説明

ノイズフィルタ及び製造方法

【課題】ノイズフィルタを少ない工数で簡単かつ容易に組立て製造可能とする。
【解決手段】ケース本体12は裏面に金属底板15を配置したケース底板の両側にAC入力端子台18とAC出力端子台20を一体に形成すると共に端子台の間に基板支持壁36を一体に起立し、端子台から内部上向きに接続ピン34を突出すると共にケース底板側に設けたアース端子25に接続した接続金具40の先端から接続ピン38を突出し、各接続ピン34,38の先端を基板配置位置に延在する。回路部品が実装された回路基板28は、部品実装面をケース本体12に向けて基板支持壁36に当接する位置に組込み配置すると共に、通し穴に端子台およびアース端子側から延在した各接続ピン34,38を挿入した状態で外部に露出した基板裏面側でハンダ付けして電気的且つ機械的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ラインなどを経由して電子機器等に侵入するノイズを除去するノイズフィルタ及び製造方法に関し、特に、組立を容易にする構造としたことを特徴とするノイズフィルタ及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルとコンデンサで構成されるノイズフィルタは、電源ラインや通信ライン等を経由して外部から電子機器内に侵入するノイズにより電子機器が誤動作することを防止する装置であり、電子機器にとって必要不可欠である。
【0003】
従来、この種のノイズフィルタとしては図8の外観図に示すような、ケース本体112にAC入力端子台118、AC出力端子台120を備え、上部にカバー114を装着したものが一般的である。
【0004】
ノイズフィルタ100は図10の回路図に示すように、AC入力端子18a,18bとAC出力端子20a,20bの間に、ノイズフィルタの構成部品として、トロイダルコアに導線を巻いて形成して低域のコモンモードノイズを減衰させるコモンモードチョークコイル22と、低域のノーマルモードノイズを減衰させるためにコモンモードチョークコイル22の入力側及び出力側のライン間に接続されたXコンデンサ(アクロス・ザ・ライン・コンデンサ)24と、高域のコモンモードノイズとノーマルモードノイズを減衰させるためにライン・グランド間に接続されるYコンデンサ(ライン・バイパス・コンデンサ)26を備えている。
【0005】
図9は図8のカバー114を外し、ケース本体112の手前側リ壁部分を破断して内部構造を示した説明図であり、ノイズフィルタ100はAC入力端子台118及びAC出力端子台120を備えるケース本体112に、コモンモードチョークコイル22、Xコンデンサ24、Yコンデンサ26を夫々挿入組み付けし、AC入力端子台118に埋め込まれた端子金具130のカシメ爪130aで、コモンモードチョークコイル22の接続端子22a、Xコンデンサ24のリード端子を同時にかしめ、端子金具130に電気的に接続する。
【0006】
またAC出力端子台120に埋め込まれた端子金具130のカシメ爪130aでは、コモンモードチョークコイル22の接続端子22a、Xコンデンサのリード端子、Yコンデンサ26の一方のリード端子26aを同時にかしめ、端子金具130に電気的に接続している。
【0007】
なお、図9に於いてXコンデンサ24のリード端子、Yコンデンサ26の一方のリード端子26a、及びコモンモードチョークコイル22の接続端子22aは所定の場所に位置しているが、カシメ爪130aはかしめる以前の開いた状態を図示している。
【0008】
更に、Yコンデンサ26の他方のリード端子26bは、ケース本体112の裏面に配置された金属底板115から立ち上がった接続金具140に巻き付けられ、又はかしめられている。なお、アース端子25は金属底板115と一体に成形されている。
【特許文献1】特開2005−198147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来のノイズフィルタにあっては、かしめ作業や巻きつけ作業の際にはXコンデンサ24、コモンモードチョークコイル22、Yコンデンサ26をケース本体112に組み付けた後に各コンデンサのリード端子を変形させて所定の場所に位置させなければならなく、作業は困難である。
【0010】
また、予め各コンデンサのリード端子を所定の形状に変形させておいても、各コンデンサをケース本体112に組み付ける際に位置合わせに不具合が生じたりリード端子に変形が生じたりする場合がある。その際、組み付けた状態でリード端子を再び整形することが困難であれば各コンデンサやコモンモードチョークコイル22をケース本体112の外に引き出し再加工を施さなければならない。
【0011】
更に、各コンデンサやコモンモードチョークコイルをケース本体に固定する工程、例えば接着剤の塗布等、ノイズフィルタの組み立ての際に複雑な工程と多くの工数を必要とする問題があった。
【0012】
本発明は、少ない工数で簡単かつ容易に組立て製造可能なノイズフィルタ及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はノイズフィルタを提供する。本発明のノイズフィルタは、裏面に金属底板を配置したケース底板の両側にAC入力端子台とAC出力端子台を一体に形成すると共に端子台の間に基板支持壁を一体に起立し、端子台から内部上向きに接続ピンを突出すると共にケース底板側に設けたアース端子に接続した接続金具の先端から接続ピンを突出し、各接続ピンの先端を基板配置位置に延在したケース本体と、コモンモードチョークコイル、Xコンデンサ及びYコンデンサを部品実装面に配置して裏面でハンダ接続し、部品実装面をケース本体に向けて基板支持壁に当接する位置に組込み配置すると共に、基板通し穴に端子台およびアース端子側から延在した各接続ピンを挿入した状態で外部に露出した基板裏面側でハンダ付けして電気的且つ機械的に接続された部品実装回路基板を備えたことを特徴とする。
【0014】
ここで、コモンモードチョークコイルを複数備えるようにしても良い。またAC入力端子台及びAC出力端子台は単相交流端子であり、部品実装回路基板に単相交流用ノイズフィルタ回路の部品を実装する。更に、AC入力端子台及びAC出力端子台は三相交流端子であり、部品実装回路基板に三相交流用ノイズフィルタ回路の部品を実装してもよい。
【0015】
本発明はノイズフィルタの製造方法を提供する。本発明によるノイズフィルタの製造方法は、
(1)ケース本体として、裏面に金属底板を配置したケース底板の両側にAC入力端子台とAC出力端子台を一体に形成すると共に端子台の間に基板支持壁を一体に起立し、端子台から内部上向きに接続ピンを突出すると共にケース底板側に設けたアース端子に接続した接続金具の先端から接続ピンを突出し、各接続ピンの先端を基板配置位置に延在し、
(2)回路基板の実装面にコモンモードチョークコイルとXコンデンサ及びYコンデンサを配置し、裏側のハンダ面に突き抜けたコモンモードチョークコイルの接続端子と各コンデンサのリード端子をハンダ付けし、
(3)回路基板の部品実装面を内側とし、ハンダ面を外側にしてケース本体側に組み込み、回路基板の通し穴にケース本体の端子台及びアース端子からの接続先端部を挿入した状態でハンダ付けして固定接続する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のノイズフィルタによれば、ケース本体側から回路基板の配置位置の挿入可能な高さに端子台及びアース端子からの接続ピンを位置させ、ここに部品実装済みの回路基板を裏返しに装着し、外側(上部)に露出したハンダ面に対しハンダ付け作業をし、ハンダ面が上部外側に露出していることで、ハンダ付け作業が極めて容易となり、且つハンダ付けによって回路基板のケースに対する電気的接続と機械的接続が同時にできるメリットがあり、製造が極めて容易で、生産性を向上し、コスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明によるノイズフィルタの実施形態を示す外観図であり、本実施形態では単相交流用ノイズフィルタについて説明する。ノイズフィルタ10はケース本体12の両側にAC入力端子台18、AC出力端子台20及び2つアース端子25を一体に備え、ケース本体12に対しカバー14を装着している。
【0018】
ノイズフィルタ10は、図2の本実施形態の回路図に示すように、AC入力端子18a,18bとAC出力端子20a,20bの間に、トロイダルコアに導線を巻いて形成した低域のコモンモードノイズを減衰させる2つのコモンモードチョークコイル22と、コモンモードチョークコイル22の入力側及び出力側のライン間に接続されたXコンデンサ(アクロス・ザ・ライン・コンデンサ)24と、高域のコモンモードノイズとノーマルモードノイズを減衰させるために出力側のライン・グランド間に接続されるYコンデンサ(ライン・バイパス・コンデンサ)26を備えている。図示されていないが、電源切断時にコンデンサの蓄積電荷を放電させるブリーダー抵抗をライン間に備えても良い。
【0019】
図3は本実施形態の組立分解図である。図3において、本実施形態のノイズフィルタ10は、ケース本体12、回路部品を実装した回路基板28及びカバー14に大別される。
【0020】
ケース本体12は底板12aの両側にAC入力端子台18とAC出力端子台20を一体に形成すると共に、AC入力端子台18とAC出力端子台20の間の2ヵ所に基板支持壁36を一体に起立し、AC入力端子台18とAC出力端子台20には内部上向きに接続ピン34を突出した端子金具30を組み込んでいる。
【0021】
ケース本体12の裏面には金属底板15が装着され、金属底板15はコーナー部を切り起して屈曲した部位にねじ穴を設け、ここをアース端子25のビスを装着している。
【0022】
更に図4に示したカバーを外して回路基板28を透視状態とした内部構造の説明図、及び図5のカバーを外した内部構造のように、金属底板15のアース端子25に隣接した位置からは、先端に接続ピン38を突出した接続金具40が切り起しにより突出されており、接続ピン34と接続ピン38の先端は基板配置位置に延在している。なお、図4,5は図3のケース本体12の手前側の壁部分を破断して内部構造を示している。
【0023】
再び図3を参照するに、回路基板28は下側に位置する部品実装面にコモンモードチョークコイル22、Xコンデンサ24及びYコンデンサ26が配置され、裏側のハンダ面に突き抜けたリード端子がハンダ付けされている。
【0024】
回路基板28は部品実装状態で部品実装面を内側(下側)にしてケース本体12に組み込まれ、ケース本体12の基板支持壁36に載置されることで組込み位置が決まる。このときケース本体12側に配置しているAC入力用端子台18及びAC出力端子台20から上向きに起立した接続ピン34及び金属底板15から起立した接続金具40の先端の接続ピン38が回路基板28に形成した通し穴34a,38aに貫通する。
【0025】
このようにケース本体12に対する回路基板28の組付けで基板裏面(上面)に突出した接続ピン34,38をハンダ付けすることで、電気的且つ機械的に接続される。特に、ケース本体12に対する回路基板28の組付けた状態でハンダ付けする部分は、例えば図5のように全て回路基板28の上部に露出した裏面にあるため、ハンダ付け作業が容易であり、作業性に優れ、高い生産性が得られる。
【0026】
図6は本実施形態のカバーを外した状態の説明図であり、図6(A)は正面図、図6(B)は平面図、更に図6(C)は回路基板の部品実装状態の平面図である。
【0027】
図6(A)(B)から明らかなように、ケース本体12側に設けているAC入力端子台18とAC出力端子台20の接続ピン34及び2つアース端子25に対応した接続金具40の先端の接続ピン38の各々は、基板支持壁36で決まる回路基板28の配置位置を越えて上方に延在しており、部品実装面を下向きに回路基板28を組み込むことで、回路基板28の位置決めと接続ピン34,38の回路基板28に対する挿入ができ、この状態で回路基板28を貫通して突出した接続ピン34,38を容易にハンダ付けできる。
【0028】
図6(C)の回路基板28にあっては、Xコンデンサ24の外側4箇所に、端子台からの接続ピン34の通し穴34aを形成し、またYコンデンサ26の外側に、接続金具40の接続ピン38の通し穴38aを形成している。
【0029】
図7は、本発明の他の実施形態として三相交流用のノイズフィルタの回路図であり、AC入力端子18a,18b,18cとAC出力端子20a,20b,20cの間に、トロイダルコアに導線を巻いて形成した低域のコモンモードノイズを減衰させる2つのコモンモードチョークコイル22と、コモンモードチョークコイル22の入力側及び出力側の各ライン間に接続されたXコンデンサ(アクロス・ザ・ライン・コンデンサ)24と、高域のコモンモードノイズとノーマルモードノイズを減衰させるために出力側の各ライン・グランド間に接続されるYコンデンサ(ライン・バイパス・コンデンサ)26を備えている。
【0030】
この三相交流用のノイズフィルタについても、図1乃至図6の単相交流用のノイズフィルタの実施形態と同様、ケース本体、回路部品を実装した回路基板及びカバーに大別され、ケース本体に対する部品実装済みの回路基板の組付けで基板裏面(上面)に突出した接続ピンをハンダ付けすることで、簡単且つ容易に電気的且つ機械的に接続され、組立作業が容易で生産性を高めることができる。
【0031】
なお、本実施形態にあっては、コモンモードチョークコイル22を入出力間に2つ設けてノイズカット性能を高めているが、コモンモードチョークコイル22は1つであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によるノイズフィルタの実施形態の外観図
【図2】本実施形態の回路図
【図3】本実施形態の組立分解図
【図4】本実施形態の回路基板を透視状態として示す説明図
【図5】本実施形態の回路基板を組み付けた状態の説明図
【図6】本実施形態のカバーを外した状態の説明図
【図7】本発明の他の実施形態を示す回路図
【図8】従来例の説明図
【図9】従来例のカバーを外した状態の説明図
【図10】従来例の回路図
【符号の説明】
【0033】
10:ノイズフィルタ
12:ケース本体
12a:底板
14:カバー
15:金属底板
18:AC入力端子台
18a,18b,18c:AC入力端子
20:AC出力端子台
20a,20b,20c:AC出力端子
22:コモンモードチョークコイル
24:Xコンデンサ
24a,26a:リード端子
25:アース端子
26:Yコンデンサ
28:回路基板
30:端子金具
34,38:接続ピン
34a,38a:通し穴
36:基板支持壁
40:接続金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に金属底板を配置したケース底板の両側にAC入力端子台とAC出力端子台を一体に形成すると共に前記端子台の間に基板支持壁を一体に起立し、前記端子台から内部上向きに接続ピンを突出すると共に前記ケース底板側に設けたアース端子に接続した接続金具の先端から接続ピンを突出し、前記各接続ピンの先端を基板配置位置に延在したケース本体と、
コモンモードチョークコイル、Xコンデンサ及びYコンデンサを部品実装面に配置して裏面でハンダ接続し、前記部品実装面を前記ケース本体に向けて前記基板支持壁に当接する位置に組込み配置すると共に、基板通し穴に前記端子台および前記アース端子側から延在した前記各接続ピンを挿入した状態で外部に露出した前記基板裏面側でハンダ付けして電気的且つ機械的に接続された部品実装回路基板と、
を備えたことを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項2】
請求項1記載のノイズフィルタに於いて、前記コモンモードチョークコイルを複数備えたことを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項3】
請求項1記載のノイズフィルタに於いて、前記AC入力端子台及びAC出力端子台は単相交流端子であり、前記部品実装回路基板に単相交流用ノイズフィルタ回路の部品を実装したことを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項4】
請求項1記載のノイズフィルタに於いて、前記AC入力端子台及びAC出力端子台は三相交流端子であり、前記部品実装回路基板に三相交流用ノイズフィルタ回路の部品を実装したことを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項5】
ノイズフィルタの製造方法に於いて、
ケース本体として、裏面に金属底板を配置したケース底板の両側にAC入力端子台とAC出力端子台を一体に形成すると共に前記端子台の間に基板支持壁を一体に起立し、前記端子台から内部上向きに接続ピンを突出すると共に前記ケース底板側に設けたアース端子に接続した接続金具の先端から接続ピンを突出し、前記各接続ピンの先端を基板配置位置に延在し、
回路基板の実装面にコモンモードチョークコイルとXコンデンサ及びYコンデンサを配置し、裏側のハンダ面に突き抜けたコモンモードチョークコイルの接続端子と各コンデンサのリード端子をハンダ付けし、
前記回路基板の部品実装面を内側とし、ハンダ面を外側にして前記ケース本体側に組み込み、前記回路基板の通し穴に前記ケース本体の端子台及びアース端子からの接続先端部を挿入した状態でハンダ付けして固定接続することを特徴とするノイズフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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