説明

データ取り込み装置

【課題】即時処理が必要な制御命令に対して即時性をもって応答することが可能なデータ取り込み装置を提供する。
【解決手段】映像が含まれる信号を取り込む映像信号取り込みボードと、映像取り込みボードにより取り込まれた信号のデータに対して所定の処理を施して配信(出力)する映像データ取り込みアプリケーション2と、を備えた映像信号データ取り込み装置において、更に、取り込みアプリケーション2が動作する機器OSとは別のRTOS51に、前記データ処理アプリケーションから分離された一部の処理を所定時間内で実行するRTOSアプリケーション5を設け、RTOSアプリケーション5が、外部のコントローラから入力された制御命令を解析し、前記一部の処理のみを実行する制御命令である場合には、自アプリケーションで実行してその結果を外部のコントローラへ応答として返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号とこれに付随するデータを取り込むデータ取り込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの性能の向上に伴い、ハードディスクに格納した映像データをコンピュータで編集する製品が各社より発表されている。このような用途のためには、従来から使用されてきたアナログ若しくはデジタルの映像信号について、コンピュータで取り込んで扱うことが可能な電子データ形式に映像データを変換する必要がある。例えば、アナログであればNTSC信号と呼称される映像信号形式があり、デジタルであればHD−SDI信号(High Definition Serial Digital Interface)と呼称される映像信号形式がある。
【0003】
また、映像信号と一般に呼ばれる信号については、映像以外に音声やタイムコード(TC)、各種のユーザデータが映像データに重畳される場合や、若しくは同時に別のインタフェースを併用して運用される場合がある。
本明細書では、「映像信号」という語を、このような音声やTCなど各種のデータが含まれた信号という意味で説明に用いる。一方、本明細書では、映像単体を示す場合には、「映像」という語若しくは「映像データ」という語を用いる。
【0004】
従来の運用をふまえて、どのように映像信号が扱われるかについて説明する。
デジタル放送システム系の例であれば、映像信号はHD−SDIであり音声が重畳されている。また、TCについては、システム間で同じ時刻に合わせる必要から、HD−SDIとは別にTC用の時刻信号入力を用意して全てのシステム機器に分配する。映像信号入力と時刻信号入力をコンピュータで取り込むには、コンピュータに専用のハードウェアを搭載する必要があり、一般にキャプチャボードと呼ばれる種類の映像信号取り込みボードが用いられる。
【0005】
また、映像データは、音声データに比べて、そのままではデータ量が多く、ハードディスクに格納するには不向きであるので、画像圧縮技術を併用して映像データ量の削減を行うことが一般的に行われる。画像圧縮処理により1/10以下のデータ量に削減可能であるが、画質を劣化させないようデータ量を削減しようとするほど処理時間がかかるトレードオフの面もある。HD(High Definition)画像のようなデータ処理量が多い画像に対しては、専用LSIなどのハードウェアにより圧縮するアプローチを取ることが多い。よって、キャプチャボードに画像圧縮LSIを搭載することが多い。音声データは編集のしやすさから非圧縮のままで扱う運用もある。
【0006】
図1には、従来の映像信号データ取り込み装置の構成例を示してある。
本例の映像信号データ取り込み装置の構成は、大きく分けて、映像信号取り込みボード1と、映像データ取り込みアプリケーション2、RTOSアプリケーション3の3つから成る。
【0007】
映像信号取り込みボード1の内部構成は、同期信号検出部11、映像信号分離部12、同期信号検出部13、タイミング制御部14、フレーム番号発生部15、フレーム番号多重部16、フレーム番号多重部17、フレーム番号多重部18、映像変換処理部19から成り、これらはハードウェアロジックで構成することができる。
映像データ取り込みアプリケーション2の内部構成は、デバイスドライバ22、状態遷移制御部23、フレーム番号比較部24、格納データ配信部25から成る。映像データ取り込みアプリケーション2は、機器を構成するいくつかのソフトウェアのうちの1アプリケーションであり、機器OS(Operating System:コンピュータの基本ソフト)21の管理下におかれている。デバイスドライバ22は、映像信号取り込みボード1との間に介在するように設けられている。
RTOSアプリケーション3の内部構成は、制御命令解析部32、フレーム番号取得部33から成る。RTOSアプリケーション3は、リアルタイムOS(RTOS)31の管理下におかれている。
【0008】
本例では、映像データ取り込みアプリケーション2は、機器OS21の管理下で動作する。また、機器OS21とは別にRTOS31が設けられており、RTOS31の管理下で動作するRTOSアプリケーション3の中に、外部からの制御命令入力を解析する制御命令解析部32が含まれている。RTOS31は、リアルタイム処理を特徴とするOSであり、保証された応答速度で動作する。RTOS31には、一例として、株式会社マイクロネットが販売しているINtime(商標)を利用できる。一般に、RTOSで動作するアプリケーションはリアルタイム処理特有のインタフェースが必要であり、従来の機器OSで動作するアプリケーションはそのままRTOS上では使用できない。
【0009】
映像信号取り込みボード1の動作を説明する。
映像信号は、外部から映像信号入力101として同期信号検出部11に入力する。
同期信号検出部11は、入力された映像信号の内容を解析し、映像データと、音声データや各種データが重畳されている場合にはそれらのデータの位置を探しだし、映像データや音声データなどをデジタル映像信号103(デジタルデータ)として映像信号分離部12へ出力する。
映像信号分離部12は、入力されたデジタル映像信号103から映像データ104と音声データ(例えば、音声以外のデータが含まれてもよい)105を分離し、映像データ104はフレーム番号多重部16へ出力し、音声データ105はフレーム番号多重部17へ出力する。
【0010】
時刻信号は、外部から時刻信号入力102として同期信号検出部13に入力する。
同期信号検出部13は、入力された時刻信号の内容を解析し、デジタル時刻データ106としてTCをデジタル化してフレーム番号多重部18へ出力する。
【0011】
また、同期信号検出部11は、映像のフレームの区切りを検出すると、同期信号検出信号107をタイミング制御部14へ出力する。
タイミング制御部14は、入力された同期信号検出信号107から映像のフレームの変化点を管理する。
【0012】
タイミング制御部14は、フレームの区切りでタイミング信号108をフレーム番号発生部15へ出力する。
フレーム番号発生部15は、この入力信号(タイミング信号108)によりフレーム単位に1ずつ値を更新したフレーム番号109を、3つのフレーム番号多重部(フレーム番号多重部16、フレーム番号多重部17、フレーム番号多重部18)へ出力する。よって、3つのフレーム番号多重部16〜18には、映像信号のフレームの区切り毎に1ずつ更新された値が入力される。
【0013】
3つのフレーム番号多重部16、17、18は、それぞれ、入力されたデータ(それぞれ、映像データ104、音声データ105、デジタル時刻データ106)と、フレーム番号109との対応付けを行って、各々の後段へ出力する。具体的には、フレーム番号多重部16は映像変換処理部19及びデバイスドライバ22へ出力し、フレーム番号多重部17はデバイスドライバ22へ出力し、フレーム番号多重部18はデバイスドライバ22及びフレーム番号取得部33(フレーム番号取得部33については、例えば、RTOS31からアクセスがあった場合)へ出力する。ここで、実際には、メモリ上の隣り合った位置にデータとフレーム番号を格納するなどの対応付け手法が考えられる。このようなフレーム番号多重部16〜18での対応付けにより、これ以降の処理部では、各データ毎の時間位相が異なっても、どの時点での入力データであったかを把握することが可能になり、同期処理を行うことができるようになる。
【0014】
フレーム番号多重部16でフレーム番号109と対応づけられた映像データ104は、映像変換処理部19に入力される。
映像変換処理部19は、入力された映像データに対して所定の処理を実行して、その結果をデバイスドライバ22へ出力する。この所定の処理としては、画像圧縮処理の実行や画像サイズの変更など、用途により様々な処理が考えられる。どのような処理が行われるかで異なるが、画像圧縮処理であれば、処理時間に1フレーム時間やそれ以上の時間を費やすことがあり、音声データ105や、デジタル時刻データ106と比べて、映像データの時間位相は遅れて出力されることになる。
【0015】
また、フレーム番号多重部16の出力から映像変換処理部19を介さないデータの経路も用意されている。本例では、画像圧縮処理や画像サイズ変更処理などが不要である場合に、この経路を通り後段(デバイスドライバ22)へ出力される。いずれの経路のデータを使用するかについては、後段のデバイスドライバ22が判断する。
このように、映像、音声、TCの各データは、後段のデバイスドライバ22に入力される。
【0016】
また、本例では、映像信号取り込みボード1は、デバイスドライバ22以外が使用するインタフェースとして、フレーム番号付き時刻信号110を取得する入出力インタフェース(以下、専用ポートと言う)を個別に設けている。この専用ポートは、デバイスドライバ22がデータを取り込むのに使用していたのとは別の入出力インタフェースになっている。よって、デバイスドライバ22の動作とは独立してフレーム番号付き時刻信号110を取得することができる。この専用ポートは、RTOS31が専用でアクセスする。
【0017】
映像データ取り込みアプリケーション2の動作を説明する。
状態遷移制御部23の動作のきっかけは、RTOSアプリケーション3側から制御命令125が入力されることであり、これにより、状態遷移制御部23とデバイスドライバ22との映像取り込みボード制御信号123のやりとりが始まる。
例えば、制御命令125が「映像収録開始」という命令であった場合などが該当する。映像取り込みボード制御信号123により、映像信号取り込みボード1からデバイスドライバ22を経由して、映像データ、音声データ、TCがボード読み出しデータ121として、フレーム番号比較部24に入力される。
【0018】
フレーム番号比較部24は、入力された映像データ、音声データ、TCの各データに付加されたフレーム番号を比較し、同じフレーム番号のデータは同じ時刻に入力されたデータであると判断する。これにより、3つのデータの同期をとることが可能になる。フレーム番号比較部24は、3つのデータ(及び、例えば、3つのデータのフレーム番号の比較結果の情報)を格納データ122として格納データ配信部25へ出力する。
なお、フレーム番号比較部24は、各フレーム番号と比較フレーム番号133との比較も行うが、その内容については後述する。
【0019】
格納データ配信部25は、入力された映像データ、音声データ、TCをシステムの用途に合わせたデータフォーマットに変換する。例えば、多重化して1本のデータ列に並び替える場合や、映像、音声が独立したデータのままである場合など、色々なフォーマットの種類が考えられる。
【0020】
また、格納データ配信部25には、例えば、3つのデータの同期をとるため、メモリが搭載されてもよい。このメモリの容量は、各データにどの程度の位相差が発生するかによるため、システムによって異なるが、位相差を吸収できるだけのメモリ容量が必要になる。
格納データ配信部25は、フォーマット変換したデータを、格納データ出力126として、外部の例えばハードディスクやネットワークなどに配信(送信)する。この格納データ配信部25の配信制御は、例えば、状態遷移制御部23から格納データ配信部25へ出力される格納データ配信制御信号124を使用して制御される。
なお、状態遷移制御部23からフレーム番号比較部24を制御する(例えば、制御命令125に応じた制御を行う)ことも可能である。
【0021】
RTOSアプリケーション3の動作を説明する。
外部のコントローラから入力される制御命令入力131は、業務用VTR等の映像機器の制御に用いられるプロトコル(例えばP2プロトコルと呼ばれる)に従った数十種類以上の命令であり、例えば、RS−422インタフェースにより制御命令解析部32に入力される。
制御命令解析部32は、制御命令入力131により、その命令を解析して、その解析結果を制御命令125として、通信中継部4を介して、映像データ取り込みアプリケーション2内の状態遷移制御部23へ出力する。
また、制御命令解析部32は、命令の内容により、フレーム番号取得命令132をフレーム番号取得部33へ出力する。例えば、入力される映像信号のフレーム番号と同期した処理が必要になった場合に、このフレーム番号取得命令132が発行される。
【0022】
フレーム番号取得部33は、フレーム番号取得命令132の入力により、映像信号取り込みボード1のフレーム番号多重部18からフレーム番号付き時刻信号110を取得する。このフレーム番号を取得する処理は、全てRTOS31上で動作するので、応答時間が保証された即時応答のリアルタイム処理である。そして、フレーム番号取得部33は、取り込んだフレーム番号を比較フレーム番号133として、通信中継部4を介して、映像データ取り込みアプリケーション2内のフレーム番号比較部24へ出力する。
【0023】
映像データ取り込みアプリケーション2のフレーム番号比較部24の説明に戻る。
フレーム番号比較部24には、フレーム番号取得部33からの比較フレーム番号133が入力される。
フレーム番号比較部24は、入力されたボード読み出しデータ121に含まれるフレーム番号と、入力された比較フレーム番号133とを比較して、これらの値が一致した時に、格納データ配信部25へ格納データ122の出力開始や停止などの制御を行う。この制御により、ボード読み出しデータ121と比較フレーム番号133とを同期させることが可能になる。
【0024】
比較フレーム番号133の値は、制御命令入力131が入って映像信号取り込みボード1からリアルタイムに取得したフレーム番号である。よって、ボード読み出しデータ121と制御命令入力131とを同期させたのと同じ効果を得られる。この場合、出力の開始や停止をする対象の映像信号のフレーム番号位置がフレーム精度で正しければよく、格納データ出力126の開始や停止のタイミングが遅延を持って始まっても問題は無い。
【0025】
ここで、制御命令には、装置の状態を取得する命令のような、応答を返すことが必要な命令がある。本例の構成の場合、応答を返す命令か否かを判断するのは状態遷移制御部23である。制御命令125の命令が応答を返す命令の場合、状態遷移制御部23は、その応答を制御応答出力134として、RTOSアプリケーション3を経由して外部に出力する。制御応答出力134がRTOSアプリケーション3を経由するのは、一般的な制御装置においては、制御命令入力131と制御応答出力134が同じ信号媒体を使った双方向通信であるからである。信号媒体としては、例えば、RS−422規格の通信ケーブルなどがある。
【0026】
映像データ取り込みアプリケーション2と、RTOSアプリケーション3は、通信中継部4を介在して、制御命令125や比較フレーム番号133や制御応答出力134の通信を行う。通信中継部4は、例えば、機器OS21とRTOS31から共にアクセスが可能な共有メモリで構成することが出来る。
以上の構成により、制御命令入力131が入力されたタイミングで、映像信号取り込みボード1からリアルタイムにフレーム番号を取得することができ、そのフレーム番号を機器OS21上で処理することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2000−227859号公報
【特許文献2】特開2000−231777号公報
【特許文献3】特開2000−253349号公報
【特許文献4】特開2004−94835号公報
【特許文献5】特開平9−139908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
映像信号データ取り込み装置を外部から制御するコントローラがある。このような外部のコントローラには、TCを取り込む機能がない。TCは映像信号の取り込み開始タイミングを知るために使用するので、取り込み開始タイミングを制御するコントローラにとって、現在のTCを把握することは重要である。そこで、映像信号データ取り込み装置が取り込んでいるTCをコントローラに通知する手段が設けられる。映像信号データ取り込み装置は、コントローラからの問い合わせに対して、TCが更新される前にTCの値を応答として通知する必要がある。
【0029】
しかしながら、上記の例において、制御命令に対して応答を返す処理を行う状態遷移制御部23は機器OS21上で動作しているが、機器OS21ではリアルタイム処理が保証されない。このため、例えば、映像1フレームの期間に相当する時間だけ経過(遅延)して応答を返す場合があり得る。これにより、コントローラが取得したTCに1フレーム若しくはそれ以上の誤差が生じ得るため、映像信号の取り込みタイミングを1フレームの精度で保証できなくなる。
【0030】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて為されたものであり、即時処理が必要な制御命令に対して即時性をもって応答することが可能なデータ取り込み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記目的を達成するために、本発明では、データ取り込み装置を以下のように構成した。
すなわち、映像が含まれる信号を取り込む信号取り込みハードウェアと、前記信号取り込みハードウェアにより取り込まれた信号のデータに対して所定の処理を施して出力するデータ処理アプリケーションと、を備えたデータ取り込み装置において、更に、前記データ処理アプリケーションが動作するオペレーティングシステムとは別のオペレーティングシステムに、前記データ処理アプリケーションから分離された一部の処理を所定時間内で実行する補助アプリケーションを設け、前記補助アプリケーションが、外部の装置から入力された制御命令を解析し、前記一部の処理のみを実行する制御命令である場合には、自アプリケーションで実行してその結果を前記外部の装置へ応答として返すようにした。
【0032】
従って、データ処理アプリケーションが動作するOS(オペレーティングシステム)の負荷に関わらず、別のOS上で動作する補助アプリケーションにより一部の処理の実行を所定時間内で終えることができるため、即時処理が必要な制御命令に関する処理を補助アプリケーション側に分離させておくことで、当該制御命令に対して即時性をもって応答することが可能になる。
【0033】
ここで、データ処理アプリケーションが動作するOS、及び、補助アプリケーションが動作するOSとしては、種々のOSを用いることができる。例えば、補助アプリケーションが動作するOSとして、保証された応答速度で動作するリアルタイムOSが用いられ、データ処理アプリケーションが動作するOSとして、他のOS(汎用OSなどの非リアルタイムOS)が用いられる。
また、補助アプリケーションに分離する一部の処理としては、主に、即時処理が必要な制御命令に関する処理が挙げられる。
【0034】
また、本発明では、一構成例として、データ取り込み装置を以下のようにした。
すなわち、前記信号取り込みハードウェアは、前記映像が含まれる信号から時刻のデータを抽出する機能を有し、前記補助アプリケーションは、時刻のデータを前記信号取り込みハードウェアから取得する処理を前記一部の処理として有し、時刻のデータを要求する制御命令が前記外部の装置から入力された場合に、前記信号取り込みハードウェアから時刻のデータを取得して前記外部の装置へ応答として返すようにした。
従って、時刻のデータを要求する制御命令に対して、即時性をもって時刻のデータを返すことが可能になる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、即時処理が必要な制御命令に対して即時性をもって応答することが可能なデータ取り込み装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来の映像信号データ取り込み装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る映像信号データ取り込み装置におけるRTOSアプリケーション部分の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図2には、本発明の一実施形態に係る映像信号データ取り込み装置におけるRTOSアプリケーション部分の構成例を示してある。
以下では、主に、従来の映像信号データ取り込み装置(図1参照)との差分について、構成と動作を説明する。映像データ取り込みアプリケーション2は従来と変わらず、その構成要素として含まれるフレーム番号比較部24と状態遷移制御部23も変わらない。
【0038】
RTOSアプリケーション5は、制御命令解析部52、フレーム番号取得部53、簡易状態遷移制御部54、制御応答多重部55から構成される。RTOSアプリケーション5は、リアルタイムOS(RTOS)51の管理下におかれている。
本例のRTOSアプリケーション5は、従来のRTOSアプリケーション3と比べて、映像データ取り込みアプリケーション2(及び通信中継部4)との間に簡易状態遷移制御部54と制御応答多重部55を新規に追加した構成と成っており、制御命令解析部52とフレーム番号取得部53については従来の制御命令解析部32とフレーム番号取得部33と同様な構成及び動作である。
【0039】
制御命令解析部52は、制御命令入力131により、その命令を解析して、その解析結果を制御命令125として、簡易状態遷移制御部54へ出力する。
簡易状態遷移制御部54は、制御命令解析部52から入力された制御命令125を解析し、即応性が必要な制御命令だけをピックアップ(抽出)する。簡易状態遷移制御部54は、当該抽出した即応性が必要な制御命令を自己で実行し、その結果を制御応答多重部55へ制御応答152として出力する。
【0040】
また、簡易状態遷移制御部54は、残りの制御命令(即応性が必要な制御命令以外の制御命令)については、制御命令151として、通信中継部4を介して、映像データ取り込みアプリケーション2内の状態遷移制御部23へ出力する。
映像データ取り込みアプリケーション2内の状態遷移制御部23は、制御命令151を実行すると、その結果を制御応答153として、通信中継部4を介して、RTOSアプリケーション5内の制御応答多重部55へ出力する。
【0041】
ここで、簡易状態遷移制御部54において抽出する制御命令の具体的な例としては、フレーム番号取得部53からTCを取り込み、外部のコントローラに制御応答として1フレーム期間内に即時応答するような制御命令が挙げられる。なお、ほとんどの制御命令は映像データ取り込みアプリケーション2にある状態遷移制御部23に送られる。例外は、上記の例(取り込んだTCをコントローラに送り返す制御命令)のように、映像データ取り込みアプリケーション2が処理を必要としない制御命令に限られる。
また、即応性が必要な制御命令を抽出する処理は、種々の手法により実現することができ、例えば、このような制御命令のリストをRTOSアプリケーション5内に保持し、当該リストに合致する制御命令を特定して抽出することにより実現される。
【0042】
制御応答多重部55は、簡易状態遷移制御部54が出力する制御応答152と、状態遷移制御部23が出力する制御応答153を1つにまとめて制御応答出力134として、コントローラなどの外部機器に出力する。本例では、簡易状態遷移制御部54から制御応答152が入力された場合には、これを制御応答出力134として出力し、状態遷移制御部23から制御応答153が入力された場合には、これを制御応答出力134として出力する。
【0043】
一例として、TCを要求する制御命令の実行について説明する。
本例のRTOSアプリケーション5では、フレーム番号取得部53に入力するフレーム番号付き時刻信号110を、簡易状態遷移制御部54にも入力するようにしている。これにより、簡易状態遷移制御部54は、制御命令125がTC応答を要求するものである場合に、制御応答152として、フレーム番号付き時刻信号110から抽出したTCを制御応答多重部55に出力することが出来る。
【0044】
このように、本例の映像信号データ取り込み装置では、機器OS21上で動作している状態遷移制御部23の一部の機能(処理)をRTOS51側(本例では簡易状態遷移制御部54)に移し、即時応答が必要な制御命令の実行がRTOS51だけで完結するようにしている。そして、外部(本例ではコントローラ)からの制御命令入力131に対して、即時応答が必要な命令とそれ以外とを簡易状態遷移制御部54で切り分け、即時応答が必要な制御命令は簡易状態遷移制御部54だけで処理を行い、機器OS21上のアプリケーションを介さずに、制御命令に対する応答として返すようにしている。これにより、即時応答が必要な制御命令入力131に対して、機器OS21上で動作するアプリケーションを介さずに実行して応答が返されるため、リアルタイム性(例えば、1フレーム期間内の応答)が保証された動作が可能になる。
【0045】
以上のように、本例では、映像が含まれる信号を取り込む映像信号取り込みボード1(信号取り込みハードウェアの一例)と、映像取り込みボード1により取り込まれた信号のデータに対して所定の処理を施して配信(出力)する映像データ取り込みアプリケーション2(データ処理アプリケーションの一例)と、を備えた映像信号データ取り込み装置において、更に、取り込みアプリケーション2が動作する機器OS21とは別のRTOS51に、前記データ処理アプリケーションから分離された一部の処理を所定時間内で実行するRTOSアプリケーション5(補助アプリケーションの一例)を設け、RTOSアプリケーション5が、外部のコントローラから入力された制御命令を解析し、前記一部の処理のみを実行する制御命令である場合には、自アプリケーションで実行してその結果を外部のコントローラへ応答として返す構成とした。
【0046】
従って、本例の映像信号データ取り込み装置によれば、映像データ取り込みアプリケーション2が動作する機器OS21の負荷に関わらず、別のRTOS51上で動作するRTOSアプリケーション5により一部の処理の実行を所定時間内で終えることができるため、即時処理が必要な制御命令に関する処理をRTOSアプリケーション5側に分離させておくことで、当該制御命令に対して即時性をもって応答することが可能になる。
【0047】
なお、本例のような装置は、例えば、デジタルTV放送システムにおける放送用の映像信号の処理などに適用することができ、具体例として、映像信号や時刻信号が映像等の送信元側から入力され、格納データ126を映像等の収録装置等へ配信(送信)し、また、外部からの制御命令は例えばオペレータ(人)や制御用の装置によりコントローラを介して発せられる。
【0048】
ここで、一例として、機器OS21としてはWindows(登録商標)を用いることができ、RTOS51(RTOS31)としてはWindows(登録商標)の上に設けるINtime(商標)を用いることができる。INtime(商標)では、Windows(登録商標)から幾つかの割り込みを奪い、その割り込みがINtime(商標)による管理になるため、高速応答が可能である。また、その割り込みに紐付けられたハードウェアも、INtime(商標)の配下になり、Windows(登録商標)からは見えなくなる。
本例の映像信号取り込みボード1については、デバイスドライバ22がWindows(登録商標)の配下であるため、INtime(商標)からはアクセスできないが、INtime(商標)の特徴として、物理メモリアドレスを取得することができる。Windows(登録商標)だと仮想アドレスになってしまうことから、ハードウェアの本当のメモリ位置はわからないが、INtime(商標)の場合にはアクセスが可能である。
【0049】
また、一例として、専用ポートとしては、PCI Expressボード上のメモリ・マップド・レジスタを用いることができる。この例では、パーソナルコンピュータにボードを挿すと、ある物理アドレスにボードのレジスタ群がメモリマッピングされる。この中のレジスタの一部については、物理アドレス指定でレジスタを直接読み書きしてよいようにボードを作ってある。但し、レジスタが配置されるからと言っても、直接読み書きしてボードに反映させるようにするためには、ハードウェアをそのように設計する必要がある。
【0050】
また、一例として、OS間の通信を実現する通信中継部4としては、Windows(登録商標)とINtime(商標)の間に共有メモリを設定することができる。若しくは、他の一例として、Windows(登録商標)と通信するためのセマフォがINtime(商標)に装備されており、Windows(登録商標)側ではそのセマフォを受け取る専用命令を記述して使用する。
また、INtime(商標)用にコンパイルしたアプリケーションは、Windows(登録商標)のAPIにより使用することができない。専用の似たAPIが用意されている。このため、Windows(登録商標)のアプリケーションはWindows(登録商標)の配下だけで動作し、INtime(商標)のアプリケーションはINtime(商標)の配下だけで動作する。
【0051】
なお、本例の映像信号データ取り込み装置(データ取り込み装置の一例)では、映像信号取り込みボード1の機能により信号取り込みハードウェアが構成されており、映像データ取り込みアプリケーション2の機能によりデータ処理アプリケーションが構成されており、RTOSアプリケーション5の機能により補助アプリケーションが構成されている。
また、制御命令解析部52及び簡易状態遷移制御部54及び制御応答多重部55の機能により、外部の装置から入力された制御命令を解析し、前記一部の処理のみを実行する制御命令である場合には、自アプリケーションで実行してその結果を前記外部の装置へ応答として返す手段が構成されている。
【0052】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウェア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウェア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0053】
1:映像信号取り込みボード、 2:映像データ取り込みアプリケーション、 3,5:RTOSアプリケーション、 4:通信中継部、 11,13:同期信号検出部、 12:映像信号分離部、 14:タイミング制御部、 15:フレーム番号発生部、 16〜18:フレーム番号多重部、 19:映像変換処理部、 21:機器OS、 22:デバイスドライバ、 23:状態遷移制御部、 24:フレーム番号比較部、 25:格納データ配信部、 31,51:リアルタイムOS(RTOS)、 32,52:制御命令解析部、 33,53:フレーム番号取得部、 54:簡易状態遷移制御部、 55:制御応答多重部、
101:映像信号入力、 102:時刻信号入力、 103:デジタル映像信号、 104:映像データ、 105:音声データ、 106:デジタル時刻データ、 107:同期信号検出信号、 108:タイミング信号、 109:フレーム番号、 110:フレーム番号付き時刻情報、 121:ボード読み出しデータ、 122:格納データ、 123:映像取り込みボード制御信号、 124:格納データ配信制御信号、 125:制御命令、 126:格納データ出力、 131:制御命令入力、 132:フレーム番号取得命令、 133:比較フレーム番号、 134:制御応答出力、 151:制御命令、 152,153:制御応答

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像が含まれる信号を取り込む信号取り込みハードウェアと、前記ハードウェアにより取り込まれた信号のデータに対して所定の処理を施して出力するデータ処理アプリケーションと、を備えたデータ取り込み装置において、
更に、
前記データ処理アプリケーションが動作するオペレーティングシステムとは別のオペレーティングシステムに、前記データ処理アプリケーションから分離された一部の処理を所定時間内で実行する補助アプリケーションを設け、
前記補助アプリケーションが、外部の装置から入力された制御命令を解析し、前記一部の処理のみを実行する制御命令である場合には、自アプリケーションで実行してその結果を前記外部の装置へ応答として返す、
ことを特徴とするデータ取り込み装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ取り込み装置において、
前記信号取り込みハードウェアは、前記映像が含まれる信号から時刻のデータを抽出する機能を有し、
前記補助アプリケーションは、時刻のデータを前記信号取り込みハードウェアから取得する処理を前記一部の処理として有し、時刻のデータを要求する制御命令が前記外部の装置から入力された場合に、前記信号取り込みハードウェアから時刻のデータを取得して前記外部の装置へ応答として返す、
ことを特徴とするデータ取り込み装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−73364(P2013−73364A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211083(P2011−211083)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)