説明

ドリル研磨機

【課題】砥石周辺に配置した複数の治具を用いて順次研磨工程を実行してドリルの研摩を行うドリル研磨機において、前記治具の取り付けの自由度を増し、作業性の向上、研摩工程の増加を図ることである。
【解決手段】駆動装置13と、その駆動装置13によって回転駆動される砥石25と、前記駆動装置13を支持するベースと、前記ベース上に取り付けられた研磨工程ごとの複数の治具とからなるドリル研磨機において、前記砥石25の回転軸が前記ベースに対して垂直な縦軸型であり、前記ベースと砥石25の間に該砥石25の回転面と平行なステージ15が前記ベース12と一体に設けられ、該ステージ15にドリルセット治具32等の複数の治具が取り付けられた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドリル研磨機に関し、特に車両のボディパネルのスポット溶接部を穴明けすることによって、母材に穴を明けずにその溶接部を取り除く場合に用いられるドリルの研磨に適したドリル研磨機に関する。
【背景技術】
【0002】
スポット溶接部を取り除く場合に用いられるドリルの研磨機に関し、駆動装置と、その駆動装置によって回転駆動される砥石と、前記駆動装置を支持するベースと、前記砥石の外周面に沿って前記ベース上に配置された研磨工程ごとの複数の治具とからなり、前記複数の治具に順次研磨対象であるドリルを挿入して研磨工程を実行するようにしたドリル研磨機は従来から知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
前記従来のドリル研磨機は、ベース上に設置された駆動装置の駆動軸及びこれに連結された砥石の回転軸がベースに平行な横軸型であり、砥石が垂直面内で回転するようになっている。また、前記の研磨工程を実行するために設けられる治具としては、ドリルセット治具(特許文献1では「ドリル調整ピース2」、以下かっこ内同じ)、切刃研磨治具(ドリル研磨台3)、シンニング治具(ドリルシンニング台4)がベースに固定され、各治具を用いて順にドリルセット工程、切刃研磨工程及びシンニング工程を実行できようになっている。研磨対象であるドリルはドリルセット工程においてドリルホルダーに対し所定の位置決め状態にセットされ、そのセット状態を保持したまま以後の研磨工程が実行される。
【特許文献1】再公表特許 WO99/28082
【特許文献2】実開平7−15247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来のドリル研磨機において、切刃研磨工程とシンニング工程は、いずれもドリルの先端部を砥石の外周面に当てて研磨する工程であるから、これらの工程を実行する切刃研磨治具とシンニング治具は砥石の周辺に設置することが必要である。
【0005】
しかし、従来のドリル研磨機は前述のように横軸型であり、砥石は水平に設置されたベースに対して垂直面内で作業者側に向けて回転するため、前記各治具を固定するに適したベース上のスペースは砥石の外周面に接近した位置で、しかも作業者に近い部分に限定される。従って、各治具相互の平面的な配置は極めて接近した窮屈なものとならざるを得ない。また、各治具の先端部を砥石の外周に沿って一定の間隔を保ちながらその外周面に接近した位置に臨むような構造とする必要があるため、特にシンニング治具の形状が複雑なものになる問題もある。
【0006】
作業者の位置と反対側のベース部分の砥石外周面に接近した部分にも一応のスペースはあるが、作業者から離れた位置となるので、そのようなスペースに治具を取り付けたとしても作業性を低下させる問題がある。
【0007】
前記のように、従来の場合は治具の取り付け位置に制限があったため、ドリルセット治具は砥石から離れたベース上に配置され、砥石の周辺に配置される治具は2種類(切刃研磨治具とシンニング治具)に限られ、それ以外の治具(例えば、面取り治具)を砥石周辺に取り付けることは不可能であるか、できたとしても作業性の阻害要因となるものであった。
【0008】
そこで、この発明においては、砥石周辺における治具の取り付けの自由度を高めることにより、砥石周辺に配置される治具の数を増やし、研磨工程を増加できるようにすることを第一の課題とする。
【0009】
一方、前記砥石の外周面にドリルの先端部を接触させて研磨する場合、回転方向に対し進み角をもつように傾斜させて研磨することを「逆方向研磨」と呼び、反対に回転方向に対し遅れ角をもつように傾斜させて研磨することを「順方向研磨」と呼ぶこととした場合、前掲の特許文献1、2の場合、その他一般の研磨においては、逆方向研磨が行われている。これは、逆方向研磨が順方向研磨より研磨能率が高いこと、砥石から受ける研磨時のトルクを作業者の手元に設置した支持台によって受ける構造が取り易いこと等の理由による。
【0010】
しかし、逆方向研磨の場合は大きな研磨抵抗が砥石の研磨面に作用するため高温発熱によって研磨面が溶融する問題がある。また、研磨仕上げ面が粗く、作業者側に研磨粉が飛散する等の問題もある。
【0011】
そこで、この発明においては、ドリルの研磨においては研磨量が相対的に少なく、研磨時の摩擦も比較的小さいことから順方向研磨を採用し、高温発熱を避け、滑らかな研磨面が得られ、研磨粉の処理も容易なドリル研磨機を提供することを第二の課題とする。
【0012】
さらに、切刃の研磨によって、その逃げ面の外周縁が鋭利となって欠け易くなるのを防ぐため、一般に研磨終了後に逃げ面外周縁に面取りが施されるが、前記特許文献には面取りに関する記載はない。ドリルの切刃逃げ面の外周縁の高さは回転方向に見て、その高さがドリル中心線の方向に変化していること、また、外周縁のいわゆるマージンの部分にも面取りを施すと、マージン部分の切刃には逃げ角が喪失するため不都合があるので、これを避けるように面取りを施す必要があること等によって、面取り工程を実施する面取り治具の構造は一般に複雑な構成とならざるを得ない。
【0013】
そこで、この発明においては、面取り工程を実施する際に使用される面取り治具の構造を簡単なものとし、しかも、マージン部分においては所要の逃げ面が形成できるようにすることを第三の課題とする。
【0014】
その他、従来の場合は、ドリルホルダーが2部品からなり、ドリルセット工程が複雑であること、シンニング治具においてシンニング研磨するための揺動構造が必要であり構造が複雑であることにかんがみ、これらの構造を簡単にすることをその他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の第一の課題を解決するために、この発明は、駆動装置13と、その駆動装置13によって回転駆動される砥石25と、前記駆動装置13を支持するベース12と、前記ベース12上に取り付けられた複数の治具とからなり、前記複数の治具を用いて順次ドリルの研磨工程を実行できるようにしたドリル研磨機において、前記砥石25の回転軸14が前記ベース12に対して垂直な縦軸型であり、前記ベース12と砥石25の間に該砥石25の回転面と平行なステージ15が前記ベース12と一体に設けられ、該ステージ15に前記複数の治具が取り付けられた構成とした。
【0016】
前記構成によると、砥石25の回転面が水平であり、その回転面と平行のステージ15が砥石25に接近して設けられるので、そのステージ15に周方向に所要の間隔を保ちながら、従来の場合より多い数の治具を自由度の高い配置で取り付けることができる。
【0017】
前記治具としては、ステージ15に配置される切刃研磨治具33、シンニング治具34及び面取り治具35がある。また研磨対象であるドリル45をドリルホルダー39にセットするドリルセット治具32はステージ15、ベース12又はベースカバー18のいずれかに取り付けることができる。
【0018】
前記の第二の課題を解決するために、この発明においては、前記の切刃研磨治具33、シンニング治具34及び面取り治具45の各位置決めリングの中心線の平面視における砥石中心線に対する傾斜角が該砥石25の回転方向Rに対して遅れ角(−φ)をもち、前記各治具に挿入されたドリル45が前記砥石25に接触して順方向研磨を受けるようにした構成とした。
【0019】
さらに、前記第三の課題を解決するために、この発明においては、前記面取り治具35として、前記ステージ15に固定された治具台座83と、その治具台座83に設けられた位置決めリング84と、位置決め部材85とからなり、前記位置決め部材85は前記ドリル45の径に適合した大きさの規制穴86を有し、前記位置決めリング84の中心線が前記砥石25の面取り研磨部48に対して所定の面取り角α10を持ち、前記規制穴86から前記面取り研磨部48までの距離が一定距離nに設定され、前記位置決めリング84の外端面に前記中心線A回りに所定の間隔を持った研磨範囲規制凹部88が設けられ、該規制凹部88によって前記ドリル45の逃げ面53の外周縁のうち面取り範囲chがねじれ溝54側から切刃52’近傍に至る範囲に規制され、かつ面取り範囲chの終端点bが鉛直な中心線R上にある構成とした。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、この発明によれば、砥石25の回転軸14が縦軸型であることから、ベース12以外にベース12と一体のステージ15を砥石25の回転面と平行に設置することができ、そのステージ15を利用して砥石25の周りに高い自由度で、かつ従来の場合より多くの治具を設置することができる。これにより、ドリル研磨の作業性の向上が図れることは勿論、研磨工程が増えることによりきめ細かい研磨ができる効果がある。
【0021】
また、前記の砥石25によってドリル45に順方向研磨が施されるので、研磨面の異常発熱が防止され、研磨粉の捕集が容易であるとともに、研磨の仕上がり面が滑らかである効果がある。
【0022】
さらに、面取り治具は、規制穴86から面取り研磨部48までの距離が一定値nに設定された構成を採用し、また、中心線Aの回りの回転を規制する研磨範囲規制凹部88によって、面取り範囲chの終端点bが鉛直な中心線R上にある構成を採用したことにより、面取り治具の構成が簡単となり、またマージン部分の切刃52’に逃げ面53’が形成されるので、該切刃52’の切れ味を損なうことがない。
【0023】
その他、ドリルホルダー39がスリーブ状の単一部品で構成されること、シンニング軸34に可動部が不要であって、構造が簡単である等の効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0025】
<構成の説明>
図1及び図2に示したように、実施例のドリル研磨機は、作業台11上に水平に設置されるベース12に、駆動装置13(図示の場合はモータ)がその回転軸14を垂直に向けた縦軸型式に設置される。また、前記駆動装置の上端面において、回転軸14の軸受部を貫通させたステージ15が配置され、前記ベース12とステージ15は、駆動装置13のケーシングに貫通された複数本の連結ボルト16とナット17等によって駆動装置13を上下から挟んで締結固定される。また、前記ベース12の周りと駆動装置13の下半分弱の範囲を囲むベースカバー18が、そのボス部20にベース12側からねじ込んだ固定ネジ20’により取り付けられる。ベースカバー18の内部に電源用配線、電源用コンデンサ等が収納され、またその外周面に電源スイッチ19が取り付けられる。
【0026】
ステージ15のベース12に対する一体化手段としては、前記構成の限られず、ベース12に固定した駆動装置13のケーシングの上端面にステージ15を直接固定した構成、図示のベースカバー18を上方に延長するとともに、その上端面が駆動装置13の上端面をカバーするように形成して、該上端面をステージ15とする構成をとることができる。
【0027】
前記回転軸14の段差部21に受板22が嵌合され、その受板22上において回転軸14に芯出しリング23が嵌合される。その芯出しリング23から上方に突き出した回転軸14のネジ部にナット24がねじ込まれ、前記芯出しリング23とともに砥石受板22が前記段差部21に締め付け固定される。砥石25は前記芯出しリング23の周りに嵌合され、ビス26によって受板22に固定される。前記の挿通穴29の周りにおいて、段差部21までの範囲をカバーする円錐形のシールカバー31が取り付けられる(図2参照)。
【0028】
砥石25は垂直方向に設けた回転軸14によって駆動されるので、かかる型式を縦軸型と呼ぶことする。図示の場合、駆動装置13も縦軸型であるが、駆動装置13の回転軸をベース12と平行となる横軸型に構成し、その回転軸に傘歯車機構を介して砥石25の回転軸を垂直に設けた縦軸型であってもよい。
【0029】
図3に示したように、前記のベース12及びベースカバー18の平面形状は、機械全体の背面側においてベース12の中心Oを通りベース12の面に引いた中心線Y1に直角に切り欠かれたD形カット部27を有する欠円形状をなす。ベースカバー18の中心部には、前記の駆動装置13の挿通穴28が形成される。前記のD形カット部27がこの機械の後端辺となり、その反対側の面が機械の正面(前面)となる。その正面側において中心線Y1から約20度右側に片寄った位置に電源スイッチ19が取り付けられる。
【0030】
前記のステージ15は円板形をなし、ベース12及びベースカバー18の中心Oを回転中心として前記中心線Y1(X1−Y1座標参照)を基準に角度θ(20°〜30°程度)だけ平面視で左回転した位置において中心線Y2(X2−Y2座標参照)をもち、その中心線Y2上で右前方に所定量偏芯した位置に中心O’をもつよう配置される。ステージ15がベース12及びベースカバー18に対して右前方に偏芯していることにより、右前方に片寄った位置に大略三日月形の広い取り付けスペース30が形成される。
【0031】
前記取り付けスペース30上にその正面左から順に、ドリルセット治具32、シンニング治具34、切刃研磨治具33及び面取り治具35が砥石25の外周面に沿うように配置される。ドリルセット治具32とシンニング治具34との間に前記の中心線Y1が存在する。また、切刃研磨治具33は前記中心線Y2上に配置され、面取り治具35は約90°の位置に設置される。また、切刃研磨治具33と面取り治具35の間に研磨粉落とし穴36が設けられ、その研磨粉落し穴36の面取り治具35側の側縁に沿って研磨粉ガイド板37(図1参照)が設けられる。また、前記研磨粉落し穴36の下面に研磨粉ケース38が着脱自在に取り付けられる。
【0032】
前記の研磨粉落し穴36の外側のステージ15の外周縁から面取り治具35の外側を通って砥石25の後方側の約半周の範囲を囲む砥石カバー41が設けられる。この砥石カバー41の周壁部の高さは砥石25の上面より若干高い程度に設定され、さらに、その周壁部上に砥石25の上面をカバーする天板部が設けられる。砥石カバー41の周壁部と天板部の機械正面に対向した部分は開放され、その開放された部分に、砥石25の一部が露出され、その露出部分に前記の各治具32〜35が対向する。また、砥石カバー41の天板部上にスペーサ42を介して透明の防塵カバー43が取り付けられる。
【0033】
ステージ15を前記のように右前方に偏芯して取り付けたことによって生じた左後方のベースカバー18上の平面に生じたスペースに、後述のドリルホルダー39を保持するホルダー保持ピン44が、ドリルホルダー39の必要数だけ突設される。
【0034】
なお、前記のドリルセット治具32はベースカバー18の上面において前記の保持ピン44の近傍に取り付けてもよい。
【0035】
前記砥石25は、CBNの電着砥石であり、その断面形状を図4(a)に示す。前記砥石25は、その外周面46aとその下端周縁部の面取り部46bに渡り形成された切刃研磨部46と、前記外周面46aの上端つば部47aに形成されたシンニング研磨部47と、前記砥石25の上端面に形成された面取り研磨部48を有する。外周面46aは、回転軸14に対し微小角度θだけつば部47a側に下降傾斜している。この微小角度θは後述のように、切刃52の切刃角α(図5(a)参照)を形成するための傾斜角である。また、面取り部46bはチゼル研磨部となる。シンニング研磨部47が形成されたつば部47aは適当な大きさのアールをもった円弧面となっている。
【0036】
前記砥石25の回転方向R(図4(b)参照)に対し、研磨対象のドリル45は後述の治具33〜35を利用して所定の傾斜角をもって研磨面に押し当てられる。この場合、同図に示したように、ドリル45が接触した研磨部に砥石25の平面視においてその中心で直交する中心線xyを引いた場合に、中心線xを基準に回転方向Rに対し進み角(+φ)をもつように傾斜させて研磨することを「逆方向研磨」と呼び、反対に回転方向Rに対し遅れ角(−φ、但し、−φ=0°を含む。)をもつように傾斜させて研磨することを「順方向研磨」と呼ぶこととする。この発明においては、ドリルの研磨においては順方向研磨を選択している。
【0037】
次に、研磨対象であるドリル45の詳細を図5及び図6に基づいて説明する。 この場合のドリル45は、車両のボディパネルのスポット溶接部を外す場合等薄板の穴あけに適した先端形状、即ち、180度を超える大きい先端切刃角α(図5(a)参照)を持ち中央部にチゼル51が形成された、いわゆるローソク形の先端形状を有する。
【0038】
研磨前の先端形状は、ローソク形のもので使用により摩滅や欠けの生じたもの、先端形状がローソク形でなく先端切刃角αが118度の汎用型のもの等さまざまである。
【0039】
図5(b)〜(d)は、ドリル45に切刃研磨を施した研磨中間品の形状、図6(a)〜(e)は、これに加えてチゼル研磨と面取り研摩を施した研磨仕上げの状態を示す。図5(b)に示したように、切刃研磨によって前記チゼル51の両側に切刃52、52が形成され、各切刃52の回転方向(同図矢印a参照)の後方に逃げ面53が形成される。
【0040】
前記の中間研磨品にチゼル研磨と面取り研摩を施すことにより、図6(b)等に示したように、各切刃52のチゼル51の側方を通って他方の切刃52のねじれ溝54に移る部分にシンニング55が形成される。シンニングは穴あけ効率を上げるために、ドリルの強度を損なわない範囲でチゼル51の心厚を削り落す研磨作業又はそのような研磨作業が施された部分をいう。この発明で「シンニング55」というときはシンニング研磨作業が施された部分を意味する。また、逃げ面53の外周縁にマージン57の一部に至る範囲に面取り56(図6(d)参照)が形成される。マージン57の前記面取り56から該マージン57の切刃52’に至る範囲は平坦な逃げ面53’となっている。
【0041】
前記逃げ面53は切刃52の後方において該切刃52に対する逃げ角αを有する(図6(e)参照)。また、マージン57の部分の切刃52’も逃げ角αを有する(図6(f)参照)。
【0042】
前記の面取り56がマージン57の部分を含み逃げ面53の外周縁の全体にわたり施したとすると、マージン57の部分の切刃52’の逃げ角αがゼロとなり、切刃52’の部分における切れ味が低下する。そこで、この発明においては、切刃52’の部分においても十分な切れ味が得られるように、切刃52’の部分にも逃げ角αを形成するようにしている。その形成手段については後述する。
【0043】
次に、各治具32〜35について説明する。
【0044】
図1及び図7に示したように、ドリルセット治具32は、ベースカバー18の上面に固定された治具台座61と、その治具台座61の外周面に一体化された縦方向の支持アーム62によって支持された位置決めリング63により構成される。位置決めリング63は上下方向に開放され前述のドリルホルダー39に適合する大きさの内径を有し、その内径面にドリルホルダー39が挿脱自在に挿入される。
【0045】
前記位置決めリング63の上面の1箇所に規制ピン64が突設される。また、前記治具台座61の中央部に位置決めリング63と同芯状態の円筒形の調整ピース65が上下動可能に嵌合される。この調整ピース65に対向したステージ15の部分に調整ネジ穴66が設けられ、ステージ15の下方から調整ボルト70aがねじ込まれる。調整ボルト70aに緩み止めナット70bが螺合される。前記調整ピース65の止めネジ67が治具台座61の側面から差し込まれる。調整ピース65の上端面においてドリル45の先端部のねじれ溝54に嵌入し得る大きさの切刃位置決め突起68が突設される。
【0046】
前記の調整ピース65の上面を基準とした位置決めリング63の上面の高さHは、切刃研磨治具33を用いて切刃研磨工程を行った場合の研磨仕上がり高さh(図9参照)に所要の研磨代δを加えた大きさに予め調整ボルト70aを操作して設定される。
【0047】
前記のドリルホルダー39は、スリーブ形状をなし、図7(d)に示したように上端外周面にローレット40が施され、外周面に径方向に突き出した位置決めピン69が設けられる。該ドリルホルダー39の外径及び長さはドリル45のサイズにかかわらず一定であるが、内径Bはドリル45の径によって異なる(B’参照)。
【0048】
前記位置決めピン69の高さは、後述の面取り工程においてドリル45の径の大きさによって相違する中心線A方向の差a(図12(b)参照)だけずれた位置となる。なお、前記ドリルホルダー39にドリル45の止めネジ71が設けられる。
【0049】
前記のドリルセット治具32を用いてドリル45をドリルホルダー39にセットするドリルセット工程については後述するが、ここでは、次に説明する他の治具33、34、35の構成の理解のために必要な範囲でその工程を説明する。
【0050】
ドリルセット工程は、1番目に実行される工程であり研磨の準備を行う工程である。まず、研磨対象のドリル45のサイズに適合するドリルホルダー39を選択し、そのドリルホルダー39のみを位置決めリング63にその上方から挿入し、位置決めピン69が位置決めリング63の上面に載った状態で右回転させ(図7(b)矢印b参照)、規制ピン64に当てる。次にドリル45をドリルホルダー39の穴に上方から挿入し、その先端部を調整ピース65の上面に当て、さらに該ドリル45を右回転させ、一方の切刃52を切刃位置決め突起68に係合させる(同図(c)参照)。この状態で止めネジ71を締めてドリルホルダー39にドリル45をセットする。
【0051】
前記のドリルセット工程が終了すると、次に前記ドリルセット治具32の右隣に設置されたシンニング治具34を越え、その右隣の切刃研磨治具33を用いて2番目の切刃研磨工程が実行される。2番目の工程において使用される切刃研磨治具33が3番目に使用されるシンニング治具34より右側に設置されるのは、切刃研磨工程における作業がシンニング工程の作業より複雑であるため、作業位置が相対的に右方に寄った位置で作業者の右手の自由が利き易い部分に切刃研磨治具33を設置する方が作業性の点から望ましいからである。勿論、左らか2番目に切刃研磨治具33、その右隣の3番目にシンニング治具34というように工程順に配置するパターンもあり得る。
【0052】
前記の切刃研磨治具33は、図8及び図9に示したように、治具台座72の両側に支持アーム73が縦向きに設けられ、その支持アーム73間に位置決めリング74が該リング74の中心線A(図8参照、この中心線Aは位置決めリング74に保持されるドリル45の中心線と一致する。)と直交する水平方向のネジ軸75によって角度調整可能に固定される。中心線Aは、砥石25の平面視においてその中心線Rに対して遅れ角となる傾斜角α(図示の場合、5°前後)をもって傾斜した状態、即ち、順方向研磨が行われるように傾斜し、砥石25の切刃研磨部46の所定位置に交差するように設定される。前記の傾斜角αは、先端切刃角α(図5参照)を形成するために必要な角度に形成される。
【0053】
前記位置決めリング74の側面視(図9(a)参照)における中心線A1の傾き、即ち、中心線A1の砥石45の回転面(取り付け状態における上下両面)に対する傾斜角αは図示の場合ゼロである。この傾斜角αはドリル45の逃げ面53に逃げ角α(図6(e)参照)を形成するが、図示の場合は砥石45の切刃研磨部46に微小角θ(図4(a)参照)が付与され、これによって逃げ角α(図6(e)参照)が形成される。逆に、傾斜角θがゼロの場合は、傾斜角αが所定の大きさに設定される。なお、前記の角度αとαを切刃研磨角と総称することとする。
【0054】
また、位置決めリング74の前面(砥石25と反対側の面、即ち作業者側の面)に切刃範囲規制凹部76が中心対称の位置に2個所設けられる(図9(b)参照)。該規制凹部76の周方向の溝幅はドリル45の一方の切刃52とその逃げ面53を研削するに必要な角度範囲αを持つように形成される。該規制凹部76の位置は、その両側規制壁76a、76bの水平面に対する傾斜が角度β及びβに設定される。角度β、βは前述したドリルホルダー39に対するドリル45の切刃52の角度αの大きさ、切削研磨開始点等によって定まる。
【0055】
図示の場合、左側の規制壁76aにドリルホルダー39の位置決めピン69が当たった図9(b)の状態において、切刃52とその逃げ面53の研磨開始点が切刃研磨部46の所定位置に接するように前記の角度βが設定される。右側の規制壁76bの角度βも切刃52とその逃げ面53の研磨終了点が切刃研磨部46の所定位置に接するように設定される。
【0056】
次に、図10及び図11に基づいてシンニング治具34について説明する。この場合も、治具台座77の両側に支持アーム78が縦向きに設けられ、その支持アーム78間に位置決めリング79が、該位置決めリング79の中心線A(図10(a)、図3参照、この中心線Aはドリル45の中心線と一致する。)と直交する水平方向のネジ軸81によって角度調整可能に固定される。中心線Aは、砥石25の平面視においてその中心線Rに対して遅れ角となる傾斜角α(図示の場合、60°前後)で傾斜した状態、即ち、順方向研磨が行われるように傾斜している。
【0057】
また、前記の中心線Aの側面視(図10(b)参照)における傾き、即ち、中心線Aの砥石25の回転面に対する傾斜角αは20°前後に設定される。前記の傾斜角α、αによって、後述のようにシンニング55の傾斜角が設定される。傾斜角αとαをシンニング角と総称することとする。
【0058】
前記の中心線Aの延長が砥石25のつば部先端のアール部、即ちシンニング研磨部47の所定位置と交差し、所定のシンニング角が設定される。
【0059】
前記位置決めリング79の前端面に形成された径方向のシンニング規制凹部82は、ドリルホルダー39の位置決めピン69の直径に等しい幅に形成され、該位置決めピン69が回転方向へのガタツキなく嵌合される。前記規制凹部82は、シンニングの作業性を考慮して、左右の支持アーム78、78の中間位置にあるようにその位置が定められる。その規制凹部82にドリルホルダー39の位置決めピン69を嵌入した状態(図11参照)において、ドリル45の先端部はシンニン角をもって砥石25に接触するように、前記の角度α(図7(b)参照)が設定される。
【0060】
また、シンニング規制凹部82の底と砥石25のシンニング研磨部47までの距離は、シンニング仕上がり高さm(図10(b)参照)に設定される。図10(b)において、mはシンニング代の大きさを示す。
【0061】
次に、前記のシンニング治具34の右隣の切刃研磨治具33及び研磨粉落とし穴36を挟んで、設置された面取り治具35を図12から図15に基づいて説明する。
【0062】
面取り治具35は、ステージ15に固定された治具台座83と、その治具台座に設けられた位置決めリング84と、位置決め部材85とからなる。位置決め部材85はL形のアングル形のものであり、その基部85aが前記治具台座83と位置決めリング84との間に挟持され、先端の屈曲部85bが位置決めリング84から中心線A3の方向に所定距離Dをおいて配置される。その屈曲部85bに前記ドリル45の先端部の挿通を許容しドリルホルダー39の挿通を阻止する規制穴86が形成される。
【0063】
砥石25の平面視(図13(a)参照)において位置決めリング84の中心線Aのなす角はゼロ、即ち中心線Rに一致する。また、側面視(図12(a)参照)において、中心線Aの砥石25の回転面(面取り研磨部48)に対する面取り角α10は所定の面取り角(通常は45°)に設定される。
【0064】
前記の位置決めリング84の外端面に前記ホルダー39の位置決めピン69の直径より大きい面取り範囲規制凹部88が設けられる、該規制凹部88は前記位置決めピン69の周方向面取り範囲を規制する。その規制範囲は規制凹部88の開き角度α11によって決定されるが、この角度は、ドリル45の逃げ面53の外周縁のほぼ全部に及ぶ大きさに設定される。また、前記規制凹部88の研磨開始点となる(正面から見て右端)に位置決めピン69が接触した図13(b)の状態において、ドリル45の切刃52がほぼ水平の面取り開始状態となるように、前記の角度α(図7(b)参照)が設定されている。
【0065】
また、前記の中心線A上における位置決め部材85の規制穴86から、面取り研磨部48までの距離(図12(b)参照)は一定値nに設定される。このnはドリル45の径の大きさ如何にかかわらず一定の大きさに設定される。しかし、ドリル45の径の大きさによって、面取り仕上げ位置は中心線A方向の位置に差a(図12(b)参照)が存在するため、ドリル45の径の大きさにかかわらず位置決めピン69からドリル45の先端までの長さを仕上がり高さhに保持すべく、ドリル45の径の大きさに応じて位置決めピン69の位置に前記の差aだけ中心線Aの方向にずらせたドリルホルダー39を使用する必要がある(図7(d)参照)。なお、図12(c)においてnは、面取り代を示す。
【0066】
一方、逃げ面53の外周縁は、図14(a)に示したように、ねじれ溝54側端部のa点から切刃52側のc点までの範囲をいうが、c点に近いマージン57の範囲内に面取り終端点bを定め、a点からb点までを面取り範囲chと定める。前記規制凹部88の開き角α11(図13(b)参照)はドリル45がドリルホルダー39とともにa点からb点まで回転できる大きさに設定され、b点が面取り研摩部48に接した状態、即ち、b点が鉛直な中心線R上に到達した点でドリルホルダー39の回転が停止される。b点で回転が停止されることにより、b点とc点の間の外周縁はドリル45が静止したまま水平状態の面取り研磨部48によって研磨されるので、その研磨部分は平坦面となり、切刃52’に対して逃げ角α(図6(f)参照)をもった逃げ面53’が形成される。
【0067】
<作用の説明>
実施例のドリル研磨機は以上のような構成であり、次にその作用について説明する。
【0068】
(ドリルセット工程)
研磨対象となるドリル45のサイズに適合するドリルホルダー39を選択(図7参照)して保持ピン44から抜き取り、そのドリルホルダー39をドリルセット治具32の位置決めリング63の上方から挿入する(図7(a)参照)。ドリルホルダー39の位置決めピン69を位置決めリング63の上端面に載せた状態で該ドリルホルダー39を平面視で右回転(図7(b)の矢印b参照)させ位置決めピン69を規制ピン64に係合させる。次に、ドリルホルダー39の上方からドリル45を挿入し、その先端部を調整ピース65の上面に当て、さらに該ドリル45を適宜回転させ、一方の切刃52を切刃位置決め突起68に係合させる(図7(c)参照)。この状態で止めネジ71を締めてドリルホルダー39にドリル45をセットする。
【0069】
前記のセット状態で、ドリルホルダー39の位置決めピン69からドリル45の先端までの高さH(=h+δ)が設定され、また、該位置決めピン69からドリル45の回転方向に見た場合の切刃52の角度αが設定される。
【0070】
(切刃研磨工程)
砥石25を平面視で左回転(図8の矢印R参照)するように駆動しながら、セット状態にあるドリルホルダー39を作業者が保持しこれを切刃研磨治具33の位置決めリング74に挿入し(図8、図9参照)、さらにドリルホルダー39をその位置決めピン69が研磨範囲規制溝76で規制される範囲内で中心線Aの周りで往復揺動させる。これにより、ドリル45は一方の切刃52とその逃げ面53が砥石25の切刃研磨部46において所定の先端切刃角α、逃げ角αを持つように順方向研磨される。また、同時にその逃げ面53の中心部付近が切刃研磨部46の面取り部46bによりチゼル51の片面が研磨される。
【0071】
所定の研磨代δ(図9(a)参照)が研磨され位置決めピン69が規制凹部76の底に接した感触が得られれば研磨を終了してドリルホルダー39とともにドリル45を抜き出す。次に、ドリルホルダー39をその中心線の周りに180°回転させ、再びこれを位置決めリング74に挿入し、その位置決めピン69を前記と中心対称の位置にある他方の研磨範囲規制凹部76に嵌入させ、同様にして他方の切刃52、逃げ面53及びチゼル51の他面を研磨する。図5(b)〜(c)はこのようにして研磨された中間研磨品を示す。
【0072】
前記の研磨工程において発生する研磨粉は、順方向研磨であるため、作業者の位置と反対の砥石25の回転方向に飛び散り、研磨粉ガイド板37でガイドされ研磨粉落とし穴36を通じて研磨粉ケース38に落下する。また、前記の研磨において、ドリル45の先端に作用する砥石25の研磨トルクは、切刃研磨治具33によって受けられるが、この場合の研磨トルクは、逆方向研磨の場合に比べ低いので、砥石の研磨面における異常発熱のおそれがなく、仕上げ面も滑らかである。
【0073】
(シンニング工程)
前記のようにして切刃研磨工程を終了した後、ホルダー39を位置決めリング74から抜き出し、これを図10、図11に示したシンニング治具34の位置決めリング79に挿入するとともに、位置決めピン69をシンニング規制凹部82に嵌入させる。この状態で、位置決めピン69と規制凹部82の底との間にシンニングによる研磨代m(図10(b)参照)のすき間が存在する。
【0074】
作業者がドリルホルダー39を把持しつつ押し込み方向に力を加えれば、前記チゼル51の一方の側面が砥石25のシンニング研磨部47に押し当てられ、順方向研磨により所定のシンニング角をもったシンニング55が施され(図6参照)、前記突起69が規制凹部82の底面に到達した感触が得られれば、ドリルホルダー39をドリル45とともに抜き出す。次に、中心線Aの周りに180°回転させたのち再び位置決めリング79に挿入して研磨を行い、他方のシンニング55を施す。この場合の研磨粉は前工程の場合より少ないが、同様に研磨粉ケース38に捕集される。
【0075】
なお、シンニング55を施しても、先の工程で仕上げられた研磨仕上げ高さhは変化しない。
【0076】
(面取り工程)
シンニング工程を終了した後、ドリルホルダー39を位置決めリング79から抜き出し、これを図12、図13に示した面取り治具35の位置決めリング84に挿入するとともに、位置決めピン69を面取り範囲規制凹部88に嵌入させる。ドリルホルダー39の先端面が位置決め部材85の規制穴86の面から面取り研磨代n(図12(c)参照)だけ離れた位置でドリル45の切刃52の外周縁が砥石25の面取り研磨部48に接近する。このとき位置決めピン69は規定凹部88の底面から離れ工程が終わるまで底面に接することがない。
【0077】
作業者がホルダー39を把持して規制凹部88の範囲内でホルダー39を中心線Aの周りで左右方向に往復揺動させると、逃げ面53の外周縁のa点からb点の面取り範囲ch(図14(a)参照)に面取り56が施される。ただし、前記a点側はb点側より砥石25から遠い(ドリル先端から後退した)位置にあることからa点近傍には面取り56は形成されず、b点に近づくに従い次第に面取り56が形成される。b点においてドリル45の回転が規制されるので、砥石25に対して静止状態にあるドリル45のb点とc点の間は面取り研磨部48によって平坦に研磨され、切刃52’に対し逃げ角α(図6(f)参照)を有する逃げ面53’が形成される。
【0078】
前記の面取り研摩の進行によってnがゼロとなりドリルホルダー39の先端が規制穴86の部分に接した感覚が得られると、ドリルホルダー39をドリル45とともに抜き出し、中心線Aの周りに180°回転させたのち再び位置決めリング84に挿入して面取り研磨を行い、他方の切刃52と逃げ面53の外周縁の面取り範囲chに面取り56を施す。
【0079】
ドリル45の径が異なる場合は、それに適合した内径と位置決めピン69の位置の異なるドリルホルダー39を使用することにより、いずれの場合も研磨仕上げ高さhに仕上げることができる。
【0080】
なお、面取り56が前記のa点近傍から開始されるようにするためには、図12(c)において面取り研摩代nで示したように、面取り研磨代が相対的に大きくなるよう位置決め部材85の位置を下げる(図12(c)の二点鎖線参照)。この場合は、前記の一定値nはn’となる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】は実施例のドリル研磨機の斜視図
【図2】は同上の断面図
【図3】は同上のベースカバーとステージの平面的位置関係の平面図
【図4】(a)図は砥石の一部拡大断面図、(b)図は砥石の回転方向とドリルの中心線の方向を示す説明図
【図5】(a)図はドリルの正面図、(b)図は研磨中間品のドリル刃先の平面図、(c)図は(b)図の正面図、(d)図は(b)図の側面図
【図6】(a)図は研磨完了後のドリル刃先の平面図、(b)図は(a)図の正面図、(c)図は(a)図の側面図、(d)図は(a)図の一部拡大平面図、(e)図は(d)図のe―e線の断面図、(f)図は(d)図のf−f線の断面図
【図7】(a)図はドリルセット工程の断面図、(b)図は(a)図の平面図、(c)図は(a)図のc−c線の断面図、(d)図はドリルホルダーの断面図
【図8】は切刃研磨工程の平面図
【図9】(a)図は切刃研磨工程の縦断側面図、(b)図は(a)図の左側面図、(c)図は(a)図の一部拡大図
【図10】(a)図はシンニング工程の平面図、(b)図は(a)図の正面図
【図11】はシンニング工程の一部省略左側面図
【図12】(a)図は面取り工程の縦断面図、(b)図は(a)図の一部拡大図、(c)図はドリル径による位置決めピンの位置の説明図
【図13】(a)図は面取り工程の平面図、(b)図は(a)図の右側面図
【図14】(a)から(c)は面取り工程の説明図
【符号の説明】
【0082】
11 作業台
12 ベース
13 駆動装置
14 回転軸
15 ステージ
16 連結ボルト
17 ナット
18 ベースカバー
19 電源スイッチ
20 ボス部
20’固定ネジ
21 段差部
22 受板
23 芯出しリング
24 ナット
25 砥石
26 ビス
27 D形カット部
28 挿通穴
29 挿通穴
30 取付けスペース
31 シールカバー
32 ドリルセット治具
33 切刃研磨治具
34 シンニング治具
35 面取り治具
36 研磨粉落し穴
37 研磨粉ガイド板
38 研磨粉ケース
39 ドリルホルダー
40 ローレット
41 砥石カバー
42 スペーサ
43 防塵カバー
44 保持ピン
45 ドリル
46 切刃研磨部
46a 外周面
46b 面取り部
47 シンニング研磨部
47a つば部
48 面取り研磨部
51 チゼル
52、52’切刃
53、53’逃げ面
54 ねじれ溝
55 シンニング
56 面取り
57 マージン
61 治具台座
62 支持アーム
63 位置決めリング
64 規制ピン
65 調整ピース
66 調整ネジ穴
67 止めネジ
68 切刃位置決め突起
69 位置決めピン
70a 調整ボルト
70b 緩み止めナット
71 止めネジ
72 治具台座
73 支持アーム
74 位置決めリング
75 ネジ軸
76 研磨範囲規制凹部
77 治具台座
78 支持アーム
79 位置決めリング
81 ネジ軸
82 シンニング規制凹部
83 治具台座
84 位置決めリング
85 位置決め部材
85a 基部
85b 屈曲部
86 規制穴
88 面取り範囲規制凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置(13)と、その駆動装置(13)によって回転駆動される砥石(25)と、前記駆動装置(13)を支持するベース(12)と、前記ベース(12)上に取り付けられた複数の治具とからなり、前記複数の治具を用いて順次ドリルの研磨工程を実行できるようにしたドリル研磨機において、前記砥石(25)の回転軸(14)が前記ベース(12)に対して垂直な縦軸型であり、前記ベース(12)と砥石(25)の間に該砥石(25)の回転面と平行なステージ(15)が前記ベース(12)と一体に設けられ、該ステージ(15)に前記複数の治具が取り付けられたことを特徴とするドリル研磨機。
【請求項2】
前記治具が切刃研磨治具(33)、シンニング治具(34)及び面取り治具(35)を含み、研磨対象であるドリル(45)をドリルホルダー(39)にセットするドリルセット治具(32)が前記ステージ(15)、前記ベース(12)又はベースカバー(18)のいずれかに取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載のドリル研磨機。
【請求項3】
前記切刃研磨治具(33)、シンニング治具(34)及び面取り治具(35)の配置態様が、砥石(25)の回転方向に沿ってシンニング治具(34)、切刃研磨治具(33)及び面取り治具(35)の順であることを特徴とする請求項2に記載のドリル研磨。
【請求項4】
前記砥石(25)が、その外周面(46a)とその下端周縁部に形成された面取り部(46b)に形成された切刃研磨部(46)と、前記外周面(46a)の上端つば部(47a)に形成されたシンニング研磨部(47)と、前記砥石(25)の上端面に形成された面取り研磨部(48)を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のドリル研磨機。
【請求項5】
前記ドリルホルダー(39)、ドリルセット治具(32)、切刃研磨治具(33)、シンニング治具(34)及び面取り治具(35)が以下の構成であることを特徴とする請求項3又は4に記載のドリル研磨装置。
a)ドリルホルダー(39)は、前記ドリル(45)が貫通されるスリーブ状をなし、その外径面に径方向に突き出した位置決めピン(69)と、前記ドリル(45)の止めネジ(71)が設けられた構成。
b)ドリルセット治具(32)は、前記ステージ(15)に固定された治具台座(61)と、その治具台座(61)に設けられ上下に開放された位置決めリング(63)とからなり、前記治具台座(61)を基準とした該位置決めリング上端面の高さHが下記c)で定義する研磨仕上げ高さhより大きく設定され、前記上端面に規制ピン(64)が突設され、前記治具台座(61)に前記ドリル(45)の一方の切刃(52)に対し該ドリル(45)の回転方向に係合する切刃位置決め突起(68)が設けられた構成。
c)切刃研磨治具(33)は、前記ステージ(15)に固定された治具台座(72)と、その治具台座(72)に設けられた位置決めリング(74)とからなり、前記位置決めリング(72)の中心線Aが前記砥石(25)の切刃研磨部(46)に対し所定の切刃研磨角(α、α)を持ち、かつ該位置決めリング(74)の外端面の前記中心線A回りに所定の間隔を持った研磨範囲規制凹部(76)が設けられ、該規制凹部(76)の前記中心線A方向の底面と前記切刃研磨部(46)までの距離が研磨仕上げ高さhに設定された構成。
d)前記シンニング治具(34)は、前記ステージ(15)に固定された治具台座(77)と、その治具台座(77)に設けられた位置決めリング(79)とからなり、前記位置決めリング(79)の中心線Aが前記砥石(25)のシンニング研磨部(47)に対し所定のシンニング角(α、α)を持ち、該位置決めリング(79)の外端面に前記ドリルホルダー(39)の位置決めピン(69)の直径に適合する幅のシンニング規制凹部(82)が設けられ、該規制凹部(82)の前記中心線A方向の底面と前記シンニング研磨部(47)までの距離がシンニング仕上げ高さmに設定された構成。
e)前記面取り治具(35)は、前記ステージ(15)に固定された治具台座(83)と、その治具台座(83)に設けられた位置決めリング(84)と、位置決め部材(85)とからなり、前記位置決め部材(85)は前記位置決めリング(84)と前記砥石(25)との間の該位置決めリング(84)の中心線A上にドリル(45)の径に適合した大きさの規制穴(86)を有し、前記中心線Aが前記砥石(25)の面取り研磨部(48)に対して所定の面取り角(α10)を持ち、前記規制穴(86)から前記面取り研磨部(48)までの距離が一定距離nに設定され、前記位置決めリング(84)の外端面に前記中心線A回りに所定の間隔を持った研磨範囲規制凹部(88)が設けられ、該規制凹部(88)によって前記ドリル(45)の逃げ面(53)の外周縁のうち面取り範囲(ch)がねじれ溝(54)側から切刃(52’)近傍に至る範囲に規制され、かつ面取り範囲(ch)の終端点bが鉛直な中心線R上にある構成。
【請求項6】
前記の切刃研磨治具(33)、シンニング治具(34)及び面取り治具(35)の各位置決めリング(74)、(79)、(84)の中心線A、A、Aの平面視における砥石中心線(x)に対する傾斜角が該砥石(25)の回転方向Rに対して遅れ角(−φ)をもち、前記各治具に挿入されたドリル(45)が前記砥石(25)に接触して順方向研磨を受けるようにしたことを特徴とする請求項5に記載のドリル研磨機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−114314(P2008−114314A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298073(P2006−298073)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(506367696)
【出願人】(595127610)イサオ電機株式会社 (5)
【Fターム(参考)】