抽出)、向流抽出(ドリップ抽出)、カラム抽出等の公知の方法を採用することができる。
抽出溶媒の温度は、タンニンの抽出効率及び風味の観点から、好ましくは20〜95℃、より好ましくは30〜85℃、更に好ましくは40〜75℃である。抽出倍率、すなわち、(抽出溶媒質量)/(茶葉質量)は、タンニンの抽出効率及び風味の観点から、好ましくは5〜40、より好ましくは10〜25である。抽出時間は抽出方法や抽出スケールにより一様ではないが、好ましくは2〜60分、より好ましくは5〜30分である。
【0022】
本発明においては、水分活性が0.1〜0.4である茶抽出物として、市販のタンニン製剤を使用してもよく、例えば、商品名「ポリフェノン」(三井農林社製)、商品名「テアフラン」(伊藤園社製)、商品名「サンフェノン」(太陽化学社製)などを挙げることができる。
【0023】
本発明で使用する茶抽出物の形態としては、例えば、液体、スラリー、固体(乾燥物)を挙げることができるが、中でも、固体が好適に使用される。乾燥方法としては、凍結乾燥やスプレードライ等の公知の方法を採用することができる。
【0024】
本発明において、乾燥被膜中のタンニン含有量は、被膜が均一で美麗な外観を有する観点から、単位表面積当たり5〜40g/m2であることが好ましく、更に7〜35g/m2であることが好ましい。
【0025】
また、被膜には、所望により、香料、調味料、酸味料、甘味料、健康機能性食材などが含まれていてもよい。
【0026】
袋体内に収容される被抽出物としては、例えば、緑茶葉、紅茶葉、烏龍茶葉、ジャスミン茶、杜仲茶葉、ハトムギ茶、ハブ茶、グアバ茶、乾燥霊芝、乾燥陳皮、乾燥シソの葉、玄米、乾燥ハーブ、乾燥昆布、乾燥茸などが挙げられる。中でも、緑茶葉、紅茶葉、烏龍茶葉が好ましい。
【0027】
本発明のティーバッグは適宜の形状を採ることができるが、例えば、吊り紐や、カップ等の容器の開口部に袋体を掛止する部材を袋体に取り付けたものとすることができる。
【0028】
また、本発明のティーバッグは、ガスバリア性の包装材、例えば、エチレンービニルアルコール共重合樹脂フィルムや各種のアルミニウム蒸着、あるいはアルミニウムラミネートフィルムで密封し、空気や光を遮断した状態で外装することが望ましい。
【0029】
次に、本発明のティーバッグの製造方法について説明する。
本発明のティーバッグは、前述の茶抽出物を含む溶液又は分散液を基材シートに塗布し乾燥して得られたティーバッグ用シートを用いて適宜の方法により製造することが可能である。例えば、基材シートの種類により次の方法を挙げることができるが、基材シートの被膜形成面がティーバッグの外表面側に露出するように成形することが好ましい。
1)基材シートがノンヒートシールタイプである場合、例えば、ティーバッグ用シート上に所定量の茶葉を載せ、次いで茶葉を包み込む様な形でシートを回転する2個のクリンピングギアに通過させてシートを綴じ合わせ、次いで二つ折りにすると同時に底部をW型のガセット折りに形成し、その後袋体の上部を折込む方法。
2)基材シートがヒートシールタイプである場合、例えば、熱融着繊維からなる基材シートを用い、それを熱シールにより袋形状とし、次いで所定量の茶葉を袋体内に充填し、その後袋体の上部を折込む方法。
【0030】
溶液又は分散液に含まれる溶媒としては、水及び/又はアルコールが好ましく、アルコールとして、エタノールが好適に使用される。
【0031】
溶液又は分散液の基材シートへの塗布方法は、含浸、ブラシコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、カレンダーコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、T−ダイコーティング、又はロールコーティングなどの通常の方法を採用することができる。
【0032】
溶液又は分散液中のタンニン濃度は、好ましくは0.5〜60質量%、より好ましくは1〜50質量%であり、被膜中のタンニン含有量が前述の範囲内となるように適宜調整することができる。このような濃度とすることで、加熱により水分を効率的に除去することが可能になり、また適度な粘度で流動性が良好であるため、均一に塗布することができる。
【0033】
乾燥方法としては、対流伝熱乾燥による通気式箱型乾燥装置、トンネル乾燥装置、バンド乾燥装置、あるいは輻射伝熱乾燥による箱型棚式乾燥装置、トンネル乾燥装置、バンド乾燥装置、あるいは伝導伝熱乾燥による回転ドラム乾燥装置などの加熱乾燥法を採用することができる。加熱温度は、被膜の変質抑制の観点から、好ましくは20〜90℃、より好ましくは30〜80℃である。乾燥は、シートの揮発分が9質量%以下になるまで行なうことが好ましい。これにより、シートが粘着性を示して互いに接着したり、ブロッキングすることを防止することができる。
【0034】
例えば、水分活性が0.1〜0.4である緑茶抽出物を含む被膜を有する袋体に緑茶を充填して製造されたティーバッグは、その外観が山吹色の美麗な色彩を有し、それを熱水などに浸漬して飲料を調製すると、被膜が溶解して色落ちするとともに飲料に対して山吹色の美麗な水色や豊かな香りを付与することができる。また、水分活性が0.1〜0.4である紅茶抽出物を含む被膜を有する袋体に紅茶を充填して製造されたティーバッグは、その外観が赤茶褐色の美麗な色彩を有し、それを熱水などに浸漬して飲料を調製すると、被膜が溶解して色落ちするとともに飲料に対して赤茶褐色が増強された美麗な水色を付与することができる。このように、本発明のティーバッグは、飲料を調製する際の外観変化、飲料の水色により視覚的に楽しむことができる付加価値の高いものである。
【実施例】
【0035】
1.タンニンの測定
タンニン量の測定は酒石酸鉄法により、標準液として非重合体カテキン類含有量94質量%のポリフェノン70Aを用い、非重合体カテキン類の換算量として求めた(参考文献:「緑茶ポリフェノール」飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズNo.10)。試料5mLを酒石酸鉄標準溶液5mLで発色させ、リン酸緩衝液で25mLに定溶し、540nmで吸光度を測定し、非重合体カテキン類による検量線からタンニン量を求めた。
酒石酸鉄標準液の調製:硫酸第一鉄・7水和物100mg、酒石酸ナトリウム・カリウム(ロッシェル塩)500mgを蒸留水で100mLとした。
リン酸緩衝液の調製:1/15mol/Lリン酸水素二ナトリウム溶液と1/15mol/Lリン酸二水素ナトリウム溶液を混合しpH7.5に調整した。
【0036】
2.水分活性の測定
水分活性測定計(CX−2、日本ゼネラル(株)製)を用いて、被膜形成剤として使用する各種粉末試料の水分活性を測定した。高さ1cm、直径4cmの円筒状プラスチック製のサンプルカップに試料粉末を充填した後密閉し、25℃で水分活性を測定した。27.5℃に於ける食塩飽和水溶液の水分活性は、0.751と測定され、文献値0.753(25℃)とほぼ一致した。各種粉末試料の揮発分は、小数点以下1位まで0%の絶乾状態のものから、20%近傍までの約20種類の粉末試料について、粉末の揮発分と水分活性の関係を測定したところ、粉末の揮発分が0%から20%の範囲で、水分活性は揮発分の増加とともに0点から直線的に増大し、ほぼ一定値に到達する挙動を示したので、粉末の揮発分が2%から20%の試料については、[(水分活性測定値÷測定試料の揮発分)×揮発分5%]の算出法により、揮発分5%に於ける水分活性を算出し、実施例における水分活性の値とした。
【0037】
3.ティーバッグの評価
(1)被膜状態評価
ティーバッグの外表面の被膜状態を、目視による観察及び手で触った感触によって、下記の基準で評価した。
A:表面に細かい粉末が発生せず、全体が均一な被膜であり、粘着性がない。
B:被膜が不均一でまだら状である。
【0038】
(2)呈色評価
ティーバッグの外観の色彩を目視により評価した。
【0039】
(3)着色指数評価
ティーバッグの基材シートの色を基準として、ティーバッグの外表面の着色性を下記の基準で視覚判定し、着色指数とした。次に、ティーバッグを40℃の温水100mLに1分間浸漬し、ティーバッグを温水より引き上げ風乾した後、ティーバッグの外表面の着色指数を下記基準で視覚判定した。浸漬前から乾燥後のティーバッグの着色指数の変化を評価した。
3:著しく着色している。
2:着色している。
1:僅かに着色している。
0:基材シートと同じ色である。
【0040】
(4)水色の評価
ティーバッグを40℃の温水100mLに1分間浸漬した後、ティーバッグを温水より引き上げ、温水の水色を目視で評価した。
【0041】
4.原材料:
本実施例において使用した茶抽出物は、以下のとおりである。
1)製造例1で得られた緑茶抽出物(乾燥粉末)
2)製造例2で得られた紅茶抽出物(乾燥粉末)
3)市販のタンニン製剤A(ポリフェノン70A、三井農林(株)製)
4)市販のタンニン製剤B(ポリフェノンHG、三井農林(株)製)
【0042】
各茶抽出物について、固形分中のタンニン含有量及び揮発分5質量%のときの常温における水分活性を測定した。その結果を表1に示す。
【0043】
製造例1
市販の緑茶葉(煎茶、古賀製茶本舗製)10gを、水、表1に示す容量比の水とエタノールの混合液又はエタノールの各種溶媒100mLに50℃、30分浸漬した後、2号濾紙でろ過し、ろ液を減圧乾燥して濃縮した。濃縮液を60〜80℃の湯浴上で乾燥し、緑茶抽出物(乾燥粉末)を製造した。
【0044】
製造例2
緑茶葉の代わりに、紅茶(ダージリンエクストラ、片岡物産(株)製)を用いたこと以外は、製造例1と同様の操作により紅茶抽出物(乾燥粉末)を製造した。
【0045】
実施例1
支持体として、幅×長さ×厚みが150mm×250mm×1mmのポリテトラフルオロエチレン製シートを用い、この上に基材シートとして9cm×15cmの多孔質基材シート(T−Bag、ノンヒートシール紙、坪量12g/m2、日本大昭和板紙(株)製)を置いた。次いで、水を溶媒として緑茶葉から抽出された緑茶抽出物(乾燥粉末)を60質量%となる分散液とし、乾燥後の被膜中のタンニン含有量が単位表面積当たり7.4g/m2となるように基材シートの上からスパーテルで均一に塗布した。次いで、塗布後の基材シートと支持体を水きり等の操作を行なうことなくそのままの状態で、電気乾燥機内で60℃にて15分間乾燥した。乾燥後、支持体からシートを手で剥離し、ティーバッグ用シートを得た。
得られたティーバッグ用シートを用いて緑茶葉2gを包装し緑茶ティーバッグを製造した。得られたティーバッグの外表面の被膜状態、呈色、着色指数、飲料の水色について評価した。その結果を表1に示す。
【0046】
実施例2
水/エタノール(容量比)が75/25の混合液を溶媒として緑茶葉から得られた緑茶抽出物(乾燥粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ティーバッグを製造した。得られたティーバッグについて実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
実施例3
水/エタノール(容量比)が50/50の混合液を溶媒として緑茶葉から得られた緑茶抽出物(乾燥粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ティーバッグを製造した。得られたティーバッグについて実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0048】
実施例4
水/エタノール(容量比)が40/60の混合液を溶媒として緑茶葉から得られた緑茶抽出物(乾燥粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ティーバッグを製造した。得られたティーバッグについて実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
実施例5
水/エタノール(容量比)が30/70の混合液を溶媒として緑茶葉から得られた緑茶抽出物(乾燥粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ティーバッグを製造した。得られたティーバッグについて実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0050】
実施例6
水を溶媒として紅茶葉から得られた紅茶抽出物(乾燥粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ティーバッグを製造した。得られたティーバッグについて実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0051】
実施例7
水/エタノール(容量比)が75/25の混合液を溶媒として紅茶葉から得られた紅茶抽出物(乾燥粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ティーバッグを製造した。得られたティーバッグについて実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
実施例8
水/エタノール(容量比)が50/50の混合液を溶媒として紅茶葉から得られた紅茶抽出物(乾燥粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ティーバッグを製造した。得られたティーバッグについて実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0053】
実施例9
水/エタノール(容量比)が40/60の混合液を溶媒として紅茶葉から得られた紅茶抽出物(乾燥粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ティーバッグを製造した。得られたティーバッグについて実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0054】
実施例10
水/エタノール(容量比)が30/70の混合液を溶媒として紅茶葉から得られた紅茶抽出物(乾燥粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ティーバッグを製造した。得られたティーバッグについて実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0055】
実施例11
市販のタンニン製剤Aを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ティーバッグを製造した。得られたティーバッグについて実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
実施例12
市販のタンニン製剤Bを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ティーバッグを製造した。得られたティーバッグについて実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
比較例1
エタノールを溶媒として緑茶葉から得られた緑茶抽出物(乾燥粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ティーバッグを製造した。得られたティーバッグについて実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
比較例2
エタノールを溶媒として紅茶葉から得られた紅茶抽出物(乾燥粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、ティーバッグを製造した。得られたティーバッグについて実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1より次のことがわかった。
緑茶抽出物、紅茶抽出物いずれの場合も、茶葉から抽出する際の溶媒のエタノール濃度の増大とともに茶抽出物の固形分中のタンニン含有量が増加する傾向が見られたが、エタノール濃度が100%となると、茶抽出物の固形分量中のタンニン含有量は急減した。
また、市販のタンニン製剤の水分活性は、0.27又は0.32であり、水/エタノールの容量比が100/0から30/70までの溶媒により得られた茶抽出物と同種のものと確認された。一方、エタノール濃度100%の溶媒により得られた茶抽出物の水分活性は、0.4を超えていた。
【0061】
水分活性が0.1〜0.4の範囲内にある茶抽出物又は市販のタンニン製剤を含む被覆は、被膜状態が均一で良好であった。また、このような緑茶抽出物を含む被膜を有するティーバッグは、外観が黄みを帯びた、いわゆる美麗な山吹色を呈しており、また紅茶抽出物を含む被膜を有するティーバッグは、外観が美麗な紅茶色を呈しており、更に市販のカテキン製剤を含む被膜を有するティーバッグは、外観が美麗なローズ色、又は落ち着いた山吹色を呈していた。これらティーバッグの着色指数は、いずれも3であった。
【0062】
水分活性が0.1〜0.4の範囲内にある緑茶抽出物を含む被膜を有するティーバッグを温水に1分間浸漬し、温水から取り出して風乾すると、その外観は山吹色から基材シートの色に脱色し、即ち、着色指数で表すと、3→0の変化となった。また、水分活性が0.1〜0.4の範囲内にある紅茶抽出物又は市販のタンニン製剤を含む著しく着色している被膜を有するティーバッグ(着色指数3)は、温水浸漬後、僅かに着色した状態となり、即ち、着色指数で3→1の変化となった。これにより、いずれのティーバッグも色素が殆ど残留しないことが確認された。更に、緑茶抽出物又は市販のタンニン製剤Bを含む被膜を有するティーバッグは、色落ちとともに山吹色の美麗な水色と香り立ちを有する緑茶飲料が得られ、また紅茶抽出物を含む被膜を有するティーバッグは、紅茶色の美麗な水色を有する紅茶飲料が得られることが確認された。このようなティーバッグの外観変化や、飲料の水色により、茶の芳香のみならず、視覚的にも楽しむことができた。
【0063】
これに対し、水分活性が0.4を超える緑茶抽出物又は紅茶抽出物を含む被膜を有するティーバッグは、被膜が不均一でまだら状であり(被膜状態評価;B)、ティーバッグを温水に浸漬した後も着色したままであった(着色指数3→2)。これにより、水分活性が0.4を超える茶抽出物を含む被膜を有するティーバッグは、色素の残留が認められ、また色落ちとともに飲料に対して美麗な水色を十分に付与することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート表面に被膜を有するシートからなる袋体と、
該袋体内に収容された被抽出物
を備え、
被膜は、揮発分5質量%のときの常温における水分活性が0.1〜0.4である茶抽出物を含有するものである、ティーバッグ。
【請求項2】
茶抽出物は、水/エタノールの容量比が100/0〜20/80である溶媒を用いて茶葉から抽出して得られたものである、請求項1記載のティーバッグ。
【請求項3】
被膜中のタンニン含有量が単位表面積当たり5〜40g/m2である、請求項1又は2記載のティーバッグ。
【請求項4】
被抽出物が緑茶葉、紅茶葉及び烏龍茶葉から選ばれる茶葉である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のティーバッグ。

【公開番号】特開2013−35578(P2013−35578A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174121(P2011−174121)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(510037639)
【Fターム(参考)】