説明

トレーラー

【課題】 構造が簡単かつ軽量で牽引車両から取り外した場合でも、容易に運搬移動させることが可能な、小型農作業車用のトレーラーを提供する。
【解決手段】 左右一対の車輪と;それら車輪の車軸を懸架装置を介して支持する車軸に直角な左右一対の縦部材と、左右の縦部材をその前端近傍で連結する連結部材とを構成要素として含む上部フレームと;上部フレームから下方に降ろされた複数の脚部材に連結され、上部フレームよりも下方の位置で、左右一対の車輪をその前後から挟むように車輪に近接し、かつ左右の車輪よりも外側に突出した張り出し部を有する車軸に平行な前後2本の張り出し横部材と;前後2本の張り出し横部材の左右の車輪よりも外方に張り出したそれぞれの部分に掛け渡され、前後2本の張り出し横部材よりも前方及び後方に延在する車軸と直角な左右一対の荷台板と;一端が連結部材に連結され他端に牽引車両との接続機構を備えた牽引バーとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーラーに関し、詳細には、左右一対の無限軌道、又は、左右1対若しくは2対以上の車輪ないしはタイヤ等で走行する小型の農作業車を搭載するに適したトレーラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、何らかの荷物や設備、機械、器具、車両、小型船舶などを搭載し、牽引車両によって牽引されて走行するトレーラーとしては、例えば、特許文献1ないし4に見られるとおり、種々のものが提案されている。しかしながら、左右一対の無限軌道、又は、左右1対若しくは2対以上の車輪ないしはタイヤ等で走行する小型の農作業車を搭載するのに適したトレーラーは提案されておらず、必要が生じた場合には、例えば小型船舶用のトレーラーを改造して、トレーラーの車輪の両側に荷台板を取り付けて、応急的に使用しているのが現状である。
【0003】
しかしながら、これら小型船舶用のトレーラーを改造したものでは、トレーラーの車輪の両側に荷台板を余分に取り付けているので、その分だけ重量が増し、トレーラー部分だけを牽引車両から取り外して移動させたりする際にも多大の労力を要し、取扱いが容易でないという不都合がある。また、本来的に農作業車用に作られたものではないので、不要な部材が多々含まれており、構造が複雑で、ややもすると安定性に欠けたり、搭載する農作業車と接触して、互いに損傷を被る場合があるという問題点があった。
【特許文献1】特開平8−225037号公報
【特許文献2】特開2000−33888号公報
【特許文献3】特開2002−46662号公報
【特許文献4】特開2004−183398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような従来の問題点を解決するために為されたもので、構造が簡単かつ軽量で、牽引車両から取り外した場合でも、容易に運搬移動させることが可能な、小型農作業車の運搬に適したトレーラーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、左右一対の車輪と;それら車輪の車軸を懸架装置を介して支持する、車軸よりも高い位置にある車軸に直角な左右一対の縦部材と、左右の縦部材をその前端近傍で連結する連結部材とを構成要素として含む上部フレームと;上部フレームから下方に降ろされた複数の脚部材に連結され、上部フレームよりも下方の位置で、左右一対の車輪をその前後から挟むように、車輪に近接して配置され、かつ、左右の車輪よりも外側に突出した張り出し部を有する、車軸に平行な、前後2本の張り出し横部材と;前後2本の張り出し横部材の左右の車輪よりも外方に張り出した左右それぞれの部分に掛け渡され、前後2本の張り出し横部材よりも前方及び後方に延在する、車軸と直角な左右一対の荷台板と;一端が連結部材に連結され、他端に牽引車両との接続機構を備えた牽引バーとを備えてなるトレーラーを提供することによって上記課題を解決するものである。
【0006】
本発明のトレーラーにおいては、牽引バーは、連結部材に対し、車軸に平行な軸の回りに回動可能で、かつ、その回動位置を左右一対の縦部材と平行な位置に一時固定可能に取り付けられているのが望ましい。これにより、農作業車等をトレーラーに搭載するときには、牽引バーの一時固定を解除して、トレーラーの荷台板を後方に傾斜させて農作業車等の搭載を容易にするとともに、搭載が完了すると、左右一対の縦部材と平行な位置に牽引バーを一時固定して、牽引を行うようにすることができる。
【0007】
本発明のトレーラーにおいては、左及び/又は右の車輪についてのブレーキ機構を有し、そのブレーキ機構の操作端が荷台板の前端よりも前方に設けられているのが望ましい。このように、ブレーキ機構の操作端を荷台板の前端よりも前方に設けておくことによって、農作業車等を搭載した状態でも、操作者が容易に操作端を操作して、ブレーキを掛けたり、解除したりすることができる。さらには、本発明のトレーラーには、牽引車両の係合部と係合するフックを有するウインチ機構を装備させることができ、本発明のトレーラーがウインチ機構を備えている場合には、トレーラーを牽引車両に接近させることが、労力少なく容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のトレーラーは、上記のように構成されており、上部フレームから下方に降ろされた複数の脚部材に連結された前後2本の張り出し横部材によって、荷台板を支えているので、構造が簡単である上に、軽量であるので、取扱いが容易であるという利点がある。また、車輪についての緩衝装置を備えていながら、荷台板の高さを低く抑えることができるので、農作業車等のトレーラーへの搭載、トレーラーからの積み降ろしが容易に行えるという利点もある。さらには、牽引バーが、上部フレームを構成する左右一対の縦部材と同じ高さで左右一対の縦部材と平行に一時固定されて牽引車両に連結されるので、牽引車両による牽引力が、そのままトレーラーに伝わり、牽引がスムースに効率良く行われるという利点がある。また、ブレーキの操作端が荷台板の前端よりも前方にあるので、農作業車等を搭載した状態でも、ブレーキ操作が容易に行えるという利点もある。加えて、本発明のトレーラーが、ウインチ機構を備える場合には、トレーラーを牽引車両に接近させることが、労力少なく容易に行うことができるという利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0010】
図1は、本発明のトレーラーの一例を示す平面図であり、図2は、そのフレーム部分だけを取り出して示した斜視図である。図1において、1は本発明のトレーラー、2a、2bは左右一対の車輪、3はその車軸である。なお、図示の例においては、車輪2a、2bはタイヤ付きのホイールであるが、場合によってはタイヤ付きでない単なる車輪であっても良い。4a、4bは、それぞれ車輪2a、2bを懸架状態に支持する懸架装置であり、懸架装置4a、4bは、車軸3に直角な左右一対の縦部材5a、5bに支持されている。これにより、車輪2a、2bは、それぞれ懸架装置4a、4bを介して、縦部材5a、5bに支持されることになる。懸架装置4a、4bとしては、車輪2a、2bを懸架状態に保つことができるものであればどのようなものを使用しても良く、例えば、リーフスプリングやトーションアクスルなどを用いることができる。
【0011】
図2に示すように、縦部材5a、5bの前端は連結部材6によって連結されており、これら一対の縦部材5a、5bと連結部材6とによって、コの字型の上部フレームを構成している。図示の例では、縦部材5a、5bの前端のみが連結部材6によって連結され、縦部材5a、5bの後端は連結されていないけれども、必要があれば、縦部材5a、5bの後端も他の連結部材によって連結して、上部フレームを四辺を有するロの字型としても良い。また、縦部材5a、5bの前後の中間部分を更に他の連結部材によって連結するようにしても良い。連結部材6の連結位置は、縦部材5a、5bの前端近傍であれば良く、連結部材6よりも縦部材5a、5bの前端が前方に突出していても良い。なお、本明細書において「前」とは、トレーラー1の進行方向前方(図1においては左方向)をいい、「後」とは、トレーラー1の進行方向後方(図1においては右方向)をいうものとする。
【0012】
縦部材5a、5b、及び連結部材6によって構成される上部フレームからは、4本の脚部材7a〜7dが下方に向かって降ろされており、これらの脚部材7a〜7dには、前後2本の張り出し横部材8a、8bが連結されている。図示の例においては、脚部材7a、7bは縦部材5aから下方に降ろされ、脚部材7c、7dは縦部材5bから下方に降ろされているが、脚部材7a〜7dの位置は図示のものに限られない。例えば、連結部材6から1又は複数の脚部材を下方に降ろし、その脚部材に張り出し横部材8aを連結するようにしても良いし、縦部材5a、5bの後端を連結する連結部材が存在する場合には、その連結部材から1又は複数の脚部材を下方に降ろし、その脚部材に張り出し横部材8bを連結するようにしても良い。
【0013】
張り出し横部材8a、8bは、左右の車輪2a、2bよりも外側に張り出した部分を有しており、この外側に張り出した部分に、左右一対の荷台板9a、9bが掛け渡されている。これにより、左右一対の荷台板9a、9bは、前後2本の張り出し横部材8a、8bに支持されることとなる。10a、10bは、それぞれ、張り出し横部材8a、8bの左端同士及び右端同士を連結して、前後に延びる側部縦部材であり、これら側部縦部材10a、10bの前端は、前部横部材11によって連結されている。12、12、12・・・は、補強用の縦部材である。なお、側部縦部材10a、10b、前部横部材11、及び、補強用の縦部材12、12、12・・・は不要であればなくても良い。13a、13bは、左右の荷台板9a、9bの後方端のそれぞれに回動自在に取り付けられた左右一対の踏板である。
【0014】
このように、本発明のトレーラー1においては、縦部材5a、5b、及び連結部材6を構成要素として含む上部フレームから複数の脚部材7a〜7dを下方に降ろし、これら複数の脚部材7a〜7dに連結された前後2本の張り出し横部材8a、8bによって、左右一対の荷台板9a、9bを支持するようにしているので、トレーラー1を構成するフレームの構造が簡単となるという利点が得られる。しかも、図1からも明らかなように、前後2本の張り出し横部材8a、8bは、左右一対の車輪2a、2bをその前後から挟み、かつ、車輪2a、2bに近接した位置に配置されているので、脚部材7a〜7dを介して張り出し横部材8a、8bを支持する上部フレームの縦部材5a、5bの長さを短くすることが可能となり、上部フレームを小さくすることができるので、トレーラー1の重量を軽減できるという利点がある。
【0015】
前後2本の張り出し横部材8a、8bの位置は、可能な限り、車輪2a、2bに近接しているのが好ましく、2本の張り出し横部材8a、8bのトレーラー1の前後方向の間隔は、車輪2a、2bの大きさにも依るけれども、荷台板9a、9bの前後方向の長さの2/3以下が良く、より好ましくは1/2以下である。したがって、上部フレームを構成する左右一対の縦部材5a、5bの長さも、2本の張り出し横部材8a、8bの間隔に可及的に近いのが好ましく、荷台板9a、9bの前後方向の長さの2/3以下が良く、より好ましくは1/2以下である。これにより、上部フレームの構成は簡単なものとなり、軽量化を実現することができる。
【0016】
さらに、本発明のトレーラー1においては、その上に荷台板9a、9bが掛け渡され、荷台板9a、9bを支える張り出し横部材8a、8bは、上部フレームよりも下方に下がった位置にあるので、車輪2a、2bを懸架装置4a、4bを介して支持することによって、上部フレームの高さが高くなっても、荷台板9a、9bの高さを低く抑えることが可能であり、被搭載車両のトレーラー1への搭載や、トレーラー1からの積み下ろし作業が容易になるという利点も得られるものである。
【0017】
図1において、14は牽引バーであり、その後方端は、支持具15を介して、連結部材6に、車軸3と平行な軸の周囲に回動自在に取り付けられている。但し、その回動可能な範囲は、下方は前部横部材11と当接することによって制限されており、上方は案内具16によって制限されている。案内具16については後述する。牽引バー14の回動位置は、図示しない固定ピンを支持具15に装着することによって、縦部材5a、5bと平行な位置に一時的に固定可能である。なお、牽引バー14の回動位置を一時的に固定する手段が固定ピンに限られないことは勿論である。牽引バー14の前方端には、図示しない牽引車両との接続機構17が設けられている。接続機構17の具体的な構造はどのようなものであっても良いが、例えば、ボールカプラータイプの接続機構を用いることができる。18は電線プラグであり、牽引車両の対応部分に接続され、牽引車両からの電力や、必要に応じて、電気信号を受け取ることができるようになっている。
【0018】
19a、19bは、それぞれ左右の車輪2a、2bについてのブレーキ機構であり、図示の例においては、前方の張り出し横部材8a及び前部横部材11を貫通する棒状部材として構成されている。20a、20bは、それぞれ、ブレーキ機構19a、19bの操作端であり、前部横部材11よりも前側に突出しており、荷台板9a、9bの前端よりも前方に位置している。21a、21bは、それぞれ、車輪2a、2bの接地面と当接して、車輪2a、2bの回転を阻止する当接端である。図示の例において、操作端20a、20bを回動させると、ブレーキ機構19a、19bを構成する棒状部材は、ネジ機構によって前後方向に移動し、後方に移動した場合には、その当接端21a、21bが、それぞれ車輪2a、2bの接地面に当接し、車輪2a、2bの回転を阻止して、ブレーキとして機能することになる。操作端20a、20bを操作して、当接端21a、21bを前方に移動させて車輪2a、2bの接地面との当接を解除すれば、ブレーキが解除されることはいうまでもない。このように、本発明のトレーラー1においては、ブレーキ機構19a、19bの操作端20a、20bが、荷台板9a、9bの前端よりも前方に設けられているので、トレーラー1に、例えば、農作業車等を搭載した状態でも、操作者が容易に操作端20a、20bに近接して、ブレーキ操作を行うことができるという利点が得られる。なお、図示の例においては、左右両方の車輪2a、2bについてブレーキ機構19a、19bを設けているが、ブレーキとして十分であれば、右または左のどちらか一方の車輪についてのみ、ブレーキ機構を設けるようにしても良い。また、採用できるブレーキ機構が図示のものに限られないことは勿論であり、通常一般の車両に用いられている適宜の他のブレーキ機構を採用しても良い。22、22はバンパーであり、23、23は車幅灯である。
【0019】
図3は、図1のトレーラー1を前方から見た正面図であり、これまでと同じものには同じ符号を付してあるが、バンパー22、22等は一部省略してある。本発明のトレーラー1に搭載される農作業用の車両Xは、図中破線で示すとおり、その左右の無限軌道を、それぞれ左右の荷台板9a、9bに乗せて、車輪2a、2bをまたぐ格好でトレーラー1に搭載されることになる。なお、案内具16は、図に示すとおり、上部がアーチ型に閉じた縦長の空間を形成しており、その縦長の空間内に牽引バー14が収容されていることによって、牽引バー14の車軸3と平行な軸の回りの回動を案内するものである。また、案内具16は、その上部がアーチ型に閉じていることによって、牽引バー14が縦部材5a、5bと平行な位置よりも上方に回動しようとしても、牽引バー14の上端がその閉じたアーチ部に当接し、牽引バー14の上方への回動範囲を制限するという役割も果たしている。
【0020】
図4は、図1のA−A断面図であり、これまでと同じものには同じ符号を付してある。図4に示されるように、車輪2bは、懸架装置4bを介して、縦部材5bに支持されている。縦部材5b及び連結部材6を構成要素として含む上部フレームからは、脚部材7c、7dが下方に降ろされ、前後2本の張り出し横部材8a、8bを支えている。張り出し横部材8a、8bは、荷台板9bを支持し、荷台板9bには、例えば、図中破線で示した農作業用の車両Xが搭載されることになる。なお、荷台板9bの踏板13bは、回動軸24の回りに回動して、図中破線で示す位置まで回動して、地面と荷台板9bとの間を結び、搭載される車両の搭載や、積み降ろしを容易にする。
【0021】
図4に示すとおり、牽引バー14は、通常、縦部材5bと同じ高さで縦部材5bと平行な位置に一時固定されている。牽引バー14を図示しない牽引車両に接続した場合、通常、牽引バー14は水平にあり、したがって、縦部材5bも水平であって、牽引バー14と縦部材5bとは、水平な同一平面上で互いに平行な位置関係にあることになる。この状態で図示しない牽引車両によって牽引バー14を図中矢印方向に牽引すると、その牽引力は、水平に連結部材6、さらには縦部材5bに伝達され、トレーラー1が牽引されることになる。このように、本発明のトレーラー1においては、牽引車両による牽引力が、水平な牽引バー14を通じて、水平にトレーラー1を構成する上部フレームに伝達されるので、牽引がスムースに効率良く行われるという利点が得られる。
【0022】
図5は、図4の側面断面図において、トレーラー1への車両搭載時の状態を示す図である。搭載開始に先だって、図5に示すとおり、踏板13bを回動させてその先端を地面に降ろすともに、支持具15に装着されている図示しない固定ピンを取り外して、牽引バー14を支持具15に対して車軸3と平行な軸の回りに回動自在な状態にさせておく。このとき、牽引バー14の前端は、通常、図示しない牽引車両に接続されているので、牽引バー14はそのままの水平状態を保つことになる。
【0023】
この状態で、車両Xを図中右側から進行させて搭載を開始すると、車両Xが踏板13bに乗った時点で、荷台板9bは後方に傾斜して傾いた状態になるが、牽引バー14は、支持具15に対して車軸3と平行な軸の回りに回動自在であるので、牽引バー14は、その先端を図示しない牽引車両に接続されたまま、水平状態を保ち続けることが可能である。なお、牽引バー14の下方への回動範囲の下限は、車両Xの重量によって荷台板9bが最も後方に傾斜したときにも水平状態を保つことができるように設定されている。
【0024】
車両Xが更に進行して、荷台板9b上に乗り上げ、車両Xの重心が車軸3に接近すると、荷台板9bは徐々に水平状態に戻り、搭載が完了した時点で、荷台板9bは水平となる。この時点で、踏板13bを回動させて垂直位置に戻すとともに、図示しない固定ピンを支持具15に装着して、牽引バー14を水平な元の位置に固定する。これによって、車両Xのトレーラー1への搭載が完了する。車両Xをトレーラー1から降ろす場合には、上記と逆にすれば良い。
【0025】
図6は、本発明のトレーラー1を牽引車両に接続する場合の一例を示す斜視図である。図6において、牽引バー14の先端部に設けられた接続機構17は、ボールカプラータイプの接続機構であり、牽引車両Yの後部に取り付けられたヒッチメンバー25に取り付けられている接続部としてのヒッチボール26と係合することによって、牽引バー14を牽引車両Yに接続するように構成されている。27はウインチであり、ウインチ27のワイヤー28の先端には、フック29が取り付けられている。フック29をヒッチメンバー25に設けられている係合部30に係合させ、この状態でウインチ27を巻き上げると、牽引バー14が連結されている図示しないトレーラー1は牽引バー14とともに図中矢印で示す方向に移動して牽引車両Yへと接近し、ボールカプラータイプの接続機構17と、ヒッチボール26とを容易に係合させることができる。このように、トレーラー1の牽引バー14にウインチ27を取り付けておくと、操作者は、ウインチ27のフック29を牽引車両Yの係合部30にさせ、ウインチ27を巻き上げるという簡単な操作によって、多大な労力を要せずに、トレーラー1を牽引車両Yに接近させることが可能となる。なお、牽引バー14にウインチ27を取り付ける代わりに、牽引車両Yにウインチ27を取り付け、牽引バー14若しくはトレーラー1本体にウインチ27のフック29と係合する係合部30を設けるようにしても良い。また、牽引バー14にウインチ27を取り付ける代わりに、トレーラー1本体の適宜の場所にウインチ27を取り付けるようにしても良い。
【0026】
図7は、本発明のトレーラー1を牽引車両に接続する場合の他の例を示す平面図である。図7の例においては、牽引バー14には、左右2個のウインチ27a、27bが取り付けられており、それぞれのフック29a、29bは、ヒッチメンバー25に取り付けられている左右2個の係合部30a、30bのそれぞれと係合される。この状態で、ウインチ27aまたは27bを巻き上げると、牽引バー14とそれに連結されている図示しないトレーラー1は、巻き上げられたウインチのフックが係合している牽引車両Yの方向に引っ張られることになる。したがって、例えば、牽引バー14がヒッチメンバー25に対して斜めにずれた位置にあっても、どちらか一方のウインチ27aまたは27bを巻き上げることによって、牽引バー14をヒッチメンバー25に対して正しく直角でヒッチボール26と向き合った中央の位置に移動させることができる。牽引バー14がヒッチメンバー25に対して、直角で正しく中央の位置に移動した後は、ウインチ27a及び27bを均等に巻き上げれば良い。なお、この場合、ウインチ27a、27bは、牽引バー14ではなく、図示しないトレーラー1本体の適宜の位置に取り付けても良いことは勿論である。また、ヒッチメンバー25の側にウインチ27a、27bを取り付け、牽引バー14若しくはトレーラー1の本体側に係合部30a、30bを取り付けるようにしても良い。
【0027】
図8は、本発明のトレーラー1を牽引車両に接続する場合の更に他の例を示す斜視図である。図8においては、ヒッチ部材として、ヒッチメンバー25の代わりにヒッチブラケット31が図示しない牽引車両Yに取り付けられており、ヒッチブラケット31には、先端に向かって間隔が拡大する2枚のガイド部材32a、32bが着脱自在に取り付けられている。このように、ヒッチブラケット31に2枚のガイド部材32a、32bを取り付けることによって、図示しないウインチ27のフック29を係合部30に係合させ、ウインチ27を巻き上げると、牽引バー14の接続機構17としてのボールカプラーは、次第にヒッチブラケット31に接近したのち、ガイド部材32a、32bに案内されて、自然と接続部としてのヒッチボール26の直上の接続に適した所定の位置へと導かれ、その位置で接続機構17としてのボールカプラーを下方に移動させることによって、ボールカプラー17は容易にヒッチボール26と係合する。このように、ヒッチブラケット31にガイド部材32a、32bを設けておくことによって、牽引バー14の接続機構17をヒッチブラケット31に設けられた接続部としてのヒッチボール26に近接した係合に適した所定の位置に移動させることがより容易となる。接続機構17としてのボールカプラーとヒッチボール26との係合が完了すると、牽引バー14の牽引車両Yに対する運動の妨げとならないように、ガイド部材32a、32bはヒッチブラケット31から取り外される。なお、ガイド部材32a、32bが、牽引バー14の牽引車両Yに対する運動の妨げとならない場合には、ガイド部材32a、32bを取り外す必要はなく、その場合には、ガイド部材32a、32bをヒッチブラケット31に対して固定的に取り付けておけばよい。
【0028】
なお、図示の例においては、ヒッチブラケット31にガイド部材32a、32bを設ける場合を説明したが、牽引車両Yに取り付けられているのが、ヒッチブラケット31ではなく、ヒッチメンバー25であっても、ガイド部材32a、32bを、ヒッチメンバー25の適宜の位置に取り付けることにより、同様に、牽引バー14の接続機構17をヒッチボール26に近接した所定の位置へと移動させることが容易に行えることは勿論である。
【0029】
また、ガイド部材32a、32bとしては、牽引バー14に設けられた接続機構17を、接続に適した所定の位置へと案内することができるものであれば、どのような形状を有していても良い。例えば、牽引車両に取り付けられるヒッチ部材が、図8に示すようなヒッチブラケット31の場合には、ガイド部材32a、32bの代わりに、板状の部材を、円筒の一部を形成するように、ヒッチボール26よりも大きな曲率で湾曲させた部材を、その湾曲の内側をヒッチボール26の側に向けて、ヒッチボール26の後方、すなわち、牽引車両Yに近い側に立設させてガイド部材32としてもよい。牽引バー14の接続機構17は、その先端部分がガイド部材32に当接すると、ガイド部材32の湾曲面に沿って湾曲の最も奥まった位置へと案内され、その位置で下方に移動さしめられることによって、ヒッチボール26と容易に係合することとなる。このような形状および配置のガイド部材32の場合には、牽引バー14と牽引車両Yとの接続後も、牽引バー14の牽引車両Yに対する運動の妨げとなることはない。
【0030】
なお、図6ないし図8をもとに説明した接続機構は、本発明のトレーラー1を牽引車両に接続する場合だけに使用されるものではない。図1ないし図5をもとに説明した本発明のトレーラー以外のトレーラーを牽引車両に接続する場合においても、図6ないし図8をもとに説明したようなウインチやガイド部材を用いることができることは勿論であり、特に、ウインチは、大型で重いトレーラーを牽引車両に接近させる場合に威力を発揮し、重量のあるトレーラーであっても、労力を要さずに、容易に、牽引車両に接近させることができるという利点が得られるものである。
【0031】
本発明のトレーラー1は、上述のとおり、左右の荷台板9a、9bに、搭載車両の左右の無限軌道若しくは左右の車輪、タイヤ等を乗せて搭載するので、左右一対の無限軌道、又は、左右1対若しくは2対以上の車輪ないしはタイヤ等で走行する小型の農作業車を搭載するのに適しており、特には、左右一対の無限軌道の間に比較的高さのある空間部を有する、茶園防除機や、茶園摘採機を搭載するのに適している。しかしながら、本発明のトレーラー1には、左右の荷台板9a、9bに、搭載車両の左右の無限軌道若しくは左右の車輪ないしはタイヤ等を乗せて搭載することができる車両であれば、どのような車両を搭載しても良く、その対象とする搭載車両は、特段、茶園防除機や、茶園摘採機を含めた農作業車両に限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明のトレーラーは、構造が簡単で、しかも軽量に作ることができるので、牽引車両から取り外して移動させることが容易に行える。また、本発明のトレーラーは、車輪用の懸架装置を備えながら、荷台板の高さを低く抑えることができるので、搭載車両の運搬を安定かつ安全に行える上に、車両のトレーラーへの搭載、トレーラーからの積み降ろし作業が容易であるという優れた利点を備える。さらには、本発明のトレーラーは、牽引バーが水平に牽引力をトレーラーに伝達することができるので、牽引が安定に効率良く行えるものである。このように種々の利点を備えた本発明のトレーラーは、例えば、茶園で使用される茶園防除機や、茶園摘採機の搭載、運搬に威力を発揮し、作業の効率化、機械化に資すること多大である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のトレーラーの一例を示す平面図である。
【図2】図1に示す本発明のトレーラーのフレーム部分だけを取り出した斜視図である。
【図3】図1に示す本発明のトレーラーの正面図である。
【図4】図1のA−A断面側面図である。
【図5】本発明のトレーラーに車両を搭載するときの状況を示す断面側面図である。
【図6】本発明のトレーラーを牽引車両に接続する場合の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明のトレーラーを牽引車両に接続する場合の他の例を示す平面図である。
【図8】本発明のトレーラーを牽引車両に接続する場合の更に他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 トレーラー
2a、2b 車輪
3 車軸
4a、4b 懸架装置
5a、5b 縦部材
6 連結部材
7a〜7d 脚部材
8a、8b 張り出し横部材
9a、9b 荷台板
10a、10b 側部縦部材
11 前部横部材
12 補強用部材
13a、13b 踏板
14 牽引バー
15 支持具
16 案内具
17 接続機構
18 電線プラグ
19a、19b ブレーキ機構
20a、20b 操作端
21a、21b 当接端
22 バンパー
23 車幅灯
24 回動軸
25 ヒッチメンバー
26 ヒッチボール
27 ウインチ
28 ワイヤー
29 フック
30 係合部
31 ヒッチブラケット
32a、32b ガイド部材
X 搭載車両
Y 牽引車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の車輪と;それら車輪の車軸を懸架装置を介して支持する、車軸よりも高い位置にある車軸に直角な左右一対の縦部材と、左右の縦部材をその前端近傍で連結する連結部材とを構成要素として含む上部フレームと;上部フレームから下方に降ろされた複数の脚部材に連結され、上部フレームよりも下方の位置で、左右一対の車輪をその前後から挟むように、車輪に近接して配置され、かつ、左右の車輪よりも外側に突出した張り出し部を有する、車軸に平行な、前後2本の張り出し横部材と;前後2本の張り出し横部材の左右の車輪よりも外方に張り出した左右それぞれの部分に掛け渡され、前後2本の張り出し横部材よりも前方及び後方に延在する、車軸と直角な左右一対の荷台板と;一端が連結部材に連結され、他端に牽引車両との接続機構を備えた牽引バーとを備えてなるトレーラー。
【請求項2】
牽引バーが、連結部材に、車軸に平行な軸の回りに回動可能、かつ、その回動位置を左右一対の縦部材と平行な位置に一時固定可能に取り付けられている請求項1記載のトレーラー。
【請求項3】
左及び/又は右の車輪についてのブレーキ機構を有し、そのブレーキ機構の操作端が荷台板の前端よりも前方に設けられている請求項1又は2記載のトレーラー。
【請求項4】
牽引車両の係合部と係合するフックを有するウインチ機構を備えている請求項1ないし3のいずれかに記載のトレーラー。
【請求項5】
牽引車両の係合部と係合するフックを有するウインチ機構を備えているトレーラー。
【請求項6】
トレーラーの牽引バーの接続機構が接続される接続部を備えているとともに、トレーラーの牽引バ−の接続機構を当該接続部近傍の所定位置へと案内するガイド部材を備えているヒッチ部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−182281(P2006−182281A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380246(P2004−380246)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000108465)ソレックス株式会社 (8)