説明

テトラヒドロピラン−4−オン及びピラン−4−オンの製法

本発明は、式(2): 式中、 は単結合又は二重結合を表す、で示されるジヒドロピラン−4−オン及びピラン−4−オンの少なくとも一種と水素とを、(a)金属触媒の存在下、非プロトン性溶媒とアルコール溶媒の混合溶媒中、又は(b)含水金属触媒を脱水処理させた無水金属触媒の存在下、疎水性有機溶媒中で反応させることを特徴とする、式(1):で示されるテトラヒドロピラン−4−オンの製法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラン−4−オン及びテトラヒドロピラン−4−オンを製造する方法に関する。ピラン−4−オン及びテトラヒドロピラン−4−オンは、医薬・農薬等の原料や合成中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、ピラン−4−オンを製造する方法としては、例えば、ナトリウムメトキシドの存在下、エーテル中にて、4−メトキシ−3−ブテン−2−オンとギ酸メチルとを反応させてホルミル誘導体のナトリウム塩を析出させ、次いで、これに塩化水素のメタノール溶液を反応させた後に中和及び減圧蒸留して、1,5,5−トリメトキシ−1−ペンテン−3−オンを主成分とする混合物を得、更に、濃塩酸中で一晩放置した後に中和及び抽出して、ピロン−4−オンを製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、中間体であるホルミル誘導体のナトリウム塩を一旦析出させなければならず、又、取り扱いの難しい塩化水素のメタノール溶液を使用しなければならない上に、反応操作が繁雑で、且つ反応時間が極めて長い等、ピラン−4−オンの工業的な製法としては不利であった。
【0003】
更に、ピラン−4−オンからテトラヒドロピラン−4−オンを製造する方法としては、例えば、ラネーニッケルの存在下、ピラン−4−オンと水素とを、常圧下、エタノール中にて室温で3時間反応させて、収率58%でテトラヒドロピラン−4−オンを製造する方法(例えば、非特許文献1参照)や、パラジウム/炭酸スカンジウムの存在下、ピラン−4−オンと水素とを、加圧下、メタノール中にて20℃で30分間反応させて、収率75%でテトラヒドロピラン−4−オンを製造する方法(例えば、非特許文献2参照)が開示されている。
【0004】
しかしながら、ピラン−4−オンを製造する方法においては、中間体であるホルミル誘導体のナトリウム塩を一旦析出させなければならず、又、取り扱いの難しい塩化水素のメタノール溶液を使用しなければならない上に、反応操作が繁雑で、且つ反応時間が極めて長いという問題があり、又、ピラン−4−オンからテトラヒドロピラン−4−オンを製造する方法においては、目的物の収率向上のために、触媒活性の調整を行わなければならない等の細かい操作が必要であり、テトラヒドロピラン−4−オンの工業的な製法としては不利であった。
【特許文献1】特公昭47−29512号公報
【非特許文献1】Bulletin de la Societe Chimique de France,1959,36.
【非特許文献2】Helv.Chim.Acta.,31,65(1948)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、安価な原料より、簡便な方法によって、高収率でピラン−4−オンを得る、工業的に好適なピラン−4−オンの製造法を提供することである。
【0006】
本発明の別の課題は、即ち、上記問題点を解決し、簡便な方法によって、ピラン−4−オンから高収率でテトラヒドロピラン−4−オンを得る、工業的に好適なテトラヒドロピラン−4−オンの製法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、式(2):

式中、

は単結合又は二重結合を表す、
【0008】
で示されるジヒドロピラン−4−オン及びピラン−4−オンの少なくとも一種と水素とを、
(a)金属触媒の存在下、非プロトン性溶媒とアルコール溶媒の混合溶媒中、又は
(b)含水金属触媒を脱水処理させた無水金属触媒の存在下、疎水性有機溶媒中で反応させることを特徴とする、式(1):

で示されるテトラヒドロピラン−4−オンの製法を提供するものである。
【0009】
第2の発明は、(A)塩基の存在下、式(7):

式中、Rは、アルキル基を表す、なお、二つのRは互いに結合して環を形成していてもよい、
で示される1,1−ジアルコキシブタン−3−オンと式(5):

式中、Rは、アルキル基を表す、
で示されるギ酸エステルとを、有機溶媒中で反応させて、式(3):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの塩又はその等価体の塩を得、更に、これに酸を反応させて、式(2’):

で示されるピラン−4−オンを主成分とする粗生成物を製造する環化反応工程、
【0010】
(B)次いで、金属触媒の存在下、ピラン−4−オンを主成分とする粗生成物と水素とを、
(a)非プロトン性溶媒とアルコール溶媒の混合溶媒中、又は
(b)含水金属触媒を脱水処理させた無水金属触媒の存在下、疎水性溶媒中で反応させて式(1):

で示されるテトラヒドロピラン−4−オンを製造する還元反応工程、
の二つの工程を含んでなることを特徴とする、テトラヒドロピラン−4−オンの製造方法に関する。
【0011】
第3の発明は、式(3):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの塩又はその等価体の塩に、酸を反応させることを特徴とする、式(2’):

で示されるピラン−4−オンの製法に関する。
【0012】
第4の発明は、塩基の存在下、式(7):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される1,1−ジアルコキシブタン−3−オンと式(5):

式中、Rは、前記と同義である、
で示されるギ酸エステルとを、有機溶媒中で反応させることを特徴とする、式(3):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの塩又はその等価体の塩の製法に関する。
【0013】
第5の発明は、酸の存在下、式(6):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される1,1,5,5−テトラアルコキシペンタン−3−オンを環化反応させることを特徴とする、式(2’):

で示されるピラン−4−オンの製法に関する。
【0014】
第6の発明は、式(2)で示される化合物のうち、式(2’):

で示されるピラン−4−オンを、水素と、金属触媒の存在下、非プロトン性溶媒とアルコール溶媒の混合溶媒中、反応させることを特徴とする式(2”):

で示されるジヒドロピラン−4−オンの製法に関する。
【0015】
第7の発明は、式(3):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールのナトリウム塩又はその等価体のナトリウム塩に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、簡便な方法によって、ピラン−4−オンから高収率でテトラヒドロピラン−4−オンを得る、工業的に好適なテトラヒドロピラン−4−オンの製法を提供することが出来る。
【0017】
また、本発明により、安価な原料より、簡便な方法によって、高収率でピラン−4−オンを得る、工業的に好適なピラン−4−オンの製造法を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
第1の発明は、式(2):

式中、

は単結合又は二重結合を表す、
【0019】
で示されるジヒドロピラン−4−オン及びピラン−4−オンの少なくとも一種と水素とを、
(a)金属触媒の存在下、非プロトン性溶媒とアルコール溶媒の混合溶媒中、又は
(b)含水金属触媒を脱水処理させた無水金属触媒の存在下、疎水性有機溶媒中で反応させることにより、式(1):

で示されるテトラヒドロピラン−4−オンを製造する方法である。
【0020】
本発明の反応において使用する(a)の金属触媒としては、パラジウム、白金及びニッケルからなる群より選ばれる少なくともひとつの金属原子を含むものであり、具体的には、例えば、パラジウム/炭素、パラジウム/硫酸バリウム、水酸化パラジウム/白金、白金/炭素、硫化白金/炭素、パラジウム−白金/炭素、酸化白金、ラネーニッケル等が挙げられる。なお、これらの金属触媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0021】
前記金属触媒の使用量は、金属原子換算で、ピラン−4−オン及び/又はジヒドロピラン−4−オン1モルに対して、好ましくは0.0001〜5モル、より好ましくは0.0002〜1モル、更に好ましくは0.0005〜0.5モル、最も好ましくは0.001〜0.1モルである。
【0022】
第1の発明の反応(a)において使用する水素の量は、ピラン−4−オン及び/又はジヒドロピラン−4−オン1モルに対して、好ましくは0.5〜20モル、より好ましくは1.1〜10モル、更に好ましくは2.1〜5モルである。
【0023】
第1の発明の反応において使用する(a)の混合溶媒とは、非プロトン性溶媒とアルコール溶媒との混合溶媒であり、混合溶媒中のアルコール溶媒は、好ましくは1〜95容量%、更に好ましくは5〜90容量%である。又、前記混合溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性によって適宜調節するが、ピラン−4−オン及び/又はジヒドロピラン−4−オン1gに対して、好ましくは0.5〜50g、更に好ましくは1〜20gである。
【0024】
前記非プロトン性溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル等のカルボン酸エステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられが、好ましくは芳香族炭化水素類、更に好ましくはトルエン、キシレンが使用される。なお、これらの非プロトン性溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0025】
前記アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールが挙げられる。なお、これらのアルコール溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0026】
第1の発明の反応は、例えば、水素ガス雰囲気にて、ピラン−4−オン及び/又はジヒドロピラン−4−オン、金属触媒、非プロトン性溶媒及びアルコール溶媒を混合し、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは0〜100℃、更に好ましくは5〜60℃であり、反応圧力は、好ましくは0.1〜10MPa、更に好ましくは0.1〜1MPaである。
【0027】
第1の発明の反応において使用する(b)の含水金属触媒としては、前記(a)と同様パラジウム、白金及びニッケルからなる群より選ばれる少なくともひとつの金属原子を含むものであり、具体的には、例えば、パラジウム/炭素、パラジウム/硫酸バリウム、水酸化パラジウム/白金、白金/炭素、硫化白金/炭素、パラジウム−白金/炭素、酸化白金、ラネーニッケル等が挙げられる。なお、これらの含水金属触媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良く、安全性の面から水に懸濁させた状態でも良い。
【0028】
前記含水金属触媒の使用量は、金属原子換算で、ピラン−4−オン及び/又はジヒドロピラン−4−オン1モルに対して、好ましくは0.0001〜5モル、更に好ましくは0.0002〜1モルである。
【0029】
第1の発明の反応(b)において使用する水素の量は、ピラン−4−オン及び/又はジヒドロピラン−4−オン1モルに対して、好ましくは0.5〜20モル、より好ましくは1.1〜10モル、更に好ましくは1.1〜5モルである。
【0030】
第1の発明の反応において使用する(b)の疎水性有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のカルボン酸エステル類;ジエチルエーテル等のエーテル類が挙げられるが、好ましくは脂肪族炭化水素類及び/又は芳香族炭化水素類が使用される。なお、これらの疎水性有機溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0031】
前記疎水性有機溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性によって適宜調節するが、ピラン−4−オン及び/又はジヒドロピラン−4−オン1gに対して、好ましくは0.5〜50g、より好ましくは1〜20g、更に好ましくは1〜10gである。
【0032】
本発明における脱水処理とは、含水金属触媒を無水金属触媒にする方法ならば特に限定はされないが、例えば、含水金属触媒と水と共沸する有機溶媒とを混合し、還流させながら水を除去する等の方法によって、含水金属触媒から水を除去する方法が好適に用いられる。
【0033】
前記の水と共沸する有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のカルボン酸エステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられるが、好ましくは脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類が使用される。なお、これらの有機溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0034】
前記水と共沸する有機溶媒の使用量は、ピラン−4−オン及び/又はジヒドロピラン−4−オン1gに対して、好ましくは0.5〜50g、更に好ましくは1〜20gである。
【0035】
なお、前記の水と共沸する有機溶媒と疎水性有機溶媒とは、同一でも異なっていても良い。
【0036】
第1の発明の反応は、例えば、含水金属触媒(必要ならば水に懸濁させておいても良い)及び疎水性有機溶媒を混合し、還流させながら反応系内の共沸脱水処理を行った後、これにピラン−4−オン及び/又はジヒドロピラン−4−オンを加え、水素ガス雰囲気にて、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは0〜100℃、更に好ましくは5〜60℃であり、反応圧力は、好ましくは0.1〜10MPa、更に好ましくは0.1〜1MPaである。
【0037】
また、脱水処理に使用する有機溶媒と反応で使用する疎水性有機溶媒が同じであることが、製造方法の面から好ましいが、場合によっては、例えば、1,2−ジメトキシエタン等で脱水処理して、トルエン等に溶媒を置換して反応させることも可能である。
【0038】
なお、最終生成物であるテトラヒドロピラン−4−オンは、反応終了後、中和、抽出、濾過、濃縮、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって単離・精製される。
【0039】
第1の発明において使用される前記式(2’)で示されるピラン−4−オンは、式(3):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナール又はその等価体、或いはそれらの塩に酸を反応させて環化反応を行うことを特徴とする第3の発明により得ることができる。
【0040】
第3の発明の反応で使用する5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールは、前記の式(3)で示される。その式(3)において、Rは、アルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、さらに好ましくは炭素原子数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。また、二つのRは互いに結合して環を形成していてもよく、このようにして形成される環としては、例えば、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
【0041】
5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの具体例としては、例えば、5,5−ジメトキシ−3−オキソペンタナール、5,5−ジエトキシ−3−オキソペンタナール、5,5−ジ−n−プロポキシ−3−オキソペンタナール、5,5−ジイソプロポキシ−3−オキソペンタナール、5,5−ジ−n−ブトキシ−3−オキソペンタナール、5,5−ジイソブトキシ−3−オキソペンタナール、5,5−ジ−tert−ブトキシ−3−オキソペンタナール等が挙げられる。また、5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの等価体の具体例としては、例えば、1,1,5,5−テトラメトキシペンタン−3−オン、1,5−ジメトキシ−1,4−ペンタンジエン−3−オン、1,1,5−トリメトキシペンタン−4−エン−3−オン等が挙げられる。
【0042】
第3の発明の環化反応で使用する有機溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられるが、好ましくはニトリル類、スルホキシド類、アミド類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、更に好ましくは芳香族炭化水素類、ニトリル類が使用される。なお、これらの有機溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0043】
前記有機溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性により適宜調節するが、1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体1gに対して、好ましくは0.5〜50g、より好ましくは1〜20g、更に好ましくは1〜10gである。
【0044】
第3の発明の環化反応において使用する酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸類;ギ酸、酢酸等のカルボン酸類;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機スルホン酸類が挙げられるが、好ましくは鉱酸類、更に好ましくは塩酸、硫酸が使用される。なお、これらの酸は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0045】
前記酸の使用量は、1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体1モルに対して、好ましくは1.0〜20モル、更に好ましくは1.1〜6.0モルである。
【0046】
第3の発明の環化反応は、例えば、1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体、ギ酸エステル、塩基及び有機溶媒を混合し、好ましくは−30〜150℃、更に好ましくは−20〜130℃で、攪拌しながら反応させて5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの塩又はその等価体の塩を得、次いで、酸を添加して、好ましくは−30〜150℃、より好ましくは−20〜130℃、更に好ましくは−20〜100℃、最も好ましくは−5〜60℃で、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。なお、その際の反応圧力は特に制限されない。
【0047】
また、第7の発明である前記式(3)で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールのナトリウム塩又はその等価体の塩は、新規化合物であり、5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールのナトリウム塩の具体例としては、例えば、5,5−ジメトキシ−3−オキソペンタナールナトリウム塩、5,5−ジエトキシ−3−オキソペンタナールナトリウム塩、5,5−ジ−n−プロポキシ−3−オキソペンタナールナトリウム塩、5,5−ジイソプロポキシ−3−オキソペンタナールナトリウム塩、5,5−ジ−n−ブトキシ−3−オキソペンタナールナトリウム塩、5,5−ジイソブトキシ−3−オキソペンタナールナトリウム塩、5,5−ジ−tert−ブトキシ−3−オキソペンタナールナトリウム塩等が挙げられる。また、5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの等価体のナトリウム塩の具体例としては、例えば、1,1,5,5−テトラメトキシペンタン−3−オン、1,5−ジメトキシ−1,4−ペンタンジエン−3−オン、1,1,5−トリメトキシペンタン−4−エン−3−オン等のナトリウム塩等が挙げられる。
【0048】
また、前記式(3)で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの塩又はその等価体の塩は、塩基の存在下、式(4):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体と式(5):

式中、Rは、アルキル基を表す、
で示されるギ酸エステルとを、有機溶媒中で反応させることを特徴とする第4の発明により得ることができる。
【0049】
第4の発明の反応で使用する1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体は、前記の式(4)で示される。その式(4)において、Rは、前記式(3)において説明したのと同義である。
【0050】
第4の発明の反応で使用するギ酸エステルは、前記の式(5)で示される。その式(5)において、Rは、アルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、さらに好ましくは炭素原子数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0051】
前記ギ酸エステルの使用量は、1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体1モルに対して、好ましくは1.0〜5.0モル、更に好ましくは1.1〜3.0モルである。
【0052】
第4の発明の反応において使用する塩基としては、例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物;水素化カルシウム等のアルカリ土類金属水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属アルコキシド、更に好ましくはナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドが使用される。なお、これらの塩基は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0053】
前記塩基の使用量は、1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体1モルに対して、好ましくは1.0〜5.0モル、更に好ましくは1.1〜3.0モルである。
【0054】
前記式(2’)で示されるピラン−4−オンは、また、酸の存在下、式(6):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される1,1,5,5−テトラアルコキシペンタン−3−オン又はその等価体を環化反応させることを特徴とする第5の発明によっても得ることができる。
【0055】
第5の発明の環化反応で使用する1,1,5,5−テトラアルコキシペンタン−3−オン又はその等価体は、前記の式(6)で示される。その式(6)において、Rは、前記と同義である。
【0056】
第5の発明の環化反応において使用する酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸類;ギ酸、酢酸等のカルボン酸類;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機スルホン酸類が挙げられるが、好ましくは鉱酸類、更に好ましくは塩酸、硫酸が使用される。なお、これらの酸は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0057】
前記酸の使用量は、1,1,5,5−テトラアルコキシペンタン−3−オン又はその等価体1モルに対して、好ましくは1.0〜100モル、より好ましくは1.1〜10モル、更に好ましくは1.1〜6.0モルである。
【0058】
第5の発明の環化反応は、溶媒の存在下又は非存在下において行われる。溶媒を使用する場合には、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0059】
前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性により適宜調節するが、1,1,5,5−テトラアルコキシペンタン−3−オン又はその等価体1gに対して、好ましくは0〜50g、更に好ましくは0〜10gである。
【0060】
第5の発明の環化反応は、例えば、1,1,5,5−テトラアルコキシペンタン−3−オン又はその等価体及び酸を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。なお、その際の反応温度は、好ましくは−20〜100℃、更に好ましくは−5〜60℃であり、反応圧力は特に制限されない。
【0061】
なお、得られるピラン−4−オンは、反応終了後、例えば、濾過、中和、抽出、濃縮、蒸留、再結晶、晶析、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって単離・精製される。
【0062】
第6の発明は、前記式(2’)で示されるピラン−4−オンを、水素と、金属触媒の存在下、非プロトン性溶媒とアルコール溶媒の混合溶媒中、反応させることを特徴とする前記式(2”)で示されるジヒドロピラン−4−オンの製法である。
【0063】
反応条件は、前記式(2’)で示されるピラン−4−オンの還元反応と同様の条件が挙げられる。
【0064】
本発明の第2の発明は、前記環化反応と還元反応を連続して行うテトラヒドロピラン−4−オンの製法に関する。
【0065】
(A)環化反応工程
本発明の環化反応工程は、塩基の存在下、式(4)で示される1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体と式(5)で示されるギ酸エステルとを、有機溶媒中で反応させて、式(3)で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの塩又はその等価体の塩を得、更に、これに酸を反応させて、式(2’)で示されるピラン−4−オンを主成分とする粗生成物を製造する工程である。環化反応は前記と同様に行われる。
【0066】
なお、本発明の環化反応工程によって、ピラン−4−オンを主成分とする粗生成物が得られるが、本発明においては、反応終了後、ピラン−4−オンの単離・精製を行わずに、反応液をそのまま又は濃縮等の処理を施した後に、次の工程に使用することができる。
【0067】
(B)還元反応工程
本発明の還元反応工程は、金属触媒の存在下、式(2’)で示されるピラン−4−オンを主成分とする粗生成物と水素とを、
(a)非プロトン性溶媒とアルコール溶媒の混合溶媒中、又は
(b)含水金属触媒を脱水処理させた無水金属触媒の存在下、疎水性溶媒中で反応させて、式(1)で示されるテトラヒドロピラン−4−オンを製造する工程である。還元反応は前記と同様に行われる。
【0068】
前記金属触媒の使用量は、金属原子換算で、1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体1モルに対して、好ましくは0.00001〜0.5モル、更に好ましくは0.00002〜0.1モルである。
【0069】
本発明の反応において使用する水素の量は、1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体1モルに対して、好ましくは0.5〜20モル、より好ましくは1.1〜10モルである。
【0070】
前記(a)及び(b)の反応条件は、第1の発明と同様に行うことができる。
【0071】
また、本願においては、塩基の存在下、式(7)で示される1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体と式(5)で示されるギ酸エステルとを、有機溶媒中で反応させて、式(3)で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの塩又はその等価体の塩を得、更に、これに酸を反応させて、式(2’)で示されるピラン−4−オンを製造することを特徴とするピラン−4−オンの製法が提供される。
【0072】
前記ピラン−4−オンの製法の反応条件は前記のとおりである。
【実施例】
【0073】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0074】
参考例1(1,1,5,5−テトラメトキシペンタン−3−オンの合成)
攪拌装置及び滴下漏斗を備えた内容積500mlのガラス製フラスコに、ナトリウムメトキシド37g(0.68mol)及びトルエン200mlを加え、液温を15℃以下に保ちながら、1−メトキシ−1−ブテン−3−オン50g(0.50mol)とギ酸メチル60g(1.0mol)の混合液をゆるやかに滴下した。滴下終了後、攪拌しながら、15℃以下にて1時間、室温にて3時間反応させた。その後、反応溶液を減圧下で濃縮し、濃縮液にメタノール50mlを加え、液温を15℃以下に保ちながら、98%硫酸60g(0.6mol)をゆるやかに滴下して、攪拌しながら、室温にて5時間反応させた。反応終了後、50%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した後に析出した固体を濾過し、得られた濾液を濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製して、橙色液体として、1,1,5,5−テトラメトキシペンタン−3−オン18.5gを得た(単離収率:18%)。
1,1,5,5−テトラメトキシペンタン−3−オンの物性値は以下の通りであった。
【0075】
CI−MS(m/e);175(M−Ome)
H−NMR(CDCl,δ(ppm));2.76(4H,d,J=5.6Hz)、3.36(12H,s)、4.79(2H,t,J=5.6Hz)
【0076】
実施例1(ピラン−4−オンの合成)
攪拌装置及び滴下漏斗を備えた内容積10mlのガラス製フラスコに、参考例1と同様な方法で合成した1,1,5,5−テトラメトキシペンタン−3−オン1.0g(4.8mmol)を加え、氷浴中、12mol/l塩酸1.2ml(14.1mmol)をゆるやかに滴下した。滴下終了後、室温にて4時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、ピラン−4−オンが0.45g生成していた(反応収率:97%)。
【0077】
実施例2(ピラン−4−オンの合成)
攪拌装置及び滴下漏斗を備えた内容積10mlのガラス製フラスコに、参考例1と同様な方法で合成した1,1,5,5−テトラメトキシペンタン−3−オン1.0g(4.8mmol)を加え、氷浴中、98%ギ酸5ml(130mmol)をゆるやかに滴下した。滴下終了後、室温にて19時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、ピラン−4−オンが0.45g生成していた(反応収率:97%)。
【0078】
実施例3(ピラン−4−オンの合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積1000mlのガラス製フラスコに、ナトリウムメトキシド81.7g(1.51mol)及びアセトニトリル400mlを加え、氷浴中、液温を12℃以下に保ちながら、1,1−ジメトキシブタン−3−オン100g(0.76mol)とギ酸メチル68.2g(1.14mol)の混合液をゆるやかに滴下した。滴下終了後、17〜22℃にて4時間反応させ、5,5−ジメトキシ−3−オキソペンタナール(その等価体を含む)のナトリウム塩を含む反応液を得た。
【0079】
次いで、攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積2000mlのガラス製フラスコに、12mol/l塩酸277ml(3.32mol)を加え、氷浴中、液温を12℃以下に保ちながら、前記5,5−ジメトキシ−3−オキソペンタナール(その等価体を含む)のナトリウム塩を含む反応液をゆるやかに滴下した。滴下終了後、17〜22℃にて16時間反応させた。
【0080】
反応終了後、液温を0℃以下に保ちながら、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液350g(1.81mol)をゆるやかに滴下して中和し、滴下終了後、析出した固体を濾過した。濾液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、ピラン−4−オンが61.9g生成していた(反応収率:83%)。
【0081】
実施例4(5,5−ジメトキシ−3−オキソペンタナール(その等価体を含む)のナトリウム塩の合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積1000mlのガラス製フラスコに、ナトリウムメトキシド81.7g(1.51mol)及びアセトニトリル400mlを加え、氷浴中、液温を12℃以下に保ちながら、1,1−ジメトキシブタン−3−オン100g(0.76mol)とギ酸メチル68.2g(1.14mol)の混合液をゆるやかに滴下した。滴下終了後、17〜22℃にて4時間反応させ、5,5−ジメトキシ−3−オキソペンタナール(その等価体を含む)のナトリウム塩を含む反応液を得た。この反応液の一部を濾過し、得られた固体を減圧下で乾燥させ、薄黄色固体として、5,5−ジメトキシ−3−オキソペンタナール(その等価体を含む)のナトリウム塩を得た。
5,5−ジメトキシ−3−オキソペンタナール(その等価体を含む)のナトリウム塩は、以下の物性値で示される新規な化合物である。
【0082】
FAB−MS;183(M)
H−NMR(DMSO−d,δ(ppm));2.61(1H,brs)、2.86(1H,brs)、3.41(6H,s)、4.81(1H,t,J=5.7Hz)、5.27(1H,d,J=10.5Hz)、9.00(1H,d,J=10.5Hz)0
【0083】
実施例5(テトラヒドロピラン−4−オンの合成)
攪拌装置、温度計、還流冷却器及び水素を充填した風船を備えた内容積20mlのガラス製フラスコに、ピラン−4−オン577mg(6.0mol)、5質量%パラジウム/炭素120mg(50%wet品;パラジウム原子として0.03mmol)、トルエン5ml及びエタノール1mlを加え、水素雰囲気下、攪拌しながら室温で3時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、テトラヒドロピラン−4−オン513mgが生成していた(反応収率:85.4%)。
【0084】
実施例6(テトラヒドロピラン−4−オンの合成)
実施例3で得られた濾液を減圧下で濃縮し、濃縮物にトルエン300mlを加えて共沸脱水させた(この操作を4回繰り返した)。この溶液に、酢酸エチル500ml及び飽和塩化ナトリウム水溶液500mlを加えて攪拌させた。攪拌終了後、有機層と水層を分液した後、水層を酢酸エチル500mlで2回抽出し、抽出液と有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮した後、更にトルエン300mlを加えて不溶物を濾過した。再び濾液を濃縮し、茶色液体として、ピラン−4−オンを主成分とする粗生成物36.1gを得た。
【0085】
攪拌装置、温度計及び水素を充填した風船を備えた内容積20mlのガラス製フラスコに、ピラン−4−オンを主成分とする粗生成物32.3g、5質量%パラジウム/炭素6.5g(50%含水品;パラジウム原子として1.5mmol)、トルエン162ml及びエタノール24mlを加え、水素雰囲気下、攪拌しながら室温で8.5時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、濃縮物を減圧蒸留(55〜65℃、933Pa)し、無色液体としてテトラヒドロピラン−4−オン10.18gを得た(1,1−ジメトキシブタン−3−オン基準の単離収率:14.9%)。
【0086】
実施例7(ジヒドロピラン−4−オンの合成)
攪拌装置、温度計、還流冷却器及び水素を充填した風船を備えた内容積20mlのガラス製フラスコに、ピラン−4−オン3.0g(31.2mmol)、5質量%パラジウム/炭素0.6g(50%含水品;パラジウム原子として0.14mmol)、トルエン30ml及びエタノール3mlを加え、水素雰囲気下、攪拌しながら室温で1時間反応させた。反応終了後、反応液を濾過し、濾液を濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製して、無色液体として、ジヒドロピラン−4−オン1.0gを得た(単離収率;33%)。
ジヒドロピラン−4−オンの物性値は以下の通りであった。
【0087】
CI−MS(m/e);99(M+1)
1H−NMR(CDCl3,δ(ppm));2.57〜2.63(2H,m)、4.50(2H,dd,J=7.6Hz,6.8Hz)、5.41(1H,d,J=6.1Hz)、7.35(1H,d,J=6.1Hz)
【0088】
実施例8(テトラヒドロピラン−4−オンの合成)
攪拌装置、温度計、還流冷却器及び水素を充填した風船を備えた内容積20mlのガラス製フラスコに、参考例1で合成したジヒドロピラン−4−オン500mg(5.1mmol)、5質量%パラジウム/炭素100mg(50%含水品;パラジウム原子として0.02mmol)、トルエン5ml及びエタノール0.5mlを加え、水素雰囲気下、攪拌しながら室温で3時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、テトラヒドロピラン−4−オン361mgが生成していた(反応収率:71%)。
【0089】
実施例9(テトラヒドロピラン−4−オンの合成)
攪拌装置、温度計、還流冷却器及びDean−Stark装置を備えた内容積50mlのガラス製容器に、5質量%パラジウム/炭素(50%含水品)0.2g及びトルエン30mlを加え、常圧下、攪拌しながら30分間還流させた(共沸脱水)。次いで、水素を充填した風船を備えた後、ピラン−4−オン1.0g(10.4mmol)を加え、水素雰囲気下、攪拌しながら室温で12時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、テトラヒドロピラン−4−オン807mgが生成していた(反応収率:77%)。
【0090】
実施例10(テトラヒドロピラン−4−オンの合成)
攪拌装置、温度計、還流冷却器及びDean−Stark装置を備えた内容積50mlのガラス製容器に、5質量%パラジウム/炭素(50%含水品)0.2gを水1mlに懸濁させた液及びトルエン30mlを加え、常圧下、攪拌しながら60分間還流させた(共沸脱水)。次いで、水素を充填した風船を備えた後、ピラン−4−オン1.0g(10.4mmol)を加え、水素雰囲気下、攪拌しながら室温で12時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、テトラヒドロピラン−4−オン825mgが生成していた(反応収率:79%)。
【0091】
比較例1(テトラヒドロピラン−4−オンの合成)
攪拌装置、温度計、還流冷却器及び水素を充填した風船を備えた内容積50mlのガラス製容器に、5質量%パラジウム/炭素(50%含水品)0.2g、ピラン−4−オン1.0g(10.4mmol)及びトルエン30mlを加え、水素雰囲気下、攪拌しながら室温で12時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、テトラヒドロピラン−4−オン86mgが生成していた(反応収率:7%)。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、ピラン−4−オン及び/又はジヒドロピラン−4−オンからテトラヒドロピラン−4−オンを製造する方法に関するものであり、テトラヒドロピラン−4−オンは、医薬・農薬等の原料や合成中間体として有用な化合物である。
【0093】
本発明によれば、安価な原料より、簡便な方法によって、高収率でピラン−4−オンを得る、工業的に好適なピラン−4−オンの製造法を提供することができる。
【0094】
また、本発明によれば、簡便な方法によって、ピラン−4−オンから高収率でテトラヒドロピラン−4−オンを得る、工業的に好適なテトラヒドロピラン−4−オンの製法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2):

式中、

は単結合又は二重結合を表す、
で示されるジヒドロピラン−4−オン及びピラン−4−オンの少なくとも一種と水素とを、
(a)金属触媒の存在下、非プロトン性溶媒とアルコール溶媒の混合溶媒中、又は
(b)含水金属触媒を脱水処理させた無水金属触媒の存在下、疎水性有機溶媒中で反応させることを特徴とする、式(1):

で示されるテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項2】
脱水処理を、水と共沸する有機溶媒を用いて行う請求項1記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項3】
金属触媒が、パラジウム、白金及びニッケルからなる群より選ばれる少なくともひとつの金属原子を含むものである請求の範囲第1項記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項4】
非プロトン性溶媒が、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類、カルボン酸エステル類、エーテル類、又はそれらの混合物である請求の範囲第1項記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項5】
混合溶媒中のアルコール溶媒が5〜95容量%の範囲にある請求の範囲第1項記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項6】
疎水性有機溶媒が脂肪族炭化水素類又は芳香族炭化水素類である請求の範囲第1項記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項7】
式(2)で示される化合物が、式(2’):

で示されるピラン−4−オンである請求の範囲第1項記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項8】
式(2’)で示されるピラン−4−オンが、式(3):

式中、Rは、アルキル基を表す、なお、二つのRは互いに結合して環を形成していてもよい、
で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナール若しくはその等価体、又はそれらの塩に酸を反応させて得られるものである請求の範囲第7項記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項9】
式(3)で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの塩又はその等価体の塩が、塩基の存在下、式(4):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される1,1−ジアルコキシブタン−3−オンと式(5):

式中、Rは、アルキル基を表す、
で示されるギ酸エステルとを、有機溶媒中で反応させて得られるものである請求の範囲第8項記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項10】
式(2’)で示されるピラン−4−オンが、酸の存在下、式(6):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される1,1,5,5−テトラアルコキシペンタン−3−オン又はその等価体を環化反応させて得られるものである請求の範囲第7項記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項11】
式(2’)で示されるピラン−4−オンが、塩基の存在下、式(7):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体と式(5):

式中、Rは、前記と同義である、
で示されるギ酸エステルとを、有機溶媒中で反応させて、式(3):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの塩又はその等価体の塩を得、次いで、これに酸を反応させることにより得られるものである請求の範囲第7項記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項12】
有機溶媒が芳香族炭化水素類又はニトリル類である請求の範囲第11項記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項13】
(A)塩基の存在下、式(7):

式中、Rは、アルキル基を表す、なお、二つのRは互いに結合して環を形成していてもよい、
で示される1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体と式(5):

式中、Rは、アルキル基を表す、
で示されるギ酸エステルとを、有機溶媒中で反応させて、式(3):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの塩又はその等価体の塩を得、更に、これに酸を反応させて、式(2’):

で示されるピラン−4−オンを主成分とする粗生成物を製造する環化反応工程、
(B)次いで、金属触媒の存在下、ピラン−4−オンを主成分とする粗生成物と水素とを、
(a)非プロトン性溶媒とアルコール溶媒の混合溶媒中、又は
(b)含水金属触媒を脱水処理させた無水金属触媒の存在下、疎水性溶媒中で反応させて、式(1):

で示されるテトラヒドロピラン−4−オンを製造する還元反応工程、
の二つの工程を含んでなることを特徴とする、テトラヒドロピラン−4−オンの製造方法。
【請求項14】
金属触媒が、パラジウム、白金及びニッケルからなる群より選ばれる少なくともひとつの金属原子を含むものである請求の範囲第13項記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項15】
非プロトン性溶媒が、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類、カルボン酸エステル類、エーテル類、又はそれらの混合物である請求の範囲第13項記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項16】
混合溶媒中のアルコール溶媒が5〜95容量%の範囲にある請求の範囲第13項記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項17】
式(3):

式中、Rは、アルキル基を表す、なお、二つのRは互いに結合して環を形成していてもよい、
で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナール若しくはその等価体、又はそれらの塩に酸を反応させることを特徴とする式(2’):

で示されるピラン−4−オンの製法。
【請求項18】
塩基の存在下、式(4):

式中、Rは、アルキル基を表す、なお、二つのRは互いに結合して環を形成していてもよい、
で示される1,1−ジアルコキシブタン−3−オンと式(5):

式中、Rは、アルキル基を表す、
で示されるギ酸エステルとを、有機溶媒中で反応させることを特徴とする式(3):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの塩又はその等価体の製法。
【請求項19】
酸の存在下、式(6):

式中、Rは、アルキル基を表す、なお、二つのRは互いに結合して環を形成していてもよい、
で示される1,1,5,5−テトラアルコキシペンタン−3−オン又はその等価体を環化反応させることを特徴とする式(2’):

で示されるピラン−4−オンの製法。
【請求項20】
式(2’):

で示されるピラン−4−オンを、水素と、金属触媒の存在下、非プロトン性溶媒とアルコール溶媒の混合溶媒中、反応させることを特徴とする式(2”):

で示されるジヒドロピラン−4−オンの製法。
【請求項21】
式(3):

式中、Rは、アルキル基を表す、なお、二つのRは互いに結合して環を形成していてもよい、
で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールのナトリウム塩又はその等価体のナトリウム塩。
【請求項22】
塩基の存在下、式(7):

式中、Rは、アルキル基を表す、なお、二つのRは互いに結合して環を形成していてもよい、
で示される1,1−ジアルコキシブタン−3−オン又はその等価体と式(5):

式中、Rは、アルキル基を表す、
で示されるギ酸エステルとを、有機溶媒中で反応させて、式(3):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される5,5−ジアルコキシ−3−オキソペンタナールの塩又はその等価体の塩を得、更に、これに酸を反応させて、式(2’):

で示されるピラン−4−オンを製造することを特徴とする、ピラン−4−オンの製法。
【請求項23】
ピラン−4−オン及びジヒドロピラン−4−オンを還元するための無水金属触媒の使用。
【請求項24】
無水金属触媒が、含水金属触媒を水と共沸する有機溶媒を用いて脱水処理することによって得られる請求の範囲第1項〜第16項のいずれかに記載のテトラヒドロピラン−4−オンの製法。

【国際公開番号】WO2005/061479
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516480(P2005−516480)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018949
【国際出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】