説明

ドラム式洗濯機

【課題】脱水工程終了後の衣類の取り出しを容易にする。
【解決手段】脱水工程中に、回転ドラム5内に張り付いて回転する衣類の偏荷重量と位置をアンバラ検知手段18で検知し、制御手段17は、前記アンバラ検知手段18の出力により、脱水工程終了後、偏荷重位置が略上方となる位置で前記回転ドラム5を停止させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯・脱水と乾燥を同一回転ドラム内で行うドラム式の洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドラム式洗濯機では、洗浄工程で、洗剤と水を入れた回転するドラムの中に衣類を投入し、ドラムを比較的低速回転(衣類が遠心力によりドラムが上方位置ではドラム内壁に張り付かない回転速度)で正転や反転を所定時間繰り返すことによって、衣類をドラム内で回転と落下繰り返し(以後タンブリングという)衣類をドラム内壁に繰り返したたきつけて洗浄を行っている。
【0003】
洗浄工程を終了すると、洗浄水を排水し、きれいな水をドラム内に注入し、ドラムを洗濯工程と同様に回転させ、衣類から洗剤成分や汚れを取り除いてゆく。すすぎの時間短縮や性能を向上させるため、すすぎの途中でドラムを高速回転(衣類がドラムのどの位置でも遠心力でドラムの内壁に張り付くとともに、衣類の水分を分離し衣類から脱水が可能な回転速度)を行うことも考えられている。
【0004】
すすぎが終了しすると、すすぎ水は排水され、ドラムを高速回転させ、衣類の水分を遠心力でドラム外に分離させる脱水工程を行うようになっている。洗濯のみを行い、吊り干しを行うときは脱水工程が終了した時点で、ドラムから衣類を取り出し、物干し等に吊り下げて乾燥を行うことになる。
【0005】
また、ドラム式洗濯機には乾燥機能のついたものもあり、ドラム内に衣類を入れたままの状態で連続して乾燥工程を行うことができるものである。この場合、脱水工程終了後、洗濯工程と同様に比較的低速回転でドラムを正転、逆転方向に回転させ、さらにドラム内に乾燥空気を循環させてドラム内の衣類から水分を蒸発させて奪い取り、本体の外や、蒸発した水分を再凝縮させ、排水することにより、ドラム内の衣類を乾燥させるようになっているのが一般的である。
【0006】
しかしながら、このようなドラム式洗濯乾燥機では、脱水工程終了後、衣類が遠心力でドラムの内壁に張り付いた状態で停止するため、ドラムから衣類を取り出す際に衣類を引き剥がすように取り出す必要があり、ドラムから衣類を取り出しにくいものであった。また、このような状態で、脱水した衣類を吊り下げて干す場合、衣類に脱水よるしわがきつくついているため、いちいちシワを伸ばして干さなければならない煩わしさがある。
【0007】
さらに、乾燥工程まで自動で行うように設定した場合、脱水工程終了時点で衣類がドラム内壁に張り付いた状態となっており、この状態で乾燥工程に入ることになる。このため、乾燥工程に入ってしばらくは衣類が張り付いた状態でドラムを回転し、乾燥空気がドラム内の中央空間を通過してゆくのみである。このため、衣類の内部を乾燥空気が通過しにくく、衣類の乾燥が進行せず、乾燥終了までの時間が長くかかり、乾燥に要する消費電力もその分多くなる。そのため、回転するドラム内に揺動する撹拌翼を設け、張り付いた衣類を撹拌翼で掻き落とす構成のものが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平3−51080号公報
【特許文献2】特開平3−121094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来のドラム式洗濯機やドラム式洗濯乾燥機では、遠心力により脱水を行うため、脱水工程終了時点でドラム内壁に衣類がかなりの力で張りついたままで停止する。このため、ドラムから衣類を取り出す際に衣類を一枚づつ引き剥がすように取り出す必要があり、非常に取り出しにくいものとなっていた。
【0009】
また、このような状態で、脱水した衣類を吊り下げて干す場合、衣類に脱水でできたしわがかなりきつくついているため、いちいちシワを伸ばして干さなければならないという煩わしさがあった。
【0010】
また、脱水工程後、自動的に乾燥工程に移行する場合、回転ドラムの高速回転により衣類が回転ドラム内壁に張り付いた状態で乾燥工程に入る事になる。このような状態で乾燥が行われた場合、衣類が固まった状態で回転ドラム内壁に張り付いたままで、乾燥空気が回転ドラム内に入ってきても衣類の中まで乾燥空気が通過しにくく、表面部からの蒸発しか進行しない。このため、衣類の乾燥時間が大幅に長くなるとともに、乾燥効率も悪いため、消費電力が多くなっていた。
【0011】
これらの課題を解決するには、脱水工程で回転ドラム内壁に張り付いた衣類を即座にはがし、衣類の取り出しを楽にし、手でシワを伸ばすことをしなくても衣類がほぐれた状態とすることで、シワを伸ばすことが可能となる。また、乾燥工程では回転ドラムの回転により衣類をタンブリングさせて、乾燥空気が衣類に満遍なく当たるようにすることが必要となる。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、脱水工程で生じた衣類の張り付きをすぐにはがし、乾燥時に衣類がよく動く状態を作り、乾燥効率高め、短時間でしかも少ない消費電力で乾燥できるようにしたドラム式洗濯機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来の課題を解決するために、本発明のドラム式洗濯機は、本体内に支持された水槽と、前記水槽内に駆動装置により回転自在に設けられた円筒状の回転ドラムと、前記回転ドラム内に収容された洗濯物を洗濯、脱水、乾燥する工程を制御する制御手段と、脱水工程中に、前記回転ドラム内に張り付いて回転する衣類の偏荷重量と位置を検知するアンバラ検知手段とを備え、前記制御手段は、前記アンバラ検知手段の出力により、脱水工程終了後、偏荷重位置が略上方となる位置で前記回転ドラムを停止させるようにしたものである。
【0014】
これにより、脱水回転中にアンバランスの位置を検知し、回転ドラムの回転をアンバランスがほぼ上方で停止させることにより、衣類の重量が多い場所が回転ドラムの上方となるため、重力により衣類が落下しやすくなり、撹拌翼等の別掻き落としの手段を用いなくても衣類のはがしができるものである。したがって、脱水工程終了後は衣類の取り出しが楽で、乾燥を行うものは、乾燥時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のドラム式洗濯機は、脱水工程終了後の衣類の取り出しを容易にし、続けて乾燥を行う場合は効率よく乾燥させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
第1の発明は、本体内に支持された水槽と、前記水槽内に駆動装置により回転自在に設けられた円筒状の回転ドラムと、前記回転ドラム内に収容された洗濯物を洗濯、脱水、乾燥する工程を制御する制御手段と、脱水工程中に、前記回転ドラム内に張り付いて回転する衣類の偏荷重量と位置を検知するアンバラ検知手段とを備え、前記制御手段は、前記アンバラ検知手段の出力により、脱水工程終了後、偏荷重位置が略上方となる位置で前記回転ドラムを停止させるようにしている。これにより、脱水回転中にアンバランスの位置を検知し、回転ドラムの回転をアンバランスがほぼ上方で停止させることにより、衣類の重量が多い場所が回転ドラムの上方となるため、重力により衣類が落下しやすくなり、撹拌翼等の別掻き落としの手段を用いなくても衣類のはがしが、脱水工程終了時は衣類の取り出しが楽で、乾燥を行うものは、乾燥時間が長くなるようなことはなくなるものである。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明の制御手段は、回転ドラム内に張り付いている衣類の偏荷重が複数箇所ある場合、脱水工程終了後、最大偏荷重位置が略上方となる位置で前記回転ドラムを停止させるようにしたことにより、一番重量の大きい場所を上方に位置させることにより、より確実に衣類を落下させ、回転ドラムに張り付いた衣類をはがすことができるものである。
【0018】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の制御手段は、脱水工程終了後、回転ドラムを揺動させるよう駆動装置を制御することにより、衣類の重量に加え、回転ドラムの振動が加わるため、より確実に衣類がはがれやすくなるものである。
【0019】
第4の発明は、特に、第3の発明の制御手段は、回転ドラムの揺動角が180度以下となるよう駆動装置を制御することにより、衣類の偏荷重位置が確実に回転ドラムの内壁からはがれることができる位置に留まることのできる最大の振動をうることができるため、より確実に衣類をはがすことができるものである。
【0020】
第5の発明は、特に、第3または第4の発明の制御手段は、回転ドラム内に張り付いている衣類の偏荷重が、少ないほど、揺動角と最大揺動速度は大きく、揺動時間は長くなるよう少なくとも1つを制御することにより、衣類の偏荷重の状態により、重力によるはがし力が少ない場合は、揺動によるはがし力を増し、より確実に、しかも無駄なく衣類をはがすことができるものである。
【0021】
第6の発明は、特に、第3または第4の発明の制御手段は、外部からの手動設定、あるいはプログラミングによる自動設定された回転ドラムの脱水回転数が高いほど、または回転時間が長いほど揺動角と最大揺動速度を大きく、あるいは揺動時間は長くなるよう少なくとも1つを制御することにより、衣類の偏荷重の状態により、重力によるはがし力が少ない場合は、揺動角と最大揺動速度は大きく、あるいは揺動時間が長くすることにより、はがし力を増し、より確実に、しかも無駄なく衣類をはがすことができるものである。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるドラム式洗濯機の縦断面を簡略化した図である。図1に示すように、ドラム式洗濯機の本体1の内部には、複数の弾性体2によって支持された円筒状の水槽3を設け、洗濯・脱水時の振動を吸収する構成となっている。水槽3の内部には、衣類など洗濯または乾燥の対象となる衣類4を収容する円筒状の回転ドラム5が駆動装置としての駆動モータ6により回転されるよう構成され、回転ドラム5の周壁には多数の小孔5aが設けられている。
【0023】
本体1の前面には衣類4を出し入れする開口部1aと、これを開閉する扉7が設けられている。この水槽3の開口部3aはベローズ8によって本体1の開口部1aと水密に連結されている。水槽3の底部には洗濯水を排出する排水口9を有し、排水弁10を介して排水ホース11に連結され、その先端部は機外に導出されている。
【0024】
また、乾燥機能を備えたドラム式洗濯乾燥機の場合、乾燥空気を回転ドラム5内に送風する送風手段12と循環風路13が設けられ、循環風路13の途中には、衣類から奪った水蒸気を再度水に戻して外部に排水する除湿手段14および除湿した空気を再加熱し乾燥空気とする加熱手段15が設けられている。
【0025】
回転ドラム5を駆動させる駆動モータ6には回転ドラム5の位置と関連性を持たせた駆動モータのロータ6aの回転位置を検出する回転位置検知手段6bが設けられている。また、図2に示すように、駆動モータ6のトルクの大きさを電流等で検知するトルク検知手段16が本体全体の制御を行う制御手段17の内部に設けられ、回転位置検知手段6bとトルク検知手段16により、アンバランスの位置を算出するアンバラ検知手段18も制御手段17に組み込まれている。
【0026】
上記構成において、洗濯工程やすすぎ工程が終了し脱水工程に入ると、制御手段17に組み込まれたアンバラ検知手段18により回転ドラム5内の衣類4の偏荷重によるアンバランスを算出する。それはたとえば、駆動モータ6にかかるトルクの周期的な変動をトルク検知手段16で測定し、そのときの回転ドラム5の位置関係を回転位置検知手段6bにより検知することにより、衣類4のアンバランス位置を決定するように構成している。
【0027】
この方法は、トルク検知手段16でトルクや電流値を測定する方法だけでなく、実際の振動を測定し、駆動モータ6との位置関係を算出しても同様である。また、駆動モータ6の回転軸19のたわみを測定しても可能である。
【0028】
図3(a)に示すように、衣類4のアンバランス位置を検出し、脱水終了時に衣類4の最大アンバランス位置がほぼ上方に来るように回転ドラム5を停止させる。このことにより、回転ドラム5の上方にある衣類4aはほかの付着部分の衣類4bよりも重いため、下方に垂れ下がり、回転ドラム5内壁面からはがれやすい状態となる。一旦衣類がはがれると、周囲につながっている衣類もその重量により連鎖的に回転ドラム5内壁面からはがれて落下し、図3(b)に示すように衣類4がばらばらの状態で回転ドラム5の下方に溜まる。そのため、衣類4は比較的ばらばらの状態となり、からみつきが少なく外へ衣類を取り出しやすくなる。
【0029】
また、この状態で、乾燥工程に入った場合、衣類4は回転ドラム5内壁からはがれて状態にあるため、所定の回転数でタンブリングし、一旦回転ドラム5の最上部付近まで行き、そこから回転ドラム5の下方に落下する。そのため、回転ドラム5内を通過する乾燥空気が衣類4に当たり、衣類4広がった状態で乾燥空気と接触できるため、衣類4から早く水分を奪うことができ、乾燥性能を向上させることができる。
【0030】
また、脱水による回転では、衣類4の偏荷重位置は一箇所になるとは限らない。そのため、アンバランス位置の中で最大の偏荷重となった位置を回転ドラム5が停止した時に、ほぼ上方となるようにしている。このことにより、常に衣類4による偏荷重がもっとも大きく、大きな重力となり、衣類4がもっともはがれやすくなるものである。
【0031】
(実施の形態2)
次に、図4に基づいて実施の形態2におけるドラム式洗濯機について説明する。脱水工程終了後、回転ドラム5内壁に張り付いた衣類4は偏荷重位置がほぼ上方となるように停止する。この状態で重力により、衣類4が剥がれ落ちると問題ないが、剥がれ落ちない場合も考えられる。そのため、脱水工程が終了し回転ドラム5が停止後、回転ドラム5を揺動させるように駆動モータ6を制御する。このことにより、衣類4の偏荷重による重力と、揺動による慣性力で衣類4がよりはがれやすくなる。
【0032】
さらに、上述した揺動角を180度以下に制御することにより、衣類4の偏荷重位置4aが、図4に示すDおよびEの位置の間で揺動することになる。そのため、偏荷重による重力が常に回転ドラム5内壁からはがれる方向(重力方向)に働き、より確実に衣類4をはがすことができるものである。
【0033】
さらに、回転ドラム5内壁に張り付いている衣類4の偏荷重が、少ないほど、揺動角と最大揺動速度は大きく、揺動時間は長くなるよう少なくとも一つを制御することにより、衣類4の偏荷重が少ない場合は、重力によるはがし力が少ないため、揺動によるはがし力を増すことができ、より確実に、しかも無駄なく衣類4をはがすことができる。
【0034】
また、外部からの手動設定、あるいはプログラミングによる自動設定された回転ドラム5の脱水回転数が高いほど、または回転時間が長いほど衣類4の回転ドラム5内壁への張りつき力が大きいため、揺動角と最大揺動速度は大きく、あるいは揺動時間が長くなるよう少なくとも1つを制御することにより、衣類4を確実に引き剥がすことができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明にかかるドラム式洗濯機は、脱水工程終了後の衣類の取り出しを容易にし、続けて乾燥を行う場合は効率よく乾燥させることができるので、家庭用のドラム式洗濯機およびドラム式洗濯乾燥機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯乾燥機の縦断面の簡略図
【図2】同ドラム式洗濯乾燥機のブロック構成図
【図3】(a)(b)同ドラム式洗濯乾燥機の動作説明図
【図4】本発明の実施の形態2におけるドラム式洗濯乾燥機の動作説明図
【符号の説明】
【0037】
1 本体
3 水槽
5 回転ドラム
6 駆動モータ(駆動装置)
6b 回転位置検知手段
17 制御手段
18 アンバラ検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に支持された水槽と、前記水槽内に駆動装置により回転自在に設けられた円筒状の回転ドラムと、前記回転ドラム内に収容された洗濯物を洗濯、脱水、乾燥する工程を制御する制御手段と、脱水工程中に、前記回転ドラム内に張り付いて回転する衣類の偏荷重量と位置を検知するアンバラ検知手段とを備え、前記制御手段は、前記アンバラ検知手段の出力により、脱水工程終了後、偏荷重位置が略上方となる位置で前記回転ドラムを停止させるようにしたドラム式洗濯機。
【請求項2】
制御手段は、回転ドラム内に張り付いている衣類の偏荷重が複数箇所ある場合、脱水工程終了後、最大偏荷重位置が略上方となる位置で前記回転ドラムを停止させるようにした請求項1記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
制御手段は、脱水工程終了後、回転ドラムを揺動させるよう駆動装置を制御する請求項1または2記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
制御手段は、回転ドラムの揺動角が180度以下となるよう駆動装置を制御する請求項3記載のドラム式洗濯機。
【請求項5】
制御手段は、回転ドラム内に張り付いている衣類の偏荷重が、少ないほど、揺動角と最大揺動速度は大きく、揺動時間は長くなるよう少なくとも1つを制御する請求項3または4記載のドラム式洗濯機。
【請求項6】
制御手段は、外部からの手動設定、あるいはプログラミングによる自動設定された回転ドラムの脱水回転数が高いほど、または回転時間が長いほど揺動角と最大揺動速度を大きく、あるいは揺動時間は長くなるよう少なくとも1つを制御する請求項3または4記載のドラム式洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−220449(P2008−220449A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59453(P2007−59453)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】