説明

トロリ線温度検出装置

【課題】 パンタグラフの通過の妨げにならず、簡易に装着でき、十分な固着力でトロリ線に取り付けられる温度検出装置を提供する。
【解決手段】 トロリ線温度検出装置1は、形状記憶合金製の帯板状温度センサ2と、これをトロリ線21の上面に固定する固定金具3とを具備する。温度センサ2は、常時はトロリ線21の上面に沿って延び、異常発熱を検知して変形し、これを視認可能とする。固定金具3は、把持部材4とナット5とを具備する。把持部材4は、ねじ軸部7と、一対の締め付け部8とを具備する。ねじ軸部7はスリット7bで左右の半部7aに二分され、下端に締め付け部8を持つ。締め付け部8は、トロリ線の溝21aに嵌合する係合部8aと、温度センサ2をトロリ線21の上面との間に挟持する保持部8bとを具備する。ナット5をねじ軸部7に螺合させ、左右半部7a間を接近させ、締め付け部8間にトロリ線21を把持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トロリ線の接続部付近等における異常発熱を検出するためにトロリ線上に取り付けられるトロリ線温度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線における圧縮接続管による接続部分の異常発熱を検知するため、温度センサ付きの電線圧縮接続管が市販されている。この電線圧縮接続管は、接続管本体の一端側から形状記憶合金製の帯板状の温度センサを軸線方向に延出させたもので、温度センサが接続部分の異常発熱を検知すると、延出部分が屈曲して、異常発熱を地上から視認可能とするものである。
また、トロリ線などの電線に光ファイバ温度計のセンサプローブを取り付ける方法が特許文献1に記載されている。この方法は、光ファイバ温度計のセンサプローブをトロリ線の上部に這わせ、金属あるいは耐熱プラスチック製の箔を当該センサプローブ上に被せて接着剤でトロリ線上に接着し、さらにトロリ線の溝に嵌合する係合爪を持った金具で箔をトロリ線に固定するものである。この金具は、トロリ線上部の左右両側に離れて対向配置される一対の締め付け片と、これらの締め付け片をトロリ線の上方において左右方向に貫通するねじとを具備し、ねじを締めて左右の締め付け片間を接近させることによりトロリ線を把持する。
【特許文献1】特開平4−276528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の温度センサ付きの電線圧縮接続管は、パンタグラフに衝突するからトロリ線上には装着することができない。
上記光ファイバ温度計のセンサプローブを取り付ける方法に用いられる部材は、部品点数が多く、取付に手間がかかるし、締め付け用の金具は、2つの締め付け片間が離れているために、ねじによる締め付け力が有効に締め付け片の下部に伝わらず、また締め付けにより、ねじを曲げる応力が働くから、締め付け力が制限されるという問題点がある。
したがって、この出願に係る発明は、パンタグラフの通過の妨げにならず、簡易に装着でき、十分な固着力をもってトロリ線に取り付けることができる簡易なトロリ線温度検出装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、この出願に係る発明においては、形状記憶合金製の帯板状温度センサ2と、この温度センサ2をトロリ線21の上面に固定するための固定金具3とを具備させてトロリ線温度検出装置1を構成する。温度センサ2は、トロリ線21の上面に沿ってそれの延長方向に延びるように配置され、トロリ線21の温度変化に応じて変形してトロリ線21の異常発熱を視認可能とする。固定金具3は、トロリ線21の上部を把持する把持部材4と、この把持部材4に螺合されることによって把持部材4を締め付けるナット5とを具備する。把持部材4は、ナット5を螺合させるようにトロリ線21の上方に垂直に起立するねじ軸部7と、トロリ線21の上半部を延線直交方向である左右両側から締め付ける一対の締め付け部8とを具備する。ねじ軸部7は、上端側の一部を残して下方を左右の半部7aに二分する縦方向のスリット7bを具備する。締め付け部8は、ねじ軸部7の各半部7aの下端に設けられ、それぞれトロリ線21の溝21aに嵌合する係合部8aと、トロリ線21の上部外周に密着して温度センサ2の一端側をトロリ線21の上面との間に挟持する保持部8bとを具備する。固定金具3は、ナット5をねじ軸部7に螺合させることにより、左右半部7aの下部間を接近させ、一対の締め付け部8間にトロリ線21を把持する。
把持部材4は、例えば、頭部9とねじ軸部7とを具備するボルトの加工部材で構成することができる。ボルトの頭部9が左右に二分されて一対の締め付け部8が形成され、ねじ軸部7が基端から先端部付近に至るスリット7bにより二分されて左右の半部7aが形成される。
ねじ軸部7に、ナット5に加えて、イダリングのような緩み止めリング6を取り付けることにより、温度センサ2の固定をより確実にすることができる。
以上、添付図面の符号を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0005】
この出願に係る発明の装置によれば、パンタグラフの通過の妨げにならず、簡易に装着でき、十分な固着力をもってトロリ線に取り付けて、有効にトロリ線の異常発熱を検知することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1はトロリ線上に装着されるトロリ線温度検出装置の分解斜視図、図2はトロリ線温度検出装置の正面図、図3はトロリ線温度検出装置の側面図、図4は把持部材の正面図である。
【0007】
図において、トロリ線21は、上部の左右両側面に長手方向に延びる溝21aが形成された溝付きで、断面ほぼ円形状のものである。トロリ線温度検出装置1は、例えばトロリ線21における常温圧接による接続部や、電力を供給するリード線の接続部付近に取り付けられる。このトロリ線温度検出装置1により、接続不良等による異常発熱を検知する。
【0008】
トロリ線温度検出装置1は、形状記憶合金製の帯板状温度センサ2と、この温度センサ2をトロリ線21の上面に固定するための固定金具3とを具備する。
【0009】
温度センサ2は、トロリ線21の上面に沿ってトロリ線21の延長方向に延びるように配置され、トロリ線21の温度変化に応じて変形することにより、トロリ線21の異常発熱を視認可能とする。
【0010】
固定金具3は、トロリ線21の上部を把持する把持部材4と、この把持部材4に螺合されることによって把持部材4を締め付けるナット5と緩み止めリング6を具備する。
【0011】
把持部材4は、ナット5を螺合させるように、トロリ線21の上方に垂直に起立するねじ軸部7と、トロリ線21の上半部を延線直交方向である左右両側から締め付ける一対の締め付け部8とを具備する。
【0012】
ねじ軸部7は、上端側の一部を残して下方を左右の半部7a,7aに二分する縦方向のスリット7bを具備する。
【0013】
一対の締め付け部8は、それぞれねじ軸部7の半部7aの下端に設けられる。各締め付け部8は、トロリ線21の溝21aに嵌合する係合部8aと、トロリ線21の上部外周に密着する保持部8bとを具備する。保持部8bは、温度センサ2の一端側をトロリ線21の上面との間に挟持する。把持部材4は、ナット5をねじ軸部7に螺合させることにより、左右半部7aの下部間を接近させ、一対の締め付け部8,8間にトロリ線21を把持する。
【0014】
図示の実施形態において、把持部材4は、六角の頭部9とねじ軸部7とを具備するボルトを加工して形成される。ボルトの頭部9が、保持部8bを切削加工することにより左右に二分されて一対の締め付け部8が形成され、ねじ軸部7が基端から先端部付近に至るスリット7bにより二分されて左右の半部7aが形成される。左右の半部7aは、ねじ軸部7の上端部において接続され、この接続部7cの弾性により、図4に示すように、左右の半部7aの下部間を開閉することができる。
【0015】
左右の半部7aの下部間を開いて、一対の締め付け部8,8間にトロリ線21を介入させ、保持部8bとトロリ線21との間にセンサ2の端部を挿入する。係合部8aを溝21aに合わせてナット5を螺合することにより、左右の半部7a間を閉じ、一対の締め付け部8,8間にトロリ線21を把持し,同時に保持部8bとトロリ線21との間にセンサ2の端部を挟持する。
【0016】
トロリ線温度検出装置1は、単一の固定金具3により、十分な保持力が得られ、装着に手間がかからない。また、トロリ線21の下方へ突出しないので、パンタグラフの通過の妨げにならない。温度センサ2は、常時はトロリ線21と平行に延びているが、トロリ線21の異常発熱を検知すると、図3に仮想線で示すように不可逆的に屈曲して起立し、遠隔位置からこれを視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トロリ線上に装着されるトロリ線温度検出装置の分解斜視図である。
【図2】トロリ線温度検出装置の正面図である。
【図3】トロリ線温度検出装置の側面図である。
【図4】把持部材の正面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 トロリ線温度検出装置
2 温度センサ
3 固定金具
4 把持部材
5 ナット
6 緩み止めリング
7 ねじ軸部
7a 半部
7b スリット
7c 接続部
8 締め付け部
8a 係合部
8b 保持部
9 頭部
21 トロリ線
21a 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロリ線の温度を検出するためにトロリ線上に取り付けられる温度検出装置であって、
トロリ線の上面に沿ってトロリ線の延長方向に延びるように配置され、トロリ線の温度変化に応じて変形してトロリ線の異常発熱を視認可能とする形状記憶合金製の帯板状温度センサと、
前記トロリ線の上面に前記温度センサを固定するために、トロリ線の上に取り付けられる固定金具とを具備し、
前記固定金具は、前記トロリ線の上部を把持する把持部材と、この把持部材に螺合されることによって把持部材を締め付けるナットとを具備し、
前記把持部材は、前記ナットを螺合させるように前記トロリ線の上方に垂直に起立するねじ軸部と、トロリ線の上半部を延線直交方向である左右両側から締め付ける一対の締め付け部とを具備し、
前記ねじ軸部は、上端側の一部を残して下方を左右の半部に二分する縦方向のスリットを具備し、
前記締め付け部は、前記ねじ軸部の各半部の下端に設けられ、それぞれ前記トロリ線の溝に嵌合する係合部と、前記トロリ線の上部外周に密着して前記温度センサの一端側をトロリ線の上面との間に挟持する保持部とを具備し、
前記ナットを前記ねじ軸部に螺合させることにより、左右半部の下部間を接近させ、前記一対の締め付け部間にトロリ線を把持することを特徴とするトロリ線温度検出装置。
【請求項2】
前記把持部材は、頭部とねじ軸部とを具備し、頭部が左右に二分されて前記一対の締め付け部が形成され、ねじ軸部が基端から先端部付近に至るスリットにより二分されて前記左右の半部が形成されることを特徴とする請求項1に記載のトロリ線温度検出装置。
【請求項3】
前記ねじ軸部には、前記ナットの上部にさらにゆるみ止めリングが取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のトロリ線温度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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