説明

デイーゼルパテイキユレートフイルタ

【目的】 圧力損失が低く、かつ捕集効率の高いディーゼルエンジン用パティキュレートフィルタを提供する。
【構成】 水銀圧入法によって測定される気孔径の平均値m1 が1μmから15μmの範囲内で、かつその気孔径を常用対数で表した場合の気孔径分布における標準偏差の値SD1 が0.20以下である圧力損失が低く、かつ捕集効率の高いディーゼルエンジン用パティキュレートフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるパティキュレート(黒煙、微粒子及びSOF等)を捕集するためのフィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるパティキュレートは平均粒子径が0.1μm〜0.3μmであって、非常に微細である。従って、この粒子を捕集するフィルタの平均気孔径も小さいことが好ましい。しかしウォールフロー型のモノリスフィルタでは、気孔径が小さくなるとフィルタ内壁を排気ガスが通過する場合の圧力損失が極端に大きくなって、エンジンを停止させてしまうという虞れがある。
【0003】また、一般に使用されているコージエライト製のハニカムフィルタでは、圧力損失を低くするために造孔剤が添加され、これによりフィルタ内に20μm〜100μm程度の大きな気孔を形成している。しかし、このように大きな気孔が混在するフィルタでは、パティキュレートの捕集に適した大きさの気孔の数は、相対的に少なくなってしまう。従って、パティキュレートの捕集効率の低下が避けられない。
【0004】本発明は上記の事情を考慮し、かつ限られた狭い範囲内に気孔径が分布すれば捕集効率が向上するという知見に基づいてなされたものであって、その目的は、圧力損失が低く、かつ捕集効率の高いディーゼルパティキュレートフィルタを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用】前記課題を解決するために、本発明は水銀圧入法によって測定された気孔径の平均値が1μm〜15μmの範囲内にあり、その気孔径を常用対数で表した場合の気孔径分布における標準偏差の値が0.20以下であることとした。
【0006】この程度の気孔径は、微細なパティキュレートの捕集に好適な大きさであることが知られており、従って、平均気孔径を上記範囲内に設定することで、パティキュレートを確実に捕集することができる。気孔径の平均値が1μm未満であると、内壁を排気ガスが通過する際の圧力損失が極端に大きくなり、エンジンの停止を引き起こしかねない。また、気孔径の平均値が15μmであると、微細なパティキュレートを効率よく捕集することができない。
【0007】また、前記気孔径分布における標準偏差の値が0.20以下の場合、即ち、気孔径が限られた狭い範囲内に分布する場合には、捕集好適範囲にある気孔の数が相対的に多くなる。従って、従来よりも圧力損失が低く、かつ捕集効率を高くすることができる。
【0008】
【実施例】以下に本発明を排気ガス浄化装置に具体化した一実施例について、図1〜図3を参照しながら詳しく説明する。
【0009】図1に示すように、排気ガス浄化装置1は金属パイプ製のケーシング2を備え、そのケーシング2の通路2aがディーゼルエンジンEの排気管路Eaに接続されている。このケーシング2内にはディーゼルエンジンEから放出される排気ガスを浄化するためのディーゼルパティキュレートフィルタ3が配設されている。また、排気管路Ea内には再生処理用のバーナー4が装着されている。
【0010】図2に示すように、このフィルタ3は、例えば炭化珪素焼結体等の多孔質焼結体によってハニカム状に形成され、全体として円柱状(本実施例では長さ150mm、外径140mm)を呈している。このフィルタ3の軸線方向には複数の中空部5a,5bが形成されており、各中空部5a,5bはフィルタ3の両端部にて開口している。各中空部5a,5bの排気ガス流入側及び流出側の何れかの端部開口は、多孔質焼結体からなる厚さ5mmの封止片6によって閉塞される。この封止片6の閉塞によって、流入側に開口するセル7aと流出側に開口するセル7bとが形成されている。各セル7a,7bは内壁8(本実施例では壁厚0.43μm)を介して互いに隣接しており、内壁8の外面には白金族元素やその他の金属元素及びその酸化物等からなる酸化触媒が担持されている。尚、本実施例のフィルタ3では、両端面におけるセル密度が、それぞれ170個/平方インチに設定されている。
【0011】また、図3のグラフにおいて曲線C1 で示すように、本実施例のフィルタ3は水銀圧入法によって測定された気孔径の平均値m1 が7μmであり、かつその気孔径を常用対数で表した場合の気孔径分布における標準偏差の値SD1 が0.12となるように製造される。
【0012】このようなフィルタ3を製造するための原料としては、例えば、平均粒子径が11μmのα型炭化珪素粉末20重量部に、平均粒子径が0.3μmのβ型炭化珪素粉末80重量部、バインダーとしてのメチルセルロース6重量部、潤滑剤1重量部及び水20重量部を配合したものが用いられる。この配合物は混練された後、押し出し成形によってハニカム状に成形される。そして、この成形物を乾燥・脱脂した後、窒素雰囲気下にて1700℃、4時間にわたって仮焼成する。その後、前記中空部5a,5bを封止する。更に窒素雰囲気下にて2000℃、4時間の本焼成を経て所望のフィルタ3が製造される。
【0013】次に、上記のように構成されたフィルタ3の排気ガス浄化作用及びフィルタ3の再生について説明する。フィルタ3を前記ケーシング2内に配置して、排気ガスを流通させると、排気ガスは先ず流入側の各端部開口を介して各セル7a内に流入すると共に、内壁8を介して流出側に開口する隣接のセル7b側より排出する。排気ガス内のパティキュレートは、排気ガスが内壁8を通過する際にトラップされ、これにより排気ガスの浄化が行われる。また、フィルタ3内のパティキュレート捕集量が一定値に達すると、バーナー4が点火され、フィルタ3の加熱が開始される。そして、フィルタ3に担持された触媒の作用により、フィルタ3内のパティキュレートが燃焼され、フィルタ3が元の状態に再生される。
【0014】以上のように形成された本実施例のフィルタ3の特性を検討するために、パティキュレートの捕集率及び圧力損失についての調査を行った。前者については、フィルタ3の装着前後において、そのフィルタ3を装着位置を通過した排出ガス内に含まれるパティキュレートを濾紙に吸着させ、その濾紙の反射率(%)をJIS−D1101に従い、スモークテスターを用いて光学的に測定した。後者については、フィルタ3装着状態において、フィルタ3の排気ガス流入側と流出側との圧力差(mmHg)を捕集開始60分後に測定した。更に、本実施例に対する比較例として、コージエライト製でありかつ同形状及び同サイズのフィルタを用い、同様の調査を行った。尚、図3において曲線C2 で示されるように、このコージエライト製フィルタでは、水銀圧入法によって測定された気孔径の平均値m2 は14μmであり、かつその気孔径を常用対数で表した場合の気孔径分布における標準偏差の値SD2 は0.40であった。これらのフィルタについての調査結果を表1に示す。
【0015】
【表1】


【0016】この表1から明らかなように、ケーシング2内にフィルタを装着することなく、排気ガス中のパティキュレートが全て排出される状態にて測定された濾紙の反射率は、何れも40%であった。次に、各フィルタを装着した状態における反射率は、実施例では0%であったのに対して、比較例では10%であった。この結果から明らかなように、実施例のフィルタによればパティキュレートを完全に除去することが可能であり、比較例のフィルタより捕集能力が優れていることが判明した。
【0017】また、各フィルタの排気ガス流入側と流出側との圧力差については、実施例では60mmHgと低い値であったのに対して、比較例では120mmHgと2倍の値を示した。このように比較例より圧力損失が小さいという点においても、本実施例のフィルタ3の優秀性が示された。
【0018】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のディーゼルパティキュレートフィルタによれば、圧力損失が低く、かつ捕集効率を向上させることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明を具体化した一実施例におけるディーゼルパティキュレートフィルタの装着状態を示す部分正断面図である。
【図2】 図1のディーゼルパティキュレートフィルタの部分拡大断面図である。
【図3】 実施例及び比較例のフィルタの気孔径分布状態を示すグラフである。
【符号の説明】
1 水銀圧入法によって測定された気孔径の平均値、SD1 気孔径を常用対数で表した場合の気孔径分布における標準偏差の値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 水銀圧入法によって測定された気孔径の平均値(m1 )が1μm〜15μmの範囲内にあり、その気孔径を常用対数で表した場合の気孔径分布における標準偏差の値(SD1 )が0.20以下であることを特徴とするディーゼルパティキュレートフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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