説明

テープ巻重体の製造方法

【課題】テープの品質と巻重体の生産性との双方を確保できるテープ巻重体の製造方法を提供する。
【解決手段】このテープ巻重体の製造方法では、基材フィルム2上に樹脂層3を備えたフィルム1を連続的に繰り出しながら切断刃13で切断して形成したテープ4をリール22で巻き取るテープ巻重体の製造方法であって、リール22の片側又は両側を保持治具31によって保持しながらテープ4を巻き取る。これにより、巻取速度を低下させなくともリール22の回転時の横ぶれが抑えられ、切断品質が担保される。したがって、テープ4の品質と巻重体Mの生産性との双方を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープをリールに巻き付けてなる巻重体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体装置の製造に用いるテープとして、基材上に樹脂層を備えたテープがある。このようなテープは、幅広の基材フィルム上に樹脂層を塗布・乾燥することによってフィルムを形成した後、繰出装置から連続的に繰り出されるフィルムを切断装置(例えば特許文献1参照)を用いてテープ状に切断し、これを巻取装置(例えば特許文献2参照)でリールに巻き付けることによって巻重体とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−326284号公報
【特許文献2】特開2003−048020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような切断装置と巻取装置とを組み合わせて、切断したテープを巻取装置で直接巻き取る場合、巻取装置にセットしたリールの回転時の横ぶれが切断品質を低下させ、結果としてテープの品質に悪影響を与えることがあった。また、リールの回転時の横ぶれを抑えようとして巻取速度を低下させると、巻重体の生産性が低下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、テープの品質と巻重体の生産性との双方を確保できるテープ巻重体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係るテープ巻重体の製造方法は、基材フィルム上に樹脂層を備えたフィルムを連続的に繰り出しながら切断刃で切断して形成したテープをリールで巻き取るテープ巻重体の製造方法であって、リールの片側又は両側を保持手段によって保持しながらテープを巻き取ることを特徴としている。
【0007】
このテープ巻重体の製造方法では、リールの片側又は両側を保持手段によって保持しながらテープの巻き取りを行っている。これにより、巻取速度を低下させなくともリールの回転時の横ぶれが抑えられ、切断品質が担保される。したがって、このテープ巻重体の製造方法では、テープの品質と巻重体の生産性との双方を確保できる。
【0008】
また、リールの回転に追従して回転する樹脂製又は金属製のローラを保持手段として用いることが好ましい。この場合、ローラによってリールをしっかりと保持できる。したがって、リールの回転時の横ぶれを効果的に抑えることができる。
【0009】
リールに向けて噴き出す空気又は不活性ガスの圧力を保持手段として用いることが好ましい。この場合、空気又は不活性ガスの圧力によってリールを非接触で保持できる。これにより、リールの磨耗などに起因する発塵の問題を回避できる。
【0010】
また、基材フィルムを切断刃により複数本のテープに切断し、各テープを複数のリールで巻き取ることが好ましい。これにより、巻重体の生産性を高められる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るテープ巻重体の製造方法によれば、テープの品質と巻重体の生産性との双方を確保できる
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るテープ巻重体の製造方法に用いるフィルムの一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係るテープの巻重体の製造方法の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図3】巻取装置の要部の構成を示す斜視図である。
【図4】変形例に係る巻取装置の要部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るテープ巻重体の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
まず、図1に示すように、幅広の基材フィルム2上に樹脂層3を塗布・乾燥することによってフィルム1を作製する。フィルム1の幅は、例えば30cm〜100cm程度である。基材フィルム2の形成材料には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム系、液晶ポリマー等を使用することが可能である。また、基材フィルム2は、樹脂層3の形成面側に離型処理が施されたものであってもよい。
【0015】
また、樹脂層3の材料には、例えばエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂を使用することができる。また、樹脂層3には、金属微粒子やフィラー、着色剤等が充填されていてもよい。
【0016】
次に、図2に示すように、作製したフィルム1をロール状にして繰出装置11にセットし、繰出装置11から巻取装置12に向けて所定の速度で連続的にフィルム1を繰り出す。また、繰出装置11と巻取装置12との間には、複数の切断刃13がフィルム1の幅方向に配列されている。切断刃13により、フィルム1は複数のテープ4に分割される。分割されたテープ4は、巻取装置12によって巻き取られ、テープ4の巻重体Mが形成される。なお、切断幅は、例えば0.5mm〜5mmであり、0.7mm〜3mmであることが好ましく、0.8mm〜1.5mmであることが更に好ましい。
【0017】
切断刃13は、フィルム1を切断できるものであれば特に制限されないが、例えばスコアカット方式の切断刃やシヤーカット方式の切断刃を用いることができる。スコアカット方式は、外周に丸刃をもつ刃付の上ロールと円柱形の下ロールとを配置し、フィルムを挟んだ両ロールを回転させることによってフィルムを押し切る方式である。シヤーカット方式は、外周を僅かに交差させた2枚の丸刃の間にフィルムを通してせん断する方式である。
【0018】
また、図3は、巻取装置12の要部の構成を示す図である。同図に示すように、巻取装置12は、回転軸21に固定された複数のリール22を備えている。各リール22は、テープ4が巻き付けられる巻芯(不図示)と、巻芯の両側に設けられた一対の側板23,23とを有している。側板23,23間の距離は、テープ4の幅に対して数mm程度広くなっていることが好ましい。これにより、テープ4の巻き崩れを防止しながら巻き付け精度を確保できる。
【0019】
また、リール22の上下には、サポートフレーム24がそれぞれ配置されている。サポートフレーム24には、リール22を保持するための複数の保持治具31が固定されている。保持治具31の先端部分には、リール22における側板23の周縁部に当接し、リール22の回転に追従して回転する樹脂製又は金属製のローラ32が設けられている。保持治具31は、1つのリール22に対して上下に2本ずつ計4本設けられており、リール22の側板23は、ローラ32によって両側から挟まれた状態で上下で保持されている。
【0020】
ローラ32を樹脂によって形成する場合には、滑り性・耐磨耗性・機械的強度に優れ、有機溶剤等で洗浄が可能なMCナイロン(登録商標)やPTFEなどを用いることが好ましい。また、ローラ32を金属によって形成する場合には防錆の観点からステンレス材を用いることが好ましい。なお、保持治具31は、回転軸21に対するリール22の取付位置に合わせて任意に位置を変えられるようにサポートフレーム24に対して位置決め自在であることが好ましい。
【0021】
以上説明したように、このテープ巻重体の製造方法では、リール22の両側を保持治具31によって保持しながらテープ4の巻き取りを行っている。これにより、巻取速度を低下させなくともリール22の回転時の横ぶれが抑えられ、切断品質が担保される。
【0022】
本実施形態では、リール22の回転に追従して回転する樹脂製又は金属製のローラ32を保持手段として用いているので、ローラ32によってリール22をしっかりと保持できる。したがって、リール22の回転時の横ぶれを効果的に抑えることができ、横ぶれを抑えた複数のリール22で複数本のテープ4を巻き取ることで、テープ4の品質と巻重体Mの生産性との双方を確保できる。
【0023】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した実施形態では、リール22を保持する保持手段としてローラ32を備えた保持治具31を用いているが、図4に示すように、空気又は不活性ガスを噴き出すノズル41をリール22の両側にそれぞれ対向配置し、ノズル41から噴き出す空気又は不活性ガスの圧力を非接触の保持手段として用いることもできる。この場合、上記実施形態と同様の作用効果が得られると共に、リール22の磨耗などに起因する発塵の問題を回避できる。
【0024】
なお、空気又は不活性ガスの供給源には、任意の圧力に調整可能な圧縮気体を用いることが好ましい。また、巻重体Mへの水分や油分の付着及び塵埃の混入を避けるため、オイルセパレータ、エアドライヤー、集塵フィルタなどを介して空気又は不活性ガスを噴き出させることが好ましい。保持手段によるリール22の保持点の数は1点でもよいが、上記実施形態のように2点であることが好ましく、3点であることがより好ましい。また、上記実施形態ではリール22の両側を保持しているが、片側のみを保持する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…フィルム、2…基材フィルム、3…樹脂層、4…テープ、13…切断刃、22…リール、31…保持治具、32…ローラ、41…ノズル、M…巻重体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に樹脂層を備えたフィルムを連続的に繰り出しながら切断刃で切断して形成したテープをリールで巻き取るテープ巻重体の製造方法であって、
前記リールの片側又は両側を保持手段によって保持しながら前記テープを巻き取ることを特徴とするテープ巻重体の製造方法。
【請求項2】
前記リールの回転に追従して回転する樹脂製又は金属製のローラを前記保持手段として用いることを特徴とする請求項1記載のテープ巻重体の製造方法。
【請求項3】
前記リールに向けて噴き出す空気又は不活性ガスの圧力を前記保持手段として用いることを特徴とする請求項1記載のテープ巻重体の製造方法。
【請求項4】
前記基材フィルムを前記切断刃により複数本のテープに切断し、各テープを複数のリールで巻き取ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のテープ巻重体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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