説明

ディスク装置

【課題】上カバーの軽量化を図るとともに、剛性の低下を防止する。
【解決手段】ディスク装置2は、ディスク4が装着されるトレイユニット5が、ケース9から出し入れ可能に設けられている。トレイユニット5を、ケース9内部に収納すると、ディスク4は、ディスク装填方向Aに移動して記録/再生位置にセットされる。ケース9は、薄板金属製のケース本体7及び上カバー8から構成される。上カバー8には、凹凸部41が形成されている。凹凸部41は、ディスク装填方向Aと直交するB方向で、ケース本体7に支持された両端付近まで延びているから、上カバー8の軽量化を図るとともに、剛性低下を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられるディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置は、ターンテーブルに装着されたディスクを回転させながら、ピックアップヘッドを移動して、ディスクにデータを高密度で記録したり、あるいはディスクのデータを読み出して再生する。このディスク装置は、電子機器、例えばパソコン本体等に内蔵されたり、あるいは外付けされて用いられる。
【0003】
ディスク装置は、ケース前面に設けられたスロットからディスクを装填するスロットインタイプや、ディスクトレイを介してディスクを装填するトレイタイプがある。スロットインタイプのディスク装置では、ケース内部にディスク記録/再生部が収納され、ケース前面のスロットからディスクを挿入する。トレイタイプのディスク装置では、ディスクトレイにディスク記録/再生部が搭載されている。ディスクトレイは、ケース内部に収納される収納位置と、ケースから引き出された引出し位置との間で移動可能であり、引出位置に位置するディスクトレイにディスクを載せた後、ディスクトレイを収納位置に移動する。スロットインタイプ及びトレイタイプのいずれのディスク装置でも、ケースは、ディスク記録/再生部を収納するケース本体と、このケース本体の上に取り付けられる上カバーとから構成される。
【0004】
ノートパソコンは、全体の軽量化を図るために、内蔵タイプのディスク装置の軽量化が求められている。同様に、外付けタイプのディスク装置も、携帯されるものであるから、軽量化が求められている。ディスク装置の軽量化を図るために、上カバーの板厚を薄くすることが考えられる。
【0005】
ディスク回転時には、ディスクと上カバーとの間で発生する負圧により、上カバーがディスクに向かって下方向に引っ張られる。上カバーの板厚を薄くすると、剛性が低くなるため、上記負圧により撓んでしまい、ディスクに接触するという問題があった。そこで、特許文献1では、円形の凹凸部を、ディスクの回転軸線を中心とする同心円状に、上カバーに形成し、剛性の低下を抑制しつつ、軽量化を実現するディスク装置が提案されている。
【特許文献1】特開2007−265470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、ディスク回転時に発生する負圧による上カバーの撓みを防止することはできるが、上方から押される力に対する剛性は低いため、外力により押された場合には、上カバーが撓んでしまうことがある。例えば、ノートパソコンでは、ディスク装置の上方にキーボード等が配されており、キーボードの操作時には、上カバーが押されるため、上カバーが撓んで、ディスクに接触してしまう。また、内蔵タイプのディスク装置では、グランドを取るために、金属製の板バネを上カバーに押し付けており、この板バネの付勢力により上カバーが撓んで、ディスクに接触することがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、軽量化を図りながらも、剛性の低下を防止することができるディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のディスク装置は、装填されたディスクにデータを記録/再生するディスク記録/再生部と、前記ディスク記録/再生部を収納するケース本体と、前記ケース本体を覆うように配置され、周辺部が前記ケース本体に固定された上カバーと、前記上カバーに形成され、前記ディスクの装填方向と直交する方向に延びた複数の凹凸部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、前記凹凸部は、プレス加工によって形成されることが好ましい。さらに、前記凹凸部は、前記周辺部の近くまで延びていることが好ましい。
【0010】
また、前記ディスク記録/再生部は、前記ディスクを保持するチャッキングヘッドを備え、前記上カバーには、前記チャッキングヘッドに接触しないようにするためのヘッド逃げ孔が形成され、前記凹凸部は、少なくとも前記上カバーの前側端部から前記ヘッド逃げ孔まで形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ディスクの装填方向と直交する方向に延びる複数の凹凸部を、上カバーに設けたから、上カバーの板厚を従来よりも薄くして軽量化した場合にも、上方から押される力に対する剛性を、従来と同程度にすることができる。これにより、軽量化を図りながらも、上カバーの剛性低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1において、ノート型パソコン3は、ディスク装置2がパソコン本体3aに組み込まれている。このディスク装置2の上方には、キーボード3bが設けられている。ディスク装置2は、ディスク4が装着されるトレイユニット5と、イジェクトボタン6aが設けられたフロントカバー6と、トレイユニット5を出し入れ可能にするケース9(図3参照)とを備える。このケース9は、金属の薄板で作られたケース本体7及び上カバー8(図3参照)から構成されている。
【0013】
図2に示すように、ケース本体7の両側には、左スライドレール11と右スライドレール12とが、スライド自在に取り付けられている。トレイユニット5は、各スライドレール11,12に対して移動自在に支持されており、ケース9内部に収納される収納位置(図3参照)と、ケース9から引き出された引出位置(図2参照)との間で移動する。トレイユニット5を、引出位置から収納位置に移動すると、ディスク4はディスク装填方向Aに移動され、記録/再生位置にセットされる。
【0014】
ケース本体7には、イジェクトバネ15が設けられ、トレイユニット5を収納位置でロックすると、イジェクトバネ15がチャージされた状態となる。
【0015】
トレイユニット5は、ディスク4が載せられるディスクトレイ17と、ピックアップヘッド18と、ディスク4を保持して回転するディスク駆動部19とを備える。ピックアップヘッド18は、ディスク4の半径方向に移動自在に設けられている。ピックアップヘッド18は、ディスク駆動部19により回転されるディスク4にデータを記録/再生する。本実施形態では、ディスク記録/再生部は、ピックアップヘッド18とディスク駆動部19とから構成される。
【0016】
ディスク駆動部19には、ディスク4を回転させるスピンドルモータ21(図5参照)が設けられており、スピンドルモータ21の駆動軸には、ターンテーブル22が固定されている。このターンテーブル22には、チャッキングヘッド23が一体に形成されている。ディスク4をディスクトレイ17に載せてから押し込むと、ディスク4のディスク孔4a(図1参照)がチャッキングヘッド23に係合され、ディスク4が保持される。チャッキングヘッド23には、バネで付勢された複数のチャッキング爪23aが設けられている。このチャッキング爪23aにより、ディスク4は着脱可能に係止される。ターンテーブル22の上面には、ディスク4の滑り止めとしてのリング状の滑り止めシート25(図5参照)が貼り付けられている。
【0017】
ディスクトレイ17には、ピックアップヘッド18及びスピンドルモータ21を駆動する駆動基板(図示せず)が設けられており、この駆動基板は、フレキシブル基板26により制御基板27に接続されている。
【0018】
次に、図2〜図5を参照して、ケース9について説明する。このケース9は、前述したように、ディスク4及びトレイユニット5を出し入れ自在に収納するケース本体7と、このケース本体7の上面を覆う上カバー8とから構成されている。ケース本体7及び上カバー8は、鉄、アルミ等の薄い金属板を板金加工することで作製される。本実施形態では、ケース本体7は0.5mmのアルミ板が用いられ、上カバー8は0.25mmのアルミ板が用いられている。
【0019】
ケース本体7は、トレイユニット収納部31と、このトレイユニット収納部31の横に位置するディスク収納部32とを備えている。このディスク収納部32は、不要なスペースをなくすために、トレイユニット収納部31よりも底が上がっている。
【0020】
トレイユニット収納部31は、四角形をした底部31dを囲むように、左側壁31aと、後端壁31bと、右側壁31cとが形成されている。トレイユニット収納部31の前側は開口しており、トレイユニット5の出し入れを可能にしている。左側壁31aは、上カバー8を支持するために直角に折り曲げられて、断面がL字形をしている。右側壁31cは、後端部だけが高く、残り部分は高さが低く、そのままディスク収納部32の底部32aに連なっている。右側壁31cの後端部の一部であって、後端壁31bとの角に位置する部分は、上カバー8を支持するために直角に折り曲げられている。なお、トレイユニット収納部31内には、仕切板(図示せず)等が取り付けられており、これらがリブの機能を果たすため、ケース本体7は剛性が高い。
【0021】
ディスク収納部32は、底部32aと、この底部32aから垂直に起立した側壁32bとから構成されている。側壁32bは、ディスク収納部32の前側の全部と、後側の一部とが切り欠かれている。また、側壁32bの一部は、上カバー8を支持するために折り曲げられている。
【0022】
トレイユニット収納部31の折り曲げ部と、ディスク収納部32の折り曲げ部には、4本のビス34a〜34dがそれぞれ螺合するネジ孔33a〜33dが形成されている。上カバー8は、これらの折り曲げ部に重ねられ、ビス34a〜34dでケース本体7に固定される。
【0023】
上カバー8は、ケース本体7のトレイユニット収納部31とディスク収納部32とを覆う形状をしている。上カバー8のほぼ中央には、ヘッド逃げ孔36が形成されている。このヘッド逃げ孔36は、ディスク4の回転中に、チャッキングヘッド23が僅かに浮き上がった場合でも、チャッキングヘッド23が接触しないようにする。
【0024】
また、上カバー8は、前側を除いた周囲が下方に折り曲げられており、上カバー8をケース本体7に取り付けたときに、ケース本体7の左側壁31a、後端壁31b、及び右側壁31cの外側に重なる。さらに、上カバー8の前端は上に折り返した折り返し部37が形成され、この折り返し部37によって前端の剛性を高めている。なお、符号38a〜38dは、ビス34a〜34dを通すためのビス孔である。
【0025】
上カバー8には、ヘッド逃げ孔36と周辺部とを除いて、蛇腹状に折り曲げた凹凸部41が形成されている。この凹凸部41は、その谷及び山が、ディスク装填方向Aと直交するB方向で、ケース本体7に支持された両端付近まで延びているから、B方向での剛性が高まる。この凹凸部41は、周囲を下方に折り曲げる前または後に、プレス加工によって形成される。
【0026】
上カバー8として厚みが0.25mmのアルミ板を使用し、プレス加工によって凹凸部41を形成した。この凹凸部41は、谷と谷の間隔、及び山と山の間隔であるピッチPを2mmとし、山(上面頂部)と谷(下面頂部)との距離Tを0.45mmとした。従来では、厚みが0.45mmの平らなアルミ板が使用されているが、この場合の剛性と同程度の剛性が得られた。したがって、上カバー8の厚みを薄くして40%程度軽量化しても、剛性の低下を抑制することができる。
【0027】
次に、ディスク装置2の作用について説明する。ディスク4を装填するとき及び取り出すときには、トレイユニット5を引出位置まで移動して行う。チャッキングヘッド23にディスク4を装着してから、フロントカバー6を押圧すると、ディスク4は、ディスク装填方向Aに移動して記録/再生位置にセットされ、そこで、トレイユニット5はケース9内に収納された状態でロックされる。ディスク4の回転中に、ピックアップヘッド18は、ディスク4の半径方向に移動しながら、ディスク4にデータを記録/再生する。
【0028】
トレイユニット5を引出位置に引き出すときには、フロントカバー6に設けられたイジェクトボタン6aを押す。イジェクトボタン6aを押すと、トレイユニット5は、ロックが解除されてから、イジェクトバネ15の付勢により10mm程度突出する。次に、フロントカバー6を指でつまんで図1及び図2に示す引出位置まで引き出す。
【0029】
ディスク装置2の上方には、パソコン本体3aのキーボード3bが設けられており、キーボード3bを操作すると、上カバー8が上から押されるが、上カバー8が撓むことがない。
【0030】
また、図6に示すように、上カバー50に、コ字形に直角に折り曲げた凹凸部51を形成してもよい。
【0031】
なお、上記実施形態では、凹凸部を、上カバーの前側端部から後側端部まで形成したが、上カバーは、前側端部からヘッド逃げ孔までの範囲が最も剛性が低くなるため、凹凸部は、少なくとも前側端部からヘッド逃げ孔まで形成されていればよい。
【0032】
また、上カバーに凹凸部を形成した後、この凹凸部をプレス加工して平坦にした場合でも、加工硬化によって剛性を高めることができる。
【0033】
さらに、上記実施形態では、ノートパソコンに内蔵するトレイタイプのディスク装置について説明したが、スロットインタイプのディスク装置や、外付けタイプのディスク装置にも、本発明を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のディスク装置を備えたノート型パソコンの外観図である。
【図2】上カバーを取り外した状態でトレイユニットを引き出したときのディスク装置を示す斜視図である。
【図3】上カバーを取り外した状態でトレイユニットが収納位置にあるときのディスク装置を示す斜視図である。
【図4】トレイユニットが収納位置にあるときのディスク装置を示す斜視図である。
【図5】ディスク装置を示す側面断面図である。
【図6】コ字形の凹凸部を形成した実施形態のディスク装置を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0035】
2 ディスク装置
4 ディスク
5 トレイユニット
7 ケース本体
8,50 上カバー
18 ピックアップヘッド
19 ディスク駆動部
23 チャッキングヘッド23
41,51 凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装填されたディスクにデータを記録/再生するディスク記録/再生部と、
前記ディスク記録/再生部を収納するケース本体と、
前記ケース本体を覆うように配置され、周辺部が前記ケース本体に固定された上カバーと、
前記上カバーに形成され、前記ディスクの装填方向と直交する方向に延びた複数の凹凸部と、を備えたことを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記凹凸部は、プレス加工によって形成されることを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項3】
前記凹凸部は、前記周辺部の近くまで延びていることを特徴とする請求項2記載のディスク装置
【請求項4】
前記ディスク記録/再生部は、前記ディスクを保持するチャッキングヘッドを備え、
前記上カバーには、前記チャッキングヘッドに接触しないようにするためのヘッド逃げ孔が形成され、
前記凹凸部は、少なくとも前記上カバーの前側端部から前記ヘッド逃げ孔まで形成されていることを特徴とする請求項2または3記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−55701(P2010−55701A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221003(P2008−221003)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)