説明

ネズミの忌避方法

【課題】煙を用いたネズミの忌避方法。
【解決手段】本発明のネズミ忌避方法はアゾジカルボンアミドが熱分解して発生する煙を有効成分とし、前記煙を45cpm以上の煙量となるように拡散させるネズミの忌避方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙を用いたネズミの忌避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネズミが食品や壁材、電線ケーブル等を齧ることによる被害が問題となっており、それを防止するために種々の殺鼠剤や忌避剤が検討されてきた。しかし、殺鼠剤や忌避剤が処理された箇所でしか所期の効果を得ることができず、室内、倉庫、床下等の広い空間からネズミを追い出すことは難しい。
【0003】
また、従来から、煙により獣害虫を忌避することが検討されている。例えば、木粉や澱粉等からなる成形物に着火し、発煙せしめて鳥類を忌避すること(特許文献1参照。)、害虫の生息場所を燻煙して、害虫を追い出し、設置した粘着材で捕獲、駆除すること(特許文献2参照。)等が知られている。
しかし鳥類や害虫とネズミとは習性、行動、さらに刺激に対する反応等も異なるうえ、上記文献にはネズミに適用することについて記載はない。
そしてネズミについては、煙を利用した忌避方法について検討されてはおらず、タール等の煙成分の匂いを持つものを部材に含浸させたもの(特許文献3参照。)が知られている程度である。
【0004】
【特許文献1】実開昭59−227808号公報
【特許文献2】特開平5−331014号公報
【特許文献3】特開2006−174810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明では、所詮、忌避剤を用いなくてもネズミに対し強い忌避効果を発揮する、煙を用いたネズミの忌避方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アゾジカルボンアミドが熱分解して発生する煙を有効成分とし、前記煙を45cpm以上の煙量となるように拡散させることを特徴とするネズミの忌避方法を見出し本発明に至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、所詮、忌避剤を用いなくても少量の煙だけでネズミに対して強い忌避効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のネズミの忌避方法は、アゾジカルボンアミドが熱分解して発生する煙を有効成分とし、前記煙を45cpm以上、好ましくは100cpm以上、より好ましくは200cpm以上の煙量となるように拡散させることで、所謂、忌避剤を用いなくてもネズミを忌避することができる。特に、前記煙量をネズミに直接暴露させることが好ましい。これによって、ネズミを確実に忌避(追い出す)することができる。
【0009】
アゾジカルボンアミドとしては、200℃前後で熱分解して煙を発生するものが好ましく、例えば、ユニフォームAZ(大塚化学社製)、セルマイクCE(三協化成)等が挙げられる。
【0010】
本発明における煙量とは、屋内、倉庫、床下等における床面からの高さが10〜30cm付近において、デジタル粉じん計で測定した1分間の平均粉塵量(cpm)を意味し、具体的には、例えば、デジタルダストインジケーター モデル P−3(柴田化学社製)により測定することができる。
本発明においては、例えば、煙の発生から30分間、任意の間隔で複数回の測定を行い、その平均値を煙量とする。
本発明のネズミの忌避方法では、アゾジカルボンアミドを熱分解して発生する煙を所定の煙量発生させるには、20〜50mに対して0.2g以上、好ましくは1〜30gを用いればよい。
【0011】
また以下の図1に示すような二重容器を用いた装置等では、容器を加熱するだけでも煙が多少発生するので、アゾジカルボンアミドを熱分解して発生する煙の煙量としては、アゾジカルボンアミドが容器内にある時と、ない時とで煙量をそれぞれ測定し、その差をアゾジカルボンアミドを熱分解して発生する煙の煙量とするものである。
【0012】
本発明のネズミの忌避方法においてアゾジカルボンアミドの熱分解は、例えば、アゾジカルボンアミドを図1に示した発煙装置の容器に収容し、該容器の外側に配置された加熱手段により加熱することにより行うことができる。
【0013】
容器としては、例えば、プラスチック容器、紙容器、金属容器、セラミック容器、ガラス容器等が挙げられる。また、加熱手段としては、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化鉄等の加水発熱物質と水との反応を用いる加水発熱方式(図1参照)、炭化鉄、鉄粉と塩素酸アンモニウムの混合物、鉄と硫酸カリウムとの混合物等の酸化反応により発熱する金属類を用いる空気酸化発熱方式、ニクロム線、正特性サーミスタ、半導体ヒータ等のヒータを用いる電気加熱方式、白金触媒方式等が挙げられる。
【0014】
図示される発煙装置1は、有底円筒状の外容器2を備えており、その底部から側部にかけて加水発熱物質Aが収容されている。また、外容器2の内部は、仕切部材4により2つの空間に区画されている。外容器2は、底部に複数の通水孔を有し、通水孔は通水性を有する部材、例えば不織布シート3によって塞がれている。使用に際して、自己発熱装置1を水Wが入った容器20に入れることにより、水Wが通水孔を通じて外容器2に流入し、更に不織布シート3を浸透して加水発熱物質Aと接触し、そのとき発生した反応熱によりアゾジカルボンアミドBが加熱されて分解し、発生した煙が熱溶融フィルム7の通気孔や蓋部材6の開口部を通じて外部(室内等)に放出される。
【0015】
このような装置をネズミの生息、活動場所に置いたり、屋根裏や床下等の狭い場所では、別の場所で発生させた煙をパイプ等で供給して用いることができる。
【0016】
本発明のネズミの忌避方法は、忌避剤を用いなくても十分にネズミの忌避効果を発揮するものであるが、必要に応じてネズミに対して忌避効果をもつ各種成分、例えば、ハッカ油、わさび成分(イソチオシアン酸アリル)、月桃抽出物、ローズマリーオイル、テルピネオール、ヘキシルアセテート、P−シメン、メントール、チモール、シトロネラール、各種精油類等を併用することで忌避効果を向上させることができる。また、香料や消臭剤等を併用することもできる。
【実施例】
【0017】
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔試験例1〕
図2に示した試験装置を用いて、以下のとおりに本発明の忌避方法によるネズミの忌避効果を確認した。
A室(縦3m、横4.5m、高さ2.5m)にバット(縦1m、横1.5m、高さ1m)を設置した。つぎにB室(縦3m、横4.5m、高さ2.5m)にケージ(縦40cm、横25cm、高さ20cm)を設置した。そしてバットとケージの間を壁を貫通するパイプ(直径7.5cm、長さ50cm)で繋ぎ、ネズミが自由に移動できるようにした。
さらにA室は部屋を暗くし、B室のケージは300Wの照明で照射した(ネズミは光を嫌うので、通常であれば、B室へは侵入しない条件とした)。そしてA室にネズミ5頭(マウス)を放してB室側を観察した。
表1に記載の試験検体から煙を発生させ、30分間にわたりB室へ侵入したネズミの数を忌避されたネズミの数として計数し、更に、その時の滞在時間を観察した。尚、B室へ侵入してA室へ戻ったネズミは、再度B室へ移動したとき同様に計数した。
試験検体としては、実施例1〜3は、表1に記載の量(薬量)のアゾジカルボンアミドを二重容器の内容器に収納し、該容器外側に位置するように外容器内に酸化カルシウム65gを収納し、水を加えて約300℃に発熱させて加熱し、アゾジカルボンアミドを熱分解させて煙を発生させた。
比較例1は、表1に記載の量(薬量)の市販の燻煙剤であるニトロセルロースを容器に収納し、着火することで煙を発生させた。
コントロールは、実施例の内容器にアゾジカルボンアミドを収納せず、空の状態で酸化カルシウムにより実施例1と同様の方法で加熱した。
【0018】
試験の結果は、表1に示した。
アゾジカルボンアミドを用いた実施例1〜3では薬量の増加に従い、忌避されたネズミの合計値が増加している。また、0.2gの使用量でもコントロールと比べ明らかな差を認めた。比較例であるニトロセルロースを用いた場合はコントロールと比べ大きな差はなかった。
【0019】
【表1】

【0020】
〔試験例2〕
試験例1で用いた、実施例1と2、比較例1、コントロールについて、デジタルダストインジケーター モデル P−3(柴田化学社製)により煙量を測定した。
煙量の測定は、試験例1のA室の床面に各検体を置いて煙を発生させ、煙の発生から30分間、5分間隔で煙量を測定し、その平均値を求めた。
測定の結果、コントロールであっても容器が加熱されることで、平均粉塵量として約309cpmがあった。そこで実施例1と2、比較例1の平均粉塵量について、コントロールの値を差し引いて補正しその値を表2に記載した。
試験の結果は表2に示した。アゾジカルボンアミドを用いた場合は、使用量にほぼ比例する煙量であった。比較例のニトロセルロースを用いた場合の煙量はアゾジカルボンアミドを用いた場合に比べ、約7倍であった。
この結果から、煙量が多ければよいわけではなく、アゾジカルボンアミドを熱分解して発生する煙が、比較例と比べて少ない煙量でネズミの忌避に有効であることがわかる。
【0021】
【表2】

【0022】
〔試験例3〕
実施例3に、ハッカ油10%(実施例4)、ハッカ油10%と精油類2%(実施例5)、ハッカ油8%と精油類4%(実施例6)を配合した試験検体を製造し、試験例1と同様に試験を行いネズミの忌避効果を確認した。
精油類は、ローズマリーオイル40%、テルピネオール10%、テルピネン10%、P−シメン10%、ヘキシルアセテート5%を含むオイルである。
ハッカ油は、l−メントール40%、酢酸メンチル20%を含むオイルである。
試験の結果は、表3に示した。ハッカ油を配合した場合(実施例4)とハッカ油に精油類2%を配合した場合(実施例5)では、忌避効果に差は認められなかった。精油類の添加量を増やした場合(実施例6)は、明らかな忌避効果の向上が認められた。
【0023】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】アゾジカルボンアミドを熱分解して煙を発生させる装置の一形態を示す断面図である。
【図2】本発明の試験例に用いた装置の概略図である。
【符号の説明】
【0025】
1 発煙装置
2 外容器
3 不織布シート
4 仕切部材
6 蓋部材
7 熱溶融フィルム
20 容器
A 加水発熱物質
B アゾジカルボンアミド
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾジカルボンアミドが熱分解して発生する煙を有効成分とし、前記煙を45cpm以上の煙量となるように拡散させることを特徴とするネズミの忌避方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−162950(P2008−162950A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355015(P2006−355015)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】