説明

デュアル物理量センサ

【課題】部品点数やコストを削減することができるデュアル物理量センサを提供する。
【解決手段】第1被測定対象の圧力を検出する圧力センサ3Aと、第2被測定対象の圧力を検出する圧力センサ3Bと、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bの温度を検出する温度センサ4と、圧力センサ3Aの検出信号から温度変化による変動分を除外する第1補正と、圧力センサ3Bの検出信号から温度変化による変動分を除外する第2補正とを実行する補正ユニットと、熱伝導性を有するととともに、一端部8aが圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bに接触し他端部8bが温度センサ4に接触する伝熱部材8と、を備え、伝熱部材8は、一端部8aと他端部8bとの間に弾性を有する弾性部8cを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデュアル物理量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のセンサとして、被測定対象の圧力を2つの圧力センサでそれぞれ検出するデュアル圧力センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。このデュアル圧力センサは、例えば、下記特許文献2に記載されている流量制御弁の弁本体に取り付け、差圧センサとして使用することができる。この場合に、デュアル圧力センサは、弁体より上流側の流体圧力と弁体より下流側の流体圧力とをそれぞれ検出し、流量制御弁を制御する流量測定装置に出力する。流量測定装置は、上流側の流体圧力と下流側の流体圧力との差圧に基づいて流量制御弁の流路内を流れる流体の流量を算出する。
【0003】
ところで、圧力センサには、出力値が使用時の温度に応じて変動する温度特性を有するものがある。このような温度特性を有する圧力センサを用いて流体の流量を精度良く算出するためには、圧力センサの出力値を的確に温度補正し、出力値から温度変化による変動分を除外する必要がある。このため、特許文献1に記載のデュアル圧力センサでは、2つの圧力センサにそれぞれ温度センサを搭載し、この温度センサの検出温度を用いて各圧力センサの検出値を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−31003号公報
【特許文献2】特開2009−115302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のデュアル圧力センサは、1つのデュアル圧力センサに対して2つの温度センサを備える必要があるため、部品点数やコストの削減に対する要求に応えることが難しかった。
【0006】
本発明のいくつかの態様は前述の問題に鑑みてなされたものであり、部品点数やコストを削減することができるデュアル物理量センサを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るデュアル物理量センサは、第1被測定対象の物理量を検出する第1物理量検出素子と、第2被測定対象の物理量を検出する第2物理量検出素子と、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子の温度を検出する温度検出素子と、第1物理量検出素子の検出信号から温度変化による変動分を除外する第1補正と、第2物理量検出素子の検出信号から温度変化による変動分を除外する第2補正とを実行する補正ユニットと、熱伝導性を有するととともに、一端部が第1物理量検出素子および第2物理量検出素子に接触し他端部が温度検出素子に接触する伝熱部材と、を備え、伝熱部材は、一端部と他端部との間に弾性を有する弾性部を含む。
【0008】
かかる構成によれば、伝熱部材は、熱伝導性を有するととともに、一端部が第1物理量検出素子および第2物理量検出素子に接触し他端部が温度検出素子に接触する。これにより、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子の熱が温度検出素子に伝導される。
【0009】
また、伝熱部材は、一端部と他端部との間に弾性を有する弾性部を含む。これにより、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子のうちの少なくとも一方が振動した場合に、当該振動が弾性部によって減衰され、吸収される。
【0010】
好ましくは、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子の外周部は、相互に伝熱部材の一端部が挿入される凹部を形成する。
【0011】
かかる構成によれば、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子の外周部は、相互に伝熱部材の一端部が挿入される凹部を形成する。これにより、伝熱部材の一端部が凹部によって固定される。したがって、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子のうちの少なくとも一方に横方向の振動が生じた場合でも、一端部と第1物理量検出素子および第2物理量検出素子との接触を維持(保持)することができる。
【0012】
好ましくは、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子が設置される容器と、温度検出素子が設置される基板と、をさらに備える。
【0013】
かかる構成によれば、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子が容器に設置され、温度検出素子が基板に設置される。これにより、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子と温度検出素子とを物理的に分離して配置し、伝熱部材を容器と基板との接続部材として機能させることが可能となる。したがって、容器の振動や変形などの影響が温度検出素子に及ぶ蓋然性を低減することができる。
【0014】
好ましくは、伝熱部材は、金属製の板状部材から成形される。
【0015】
かかる構成によれば、伝熱部材は、金属製の板状部材から成形される。これにより、当該金属製の板状部材に切断や折り曲げなどの加工を施すことで、熱伝導性および弾性を有する伝熱部材を製造することが可能となる。したがって、伝熱部材を安価かつ容易に実現することができる。
【0016】
好ましくは、補正ユニットは、温度検出素子の検出温度に基づいて、第1補正および第2補正を実行する。
【0017】
かかる構成によれば、温度検出素子の検出温度に基づいて、第1補正および第2補正が実行される。これにより、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子の実際の温度に基づいて、第1物理量検出素子の検出信号から温度変化による変動分が除外され、第2物理量検出素子の検出信号から温度変化による変動分が除外される。したがって、第1被測定対象の物理量および第2被測定対象の物理量の検出精度を向上させることができる。
【0018】
好ましくは、補正ユニットは、第1補正を実行する第1補正部と、第2補正を実行する第2補正部と、を含む。
【0019】
かかる構成によれば、補正ユニットは、第1補正を実行する第1補正部と、第2補正を実行する第2補正部と、を含む。これにより、第1補正部が第1物理量検出素子の検出信号から温度変化による変動分を除外するとともに、第2補正部が第2物理量検出素子の検出信号から温度変化による変動分を除外することが可能となる。したがって、第1補正および第2補正を並行して実行することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子の熱が温度検出素子に伝導される。したがって、1つの温度検出素子で第1物理量検出素子および第2物理量検出素子の温度を検出することができ、従来のデュアル物理量センサと比較して、部品点数やコストを削減することができる。また、伝熱部材は接触しているだけなので、第1物理量検出素子、第2物理量検出素子、および、温度検出素子のうちのいずれかが故障したときに、故障した素子だけを容易に交換することができ、接着した場合のように、故障のない他の正常な素子とともに交換し、破棄する必要がない。さらに、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子のうちの少なくとも一方が振動した場合に、当該振動が弾性部によって減衰され、吸収される。したがって、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子ならびに温度検出素子との接触を維持(保持)することができ、第1物理量検出素子および第2物理量検出素子の温度を安定して検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態におけるデュアル圧力センサの片側断面図である。
【図2】図1に示したII−II線矢視方向断面図である。
【図3】図2に示した伝熱部材を取り外した状態を説明する上面図である。
【図4】図1に示したデュアル圧力センサの機能構成を説明するブロック図である。
【図5】第1変形例におけるデュアル圧力センサの片側断面図である。
【図6】図5に示したIII−III線矢視方向断面図である。
【図7】図5および図6に示したデュアル圧力センサの機能構成を説明するブロック図である。
【図8】第2変形例におけるデュアル圧力センサの機能構成を説明するブロック図である。
【図9】第3変形例におけるデュアル圧力センサの機能構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
【0023】
図1ないし図4は、本発明に係るデュアル物理量センサの一実施形態を示すためのものである。本実施形態では、デュアル物理量センサとして、2つの圧力センサを備えるデュアル物理量センサについて説明する。なお、物理量は、圧力に限定されず、他の物理量であっても、同様に適用することができる。
【0024】
図1は、本実施形態におけるデュアル圧力センサ1の片側断面図であり、図2は、図1に示したII−II線矢視方向断面図である。図1および図2に示すように、デュアル圧力センサ1は、気密容器2と、2つの圧力センサ3A、3Bと、温度センサ4と、基板6と、制御回路7と、伝熱部材8と、を含んで構成される。
【0025】
気密容器2は、合成樹脂などを材料として成形される容器本体21および蓋体22を有する。容器本体21は、上方に開口する有底箱型の容器である。容器本体21の底板には、2つの圧力センサ3A、3Bに対応して挿通孔21hがそれぞれ形成されている。蓋体22は、容器本体21の上面にシール部材(図示省略)を介してねじ止め固定されることで、容器本体21の開口部を気密に密封する。
【0026】
容器本体21の内部には、2つの圧力センサ3A、3Bが設置されている。圧力センサ3A、3Bは、それぞれの導入孔3hから取り込まれる被測定対象の圧力をそれぞれ検出する。被測定対象としては、例えば、水やガスなどの流体が挙げられる。圧力センサ3A、3Bとしては、例えば、ダイアフラム(薄肉感圧部)が形成された半導体基板(シリコン)と、この半導体基板に不純物またはイオンの打ち込み技術によって形成される拡散型歪みゲージと、を有する公知の半導体圧力センサが挙げられる。拡散型歪みゲージは、ダイアフラムの被測定圧力による歪みを、ピエゾ抵抗効果を利用して検出し、電気信号に変換する。このような圧力センサ3A、3Bは、出力のゲインやオフセットが使用温度に応じて変化するという温度特性を有する。
【0027】
伝熱部材8は、熱伝導性を有するとともに、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bのそれぞれに接触している。より具体的には、伝熱部材8の一端部8aは、凹部3cに脱着自在に挿入されている。これにより、伝熱部材8の一端部8aが凹部3cによって固定される。なお、凹部3cは図2において破線で表されている。
【0028】
図3は、図2に示した伝熱部材8を取り外した状態を説明する上面図である。図3に示すように、圧力センサ3A、3Bは、外周部の一部が互いに接触するように並設されている。圧力センサ3A、3Bの接触部分には、それぞれ切欠3kを有しており、この2つの切欠3kによって溝状の凹部3cが形成される。
【0029】
本実施形態では、圧力センサ3A、3Bを、外周部の一部が互いに接触するように並設したが、これに限定されない。圧力センサ3A、3Bの外周部によって凹部3cが形成される限り、外周部の一部が互いに接触していなくてもよい。なお、2つの圧力センサ3A、3Bの外周部同士を互いに接触させることにより、圧力センサ3A、3B間の温度差を生じ難くすることができる。
【0030】
一方、図1に示すように、伝熱部材8の他端部8bは、温度センサ4に接触している。これにより、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bの熱が温度センサ4に伝導される。
【0031】
また、伝熱部材8は、一端部8aと他端部8bとの間に、バネ状に成形された弾性を有する弾性部8cを含んでいる。これにより、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bのうちの少なくとも一方が振動した場合に、当該振動が弾性部8cによって減衰され、吸収される。
【0032】
なお、伝熱部材8は、例えば、銅やアルミニウムなどの金属製の板状部材から成形されるのが好ましい。これにより、当該金属製の板状部材に切断や折り曲げなどの加工を施すことで、熱伝導性および弾性を有する伝熱部材8を製造することが可能となる。
【0033】
温度センサ4は、基板6において2つの圧力センサ3A、3Bに対向する面、すなわち、基板6の下面に設けられ、伝熱部材8を介して圧力センサ3A、3Bの温度を検出する。このように、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bを気密容器2に設置し、温度センサ4を基板6に設置することにより、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bと温度センサ4とを物理的に分離して配置し、伝熱部材8を気密容器2と基板6との接続部材として機能させることが可能となる。
【0034】
制御回路7は、基板6の上面に設けられ、デュアル圧力センサ1の各部の動作を制御する。制御回路7は、以下に記述するデュアル圧力センサ1の各機能を実現する。
【0035】
次に、図4を参照して、本実施形態におけるデュアル圧力センサ1の機能構成について説明する。
【0036】
図4は、図1に示したデュアル圧力センサ1の機能構成を説明するブロック図である。図4に示すように、デュアル圧力センサ1は、第1圧力検出部72Aと、第2圧力検出部72Bと、温度検出部73と、補正ユニット74と、を有する。
【0037】
第1圧力検出部72Aは、圧力センサ3Aから検出信号を取得し、取得した検出信号を補正ユニット74に出力する。第2圧力検出部72Bは、圧力センサ3Bから検出信号を取得し、取得した検出信号を補正ユニット74に出力する。
【0038】
温度検出部73は、温度センサ4から検出温度を取得し、取得した検出温度を補正ユニット74に出力する。
【0039】
補正ユニット74は、第1補正部74Aと、第2補正部74Bと、を含んで構成される。第1補正部74Aは、温度検出部73から取得した検出温度に基づいて、第1圧力検出部72Aから取得した検出信号を補正し、補正後の信号を第1測定信号として流量測定装置100に出力する。第2補正部74Bは、温度検出部73から取得した検出温度に基づいて、第2圧力検出部72Bから取得した検出信号を補正し、補正後の信号を第2測定信号として流量測定装置100に出力する。
【0040】
第1補正部74Aおよび第2補正部74Bは、それぞれ、セレクタ部A1、B1、A/D変換部A2、B2、補正演算部A3、B3および補正式記憶部A4、B4を有する。セレクタ部A1、B1は、例えば、マルチプレクサであり、第1圧力検出部72Aまたは第2圧力検出部72Bと温度検出部73とからそれぞれ信号を受信し、いずれかの信号を選択してA/D変換部A2、B2に出力する。
【0041】
A/D変換部A2、B2は、セレクタ部A1、B1から受信したアナログ信号をデジタル信号に変換して補正演算部A3、B3に出力する。補正演算部A3、B3は、A/D変換部A2、B2から受信したデジタル信号に対応する圧力値を、補正式記憶部A4、B4に記憶されている補正式を用いて補正処理を実行し、補正処理後の圧力値に対応する信号を測定信号として流量測定装置100に出力する。補正式としては、例えば、温度を変数とする一次式や二次式などを用いることができる。補正式は、例えば、あらかじめ実験などを行って温度ごとに基準温度からの温度変化による圧力値の変動を求め、この変動分を検出信号から除外できるような式を準備しておく。つまり、補正演算部A3、B3が実行する補正処理は、第1圧力検出部72Aまたは第2圧力検出部72Bの検出信号から温度変化による変動分を除外する第1補正または第2補正を行う処理となる。このように、温度センサ4の検出温度に基づいて、第1補正および第2補正を実行することにより、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bの実際の温度に基づいて、圧力センサ3Aの検出信号から温度変化による変動分が除外され、圧力センサ3Bの検出信号から温度変化による変動分が除外される。
【0042】
なお、補正ユニット74は、第1補正を実行する第1補正部74Aと、第2補正を実行する第2補正部74Bとを含むことが好ましい。これにより、第1補正部74Aが圧力センサ3Aの検出信号から温度変化による変動分を除外するとともに、第2補正部74Bが圧力センサ3Bの検出信号から温度変化による変動分を除外することが可能となる。
【0043】
本実施形態では、補正ユニット74が第1補正部74Aおよび第2補正部74Bを含む例を示したが、これに限定されない。補正ユニット74は、例えば、1つの補正部によって、第1補正および第2補正の両方を実行するようにしてもよい。
【0044】
流量測定装置100は、第1補正部74Aから出力された第1測定信号と、第2補正部74Bから出力された第2測定信号との差分を求めることで、圧力センサ3A、3B間の差圧を算出する。この差圧は、例えばデュアル圧力センサ1を流量制御弁の弁本体に取り付けた場合を例にすると、以下のように用いることができる。なお、この場合には、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bを、弁体の上流側の流体圧力および下流側の流体圧力をそれぞれ測定できるように配置する。
【0045】
流量制御弁の流路内を流れる流体の流量Qは、弁体の上流側流路と下流側流路との間の流体の圧力差ΔPと、弁体の開度で定まる流量係数(Cv値)とを用い、下記式(1)によって算出することができる。
【0046】
Q=A*Cv*√ΔP ・・・・(1)
但し、Aは定数を示す。
【0047】
つまり、流量測定装置100で算出した差圧を上記式(1)のΔPに代入することにより、流体の流量Qを算出することができ、流量測定装置100は、この流量Qに応じて弁体の開度を制御することができる。
【0048】
本実施形態では、デュアル圧力センサ1の出力先として、流体の流量を測定する流量測定装置100の例を示したが、これに限定されない。デュアル圧力センサ1によって測定された2つの圧力信号(第1測定信号および第2測定信号)を使用するものであれば、他の回路、機器、装置などであってもよい。
【0049】
次に、デュアル圧力センサ1を流量制御弁に取り付けた場合を例にして、デュアル圧力センサ1および流量測定装置100の動作を説明する。
【0050】
最初に、弁体より上流側の被測定圧力が圧力センサ3Aのダイアフラムに印加され、弁体より下流側の被測定圧力が圧力センサ3Bのダイアフラムに印加されると、各圧力センサ3A、3Bのダイアフラムは、印加された圧力に応じて歪み、この歪みにより拡散型歪みゲージの出力電圧が変化する。
【0051】
続いて、第1圧力検出部72Aおよび第2圧力検出部72Aは、出力電圧の変化に基づいてそれぞれの圧力を測定し、測定結果を検出信号として第1補正部74Aまたは第2補正部74Bに出力する。この場合、ダイアフラムには気密容器2内の圧力が基準圧力として印加されているため、各圧力センサ3A、3Bの出力電圧は、それぞれの被測定圧力に相当する絶対圧の出力電圧となる。
【0052】
続いて、第1補正部74Aおよび第2補正部74Bは、温度検出部73から取得した検出温度を用いて、検出信号に対応する圧力値の補正処理をそれぞれ実行し、その実行結果を測定信号として流量測定装置100にそれぞれ出力する。
【0053】
続いて、流量測定装置100は、デュアル圧力センサ1から入力された各測定信号に対応する圧力値を用いて差圧ΔPを算出し、算出した差圧ΔPを上記式(1)に代入して演算することで、流量制御弁を流れる流体の流量Qを算出する。
【0054】
このように、本実施形態におけるデュアル圧力センサ1によれば、伝熱部材8は、熱伝導性を有するととともに、一端部8aが圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bに接触し他端部8bが温度センサ4に接触する。これにより、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bの熱が温度センサ4に伝導される。したがって、1つの温度センサ4で圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bの温度を検出することができ、従来のデュアル物理量センサと比較して、部品点数やコストを削減することができる。
【0055】
また、伝熱部材8は接触しているだけなので、圧力センサ3A、圧力センサ3B、および、温度センサ4のうちのいずれかが故障したときに、故障したセンサだけを容易に交換することができ、接着した場合のように、故障のない他の正常なセンサとともに交換し、破棄する必要がない。
【0056】
さらに、伝熱部材8は、一端部8aと他端部8bとの間に弾性を有する弾性部8cを含む。これにより、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bのうちの少なくとも一方が振動した場合に、当該振動が弾性部8cによって減衰され、吸収される。したがって、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bならびに温度センサ4との接触を維持(保持)することができ、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bの温度を安定して検出することができる。
【0057】
また、本実施形態におけるデュアル圧力センサ1によれば、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bの外周部は、相互に伝熱部材8の一端部8aが挿入される凹部3cを形成する。これにより、伝熱部材8の一端部8aが凹部3cによって固定される。したがって、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bのうちの少なくとも一方に横方向の振動が生じた場合でも、一端部8aと圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bとの接触を維持(保持)することができる。
【0058】
また、本実施形態におけるデュアル圧力センサ1によれば、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bが気密容器2に設置され、温度センサ4が基板6に設置される。これにより、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bと温度センサ4とを物理的に分離して配置し、伝熱部材8を気密容器2と基板6との接続部材として機能させることが可能となる。したがって、気密容器2の振動や変形などの影響が温度センサ4に及ぶ蓋然性を低減することができる。
【0059】
また、本実施形態におけるデュアル圧力センサ1によれば、伝熱部材8は、金属製の板状部材から成形される。これにより、当該金属製の板状部材に切断や折り曲げなどの加工を施すことで、熱伝導性および弾性を有する伝熱部材8を製造することが可能となる。したがって、伝熱部材8を安価かつ容易に実現することができる。
【0060】
また、本実施形態におけるデュアル圧力センサ1によれば、温度センサ4の検出温度に基づいて、第1補正および第2補正が実行される。これにより、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bの実際の温度に基づいて、圧力センサ3Aの検出信号から温度変化による変動分が除外され、圧力センサ3Bの検出信号から温度変化による変動分が除外される。したがって、例えば、弁体より上流側の被測定圧力および弁体より下流側の被測定圧力の検出精度を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態におけるデュアル圧力センサ1によれば、補正ユニット74は、第1補正を実行する第1補正部74Aと、第2補正を実行する第2補正部74Bと、を含む。これにより、第1補正部74Aが圧力センサ3Aの検出信号から温度変化による変動分を除外するとともに、第2補正部74Bが圧力センサ3Bの検出信号から温度変化による変動分を除外することが可能となる。したがって、第1補正および第2補正を並行して実行することができる。
【0062】
[変形例]
本発明を、前述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす記述および図面は、この発明を限定するものではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態や運用技術などが明らかになるはずである。
【0063】
なお、以下の変形例において、前述した実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。また、前述した実施形態と類似する構成部分は類似の符号をもって表し、その詳細な説明を省略する。さらに、図示しない構成部分は、前述した実施形態と同様とする。
【0064】
(第1変形例)
図5は、第1変形例におけるデュアル圧力センサ1の片側断面図であり、図6は、図5に示したIII−III線矢視方向断面図である。図5および図6に示すように、第1変形例におけるデュアル圧力センサ1は、ヒータ5を含む点で前述の実施形態におけるデュアル圧力センサ1と異なる。
【0065】
図6に示すように、ヒータ5は、圧力センサ3A、3Bの周囲を取り囲むように設置され、自ら発熱して圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bをムラなく暖める(加熱する)。
【0066】
図7は、図5および図6に示したデュアル圧力センサ1の機能構成を説明するブロック図である。図7に示すように、ヒータ部71は、ヒータ5を駆動して、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bをあらかじめ定めた所定温度に暖める(加熱する)。所定温度は、被測定対象が取り得る温度範囲の上限よりも少し高い温度に設定することが好ましい。例えば、被測定対象が取り得る温度範囲が7℃〜65℃である場合には、その上限である65℃よりも少し高い70℃〜75℃位に設定する。これにより、外気温の変化などによって被測定対象やデュアル圧力センサ1の周辺温度が変化した場合であっても、ヒータ5の発熱により、温度変化による影響を排除できるレベルにまで圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bの温度を上昇させることができるので、圧力センサ3Aと圧力センサ3Bとの間に温度差が生ずる事態を抑止することができる。したがって、圧力値の検出精度を向上させることができる。
【0067】
(第2変形例)
図8は、第2変形例におけるデュアル圧力センサ1の機能構成を説明するブロック図である。第1変形例ではヒータ5の発熱量を制御していないが、圧力センサ3A、3Bの温度があらかじめ設定した所定温度を維持するように、温度検出部73の検出温度に基づいてヒータ5の発熱量をフィードバック制御するようにしてもよい。例えば、図8に示すように、第2変形例におけるデュアル圧力センサ1は、第1変形例で示したヒータ5およびヒータ部71に加え、ヒータ制御部75をさらに含む点で前述の実施形態におけるデュアル圧力センサ1と異なる。
【0068】
ヒータ制御部75は、温度検出部73の検出温度が、あらかじめ設定した所定温度になるように、ヒータ5を駆動するヒータ部71を制御する。これにより、例えば、圧力センサ3Aおよび圧力センサ3Bが損傷する温度にまで上昇することがないように、ヒータ5の発熱量を抑制することが可能となる。
【0069】
(第3変形例)
図9は、第3変形例におけるデュアル圧力センサ1の機能構成を説明するブロック図である。第2変形例においてヒータ5の発熱量をフィードバック制御すると、圧力センサ3A、3Bの温度は所定温度に維持される。その結果、圧力センサ3A、3Bの圧力値を補正する際に用いる補正式の変数も、所定温度に維持されることになる。よって、この場合には、変数を所定温度で固定した補正式を用いて圧力値を補正することとしてもよい。例えば、図9に示すように、第3変形例におけるデュアル圧力センサ1は、第1変形例で示したヒータ5およびヒータ部71に加え、第2実施例で示したヒータ制御部75をさらに含み、温度検出部73の検出温度を第1補正部74Aおよび第2補正部74Bに入力しない点で前述の実施形態におけるデュアル圧力センサ1と異なる。
【0070】
ヒータ制御部75は、第2変形例と同様に、温度検出部73の検出温度があらかじめ設定した所定温度になるように、ヒータ部71を介してヒータ5の発熱量を制御する。また、補正式記憶部A4、B4に記憶する補正式の変数には、所定温度をあらかじめ設定しておく。これにより、補正式を簡素化することができるので、補正式記憶部A4、B4における補正式の記憶領域を削減することが可能となる。
【0071】
なお、前述した実施形態および各変形例の構成を組み合わせたり、あるいは、一部の構成部分を入れ替えたりしてもよい。また、本発明の構成は、前述した実施形態および各変形例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…デュアル圧力センサ、2…気密容器、3A、3B…圧力センサ、3c…凹部、3h…導入孔、3k…切欠、4…温度センサ、5…ヒータ、6…基板、7…制御回路、8…伝熱部材、8a…一端部、8b…他端部、8c…弾性部、21…容器本体、21h…挿通孔、22…蓋体、71…ヒータ部、72A…第1圧力検出部、72B…第2圧力検出部、73…温度検出部、74A…第1補正部、74B…第2補正部、75…ヒータ制御部、100…流量測定装置、A1、B1…セレクタ部、A2、B2…A/D変換部、A3、B3…補正演算部、A4、B4…補正式記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被測定対象の物理量を検出する第1物理量検出素子と、
第2被測定対象の物理量を検出する第2物理量検出素子と、
前記第1物理量検出素子および前記第2物理量検出素子の温度を検出する温度検出素子と、
前記第1物理量検出素子の検出信号から温度変化による変動分を除外する第1補正と、前記第2物理量検出素子の検出信号から温度変化による変動分を除外する第2補正とを実行する補正ユニットと、
熱伝導性を有するととともに、一端部が前記第1物理量検出素子および前記第2物理量検出素子に接触し他端部が前記温度検出素子に接触する伝熱部材と、を備え、
前記伝熱部材は、前記一端部と前記他端部との間に弾性を有する弾性部を含む、
ことを特徴とするデュアル物理量センサ。
【請求項2】
前記第1物理量検出素子および前記第2物理量検出素子の外周部は、相互に前記伝熱部材の前記一端部が挿入される凹部を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載のデュアル物理量センサ。
【請求項3】
前記第1物理量検出素子および前記第2物理量検出素子が設置される容器と、
前記温度検出素子が設置される基板と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載のデュアル物理量センサ。
【請求項4】
前記伝熱部材は、金属製の板状部材から成形される
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のデュアル物理量センサ。
【請求項5】
前記補正ユニットは、前記温度検出素子の検出温度に基づいて、前記第1補正および前記第2補正を実行する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項記載のデュアル物理量センサ。
【請求項6】
前記補正ユニットは、前記第1補正を実行する第1補正部と、前記第2補正を実行する第2補正部と、を含む
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のデュアル物理量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−50400(P2013−50400A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188871(P2011−188871)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】