デルタ型パラレルロボット
【課題】デルタ型パラレルロボットのブラケットの姿勢を容易に且つ精度良く制御する。
【解決手段】デルタ型パラレルロボット1が、ベース2と、ツール9を取り付けるためのブラケット3と、ベース2にブラケット3を連結する3組のアーム機構4とを備える。各アーム機構4は、基端部がベース2に揺動可能に連結された1本のアーム10と、平行リンクを構成するようにアーム10の基端部を挟み且つブラケット3を挟むようにして配置された一対のリンク11,12とを有する。3組のアーム機構4のうち少なくとも一組が、アーム10の少なくとも先端部が軸心周りに回転可能なように構成される。
【解決手段】デルタ型パラレルロボット1が、ベース2と、ツール9を取り付けるためのブラケット3と、ベース2にブラケット3を連結する3組のアーム機構4とを備える。各アーム機構4は、基端部がベース2に揺動可能に連結された1本のアーム10と、平行リンクを構成するようにアーム10の基端部を挟み且つブラケット3を挟むようにして配置された一対のリンク11,12とを有する。3組のアーム機構4のうち少なくとも一組が、アーム10の少なくとも先端部が軸心周りに回転可能なように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースと、ツールを取り付けるためのブラケットと、ベースにブラケットを連結する3組のアーム機構とを備えるデルタ型パラレルロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
デルタ型パラレルロボットは、ベースと、ツールを取り付けるためのブラケットと、ベースにブラケットを連結する3組のアーム機構とを備えている。一般に、アーム機構は、平行リンクを構成する上リンク、一対のリンク及び下リンクを有し、ベースは水平に配置される。アーム機構は、上リンク及び下リンクが水平な姿勢を保つようにして動作する。これにより、ブラケット及びツールが、ベースに対する姿勢を変えず、水平な姿勢を保って移動可能になる。この特性を活用して、食品工場等におけるピッキング作業にデルタ型パラレルロボットが広く用いられている。必要に応じてブラケット及びツールのベースに対する姿勢も変えることが可能になれば、デルタ型パラレルロボットの作業性及び応用性が広がって有益である。
【0003】
特許文献1は、6自由度制御可能なブラケットを備えるデルタ型パラレルロボットを開示している。このデルタ型パラレルロボットは3組のアーム機構を有し、各アーム機構が2本のリンク及びロッドを有している。各リンク基端が基台に揺動可能に連結され、各リンク先端が対応するロッド基端に球対偶を介して連結され、各ロッド先端が球対偶を介してブラケットに連結されている。基台にはリンクを個別に駆動する合計6個の駆動モータが設けられている。なお、特許文献1に開示されるロボットの実際の構造では、ロッド先端の球対偶同士を結ぶ下リンクは存在するが、ロッド基端(リンク先端)の球対偶同士を結ぶ上リンクが存在しない。以下では、説明の便宜上、ロッド基端(リンク先端)の球対偶同士を結んだ線を「仮想的上リンク」と称する。
【0004】
各アーム機構に対応する2個の駆動モータが同じ角度に動作すれば、アーム機構の仮想的上リンクのベースに対する姿勢が変わらず、ブラケット及びツールをベースに対する姿勢を変えずに移動させることができる。2個の駆動モータが異なる角度で動作すれば、仮想的上リンクのベースに対する姿勢が変わって仮想的上リンクが水平でなくなり、ツール及びブラケットのベースに対する姿勢が変わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−270077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のパラレルロボットにおいては、リンク基端の揺動支点からリンク先端(即ちロッド基端)の回動中心までの距離が長い。このため、ブラケットの姿勢を変えようとするとき、リンクを揺動させるための所要トルクが大きくなる。また、リンクの揺動角に対する仮想的上リンクの傾斜角の変化率が大きくなる。したがって、ブラケットの姿勢を精度良く制御することが困難となる。このようなパラレルロボットにおいて姿勢を制御するためには、減速率の大きい減速機を設ける必要がある。
【0007】
また、仮想的上リンクの傾斜角と、下リンクの傾斜角とが非線形の関係にあり、リンクの揺動角が大きくなるにつれて下リンクの傾斜角が指数関数的に大きくなる。このため、ブラケット及びツールのベースに対する姿勢変更量が大きくなればなるほど、その姿勢を精度良く制御することが困難となる。このようなパラレルロボットにおいて姿勢を制御するためには、予め上記非線形の関係を表した複雑なモデルを作成しておき、制御器で当該モデルを用いた複雑な演算によって線形化処理を行わなければならない。
【0008】
そこで本発明は、ブラケットの姿勢を容易に且つ精度良く制御可能なデルタ型パラレルロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るデルタ型パラレルロボットは、ベースと、ツールを取り付けるためのブラケットと、前記ベースに前記ブラケットを連結する3組のアーム機構と、を備え、前記各アーム機構が、基端部が前記ベースに揺動可能に連結された1本のアームと、前記アームの基端部を挟み且つ前記ブラケットを挟むようにして配置された一対のリンクと、前記一対のリンクをそれぞれ前記アームの基端部に回動可能に連結する一対の基端ジョイントと、前記一対のリンクをそれぞれ前記ブラケットに回動可能に連結する一対の先端ジョイントと、を有し、前記一対のリンク、前記一対の基端ジョイント及び前記一対の先端ジョイントが平行リンクを構成可能に配置され、前記3組のアーム機構のうち少なくとも一組は、前記アームの少なくとも前記先端部が前記アームの軸心周りに回転可能なように構成されている。
【0010】
前記構成によれば、アームが軸心周りの回転(以下、単に「自転」と称す)を行うと、当該アームに対応する一対の基端ジョイントがアームの自転軸線(つまり、アームの軸心)周りに公転する。すると、アーム機構が変形し、ブラケットのベースに対する姿勢を変えることができる。このとき基端ジョイントは、アームの自転軸線からの距離を半径として回転することになる。したがって、基端ジョイントの回転半径を小さくすることができるし、アームの自転角度に対するブラケットの姿勢変化量が小さくなる。すると、アームを自転させるための所要トルクが小さくて済むし、ブラケットの姿勢を精度良く制御することができる。また、アームが自転したときに、一対の基端ジョイント間の見かけ上の距離が変わらないので、基端ジョイントの傾斜角と先端ジョイントの傾斜角とが略等しくなる。すると、アームの自転角度と先端ジョイントの傾斜角とが略線形の関係を満たすようになる。したがって、複雑な演算を行わなくても、ブラケットの姿勢を精度良く制御することができる。
【0011】
前記3組のアーム機構のうち複数のアーム機構が、前記アームの少なくとも前記先端部が前記アームの軸心周りに回転可能なように構成されていてもよい。前記構成によれば、ブラケットの姿勢を複雑に変えることができる。一例として、ブラケットを、自転しないアームに対応する一対の先端ジョイント同士を結ぶ直線と垂直な平面上で運動させることが可能になる。
【0012】
前記3組のアーム機構の全てが、前記アームの少なくとも前記先端部が前記アームの軸心周りに回転可能なように構成されていてもよい。前記構成によれば、ブラケットの姿勢を複雑に変えることができる。一例として、ブラケットを自転させることが可能になる。
【0013】
前記アームを前記アームの軸心周りに回転させる自転アクチュエータを更に備え、前記自転アクチュエータが、前記ベースに取り付けられていてもよい。前記構成によれば、自転アクチュエータがベースに取り付けられるので、アームが揺動するときに自転アクチュエータに荷重が作用するのを避けることができる。
【0014】
前記アームを前記アームの軸心周りに回転させる自転アクチュエータを更に備え、前記自転アクチュエータが、前記アームに取り付けられていてもよい。前記構成によれば、自転アクチュエータをアームに取り付けるので、自転アクチュエータの動力を伝達する機構を省略し又は小型化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブラケットの姿勢を容易に且つ精度良く制御可能なデルタ型パラレルロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係るデルタ型パラレルロボットの側面図である。
【図2】図1に示すアーム機構の構成及び動作を示す模式図である。図2(a)は、3本のアームの自転角がいずれも基準自転角にある状態、図2(b)は、アームの自転角が基準自転角から変位した状態を示している。
【図3】図1に示すデルタ型パラレルロボットの構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す自転アクチュエータを動作させたときのブラケットの姿勢変化の態様を示す模式図である。図4(a)は、3組のアーム機構の上リンク及び下リンクが全て標準姿勢にあるときから、1本のアームを単独で自転させた場合を例示している。図4(b)は、3組のアーム機構の上リンク及び下リンクが全て標準姿勢にあるときから、2本のアームを同時に自転させた場合を例示している。図4(c)は、3組のアーム機構の上リンク及び下リンクが全て標準姿勢にあるときから、3本のアームを同時に自転させた場合を例示している。
【図5】図5(a)は、アーム自転前における1組のアーム機構を幾何学的に示した模式図である。図5(b)は、第1実施形態において、自転軸線の延在方向に見て示すアーム自転前のアーム機構の模式図である。図5(c)は、第1実施形態において、図5(b)と同じ方向に見て示すアーム自転後のアーム機構の模式図である。図5(d)は、比較例において、リンクの延在方向に見て示すリンク揺動前のアーム機構の模式図である。図5(e)は、比較例において、図5(d)と同じ方向に見て示すリンク揺動後のアーム機構の模式図である。図5(f)は、第1実施形態において、アーム自転後の基端ジョイントを示す模式図、図5(g)は、比較例において、リンク揺動後の基端側球対偶を示す模式図である。
【図6】第1実施形態におけるアーム自転角と下リンクの傾斜角との関係、比較例におけるリンク揺動角と下リンクの傾斜角との関係を示すグラフである。
【図7】図3に示す揺動アクチュエータ及び自転アクチュエータの配置を示すアームの断面図である。
【図8】図2に示すアームの一部を示す正面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る揺動アクチュエータ及び自転アクチュエータの配置を示すアームの断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る揺動アクチュエータ及び自転アクチュエータの配置を示すアームの断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る揺動アクチュエータ及び自転アクチュエータの配置を示すアームの断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係るアームの一部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。同一又は相当する要素には全図を通じて同一の符号を付して重複する詳細な説明を省略する。なお、以下では、デルタ型パラレルロボットを単に「ロボット」と称する場合がある。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るロボット1の側面図である。図1に示すロボット1は、作業用ツール9の位置だけでなく姿勢も変えることができ、従前一般的なロボットよりも広範な応用性を有している。例えば、このロボット1は、食品、薬品、化粧品又は小型電装品等の生産設備90内で、ピッキング作業、箱詰め作業及び部品組立作業等の各種作業に好適に利用される。
【0019】
(全体構成)
図1に示すように、ロボット1は、ベース2と、ブラケット3と、3組のアーム機構4と、3つの揺動アクチュエータ5とを備えている。ベース2は、例えばバケット状に形成され、架台91に固定される。ブラケット3は、例えば略平板状に形成されており、ブラケット3の下面に作業用ツール9が取外し可能に取り付けられる。各アーム機構4は、ブラケット3をベース2に連結している。
【0020】
各アーム機構4は、1本のアーム10と、一対のリンク11,12と、一対の基端ジョイント13,14と、一対の先端ジョイント15,16とを有しており、一対のリンク11,12、一対の基端ジョイント13,14及び一対の先端ジョイント15,16は平行リンクを構成可能に配置されている。「平行リンクを構成可能に配置」とは、一対のリンク11,12と、一対の基端ジョイント13,14と、一対の先端ジョイント15,16と、一対の基端ジョイント13,14同士を結ぶ上リンク17と、一対の先端ジョイント15,16同士を結ぶ下リンク18とによって平行リンクを構成することができるのは勿論、状況に応じて、上リンク17及び下リンク18の姿勢を意図的に変えることも可能であることを意味する。
【0021】
アーム10の基端部は、ベース2に揺動可能に連結されている。アーム10の揺動軸線10aは、基準面RP内に配置され且つベース2の中心軸線2aを基準として120度回転対称に配置されている。基準面RP及び中心軸線2aは、ロボット1の動作に関わらず不動であり、基準面RPは中心軸線2aに直交している。例えば、中心軸線2aは鉛直に向けられ、基準面RPは水平に配置される。3つの揺動アクチュエータ5は、合計3本のアーム10に個別に対応している。いずれかの揺動アクチュエータ5が動作すると、これに対応するアーム10が揺動軸線10a周りに揺動する。
【0022】
一対のリンク11,12は、アーム10の先端部を挟み且つブラケット3を挟むように配置されている。一対の基端ジョイント13,14は、リンク11,12の基端部をそれぞれアーム10の先端部に回動可能に連結する。先端ジョイント15,16は、リンク11,12の先端部をそれぞれブラケット3に回動可能に連結する。基端ジョイント13,14及び先端ジョイント15,16は、いずれも球対偶を構成している。
【0023】
(アーム機構の構成及び動作)
図2は、アーム機構4の構成及び動作を示す模式図である。図2(a)に示すように、アーム10は、筒状のアーム本体45と、アーム本体45の先端部に設けられた先端アーム47とを備えている。一対の基端ジョイント13,14は、先端アーム47の両端にそれぞれ設けられた一対のボール23,24と、ボール23,24にそれぞれ嵌合する一対のソケット25,26とから構成されている。一対のソケット25,26は、2本のリンク11,12の基端部にそれぞれ固定されている。先端アーム47は、一対の基端ジョイント11,12を互いに連結する上リンク17となる。
【0024】
ブラケット3の縁部にはフランジ30が設けられ、このフランジ30から互いに反対側に突出する一対の下突部31,32が設けられている。一対の先端ジョイント15,16は、下突部31,32の先端にそれぞれ設けられた一対のボール33,34と、ボール33,34にそれぞれ嵌合する一対のソケット35,36とから構成されている。一対のソケット35,36は、2本のリンク11,12の先端部にそれぞれ固定されている。一対の下突部31,32及びこれらの間に介在するフランジ30は、一対の先端ジョイント15,16を互いに連結する下リンク18となる。一対のリンク11,12は互いに同じ長さを有し、上リンク17は下リンク18と同じ長さを有している。
【0025】
図2(b)に弧状矢印で示すとおり、アーム10は、軸線10b周りに回転可能である。この軸線10bは、アーム10の基端部から先端部に向かって延在して上リンク17に直交し、上リンク17の中点を通過している。なお、以下では、アーム10のこのような回転を「自転」と称し、自転の中心となる軸線10bを「自転軸線」と称し、アーム10の自転軸線10b周りの角度位置を「自転角」と称する。
【0026】
図2(a)に示すように、アーム10の自転角が或る基準自転角にあれば、一対のリンク11,12が互いに平行になる。また、一対の基端ジョイント13,14も一対の先端ジョイント15,16も上記基準面RPと平行な平面RP1,RP2上に配置され、上リンク17及び下リンク18が当該平面RP1,RP2上に配置され、上リンク17が下リンク18と平行になる。よって、一対のリンク11,12、一対の基端ジョイント13,14、一対の先端ジョイント15,16、上リンク17及び下リンク18が平行リンクを構成し、ブラケット3も上記基準面RPと平行な平面RP3(図1参照)上に配置される。したがって、自転角が基準自転角のままでアーム10が揺動すると、ブラケット3及び作業用ツール9が、ベース2に対する姿勢を変えることなく3軸方向に移動可能になる。なお、以下では、上リンク17が上記基準面RPと平行な平面RP1上に配置されているときの姿勢を便宜的に「標準姿勢」と称する。下リンク18についても同様とする。
【0027】
図2(b)に示すように、アーム10が基準自転角から変位すると、上リンク17の姿勢が標準姿勢から傾斜していき、一対の基端ジョイント13,14が自転軸10b周りに公転する。これにより、下リンク18の姿勢も標準姿勢から傾斜していく。下リンク18の傾斜に伴って、ブラケット3のベース2に対する姿勢も変わっていく。なお、以下では、上リンク17の標準姿勢に対する傾斜角度を「上リンクの傾斜角」、下リンク18の標準姿勢に対する傾斜角度を「下リンクの傾斜角」と称する。このように、本実施形態では、アーム機構4が1本のアーム10を備え、当該アーム10が自転可能になっており、アーム10の自転に伴って上リンク17の姿勢を変えることができる。なお、上リンク17及び下リンク18の姿勢がこのように変わったときには、一対のリンク11,12、上リンク17及び下リンク18がねじれて同一平面上に配置されなくなるが、当該ねじれがブラケット3及びツール9の姿勢変化に与える影響は小さいので、実施形態の説明では当該ねじれの影響を無視することとする。このため、下リンク18の姿勢と共にブラケット3の姿勢も変えることができ、それによりロボット1の応用性を広げることができる。
【0028】
(制御系)
図3は、図1に示すロボット1の構成を示すブロック図である。図3に示すように、ロボット1は、3つの自転アクチュエータ50を備え、3つの自動アクチュエータ50は3本のアーム10に個別に対応している。アーム10の自転角は、自転アクチュエータ50の動作に応じて変化する。つまり、自転アクチュエータ50を制御することによって上リンク17及び下リンク18の姿勢を意図的に変えることが可能であり、それによりブラケット3及びこれに取り付けられる作業用ツール9の姿勢を変えることが可能となる。
【0029】
ロボット1は、3つの揺動アクチュエータ5及び3つの自転アクチュエータ50を制御する制御器70を備えている。制御器70は、記憶部に記憶された制御プログラムに従って、これらアクチュエータ5,50の動作を制御し、それによりブラケット3及びこれに取り付けられる作業用ツール9の位置及び姿勢を制御する。
【0030】
(動作態様)
図4は、自転アクチュエータ50を動作させたときのブラケット3の姿勢変化の態様を示す模式図である。なお、図4においては、図1とは逆にブラケット3の下面が紙面上方に向けられている。
【0031】
<態様1:1本のアームの単独自転>
図4(a)は、3組のアーム機構4の上リンク17及び下リンク18が全て標準姿勢にあるときから、1本のアーム10を単独で自転させた場合を例示している。このような場合、当該アーム10に対応した下リンク18の中点Mが円弧又は楕円弧を描くようにして、ブラケット3の姿勢が変わっていく。当該中点Mの軌跡をより具体的に言えば、当該中点Mは、自転しない2本のアーム10に対応した2つの下リンク18の延長線同士の交点Pの付近の点Qを頂点とし、点Qを当該中点Mに結ぶ直線を母線Lとした円錐又は楕円錐の底面周に沿って移動する。
【0032】
<態様2:2本のアームの自転>
図4(b)は、3組のアーム機構4の上リンク17及び下リンク18が全て標準姿勢にあるときから、2本のアーム10を同時に自転させた場合、特に、自転させる2本のアーム10が互いに反対方向に同じ速度で自転する場合を例示している。このような場合、自転しないアーム10に対応した下リンク18と垂直な平面上でブラケット3が運動する。例えば、自転する2本のアーム10に対応した2つの下リンク18の延長線同士の交点Pが当該平面上を略上方又は略下方に移動するようにして、ブラケット3の姿勢が変わる。
【0033】
<態様3:3本のアームの自転>
図4(c)は、3組のアーム機構4の上リンク17及び下リンク18が全て標準姿勢にあるときから、3本のアーム10を同時に自転させる場合、特に3本のアーム10が同じ方向に同じ速度で自転する場合を例示している。このような場合、ブラケット3が、基準面RPに垂直な軸線A(ベース2の中心軸線2a(図1参照)に平行な軸線)周りに自転する。
【0034】
以上のように、3本のアーム10のうち何れのアーム10を自転させるのか、自転させるアーム10の自転速度及び自転方向をどのように設定するのかを適宜選択することにより、ブラケット3及びこれに取り付けられる作業用ツール9の姿勢を多様に変化させることができる。
【0035】
図4(a)〜(c)に示す全ての動きを実現するためには、全てのアーム10が自転可能であり、ロボット1が3つの自転アクチュエータ50を備えていることが必要になる。しかし、図4(a)及び(b)に示す動きの実現を目的とするのであれば、少なくとも2本のアーム10が自転可能に構成されていればよく、図4(a)に示すような動きの実現を目的とするのであれば、少なくとも1本のアーム10が自転可能に構成されていればよい。このような場合、自転アクチュエータ50の個数を適宜削減することができる。
【0036】
なお、図4(c)に示す動作態様に関し、アーム10の自転によるブラケット3の自転可動範囲は、例えば±360度といったような大きなものとはならない。このため、ロボット1の用途上、ツール9を大きく回転させる必要があるときには、ツール9の回転のためのアクチュエータ79(図1参照)が専用で設けられていてもよい。逆に、ツール9が少し回転可能であれば十分な場合、ツール専用のアクチュエータを省略したうえで、ツール9が回転可能になり、且つ、図4(a)及び(b)に示したような姿勢変化も実現可能になるので非常に有益である。
【0037】
(本実施形態と従来例との比較)
ここで、図5及び図6を参照しながら、アーム10の自転角と上リンク17の傾斜角との間の関係、アーム10の自転角と下リンク18の傾斜角との間の関係、上リンク17の傾斜角と下リンク18の傾斜角との間の関係について、従来のデルタ型パラレルロボットと比較して説明する。また、この対比を通じて、本実施形態に係るロボット1が奏する、ブラケット3の姿勢を容易に且つ精度良く制御することができるとの作用効果について詳細に説明する。ここでの比較例は、特許文献1に開示されているようなロボットとする。
【0038】
前述したとおり、本実施形態においては、アーム機構4が1本のアーム10及び2本のリンク11,12を備え、一対の基端ジョイント13,14が上リンク17を介して機械的に連結され、一対の先端ジョイント15,16が下リンク18を介して機械的に連結されている。一方、比較例においては、アーム機構が2本のリンク及び2本のロッドを備え、各リンクの基端が円筒対偶を介し基台に連結され、各リンクの先端が球対偶を介し各ロッドの基端に連結され、各ロッドの先端が球対偶を介しブラケットに連結されている。ロッド先端側の2つの球対偶は互いに機械的に連結されていると言えるが、ロッド基端側の2つの球対偶は互いに機械的に連結されていない。このアーム機構の構成の相違を考慮して、比較例では、ロッド基端側の2つの球対偶同士を結ぶ直線を「仮想的上リンク」、ロッド先端側の2つの球対偶同士を結ぶ直線を「下リンク」として説明する。このような仮想的な上リンクを想定することにより、本実施形態に係る上リンク17の挙動を比較例に係るロボットと良好に比較することができる。
【0039】
前述したとおり、本実施形態においては、ブラケット3の姿勢変化を実現するため、自転可能なアームを有したアーム機構4に対し、1つの自転アクチュエータ50が設けられている。一方、比較例では、1組のアーム機構に対して2つのモータが設けられている。この駆動系の構成の相違を考慮して、比較例では、2つのモータが同じ速度で互いに反対側に回転する場合を想定する。この条件の下では、比較例に係る2本のリンクの先端が、互いに反対側に同じ速度で移動し、本実施形態に係る上リンク17の挙動を比較例に係る仮想的上リンクの挙動と良好に比較することができる。
【0040】
以下、1組のアーム機構4のアーム10が自転したとき、その自転に伴って上リンク17の傾斜角及び下リンク18の傾斜角がどのように変化するのかについて説明する。本実施形態におけるアーム自転前におけるアーム機構4の姿勢は、比較例のものと同一とする。ここでは、図5(a)に示すように、アーム自転前において、3組のアーム機構4が何れも標準姿勢であり、且つ、1組のアーム機構4においてはアーム10がリンク11,12と直角を成しているものとする。
【0041】
図5(a)は、アーム自転前における当該1組のアーム機構4を、一対のリンク11,12、上リンク17及び下リンク18が重なるようにして二次元平面に投影して幾何学的に示した模式図である。なお、比較例のアーム機構904は本実施形態に係るアーム機構4に相当し、比較例のリンク910は本実施形態に係るアーム10に相当し、比較例に係るロッド911,912は本実施形態に係るリンク11,12に相当し、比較例に係る基端側球対偶913,914は本実施形態に係る基端ジョイント13,14に相当し、比較例に係る先端側球対偶915,916は本実施形態に係る先端ジョイント15,16に相当し、比較例に係る仮想的上リンク917は本実施形態に係る上リンク17に相当し、比較例に係る下リンク918は本実施形態に係る下リンク18に相当する。
【0042】
図5(b)は、本実施形態において、自転軸線10bが延在する方向に見て示すアーム自転前のアーム機構4の模式図である。図5(b)に示すように、アーム機構4をこの方向に見ると、一対のリンク11,12、上リンク17及び下リンク18が長方形を成し、自転軸線10bが、上リンク17の中点において点状に示される。
【0043】
図5(c)は、本実施形態において、図5(b)と同じ方向に見て示すアーム自転後のアーム機構4の模式図である。アーム10が或る角度だけ自転すると、上リンク17及び下リンク18がその場で回転して傾斜したものと見なすことができる。実際には、上リンク17が傾斜すると、下リンク18が紙面の右方又は左方に寄れるように移動するが、この移動は、上リンク17及び下リンク18の傾斜に比べれば無視可能なほど小さい。そこで、上記のとおり、上リンク17及び下リンク18はその場で回転するものと見なす。上リンク17は、アーム10と同じ角度だけ回転する。つまり、上リンクの傾斜角θ1は、アーム10の基準自転角からの自転角と等しい。
【0044】
本実施形態では、一対の基端ジョイント13,14が上リンク17を介して機械的に連結され、一対の先端ジョイント15,16が下リンク18を介して機械的に連結される。このため、一対の基端ジョイント13,14間の距離が上リンク17の傾斜角θ1に関わらず不変であるし、一対の先端ジョイント13,14間の距離も下リンク15,16の傾斜角に関わらず不変である。このため、アーム自転後において、一対のリンク11,12、上リンク17及び下リンク18は、長方形ではなくなるものの平行四辺形を成す。したがって、下リンク18の傾斜角θ2は、上リンク17の傾斜角θ1と等しい。また、下リンク18の傾斜角θ2は、上リンク17の傾斜角θ1と線形の関係を持つとも言える。
【0045】
図5(d)は、比較例において、リンク910の延在方向に見て示すリンク揺動前のアーム機構904の模式図である。図5(d)に示すように、アーム機構904をこの方向に見ると、本実施形態と同様、一対のロッド911,912、仮想的上リンク917及び下リンク918が長方形を成す。一対のリンク910は、仮想的上リンク917の両端に点状に示される。
【0046】
図5(e)は、比較例において、図5(d)と同じ方向に見て示すリンク揺動後のアーム機構904の模式図である。図5(e)に示すように、比較例においても、下リンク918の左右移動を無視して仮想的上リンク917及び下リンク918がその場で回転して傾斜したものと見なすことができる。しかし、リンク910の先端同士が互いに拘束し合っていないので、リンク910が揺動すると、リンク910の先端が見かけ上は紙面上方又は下方に向けて移動することになる。これにより、リンク910の揺動角が大きくなればなるほど、仮想的上リンク918の見かけ上の長さが大きくなる。これに対し、一対のロッド911,912の長さ、下リンク918の長さは不変である。したがって、一対のロッド911,912がハの字をなす。つまり、一対のロッド911,912の対向間隔が、仮想的上リンク917側ではリンク揺動前よりも大きくなり、下リンク918側ではリンク揺動前よりも小さくなる。このため、仮想的上リンク917の傾斜角が大きくなるにつれて、下リンク918の傾斜角θ92が指数関数的に大きくなっていく。このように、比較例においては、下リンク918の傾斜角θ92が、仮想的上リンク917の傾斜角θ91と非線形の関係を持つ。
【0047】
また、比較例における仮想的上リンク917の傾斜角θ91が本実施形態における上リンク17の傾斜角θ1と同じであっても、比較例におけるリンク910の揺動角が本実施形態におけるアーム10の自転角と同じになるとは限らない。ここで、上リンク17(仮想的上リンク917)の長さをL1、アーム10(リンク910)の揺動軸線から基端ジョイント(リンク910の先端)までの距離をL2とした場合、本実施形態では、アーム10の自転角は、これら上リンク17及びアーム10の長さに関わらず、上リンク17の傾斜角θ1と略等しくなる。比較例においては、リンク910の揺動角をθ90、仮想的上リンク917の傾斜角をθ91とした場合、L2×sinθ90=1/2×L1×tanθ91を満たさなければならない(図5(e)参照)。
【0048】
このように、仮想的上リンク917の傾斜角θ91の正接が、リンク910の揺動角θ90の正弦と関係性を有している。このため、仮想的上リンク917の傾斜角θ91は、リンク910の揺動角θ90の変化に対し複雑な変化を見せることになる。そして、仮想的上リンク917の傾斜角θ91のリンク910の揺動角θ90に対する変化率は、仮想的上リンク917の長さのリンク910の長さに対する比率(L2/L1)に依存する。リンク910が仮想的上リンク917に比して長くなればなるほど、リンク910の揺動角の変化に応じて、仮想的上リンク917の傾斜角θ91が大きく変化する。一般に、リンク910は、仮想的上リンク917よりも長く、およそ7倍から11倍程度である。したがって、比較例における仮想的上リンク917の傾斜角θ91のリンク910の揺動角θ90に対する変化率は、本実施形態に係る上リンク17の傾斜角θ1のアーム10の自転角に対する変化率の7倍から11倍程度になる。
【0049】
図6は、アームの自転角に対する下リンクの傾斜角を示すグラフである。矩形プロットを結ぶ線が本実施形態を表し、丸形プロットを結ぶ線が比較例を表している。比較例では、リンク910の揺動角に対して仮想的上リンク917の傾斜角が大きく変化し、仮想的上リンク917の傾斜角が下リンク918の傾斜角と非線形の関係を有する。このため、ブラケット3の姿勢を精度良く制御するためには、制御器に当該非線形の関係をモデルとして予め記憶しておき、当該モデルを用いた複雑な演算によって線形化処理を行わなくてはならない。また、比較例では、下リンク918を本実施形態の下リンク18と同じ角度だけ傾斜させたければ、リンク910の揺動角を本実施形態のアーム10の自転角の1/7〜1/11程度にまで小さくしなくてはならない。このため、下リンク918の姿勢の制御精度(解像度)が、この比率だけ劣ることになるし、比較例のモータの所要トルクが本実施形態に係る自転アクチュエータ50よりも大きくなる。そして、下リンク918の姿勢の制御精度を向上させたければ、基台に大型の減速機を設ける必要が生じる。
【0050】
これに対し、本実施形態においては、アーム10の自転角が上リンク17の傾斜角と略等しく、上リンク17の傾斜角が下リンク18の傾斜角と略等しい。したがって、アーム10の自転角が下リンク18の傾斜角と略等しく、また、アーム10の自転角が下リンク18の傾斜角と線形の関係を有する。このため、下リンク18を傾斜させてブラケット3の姿勢を変えるにあたり、自転アクチュエータ50への動作指令値を簡便に求めることができる。また、下リンク18の傾斜角のアーム10の自転角に対する変化率が、比較例よりも格段に小さい。このため、自転アクチュエータ50の所要トルクが小さくても済むし、自転アクチュエータ50の回転動力を減速するための減速機を小型化可能となる。
【0051】
図5(f)は、アーム自転後の基端ジョイント14を示す模式図、図5(g)は、リンク揺動後の基端側球対偶914を示す模式図である。図5(f)と図5(g)とを対比するとわかるように、比較例では、一対のロッド911,912がハの字状になる。このため、基端側球対偶914は、紙面上向きの力FVU,紙面水平向きの力FH,紙面下向きの力FVLのうち、鉛直上向きの力を受けることが極めて困難となる。本実施形態では、アーム10の自転前と自転後との間で、一対のリンク11,12、上リンク17及び下リンク18が成す四角形の形状が比較例ほど大きく変化しない。このため、基端ジョイント14で力を受ける面積が上下方向又は左右方向でアンバランスになるのを抑制することができる。このことは、先端ジョイント15,16及び先端側球対偶915,916についても同様のことが言える。結果として、本実施形態においては、高剛性を有したアーム機構4を提供することができる。
【0052】
(揺動アクチュエータと自転アクチュエータの配置)
図7は、図3に示す揺動アクチュエータ5及び自転アクチュエータ50の配置を示すアーム10の断面図である。図7に示すように、ベース2は、減速ボックス41を有している。揺動アクチュエータ5は、例えば電気モータであり、ベース2の減速ボックス41に固定され、その出力軸5aが減速ボックス41内に配置されている。減速ボックス41は、揺動アクチュエータ5の回転動力を減速して揺動シャフト43に伝達する揺動用減速機42を収容している。揺動シャフト43は、減速ボックス41に回転可能に支持されると共にアーム10の基端部に固定されており、この揺動シャフト43の中心軸線が上記揺動軸線10aを成している。揺動アクチュエータ5が動作すると、揺動シャフト43が回転駆動され、アーム10が揺動シャフト43と共に揺動軸線10a周りに揺動する。なお、図3は揺動用減速機42に平歯車列を適用した場合を例示しているが、揺動用減速機42にはどのような動力伝達機構が適用されてもよい。
【0053】
本実施形態に係るアーム10は、前述したアーム本体45及び先端アーム47と共に、アーム本体45と先端アーム47との間に介在する収容体46とを備えている。揺動シャフト43は、アーム本体45の基端部に固定されている。収容体46は、ベース2側の第1壁46aと、第1壁46aから離隔対向した基端ジョイント13,14側の第2壁46bと、これら第1壁46a及び第2壁46bに囲まれた内部空間46cとを有している。第1壁46aは、その中心部においてアーム本体45の先端部に固着される。
【0054】
自転アクチュエータ50は、アーム10に取り付けられている。特に、本実施形態においては、自転アクチュエータ50が、収容体46の第1壁46aに取り付けられており、アーム10全体で見ればアーム10の先端部に配置されている。自転アクチュエータ50は、例えば電気モータである。自転アクチュエータ50の出力軸50aは収容体46の内部空間46cに配置され、自転アクチュエータ50のハウジング50bは、第1壁46aの外面からアーム本体45と同じ側に突出している。収容体46の内部空間46cには、自転アクチュエータ50の回転動力を先端アーム47に伝達する動力伝達機構51が収容されている。
【0055】
動力伝達機構51は、収容体46に回転可能に支持されたカウンタ軸53と、自転アクチュエータ50の回転動力を減速してカウンタ軸53に伝達する自転用減速機52とを備えている。本実施形態では、カウンタ軸53が、自転アクチュエータ50の出力軸50aと平行に配置される。自転用減速機52は、出力軸50aとカウンタ軸53との間に介在する平歯車列であってもよい。この場合の自転用減速機53は、出力軸50a上に固定された駆動歯車52aと、カウンタ軸53上に固定されると共に駆動歯車52aと噛合する従動歯車52bとを有する。なお、自転用減速機52も揺動用減速機42と同様にして平歯車列に限定されず、その他の動力伝達機構を適用してもよい。
【0056】
カウンタ軸52は、収容体46の第2壁46bを貫通し、第2壁46bから収容体46の外に突出した突出端部52aを有している。先端アーム47は、カウンタ軸53の突出端部53aに固定される。前述したとおり、先端アーム47の両端には、基端ジョイント13,14が設けられる。カウンタ軸53の軸線は、先端アーム47の中間点を通過しており、基端ジョイント13,14の中心同士を結ぶ線に直交する。
【0057】
自転アクチュエータ50が動作すると、自転アクチュエータ50の回転動力が自転用減速機53を介してカウンタ軸52に伝達される。カウンタ軸53が回転駆動されると、先端アーム47がカウンタ軸53の軸線周りに回転する。これにより上リンク17の傾斜角が変わり、一対の基端ジョイント13,14がカウンタ軸53の軸線周りに公転する。このように、カウンタ軸53の軸線が、前述の自転軸線10bを成している。
【0058】
上記自転アクチュエータ50の配置によれば、自転アクチュエータ50がアーム10、特にアーム10の先端部に取り付けられている。このため、動力伝達機構51を小型化することが可能になるし、自転アクチュエータ50の回転動力によって回される部材の重量が小さくなる。このため、自転アクチュエータ50の所要トルクを小さくすることができ、自転アクチュエータ50を小型化可能になる。特に、本実施形態では、前述したとおり、自転アクチュエータ50の回転動力を大きく減速しなくても、ブラケット3の姿勢を精度良く制御することが可能である。このため、アーム10の先端部に設けられた収容体56に動力伝達機構51を収容するという構造を、比較的容易に実現することができる。また、自転アクチュエータ50のハウジング50bがアーム10の外に露出しているので、自転アクチュエータ50及び動力伝達機構51のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0059】
(付勢ユニット)
図8は、図1に示すアーム機構4の一部を示す正面図である。図8に示すように、アーム機構4は、一対のリンク11,12を互いに近付く方向に付勢するための付勢ユニット60を備えている。図1に示すように、1組のアーム機構4に対して、リンク11,12の延在方向に離れた2個の付勢ユニット60が設けられている。図8は、基端側の付勢ユニット60のみ示しているが、2個の付勢ユニット60は互いに同じ構造であるため、先端側のものについては詳細な説明を省略する。
【0060】
図8に示すように、付勢ユニット60は、一対のリンク11,12の間に配置されるコイルスプリング61と、コイルスプリング61の一端部を第1のリンク11に連結する第1連結具62と、コイルスプリング61の他端部を第2のリンク12に連結する第2連結具63とを有している。第1連結具61は、平面視でV字又はY字に形成されている。第1連結具62は、コイルスプリング61の一端部に揺動可能に連結された基端部62aと、基端部から二股に枝分かれした先端部62bとを有する。第1のリンク11は、二股の先端部62bの間に挟まれ、二股の先端部62bは何れも、第1のリンク11に揺動可能に連結される。基端部62aの枢軸は、先端部62bの枢軸と略平行である。第2連結具63も、第1連結具62と同様であり、コイルスプリング61の他端部に揺動可能な基端部63aと、第2のリンク12に揺動可能な二股の先端部63bとを有している。
【0061】
上記付勢ユニット60の構成によれば、ソケット25,26がボール23,24から脱落しようとするときには、リンク11,12が互いに遠ざかろうとするのでコイルスプリング61が引っ張られる。このとき、コイルスプリング61は圧縮する方向に弾発力を発揮し、リンク11,12を互いに近付く方向に付勢する。これにより、ソケット25,26がボール23,24から脱落するのを防ぐことができる。
【0062】
そして、アーム10が自転して上リンク17が傾斜するときには、リンク11,12及び基端ジョイント13,14が、リンク11,12の延在方向に対し平行な軸線(図6でZ軸とする)周りにねじられる場合がある。コイルスプリング61は剥き出しになっている。このため、リンク及び基端ジョイントがZ軸周りにねじられるような場合に、コイルスプリング61がこのねじれに追従して変形する。このように、付勢ユニット60はアーム10自転時におけるリンク11,12及び基端ジョイント13,14のZ軸周りのねじれを許容することができ、ブラケット3の姿勢の変化が付勢ユニット60によって妨げられないようになっている。
【0063】
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態に係る揺動アクチュエータ5及び自転アクチュエータ250の配置を示すアーム210の断面図である。図9に示すように、自転アクチュエータ250は、アーム210に内蔵されていてもよい。この場合、収容体246の第1壁246aに貫通孔246dが設けられ、自転アクチュエータ250が、この貫通孔246dを塞ぐようにして第1壁246aに固定される。自転アクチュエータ250のハウジング250bは、第1壁246aの外面からアーム本体245内でアーム本体245の基端部に向かうようにして突出する。自転アクチュエータ250の出力軸250aは、貫通孔246dを通って収容体246の内部空間246c内へと延びている。動力伝達機構251は、第1実施形態のような自転用減速機を有さず、カウンタ軸253のみを有している。このカウンタ軸253は、出力軸250aと同一軸線上に配置され、出力軸250aに図示しない軸継手を介して連結されている。本実施形態でも、カウンタ軸253の軸線が自転軸線10bを成しており、第1実施形態と同様にして、ブラケットの姿勢を容易に且つ精度良く制御可能になる。
【0064】
[第3実施形態]
図10は、本発明の第3実施形態に係る揺動アクチュエータ5及び自転アクチュエータ350の配置を示すアーム310の断面図である。図10に示すように、本実施形態では、自転アクチュエータ350が、ベース2の減速ボックス341に固定されている。自転アクチュエータ350の回転動力をマウントアーム47に伝達する動力伝達機構351は、減速ボックス341、揺動シャフト343、アーム本体345及び収容体346に内蔵されている。揺動シャフト343は、第1実施形態と同様に配置されているが、動力伝達機構351を内蔵するために、両端が開口した内部空間343aを有している。
【0065】
自転アクチュエータ350は、減速ボックス341に固定され、自転アクチュエータ350の出力軸350aは、減速ボックス341内に配置され、揺動アクチュエータ5の出力軸5aと平行に延びている。自転アクチュエータ350のハウジング350bは、減速ボックス341の外に配置されている。動力伝達機構351は、第1自転用減速機352、中間軸353、第2自転用減速機354及び出力軸355を有している。第1自転用減速機352は、減速ボックス341内に配置されている。中間軸353は、自転アクチュエータ350の出力軸350aと平行に配置され、揺動シャフト343の内部空間343cに挿し通されている。第1自転用減速機352は、出力軸350aと中間軸353との間に介在する平歯車列であってもよい。この場合の第1自転用減速機352は、出力軸350a上に固定された駆動歯車352aと、中間軸353上に固定されると共に駆動歯車352aと噛合する従動歯車352bとを有する。中間軸353は、揺動シャフト343と同一軸線上に配置され、揺動シャフト343に回転可能に支持されている。第1自転用減速機352は、揺動用減速機342よりもアーム本体346から遠位に配置されている。そこで、揺動用減速機342は、中間軸353を挿通させるべく、揺動シャフト343の内部空間343cに連通した貫通孔342aを有している。
【0066】
中間軸353は、揺動シャフト343を通り抜け、アーム本体345内にまで達している。動力伝達機構351の出力軸355は、アーム本体345内をアーム本体345の長手方向に沿って延在し、中間軸353とは直交している。第2自転用減速機354は、アーム本体346内に収容され且つ中間軸353と出力軸355との間に介在する傘歯車列であってもよい。この場合の第2自転用減速機354は、中間軸353の端部に固定された駆動傘歯車354aと、出力軸355の端部に固定されると共に駆動傘歯車354aに噛合する従動傘歯車354bとを有する。出力軸355は、アーム本体345、収容体346を通り抜け、先端アーム347に固定されている。収容体346は、出力軸355を挿通するため、第1壁346aの中心部に貫通孔346dを有する。
【0067】
このように、自転用アクチュエータ350はベース2に取り付けられていてもよい。このようにすれば、アーム310が揺動するときに自転用アクチュエータ350に荷重が作用するのを避けることができる。
【0068】
[第4実施形態]
図11は、本発明の第4施形態に係る揺動アクチュエータ5及び自転アクチュエータ350の配置を示すアーム410の断面図である。図11に示すように、本実施形態に係るアーム410は、アーム基部445と、アーム本体446と、先端アーム47とを有している。先端アーム47は、アーム本体446の先端部に固定されている。揺動アクチュエータ5、減速ボックス341、揺動用減速機342、揺動シャフト343及び自転用アクチュエータ350は、第3実施形態と同様である。
【0069】
揺動シャフト343は、アーム基部445に固定される。自転アクチュエータ350の出力軸350aは、減速ボックス341内に配置される。自転アクチュエータ350の回転動力をマウントアーム47に伝達する動力伝達機構451は、第1自転用減速機352、中間軸353、第2自転用減速機454及び出力軸455を有する。第1自転用減速機352及び中間軸353は、第3実施形態と同様である。中間軸353の端部は、アーム基部445の内部に達している。出力軸455は、中間軸353と直交してアーム基部445の内部を延び、アーム本体446の基端部に連結されている。第2自転用減速機454は、アーム基部445内に収容され且つ中間軸353と出力軸455との間に介在する傘歯車列であってもよい。この場合の第2自転用減速機454は、中間軸353の端部に固定された駆動傘歯車454aと、出力軸455の端部に固定されると共に駆動傘歯車454aに噛合する従動傘歯車454bとを有する。
【0070】
本実施形態では、揺動アクチュエータ5が動作すると、揺動シャフト343が回転駆動され、アーム基部445が揺動シャフト343と共に揺動軸線10a周りに揺動する。すると、出力軸455を介してアーム基部445に連結されたアーム本体446と、アーム本体446に固定された先端アーム47が、アーム基部445と共に揺動する。自転アクチュエータ350が動作すると、出力軸455が回転駆動され、アーム本体446が出力軸455と共に出力軸455の軸線周りに回転する。これに伴い、先端アーム47がアーム本体446と共に回転する。第1〜第3実施形態においては、アームのうち先端アームのみが自転していたが、本実施形態のように、アーム本体が自転するような構成であってもよい。
【0071】
[第5実施形態]
図12は、本発明の第5実施形態に係るアーム機構504の一部を示す正面図である。図12に示すように、一対の基端ジョイント513,514は、先端アーム47の両端に設けられたボール523,524と、ボール523,524を保持するソケット525,526とを有している。ソケット525,526は、断面視においてボール523,524を上下方向に挟み込むようにして支持するよう構成されていてもよい。このようにすれば、ソケット525,526がボール523,524に一体的に取り付けられる。すると、リンク11,12がアーム10から脱落するおそれを低減することができる。したがって、本実施形態においては、第1実施形態に係る付勢ユニットを省略することができる。図12では、基端ジョイント513,514を示しているが、先端ジョイントも同様に変更可能である。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記構成は一例であり、本発明の範囲内において適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、ブラケットの姿勢を容易に且つ精度良く制御可能なデルタ型パラレルロボットを提供することができるという作用効果を奏し、デルタ型パラレルロボットに適用されると有益である。
【符号の説明】
【0074】
1 デルタ型パラレルロボット
2 ベース
3 ブラケット
4 アーム機構
5 揺動アクチュエータ
9 作業用ツール
10 アーム
11,12 リンク
13,14 基端ジョイント
15,16 先端ジョイント
17 上リンク
18 下リンク
47 先端アーム
50 自転アクチュエータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースと、ツールを取り付けるためのブラケットと、ベースにブラケットを連結する3組のアーム機構とを備えるデルタ型パラレルロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
デルタ型パラレルロボットは、ベースと、ツールを取り付けるためのブラケットと、ベースにブラケットを連結する3組のアーム機構とを備えている。一般に、アーム機構は、平行リンクを構成する上リンク、一対のリンク及び下リンクを有し、ベースは水平に配置される。アーム機構は、上リンク及び下リンクが水平な姿勢を保つようにして動作する。これにより、ブラケット及びツールが、ベースに対する姿勢を変えず、水平な姿勢を保って移動可能になる。この特性を活用して、食品工場等におけるピッキング作業にデルタ型パラレルロボットが広く用いられている。必要に応じてブラケット及びツールのベースに対する姿勢も変えることが可能になれば、デルタ型パラレルロボットの作業性及び応用性が広がって有益である。
【0003】
特許文献1は、6自由度制御可能なブラケットを備えるデルタ型パラレルロボットを開示している。このデルタ型パラレルロボットは3組のアーム機構を有し、各アーム機構が2本のリンク及びロッドを有している。各リンク基端が基台に揺動可能に連結され、各リンク先端が対応するロッド基端に球対偶を介して連結され、各ロッド先端が球対偶を介してブラケットに連結されている。基台にはリンクを個別に駆動する合計6個の駆動モータが設けられている。なお、特許文献1に開示されるロボットの実際の構造では、ロッド先端の球対偶同士を結ぶ下リンクは存在するが、ロッド基端(リンク先端)の球対偶同士を結ぶ上リンクが存在しない。以下では、説明の便宜上、ロッド基端(リンク先端)の球対偶同士を結んだ線を「仮想的上リンク」と称する。
【0004】
各アーム機構に対応する2個の駆動モータが同じ角度に動作すれば、アーム機構の仮想的上リンクのベースに対する姿勢が変わらず、ブラケット及びツールをベースに対する姿勢を変えずに移動させることができる。2個の駆動モータが異なる角度で動作すれば、仮想的上リンクのベースに対する姿勢が変わって仮想的上リンクが水平でなくなり、ツール及びブラケットのベースに対する姿勢が変わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−270077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のパラレルロボットにおいては、リンク基端の揺動支点からリンク先端(即ちロッド基端)の回動中心までの距離が長い。このため、ブラケットの姿勢を変えようとするとき、リンクを揺動させるための所要トルクが大きくなる。また、リンクの揺動角に対する仮想的上リンクの傾斜角の変化率が大きくなる。したがって、ブラケットの姿勢を精度良く制御することが困難となる。このようなパラレルロボットにおいて姿勢を制御するためには、減速率の大きい減速機を設ける必要がある。
【0007】
また、仮想的上リンクの傾斜角と、下リンクの傾斜角とが非線形の関係にあり、リンクの揺動角が大きくなるにつれて下リンクの傾斜角が指数関数的に大きくなる。このため、ブラケット及びツールのベースに対する姿勢変更量が大きくなればなるほど、その姿勢を精度良く制御することが困難となる。このようなパラレルロボットにおいて姿勢を制御するためには、予め上記非線形の関係を表した複雑なモデルを作成しておき、制御器で当該モデルを用いた複雑な演算によって線形化処理を行わなければならない。
【0008】
そこで本発明は、ブラケットの姿勢を容易に且つ精度良く制御可能なデルタ型パラレルロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るデルタ型パラレルロボットは、ベースと、ツールを取り付けるためのブラケットと、前記ベースに前記ブラケットを連結する3組のアーム機構と、を備え、前記各アーム機構が、基端部が前記ベースに揺動可能に連結された1本のアームと、前記アームの基端部を挟み且つ前記ブラケットを挟むようにして配置された一対のリンクと、前記一対のリンクをそれぞれ前記アームの基端部に回動可能に連結する一対の基端ジョイントと、前記一対のリンクをそれぞれ前記ブラケットに回動可能に連結する一対の先端ジョイントと、を有し、前記一対のリンク、前記一対の基端ジョイント及び前記一対の先端ジョイントが平行リンクを構成可能に配置され、前記3組のアーム機構のうち少なくとも一組は、前記アームの少なくとも前記先端部が前記アームの軸心周りに回転可能なように構成されている。
【0010】
前記構成によれば、アームが軸心周りの回転(以下、単に「自転」と称す)を行うと、当該アームに対応する一対の基端ジョイントがアームの自転軸線(つまり、アームの軸心)周りに公転する。すると、アーム機構が変形し、ブラケットのベースに対する姿勢を変えることができる。このとき基端ジョイントは、アームの自転軸線からの距離を半径として回転することになる。したがって、基端ジョイントの回転半径を小さくすることができるし、アームの自転角度に対するブラケットの姿勢変化量が小さくなる。すると、アームを自転させるための所要トルクが小さくて済むし、ブラケットの姿勢を精度良く制御することができる。また、アームが自転したときに、一対の基端ジョイント間の見かけ上の距離が変わらないので、基端ジョイントの傾斜角と先端ジョイントの傾斜角とが略等しくなる。すると、アームの自転角度と先端ジョイントの傾斜角とが略線形の関係を満たすようになる。したがって、複雑な演算を行わなくても、ブラケットの姿勢を精度良く制御することができる。
【0011】
前記3組のアーム機構のうち複数のアーム機構が、前記アームの少なくとも前記先端部が前記アームの軸心周りに回転可能なように構成されていてもよい。前記構成によれば、ブラケットの姿勢を複雑に変えることができる。一例として、ブラケットを、自転しないアームに対応する一対の先端ジョイント同士を結ぶ直線と垂直な平面上で運動させることが可能になる。
【0012】
前記3組のアーム機構の全てが、前記アームの少なくとも前記先端部が前記アームの軸心周りに回転可能なように構成されていてもよい。前記構成によれば、ブラケットの姿勢を複雑に変えることができる。一例として、ブラケットを自転させることが可能になる。
【0013】
前記アームを前記アームの軸心周りに回転させる自転アクチュエータを更に備え、前記自転アクチュエータが、前記ベースに取り付けられていてもよい。前記構成によれば、自転アクチュエータがベースに取り付けられるので、アームが揺動するときに自転アクチュエータに荷重が作用するのを避けることができる。
【0014】
前記アームを前記アームの軸心周りに回転させる自転アクチュエータを更に備え、前記自転アクチュエータが、前記アームに取り付けられていてもよい。前記構成によれば、自転アクチュエータをアームに取り付けるので、自転アクチュエータの動力を伝達する機構を省略し又は小型化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブラケットの姿勢を容易に且つ精度良く制御可能なデルタ型パラレルロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係るデルタ型パラレルロボットの側面図である。
【図2】図1に示すアーム機構の構成及び動作を示す模式図である。図2(a)は、3本のアームの自転角がいずれも基準自転角にある状態、図2(b)は、アームの自転角が基準自転角から変位した状態を示している。
【図3】図1に示すデルタ型パラレルロボットの構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す自転アクチュエータを動作させたときのブラケットの姿勢変化の態様を示す模式図である。図4(a)は、3組のアーム機構の上リンク及び下リンクが全て標準姿勢にあるときから、1本のアームを単独で自転させた場合を例示している。図4(b)は、3組のアーム機構の上リンク及び下リンクが全て標準姿勢にあるときから、2本のアームを同時に自転させた場合を例示している。図4(c)は、3組のアーム機構の上リンク及び下リンクが全て標準姿勢にあるときから、3本のアームを同時に自転させた場合を例示している。
【図5】図5(a)は、アーム自転前における1組のアーム機構を幾何学的に示した模式図である。図5(b)は、第1実施形態において、自転軸線の延在方向に見て示すアーム自転前のアーム機構の模式図である。図5(c)は、第1実施形態において、図5(b)と同じ方向に見て示すアーム自転後のアーム機構の模式図である。図5(d)は、比較例において、リンクの延在方向に見て示すリンク揺動前のアーム機構の模式図である。図5(e)は、比較例において、図5(d)と同じ方向に見て示すリンク揺動後のアーム機構の模式図である。図5(f)は、第1実施形態において、アーム自転後の基端ジョイントを示す模式図、図5(g)は、比較例において、リンク揺動後の基端側球対偶を示す模式図である。
【図6】第1実施形態におけるアーム自転角と下リンクの傾斜角との関係、比較例におけるリンク揺動角と下リンクの傾斜角との関係を示すグラフである。
【図7】図3に示す揺動アクチュエータ及び自転アクチュエータの配置を示すアームの断面図である。
【図8】図2に示すアームの一部を示す正面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る揺動アクチュエータ及び自転アクチュエータの配置を示すアームの断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る揺動アクチュエータ及び自転アクチュエータの配置を示すアームの断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る揺動アクチュエータ及び自転アクチュエータの配置を示すアームの断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係るアームの一部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。同一又は相当する要素には全図を通じて同一の符号を付して重複する詳細な説明を省略する。なお、以下では、デルタ型パラレルロボットを単に「ロボット」と称する場合がある。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るロボット1の側面図である。図1に示すロボット1は、作業用ツール9の位置だけでなく姿勢も変えることができ、従前一般的なロボットよりも広範な応用性を有している。例えば、このロボット1は、食品、薬品、化粧品又は小型電装品等の生産設備90内で、ピッキング作業、箱詰め作業及び部品組立作業等の各種作業に好適に利用される。
【0019】
(全体構成)
図1に示すように、ロボット1は、ベース2と、ブラケット3と、3組のアーム機構4と、3つの揺動アクチュエータ5とを備えている。ベース2は、例えばバケット状に形成され、架台91に固定される。ブラケット3は、例えば略平板状に形成されており、ブラケット3の下面に作業用ツール9が取外し可能に取り付けられる。各アーム機構4は、ブラケット3をベース2に連結している。
【0020】
各アーム機構4は、1本のアーム10と、一対のリンク11,12と、一対の基端ジョイント13,14と、一対の先端ジョイント15,16とを有しており、一対のリンク11,12、一対の基端ジョイント13,14及び一対の先端ジョイント15,16は平行リンクを構成可能に配置されている。「平行リンクを構成可能に配置」とは、一対のリンク11,12と、一対の基端ジョイント13,14と、一対の先端ジョイント15,16と、一対の基端ジョイント13,14同士を結ぶ上リンク17と、一対の先端ジョイント15,16同士を結ぶ下リンク18とによって平行リンクを構成することができるのは勿論、状況に応じて、上リンク17及び下リンク18の姿勢を意図的に変えることも可能であることを意味する。
【0021】
アーム10の基端部は、ベース2に揺動可能に連結されている。アーム10の揺動軸線10aは、基準面RP内に配置され且つベース2の中心軸線2aを基準として120度回転対称に配置されている。基準面RP及び中心軸線2aは、ロボット1の動作に関わらず不動であり、基準面RPは中心軸線2aに直交している。例えば、中心軸線2aは鉛直に向けられ、基準面RPは水平に配置される。3つの揺動アクチュエータ5は、合計3本のアーム10に個別に対応している。いずれかの揺動アクチュエータ5が動作すると、これに対応するアーム10が揺動軸線10a周りに揺動する。
【0022】
一対のリンク11,12は、アーム10の先端部を挟み且つブラケット3を挟むように配置されている。一対の基端ジョイント13,14は、リンク11,12の基端部をそれぞれアーム10の先端部に回動可能に連結する。先端ジョイント15,16は、リンク11,12の先端部をそれぞれブラケット3に回動可能に連結する。基端ジョイント13,14及び先端ジョイント15,16は、いずれも球対偶を構成している。
【0023】
(アーム機構の構成及び動作)
図2は、アーム機構4の構成及び動作を示す模式図である。図2(a)に示すように、アーム10は、筒状のアーム本体45と、アーム本体45の先端部に設けられた先端アーム47とを備えている。一対の基端ジョイント13,14は、先端アーム47の両端にそれぞれ設けられた一対のボール23,24と、ボール23,24にそれぞれ嵌合する一対のソケット25,26とから構成されている。一対のソケット25,26は、2本のリンク11,12の基端部にそれぞれ固定されている。先端アーム47は、一対の基端ジョイント11,12を互いに連結する上リンク17となる。
【0024】
ブラケット3の縁部にはフランジ30が設けられ、このフランジ30から互いに反対側に突出する一対の下突部31,32が設けられている。一対の先端ジョイント15,16は、下突部31,32の先端にそれぞれ設けられた一対のボール33,34と、ボール33,34にそれぞれ嵌合する一対のソケット35,36とから構成されている。一対のソケット35,36は、2本のリンク11,12の先端部にそれぞれ固定されている。一対の下突部31,32及びこれらの間に介在するフランジ30は、一対の先端ジョイント15,16を互いに連結する下リンク18となる。一対のリンク11,12は互いに同じ長さを有し、上リンク17は下リンク18と同じ長さを有している。
【0025】
図2(b)に弧状矢印で示すとおり、アーム10は、軸線10b周りに回転可能である。この軸線10bは、アーム10の基端部から先端部に向かって延在して上リンク17に直交し、上リンク17の中点を通過している。なお、以下では、アーム10のこのような回転を「自転」と称し、自転の中心となる軸線10bを「自転軸線」と称し、アーム10の自転軸線10b周りの角度位置を「自転角」と称する。
【0026】
図2(a)に示すように、アーム10の自転角が或る基準自転角にあれば、一対のリンク11,12が互いに平行になる。また、一対の基端ジョイント13,14も一対の先端ジョイント15,16も上記基準面RPと平行な平面RP1,RP2上に配置され、上リンク17及び下リンク18が当該平面RP1,RP2上に配置され、上リンク17が下リンク18と平行になる。よって、一対のリンク11,12、一対の基端ジョイント13,14、一対の先端ジョイント15,16、上リンク17及び下リンク18が平行リンクを構成し、ブラケット3も上記基準面RPと平行な平面RP3(図1参照)上に配置される。したがって、自転角が基準自転角のままでアーム10が揺動すると、ブラケット3及び作業用ツール9が、ベース2に対する姿勢を変えることなく3軸方向に移動可能になる。なお、以下では、上リンク17が上記基準面RPと平行な平面RP1上に配置されているときの姿勢を便宜的に「標準姿勢」と称する。下リンク18についても同様とする。
【0027】
図2(b)に示すように、アーム10が基準自転角から変位すると、上リンク17の姿勢が標準姿勢から傾斜していき、一対の基端ジョイント13,14が自転軸10b周りに公転する。これにより、下リンク18の姿勢も標準姿勢から傾斜していく。下リンク18の傾斜に伴って、ブラケット3のベース2に対する姿勢も変わっていく。なお、以下では、上リンク17の標準姿勢に対する傾斜角度を「上リンクの傾斜角」、下リンク18の標準姿勢に対する傾斜角度を「下リンクの傾斜角」と称する。このように、本実施形態では、アーム機構4が1本のアーム10を備え、当該アーム10が自転可能になっており、アーム10の自転に伴って上リンク17の姿勢を変えることができる。なお、上リンク17及び下リンク18の姿勢がこのように変わったときには、一対のリンク11,12、上リンク17及び下リンク18がねじれて同一平面上に配置されなくなるが、当該ねじれがブラケット3及びツール9の姿勢変化に与える影響は小さいので、実施形態の説明では当該ねじれの影響を無視することとする。このため、下リンク18の姿勢と共にブラケット3の姿勢も変えることができ、それによりロボット1の応用性を広げることができる。
【0028】
(制御系)
図3は、図1に示すロボット1の構成を示すブロック図である。図3に示すように、ロボット1は、3つの自転アクチュエータ50を備え、3つの自動アクチュエータ50は3本のアーム10に個別に対応している。アーム10の自転角は、自転アクチュエータ50の動作に応じて変化する。つまり、自転アクチュエータ50を制御することによって上リンク17及び下リンク18の姿勢を意図的に変えることが可能であり、それによりブラケット3及びこれに取り付けられる作業用ツール9の姿勢を変えることが可能となる。
【0029】
ロボット1は、3つの揺動アクチュエータ5及び3つの自転アクチュエータ50を制御する制御器70を備えている。制御器70は、記憶部に記憶された制御プログラムに従って、これらアクチュエータ5,50の動作を制御し、それによりブラケット3及びこれに取り付けられる作業用ツール9の位置及び姿勢を制御する。
【0030】
(動作態様)
図4は、自転アクチュエータ50を動作させたときのブラケット3の姿勢変化の態様を示す模式図である。なお、図4においては、図1とは逆にブラケット3の下面が紙面上方に向けられている。
【0031】
<態様1:1本のアームの単独自転>
図4(a)は、3組のアーム機構4の上リンク17及び下リンク18が全て標準姿勢にあるときから、1本のアーム10を単独で自転させた場合を例示している。このような場合、当該アーム10に対応した下リンク18の中点Mが円弧又は楕円弧を描くようにして、ブラケット3の姿勢が変わっていく。当該中点Mの軌跡をより具体的に言えば、当該中点Mは、自転しない2本のアーム10に対応した2つの下リンク18の延長線同士の交点Pの付近の点Qを頂点とし、点Qを当該中点Mに結ぶ直線を母線Lとした円錐又は楕円錐の底面周に沿って移動する。
【0032】
<態様2:2本のアームの自転>
図4(b)は、3組のアーム機構4の上リンク17及び下リンク18が全て標準姿勢にあるときから、2本のアーム10を同時に自転させた場合、特に、自転させる2本のアーム10が互いに反対方向に同じ速度で自転する場合を例示している。このような場合、自転しないアーム10に対応した下リンク18と垂直な平面上でブラケット3が運動する。例えば、自転する2本のアーム10に対応した2つの下リンク18の延長線同士の交点Pが当該平面上を略上方又は略下方に移動するようにして、ブラケット3の姿勢が変わる。
【0033】
<態様3:3本のアームの自転>
図4(c)は、3組のアーム機構4の上リンク17及び下リンク18が全て標準姿勢にあるときから、3本のアーム10を同時に自転させる場合、特に3本のアーム10が同じ方向に同じ速度で自転する場合を例示している。このような場合、ブラケット3が、基準面RPに垂直な軸線A(ベース2の中心軸線2a(図1参照)に平行な軸線)周りに自転する。
【0034】
以上のように、3本のアーム10のうち何れのアーム10を自転させるのか、自転させるアーム10の自転速度及び自転方向をどのように設定するのかを適宜選択することにより、ブラケット3及びこれに取り付けられる作業用ツール9の姿勢を多様に変化させることができる。
【0035】
図4(a)〜(c)に示す全ての動きを実現するためには、全てのアーム10が自転可能であり、ロボット1が3つの自転アクチュエータ50を備えていることが必要になる。しかし、図4(a)及び(b)に示す動きの実現を目的とするのであれば、少なくとも2本のアーム10が自転可能に構成されていればよく、図4(a)に示すような動きの実現を目的とするのであれば、少なくとも1本のアーム10が自転可能に構成されていればよい。このような場合、自転アクチュエータ50の個数を適宜削減することができる。
【0036】
なお、図4(c)に示す動作態様に関し、アーム10の自転によるブラケット3の自転可動範囲は、例えば±360度といったような大きなものとはならない。このため、ロボット1の用途上、ツール9を大きく回転させる必要があるときには、ツール9の回転のためのアクチュエータ79(図1参照)が専用で設けられていてもよい。逆に、ツール9が少し回転可能であれば十分な場合、ツール専用のアクチュエータを省略したうえで、ツール9が回転可能になり、且つ、図4(a)及び(b)に示したような姿勢変化も実現可能になるので非常に有益である。
【0037】
(本実施形態と従来例との比較)
ここで、図5及び図6を参照しながら、アーム10の自転角と上リンク17の傾斜角との間の関係、アーム10の自転角と下リンク18の傾斜角との間の関係、上リンク17の傾斜角と下リンク18の傾斜角との間の関係について、従来のデルタ型パラレルロボットと比較して説明する。また、この対比を通じて、本実施形態に係るロボット1が奏する、ブラケット3の姿勢を容易に且つ精度良く制御することができるとの作用効果について詳細に説明する。ここでの比較例は、特許文献1に開示されているようなロボットとする。
【0038】
前述したとおり、本実施形態においては、アーム機構4が1本のアーム10及び2本のリンク11,12を備え、一対の基端ジョイント13,14が上リンク17を介して機械的に連結され、一対の先端ジョイント15,16が下リンク18を介して機械的に連結されている。一方、比較例においては、アーム機構が2本のリンク及び2本のロッドを備え、各リンクの基端が円筒対偶を介し基台に連結され、各リンクの先端が球対偶を介し各ロッドの基端に連結され、各ロッドの先端が球対偶を介しブラケットに連結されている。ロッド先端側の2つの球対偶は互いに機械的に連結されていると言えるが、ロッド基端側の2つの球対偶は互いに機械的に連結されていない。このアーム機構の構成の相違を考慮して、比較例では、ロッド基端側の2つの球対偶同士を結ぶ直線を「仮想的上リンク」、ロッド先端側の2つの球対偶同士を結ぶ直線を「下リンク」として説明する。このような仮想的な上リンクを想定することにより、本実施形態に係る上リンク17の挙動を比較例に係るロボットと良好に比較することができる。
【0039】
前述したとおり、本実施形態においては、ブラケット3の姿勢変化を実現するため、自転可能なアームを有したアーム機構4に対し、1つの自転アクチュエータ50が設けられている。一方、比較例では、1組のアーム機構に対して2つのモータが設けられている。この駆動系の構成の相違を考慮して、比較例では、2つのモータが同じ速度で互いに反対側に回転する場合を想定する。この条件の下では、比較例に係る2本のリンクの先端が、互いに反対側に同じ速度で移動し、本実施形態に係る上リンク17の挙動を比較例に係る仮想的上リンクの挙動と良好に比較することができる。
【0040】
以下、1組のアーム機構4のアーム10が自転したとき、その自転に伴って上リンク17の傾斜角及び下リンク18の傾斜角がどのように変化するのかについて説明する。本実施形態におけるアーム自転前におけるアーム機構4の姿勢は、比較例のものと同一とする。ここでは、図5(a)に示すように、アーム自転前において、3組のアーム機構4が何れも標準姿勢であり、且つ、1組のアーム機構4においてはアーム10がリンク11,12と直角を成しているものとする。
【0041】
図5(a)は、アーム自転前における当該1組のアーム機構4を、一対のリンク11,12、上リンク17及び下リンク18が重なるようにして二次元平面に投影して幾何学的に示した模式図である。なお、比較例のアーム機構904は本実施形態に係るアーム機構4に相当し、比較例のリンク910は本実施形態に係るアーム10に相当し、比較例に係るロッド911,912は本実施形態に係るリンク11,12に相当し、比較例に係る基端側球対偶913,914は本実施形態に係る基端ジョイント13,14に相当し、比較例に係る先端側球対偶915,916は本実施形態に係る先端ジョイント15,16に相当し、比較例に係る仮想的上リンク917は本実施形態に係る上リンク17に相当し、比較例に係る下リンク918は本実施形態に係る下リンク18に相当する。
【0042】
図5(b)は、本実施形態において、自転軸線10bが延在する方向に見て示すアーム自転前のアーム機構4の模式図である。図5(b)に示すように、アーム機構4をこの方向に見ると、一対のリンク11,12、上リンク17及び下リンク18が長方形を成し、自転軸線10bが、上リンク17の中点において点状に示される。
【0043】
図5(c)は、本実施形態において、図5(b)と同じ方向に見て示すアーム自転後のアーム機構4の模式図である。アーム10が或る角度だけ自転すると、上リンク17及び下リンク18がその場で回転して傾斜したものと見なすことができる。実際には、上リンク17が傾斜すると、下リンク18が紙面の右方又は左方に寄れるように移動するが、この移動は、上リンク17及び下リンク18の傾斜に比べれば無視可能なほど小さい。そこで、上記のとおり、上リンク17及び下リンク18はその場で回転するものと見なす。上リンク17は、アーム10と同じ角度だけ回転する。つまり、上リンクの傾斜角θ1は、アーム10の基準自転角からの自転角と等しい。
【0044】
本実施形態では、一対の基端ジョイント13,14が上リンク17を介して機械的に連結され、一対の先端ジョイント15,16が下リンク18を介して機械的に連結される。このため、一対の基端ジョイント13,14間の距離が上リンク17の傾斜角θ1に関わらず不変であるし、一対の先端ジョイント13,14間の距離も下リンク15,16の傾斜角に関わらず不変である。このため、アーム自転後において、一対のリンク11,12、上リンク17及び下リンク18は、長方形ではなくなるものの平行四辺形を成す。したがって、下リンク18の傾斜角θ2は、上リンク17の傾斜角θ1と等しい。また、下リンク18の傾斜角θ2は、上リンク17の傾斜角θ1と線形の関係を持つとも言える。
【0045】
図5(d)は、比較例において、リンク910の延在方向に見て示すリンク揺動前のアーム機構904の模式図である。図5(d)に示すように、アーム機構904をこの方向に見ると、本実施形態と同様、一対のロッド911,912、仮想的上リンク917及び下リンク918が長方形を成す。一対のリンク910は、仮想的上リンク917の両端に点状に示される。
【0046】
図5(e)は、比較例において、図5(d)と同じ方向に見て示すリンク揺動後のアーム機構904の模式図である。図5(e)に示すように、比較例においても、下リンク918の左右移動を無視して仮想的上リンク917及び下リンク918がその場で回転して傾斜したものと見なすことができる。しかし、リンク910の先端同士が互いに拘束し合っていないので、リンク910が揺動すると、リンク910の先端が見かけ上は紙面上方又は下方に向けて移動することになる。これにより、リンク910の揺動角が大きくなればなるほど、仮想的上リンク918の見かけ上の長さが大きくなる。これに対し、一対のロッド911,912の長さ、下リンク918の長さは不変である。したがって、一対のロッド911,912がハの字をなす。つまり、一対のロッド911,912の対向間隔が、仮想的上リンク917側ではリンク揺動前よりも大きくなり、下リンク918側ではリンク揺動前よりも小さくなる。このため、仮想的上リンク917の傾斜角が大きくなるにつれて、下リンク918の傾斜角θ92が指数関数的に大きくなっていく。このように、比較例においては、下リンク918の傾斜角θ92が、仮想的上リンク917の傾斜角θ91と非線形の関係を持つ。
【0047】
また、比較例における仮想的上リンク917の傾斜角θ91が本実施形態における上リンク17の傾斜角θ1と同じであっても、比較例におけるリンク910の揺動角が本実施形態におけるアーム10の自転角と同じになるとは限らない。ここで、上リンク17(仮想的上リンク917)の長さをL1、アーム10(リンク910)の揺動軸線から基端ジョイント(リンク910の先端)までの距離をL2とした場合、本実施形態では、アーム10の自転角は、これら上リンク17及びアーム10の長さに関わらず、上リンク17の傾斜角θ1と略等しくなる。比較例においては、リンク910の揺動角をθ90、仮想的上リンク917の傾斜角をθ91とした場合、L2×sinθ90=1/2×L1×tanθ91を満たさなければならない(図5(e)参照)。
【0048】
このように、仮想的上リンク917の傾斜角θ91の正接が、リンク910の揺動角θ90の正弦と関係性を有している。このため、仮想的上リンク917の傾斜角θ91は、リンク910の揺動角θ90の変化に対し複雑な変化を見せることになる。そして、仮想的上リンク917の傾斜角θ91のリンク910の揺動角θ90に対する変化率は、仮想的上リンク917の長さのリンク910の長さに対する比率(L2/L1)に依存する。リンク910が仮想的上リンク917に比して長くなればなるほど、リンク910の揺動角の変化に応じて、仮想的上リンク917の傾斜角θ91が大きく変化する。一般に、リンク910は、仮想的上リンク917よりも長く、およそ7倍から11倍程度である。したがって、比較例における仮想的上リンク917の傾斜角θ91のリンク910の揺動角θ90に対する変化率は、本実施形態に係る上リンク17の傾斜角θ1のアーム10の自転角に対する変化率の7倍から11倍程度になる。
【0049】
図6は、アームの自転角に対する下リンクの傾斜角を示すグラフである。矩形プロットを結ぶ線が本実施形態を表し、丸形プロットを結ぶ線が比較例を表している。比較例では、リンク910の揺動角に対して仮想的上リンク917の傾斜角が大きく変化し、仮想的上リンク917の傾斜角が下リンク918の傾斜角と非線形の関係を有する。このため、ブラケット3の姿勢を精度良く制御するためには、制御器に当該非線形の関係をモデルとして予め記憶しておき、当該モデルを用いた複雑な演算によって線形化処理を行わなくてはならない。また、比較例では、下リンク918を本実施形態の下リンク18と同じ角度だけ傾斜させたければ、リンク910の揺動角を本実施形態のアーム10の自転角の1/7〜1/11程度にまで小さくしなくてはならない。このため、下リンク918の姿勢の制御精度(解像度)が、この比率だけ劣ることになるし、比較例のモータの所要トルクが本実施形態に係る自転アクチュエータ50よりも大きくなる。そして、下リンク918の姿勢の制御精度を向上させたければ、基台に大型の減速機を設ける必要が生じる。
【0050】
これに対し、本実施形態においては、アーム10の自転角が上リンク17の傾斜角と略等しく、上リンク17の傾斜角が下リンク18の傾斜角と略等しい。したがって、アーム10の自転角が下リンク18の傾斜角と略等しく、また、アーム10の自転角が下リンク18の傾斜角と線形の関係を有する。このため、下リンク18を傾斜させてブラケット3の姿勢を変えるにあたり、自転アクチュエータ50への動作指令値を簡便に求めることができる。また、下リンク18の傾斜角のアーム10の自転角に対する変化率が、比較例よりも格段に小さい。このため、自転アクチュエータ50の所要トルクが小さくても済むし、自転アクチュエータ50の回転動力を減速するための減速機を小型化可能となる。
【0051】
図5(f)は、アーム自転後の基端ジョイント14を示す模式図、図5(g)は、リンク揺動後の基端側球対偶914を示す模式図である。図5(f)と図5(g)とを対比するとわかるように、比較例では、一対のロッド911,912がハの字状になる。このため、基端側球対偶914は、紙面上向きの力FVU,紙面水平向きの力FH,紙面下向きの力FVLのうち、鉛直上向きの力を受けることが極めて困難となる。本実施形態では、アーム10の自転前と自転後との間で、一対のリンク11,12、上リンク17及び下リンク18が成す四角形の形状が比較例ほど大きく変化しない。このため、基端ジョイント14で力を受ける面積が上下方向又は左右方向でアンバランスになるのを抑制することができる。このことは、先端ジョイント15,16及び先端側球対偶915,916についても同様のことが言える。結果として、本実施形態においては、高剛性を有したアーム機構4を提供することができる。
【0052】
(揺動アクチュエータと自転アクチュエータの配置)
図7は、図3に示す揺動アクチュエータ5及び自転アクチュエータ50の配置を示すアーム10の断面図である。図7に示すように、ベース2は、減速ボックス41を有している。揺動アクチュエータ5は、例えば電気モータであり、ベース2の減速ボックス41に固定され、その出力軸5aが減速ボックス41内に配置されている。減速ボックス41は、揺動アクチュエータ5の回転動力を減速して揺動シャフト43に伝達する揺動用減速機42を収容している。揺動シャフト43は、減速ボックス41に回転可能に支持されると共にアーム10の基端部に固定されており、この揺動シャフト43の中心軸線が上記揺動軸線10aを成している。揺動アクチュエータ5が動作すると、揺動シャフト43が回転駆動され、アーム10が揺動シャフト43と共に揺動軸線10a周りに揺動する。なお、図3は揺動用減速機42に平歯車列を適用した場合を例示しているが、揺動用減速機42にはどのような動力伝達機構が適用されてもよい。
【0053】
本実施形態に係るアーム10は、前述したアーム本体45及び先端アーム47と共に、アーム本体45と先端アーム47との間に介在する収容体46とを備えている。揺動シャフト43は、アーム本体45の基端部に固定されている。収容体46は、ベース2側の第1壁46aと、第1壁46aから離隔対向した基端ジョイント13,14側の第2壁46bと、これら第1壁46a及び第2壁46bに囲まれた内部空間46cとを有している。第1壁46aは、その中心部においてアーム本体45の先端部に固着される。
【0054】
自転アクチュエータ50は、アーム10に取り付けられている。特に、本実施形態においては、自転アクチュエータ50が、収容体46の第1壁46aに取り付けられており、アーム10全体で見ればアーム10の先端部に配置されている。自転アクチュエータ50は、例えば電気モータである。自転アクチュエータ50の出力軸50aは収容体46の内部空間46cに配置され、自転アクチュエータ50のハウジング50bは、第1壁46aの外面からアーム本体45と同じ側に突出している。収容体46の内部空間46cには、自転アクチュエータ50の回転動力を先端アーム47に伝達する動力伝達機構51が収容されている。
【0055】
動力伝達機構51は、収容体46に回転可能に支持されたカウンタ軸53と、自転アクチュエータ50の回転動力を減速してカウンタ軸53に伝達する自転用減速機52とを備えている。本実施形態では、カウンタ軸53が、自転アクチュエータ50の出力軸50aと平行に配置される。自転用減速機52は、出力軸50aとカウンタ軸53との間に介在する平歯車列であってもよい。この場合の自転用減速機53は、出力軸50a上に固定された駆動歯車52aと、カウンタ軸53上に固定されると共に駆動歯車52aと噛合する従動歯車52bとを有する。なお、自転用減速機52も揺動用減速機42と同様にして平歯車列に限定されず、その他の動力伝達機構を適用してもよい。
【0056】
カウンタ軸52は、収容体46の第2壁46bを貫通し、第2壁46bから収容体46の外に突出した突出端部52aを有している。先端アーム47は、カウンタ軸53の突出端部53aに固定される。前述したとおり、先端アーム47の両端には、基端ジョイント13,14が設けられる。カウンタ軸53の軸線は、先端アーム47の中間点を通過しており、基端ジョイント13,14の中心同士を結ぶ線に直交する。
【0057】
自転アクチュエータ50が動作すると、自転アクチュエータ50の回転動力が自転用減速機53を介してカウンタ軸52に伝達される。カウンタ軸53が回転駆動されると、先端アーム47がカウンタ軸53の軸線周りに回転する。これにより上リンク17の傾斜角が変わり、一対の基端ジョイント13,14がカウンタ軸53の軸線周りに公転する。このように、カウンタ軸53の軸線が、前述の自転軸線10bを成している。
【0058】
上記自転アクチュエータ50の配置によれば、自転アクチュエータ50がアーム10、特にアーム10の先端部に取り付けられている。このため、動力伝達機構51を小型化することが可能になるし、自転アクチュエータ50の回転動力によって回される部材の重量が小さくなる。このため、自転アクチュエータ50の所要トルクを小さくすることができ、自転アクチュエータ50を小型化可能になる。特に、本実施形態では、前述したとおり、自転アクチュエータ50の回転動力を大きく減速しなくても、ブラケット3の姿勢を精度良く制御することが可能である。このため、アーム10の先端部に設けられた収容体56に動力伝達機構51を収容するという構造を、比較的容易に実現することができる。また、自転アクチュエータ50のハウジング50bがアーム10の外に露出しているので、自転アクチュエータ50及び動力伝達機構51のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0059】
(付勢ユニット)
図8は、図1に示すアーム機構4の一部を示す正面図である。図8に示すように、アーム機構4は、一対のリンク11,12を互いに近付く方向に付勢するための付勢ユニット60を備えている。図1に示すように、1組のアーム機構4に対して、リンク11,12の延在方向に離れた2個の付勢ユニット60が設けられている。図8は、基端側の付勢ユニット60のみ示しているが、2個の付勢ユニット60は互いに同じ構造であるため、先端側のものについては詳細な説明を省略する。
【0060】
図8に示すように、付勢ユニット60は、一対のリンク11,12の間に配置されるコイルスプリング61と、コイルスプリング61の一端部を第1のリンク11に連結する第1連結具62と、コイルスプリング61の他端部を第2のリンク12に連結する第2連結具63とを有している。第1連結具61は、平面視でV字又はY字に形成されている。第1連結具62は、コイルスプリング61の一端部に揺動可能に連結された基端部62aと、基端部から二股に枝分かれした先端部62bとを有する。第1のリンク11は、二股の先端部62bの間に挟まれ、二股の先端部62bは何れも、第1のリンク11に揺動可能に連結される。基端部62aの枢軸は、先端部62bの枢軸と略平行である。第2連結具63も、第1連結具62と同様であり、コイルスプリング61の他端部に揺動可能な基端部63aと、第2のリンク12に揺動可能な二股の先端部63bとを有している。
【0061】
上記付勢ユニット60の構成によれば、ソケット25,26がボール23,24から脱落しようとするときには、リンク11,12が互いに遠ざかろうとするのでコイルスプリング61が引っ張られる。このとき、コイルスプリング61は圧縮する方向に弾発力を発揮し、リンク11,12を互いに近付く方向に付勢する。これにより、ソケット25,26がボール23,24から脱落するのを防ぐことができる。
【0062】
そして、アーム10が自転して上リンク17が傾斜するときには、リンク11,12及び基端ジョイント13,14が、リンク11,12の延在方向に対し平行な軸線(図6でZ軸とする)周りにねじられる場合がある。コイルスプリング61は剥き出しになっている。このため、リンク及び基端ジョイントがZ軸周りにねじられるような場合に、コイルスプリング61がこのねじれに追従して変形する。このように、付勢ユニット60はアーム10自転時におけるリンク11,12及び基端ジョイント13,14のZ軸周りのねじれを許容することができ、ブラケット3の姿勢の変化が付勢ユニット60によって妨げられないようになっている。
【0063】
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態に係る揺動アクチュエータ5及び自転アクチュエータ250の配置を示すアーム210の断面図である。図9に示すように、自転アクチュエータ250は、アーム210に内蔵されていてもよい。この場合、収容体246の第1壁246aに貫通孔246dが設けられ、自転アクチュエータ250が、この貫通孔246dを塞ぐようにして第1壁246aに固定される。自転アクチュエータ250のハウジング250bは、第1壁246aの外面からアーム本体245内でアーム本体245の基端部に向かうようにして突出する。自転アクチュエータ250の出力軸250aは、貫通孔246dを通って収容体246の内部空間246c内へと延びている。動力伝達機構251は、第1実施形態のような自転用減速機を有さず、カウンタ軸253のみを有している。このカウンタ軸253は、出力軸250aと同一軸線上に配置され、出力軸250aに図示しない軸継手を介して連結されている。本実施形態でも、カウンタ軸253の軸線が自転軸線10bを成しており、第1実施形態と同様にして、ブラケットの姿勢を容易に且つ精度良く制御可能になる。
【0064】
[第3実施形態]
図10は、本発明の第3実施形態に係る揺動アクチュエータ5及び自転アクチュエータ350の配置を示すアーム310の断面図である。図10に示すように、本実施形態では、自転アクチュエータ350が、ベース2の減速ボックス341に固定されている。自転アクチュエータ350の回転動力をマウントアーム47に伝達する動力伝達機構351は、減速ボックス341、揺動シャフト343、アーム本体345及び収容体346に内蔵されている。揺動シャフト343は、第1実施形態と同様に配置されているが、動力伝達機構351を内蔵するために、両端が開口した内部空間343aを有している。
【0065】
自転アクチュエータ350は、減速ボックス341に固定され、自転アクチュエータ350の出力軸350aは、減速ボックス341内に配置され、揺動アクチュエータ5の出力軸5aと平行に延びている。自転アクチュエータ350のハウジング350bは、減速ボックス341の外に配置されている。動力伝達機構351は、第1自転用減速機352、中間軸353、第2自転用減速機354及び出力軸355を有している。第1自転用減速機352は、減速ボックス341内に配置されている。中間軸353は、自転アクチュエータ350の出力軸350aと平行に配置され、揺動シャフト343の内部空間343cに挿し通されている。第1自転用減速機352は、出力軸350aと中間軸353との間に介在する平歯車列であってもよい。この場合の第1自転用減速機352は、出力軸350a上に固定された駆動歯車352aと、中間軸353上に固定されると共に駆動歯車352aと噛合する従動歯車352bとを有する。中間軸353は、揺動シャフト343と同一軸線上に配置され、揺動シャフト343に回転可能に支持されている。第1自転用減速機352は、揺動用減速機342よりもアーム本体346から遠位に配置されている。そこで、揺動用減速機342は、中間軸353を挿通させるべく、揺動シャフト343の内部空間343cに連通した貫通孔342aを有している。
【0066】
中間軸353は、揺動シャフト343を通り抜け、アーム本体345内にまで達している。動力伝達機構351の出力軸355は、アーム本体345内をアーム本体345の長手方向に沿って延在し、中間軸353とは直交している。第2自転用減速機354は、アーム本体346内に収容され且つ中間軸353と出力軸355との間に介在する傘歯車列であってもよい。この場合の第2自転用減速機354は、中間軸353の端部に固定された駆動傘歯車354aと、出力軸355の端部に固定されると共に駆動傘歯車354aに噛合する従動傘歯車354bとを有する。出力軸355は、アーム本体345、収容体346を通り抜け、先端アーム347に固定されている。収容体346は、出力軸355を挿通するため、第1壁346aの中心部に貫通孔346dを有する。
【0067】
このように、自転用アクチュエータ350はベース2に取り付けられていてもよい。このようにすれば、アーム310が揺動するときに自転用アクチュエータ350に荷重が作用するのを避けることができる。
【0068】
[第4実施形態]
図11は、本発明の第4施形態に係る揺動アクチュエータ5及び自転アクチュエータ350の配置を示すアーム410の断面図である。図11に示すように、本実施形態に係るアーム410は、アーム基部445と、アーム本体446と、先端アーム47とを有している。先端アーム47は、アーム本体446の先端部に固定されている。揺動アクチュエータ5、減速ボックス341、揺動用減速機342、揺動シャフト343及び自転用アクチュエータ350は、第3実施形態と同様である。
【0069】
揺動シャフト343は、アーム基部445に固定される。自転アクチュエータ350の出力軸350aは、減速ボックス341内に配置される。自転アクチュエータ350の回転動力をマウントアーム47に伝達する動力伝達機構451は、第1自転用減速機352、中間軸353、第2自転用減速機454及び出力軸455を有する。第1自転用減速機352及び中間軸353は、第3実施形態と同様である。中間軸353の端部は、アーム基部445の内部に達している。出力軸455は、中間軸353と直交してアーム基部445の内部を延び、アーム本体446の基端部に連結されている。第2自転用減速機454は、アーム基部445内に収容され且つ中間軸353と出力軸455との間に介在する傘歯車列であってもよい。この場合の第2自転用減速機454は、中間軸353の端部に固定された駆動傘歯車454aと、出力軸455の端部に固定されると共に駆動傘歯車454aに噛合する従動傘歯車454bとを有する。
【0070】
本実施形態では、揺動アクチュエータ5が動作すると、揺動シャフト343が回転駆動され、アーム基部445が揺動シャフト343と共に揺動軸線10a周りに揺動する。すると、出力軸455を介してアーム基部445に連結されたアーム本体446と、アーム本体446に固定された先端アーム47が、アーム基部445と共に揺動する。自転アクチュエータ350が動作すると、出力軸455が回転駆動され、アーム本体446が出力軸455と共に出力軸455の軸線周りに回転する。これに伴い、先端アーム47がアーム本体446と共に回転する。第1〜第3実施形態においては、アームのうち先端アームのみが自転していたが、本実施形態のように、アーム本体が自転するような構成であってもよい。
【0071】
[第5実施形態]
図12は、本発明の第5実施形態に係るアーム機構504の一部を示す正面図である。図12に示すように、一対の基端ジョイント513,514は、先端アーム47の両端に設けられたボール523,524と、ボール523,524を保持するソケット525,526とを有している。ソケット525,526は、断面視においてボール523,524を上下方向に挟み込むようにして支持するよう構成されていてもよい。このようにすれば、ソケット525,526がボール523,524に一体的に取り付けられる。すると、リンク11,12がアーム10から脱落するおそれを低減することができる。したがって、本実施形態においては、第1実施形態に係る付勢ユニットを省略することができる。図12では、基端ジョイント513,514を示しているが、先端ジョイントも同様に変更可能である。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記構成は一例であり、本発明の範囲内において適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、ブラケットの姿勢を容易に且つ精度良く制御可能なデルタ型パラレルロボットを提供することができるという作用効果を奏し、デルタ型パラレルロボットに適用されると有益である。
【符号の説明】
【0074】
1 デルタ型パラレルロボット
2 ベース
3 ブラケット
4 アーム機構
5 揺動アクチュエータ
9 作業用ツール
10 アーム
11,12 リンク
13,14 基端ジョイント
15,16 先端ジョイント
17 上リンク
18 下リンク
47 先端アーム
50 自転アクチュエータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、ツールを取り付けるためのブラケットと、前記ベースに前記ブラケットを連結する3組のアーム機構と、を備え、
前記各アーム機構が、基端部にて前記ベースに揺動可能に連結された1本のアームと、前記アームの基端部を挟み且つ前記ブラケットを挟む一対のリンクと、前記一対のリンクをそれぞれ前記アームの基端部に回動可能に連結する一対の基端ジョイントと、前記一対のリンクをそれぞれ前記ブラケットに回動可能に連結する一対の先端ジョイントと、を有し、前記一対のリンク、前記一対の基端ジョイント及び前記一対の先端ジョイントが平行リンクを構成可能に配置され、
前記3組のアーム機構のうち少なくとも一組は、前記アームの少なくとも前記先端部が前記アームの軸心周りに回転可能なように構成されている、デルタ型パラレルロボット。
【請求項2】
前記3組のアーム機構のうち複数のアーム機構が、前記アームの少なくとも前記先端部が前記アームの軸心周りに自転可能なように構成されている、請求項1に記載のデルタ型パラレルロボット。
【請求項3】
前記3組のアーム機構の全てが、前記アームの少なくとも前記先端部が前記アームの軸心周りに回転可能なように構成されている請求項2に記載のデルタ型パラレルロボット。
【請求項4】
前記アームを前記アームの軸心周りに回転させる自転アクチュエータを更に備え、
前記自転アクチュエータが、前記ベースに取り付けられている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデルタ型パラレルロボット。
【請求項5】
前記アームを前記アームの軸心周りに回転させる自転アクチュエータを更に備え、
前記自転アクチュエータが、前記アームに取り付けられている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデルタ型パラレルロボット。
【請求項1】
ベースと、ツールを取り付けるためのブラケットと、前記ベースに前記ブラケットを連結する3組のアーム機構と、を備え、
前記各アーム機構が、基端部にて前記ベースに揺動可能に連結された1本のアームと、前記アームの基端部を挟み且つ前記ブラケットを挟む一対のリンクと、前記一対のリンクをそれぞれ前記アームの基端部に回動可能に連結する一対の基端ジョイントと、前記一対のリンクをそれぞれ前記ブラケットに回動可能に連結する一対の先端ジョイントと、を有し、前記一対のリンク、前記一対の基端ジョイント及び前記一対の先端ジョイントが平行リンクを構成可能に配置され、
前記3組のアーム機構のうち少なくとも一組は、前記アームの少なくとも前記先端部が前記アームの軸心周りに回転可能なように構成されている、デルタ型パラレルロボット。
【請求項2】
前記3組のアーム機構のうち複数のアーム機構が、前記アームの少なくとも前記先端部が前記アームの軸心周りに自転可能なように構成されている、請求項1に記載のデルタ型パラレルロボット。
【請求項3】
前記3組のアーム機構の全てが、前記アームの少なくとも前記先端部が前記アームの軸心周りに回転可能なように構成されている請求項2に記載のデルタ型パラレルロボット。
【請求項4】
前記アームを前記アームの軸心周りに回転させる自転アクチュエータを更に備え、
前記自転アクチュエータが、前記ベースに取り付けられている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデルタ型パラレルロボット。
【請求項5】
前記アームを前記アームの軸心周りに回転させる自転アクチュエータを更に備え、
前記自転アクチュエータが、前記アームに取り付けられている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデルタ型パラレルロボット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−52499(P2013−52499A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194206(P2011−194206)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
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