説明

トナー用添加剤および静電荷像現像用トナー

【課題】非常に高い正帯電性を発現でき、粒度分布がシャープであり、粒子径が精密に制御され、トナー表面に十分な流動性を付与でき、カブリの発生を抑制できるとともに安定した画像濃度を発現でき、トナー表面より内側への埋没を抑制することによって外添剤としての効果を十分に発現できる、トナー用添加剤を提供する。また、このようなトナー用添加剤を含む、カブリを十分に抑制でき画像濃度が非常に安定した電子写真を与えることができる静電荷像現像用トナーを提供する。
【解決手段】本発明のトナー用添加剤は、アミノ樹脂粒子からなるトナー用添加剤であって、該アミノ樹脂粒子はアミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合物からなり、該アミノ樹脂粒子の一次平均粒子径をd1とし、該アミノ樹脂粒子の二次平均粒子径をd2としたときに、0.02μm≦d1≦0.18μmであり、d2/d1<5.0である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー用添加剤に関する。詳しくは、電子写真方式の複写機やレーザープリンター等の画像形成装置における現像装置に用いられるトナー用添加剤に関する。さらに、本発明は、このようなトナー用添加剤を含む静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法においては、光導電体面上に静電荷像が形成され、この静電荷像上に、これと反対の電荷に帯電されたトナーを含む現像剤が接触し、トナーが付着して可視像を形成する。可視化されたトナー像は、必要に応じて転写紙等に転写後、定着され、複写物とされる。
【0003】
静電荷像の現像において用いられるトナーを帯電させる方法としては、二成分現像方式と一成分現像方式が知られている。二成分現像方式では、一般にキャリアと呼ばれる物質と混合・拡散して荷電が付与される。一成分現像方式では、現像スリーブやトナー規制ブレードなどとの接触により荷電が付与される。いずれの方式においても、トナーに均一かつ安定な荷電が付与されていなければ、現像および転写の際に問題が生じる。例えば、現像ローラーからトナーが脱落するという問題や、現像像の転写性の悪さから感光面が汚染され易いという問題が生じる。
【0004】
電子写真用トナーとしては、熱可塑性樹脂に着色剤を混合したものが一般的に用いられている。さらに、トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を向上させるために、外添剤を添加することが知られている。
【0005】
外添剤としては、例えば、シリカ等の無機微粒子、あるいは、ベンゾグアナミン樹脂(アミノ樹脂)やポリスチレン樹脂からなる有機微粒子を、単独あるいは併用して使用することで、トナーの帯電を安定させて高いレベルに維持し、カブリ等を低減できることが報告されている(特許文献1)。また、アミノ樹脂からなる微粒子は、トナーの帯電の立ち上がり性、均一性等の帯電安定性を向上させ、カブリの発生を防ぐこと、また、帯電特性、転写性、および耐刷時の経時安定性に優れる静電荷像現像用トナーを提供するための効果的な外添剤であることが報告されている(特許文献2、3)。
【0006】
しかしながら、従来のアミノ樹脂からなる微粒子をトナー用外添剤に使用しても、十分に高い帯電量を発現できず、また、カブリの発生を十分に防ぐことができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−3066号公報
【特許文献2】特開2003−57869号公報
【特許文献3】特開2005−195694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、非常に高い正帯電性を発現でき、粒度分布がシャープであり、粒子径が精密に制御され、トナー表面に十分な流動性を付与でき、カブリの発生を抑制できるとともに安定した画像濃度を発現でき、トナー表面より内側への埋没を抑制することによって外添剤としての効果を十分に発現できる、トナー用添加剤を提供することにある。また、このようなトナー用添加剤を含む、カブリを十分に抑制でき画像濃度が非常に安定した電子写真を与えることができる静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のトナー用添加剤は、アミノ樹脂粒子からなるトナー用添加剤であって、該アミノ樹脂粒子はアミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合物からなり、該アミノ樹脂粒子の一次平均粒子径をd1とし、該アミノ樹脂粒子の二次平均粒子径をd2としたときに、0.02μm≦d1≦0.18μmであり、d2/d1<5.0である。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記アミノ化合物の50重量%以上がメラミンである。
【0011】
本発明の静電荷像現像用トナーは、本発明のトナー用添加剤を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、非常に高い正帯電性を発現でき、粒度分布がシャープであり、粒子径が精密に制御され、トナー表面に十分な流動性を付与でき、カブリの発生を抑制できるとともに安定した画像濃度を発現でき、トナー表面より内側への埋没を抑制することによって外添剤としての効果を十分に発現できる、トナー用添加剤を提供できる。また、このようなトナー用添加剤を含む、カブリを十分に抑制でき画像濃度が非常に安定した電子写真を与えることができる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪A.トナー用添加剤≫
本発明のトナー用添加剤は、アミノ樹脂粒子からなる。
【0014】
本発明におけるアミノ樹脂粒子は、一次平均粒子径をd1とし、二次平均粒子径をd2としたときに、0.02μm≦d1≦0.18μmであり、d2/d1<5.0である。本発明におけるアミノ樹脂粒子の一次平均粒子径d1と二次平均粒子径d2がこのような関係を満たすことにより、本発明のトナー用添加剤は、非常に高い正帯電性を発現でき、粒度分布がシャープであり、粒子径が精密に制御され、トナー表面に十分な流動性を付与でき、カブリの発生を抑制できるとともに安定した画像濃度を発現でき、トナー表面より内側への埋没を抑制することによって外添剤としての効果を十分に発現できる。
【0015】
一次平均粒子径d1は、トナー用添加剤を構成するアミノ樹脂粒子の電子顕微鏡観察結果から得られる、個々の粒子単位の個数平均粒子径である。
【0016】
二次平均粒子径d2は、トナー用添加剤を構成するアミノ樹脂粒子の粉体を水性分散媒体中に分散させた後、粒度分布測定装置により測定される体積平均粒子径である。
【0017】
一次平均粒子径d1は、0.02μm≦d1≦0.18μmを満たし、好ましくは、0.03μm≦d1≦0.16μmであり、より好ましくは0.05μm≦d1≦0.14μmである。一次平均粒子径d1がこのような関係を満たすことにより、本発明のトナー用添加剤は、粒度分布がシャープなものとなり、粒子径が精密に制御され、トナーの表面から脱落し難くすることができ、外添剤としての効果を十分に発現することができる。
【0018】
d2とd1の比率は、d2/d1<5.0であり、好ましくはd2/d1<4.5であり、より好ましくはd2/d1<4.0である。d2/d1が5.0より小さい場合、一次平均粒子径と二次平均粒子径の差異が少なく、個々の粒子が単粒子レベルで分散している割合が多いことを意味する。d2/d1が5.0より大きい場合にはトナー表面に外添剤が均一に被覆されず、安定した帯電が得られない。
【0019】
本発明者は、d2/d1が前記範囲を満たすことにより、このようなアミノ樹脂粒子をトナー用外添剤に用いた場合に、十分に高い正帯電性を発現し、トナー表面に十分な流動性を付与できると同時に吸湿性を低く抑えることができ、カブリの発生を抑制でき、安定した画像濃度を発現することを見出した。
【0020】
本発明におけるアミノ樹脂粒子の粒度分布のシャープさは、平均粒子径の変動係数(CV値)で示すことができる。本発明におけるアミノ樹脂粒子の平均粒子径の変動係数(CV値)は、具体的には、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下である。本発明におけるアミノ樹脂架橋粒子の粒子径の変動係数(CV値)が50%を超えると、本発明の静電荷像現像用トナーの表面におけるトナー用添加剤としてのアミノ樹脂粒子の固着状態のバラツキが大きくなり、外添剤としての効果が不十分となるおそれがある。なお、変動係数(CV値)の対象となる平均粒子径は、一次平均粒子径d1である。
【0021】
本発明のトナー用添加剤の摩擦帯電量は、好ましくは+50μC/g〜+300μC/gであり、より好ましくは+100μC/g〜+270μC/gであり、さらに好ましくは+130μC/g〜+250μC/gであり、特に好ましくは+150μC/g〜+250μC/gである。本発明のトナー用添加剤の摩擦帯電量が上記範囲内に収まることにより、本発明のトナー用添加剤は非常に高い正帯電性を発現できる。
【0022】
本発明におけるアミノ樹脂粒子は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合物からなる。
【0023】
上記アミノ化合物としては、好ましくは、多官能アミノ化合物であり、より好ましくは、トリアジン環構造を有する多官能アミノ化合物である。上記アミノ化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0024】
上記トリアジン環構造を有する多官能アミノ化合物としては、例えば、メラミン;一般式(1)で表されるアミノ化合物;一般式(2)や一般式(3)などで表されるジアミノトリアジン化合物;ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、アセトグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、スピログアナミンなどのグアナミン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、メラミン、ベンゾグアナミンが好ましい。
【0025】
【化1】

【0026】
【化2】

【0027】
【化3】

【0028】
一般式(1)中、Rは、同一または異なり、水素原子または置換基があっても良いアルキル基を表し、Rの少なくとも1つは置換基があっても良いアルキル基である。一般式(1)中、Rは、好ましくは、水素原子、ヒドロキシアルキル基である。
【0029】
一般式(2)中、Rは、同一または異なり、直鎖構造または側鎖を有する構造である炭素原子数1〜2の炭化水素基(−CH−、−CHCH−、−CH(CH)−)である。
【0030】
一般式(3)中、Rは、直鎖構造、側鎖を有する構造、置換基があっても良い芳香族環を有する構造、置換基があっても良い脂環を有する構造のいずれかである炭素原子数1〜8の炭化水素基である。なお、芳香族環を有する構造や脂環を有する構造は、側鎖を有する構造であっても良い。
【0031】
上記アミノ化合物は、好ましくは、その50重量%以上がメラミンである。上記アミノ化合物中のメラミンの含有割合は、より好ましくは50重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは60重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは70重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは80重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは90重量%〜100重量%であり、特に好ましくは95重量%〜100重量%であり、最も好ましくは実質的に100重量%である。上記アミノ化合物中のメラミンの含有割合が上記範囲内に収まることにより、本発明のトナー用添加剤は、より一層、非常に高い正帯電性を発現でき、粒度分布がシャープであり、粒子径が精密に制御され、トナー表面に十分な流動性を付与でき、カブリの発生を抑制できるとともに安定した画像濃度を発現でき、トナー表面より内側への埋没を抑制することによって外添剤としての効果を十分に発現できる。
【0032】
本発明におけるアミノ樹脂粒子は、任意の適切な方法で製造し得る。本発明におけるアミノ樹脂粒子は、好ましくは、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの水親和性初期縮合物を、界面活性剤を含む水性液中で、炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸の存在下に縮合硬化して、硬化樹脂の乳濁液を生成させた後、該乳濁液から硬化樹脂を分離・乾燥させることによって製造し得る。
【0033】
本発明におけるアミノ樹脂粒子の、水性液中の含有濃度は、好ましくは1重量%〜20重量%であり、より好ましくは2重量%〜15重量%であり、さらに好ましくは3重量%〜10重量%であり、特に好ましくは3重量%〜8重量%である。本発明におけるアミノ樹脂粒子の水性液中の含有濃度を上記のように調整することにより、本発明のトナー用添加剤は、より一層、非常に高い正帯電性を発現でき、粒度分布がシャープであり、粒子径が精密に制御され、トナー表面に十分な流動性を付与でき、カブリの発生を抑制できるとともに安定した画像濃度を発現でき、トナー表面より内側への埋没を抑制することによって外添剤としての効果を十分に発現できる。
【0034】
アミノ化合物とホルムアルデヒドとの水親和性初期縮合物は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとを常法にしたがって反応させて得られる水溶性あるいは水分散性の樹脂状物である。水親和性の程度は、一般に、15℃で水親和性初期縮合物に水を滴下して白濁を生じるまでの水滴下量の水親和性初期縮合物に対する重量%(以下、これを「水混和度」と称することがある)によって測定される。本発明における水親和性初期縮合物の水混和度は、好ましくは100重量%以上である。本発明における水親和性初期縮合物の水混和度が100重量%未満の場合、界面活性剤を含む水性液中でいかに分散させても、粒子径の比較的大きな不均一な乳濁液しか形成せず、最終的に得られるアミノ樹脂粒子の粒子径が不均一なものとなるおそれがある。
【0035】
ホルムアルデヒドとしては、ホルマリン、トリオキサン、パラホルムアルデヒドなどの、ホルムアルデヒドを発生する化合物ものであれば、任意の適切な化合物を採用し得る。
【0036】
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤など、任意の適切な界面活性剤を採用し得る。これらの界面活性剤の中でも、アニオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を用いても良い。
【0037】
アニオン界面活性剤としては、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェートなどのアルカリ金属アルキルサルフェート;アンモニウムドデシルサルフェートなどのアンモニウムアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩などのアルキルスルホン酸塩;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテートなどの脂肪酸塩;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルキルフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェートなどのアルキルアリールスルホン酸塩;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;などが挙げられる。
【0038】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールのモノラウレートなどの脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミド、または酸との縮合生成物;などが挙げられる。
【0039】
界面活性剤の使用量は、使用するアミノ化合物とホルムアルデヒドの合計量に対して、好ましくは1.0重量%〜10重量%であり、より好ましくは2.5重量%〜8.0重量%であり、さらに好ましくは3.0重量%〜7.0重量%であり、特に好ましくは3.5重量%〜6.0重量%である。界面活性剤の使用量を上記の範囲内に調整することにより、本発明のトナー用添加剤は、より一層、非常に高い正帯電性を発現でき、粒度分布がシャープであり、粒子径が精密に制御され、トナー表面に十分な流動性を付与でき、カブリの発生を抑制できるとともに安定した画像濃度を発現でき、トナー表面より内側への埋没を抑制することによって外添剤としての効果を十分に発現できる。
【0040】
炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの水親和性初期縮合物の水性液中で、特異な界面活性能を発揮して、硬化樹脂の安定な乳濁液を生成させるために有効な成分である。このような炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸としては、例えば、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸などが挙げられる。炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸は、1種のみを用いても良いし、2種以上を用いても良い。
【0041】
炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸の使用量は、使用するアミノ化合物とホルムアルデヒドの合計量に対して、好ましくは1.0重量%〜6.0重量%であり、より好ましくは1.2重量%〜5.5重量%であり、さらに好ましくは1.5重量%〜4.5重量%であり、特に好ましくは1.5重量%〜4.0重量%である。炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸の使用量を上記の範囲内に調整することにより、本発明のトナー用添加剤は、より一層、非常に高い正帯電性を発現でき、粒度分布がシャープであり、粒子径が精密に制御され、トナー表面に十分な流動性を付与でき、カブリの発生を抑制できるとともに安定した画像濃度を発現でき、トナー表面より内側への埋没を抑制することによって外添剤としての効果を十分に発現できる。
【0042】
界面活性剤、および炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸の使用量の合計量は、使用するアミノ化合物とホルムアルデヒドの合計量に対して、好ましくは2.0重量%〜10重量%であり、より好ましくは2.5重量%〜8.0重量%であり、さらに好ましくは3.0重量%〜7.0重量%であり、特に好ましくは3.5重量%〜6.5重量%である。本発明において、アミノ樹脂粒子を製造する際の界面活性剤、および炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸の使用量の合計量を上記の範囲内に調整することは極めて重要である。界面活性剤、および炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸の使用量の合計量が上記範囲よりも多くなると、得られるアミノ樹脂粒子の二次平均粒子径d2が大きくなり、d2/d1が5.0よりも大きくなるおそれがある。また、このような条件で得られるアミノ樹脂粒子は吸湿性が高いものとなることが判明し、このようなアミノ樹脂粒子をトナー用外添加剤として使用した場合には、トナーの帯電が不安定であり、カブリが発生しやすくなるおそれがある。一方、界面活性剤、および炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸の使用量の合計量が上記範囲よりも少なくなると、得られるアミノ樹脂粒子の粒度分布が不均一になり、このようなアミノ樹脂粒子をトナー用外添加剤として使用した場合、静電荷像現像用トナーの表面におけるトナー用添加剤としてのアミノ樹脂粒子の固着状態のバラツキが大きくなり、外添剤としての効果が不十分となるおそれがある。
【0043】
アミノ化合物とホルムアルデヒドとの水親和性初期縮合物を、界面活性剤を含む水性液中で、炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸の存在下に縮合硬化させる方法としては、例えば、上記界面活性剤を含む水性液中で、上記水親和性初期縮合物を形成させ、そこに上記アルキルベンゼンスルホン酸を加えて、任意の適切な温度(例えば、好ましくは25℃〜100℃、より好ましくは50〜100℃)にて任意の適切な時間(例えば、好ましくは1〜10時間)の間、撹拌を行い、縮合硬化させて、硬化樹脂の乳濁液を生成させる方法;上記界面活性剤と上記アルキルベンゼンスルホン酸を含む水性液中で、上記水親和性初期縮合物を形成させ、任意の適切な温度(例えば、好ましくは25℃〜100℃、より好ましくは50℃〜100℃、さらに好ましくは80℃〜100℃)にて任意の適切な時間(例えば、好ましくは1時間〜50時間、より好ましくは1時間〜30時間、さらに好ましくは1時間〜10時間)の間、撹拌を行い、縮合硬化させて、硬化樹脂の乳濁液を生成させる方法;上記水親和性初期縮合物を含む水性液中に、上記界面活性剤と上記アルキルベンゼンスルホン酸を加え、任意の適切な温度(例えば、好ましくは25℃〜100℃、より好ましくは50〜100℃)にて任意の適切な時間(例えば、好ましくは1〜10時間)の間、撹拌を行い、縮合硬化させて、硬化樹脂の乳濁液を生成させる方法;などが挙げられる。
【0044】
硬化縮合させたアミノ樹脂粒子の架橋度をさらに高めるために、より高温で加熱処理を行ってもよい。かかる観点から、熱処理工程は、硬化縮合させたアミノ樹脂粒子の乳濁液等の分散液の状態でオートクレーブ処理により行ってもよいし、分離工程を経て分散液より単離したアミノ樹脂架橋粒子を、気相中で熱処理してもよい。
【0045】
オートクレーブ処理では、100〜300℃で分散液の状態で加熱する熱処理工程を行うことが好ましい。上記温度範囲でオートクレーブ処理を行うことによって、アミノ樹脂粒子内の縮合架橋をさらに進め、架橋密度の高いアミノ樹脂粒子を得ることができる。オートクレーブ処理時間は、特に限定はされない。オートクレーブ処理は、分散液の状態であれば適用可能である。具体的には、上記縮合・硬化工程後の反応液などに適用可能である。
【0046】
硬化樹脂の乳濁液から硬化樹脂を分離・乾燥させる方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。分離工程として、例えば、自然沈降、遠心沈降、デカンテーション、濾過などが挙げられる。
【0047】
乾燥工程として、例えば、自然乾燥、減圧乾燥、熱風乾燥などが挙げられる。乾燥温度は130〜230℃が好ましく、150〜210℃がより好ましい。乾燥時間は任意の適切な時間(例えば、好ましくは1〜20時間)の間で乾燥し得る。このような条件で乾燥工程を行うことで、アミノ樹脂粒子に付着している余剰な水分、および未反応の遊離しているホルムアルデヒドを除去することができる。
【0048】
上記乾燥工程の後では、粉砕のみを行っても良いし(粉砕工程)、分級のみを行っても良いし(分級工程)、粉砕と分級をともに行っても良い(粉砕・分級工程)。また、上記粉砕と分級をともに行う場合(粉砕・分級工程)、粉砕後に分級を行ってもよいし、粉砕と分級とを同時に行ってもよい。上記粉砕と分級をともに行う場合(粉砕・分級工程)、粉砕機と分級機は別々の装置を用いてもよいが、粉砕と分級の両機能を兼ね備えた装置(粉砕分級機)を用いることもできる。これらの装置としては、任意の適切な装置を用いることができる。このような装置としては、ジェットミルを用いることが好ましく、ジェットミルを用いて粉砕する場合の乾燥エアーの圧力は、好ましくは0.3mPa以上であり、より好ましくは0.5mPa以上である。
【0049】
上記で得られたアミノ樹脂粒子の吸湿性をさらに抑制すべく、水や有機溶媒などの洗浄液を用いた洗浄工程を行ってもよい。上記洗浄工程を行うことにより、粒子表面に残存する界面活性剤および酸を効率よく除去し、吸湿性を抑えることができる。洗浄液としては、水や有機溶媒が適宜用いられうるが、なかでも、水;メタノール、エタノールなどのアルコール類;これらの混合液;などが好ましく用いられる。洗浄工程においては、例えば、分離工程の後の濾過ケーキや、乾燥工程後の粉体や、粉砕工程や分級工程や粉砕・分級工程後の粉体に、上記洗浄液を1種以上混合し、洗浄することができる。
【0050】
本発明のトナー用添加剤は、上述のような特定のアミノ樹脂粒子からなるので、非常に高い正帯電性を発現でき、粒度分布がシャープであり、粒子径が精密に制御され、トナー表面に十分な流動性を付与でき、カブリの発生を抑制できるとともに安定した画像濃度を発現でき、トナー表面より内側への埋没を抑制することによって外添剤としての効果を十分に発現できる。
【0051】
本発明のトナー用添加剤は、飽和吸湿量が、好ましくは15%以下、より好ましくは13%以下、さらに好ましくは12%以下である。本発明のトナー用添加剤の飽和吸湿量が上記範囲よりも高くなると、トナー用外添加剤として使用した場合、トナーの帯電が不安定であり、カブリが発生しやすくなるおそれがある。
【0052】
≪B.静電荷像現像用トナー≫
本発明の静電荷像現像用トナーは、本発明のトナー用添加剤を含む。本発明の静電荷像現像用トナー中の本発明のトナー用添加剤の含有割合は、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.03〜10重量%、さらに好ましくは0.05〜5重量%である。本発明の静電荷像現像用トナー中の本発明のトナー用添加剤の含有割合が0.01重量%未満であると、流動性や転写特性が劣るおそれがあり、一方、本発明の静電荷像現像用トナー中の本発明のトナー用添加剤の含有割合が20重量%を越えるものであると、定着性や転写性や流動性等の特性が低下してしまうおそれがあるとともに、トナーの調製が困難となるおそれがある。
【0053】
本発明の静電荷像現像用トナーは、好ましくは、バインダーとなる結着用樹脂剤および着色剤を必須成分として含む。本発明の静電荷像現像用トナーは、必要に応じて、オフセット防止剤や電荷制御剤等の通常のトナーに常用される添加剤が適宜配合されていても良い。本発明の静電荷像現像用トナーは、本発明のトナー用添加剤以外のトナー用添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいても良い。本発明の静電荷像現像用トナーは、一成分系現像剤とする場合には、任意の適切な磁性微粒子が添加され得る。
【0054】
本発明の静電荷像現像用トナーの平均粒子径としては、好ましくは1〜25μmであり、より好ましくは3〜20μmである。
【0055】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法としては、本発明のトナー用添加剤を含むようにするものであれば、任意の適切な静電荷像現像用トナーの製造方法を採用し得る。例えば、粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法などの各種の製造方法を採用し得る。また、本発明のトナー用添加剤の添加方法としては、好ましくは、トナー粒子の表面部位に付着ないし添加する、いわゆる外添の形態を採用し得る。
【0056】
本発明の静電荷像現像用トナーに用いられ得る結着用樹脂剤、着色剤、オフセット防止剤や電荷制御剤等の通常のトナーに常用される添加剤、磁性微粒子としては、任意の適切なものを採用し得る。
【0057】
上記結着用樹脂剤としては、例えば、スチレン系ポリマー、(メタ)アクリル酸系ポリマー、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、エポキシ系ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0058】
上記着色剤としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料・染料、ニグロシン系染料、体質顔料などが挙げられる。これらは、1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0059】
上記オフセット防止剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンワックス;パラフィンワックス;カルナウバワックス等の天然ワックス;などが挙げられる。
【0060】
上記磁性微粒子としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属粉末;マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の微粒子;などが挙げられる。これらは、1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。なお、カーボンブラックなどの着色剤は、トナー粒子中での高い分散性を得るために、親水性ポリマーなどのグラフト処理等により表面改質されているものが好ましい。
【0061】
本発明の静電荷像現像用トナーは、本発明のトナー用添加剤を含むので、カブリがなく画像濃度の安定した電子写真を与えることができる。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。また、「重量%」を「wt%」と記すことがある。また、本明細書において、「重量」とあるのは、「質量」と読み替えても良い。
【0063】
〔一次平均粒子径d1、一次平均粒子径の変動係数(CV値)の測定〕
粒子総個数が200個前後になるようにSEM写真を撮影し、その写真より無作為に選んだ100個の粒子の直径(撮影された粒子(断面)の最大長)をノギスにて計測し、その個数基準の算術平均径を一次平均粒子径d1とした。また、一次平均粒子径d1に対する粒子径の標準偏差の百分率(%)として、一次平均粒子径の変動係数(CV値)を算出した。
【0064】
〔二次平均粒子径d2の測定〕
ビーカーに乾燥粉砕されたアミノ樹脂粒子とメチルアルコールを固形分濃度1重量%になるよう計り取り、超音波洗浄器にて分散させたものを測定用試料とし、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、「LA−920」)で測定した体積平均粒子径を二次平均粒子径d2とした。
【0065】
〔飽和吸湿量〕
シャーレに樹脂粒子を薄く伸ばした状態で、温度30℃、湿度90%RHで一定に保たれた雰囲気条件下で24時間放置した。放置によって吸湿した樹脂粒子1gを測り取り、カールフィッシャー法により水分量を定量し、得られた水分量の百分率を飽和吸湿量(重量%)とした。
【0066】
〔摩擦帯電量〕
樹脂粒子の摩擦帯電量を、下記条件のブローオフ式帯電測定機(京セラケミカル株式会社製、TB−200)にて測定した。
メッシュアパーチャ:32μm
ブロー圧:50kPa
粉体混合比:0.5重量部(鉄粉キャリア100重量部に対して)
【0067】
〔20万枚連続複写試験〕
スチレン−n−ブチルアクリレート共重合体からなる結着用樹脂剤に着色剤としてカーボンブラックを分散させた平均粒子径11μmのトナー100重量部に対し、実施例または比較例で得られた樹脂粒子0.5重量部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、静電荷像現像用トナーを得た。得られた静電荷像現像用トナーについて、30℃、85%RHの条件下で、20万枚連続複写試験を行った。
試験すべき静電荷像現像用トナーを市販の複写機に入れ、30℃、85%RHの条件下で、20万枚の連続複写を行い、カブリの発生レベルを目視で判定した。
ランクA:カブリが認められない
ランクB:カブリが僅かに認められるが目立たない。
ランクC:カブリが認められ目立つ。
ランクBまでを合格レベルとした。
【0068】
〔実施例1〕
攪拌機、温度計、および冷却機を備えたステンレス製の反応釜に、脱イオン水2620部および65重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(花王株式会社製、ネオペレックスG65)(以下、「65重量%DBSNa」と称することがある)10部を加え、内温を90℃まで昇温し、同温度に保った。
他方、上記反応釜とは異なる上記と同一設備を保有した反応容器に、メラミン100部、37重量%ホルマリン193部、25重量%アンモニア水3部を加え、70℃まで昇温して、同温度で30分間保持した後、上記90℃に保持された65重量%DBSNa水溶液中に投入した。その後、10重量%ドデシルベンゼンスルホン酸(以下、「DBS」と称することがある)水溶液40部を投入して、さらに90℃にて5時間保持して熟成を行い、アミノ樹脂粒子を含有する分散液を得た。
上記アミノ樹脂粒子を含有する分散液2966部に10重量%硫酸バンド水溶液30部を添加して、30分攪拌を行った。その後、その分散液を遠心分離機により固液分離を行い、得られたケーキを窒素雰囲気下の190℃で保持された熱風乾燥機乾燥にて5時間保持し、乾燥を行った後、ジェットミル粉砕機(粉砕圧:0.7MPa)による粉砕と気流分級を行い、アミノ樹脂粒子を得た。
結果を表1に示した。
【0069】
〔実施例2〕
実施例1において、ジェットミルによる粉砕を繰り返し3回行なったこと以外は実施例1と同様に行い、アミノ樹脂粒子を得た。
結果を表1に示した。
【0070】
〔比較例1〕
攪拌機、温度計、および冷却機を備えたステンレス製の反応釜に、脱イオン水1400部および65重量%DBSNa6部を加え、内温を90℃まで昇温し、同温度に保った。
他方、上記反応釜とは異なる上記と同一設備を保有した反応容器に、メラミン100部、37重量%ホルマリン193部、25重量%アンモニア水3部を加え、70℃まで昇温して、同温度で40分間保持した後、上記90℃に保持された65重量%DBSNa水溶液中に投入した。その後、10重量%DBS水溶液50部を投入して、さらに90℃にて5時間保持して熟成を行い、アミノ樹脂粒子を含有する分散液を得た。
上記アミノ樹脂粒子を含有する分散液1752部に10重量%硫酸バンド水溶液30部を添加して、30分攪拌を行った。その後、その分散液を遠心分離機により固液分離を行い、得られたケーキを窒素雰囲気下の190℃で保持された熱風乾燥機乾燥にて5時間保持し、乾燥を行った後、ジェットミル粉砕機(粉砕圧:0.7MPa)による粉砕と気流分級を行い、アミノ樹脂粒子を得た。
結果を表1に示した。
【0071】
〔比較例2〕
実施例1において、ハンマーミルで粉砕したこと以外は実施例1と同様に行い、アミノ樹脂粒子を得た。
結果を表1に示した。
【0072】
〔比較例3〕
比較例1において、65重量%DBSNaの仕込み量を20部に変更した以外は比較例1と同様に行い、アミノ樹脂粒子を得た。
結果を表1に示した。
【0073】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のトナー用添加剤、静電荷像現像用トナーは、電子写真方式の複写機やレーザープリンター等の画像形成装置における現像装置に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ樹脂粒子からなるトナー用添加剤であって、
該アミノ樹脂粒子はアミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合物からなり、
該アミノ樹脂粒子の一次平均粒子径をd1とし、該アミノ樹脂粒子の二次平均粒子径をd2としたときに、
0.02μm≦d1≦0.18μmであり、
d2/d1<5.0である、
トナー用添加剤。
【請求項2】
前記アミノ化合物の50重量%以上がメラミンである、請求項1に記載のトナー用添加剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトナー用添加剤を含む、静電荷像現像用トナー。


【公開番号】特開2013−76797(P2013−76797A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215870(P2011−215870)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】