説明

トンネル監視システム、トンネル監視方法

【課題】少ない台数の監視カメラを用いて、効率良く広範囲のトンネル監視を行う。
【解決手段】複数の監視カメラが、撮像部による撮像範囲外である区間を隔てて、トンネル内の通行方向の上流から下流に亘って設置され、撮像した画像を監視サーバに送信し、監視サーバは、複数の監視カメラから送信される画像を受信し、受信した画像に車が含まれるか否かを判定し、複数の監視カメラのうち上流の監視カメラから送信された画像に車が含まれると判定した場合、その時点から一定時間内に上流の監視カメラよりも下流の監視カメラから送信された画像に車が含まれるか否かを判定し、下流の監視カメラから送信された画像に車が含まれないと判定した場合、車が通過していないと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車が通行するトンネル内での異常を監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車が通行するトンネル内での事故の発生防止や、事故発生時の迅速な情報収集のために、監視カメラによるトンネル内の監視が行われている。特許文献1には、トンネル内に設置された複数の監視カメラから送信される映像を、1系統の信号として出力することが記載されている。特許文献2には、監視カメラによりトンネル内を通行する車を撮像し、撮像した画像から車に付された文字を認識すること等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−39589号公報
【特許文献2】特開2003−272086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の技術は、監視カメラによる撮像範囲内において撮像された画像に含まれる車のみに基づいて、トンネル内の事故等を監視しようとするものである。このため、トンネル内を広範囲に監視しようとする場合には、撮像範囲外となる区間がないように多数の監視カメラを隙間なく設置することが必要となる。これでは、多数の監視カメラに応じた相当の設置コストや保守コストなどが必要となる。ここで、トンネル内の広範囲の監視を、より少ない台数の監視カメラを用いて、できるだけ簡単に、効率良く行うという要望が存在する。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、少ない台数の監視カメラを用いて、できるだけ簡単に、効率良く広範囲の監視を行うトンネル監視システム、トンネル監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、車が通行するトンネル内に設置され、トンネル内を撮像する撮像部を備えた複数の監視カメラと、複数の監視カメラに接続された監視サーバとを備えたトンネル監視システムであって、複数の監視カメラは、撮像部による撮像範囲外である区間を隔てて、トンネル内の通行方向の上流から下流に亘って設置され、撮像した画像を、監視サーバに送信する送信部を備え、監視サーバは、複数の監視カメラから送信される画像を受信する受信部と、受信部によって受信された画像に、車が含まれるか否かを判定する第1の車検出部と、第1の車検出部によって、複数の監視カメラのうち上流の監視カメラから送信された画像に車が含まれると判定された場合、時点から一定時間内に上流の監視カメラよりも下流の監視カメラから送信された画像に、車が含まれるか否かを第1の車検出部に判定させ、下流の監視カメラから送信された画像に車が含まれると判定された場合、車が通過したと判定し、車が含まれないと判定された場合、車が通過していないと判定する通過判定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上述の監視サーバが、通過判定部によって、車が通過していないと判定された場合、警告を出力する警告部を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、複数の監視カメラは、監視カメラが首振りをせずに固定した状態において撮像範囲外であるが首振りをした状態において撮像範囲内である間接監視範囲の区間を隔てて、トンネル内の通行方向の上流から下流に亘って設置され、入力される首振り要求に応じて、撮像部が間接監視範囲を撮像するように首振り動作を行う首振り駆動部を備え、監視サーバは、通過判定部によって、車が通過していないと判定された場合、上流の監視カメラと下流の監視カメラとの少なくともいずれかに首振り要求を送信して間接監視範囲を撮像させる首振り要求送信部と、受信部によって受信された、首振り要求に応じて撮像された間接監視範囲の画像を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、複数の監視カメラ毎に、間接監視範囲に車が含まれない画像である背景画像が対応付けられて予め記憶される背景画像記憶部と、監視カメラから送信される、首振り要求に応じて撮像された間接監視範囲の画像について、画像を送信した監視カメラに対応付けられて背景画像記憶部に記憶されている背景画像と比較して、画像と背景画像との差分に基づいて、画像に車が含まれるか否かを判定する第2の車検出部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、車が通行するトンネル内に設置され、トンネル内を撮像する撮像部を備えた複数の監視カメラと、複数の監視カメラに接続された監視サーバとを備えたトンネル監視システムのトンネル監視方法であって、撮像部による撮像範囲外である区間を隔てて、トンネル内の通行方向の上流から下流に亘って設置された複数の監視カメラが、撮像した画像を、監視サーバに送信するステップと、監視サーバが、複数の監視カメラから送信される画像を受信するステップと、受信した画像に、車が含まれるか否かを判定するステップと、複数の監視カメラのうち上流の監視カメラから送信された画像に車が含まれると判定した場合、時点から一定時間内に上流の監視カメラよりも下流の監視カメラから送信された画像に、車が含まれるか否かを判定し、下流の監視カメラから送信された画像に車が含まれると判定した場合、車が通過したと判定し、車が含まれないと判定した場合、車が通過していないと判定するステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、複数の監視カメラが、撮像部による撮像範囲外である区間を隔てて、トンネル内の通行方向の上流から下流に亘って設置され、撮像した画像を監視サーバに送信し、監視サーバは、複数の監視カメラから送信される画像を受信し、受信した画像に車が含まれるか否かを判定し、複数の監視カメラのうち上流の監視カメラから送信された画像に車が含まれると判定した場合、その時点から一定時間内に上流の監視カメラよりも下流の監視カメラから送信された画像に車が含まれるか否かを判定し、下流の監視カメラから送信された画像に車が含まれないと判定した場合、車が通過していないと判定するようにしたので、少ない台数の監視カメラを用いて、効率良く広範囲の監視を行うトンネル監視システム、トンネル監視方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態によるトンネル監視システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による複数の監視カメラの設置例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による直接監視範囲と間接監視範囲との例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態の車検出部による車検出処理の例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による直接監視範囲と間接監視範囲との例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態によるトンネル監視システムの動作例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態による直接監視範囲と間接監視範囲との例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態による異常検知処理の例を説明する図である。
【図9】本発明の一実施形態による異常検知処理の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態によるトンネル監視システム1の構成を示すブロック図である。トンネル監視システム1は、監視対象であるトンネルに設置された複数の監視カメラ10−Nと、複数の監視カメラ10−Nに接続された監視サーバ20とを備えている。
【0014】
複数の監視カメラ10−Nは、車が通行するトンネル内に設置され、定められた方向に向けられたカメラによって撮像可能な撮像範囲外である区間を隔てて、トンネル内の通行方向の上流から下流に亘って設置される。本実施形態では、複数の監視カメラ10−Nは、カメラが首振りをせずに固定した状態において撮像範囲外であるが首振りをした状態において撮像範囲内である間接監視範囲の区間を隔てて、トンネル内の通行方向の上流から下流に亘って設置される。
【0015】
例えば、図2は、本実施形態による複数の監視カメラ10−Nの設置例を示す図である。ここでは、トンネル内の上部に、監視カメラ10−1と、監視カメラ10−2と、監視カメラ10−3とが、所定の間隔を隔てて設置されている。例えば符号a1の箇所は、監視カメラ10−1が首振りをせずに固定した状態において撮像範囲内である直接監視範囲の区間であり、符号b1の箇所は、監視カメラ10−1が首振りをした状態において撮像範囲内である間接監視範囲の区間である。撮像範囲とは、監視カメラ10−Nによって撮像されている範囲のうち、通過する車を実効的に監視可能な範囲である。ここでは、符号b1の間接監視範囲を、監視カメラ10−1による首振り動作により監視される区間(符号b1−1)と、監視カメラ10−2による首振り動作により監視される区間(符号b1−2)との区間に分割した間隔を隔てて、複数の監視カメラ10−Nを設置するようにしても良い。ここでは3台の監視カメラを図示して説明するが、複数の監視カメラ10−Nによる直接監視範囲または間接監視範囲によって、トンネル内の全体に亘る広範囲が監視対象となるようにして良い。例えば、図3は、6区間の直接監視範囲と、5区間の間接監視範囲とによって、車のトンネル内の通行方向の上流から下流に亘る広範囲の区間が監視対象となる例を示している。
【0016】
ここで、複数の監視カメラ10−Nは、設置位置が異なる他は同様の構成であるので、特に区別して説明しない場合には監視カメラ10として説明する。図1に戻り、監視カメラ10は、撮像部11と、首振り駆動部12と、送信部13とを備えている。
撮像部11は、レンズや撮像素子等が含まれるカメラであり、トンネル内を撮像して画像を生成する。撮像部11は、通常状態においては直接監視範囲を固定して撮像するが、首振り駆動部12の動作により間接監視範囲を撮像する。ここで、撮像部11は、拡大率や縮小率を示す値が含まれる制御信号を受信し、受信した制御信号に応じて、撮像範囲のズームイン、ズームアウトを行う機能を有する。
【0017】
首振り駆動部12は、入力される首振り要求に応じて、間接監視範囲を撮像するように、撮像部11のパン・チルト・ズームの首振り動作を行う。ここで、首振り駆動部12は、撮像部11の撮像方向に応じて定められた角度を示す値が含まれる制御信号を受信し、受信した制御信号に応じて、撮像部11の首振り動作を行う。例えば、図2における監視カメラ10−1の首振り駆動部12は、自身の間接監視範囲である符号b1−1およびb1−2の各々の区間が撮像範囲となるように首振り動作を行うための首振り角度を予め記憶しておき、監視サーバ20から首振り要求を受信すると、予め記憶された首振り角度に基づいて首振り動作を行う。また、首振り動作を行った後に、撮像部11によって間接監視範囲の撮像が行われた後には、撮像部11の撮像範囲が直接監視範囲に戻るように首振り動作を行う。
【0018】
送信部13は、撮像部11によって撮像された画像を、監視サーバ20に送信する。ここで、送信部13は、トンネル内の複数の監視カメラ10のうち、自身を識別するカメラ識別情報や、送信する画像が直接監視範囲を撮像した画像であるか間接監視範囲を撮像した画像であるかを示す情報を、画像とともに送信することができる。あるいは、例えば直接監視範囲と間接監視範囲とを含むトンネル内の監視範囲毎に一意な識別情報を予め定めて監視カメラ10の記憶領域に記憶させておき、撮像した監視範囲を識別する監視範囲識別情報を、画像とともに送信するようにしても良い。
【0019】
監視サーバ20は、受信部21と、第1の車検出部22と、背景画像記憶部23と、第2の車検出部24と、通過判定部25と、首振り要求送信部26と、警告部27と、出力部28とを備えている。
受信部21は、複数の監視カメラ10から送信される画像を受信する。
第1の車検出部22は、通常時に撮像される直接監視範囲の画像に含まれる車を監視する。ここで、第1の車検出部22は、監視カメラ10によって撮像された画像に、車が含まれるか否かを判定する車検出処理を行う。例えば、第1の車検出部22は、リアルタイムに適宜背景画像を生成し、生成した背景画像と、監視カメラ10によって生成された撮像画像との差分を比較することにより、撮像画像に車が含まれるか否かを判定する。具体的には、例えば、第1の車検出部22は、監視カメラ10によって撮像された撮像画像に含まれる画素毎の平均値を一定時間毎に算出し、算出した平均値と、判定対象の撮像画像に含まれる画素との値の差が一定以上である画素の領域の大きさを算出し、値の差が一定以上である画素の領域の大きさが予め定められた閾値より大きいと判定すると、車を検出したと判定する。ここで、第1の車検出部22は、撮像画像に複数車線が含まれる場合でも、トラッキング処理を行うことなどにより、上下各方向の通過状況を取得することもできる。
【0020】
背景画像記憶部23には、複数の監視カメラ10毎に、その監視カメラ10の撮像範囲に車が含まれない画像である背景画像が対応付けられて予め記憶される。背景画像とは、例えば、図4の下段に示されるような画像である。ここでは、背景画像記憶部23に記憶されている背景画像は、間接監視範囲における背景画像である。例えば、トンネル内の間接監視範囲毎に、一意な識別情報を予め定めておき、このような監視範囲識別情報毎に、背景画像が対応付けられて記憶される。
【0021】
第2の車検出部24は、首振り時に撮像される間接監視範囲の画像に含まれる車を監視する。ここで、第2の車検出部24は、受信部21によって受信された画像に、車が含まれるか否かを判定する車検出処理を行う。第2の車検出部24は、高度な比較処理を行うことにより長時間の処理時間がかかることを防ぐために、リアルタイムに背景画像を生成する等の処理は行わず、予め撮像されて背景画像記憶部23に記憶されている背景画像と、首振り動作を行った監視カメラ10によって撮像された静止画像とを比較することにより車検出処理を行う。すなわち、間接監視範囲においては数枚の静止画像を撮像して撮像を完了させ、監視カメラ10を通常状態に復帰させる。これにより、首振り動作を行って間接監視範囲を撮像する時間、負荷を少なくし、迅速に通常状態の監視に復帰することができる。具体的には、第2の車検出部24は、画像を送信した監視カメラ10に対応付けられて背景画像記憶部23に記憶されている背景画像を読み出し、読み出した背景画像と、その監視カメラ10から送信された画像とを比較して、予め撮像された背景画像と監視カメラ10から送信された画像との差分に基づいて、監視カメラ10から送信された画像に車が含まれるか否かを判定する。ここでは、第2の車検出部24は、例えば画像とともに監視カメラ10から送信される監視範囲識別情報に対応する背景画像を、背景画像記憶部23から読み出して車検出処理を行う。
【0022】
例えば、図4は、上段の画像が監視カメラ10から送信された画像の例であり、下段の画像が予め撮像され背景画像記憶部23に記憶されている背景画像の例を示す図である。符号(a)の場合、監視カメラ10から送信された画像と予め撮像された背景画像とが一致しているため、第2の車検出部24は、車が含まれないと判定する。符号(b)の場合、監視カメラ10から送信された画像には、予め撮像された背景画像と異なる領域が存在している。第2の車検出部24は、このような画像の差分の領域を検出し、検出した領域の大きさと、予め定められた閾値とを比較し、検出した差分領域の大きさが閾値以上であれば、監視カメラ10から送信された画像に車が含まれると判定する。符号(c)の場合も同様に、監視カメラ10から送信された画像と、予め撮像された背景画像との差分を検出して、検出した差分領域が閾値以上であれば、監視カメラ10から送信された画像に車が含まれると判定する。
また、第2の車検出部24は、監視カメラ10から複数の間接監視範囲の画像が送信されてきた場合には、複数の間接監視範囲のうち、いずれの間接監視範囲に車が存在しているかを検出する。
【0023】
図1に戻り、通過判定部25は、第1の車検出部22によって、複数の監視カメラ10のうち上流の監視カメラ10から送信された画像に車が含まれると判定された場合、その時点から一定時間内にその上流の監視カメラ10よりも下流の監視カメラ10から送信された画像に、車が含まれるか否かを第1の車検出部22に判定させ、その下流の監視カメラ10から送信された画像に車が含まれると判定された場合、車が通過したと判定し、車が含まれないと判定された場合、車が通過していないと判定する車通過判定処理を行う。
【0024】
例えば、通過判定部25は、複数の監視カメラ10の識別情報と、複数の監視カメラ10の上流、下流の位置関係を示す情報を自身の記憶領域に予め記憶しておく。そして、通過判定部25は、第1の車検出部22が、監視カメラ10から送信された画像から車を検出したと判定すると、監視カメラ10よりも下流の監視カメラ10から送信された画像に、車が含まれるか否かを第1の車検出部22に判定させる。通過判定部25は、計時機能を備えており、第1の車検出部22が監視カメラ10から送信された画像から車を検出したと判定した時点からの経過時間を計測する。通過判定部25は、第1の車検出部22が監視カメラ10から送信された画像から車を検出したと判定した時点から一定時間(例えば、設定時間1分)を経過するまでの間に、下流の監視カメラ10から送信された画像に車が含まれると判定された場合、車が通過したと判定する。車が含まれないと判定された場合、車が通過していないと判定する。ここで、通過判定部25が計測する経過時間は、トンネルの長さや、各監視カメラ10の設置位置間の距離、検出された車の速度、車線数などに応じて最適な値を設定して良い。
【0025】
すなわち、例えば図5に示すように、監視カメラ10−1の直接監視範囲a1における検出ポイントと、監視カメラ10−2の直接監視範囲a2における検出ポイントとの間隔が500mであるとする。このとき、監視カメラ10−1が撮像する画像から車が検出された場合、通過判定部25は、その通過時刻を記憶する。そして、監視カメラ10−2の直接監視範囲において、監視カメラ10−1の通過時刻から設定時間以上、車を検出しない場合(車が通過しない場合)は、間接監視範囲において何らかの異常が発生しているものと考えることができる。これにより、トンネル内における全ての箇所を常に網羅的に監視しなくとも、トンネル内に異常が発生したかどうかを判定することができる。ここで、設定時間は、例えば、通常の速度の車が通過検出ポイントを通過するまでにかかる以上の時間を設定しておく。例えば、このように検出ポイント間の間隔が500mであり、平均車両速度を毎時60kmとした場合、500mを経過するために30秒かかるため、これ以上の時間を設定する。
【0026】
図1に戻り、首振り要求送信部26は、通過判定部25によって、車が通過していないと判定された場合、上流の監視カメラ10と下流の監視カメラ10との少なくともいずれかに、首振り動作を行って間接監視範囲の撮像を行うことを要求する首振り要求を送信して、監視カメラ10に首振り動作を行わせ、間接監視範囲を撮像させる。ここで、首振り要求送信部26が上流の監視カメラ10と下流の監視カメラ10とのいずれに、首振り要求を送信するかは、直接監視範囲間の間隔に応じて予め定めておくことができる。ここでは、上流の監視カメラ10と下流の監視カメラ10との双方に首振り要求を送信するようにしても良い。
【0027】
警告部27は、通過判定部25によって、車が通過していないと判定された場合、または第2の車検出部24で車が存在すると判定された場合、警告を出力する。例えば、警告部27は、特定の監視カメラ10において車が通過していないことを示す情報、またはいずれの間接監視範囲に車が存在しているかを示す情報を、所定の外部装置等に通知する。あるいは、警告部27は、電子メール送信機能を有し、監視対象のトンネル内における特定の監視カメラ10に車が通過しておらず、異常が発生している可能性があることを示す旨の文章が含まれる電子メールを、予め定められた宛先に対して送信する。
【0028】
出力部28は、受信部21によって受信された、首振り要求送信部26からの首振り要求に応じて監視カメラ10によって撮像された間接監視範囲の画像を出力する。出力部28は、例えば電子メール送信機能を有し、間接監視範囲の画像が含まれる電子メールを、予め定められた宛先に対して送信する。ここで、警告部27が送信する電子メールと、出力部28が送信する電子メールとは、一通の電子メールであっても良い。あるいは、例えば監視サーバ20はディスプレイを有することとして、監視サーバ20が備えるディスプレイに、警告部27による警告や出力部28による画像を出力するようにしても良い。
【0029】
次に、本実施形態によるトンネル監視システム1の動作例を説明する。図6は、本実施形態によるトンネル監視システム1が異常発生時の警告を行う動作例を示すフローチャートである。
ここでは、相対的に上流の監視カメラ10である監視カメラ10−1と、相対的に下流の監視カメラ10である監視カメラ10−2とを例として説明する。トンネル内に設置された全ての監視カメラ10は、直接監視範囲を撮像した画像を、監視サーバ20に送信し続ける(ステップS1、ステップS2)。監視サーバ20の受信部21が、監視カメラ10から送信された画像を受信すると、第1の車検出部22は、受信した画像のそれぞれについて、車検出処理を行う(ステップS3)。
【0030】
監視サーバ20の第1の車検出部22が、複数の監視カメラ10から送信された全ての画像について車が含まれないと判定した場合(ステップS3:NO)、車通過判定処理等を行わず、車を検出するまで第1の車検出部22による車検出処理を続ける。監視サーバ20の第1の車検出部22が、複数の監視カメラ10から送信された画像のいずれかに車が含まれると判定した場合(ステップS3:YES)、通過判定部25は、通過判定処理を行う(ステップS4)。すなわち、通過判定部25は、ステップS3において車が検出された監視カメラ10(例えば、監視カメラ10−1)より下流の監視カメラ10(例えば、監視カメラ10−2)から送信される画像に、車が含まれるか否かを第1の車検出部22に判定させ、車が通過したか否かを判定する。
【0031】
ここで、通過判定部25が、車が通過したと判定すれば(ステップS4:YES)、首振り要求送信処理等を行わず、車を検出するまで第1の車検出部22による車検出処理を続ける。通過判定部25が、車が通過していないと判定すれば(ステップS4:NO)、首振り要求送信部26が、間接監視範囲の撮像を要求する首振り要求を監視カメラ10に送信する(ステップS5)。ここでは、監視カメラ10−1に首振り要求を送信する例を示すが、監視カメラ10−1と監視カメラ10−2との双方に首振り要求を送信しても良い。監視カメラ10−1が、監視サーバ20から送信される首振り要求を受信すると、首振り駆動部12は、定められた間接監視範囲の方向を撮像するように、撮像部11の首振り動作を行う(ステップS6)。撮像部11が間接監視範囲の画像を撮像すると、送信部13は、撮像した画像を監視サーバ20に送信する(ステップS7)。
【0032】
監視サーバ20の第2の車検出部24は、背景画像記憶部23に予め記憶されている、その間接監視範囲に対応する背景画像を読み出し、受信した間接監視範囲の画像と比較して、間接監視範囲のどこに車がいるかを判定する。監視サーバ20は、トンネル内を車が通過しておらず、何らかの異常が発生している可能性があることを示す警告と、ステップS7において監視カメラ10−1から送信された画像とを出力する。さらに、車が検出された間接監視範囲を識別する監視範囲識別情報を出力するようにしても良い。例えば、自身が備えるディスプレイに警告と画像とを出力し、定められた宛先に電子メールを送信する(ステップS8)。そして、監視カメラ10−1の首振り駆動部12は、撮像部11が直接監視範囲を撮像するように首振り動作を行い、通常の監視状態に戻る。
【0033】
以上では、上流の監視カメラ10において車が検出された後、一定時間内に下流の監視カメラ10において車が検出されるか否かを判定することにより、異常の発生を検出する例を示した。ただし、トンネル内の直接監視範囲の明るさや車の速度や監視カメラ10の性能などによっては、全ての監視カメラ10が、直接監視範囲を通過する全ての車を必ず検出できるわけではないことも考えられる。そこで、このような車検出の抜けを考慮して、全ての監視カメラ10による車の検出結果を、一定時間内の積算結果により評価して、異常が発生したか否かを判定するようにしても良い。
【0034】
例えば、図7の(a)に示すように、全長2000mのトンネル内の6箇所(a1、a2、a3、a4、a5、a6)に監視カメラ10を設置して直接監視範囲を監視する場合を考える。ここでは、トンネル全体の交通流を、1分毎に車が検出されたか否かを判定し、その車が下流を通過したか否かを3分間隔で監視する。すなわち、上流において車が検出されたが、下流において車が検出されていない状態が3分間継続した場合には、異常有りと判定する。このような継続時間間隔は、車がトンネル全体(2000m)を通過するためにかかる時間以上の時間を設定する。例えば、この例では、車の平均速度を60kmとして、2000mを通過するのに2分かかるので、継続時間間隔をそれ以上の3分としている。例えば、異常無しの場合、(b)に示すように、6箇所の全ての直接監視範囲において車の通過が検出される。これに対し、(c)に示すように、符号a4と符号a5との直接監視範囲の間の区間において異常が発生して通行不可となった場合、符号a1から符号a4までの直接監視範囲では車が検出されるが、符号a5から符号a6との直接監視範囲では車が検出されない。
【0035】
図8は、このような異常検知処理の概要を説明する図である。ここでは、図7に示したように6箇所に設置されたそれぞれの直接監視範囲(符号a1〜a6)によって車が通過したか否かを、時系列に示した図である。この図において、「○」は車の通過が有ったことを示しており、「×」は車の通過が無かったことを示している。例えば、10:00:00〜10:00:59までの1分間の間には、符号a1と符号a2との直接監視範囲に車が通過し、符号a3から符号a6までの間の直接監視範囲に車が通過しなかったことを示している。ここで、10:05:00〜10:05:59までの間に、符号a4と符号a5との直接監視範囲の間の区間において異常が発生し、通行不可になったとする。このため、10:06:00〜10:06:59の間に符号a4において車の通過が検出されているが、その時点以降に符号a5より下流の区間において車が検出されていない。これを3分間の積算結果でみると、10:04:00〜10:06:59の間には、相対的に上流である符号a4の直接監視範囲において車の通過が検出されているが、これより下流の直接監視範囲(符号a5、a6)の区間において車が検出されていない。よって、この時点で、符号a4と符号a5との間の区間において異常が発生したと判定される。
【0036】
同様に、図9は、1台の車が時速60kmでトンネル内を通過した場合の判定を示す図である。この場合、車は秒速16.7mの速さで2000mを通過することになり、2000mを約2分で走行するので、符号a1〜a6の直接監視範囲を順次通過する。積算結果では全て「通過有り」となり、異常無しと判定される。
【0037】
なお、本実施形態では、第1の車検出部22はリアルタイムに背景画像を生成して車検出処理を行い、第2の車検出部24は予め撮像され背景画像記憶部23に記憶されている背景画像を用いて静止画による車検出処理を行うことしたが、いずれもがリアルタイムな車検出処理を行うようにしても良いし、静止画による車検出処理を行うようにしても良い。
【0038】
また、本実施形態では、予め撮像された背景画像と、監視カメラ10の撮像部11によってリアルタイムに撮像された画像とを比較して車を検出する車検出処理は、監視サーバ20が行うこととしたが、第1の車検出部22と背景画像記憶部23と第2の車検出部24と同様の機能部を監視カメラ10が備えるようにして、監視カメラ10が車を検出した場合に、監視サーバ20に対して車を検出したことを示す車検出通知信号を送信するようにしても良い。この場合、監視サーバ20の通過判定部25は、一定時間内に下流の監視カメラ10から車検出通知信号が送信されてくるか否かを判定することにより、車の通過判定を行うことができる。
【0039】
また、通過判定部25による車通過の判定は、リアルタイムに行っても良いし、第1の車検出部22による車検出処理の結果を時刻等とともに対応付けたログを記憶しておき、一定時間ごとに、事後的に通過判定処理を行うようにしても良い。
また、第1の車検出部22は、直接監視範囲において通過した車の台数をカウントするようにして、通過判定部25は、通過した車の台数に基づいて、異常が発生したか否かを判定するようにしても良い。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、トンネル内を網羅的に撮像するように監視カメラを設置しなくても、所定の間隔を隔てて設置した監視カメラにより、通常時には撮像範囲外となる監視カメラと監視カメラとの間の区間で異常が発生した場合にも、異常を検知することが可能となる。また、監視カメラは直接監視範囲を常時監視し、監視カメラ間で何らかの異常が発生したと推定される場合、カメラをパン・チルト・ズームして間接監視範囲を撮像して監視することで、少ない台数の監視カメラを用いてトンネル内の広範囲に亘る監視を行うことができる。
【0041】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりトンネルの監視を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0042】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 トンネル監視システム
10 監視カメラ
11 撮像部
12 首振り駆動部
13 送信部
20 監視サーバ
21 受信部
22 第1の車検出部
23 背景画像記憶部
24 第2の車検出部
25 通過判定部
26 首振り要求送信部
27 警告部
28 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車が通行するトンネル内に設置され、当該トンネル内を撮像する撮像部を備えた複数の監視カメラと、当該複数の監視カメラに接続された監視サーバとを備えたトンネル監視システムであって、
前記複数の監視カメラは、前記撮像部による撮像範囲外である区間を隔てて、前記トンネル内の通行方向の上流から下流に亘って設置され、
撮像した画像を、前記監視サーバに送信する送信部を備え、
前記監視サーバは、
前記複数の監視カメラから送信される前記画像を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された前記画像に、車が含まれるか否かを判定する第1の車検出部と、
前記第1の車検出部によって、前記複数の監視カメラのうち上流の監視カメラから送信された画像に車が含まれると判定された場合、当該時点から一定時間内に当該上流の監視カメラよりも下流の前記監視カメラから送信された画像に、車が含まれるか否かを前記第1の車検出部に判定させ、当該下流の監視カメラから送信された前記画像に車が含まれると判定された場合、車が通過したと判定し、車が含まれないと判定された場合、車が通過していないと判定する通過判定部と、
を備えることを特徴とするトンネル監視システム。
【請求項2】
前記監視サーバは、
前記通過判定部によって、車が通過していないと判定された場合、警告を出力する警告部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のトンネル監視システム。
【請求項3】
前記複数の監視カメラは、
当該監視カメラが首振りをせずに固定した状態において撮像範囲外であるが首振りをした状態において撮像範囲内である間接監視範囲の区間を隔てて、前記トンネル内の通行方向の上流から下流に亘って設置され、
入力される首振り要求に応じて、前記撮像部が前記間接監視範囲を撮像するように首振り動作を行う首振り駆動部を備え、
前記監視サーバは、
前記通過判定部によって、車が通過していないと判定された場合、前記上流の監視カメラと前記下流の監視カメラとの少なくともいずれかに前記首振り要求を送信して前記間接監視範囲を撮像させる首振り要求送信部と、
前記受信部によって受信された、前記首振り要求に応じて撮像された前記間接監視範囲の画像を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトンネル監視システム。
【請求項4】
複数の前記監視カメラ毎に、前記間接監視範囲に車が含まれない画像である背景画像が対応付けられて予め記憶される背景画像記憶部と、
前記監視カメラから送信される、前記首振り要求に応じて撮像された前記間接監視範囲の画像について、前記背景画像記憶部に記憶されている前記背景画像と比較して、前記画像と前記背景画像との差分に基づいて、前記画像に車が含まれるか否かを判定する第2の車検出部と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載のトンネル監視システム。
【請求項5】
車が通行するトンネル内に設置され、当該トンネル内を撮像する撮像部を備えた複数の監視カメラと、当該複数の監視カメラに接続された監視サーバとを備えたトンネル監視システムのトンネル監視方法であって、
前記撮像部による撮像範囲外である区間を隔てて、前記トンネル内の通行方向の上流から下流に亘って設置された前記複数の監視カメラが、
撮像した画像を、前記監視サーバに送信するステップと、
前記監視サーバが、
前記複数の監視カメラから送信される前記画像を受信するステップと、
受信した前記画像に、車が含まれるか否かを判定するステップと、
前記複数の監視カメラのうち上流の監視カメラから送信された画像に車が含まれると判定した場合、当該時点から一定時間内に当該上流の監視カメラよりも下流の前記監視カメラから送信された画像に、車が含まれるか否かを判定し、当該下流の監視カメラから送信された前記画像に車が含まれると判定した場合、車が通過したと判定し、車が含まれないと判定した場合、車が通過していないと判定するステップと、
を備えることを特徴とするトンネル監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−53688(P2012−53688A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196063(P2010−196063)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【出願人】(501177517)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ関西 (2)
【Fターム(参考)】