説明

トラック用空調装置

【課題】設置作業が簡単で、どのような形式のトラックにも適用可能な汎用性に富み、しかも環境に優しい反面冷房効果の維持が困難である水を冷媒として使用しながら、清涼感のある冷房効果を維持するようにしたトラック用空調装置を提供する。
【解決手段】水路を有し、該水路を流れる水によって湿潤状態を維持する熱交換フィンを内蔵する熱交換機能と貯水機能を一体的に併せ持つ室外潜熱冷却器1と運転室内適所に設置され熱伝導性の良い薄い金属板を熱交換フィンとして使用する熱交換機能を持つ室内冷却器2とからなり、循環ポンプ11により、前記室外潜熱冷却器1と前記室内冷却器2に水を循環させる空調装置であって、室内冷却器2に水を循環させない第1の循環系統と循環させる第2の循環系統を設け、この二つの循環系統への水の流れを循環水路切換弁8によって切り替えるようにし、第1の循環系統では水の冷却を行い、第2の循環系統でもって前記第1の循環系統からの冷却水を使用して、運転室内の空調を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックがアイドリングストップ時等のようにエンジンを停止して、長時間停車する時に有効に使用できるトラック用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
夏期に於けるトラックの冷房は、大多数が既設のエアコン即ちエンジンの動力を使用した通常のエアコンが使用されている。然し、トラックは、長距離運転する場合が多く、食事や仮眠をとる等の為に比較的長時間停車したり、目的地に着いたときには、荷物の積み下ろしの為、やはり長時間停車する必要が生じるものである。その場合、エンジンを作動したまま停車するか、エンジンを止めて停車するかの二者択一を迫られる。エンジンを作動したままで、既設のエアコンを使用すれば運転室内の冷房は確保され、いつでも快適な運転室の環境が維持されるが、燃費の非経済性や環境問題等を考慮すると一概に善しとは云えない。又、燃費の非経済性や環境問題等の観点から、アイドリングストップを行い、エンジンを止めて停車すると、運転室の中は灼熱地獄状態となり、仮眠はもとより、すぐに運転できるものではない。その為、エンジンを始動させ、既設のエアコンを作動させて、運転室内の冷房を行なってから、仮眠するか、運転することになる。
【0003】
こうした点を勘案して、近年ではエンジンを停止しても、運転室内の冷房を行うことが可能な冷房装置が開発されている。例えば、熱量の移動媒体として、既設のエアコン用の冷媒を使用し、該冷媒を蓄冷配管系に必要に応じて流入(通常走行中等エンジンの負担が大きい時には蓄冷配管系への冷媒流入をストップさせ、減速時等動力に余裕があり、且つ空調負荷が要求されない条件下では蓄冷配管系に流入させるよう調節可能とする。)するようにし、蓄冷配管系へ流入した時の冷媒で蓄冷タンク内の蓄冷材を冷却させ、この冷却させた蓄冷材を利用してエンジン停止時の冷房を行なうものがある。(特許文献1参照)又、ヒートパイプ式熱交換器に蓄冷材(蓄冷パック)を付設して、既設のエアコン使用時に前記ヒートパイプ式熱交換器を作動させて前記蓄冷材を保冷し、この蓄冷材を利用してエンジン停止時の冷房を行なうものが知られている。(特許文献2参照)
【特許文献1】特開2000−313226
【特許文献2】実用新案登録第3070133号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然しながら、既設のエアコン用の冷媒を使用し、該冷媒を蓄冷配管系に必要に応じて流入するようにし、蓄冷配管系へ流入した時の冷媒で蓄冷タンク内の蓄冷材を冷却させ、この冷却させた蓄冷材を利用してエンジン停止時の冷房を行なうものに於いては、既設のエアコンサイクルで吸熱を行なうエバポレータをエンジン停止時(コンプレッサー停止時)の冷房用熱交換器として使用しているので、エンジン停止時用の熱交換器を必要としない利点はあるものの、既設のエアコンの冷媒を使用していることから既設のエアコン装置へ接続する為の配管工事等面倒な作業が必要となる。そして燃費等経済性を考慮して、冷媒を蓄冷配管系に必要に応じて流入させるように調整するようにしたことから、装置の構造が複雑になり、結果として装置としての価格が高くなり、トータルコストに於いても決して有利とは云えない。又、ヒートパイプ式熱交換器に蓄冷材(蓄冷パック)を付設して、既設のエアコン使用時に前記ヒートパイプ式熱交換器を作動させて前記蓄冷材を保冷し、この蓄冷材を利用してエンジン停止時の冷房を行なうものでは、装置を使用する(エンジンを停止した状態で冷房する)に当たっては、蓄冷材をあらかじめ、冷凍庫に10時間以上冷凍させなくてはならず、蓄冷材の装置への設置(ヒートパイプ式熱交換器への付設)を含めて、その作業は面倒なことである。
【0005】
本発明は、こうした従来技術の問題点に鑑み、設置作業が簡単で、どのような形式のトラックにも適用可能な汎用性に富み、しかも環境に優しい反面冷房効果の維持が困難である水を冷媒として使用しながら、清涼感のある冷房効果を維持するようにしたトラック用空調装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、水路を有し、該水路を流れる水によって湿潤状態を維持する熱交換フィンを内蔵する熱交換機能と貯水機能を一体的に併せ持つ室外潜熱冷却器と運転室内適所に設置され熱伝導性の良い薄い金属板を熱交換フィンとして使用する熱交換機能を持つ室内冷却器とからなり、循環ポンプにより、前記室外潜熱冷却器と前記室内冷却器に水を循環させる空調装置であって、室内冷却器に水を循環させない第1の循環系統と循環させる第2の循環系統を設け、この二つの循環系統への水の流れを循環水路切換弁によって切り替えるようにし、第1の循環系統では水の冷却を行い、第2の循環系統でもって前記第1の循環系統からの冷却水を使用して、運転室内の空調を行なうようにしたものである。このように構成したことにより、湿潤状態を維持する熱交換フィンを使用する室外潜熱冷却器は冷却水を冷却する為に働き、運転室内冷房は、前記室外潜熱冷却器からの冷却水の送水により室内冷却器が行なうので、環境に優しい反面冷房効果の維持が困難である水を冷媒として使用しながら、清涼感のある冷房効果を維持することが出来る。又、トラック既設のエアコンに使用している冷媒を使わず、独立した装置としてあるので、トラックへの設置が簡単であり、汎用性があり、どのような形式のトラックへも容易に適用出来る。
【0007】
請求項2記載の発明は、室外潜熱冷却器に於いて、貯水タンクとして機能する下部本体部内の冷却水中に氷や蓄冷材を投入するようにしたものである。このように構成したことにより、冷却水の冷却効率が良くなり、室内冷却器の冷房性能を向上させることが出来る。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上説明したように構成されているので、下記に説明するような効果を奏する。
【0009】
請求項1記載のトラック用空調装置に於いては、湿潤状態を維持する熱交換フィンを使用し、蒸発潜熱を利用する室外潜熱冷却器は冷却水を冷却する為に働くようにし、運転室内冷房は、前記室外潜熱冷却器で作られる冷却水をうけて室内冷却器が行なうので、環境に優しい反面、密閉した状態での運転室内では、冷房効果を維持することが困難である水を冷媒として使用しながら、清涼感のある冷房効果を維持することが出来る。又、トラック既設のエアコンに使用している冷媒を使わず、独立した装置としてあるので、トラックへの設置が簡単であると共に汎用性があり、どのような形式のトラックへも容易に適用出来る
【0010】
請求項2記載のトラック用空調装置に於いては、冷却水を冷却する働きを持つ室外潜熱冷却器の一部であって、貯水タンクとして機能する下部本体部内の冷却水中に氷や蓄冷材を投入するようにしたので、冷却水の冷却効率が良くなると共に、それを維持することが可能となり、室内冷却器の冷房性能を向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図7に基づき詳細に説明する。図1は本発明によるトラック用空調装置の一実施形態を示す斜視図、図2は本発明によるトラック用空調装置に於ける室内冷房器の熱交換器の構造を示す正面図、図3は図2のB−B断面図であって、図4は図1のA−A断面図であり、室外潜熱冷却器の内部構造を示すものである。図5は室外潜熱冷却器に於ける熱交換フィンの概要を示す断面図であり、図6は本発明によるトラック用空調装置に於ける冷却水の流れを示す説明図、図7は本発明によるトラック用空調装置のトラックへの設置例を示す概要図である。
【0013】
それでは、図1により、本発明によるトラック用空調装置の基本的な構成を説明する。1は、熱交換を行なう各部材が収容配設されている上部本体部9と該上部本体部9の下側に取付け固定され、貯水タンクとして機能する下部本体部10からなり、循環ポンプ11により下部本体部10内の冷媒としての冷却水を所定経路循環させ、上部本体部9に還流させるようにして、前記冷却水を保冷(冷却)する室外潜熱冷却器である。2は、室内冷却器で、内部には、後述するように前記室外潜熱冷却器1により冷却された冷却水を受けて、熱交換を行なう各部材が収容配設されており、発生する冷気を送風機によって、運転室内に送り、室内を冷房するようになっている。そして室外潜熱冷却器1と室内冷却器2は、冷水配管3,4,5,6,7によって連接されている。下部本体部10の側部適所に取付け固定されている循環ポンプ11に接続している冷水配管7の他方端部は三方弁である循環水路切換弁8に接続していて、該循環水路切換弁8を介して冷水配管6及び冷水配管5とに連接している。冷水配管6は室内冷却器2側に接続され、冷水配管5は室外潜熱冷却器1側に冷却水を還流する為の冷水配管3に配管接続部材38を介して接続されている。冷水配管4は室内冷却器2からの冷却水を室外潜熱冷却器1側に還流するもので、配管接続部材38に接続している。即ち、本発明によるトラック用空調装置は、後述するように、冷却水の流れを室内冷却器2を通さず循環させる第1の循環系統と室内冷却器2を通す第2の循環系統の二つの系統に切換可能とし、第1の循環系統で冷却水の冷却を行い、第2の循環系統に於いて、前記第1の循環系統で冷却した冷却水を使用して運転室内の冷房を行なうものである。
【0014】
引き続き、図4及び図5に基づき、図1を参照しながら、室外潜熱冷却器1の詳細を説明する。開放側を下向きにした上部本体部9と開放側を上向きにした下部本体部10は、開放側同士を取付け固定することで箱型状とされていて、下部本体部10内部上側には、開口部23を有する仕切板22が固設されていて、該仕切板22の下方部分が冷却水24を貯蔵する貯水タンクとして機能するよう構成されている。下部本体部10の側部適所には循環ポンプ11が取り付けられており、冷却水24を循環させる働きを負っている。上部本体部9内部の上側には、複数の熱交換フィン16を嵌合、嵌着する為のスリットを複数形成した上部枠体20が取付け固定され、該上部枠体20と下方向に適切な間隔をおいて、下部枠体19が下部本体部10に取り付けられている受座21に適切に固着されている。下部枠体19には、前記上部枠体20のスリットに対応してスリットが形成されている。12は、上部本体部9一側面に形成した入口開口部18を覆うように取付け固定したカバーで、該カバー12の内側であって、前記入口開口部18の適所には、上部本体部9内に外気を取り込む送風機13が適切な方法で取り付けられている。15は、入口開口部18と対応する上部本体部9の側面に形成された出口開口部で、該出口開口部15を覆うように桟付枠体17が取り付けられている。14は、フィルターであり、カバー12に取り付けられていて、送風機13が作動した時に外気と共に流入するゴミや埃の進入を防止するものである。尚、桟付枠体17に付いては、桟ではなく、単にフィルター状のものであっても良い。
【0015】
こうした構成を持つ室外潜熱冷却器1であるが、最も重要な構成要素の1つである熱交換の構造特に熱交換フィン16について、更に詳しく説明する。図5は、熱交換フィン16の詳細を示す断面図であり、平板状の2枚の膜体25,25がスペーサー26,26を介して所定の間隔を持って構成されている。膜体25は、織布や不織布或いは細かな通気口を多く持っているスポンジ状の材料で作られており、該膜体25,25とスペーサー26,26によって作られた水路27に冷却水24が流入するようになっている。水路27に流入して所定の働きをした冷却水24は、受座21に集められ、排水管40を通して下部本体部10に流れ込むようになっている。
【0016】
ここで、室外潜熱冷却器1の働きを説明して置くこととする。尚、説明を判り易くするため、循環ポンプ11により送り出された冷却水24は、ダイレクトに上部本体部9に入り込むものとして説明する。循環ポンプ11を作動させると、貯水タンクとして機能する下部本体部10内の冷却水24は、冷水配管を通って上部本体部9に流入し、上部枠体20と前記上部本体部9で作られた槽内に貯水されると同時に複数の熱交換フィン16の水路27に流れ込む。この時、送風機13も作動しており、熱交換フィン16の間に外気を勢い良く送り込む。織布や不織布或いは細かな通気口を多く持っているスポンジ状の材料で作られている膜体25は、冷却水24から水分を吸収し、充分な湿潤状態となっており、この状態を維持しているので、熱交換フィン16周辺の外気を冷却させると共に冷却水24をも冷却する。即ち、充分湿潤な膜体25に送風機13による外気が当たると、外気は膜体25の表面水に蒸発熱を奪われる為熱量が低下し、温度が下がり、結果として冷却される。そして充分湿潤な膜体25は、送風機13から、強制的に外気を吹き付けられることで発生する蒸発潜熱により、その膜面の熱が奪われ冷却される。それに伴い、膜体25とスペーサー26によって作られた水路27も冷却されることになり、該水路27内を通る冷却水24が冷却されることになる。冷却された冷却水24は、受座21の排水管40を経て下部本体部10に還流される。これを繰り返すことで、冷却水24を冷却させることが可能となる。尚、冷却水24を更に効率的に冷却させる為に、下部本体部10内に氷やあらかじめ冷却した蓄冷材を投入することも可能である。
【0017】
尚、室外潜熱冷却器1は、室外(屋外)に配設する為、高温対策に配慮する必要があり、特に貯水タンクとして機能する下部本体部10は、その外装を断熱材で保護し、保冷効果を維持することが必要であり、又、冷却水の容量は、冷房装置の運転時間に必要な熱容量により決まるので、充分考慮しなければならないのは当然のことである。又、熱交換を行なう各部材が収容配設されている上部本体部9と該上部本体部9の下側に取付け固定され、貯水タンクとして機能する下部本体部10とを一体的に取付け固定するとして説明をしたが、これに限定するものでなく、分離して使用することも可能であるので念のため付言して置く。
【0018】
次に、図2及び図3に基づき、図1を参照しながら、室内冷却器2について詳細に説明する。該室内冷却器2は、熱伝導性の良い銅管等で作られ、複数本を並べた状態で使用する熱伝導管32と板厚0.2mm程の薄いアルミニュームの板で作られ、前記熱伝導管32の長手方向に対して直交するように圧入固着した熱伝導フィン37そして冷却水24を熱伝導管32に均等配水する為のヘッダー管28,29更に冷風を運転室内に送る為の送風機39により構成される。熱伝導管32への熱伝導フィン37の配設は、1.5mm〜3mmの間隔で行なうのが効率的である。又、熱伝導管32とヘッダー管28,29との取付けは、ヘッダー管28,29それぞれに形成した接続突状口33に熱伝導管32の端部を嵌合した後、溶接を施すことで行なわれる。36は、熱伝導管32に於けるケースである。尚、熱伝導管32の径、長さとそれに伴う熱伝導フィンの大きさや必要枚数、更にヘッダー管28,29の径は、それぞれ関連し、設定する冷房性能により、決定されるものである。
【0019】
このような構成になる室内冷却器2の冷房システムについて説明する。室外潜熱冷却器1から送られてくる冷却水24を冷水配管7と冷水配管6を経由してヘッダー管28に形成した冷水入口30でもって受け取ると、ヘッダー管28は冷却水24を均等に熱伝導管32に送り込む。これによって熱伝導管32は冷却され、それに伴い、前記熱伝導管32に圧入固着されている熱伝導フィン37が冷却される。熱伝導フィン37が冷却されることによって、周囲の外気も冷却され、冷却された外気は送風機39により運転室内に送り込まれ、冷房が行なわれるのである。所定の働きをした冷却水24は、ヘッダー管29に形成した冷水出口31から冷水配管4そして冷水配管3を経由して、室外潜熱冷却器1へ還流されることになる。
【0020】
図6は、本発明によるトラック用冷房装置の全体システム(特に冷却水の流れ)を説明するものであり、その内容は次の通りである。但し、室外潜熱冷却器1及び室内冷却器2の構成は、既に詳細説明してあるので、あらためて説明するのは省略する。本発明によるトラック用空調装置の電源は、云うまでもなくトラックに搭載されているバッテリーである。トラック走行中は、既設のエアコンにより運転室内は冷房されており、本発明によるトラック用空調装置はOFF状態となっているのであるが、室外潜熱冷却器1は、作動するようになっていて、下部本体部10内の冷却水24の冷却を行なっている。この時の冷却水24の流れは、循環ポンプ11、三方弁である循環水路切換弁8の働きで、下部本体部10から冷水配管7、冷水配管5、冷水配管3を経由して上部本体部9に還流する第1の循環系統で行なわれる。第1の循環系統の主目的は冷媒である冷却水24を冷却することであるのは、既に説明した通りである。
【0021】
続いて、エンジンを停止して、停車した時の冷房システムに付いて説明する。エンジンを停止しても、バッテリーを電源としている本発明によるトラック用空調装置は、作動が継続されていて、図示しないスイッチを操作することで循環水路切換弁8を作動させ、冷却水24の流れを第1の循環系統から第2の循環系統へ切り替えると同時に室内冷却器2を作動させるようになっている。第2の循環系統に切り替わったことで、冷却水24の流れは次の如くとなる。即ち、循環水路切換弁8の冷水配管5側が閉ざされ、冷水配管6側が開かれることにより、下部本体部10からの冷却水24は、冷水配管7、冷水配管6を経由して室内冷却器2に流入する。室外潜熱冷却器1で冷却された冷却水24は、ヘッダー管28から熱伝導管32に供給され、熱伝導フィン37を冷却し、送風機39と協働して運転室内を冷房した後、冷水配管4、冷水配管3を経由して上部本体部9に還流される。
【0022】
それではここで、冷却水24の循環を第1と第2の二つの系統に分けた理由を説明する。これは、冷媒として水を使用することと関連するものである。水は手軽に使用出来るばかりでなく、クリーンな環境に優しい素材である。然し、水を冷媒として使用した場合は、清涼感のある冷房効果を維持することが難しいという問題が起こる。例えば、室外潜熱冷却器1を直接運転室冷房に使用したとする。室外潜熱冷却器1は、前述した通り、単独で冷房機能を有しているので、運転室内を冷房することは可能である。即ち、循環ポンプ11により、下部本体部10内の冷却水24は、冷水配管を通って上部本体部9に流入し、上部枠体20と前記上部本体部9で作られた槽内に貯水されると同時に複数の熱交換フィン16の水路27に流れ込む。この時、送風機13により、熱交換フィン16の間に外気が勢い良く送りこまれるので、充分な湿潤状態となっている熱交換フィン16(膜体25)は蒸発潜熱により冷却し、周辺の外気を冷却させる。そしてこの冷却した外気を運転室内に送ることにより冷房が行なわれる。然し、密閉した運転室内に蒸発潜熱により得た冷風を循環させると運転室内の空気の相対湿度が飽和湿度まで上昇し、熱交換フィン16の冷却性能が低下し、清涼感がなくなり、充分な冷房が行なわれなくなってしまう。これは、熱交換フィン16の水分を吸収することで蒸発潜熱を発生させているので、これを繰り返すと、運転室内の空気の水分の割合が徐々に増加し、ついには飽和湿度まで上昇してしまい、熱交換フィン16の冷却性能が悪くなり、運転室内の空気は湿気の多いものとなり、清涼感が著しく損なわれる。
【0023】
そこで本出願人は、クリーンな環境に優しい素材である水を冷媒としながら、清涼感のある効果的な冷房装置を種々検討し、室外潜熱冷却器1と室内冷却器2を使用し、冷却水24を必要に応じて二つの循環系統に切り替えて流すようにしたものである。尚、室内冷却器2は、室外潜熱冷却器1でもって冷却した冷却水24を使用するだけであるので、運転室内の空気が飽和湿度になることはないので、念のため付言する。
【0024】
図7は、本発明によるトラック用空調装置の設置例を示す概略図であるが、室外潜熱冷却器1は運転室後ろ側外側に、室内冷却器2は運転室内後方に適切な手段で配設されており、本図に於いては図示してないが、冷水配管が連接されているのは、既に述べた通りであり、電気配線や操作スイッチ等必要な部材が適切に配線、設置されていることは云うまでもない。
【0025】
本発明によるトラック用空調装置は、以上説明したような構成及び効果を有するものであるが、簡単な改変を行うことで、冷房装置としてだけでなく、暖房装置としても使用出来るので、参考の為説明する。
【0026】
本発明によるトラック用空調装置を暖房装置として使用する場合は、貯水タンクとして機能する下部本体部10内にヒーターを内蔵させると共に上部本体部9に於ける熱交換機能をストップさせれば良い。こうした構成を取ることにより、冷房装置として使用するのと同じ方法で運転室内を暖房することが可能となる。そのシステムを簡単に説明すれば、ヒーターにより暖められた下部本体部10内の水を必要に応じて第1の循環系統と第2の循環系統に流すようにすることで行なわれる。即ち、トラック走行中は第1の循環系統を循環させ、これによって水を比較的高温の温水に保温することが可能となる。アイドリングストップ時等エンジンを停止して停車した時に、所定のスイッチをONさせると第2の循環系統が作動する。これによって、温水が室内冷却器2(暖房の場合は室内暖房器)に流入して運転室内の暖房を行い、所定の働きをした温水は上部本体部9に還流する。この時、上部本体部9の熱交換機能はストップしているので、温水はそのまま排水管40を通って下部本体部10内に流れ込む。該循環を繰り返すことで、エンジンを停止した状態で停車しても運転室内の暖房が行なわれる。尚、付言すれば、温水の還流を上部本体部9ではなく、下部本体部10に直接行なうようにすれば、上部本体部9を流れる時の温水の温度低下を防止することが出来るので、より効果あるものとなる。但し、この場合は、冷水配管3(暖房の場合は温水配管)に三方弁をあらたに配設して、必要に応じて、温水の流れを上部本体部9或いは下部本体部10に切換えられるようにする必要があるのは当然である。
【0027】
本発明によるトラック用空調装置は、前述したように、簡単な改変で暖房装置としても使用出来るので、冷暖房装置として適用させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるトラック用空調装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明によるトラック用空調装置に於ける室内冷房器の熱交換器の構造を示す正面図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】図1のA−A断面図で、室外潜熱冷却器の内部構造を示すものである。
【図5】室外潜熱冷却器に於ける熱交換フィンの概要を示す断面図である。
【図6】本発明によるトラック用空調装置に於ける冷却水の流れを示す説明図である。
【図7】本発明によるトラック用空調装置のトラックへの設置例を示す概要図である。
【符合の説明】
【0029】
1 室外潜熱冷却器
2 室内冷却器
3,4,5,6,7 冷水配管
8 循環水路切換弁
9 上部本体部
10 下部本体部
11 循環ポンプ
12 カバー
13 送風機
14 フィルター
15 出口開口部
16 熱交換フィン
17 桟付枠体
18 入口開口部
19 下部枠体
20 上部枠体
21 受座
22 仕切板
23 開口部
24 冷却水
35 膜体
26 スペーサー
27 水路
28,29 ヘッダー管
30 冷却入口
31 冷却出口
32 熱伝導管
33 接続突状口
34 内部
35 内部
36 ケース
37 熱伝導フィン
38 配管接続部材
39 送風機
40 排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路を有し、該水路を流れる水によって湿潤状態を維持する熱交換フィンを内蔵する熱交換機能と貯水機能を一体的に併せ持つ室外潜熱冷却器と運転室内適所に設置され熱伝導性の良い薄い金属板を熱交換フィンとして使用する熱交換機能を持つ室内冷却器とからなり、循環ポンプにより、前記室外潜熱冷却器と前記室内冷却器に水を循環させる空調装置であって、室内冷却器に水を循環させない第1の循環系統と循環させる第2の循環系統を設け、この二つの循環系統への水の流れを循環水路切換弁によって切り替えるようにし、第1の循環系統では水の冷却を行い、第2の循環系統でもって前記第1の循環系統からの冷却水を使用して、運転室内の空調を行なうようにしたことを特徴とするトラック用空調装置。
【請求項2】
室外潜熱冷却器に於いて、貯水タンクとして機能する下部本体部内の冷却水中に氷や蓄冷材を投入するようにしたことを特徴とする請求項1記載のトラック用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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