説明

デジタル画像転写ベルトおよび作成方法

制御された伝導率をベルトにもたらすように伝導性高分子層を充填された穿孔をその中に有する基底膜層を含む、デジタル印刷用途に使用する画像転写ベルトが提供される。ベルトは、伝導性高分子層上に可撓層をさらに含む。得られたベルトは、デジタル画像転写に適する電気的特性を示す。これらの特性は、所望の用途により変化する可能性がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像転写ベルト、およびデジタル印刷用途のために使用する、そうしたベルトを作成する方法に関し、具体的には、制御された伝導率をベルトにもたらすように伝導性高分子を充填された穿孔をその中に有する基底膜層を含む画像転写ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル画像システムは、文字列およびグラフィック画像を印刷するのに乾燥トナーまたは液体トナーが使用される、電子写真法および電位記録法の分野で広く使用される。例えば、潜像を形成するデジタル式アドレス型書込ヘッドを使用するシステムは、レーザ、発光ダイオード、および電子ビームプリンタを含む。複写機は、潜像を形成する光学的手段を使用する。潜像がどのように形成されるかにかかわらず、画像はインクを付けられ(または調色され)、転写され、次いで紙または高分子基材に定着される。
【0003】
デジタル画像システムは、通常、潜像記録、中間画像転写(トナー画像のベルトへの転写、およびそれに続く基材への転写)、トナーの転写熱定着(熱定着していない画像のベルト上への転写および続く熱定着)、接触熱定着、または紙、透明シートなどの画像形成基材の静電転写および/もしくは摩擦転写に利用される、画像転写ベルト(ITB)などの構成要素を含む。
【0004】
画像転写ベルトは、画像形成または基材転写プロセスにおいて重要な役割を果たすので、厳格な基準を満たすように設計される必要がある。例えば、ベルトは、継目が画像転写を妨げないように、可撓性があり、継目がないか、または細かい継目がある必要がある。それに加えて、デジタル印刷産業は、良質の画質を達成するのに、制御された電気伝導率および高い表面平坦度を有する画像転写ベルトも要求する。ほとんどの印刷用途は、伝導性がベルト表面に垂直な次元およびベルト表面に沿った次元のどちらにおいても制御されることを要求する。
【0005】
使用する通常の画像転写ベルトは、高分子中に分散するカーボンブラックなどの電気伝導性材料を含むポリイミド膜を含む。そうしたポリイミド膜は、単一のベルト層を含むことができるか、または可撓性のゴム表面層および/もしくは剥離被覆用の荷重支持基底層として使用することができる。しかし、画像転写ベルトにおいてポリイミド膜を使用する欠点は、ポリイミド膜を継目がないループ状に作成するにせよ、巻取部材として購入し、接合プロセスを通してループに変えるにせよ、作成するのに費用がかかることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、制御された伝導率を示し、作成するのに経済的な画像転写ベルトの必要性が残る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、所望の電気伝導率をベルトにもたらすのに、伝導性高分子を充填された多数の孔をもたらすように穿孔膜または微小穿孔膜を含む基底層を利用する画像転写ベルトをもたらすことにより、それらの必要性を満たす。ベルトは、作成する費用が低く、伝導性ポリイミド膜を利用する従来のベルトと同等の電気抵抗率(伝導率)を示す。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの多孔質膜を含み、第1および第2の表面を有し、その中に複数の孔を含む、基底層を含む、デジタル印刷機用途のための画像転写ベルトが提供される。孔の少なくとも一部分は、基底層の厚さ全体を貫通して延びる。基底層の第1の表面上の伝導性高分子層は、孔を少なくとも部分的に充填する。伝導性高分子層上に、可撓層が形成される。
【0009】
一実施形態では、伝導性高分子層は、基底層の第1の表面上に連続する層を形成する。別の実施形態では、伝導性高分子層は、基底層の第2の表面上に連続する層を形成する。「上に(on)」により、中間層を含まないで隣接する層に直接隣接することを意味する。「上に(over)」により、一方の層の主表面の少なくとも一部分が、他方の層の主表面の一部分に直接または間接的に接触していることを意味する。
【0010】
基底層は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンイミン、ナイロン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート、およびポリエーテルイミド(PEI)から選択されるのが好ましい。基底層は、複数の膜層を含むことができ、約0.025〜約0.130mm(約0.001〜約0.005インチ)の間の厚さを有するのが好ましい。
【0011】
基底層中の孔は、穿孔および微小穿孔を含み、約85〜約200孔/cmの間の孔密度および約10〜約200ミクロンの孔径を有するのが好ましい。
一実施形態では、伝導性高分子層は、エラストマまたは熱可塑性高分子を含む。伝導性高分子層は、任意選択肢として、その中に伝導性添加物を含む。別の実施形態では、伝導性高分子は、本質的に伝導性がある材料を含むことができる。
【0012】
可撓層は、本質的に伝導性がある材料を含むこともできる。可撓層は、その中に電気伝導性添加物を含むこともできる。可撓層は、0.08〜0.64mm(約0.003〜約0.025インチ)の厚さを有するのが好ましい。
【0013】
伝導層または可撓層は、シリコーン、ゴム、ポリウレタン、フルオロシリコーン、フッ化炭素、EPDM、エチレンプロピレン共重合体、エラストマ、およびそれらの混合物から選択するのが好ましい。
【0014】
本発明の一実施形態では、剥離層は、トナーまたはインク画像の効率的な転写および剥離のために制御された表面特性をもたらすように、可撓層上に含まれる。剥離層は、フッ素重合体樹脂を含むのが好ましい。
【0015】
画像転写ベルトを作成する方法において、第1および第2の表面を有する少なくとも1つの膜を含む基底層が提供される。基底層は、その中に複数の孔をもたらすように穿孔され、複数の孔の少なくとも一部分は、その中を貫通して延びる。伝導性高分子層は、基底層の第1の表面上に設けられ、孔を少なくとも部分的に満たし、伝導層上に可撓層が設けられる。
【0016】
本方法は、可撓層上に剥離層を設けるステップをさらに含むのが好ましい。画像転写ベルトは、継目がないように、すなわち連続するループ状でもたらされるように作成することができる。
【0017】
得られたデジタル画像転写ベルトは、約1×10〜約1×1011オーム・cmの間の体積抵抗率を有するのが好ましい。多孔質基底膜、基底層の孔を充填する伝導性高分子、および可撓層を含むベルトをもたらすことにより、ベルトは、特定の用途の特定の電気的要求に関して特別作成する必要がある高価格のポリイミド膜の使用を必要とすることなく、特定の用途/印刷機の電気的要求に合わせる能力を提供する。
【0018】
したがって、本発明の特徴は、作成する費用が低く、制御可能な電気伝導特性を示す画像転写ベルトを提供することを含む。本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】回転ローラ上に取り付けられた画像転写ベルトの一実施形態の斜視図である。
【図2】画像転写ベルトの一実施形態の斜視図である。
【図3】画像転写ベルトの一実施形態による、図2の線3−3に沿った断面図である。
【図4】画像転写ベルト内で使用する穿孔された基底層の一実施形態の斜視図である。
【図5】画像転写ベルトの別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の画像転写ベルトの実施形態は、ポリイミド膜から構成された従来の画像転写ベルトに勝るいくつかの利点を提供する。伝導性高分子を充填された多孔質膜基底層の使用は、ポリイミド膜の使用よりも費用がかからず、しかし、ポリイミド膜から構成されたベルトと同等の電気抵抗率特性または電気伝導特性を提供する。それに加えて、ベルトの構造は、特定の画像形成用途のための電気的要求を満たすように、ベルトの電気的特性を容易に調整することができる。ベルトは、継目がない形態で、または連続するベルトを形成するのに個々のベルトが切断され、接合される巻取部材として作成することができる。例えば、ベルトが主軸上に構築され、その上に基底層膜および伝導性高分子を施すことができるか、または、例えば連続する鋼製バンドもしくは連続する膜ループを含む巻取担体を使用することができる。
【0021】
ここで、図1および2を参照して、継目がない均一平面構造を有する、本発明により作成されるベルトが示される。ベルト10は、第1の端部50および第2の端部52を有することができる。図1に示される実施形態では、ベルト10は、中間画像転写用に使用することができる。他の用途では、ベルトは、図1に示される記録ドラム26などの記録ドラム上で使用することができる。図1に示されるように、コンピュータ32は、書込ヘッド60(例えばレーザまたはLEDなど)を介する潜像24の記録ドラム26上への形成を制御することができる。潜像は、トナーカートリッジ28から乾燥トナーを静電気的に引き付け、調色された熱定着していない(unfused)画像40を形成する。次いで、この画像は、中間画像42の形態でベルト10に転写することができる。ベルトは、中間画像を転写熱定着用ピット(nip)30中に進めるローラ34、36、および38により駆動することができ、転写熱定着用ピット30で熱および圧力が加えられ、熱定着用(fusing)ローラ44およびベルト10により同期させて摩擦で進めることができる基材52上にトナー画像を同時に転写および熱定着させ、最終的な熱定着画像46を形成する。潜像24、熱定着していない画像40、中間画像42、および熱定着画像46が、画像形成に関わるステップの順序をより十分に説明するように示されることを理解されたい。例えば、実際のプロセスでは、画像46の基材52上への転写および熱定着は、実際にはピット30で起こる。上述のプロセスは、液体トナーを使用する場合にも適応させることができる。さらに、ベルト10は、ローラ34および38がベルト10に作用する電界および調色画像をもたらし、画像の転写を起こす、図1に示される転写プロセスの別の実施形態に使用することができることを理解されたい。その後、多くのデジタル印刷機械において従来通りに、後続のステップで画像46を基材に熱定着させることができる。
【0022】
ここで、図3〜5を参照して、画像転写ベルト10の実施形態が示される。図3に示されるように、ベルト10は、第1の表面14および第2の表面16を有する基底層12を含む。図3および4に示される実施形態では、基底層12は、穿孔または微小穿孔18の形態の孔を含み、孔の少なくともいくつかは、第1および第2の表面を完全に貫通して延びる。少なくとも25%から100%の孔が、第1および第2の表面を貫通して延びることが好ましい。
【0023】
ベルトは、示される実施形態では穿孔18を充填し、基底層12上に連続する層を形成する、伝導層20をさらに含む。伝導層は、図5に示される第2の表面上に連続する層を形成するように、基底層12の第2の表面16まで孔を貫通することもできる。図示されるように、伝導層は、ベルト用の均一な内側表面20’を形成する。可撓層22は、伝導性高分子層20上にある。
【0024】
基底膜層12は、十分な温度抵抗および電気的安定性を示す、伝導性または非伝導性高分子なら何でも含むことができる。「十分な」温度抵抗および電気的安定性は、用途および印刷機設計動作条件により変化することを理解されたい。例えば、印刷機は、温度および相対湿度の変化に由来する電気的変化を調整する能力が変化する。ベルトは、温度および相対湿度を制御する能力を有しない印刷機に使用されるとき、寸法的な安定性を維持し、印刷機内でベルトを輸送するのに必要な引張荷重の下での引張りに抵抗する十分な強度を保持し、様々な電気的範囲に調整する印刷機の能力を超えても電気抵抗率が変化しない必要がある。実際には、そうした印刷機の引張荷重は、通常25.4mm(1インチ)幅当り約0.91kgf(約2lbf)〜約1.81kgf(約4lbf)の範囲にある。これらの荷重および通常65.6℃(150°F)を超えない温度において、ベルトは、約0.2%を超えて伸びない必要があり、引張力および温度上昇が除去されるとき、ベルトはその元の寸法に戻ることができる必要がある。実際には、電気抵抗率が21.1℃(70°F)における20%RH〜37.8℃(100°F)における80%RHにわたり10倍を超えて変化しないとき、ベルトは、通常、ほとんどの印刷機設計を許容することができる。
【0025】
好ましい実施形態では、基底膜層12は、ポリエステル膜、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ナイロン、ポリカーボネート、またはポリエーテルイミド(PEI)を含む。本発明の実施形態は、通常、ポリイミドを使用しないが、費用がかからない伝導性または非伝導性グレードのポリイミド膜を含むポリイミドを使用することができることを理解されたい。ポリイミド膜は、電気的特性を制御するカーボンブラックなどの添加物を含むことができる。高密度ポリエチレンおよびポリプロピレンなどの他の種類の膜を使用することもできる。
【0026】
厚さ、剛性、および引張強度などの所望のベルト特性を達成するのに、基底膜層12の複数の層を使用することができることを理解されたい。複数の膜層が使用される例では、層は、孔を充填する伝導性高分子により互いに接着されるのが好ましい。膜は、アクリル樹脂などの接着促進剤またはコロナ処理により前処理することもできる。
【0027】
基底膜層は、0.025mm〜約0.013mm(約0.001インチ〜約0.005インチ)の範囲の総厚さを有するのが好ましい。
基底層中の穿孔または微小穿孔18は、ピンローラを使用することなどを含む、高分子膜の穿孔としてよく知られる任意の数の方法により作成することができる。そうしたローラは、それから突き出る金属ピンを含む。他の適当な方法は、限定しないが、加熱ピン、熱風噴射、レーザ、または高圧水噴射を含む。基底層は、ピンローラが使用される貫通を助けるのにゴムパッドなどの背面層に一時的に接着することができる。膜中の穿孔または微小穿孔の間隔は、ベルトの所望の用途により、変化する可能性がある。大多数の穿孔は、好ましくは、膜層(複数可)を完全に貫通するべきであり、規則的に離間し、および/または整列する必要がない。孔密度および孔径平均値が維持される限り、また後続のステップで一方または両方の表面に施される伝導性材料が孔を完全に貫通し、膜の一方の表面から他方の表面まで伝導性径路を形成し、したがって、基底膜層の第1の表面および/または第2の表面の間に電気的導通をもたらす、径路が形成される限り、穿孔は、その配置が不規則であることもできる。孔密度は、約85〜約200孔/cmであり、孔径は、約10〜約200ミクロンの範囲であることが好ましい。
【0028】
穿孔/孔が基底層中にもたらされた後、孔が部分的または完全に湿潤し、伝導性高分子の一部分が、図5に示される基底層の内側表面の少なくとも一部分まで延びるように、伝導層20は、基底層12上に施される。伝導性高分子は、限定しないが、薄い溶媒和高分子層の拡散、非溶媒和プレポリマの薄い層の拡散、圧延シートの積層、流し塗り、吹付塗り、または遠心成形を含む、いくつかの方法により施すことができる。
【0029】
層20の厚さおよび伝導率は、所望の電気伝導率をもたらすように制御することができる。伝導層20の厚さは、少なくとも穿孔膜厚さに等しいことが好ましく、体積抵抗率は、約10〜1011オーム・cmの範囲にあるべきである。好ましい実施形態では、伝導層の厚さは約12ミクロン〜約100ミクロンであり、総厚さ(穿孔膜と包囲/充填用高分子との和)は約25ミクロン〜約150ミクロンであり、体積抵抗率は約5×10〜約5×1010オーム・cmである。
【0030】
ある用途では、伝導層の抵抗率は、印刷性能および印刷品質を最適化するために可撓層の抵抗率と同様にすべきである。他の用途では、ベルトは、様々な伝導率/抵抗率を有する層から構成されるべきである。層の伝導率は、所望の印刷用途により変化する可能性があることを理解されたい。
【0031】
例えば、ある印刷用途では、最も内側のベルト層の表面抵抗率は、ベルト全体の抵抗率とは独立に制御される必要がある。そうした用途では、基底層の伝導率は、限定され、可撓層の伝導率と異なる可能性がある。可撓層の伝導率および厚さは、ベルトの外側表面に均一な電界をもたらすように、基底層の伝導率および厚さ、ならびに基底層中の孔サイズおよび間隔に対して調整されるべきである。1つの好ましい実施形態では、ベルトは、1×1010〜1×1012オーム・cmの体積抵抗率を有する伝導層を充填された1.0×1018オーム・cmの体積抵抗率を有する、穿孔されたポリエステル膜と、1×10〜1×1010オーム・cmの体積抵抗率を有する可撓性ニトリル/エピクロロヒドリン層とを含むことができる。
【0032】
伝導層20は、基底層と同じか、または異なる高分子から構成することができる。通常、伝導層は、エラストマまたは熱可塑性高分子を含む。適当なエラストマは、Exxon Mobilから市販されているVistalon(商標)などのEPDMゴム、InsaのParacrilなどのニトリルゴム、Dow CorningのXiameter(登録商標)などのフルオロシリコーンゴム、DuPontのViton(登録商標)などのフッ化炭素ゴム、LanxessのBuna(登録商標)EPなどのエチレンプロピレンゴム、Dow Corningから市販されているSilastic(登録商標)などのシリコンゴム、およびPolaris PolymersのPFなどのポリウレタンを含む。適当な熱可塑性高分子は、Rohm and Haasから市販されているParaloid(商標)などの熱可塑性アクリル樹脂、Solutiaから市販されているButvarなどの熱可塑性ポリビニルブチラール樹脂、Eastmanから市販されているセルロースアセテートブチレートなどの熱可塑性セルロース樹脂、およびDegussa Evonikから市販されているDynapol(商標)などの熱可塑性ポリエステル樹脂を含む。
【0033】
伝導層は、所望の電気伝導率をもたらすように、その中に伝導性添加物を含むことができる。適当な添加物は、カーボンブラック、または第4級アンモニウム塩、ポリアニリン、ポロピロール、ポリチオフェン、カーボンナノチューブ、銀ナノファイバ、および銀めっき顔料などの他の添加物を含む。そうした添加物は、当技術分野で実施される従来の混合および合成方法により高分子中に取り込むことができる。使用される添加物の量は、特定の用途のための所望の電気伝導率により、変化する可能性があることを理解されたい。
【0034】
あるいは、伝導層20は、高分子、または、例えばエピクロロヒドリン、ポリアニリン、Vulkanol(登録商標)KA(Lanxessから市販されている)などのポリグリコールエーテル、Hercoflex(登録商標)600(Hercules,Inc.から市販されている)などのペンタエリスリトールのエステル、および鉄、銅、もしくはリチウムの塩化物もしくは臭化物などの、本質的に伝導性である、高分子、可塑剤、もしくは塩の混合物を含むことができる。
【0035】
次いで、可撓層22は、伝導層上に被覆または接合される。可撓層は、伝導層20と同じか、または伝導層と異なる材料を含むことができる。通常、接着剤は必要でないが、異質の層を接着するとき、接着剤が隣接する層の1つまたは複数の伝導率を合わせることを可能にする添加物を接着剤がその中に含む限り、接合を助けるのに従来の接着剤を使用することができる。
【0036】
適当な可撓層材料の例は、限定しないが、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリウレタン、シリコーン、フルオロシリコーン、フッ化炭素、EPDM(エチレンプロピレンジエンターポリマ)、EPM(エチレンプロピレン共重合体)、ポリウレタンエラストマ、およびそれらの混合物などのゴムを含む。
【0037】
可撓層は、良質な画像転写をもたらすのに十分に軟質で可撓性があり、電界を含む印刷条件に耐えることができ、良質な画像転写に要求されるレベルで伝導性があるものとすることができる。可撓層は、約30〜80のショアA硬度を有するのが好ましく、40〜60のショアA硬度を有するのがより好ましい。可撓層は、約1×10〜1×1011の体積抵抗率を有するのが好ましい。
【0038】
図5に示されるように、ベルトは、可撓層上に任意の剥離層30をさらに含むことができる。剥離層は、トナーまたはインク画像の効率的な転写および剥離のために制御された表面特性をもたらす。剥離層30は、被覆または成形により施すことができ、フッ素重合体樹脂を含むのが好ましい。適当なフッ素重合体樹脂は、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオルアルコキシ(PFA)、およびフルオロシリコーンなどを含む。それに加えて、旭硝子株式会社のLumiflon(登録商標)L−200およびAsambly Chemicals Co.のSinofon(登録商標)FEVEなどの、イソシアネート、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド架橋剤などの他の高分子と反応することができるヒドロキシル官能性フッ素重合体を使用することができる。それに加えて、UV硬化および存在するエチレン不飽和基の架橋により剥離被覆を作成するのに使用することができる、フッ化アクリル酸材料がある。
【0039】
剥離層にその伝導率を要望通りに調整するのに、例えば、カーボンブラック、金属塩、伝導性高分子、および伝導性可塑剤などの電気伝導性材料を加えることができる。
ベルトを構築した後、どんな溶媒も除去するのに高分子層を乾燥し、ベルトは、熱、触媒、UV光のエネルギー源、または高分子を硬化させる任意の適当な手段により硬化する。
【0040】
得られた画像転写ベルトは、1×10〜1×1011オーム・cmの範囲の体積抵抗率を示す。例えば、1×1013を超える体積抵抗率を有する0.1mm(4ミル)PET基底層、薄い伝導層(約0.013mm(0.05ミル)〜約0.025mm(1ミル)の間)、および約3×10の体積抵抗率を有するゴムを含む0.3mm(12ミル)可撓層を使用するとき、得られたベルトは、約9×1010オーム・cmの体積抵抗率を示す。これらの特性を有するベルトの例は、1×1018オーム・cmの体積抵抗率を有するDuPont Mylar 0.023mm(0.00092インチ)厚さEL/Cポリエチレンテレフタレート基底膜、9×10オーム・cmの体積抵抗率を有するLord Chemlok 233X下塗剤の4〜6ミクロンの伝導層、穿孔膜を充填するのに使用される伝導性充填用ゴム、および3×10オーム・cmの体積抵抗率を有する伝導性添加物を充填されたZeonのNipol(登録商標)などのニトリルゴムに基づく可撓層を含むことができる。
【0041】
画像転写ベルトの抵抗率は、所望の用途により制御し/変化させることができることを理解されたい。例えば、潜像記録、中間画像転写、または熱定着用に使用されるベルトは、設置される印刷機の設計に依存する様々な電気的要求を有する。
【0042】
本発明をより容易に理解することができるように、本発明の実施形態を説明することを目的とする、以下の実施例を参照するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定しない。
【実施例1】
【0043】
ゴムピンローラ(1000ピン/25.4mm平方)(1インチ平方)および0.2mm(0.008インチ)径、ローラ上のテーパ付き金属ピンの貫通による単純な円形の孔から構成された孔を膜を通して形成する)を使用する約0.1mm(4ミル)の厚さを有するポリエチレンテレフタレート(PET)膜の試料に穿孔が作成された。PET膜は、貫通を助ける一時的なゴム背面を設けられた。ピンローラは、約90孔/cmの孔密度が達成されるまで、全表面上を数回回転した。約10〜25ミクロンの開放孔が観測された。回転プロセスに由来する膜からの突起は、媒体粗粒研磨によってサンド処理することにより除去された。次いで、穿孔膜を浄化し、乾燥させた。
【0044】
ブラシにより基底膜層の第1の表面上に、伝導性下塗剤(Chemlok(登録商標)233X、有機溶媒中に溶解するカーボンブラックを含み、Lord Corporation、Cary、NCから市販されている反応性接着剤)が施され、一部の下塗剤は、孔を貫通し、膜の第2の表面の湿潤部分に至った。次いで、下塗剤を乾燥した。
【0045】
ニトリルゴムおよびエピクロロヒドリンゴム(ECO)の混合物を含むゴム製剤は、圧延されて薄いシートになり、下塗剤被覆膜に施された。次いで、この成層は、加熱圧縮機において約149℃(300°F)で加硫され、約0.41mm(0.016インチ)の総サンドイッチ厚さに至った。
【0046】
ベルトの得られた電気的性能は、伝導率が制御されたポリイミド膜を配合された他の市販の製品と同様であった。
結果は、以下の表1に示される。
【0047】
【表1】

市販のポリイミド膜は、体積抵抗率が1×10〜3×1012の範囲にあり、表面抵抗率が6×10〜1×1013の範囲にある。電子写真方式印刷機に使用される伝導性可撓層を含むポリイミド膜から作成された中間画像転写ベルトは、約2×10〜約7×1011の範囲の体積抵抗率および約5×10〜約2×10の範囲の表面抵抗率を示した。
【実施例2】
【0048】
以上の実施例1で説明した穿孔膜が作成された。ニトリルゴムおよび有機溶媒(トルエン)中に溶解したECOの混合物から構成された伝導性ゴムを含むゴム接合剤が、穿孔膜に施され、接合剤の一部が孔を貫通して膜の他の側に至るようにした。実施例1と同じゴム接合剤の可撓層が、ゴム被覆膜に施された。溶媒が蒸発し、ゴムが加硫されたとき、得られたベルト構造は、デジタル中間転写ベルトとして使用するのに適する実施例1の特性と同様の特性を有した。ゴム/膜構造の引張強度は、0.41mm(0.016インチ)の総厚さにおいて2.1kgf/cm(30lbf/inch)であった。
【実施例3】
【0049】
伝導性添加物(Cytec Industriesから市販されているCyastat(登録商標)LS(3−ラウラミドプロピル)トリメチルアンモニウムサルフェート)を含む反応性2液型ウレタンプレポリマ(Bayerから市販されているBaytec(登録商標)GSV85A&B)が、実施例1により作成された穿孔膜に施され、硬化され、デジタル転写画像転写ベルトとして使用するのに適する、1000Vにおいて3.0×10オーム・cmの体積抵抗率を有するベルトを作成した。
【0050】
本発明をその好ましい実施形態を参照して詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、変更および変形を行うことが可能であることが明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル印刷用途のための画像転写ベルトであって、
第1および第2の表面を有し且つ複数の孔を有する少なくとも1つの多孔質膜を含む基底層であり、前記孔の少なくとも一部が前記膜を貫通して延びる、基底層と、
前記孔を少なくとも部分的に充填する、前記基底層の前記第1の表面上の伝導性高分子層と、
前記伝導性高分子層上の可撓層と
を含む、画像転写ベルト。
【請求項2】
前記伝導性高分子層は、前記基底層の前記第1の表面上に実質的に連続する層を形成する、請求項1に記載の画像転写ベルト。
【請求項3】
前記伝導性高分子層は、前記基底層の前記第2の表面上に実質的に連続する層を形成する、請求項1に記載の画像転写ベルト。
【請求項4】
前記基底層は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイミン、ポリフェニレンサルファイド、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート、およびポリエーテルイミドから選択される、請求項1に記載の画像転写ベルト。
【請求項5】
前記基底層は、多孔質膜の複数の層を含む、請求項1に記載の画像転写ベルト。
【請求項6】
前記伝導性層は、エラストマまたは熱可塑性高分子を含む、請求項1に記載のベルト。
【請求項7】
前記伝導性層は、その中に電気伝導性添加物を含む、請求項6に記載のベルト。
【請求項8】
前記伝導性層は、本質的に伝導性がある材料を含む、請求項6に記載のベルト。
【請求項9】
前記伝導性層または可撓層は、シリコーン、ゴム、ポリウレタン、フルオロシリコーン、フッ化炭素、EPDM、エチレンプロピレン共重合体、エラストマ、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載のベルト。
【請求項10】
前記可撓層は、本質的に伝導性がある材料を含む、請求項1に記載のベルト。
【請求項11】
前記可撓層は、その中に電気伝導性添加物を含む、請求項1に記載のベルト。
【請求項12】
前記基底層は、約0.025〜約0.250mm(約0.001〜約0.010インチ)の厚さを有する、請求項1に記載のベルト。
【請求項13】
前記可撓層は、約0.08〜0.64mm(0.003〜約0.025インチ)の間の厚さを有する、請求項1に記載のベルト。
【請求項14】
前記基底層中の前記孔は、約40〜200孔/cmの間の孔密度を有する、請求項1に記載のベルト。
【請求項15】
前記孔は、約10〜200ミクロンの孔径を有する、請求項1に記載のベルト。
【請求項16】
前記孔は、穿孔または微小穿孔を含む、請求項1に記載のベルト。
【請求項17】
前記可撓層上に剥離層をさらに含む、請求項1に記載のベルト。
【請求項18】
前記剥離層は、フッ素重合体樹脂またはシリコーン樹脂を含む、請求項17に記載のベルト。
【請求項19】
約1×10〜1×1011オーム・cmの間の体積抵抗率を有する、請求項1に記載のベルト。
【請求項20】
デジタル印刷用途のための画像転写ベルトを作成する方法であって、
第1および第2の表面を有する少なくとも1つの膜を含む、基底層を設けるステップと、
その中に複数の孔をもたらすように前記基底層を穿孔するステップであり、前記孔の少なくとも一部が前記膜を貫通して延びる、ステップと、
前記孔を少なくとも部分的に充填する、前記基底層の前記第1の表面上の伝導性高分子層を設けるステップと、
前記伝導性層上に可撓層を設けるステップと
を含む、方法。
【請求項21】
前記可撓層上に剥離層を設けるステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−500501(P2013−500501A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521807(P2012−521807)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/043026
【国際公開番号】WO2011/011666
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(300078202)デイ インターナショナル インコーポレーテッド (21)
【Fターム(参考)】