説明

トロリ線の水平支持装置

【課題】 本線側のトロリ線の位置とわたり線側のトロリ線の位置とを水平に保持できるトロリ線の新規な支持装置を提供する。
【解決手段】 本線側の吊架線M1とわたり線側の吊架線M2とを支持アーム2で結合する。本線側のトロリ線T1とわたり線側のトロリ線T2とを連結アーム3で結合する。支持アーム2の中央下部に、一対の吊ロッド4で連結アーム3を吊る。一対の吊ロッド4は同長とし、上端を共に支持アーム2の中央下部に枢支し、下端は夫々連結アーム3の一端側又は他端側に枢支する。2つの吊ロッド4と連結アーム3が、二等辺三角形を構成し、その頂点が支持アーム2の中央に吊られ、底辺の両端部に2つのトロリ線T1,T2が支持される構造であるから、2つの吊架線M1,M2間に高低差が生じて、支持アーム2が水平に対して傾斜しても、2つのトロリ線T1,T2は互いの水平位置を維持したままわずかに上下するだけである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電車線路における本線(主要線)とわたり線のレール分岐箇所において、本線側のトロリ線の位置とわたり線側のトロリ線の位置とを水平に保持するための支持装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電車線路におけるレールの分岐箇所では、本線側トロリ線とわたり線側トロリ線が交差するように架設される。両トロリ線は、夫々別個に吊架線の下にハンガイヤで吊り止められる。パンタグラフのスムーズな通過を図るために、両トロリ線は常時高低差なく架設されることが望ましい。ところが、本線側トロリ線(吊架線)とわたり線側トロリ線(吊架線)の引留スパンが異なること、自動調力調整装置が使用されなかったり、一方のみに使用されることなどが原因して、温度変化等に伴って、両トロリ線に高低差が生じ、パンタグラフの通過に支障を来すおそれがある。これを未然に防ぐために、従来は頻繁な保守点検と修繕が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って、この発明は、本線側のトロリ線の位置とわたり線側のトロリ線の位置とを水平に保持することができるトロリ線の新規な支持装置を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、この発明においては、本線側の吊架線M1とわたり線側の吊架線M2とを結合する支持アーム2と、本線側のトロリ線T1とわたり線側のトロリ線T2とを結合して両端で把持する連結アーム3と、上端が支持アーム2の中央に枢支され下端が連結アーム3の一端側又は他端側に夫々枢支される長さの等しい一対の吊ロッド4とを具備させてトロリ線の水平支持装置1を構成した。2つの吊ロッド4と連結アーム3が、二等辺三角形を構成し、その頂点が支持アーム2の中央に吊られ、底辺の両端部に2つのトロリ線T1,T2が支持される構造であるから、2つの吊架線M1,M2間に高低差が生じて、支持アーム2が水平に対して傾斜しても、2つのトロリ線T1,T2は互いの水平位置を維持したままわずかに上下するだけである。
【0005】
【発明の実施の形態】図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は水平支持装置の正面図、図2は水平支持装置の動作模式図、図3は水平支持装置を設置したトロリ線交差部の概略図である。
【0006】図3は電車線路におけるレールの分岐箇所の電車線構造を示す。T1は本線側のトロリ線、M1はこれを吊る吊架線、T2はわたり線側のトロリ線、M2はこれを吊る吊架線である。水平支持装置1は、トロリ線T1,T2の交差部Xの両側所定距離の位置に設置される。
【0007】図1に示すように、水平支持装置1は、支持アーム2、連結アーム3、吊ロッド4を備える。
【0008】支持アーム2は、両端間が電気絶縁性で、2本の吊架線M1,M2の間に渡され、両端において各吊架線M1,M2を把持する。中央下部には連結用ブラケット2aを備える。
【0009】連結アーム3は、両端間が電気絶縁性で、2本のトロリ線T1,T2の間に渡され、両端において各トロリ線T1,T2を把持する。連結アーム3は、中央に高くなる山形に湾曲しており、両端部付近の上部に連結用ブラケット3aを備える。連結アーム3の中央下部には、地上から視認できるように水準器5が固着されている。
【0010】一対の吊ロッド4は、同長で、共に上端において支持アーム2のブラケット2aに枢支され、下端において夫々連結アーム3の何れかのブラケット3aに枢支される。吊ロッド4は、中間においてターンバックル4aによって長さ調整可能に構成される。
【0011】この水平支持装置1の動作を図2を参照して説明する。図2(A)に示すように、水平支持装置1の設置の初期状態において、2本の吊架線M1,M2及び2本のトロリ線T1,T2は夫々互いに水平位置にあるものとする。2つの吊ロッド4と連結アーム3が、二等辺三角形を構成し、その頂点が支持アーム2の中央に吊られ、底辺の両端部に2つのトロリ線T1,T2が支持される構造である。今、図2(B)に示すように、一方の吊架線M2が、ΔHだけ元位置から上昇すると、支持アーム2の一端がこれと一体に上昇する。吊ロッド4は上端枢支点において支持アーム2に対して相対回転し、連結アーム3の水平を維持しつつ、Δhだけ上昇する。連結アーム3の上昇距離Δh、即ち、支持アーム2の中央枢支点の上昇距離は一端の上昇距離ΔHに対して相当に小さい。一方の吊架線M2が、ΔHだけ元位置から下降する場合を図2(C)に示す。この場合も、連結アーム3は、水平を維持しつつ、ΔHに対して相当に小さいΔhだけ下降する。従って、2つの吊架線M1,M2間に高低差が生じて、支持アーム2が水平に対して傾斜しても、2つのトロリ線T1,T2は互いの水平位置を維持したままわずかに上下するだけである。
【0012】連結アーム3は、中央に高くなるように湾曲しているので、線路のカント角に従ってパンタグラフが進行方向に対して左右に傾斜してトロリ線T1,T2下を通過しても、パンタグラフの端部が連結アーム3に接触することはない。保守点検時には、連結アーム3の下部に取り付けられた水準器5を地上から目視することによって、2つのトロリ線T1,T2の支持状態を確認することができる。
【0013】
【発明の効果】以上のように、本発明は、本線側の吊架線M1とわたり線側の吊架線M2とを結合する支持アーム2と、本線側のトロリ線T1とわたり線側のトロリ線T2とを結合して両端で把持する連結アーム3と、上端が支持アーム2の中央に枢支され下端が連結アーム3の一端側又は他端側に夫々枢支される長さの等しい一対の吊ロッド4とを具備させてトロリ線の水平支持装置1を構成したため、2つの吊架線M1,M2間に高低差が生じて、支持アーム2が水平に対して傾斜しても、2つのトロリ線T1,T2は、わずかに上下するだけで、互いの水平位置を維持することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】水平支持装置の正面図である。
【図2】水平支持装置の動作模式図である。
【図3】水平支持装置を設置したトロリ線交差部の概略図である。
【符号の説明】
1 水平支持装置
2 支持アーム
2a ブラケット
3 連結アーム
3a ブラケット
4 吊ロッド
4a ターンバックル
5 水準器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 本線側の吊架線とわたり線側の吊架線とを結合する支持アームと、 本線側のトロリ線とわたり線側のトロリ線とを結合して両端で把持する連結アームと、上端が支持アームの中央に枢支され、下端が連結アームの一端側又は他端側に夫々枢支された長さのほぼ等しい一対の吊ロッドとを具備することを特徴とするトロリ線の水平支持装置。
【請求項2】 前記連結アームが、中央に高くなるように湾曲していることを特徴とする請求項1に記載のトロリ線の水平支持装置。
【請求項3】 前記連結アームが、中央下部に、地上から視認できるように水準器が固着されていることを特徴とする請求項1に記載のトロリ線の水平支持装置。
【請求項4】 前記吊ロッドが長さ調整自在であることを特徴とする請求項1に記載のトロリ線の水平支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2003−341388(P2003−341388A)
【公開日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−158144(P2002−158144)
【出願日】平成14年5月30日(2002.5.30)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)