説明

ドライフィルムレジスト、ドライフィルムレジスト用支持フィルム、及び回路基板の製造方法

【課題】いっそうの高解像度化が求められるプリント配線板等の回路基板の効率的な製造に適したドライフィルムレジスト、及び、該ドライフィルムレジストに適する支持フィルムを提供すること。
【解決手段】支持フィルム、該支持フィルムの少なくとも片面のレジスト層、及び、所望により保護フィルムを有し、支持フィルムが、式−(O・CH・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を70モル%以上有するポリグリコール酸を含有するフィルム、または該フィルムと他のポリマーを含有するフィルムとの積層フィルムであるドライフィルムレジスト、及び、ドライフィルムレジスト用支持フィルム、並びに、該ドライフィルムレジストを使用する回路基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持フィルム、レジスト層、及び保護フィルムをこの順で積層してなるドライフィルムレジストに関する。詳しくは、本発明は、光透過性及びレジスト層との剥離性に優れた支持フィルムを備えるドライフィルムレジスト、及び、ドライフィルムレジスト用支持フィルム、並びに、該ドライフィルムレジストを使用する回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント配線板等の回路基板の製造には、感光性樹脂を用いたフォトレジスト法が用いられている。即ち、銅箔等の金属層を備える基材に感光性フィルムを積層し、ネガフィルム(フォトマスク)を通じて露光後現像し、場合によってはめっきを行い、その後エッチング、レジスト剥離等を行う方法である。
【0003】
フォトレジスト法に用いられる感光性フィルムとしては、光透過性の支持フィルムの少なくとも片面にレジスト層(感光性樹脂組成物層)を積層し、場合によりその上に保護フィルムを設けた多層構造のドライフィルムレジストが用いられている。
【0004】
ドライフィルムレジストを回路基板の製造に使用する方法は、概略以下のとおりである。
【0005】
保護フィルムを設けた場合は、まず保護フィルムが剥離された後、露出したレジスト層が回路基板作製用の基材の銅箔等の金属層に貼着される。この状態で、支持フィルム上に所定のパターンが形成されているネガフィルム(フォトマスク)を密着させ、該ネガフィルム(フォトマスク)側から、紫外線等の活性光線を照射するなどして、レジスト層を所定のパターンに露光して硬化させた後、ネガフィルム(フォトマスク)と支持フィルムを剥離する。これに、溶剤(現像液)を噴霧などで適用して、未露光部分に対応する未硬化のレジストを除去することでレジスト画像を形成(現像)する。その後、塩化第二銅水溶液などを用いてエッチングを行い、活性光線照射時に未硬化のレジストの下にあった銅箔等の金属層を除去し、次いで、硬化レジストを除去し、必要に応じてめっき処理を行って、銅箔等の金属による所定パターンの回路を形成する方法が一般的に行われている。
【0006】
特に、近年、環境問題などの面から、未硬化のレジストを除去する現像液として弱アルカリ水溶液を用いるものが多くなってきている。また、硬化レジストを除去するために強アルカリ水溶液が用いられることが多い。
【0007】
レジスト層を所定のパターンに硬化させるために、紫外線等の活性光線は、ドライフィルムレジストの支持フィルムを透過して照射される。支持フィルムの透明性が低いと、レジスト層が十分に露光されなかったり、光が散乱したりして、解像度が悪化するなどの問題が生ずる。したがって、該支持フィルムとしては、紫外線等の活性光線の透過性に優れ、透明性が高くヘイズ値が低いことが要求されるため、従来、ポリエステルフィルムが用いられ、なかでも、機械的特性も優れていることから、2軸延伸ポリエステルフィルムが多く用いられている。
【0008】
近年、プリント配線板の回路の微細化、液晶ディスプレイ配線への応用展開、さらには半導体の直接実装等により、ますます高解像度化が求められているので、ドライフィルムレジストの支持フィルムには、いっそうの透明性や透過性の向上、特に短波長領域での活性光線の透過性の向上が要求されている。しかし、ドライフィルムレジストの支持フィルムとして、ポリエステルフィルム、なかでも2軸延伸ポリエステルフィルムを用いて、さらに透明性や透過性を高めようとすると、該支持フィルムのすべり性が悪化するために、フィルムにキズが入りやすくなったり、フィルムの巻き取り性や走行性が低下して、フィルムに皺が発生したりするという問題があった。
【0009】
この問題を解決するために、ポリエステルフィルム中に無機または有機の粒子を含有させたり、さらに、積層ポリエステルフィルムとしたりする方法(特許文献1〜3参照)が提案されている。また、ポリエステル重縮合金属触媒残渣を減少させることで、波長365nmでの光線透過率を80%以上とする方法(特許文献4参照)も提案されている。しかし、これらの方法でも、まだ十分満足できる段階には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−46012号公報
【特許文献2】特開平7−333853号公報
【特許文献3】特開2001−117237号公報
【特許文献4】特開2004−115566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、いっそうの高解像度化が求められているプリント配線板等の回路基板の製造に適したドライフィルムレジストを提供することにある。
【0012】
特に、本発明の課題は、前記のドライフィルムレジストの支持フィルムに適しており、かつ、生分解性など分解性とすることが可能な樹脂フィルムを提供することにある。
【0013】
また、本発明の課題は、前記のドライフィルムレジストを使用して、いっそうの高解像度化を実現できる回路基板の効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、ドライフィルムレジストの支持フィルムとして、式−(O・CH・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を70モル%以上有するポリグリコール酸(以下、「PGA」ということがある。)を含有するフィルムを備えることによって、課題を解決できることを見いだし、本発明を想到した。
【0015】
すなわち、本発明によれば、支持フィルム、及び、該支持フィルムの少なくとも片面にレジスト層を有するドライフィルムレジストであって、支持フィルムが、式−(O・CH・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を70モル%以上有するPGAを含有するフィルムを少なくとも1層備えることを特徴とする前記のドライフィルムレジストが提供される。
【0016】
また、本発明によれば、実施の態様として、以下(1)〜(5)のドライフィルムレジストが提供される。
【0017】
(1)レジスト層の支持フィルム側の反対側に保護フィルムを有する前記のドライフィルムレジスト。
【0018】
(2)支持フィルムが、前記PGAに加えて、ポリ乳酸を含有する前記のドライフィルムレジスト。
【0019】
(3)支持フィルムが、前記のPGAを含有するフィルム、及び、他のポリマーを含有するフィルムを備える積層フィルムである前記のドライフィルムレジスト。
【0020】
(4)他のポリマーが、ポリ乳酸及びポリエチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である前記のドライフィルムレジスト。
【0021】
また、本発明によれば、前記のPGAを含有する前記のドライフィルムレジスト用支持フィルム、並びに、前記のPGAを含有するフィルム、及び、他のポリマーを含有するフィルムを備える積層フィルムである前記のドライフィルムレジスト用支持フィルムが提供される。
【0022】
そしてまた、本発明によれば、前記のドライフィルムレジストを使用する回路基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、いっそうの高解像度化が求められているプリント配線板等の回路基板の製造に適したドライフィルムレジストが提供されるという効果が奏される。また、本発明によれば、前記のドライフィルムレジストを使用することにより、いっそうの高解像度化を実現した回路基板の製造方法が提供されるという効果が奏され、特に、従来より短波長の活性光線を照射して回路パターンを形成することができるので、より微細な回路パターンの形成が可能となるという効果が奏される。また、本発明によれば、支持フィルムとレジスト層との剥離が容易であり、かつ、支持フィルムの剥離工程と未硬化レジストの除去工程(現像工程)を同時に行うことができるので、回路基板の製造を効率的に実施することができる。さらにまた、本発明によれば、生分解など分解可能なドライフィルムレジストの支持フィルムを得ることができるので、環境負荷を小さくできるという効果が奏される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.ポリグリコール酸
本発明のドライフィルムレジストは、支持フィルムとして、式−(O・CH・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を70モル%以上有するPGAを含有するフィルムを少なくとも1層備えるものである。
【0025】
該フィルムに含まれるPGAの、式−(O・CH・CO)−で表わされる繰り返し単位の含有割合は、PGAの全モノマー単位を100モル%とした場合に、70モル%以上が必要であり、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは99モル%以上であり、その上限は、100モル%である。したがって、PGAは、式−(O・CH・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位のみからなるグリコール酸のホモポリマー(グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリドの開環重合物を含む)に加えて、上記グリコール酸繰り返し単位を70モル%以上含むPGA共重合体を含むものである。
【0026】
該フィルムに含まれるPGAの式−(O・CH・CO)−で表わされる繰り返し単位の含有割合が70モル%よりも少ないと、優れた透明性や生分解性が低下する。該繰り返し単位の含有割合が70モル%以上であれば、その他の成分として少量の共重合成分を導入することにより、PGAの結晶性を制御して、押出温度の低下や延伸性の向上が可能となる。また、PGAに少量の共重合成分を導入することは、支持フィルムとして、該PGAを含むフィルムと他のポリマーを含むフィルムを備える積層フィルムであるドライフィルムレジスト用支持フィルムを形成する際、積層界面の接着性を向上させ、共押出の押出温度を調整できる点でも好ましい。
【0027】
上記グリコリド等のグリコール酸モノマーとともに、PGA共重合体を与えるコモノマーとしては、例えば、シュウ酸エチレン(即ち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド類、ラクトン類、カーボネート類、エーテル類、エーテルエステル類、アミド類などの環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、こはく酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;またはこれらの2種以上を挙げることができる。これらの中でも、共重合させやすく、かつ物性に優れた共重合体が得られやすい点で、ラクチド、カプロラクトン、トリメチレンカーボネートなどの環状化合物;乳酸などのヒドロキシカルボン酸などが好ましく用いられる。これらコモノマーは、その重合体を、上記グリコリド等のグリコール酸モノマーとともに、PGA共重合体を与えるための出発原料として用いることもできる。
【0028】
PGAは、グリコール酸の脱水重縮合、グリコール酸アルキルエステルの脱アルコール重縮合、グリコリドの開環重合などにより合成することができる。これらの中でも、グリコリドを少量の触媒(例えば、有機カルボン酸錫、ハロゲン化錫、ハロゲン化アンチモン等のカチオン触媒)の存在下に、約120℃から約250℃の温度に加熱して、開環重合する方法によってPGAを合成する方法が好ましい。
【0029】
すなわち、本発明の支持フィルムに含有されるPGAとしては、所望の高分子量ポリマーを効率的に製造するために、グリコリド70〜100質量%及び他の環状モノマー30〜0質量%を開環重合して得られるPGAが好ましい。他のコモノマーとしては、2分子間の環状モノマーであってもよいし、環状モノマーでなく両者の混合物であってもよいが、本発明の支持フィルムとするためには、環状モノマーが好ましい。
【0030】
以下、グリコリド70〜100質量%及び他の環状モノマー30〜0質量%を開環重合して得られるPGAについて詳述する。
【0031】
〔グリコリド〕
開環重合によってPGAを形成するグリコリドは、ヒドロキシカルボン酸の1種であるグリコール酸の2分子間環状エステルである。グリコリドの製造方法は、特に限定されないが、一般的には、グリコール酸オリゴマーを熱解重合することにより得ることができる。グリコール酸オリゴマーの解重合法として、例えば、溶融解重合法、固相解重合法、溶液解重合法などを採用することができ、また、クロロ酢酸塩の環状縮合物として得られるグリコリドも用いることができる。なお、所望により、グリコリドとしては、グリコリド量の20質量%を限度として、グリコール酸を含有するものを使用することができる。
【0032】
本発明のドライフィルムレジストの支持フィルムに含有されるPGAは、グリコリドのみを開環重合させて形成してもよいが、他の環状モノマーを共重合成分として同時に開環重合させて共重合体を形成してもよい。共重合体を形成する場合には、グリコリドの割合は、70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは98質量%以上、最も好ましくは99質量%以上である実質的にPGAホモポリマーである。
【0033】
〔環状モノマー〕
グリコリドとの共重合成分として使用することができる他の環状モノマーとしては、ラクチドなど他のヒドロキシカルボン酸の2分子間環状エステルの外、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、トリメチレンカーボネート、1,3−ジオキサンなどの環状モノマーを使用することができる。好ましい他の環状モノマーは、他のヒドロキシカルボン酸の2分子間環状エステルであり、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、L−乳酸、D−乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、α−ヒドロキシステアリン酸、及びこれらのアルキル置換体などを挙げることができる。特に好ましい他の環状モノマーは、乳酸の2分子間環状エステルであるラクチドであり、L体、D体、ラセミ体、これらの混合物のいずれであってもよい。
【0034】
他の環状モノマーは、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下の割合で用いられる。グリコリドと他の環状モノマーとを開環共重合することにより、PGA(共重合体)の融点を低下させて成形温度を下げたり、結晶化速度を制御して押出加工性や延伸加工性を改善することができる。しかし、これらの環状モノマーの使用割合が大きすぎると、形成されるPGA(共重合体)の結晶性が損なわれて、耐熱性や機械的強度などが低下することがある。なお、PGAが、グリコリド100質量%から形成される場合は、他の環状モノマーは0質量%であり、このPGAも本発明の範囲に含まれる。
【0035】
〔開環重合反応〕
グリコリドの開環重合または開環共重合(以下、総称して、「開環(共)重合」ということがある。)は、好ましくは、少量の触媒の存在下に行われる。触媒は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化錫(例えば、二塩化錫、四塩化錫など)や有機カルボン酸錫(例えば、2−エチルヘキサン酸錫などのオクタン酸錫)などの錫系化合物;アルコキシチタネートなどのチタン系化合物;アルコキシアルミニウムなどのアルミニウム系化合物;ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウム系化合物;ハロゲン化アンチモン、酸化アンチモンなどのアンチモン系化合物;などがある。触媒の使用量は、環状エステルに対して、質量比で、好ましくは1〜1,000ppm、より好ましくは3〜300ppm程度である。
【0036】
グリコリドには通常、微量の水分と、グリコール酸及び直鎖状のグリコール酸オリゴマーからなるヒドロキシカルボン酸化合物とが不純物として含まれている。これら不純物の全プロトン濃度を、好ましくは0.01〜0.5モル%、より好ましくは0.02〜0.4モル%、特に好ましくは0.03〜0.35モル%に調整することにより、生成するPGAの溶融粘度や分子量等の物性を制御することができる。全プロトン濃度の調整は、精製したグリコリドに水を添加することによっても実施することができる。
【0037】
グリコリドの開環(共)重合は、塊状重合でも、溶液重合でもよいが、多くの場合、塊状重合が採用される。分子量調節のために、ラウリルアルコールなどの高級アルコールや水などを分子量調節剤として使用することができる。また、物性改良のために、グリセリンなどの多価アルコールを添加してもよい。塊状重合の重合装置としては、押出機型、パドル翼を持った縦型、ヘリカルリボン翼を持った縦型、押出機型やニーダー型の横型、アンプル型、板状型、管状型など様々な装置の中から、適宜選択することができる。また、溶液重合には、各種反応槽を用いることができる。
【0038】
重合温度は、実質的な重合開始温度である120℃から300℃までの範囲内で目的に応じて適宜設定することができる。重合温度は、好ましくは130〜270℃、より好ましくは140〜260℃、特に好ましくは150〜250℃である。重合温度が低すぎると、生成したPGAの分子量分布が広くなりやすい。重合温度が高すぎると、生成したPGAが熱分解を受けやすくなる。重合時間は、3分間〜20時間、好ましくは5分間〜18時間の範囲内である。重合時間が短すぎると重合が充分に進行し難く、所定の重量平均分子量を実現することができない。重合時間が長すぎると生成したPGAが着色しやすくなる。
【0039】
生成したPGAを固体状態とした後、所望により、さらに固相重合を行ってもよい。固相重合とは、PGAの融点(Tm)未満の温度で加熱することにより、固体状態を維持したままで熱処理する操作を意味する。この固相重合により、未反応モノマー、オリゴマーなどの低分子量成分が揮発・除去される。固相重合は、好ましくは1〜100時間、より好ましくは2〜50時間、特に好ましくは3〜30時間で行われる。
【0040】
また、固体状態のPGAを、その融点Tm+38℃以上、好ましくはTm+38℃からTm+100℃までの温度範囲内で溶融混練する工程により熱履歴を与えることによって、結晶性を制御してもよい。
【0041】
〔重量平均分子量(Mw)〕
これらの重合方法によって得られたPGAの重量平均分子量(Mw)は、25,000〜800,000の範囲内であり、好ましくは50,000〜700,000、より好ましくは80,000〜600,000、さらに好ましくは120,000〜500,000、特に好ましくは150,000〜400,000の範囲内にあるものを選択する。
【0042】
〔融点(Tm)〕
本発明のドライフィルムレジストの支持フィルムに含有されるPGAの融点(Tm)は、197〜245℃であり、共重合成分の種類及び含有割合によって調整することができる。好ましくは200〜243℃、より好ましくは、205〜238℃、特に好ましくは210〜235℃である。PGAの単独重合体の融点は、通常220℃程度である。融点が低すぎると、機械的強度が不十分であったり、成形加工を行う場合の温度管理が難しくなる。融点が高すぎると、加工性が不足したり、フィルムの柔軟性が不足したりすることがある。また、融点が高すぎると、成形温度が高くなるので、PGAやその他の添加成分の熱分解や酸化が生じることがある。
【0043】
〔結晶化温度(TC1)〕
本発明のドライフィルムレジストの支持フィルムに含有されるPGAの結晶化温度(TC1)は、通例75〜100℃であり、好ましくは80〜97℃、より好ましくは85〜95℃、特に好ましくは88〜93℃である。PGAの結晶化温度(TC1)は、試料PGAを、50℃から10℃/分の昇温速度で約250℃まで加熱し、この温度で2分間保持した後、液体窒素により急速(約100℃/分)に冷却して得られた非晶試料を、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気中、−50℃から10℃/分の昇温速度で再加熱する過程で検出される結晶化による発熱ピークの温度を意味する。溶融結晶化温度(TC1)が高すぎると、本発明の支持フィルムの製造工程において、結晶化が早く始まってしまい、未延伸フィルムが得られず、その後の延伸操作等による機械的強度や表面性状の制御が行えなくなる。結晶化温度(TC1)が低すぎると、粗大なPGAの結晶が形成され、機械的強度が低下することがある。溶融結晶化温度(TC1)の調整は、PGAの分子量、重合成分の種類や量を適宜選択することなどにより行うことができる。固体状態のPGAを、その融点Tm+38℃以上、好ましくはTm+38℃からTm+100℃までの温度範囲内で溶融混練する工程により熱履歴を与えることによって、溶融結晶化温度(TC1)を制御することもできる。
【0044】
〔溶融粘度〕
本発明のドライフィルムレジストの支持フィルムに含有されるPGAの溶融粘度は、270℃の温度及び剪断速度122sec−1で測定して、100〜2,000Pa・sであることが好ましく、より好ましくは200〜1,500Pa・s、さらに好ましくは250〜1,000Pa・sである。270℃、122sec−1におけるPGAの溶融粘度が100Pa・sを下回る場合は、PGAの分子量が低く、使用中に分解しやすいおそれがある。また、溶融粘度が2,000Pa・sを上回る場合、ポリマー押出工程において、押出機への負荷や濾圧が高くなる問題が生じたり、他のポリマーを含有するフィルムとの共押出による積層が困難になるおそれがある。
【0045】
2.支持フィルム
本発明のドライフィルムレジストの支持フィルムは、式−(O・CH・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を70モル%以上有するPGAを含有するフィルム(以下、単に「PGAを含有するフィルム」ということがある。)を少なくとも1層備えることを特徴とする。
【0046】
したがって、本発明の支持フィルムとしては、該PGAを含有するフィルム単層であるドライフィルムレジスト用支持フィルムと、該PGAを含有するフィルム及び他のポリマーを備える積層フィルムであるドライフィルムレジスト用支持フィルムのいずれであってもよい。
【0047】
〔他の樹脂及び添加剤〕
該PGAを含有するフィルムには、本発明の目的を阻害しない範囲内において、PGAのほか、無機フィラー、他の熱可塑性樹脂、可塑剤などを配合することができる。
【0048】
例えば、ポリ乳酸(以下、「PLA」ということがある。)、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリβ−プロピオラクトン、ポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリグリコール類、変性ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリL−リジンなどのポリアミド類などの他の熱可塑性樹脂を必要に応じて配合することができる。生分解性などの分解性を調整する観点から、PLAを配合することが好ましい。
これらの含有量は、紫外線等の活性光線の透過を阻害せず、光透過性が保たれる範囲内であるので、PGAを含有するフィルムの全成分を100質量%とした際に、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0049】
また、PGAを含有するフィルムには、必要に応じて、熱安定剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、撥水剤、滑剤、離型剤、カップリング剤、酸素吸収剤などの通常配合される各種添加剤を含有させることができる。
【0050】
これらの含有量は、上述のように本発明の目的を阻害しない範囲内であり、特に、紫外線等の活性光線の透過を阻害せず、光透過性が保たれる範囲内であるので、具体的にはPGAを含有するフィルムの全成分を100質量%とした際に、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0051】
〔積層フィルムである支持フィルム〕
本発明のドライフィルムレジストにおける支持フィルムは、前記PGAを含有するフィルムと他のポリマーを含有するフィルムとの積層フィルムであってもよい。積層フィルムである支持フィルムは、PGAを含有するフィルムが、レジスト層と接触するように配置される。他のポリマーを含有するフィルムは、積層フィルムが光透過性を保つことができるものであれば制限はなく、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、アクリル系樹脂、ポリオレフィンなどを使用することができるが、他のポリマーとしては、脂肪族ポリエステルであるPLA及び芳香族ポリエステルであるポリエチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0052】
他のポリマーが、PLAである場合は、支持フィルム全体を分解性のものとすることができる。PLAとしては、L−乳酸及び/またはD−乳酸を主たる構成成分として重合されたPLAの外、乳酸以外の他のモノマー単位を含む共重合体でもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等のグリコール化合物;シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オン等のラクトン類;が挙げられる。
【0053】
他のポリマーが、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ということがある。)である場合は、支持フィルムの機械的強度が向上する。PETとしては、PETホモポリマーの外に、全ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸であり、全グリコール成分の80モル%以上がエチレングリコールである共重合体を使用することができる。すなわち、全酸成分の20モル%以下が、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバチン酸などの如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサン―1,4―ジカルボン酸の如き脂環族カルボン酸等であることができる。また、全グリコール成分の20モル%以下が、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール等のグリコール;ハイドロキノン、レゾルシン、2,2―ビス(4―ヒドロキシジフェニル)プロパン等の芳香族ジオール;1,4―ジヒドロキシメチルベンゼン等の芳香環を有する脂肪族ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール(ポリオキシアルキレングリコール)等であることもできる。PGAを含有するフィルムとの接着性、及び透明性の観点から、共重合体が好ましく用いられる。
【0054】
他のポリマーを含有するフィルムには、本発明の目的を阻害しない範囲内において、PGAのほか、無機フィラー、他の熱可塑性樹脂、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、撥水剤、滑剤、離型剤、カップリング剤、酸素吸収剤、顔料、染料などの通常配合される各種添加剤を配合することができる。
【0055】
PLA及びPETからなる群より選ばれる少なくとも1種である他のポリマーの含有量は、他のポリマーを含有するフィルムの全成分を100質量%としたときに、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0056】
先に述べたように、積層フィルムである支持フィルムは、PGAを含有するフィルムがレジスト層と接触するように配置されるので、他のポリマーを含有するフィルムが最表層に配置される場合は、該フィルム中に、平均粒径0.01〜3.0μmの無機または有機微粒子を配合することによって表面のすべり性、巻き取り性や耐傷性を改良することができる。
【0057】
〔支持フィルムの厚み〕
本発明のドライフィルムレジストの支持フィルムの厚みは、通例5〜50μm、好ましくは8〜45μm、より好ましくは10〜40μm、特に好ましくは12〜35μmの範囲である。支持フィルムの厚みが5μm未満ではフィルムが柔軟すぎて取扱いが不便であり、厚みが50μmを超えると基板の凹凸への追従性や解像度が低下するおそれがある。
【0058】
支持フィルムが、PGAを含有するフィルムと他のポリマーを含有するフィルムとの積層フィルムである場合は、PGAを含有するフィルムの厚みは、積層フィルム全体の厚みに対して、通例1〜95%、好ましくは5〜90%、より好ましくは10〜85%、特に好ましくは20〜80%、最も好ましくは30〜75%の範囲である。PGAを含有するフィルムの厚みの比率が1%未満であると、レジスト層との剥離が容易でなくなったり、解像度が低下したりするおそれがある。PGAを含有するフィルムの厚みの比率が95%を超えると、コストが増加する。
【0059】
〔支持フィルムの製造〕
本発明のドライフィルムレジストの支持フィルムである前記PGAを含有するフィルムは、前記PGAを溶融製膜し、所望により一軸または二軸延伸し、さらに熱処理することによって製膜される。これら各工程の方法、条件はそれ自体公知の方法、条件を採用することができる。例えば、スリット状のダイを備える押出成形機を使用して、PGAを融点Tm〜300℃の温度で溶融混練してシート状に押し出し、結晶化温度TC1より低い、通例5〜70℃、多くの場合10〜50℃の範囲内の表面温度に保持した冷却ドラムで急冷固化させて未延伸シートを形成し、この未延伸シートを、延伸温度を30〜70℃、好ましくは33〜68℃、より好ましくは35〜65℃の温度で、面積倍率で2〜100倍、好ましくは4〜60倍、より好ましくは6〜30倍で一軸延伸、または逐次若しくは同時二軸延伸を行い、その後、130〜210℃、好ましくは140〜200℃の温度で、緊張下または20%以下の弛緩下で熱処理する。延伸フィルムを製造するには、延伸ロールとテンター延伸機とを組み合わせた方式が採用されており、逐次二軸延伸を行う場合は、延伸ロールを用いて縦方向(MD)に一軸延伸した後、必要に応じて冷却または加熱処理を行った後に、テンター延伸機を用いて横方向(TD)に延伸することが好ましい。
【0060】
積層フィルムである支持フィルムを製造する方法としては、それぞれ溶融製膜して得た前記PGAを含有するフィルムと、その他のポリマーを含有するフィルムとを接着剤により接着する方法、共押出や押出ラミネーションにより積層フィルムを製造する方法など、公知の方法によって積層フィルムを製造することができるが、共押出により積層フィルムを得ることが好ましい。延伸処理を行った積層フィルムである支持フィルムを製造する場合は、あらかじめ積層フィルムを得た後に、一軸または二軸延伸処理及び熱処理をすることが好ましい。
【0061】
3.ドライフィルムレジスト
本発明のドライフィルムレジストは、PGAを含有するフィルムを少なくとも1層備える支持フィルム、及び、該支持フィルムの少なくとも片面にレジスト層を有し、さらに、所望により、該レジスト層の支持フィルム側の反対側に保護フィルムを有するものである。
【0062】
(1)レジスト層
本発明のドライフィルムレジストにおけるレジスト層は、可視光、紫外線等の活性光線によって硬化することができる感光性樹脂組成物であれば、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例えば、感光性プレポリマー(ベースポリマー)、エチレン性不飽和化合物、及び、光重合開始剤を含むものが用いられる。
【0063】
感光性プレポリマーとしては、好ましくはアクリル系モノマーに由来するエチレン性不飽和末端基を有するものが用いられる。ここでいうアクリル系モノマーは、アクリル酸またはメタクリル酸、またはこれらのアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル等の誘導体である。かかる感光性プレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート等のプレポリマーが挙げられ、中でもエポキシ(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートのプレポリマーが好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0064】
感光性樹脂組成物におけるエチレン性不飽和化合物は、感光性プレポリマー以外のものであり、感光性樹脂組成物の粘度を調整したり、感光性樹脂組成物を硬化物としたときの耐熱性、可撓性などの物性を調整する目的で使用される。該エチレン性不飽和化合物としては、好ましくはアクリル酸またはメタクリル酸のエステルを使用する。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルカルビトール(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはグリセロールジ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート;2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリレート;メタクリロキシエチルフォスフェート等のリン原子を有するメタクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジアクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリアクリレート;ビスフェノールAのエチレンオキシド4モル変性ジアクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド3モル変性トリアクリレート等の変性ポリオールポリアクリレート;イソシアヌル酸骨格を有するポリアクリレート;ポリエステルアクリレートなどが挙げられる。また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等もエチレン性不飽和化合物として好適に用いることができる。これらのうち好ましいものとしては、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びウレタンアクリレートである。
【0065】
感光性プレポリマーとエチレン性不飽和化合物との配合比は、質量比で95:5〜50:50、好ましくは90:10〜55:45、より好ましくは85:15〜58:42の範囲である。感光性プレポリマーの配合量が95質量%を超えると、感光性樹脂組成物から形成された硬化膜のはんだ耐熱性が低下することがある。感光性プレポリマーの配合量が50質量%未満になると感光性樹脂組成物のアルカリ可溶性が低下する傾向がある。
【0066】
本発明に用いられる光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;4―フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のアセトフェノン類、チオキサンテン、2−クロルチオキサンテン等のチオキサンテン類、エチルアントラキノン、ブチルアントラキノン等のアルキルアントラキノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類などを挙げることができる。これらは単独または2種以上の混合物として用いることができる。さらに必要に応じて光増感剤を併用することができる。
【0067】
これらの光重合開始剤のうちベンゾフェノン類、アセトフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類が好ましく。具体的には、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0068】
これらの光重合開始剤の配合量は、感光性プレポリマーとエチレン性不飽和基を有する化合物とからなる光硬化成分の合計100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましく、0.2質量部〜10質量部がより好ましい。光重合開始剤の配合量が0.1質量部未満であると硬化が不十分となることがある。
【0069】
本発明のドライフィルムレジストのレジスト層である感光性樹脂組成物には、必要に応じてその他の成分を含有させることができる。
【0070】
例えば、レジスト層に難燃性を付与するために、感光性樹脂組成物に難燃剤を加えてもよい。難燃剤としては、臭素化エポキシ化合物等のハロゲン化物系難燃剤、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の水和金属化合物、リン酸エステル化合物やポリリン酸アンモニウム等のリン系難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤等が挙げられる。
【0071】
また、感光性樹脂組成物には、粘度調節などのために必要に応じて有機溶媒を添加して使用してもよい。粘度を調節することによって、ナイフコーター、ブレードコーター、スリットオリフィスコーター、ローラーコーター、スピンコーター、スクリーンコーター、カーテンコーターなどで支持フィルム上に塗工しやすくなる。
【0072】
感光性樹脂組成物には、流動性の調整のため、さらに流動調整剤を添加することができる。流動調整剤は、例えば、感光性樹脂組成物をローラーコート、スピンコート、スクリーンコート、カーテンコートなどで支持フィルム上に塗布する場合などに、感光性樹脂組成物の流動性を適宜調節でき好ましい。流動調整剤としては、例えば、タルク、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の無機または有機充填剤、ワックス、界面活性剤等が挙げられる。
【0073】
感光性樹脂組成物には、さらに染料や顔料の着色剤を加えて使用することもできる。着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどが挙げられる。
【0074】
また、感光性樹脂組成物には必要に応じて、熱重合禁止剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤の添加剤を添加することができる。
【0075】
感光性樹脂組成物は、上記の各成分を通常の方法で混合することによって製造することができる。混合の方法には特に制限はなく、一部の成分を混合してから残りの成分を混合してもよく、または、すべての成分を一括で混合してもよい。上記した各成分を混合した後、混練若しくは凝集粒子を粉砕することが好ましく、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸または二軸の押出機、コニーダー、三本ロール、及びビーズミルなどの公知の混練機や粉砕機を用いることにより製造される。
【0076】
感光性樹脂組成物からなるレジスト層の厚みは、乾燥後厚みで、通例10〜100μmであり、好ましくは20〜90μm、より好ましくは30〜80μmである。
【0077】
(2)保護フィルム
本発明のドライフィルムレジストは、支持フィルム、及び、該支持フィルムの少なくとも片面にレジスト層を有するものであるが、該レジスト層を保護するために、レジスト層の支持フィルム側の反対側に保護フィルムを有するものであることが好ましい。
【0078】
保護フィルムは、プラスチックフィルム、または該プラスチックフィルムのレジスト層と接触する側に剥離層を設けたものを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム等を用いることができ、特に好ましいのはポリエステルフィルム及びポリプロピレンフィルムである。剥離層の構成成分としては、シリコーン化合物、ワックス系組成物などが挙げられ、特に好ましくはシリコーン化合物である。保護フィルムに剥離層を設ける方法としては、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0079】
保護フィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、5〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは12〜30μmの範囲である。保護フィルムの厚さが5μ未満では保護フィルムを剥離する際のハンドリングが困難となり、50μmを越える場合には、フィルムの腰が強いために、保護フィルムを剥離する際、レジスト層表面に傷を与えてしまうおそれがある。剥離層の厚みは0.005μm〜2μm、好ましくは0.01μm〜0.5μmであるのが望ましい。剥離層の厚みが0.005μm未満の場合には、スティックが発生しやすい傾向がある。剥離層の厚みが2μmを超える場合には、耐ブロッキング性が不十分となるおそれがある。
【0080】
(3)ドライフィルムレジストの製造方法
本発明のドライフィルムレジストは、PGAを含有するフィルムである支持フィルムに、レジスト層、及び所望により保護フィルム層を、常法により順次積層することで製造することができる。すなわち、本発明のドライフィルムレジストは、例えば、まず支持フィルム上に感光性樹脂組成物の溶液(有機溶剤等の溶媒を含む)を塗布し、加熱乾燥することにより溶媒を揮散除去してレジスト層を形成して製造する。次いで、所望により、レジスト層の上に保護フィルムを貼り合わせることにより、ドライフィルムレジストを得てもよい。このとき、保護フィルムに剥離層を塗布形成してあるときは、剥離層の側がレジスト層と接するように保護フィルムを貼り合わせる。ドライフィルムレジストは、巻き取ってロール状物とすることができる。ロール状物とするときは、支持フィルムが外側になるように巻き取ることが、その後の取り扱い性の点で好ましい。
【0081】
(4)回路基板の製造方法
ドライフィルムレジストによって、回路パターンの画像を形成させるには、該ドライフィルムレジストが保護フィルムを有する場合は、該保護フィルムを剥離し、レジスト層側を銅張基板やSUS、42アロイ等の金属面に貼り付けた後、支持フィルム上に所定のパターンが形成されているネガフィルム(フォトマスク)を密着させ、活性光線で露光して、レジスト層の感光性樹脂組成物を所定パターンに硬化させる。露光は、通常、波長193〜400nm程度の紫外線を照射することにより行い、その際の光源としては、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ等が用いられる。本発明において、支持フィルムが備えるPGAフィルムの紫外線透過率が短波長領域においても高いので、遠紫外光から近紫外光に当たる前記範囲の波長の活性光線を使用することができる。紫外線照射後は、必要に応じ加熱を行って、硬化の完全を図ることもできる。
【0082】
ネガフィルム(フォトマスク)を除去した後に、レジスト層の未硬化の感光性樹脂組成物を除去し、所定のパターンに硬化した感光性樹脂組成物を残す現像を行う。現像は、水酸化ナトリウム、炭酸ソーダ、炭酸カリウム等の0.5〜5質量%程度の弱アルカリ水溶液を用いて、レジスト層の未硬化の感光性樹脂組成物を除去し、銅箔等の金属層を露出させる。該アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0083】
弱アルカリ水溶液を用いる現像処理に先立って、ドライフィルムレジストの支持フィルムを剥離除去する工程を設けてもよい。しかし、本発明のドライフィルムレジストは、支持フィルムとして、アルカリ分解性のPGAを含有するフィルムを備えるので、支持フィルムを剥離除去する工程を省略し、弱アルカリ水溶液により、レジスト層の未硬化の感光性樹脂組成物とともに支持フィルムを除去することができる。
【0084】
続いてエッチングを行い、露出した銅箔等の金属を除去する。エッチングは、通常、塩化第二銅−塩酸水溶液や塩化第二鉄−塩酸水溶液などの酸性エッチング液を用いて常法に従ってエッチングを行う。アンモニア系のアルカリエッチング液を用いることもできる。
【0085】
次いで、強アルカリ水溶液によって硬化レジストを除去し、銅箔等の金属による所定パターンを形成し、必要に応じてめっき処理を行って、銅箔等の金属による所定パターンの回路を形成し、回路基板を得る。めっき法は、脱脂剤、ソフトエッチング剤などのめっき前処理剤を用いて前処理を行った後、めっき液を用いてめっきを行う。強アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの1〜10質量%程度の濃度のアルカリ水溶液を用いる。
【0086】
本発明のドライフィルムレジストは、印刷配線板の製造、リードフレーム製造のほか、金属の精密加工等にも有用である。
【実施例】
【0087】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0088】
〔参考例〕支持フィルム:PGA二軸延伸フィルムの製造
PGAとして、PGAホモポリマーを使用した。このPGAは、融点221℃、結晶化温度TC190℃、温度270℃及び剪断速度122sec−1で測定した溶融粘度が600Pa・sであり、熱安定剤として、旭電化株式会社製アデカスタブAX−71(リン酸モノステアリル50モル%とリン酸ジステアリル50モル%)を300ppmの割合で含有する。
【0089】
このPGA原料ぺレツトを、スクリュー径35mmの単軸押出機を用いて、樹脂温度が260〜270℃となるように加熱して溶融した。溶融物を、目開き100μmのフィルターを通して、長さ270mmで間隙0.75mmの直線状リップを有するTダイから押出し、表面を40℃に保った金属ドラム上にキャストすることにより冷却し、厚み200μmの未延伸シートを作製した。未延伸シートを60℃のシート温度に調整し、延伸ロールを用いて、延伸速度2m/分で、縦方向(MD)に、延伸倍率が6.0倍となるように一軸延伸した。一軸延伸フィルムを、表面温度が33℃となるように、スポットクーラー及び冷却ロールを用いて冷却した後、テンター延伸機に導入して、フィルム温度38℃で、延伸倍率が3.7倍となるように横方向(TD)に延伸し、直ちにテンター押出機内で該二軸延伸フィルムを乾熱雰囲気下に温度145℃で幅方向に5%の弛緩を与えて熱処理を施し、厚み15μmの逐次二軸延伸フィルムを作製した。
【0090】
(実施例1)
表1の組成を有する感光性樹脂組成物を調製し、参考例により製造したPGA二軸延伸フィルムに、バーコーターを用いて乾燥後厚みが50μmとなるように均一に塗布した後、60℃で24時間乾燥を行って、PGAフィルムとレジスト層を有するドライフィルムレジストを製造した。
【0091】
【表1】

【0092】
得られたドライフィルムレジストに、日本電池株式会社製紫外線照射装置を用いて、ランプ位置20cm、出力120W/cm、コンベア速度2m/minで、PGAフィルムの側から、波長385nmの紫外線を照射し、レジスト層の感光性樹脂組成物を硬化させた。
【0093】
レジスト層を硬化させたドライフィルムレジストについて、PGAフィルムとレジスト層との間の剥離強度測定を行った。測定は、オリエンテック社製テンシロンRTC−1210Aを用いて、JIS Z0237に準拠して、試料幅15mm、引張速度300mm/minで、PGAフィルムを引張側、硬化したレジスト層を固定側として90°剥離試験を行った。結果を表2に示す。なお、剥離したPGAフィルムには、硬化したレジスト層の付着はまったくみられなかった。
【0094】
(比較例1)
支持フィルムとして、厚み15μmのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)二軸延伸フィルム(東レ株式会社製、ルミラーP60)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ドライフィルムレジストを製造し、90°剥離試験を行った。結果を表2に示す。なお、剥離したPETフィルムには、硬化したレジスト層が部分的に付着していることがあった。
【0095】
【表2】

【0096】
表2から、本発明のドライフィルムレジストは、硬化したレジスト層から、支持フィルムであるPGAフィルムを剥離する力が小さくて済むことが分かる。これに対して、従来、ドライフィルムレジストにおける支持フィルムとして汎用されてきたPETフィルムを支持フィルムとした比較例1のドライフィルムレジストでは、硬化したレジスト層から、支持フィルムを剥離するために大きな力が必要とされることが分かる。
【0097】
〔実験例1〕アルカリ分解性評価
水酸化ナトリウム濃度2質量%、5質量%、10質量%のアルカリ水溶液を調製し、該アルカリ水溶液100mlを三角フラスコに入れ、ウォーターバスを用いて、マグネチックスターラーで撹拌しながら、50℃または60℃に加熱した。この三角フラスコの中に、参考例で製造したPGAフィルム、比較例1で使用したPETフィルム、及び、実施例1で製造したドライフィルムレジストに紫外線を照射してレジスト層を硬化させた後に、PGAフィルムを剥離し、硬化したレジスト層から、それぞれ4cm×4cmに切り出した試料を、それぞれ浸漬した。目視により各試料が完全に消失するまでの時間を、完全分解までの時間として測定した。結果を表3に示す。
【0098】
【表3】

【0099】
表3から、ドライフィルムレジストに用いる本発明のPGAを含有するフィルムは、アルカリ水溶液によって短時間で消失することが分かる。これに対して、従来、ドライフィルムレジストにおける支持フィルムとして汎用されてきたPETフィルムは、アルカリ水溶液によって実質的に除去不可能であることが分かる。
【0100】
また、本実験例1におけるアルカリ条件では、硬化したレジスト層は実質的に除去されることがないので、回路基板の製造においては、露光後に、未硬化のレジスト層をアルカリ水溶液で除去する現像を行うに際して、支持フィルムを剥がす工程の省略が可能であるので、回路基板等の製造効率を向上させ、製造コストを低減できることが分かる。
【0101】
〔実験例2〕紫外線透過率試験
参考例で製造したPGAフィルム及び比較例1で使用したPETフィルムについて、島津製作所製の分光光度計UV2450を使用して、波長が異なる紫外線の透過率を波長毎に測定した。結果を表4に示す。
【0102】
【表4】

【0103】
表4から、ドライフィルムレジストに用いる本発明のPGAを含有するフィルムは、従来、ドライフィルムレジストにおける支持フィルムとして汎用されてきたPETフィルムと比較して紫外線透過率が高く、より小さな照射エネルギーによりレジスト層を硬化させることができるので、回路基板等の製造効率を向上させ、製造コストを低減できることが分かる。また、本発明のPGAを含有するフィルムは、特に、PETフィルムでは透過しない波長300μm以下のより短波長領域の紫外線に対する透過率が高いことが分かる。したがって、本発明のドライフィルムレジストを使用すれば、より短波長の紫外線を照射してレジスト層を硬化させることができるため、より詳細な回路パターンを設けることができ、プリント配線板の回路の微細化、液晶ディスプレイ配線への応用展開、さらには半導体の直接実装等などの高解像度化の要求に応えられる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の支持フィルム、レジスト層、及び、所望により保護フィルムを有するドライフィルムレジストは、支持フィルムが、式−(O・CH・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を70モル%以上有するポリグリコール酸を含有するフィルムを備えることによって、より効率よく低コストで回路基板を製造でき、さらに高解像度化の要求にも応えられるドライフィルムが提供されるので、産業上の利用性が高い。また、支持フィルムを分解性のものとすることができるので、環境負荷が小さく、産業上の利用性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルム、及び、該支持フィルムの少なくとも片面にレジスト層を有するドライフィルムレジストであって、支持フィルムが、式−(O・CH・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を70モル%以上有するポリグリコール酸を含有するフィルムを少なくとも1層備えることを特徴とする前記のドライフィルムレジスト。
【請求項2】
前記レジスト層の支持フィルム側の反対側に保護フィルムを有する請求項1に記載のドライフィルムレジスト。
【請求項3】
前記支持フィルムが、式−(O・CH・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を70モル%以上有するポリグリコール酸に加えて、ポリ乳酸を含有する請求項1または2に記載のドライフィルムレジスト。
【請求項4】
前記支持フィルムが、式−(O・CH・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を70モル%以上有するポリグリコール酸を含有するフィルム、及び、他のポリマーを含有するフィルムを備える積層フィルムである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のドライフィルムレジスト。
【請求項5】
前記他のポリマーが、ポリ乳酸及びポリエチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載のドライフィルムレジスト。
【請求項6】
式−(O・CH・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を70モル%以上有するポリグリコール酸を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のドライフィルムレジスト用支持フィルム。
【請求項7】
式−(O・CH・CO)−で表わされるグリコール酸繰り返し単位を70モル%以上有するポリグリコール酸を含有するフィルム、及び、他のポリマーを含有するフィルムを備える積層フィルムである請求項4または5に記載のドライフィルムレジスト用支持フィルム。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のドライフィルムレジストを使用する回路基板の製造方法。

【公開番号】特開2012−103494(P2012−103494A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252107(P2010−252107)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】